2P2-35-043 遠隔操作系における視覚情報の伝送に関する一考察 A Study on Transmisson of Visual Data in Teleoperation System 正 佐野明人 (名工大) 正 藤本英雄 (名工大) 今井智彦 (生産情報研) Akihito SANO, Hideo FUJIMOTO and Tomohiko IMAI Nagoya Institute of Technorogy, Nagoya, Aichi Gifu Prefectural Research Institute of Manufactural Information Technology, Gifu Key Words: Networked Robotics, Force/Visual Data, Transmission, Network Load, Synchronization 1 3 はじめに 近年,コンピュータネットワーク ( インターネット ) を介 した実時間制御の要求が 増大している.その際,遠隔地か ら送られてくる力覚情報や画像情報は,より複雑なタスク を実行するために非常に重要となる.しかし ,現在の通信 速度および その利用状況を考えると,膨大な画像データを そのまま送ることは難し いため,適切に情報量を削減して 送る必要がある.本稿では,遠隔操作系における視覚情報 の伝送に関し て議論する. 2 画像データの動的操作 本研究では,リモート サ イトの CCD カメラで 捕えた作 業領域の 画像に 対し て ,作業内容に 応じ て 重要だと 思わ れるエリアを操作者が指定する.このエリアは,カラート ラッキングビジョンを用いて常にトラッキングされている. さらに ,このト ラッキング エリアの内側と外側で「 画質 」 および「 画像更新周期」が指定できるようにする(1) .注目 しているエリア内を高画質・高更新周期とし ,これにより 作業において重要な部分を鮮明かつ高速に観測する.これ に対し て,エリア外は注視し ていないことから ,低画質・ 低更新周期でも問題なく,これにより情報量を低減する. 図 1 に 提 案 す る 画 像の 圧 縮・伝 送 方 式の 概 略 図を 示 す. 本研究では ,画像圧縮方式とし て JPEG アルゴ リズ ムを 採 用し た .まず,カラ ート ラッキングビ ジョン か ら 取得し た RGB デ ータを YUV デ ータに 変換する .次に , MCU(Minimum Coded Unit) を 生成するが ,その 際,間 引きのタ イプ (Type) を 変え る.さらに ,得られ た MCU を DCT(離散コサイン 変換) し ,量子化,ハフマン 符号化 の処理を経て圧縮データを得る.量子化過程において,量 子化テーブ ルの値 (Scale) を 変え る.Type,Scale の 値を 変えることで画質および 画像の圧縮率を制御できる. 画像データの伝送方式に関しては ,1 フレームの全体画 像を分割し て,その分割した個々の画像とトラッキングエ リア内の画像を交互に送ることにより,エリア内の更新周 期を相対的に上げ ている. なお,遠隔操作をする上でも立体視は 非常に 重要だと 考えている.現在,液晶シャッタメガ ネ (CrystalEyes2) を 使った立体視を採用し ,適切な圧縮法についても検討中で ある. ネット ワーク負荷の計測 ネット ワー ク ロボ ティク スでは ,やは りコンピュータ ネット ワー クの状 態を 把握することが 重要であ る.状態 を 把握す る一指標とし て ,往復の 通信遅れ (Round Trip Time:RTT) が ある .すなわち,あ るパケットが ローカル サイトとリモートサイトの間を往復するのにかかる時間で ある.RTT はルータの処理時間などに依存しており,ネッ ト ワーク負荷の影響を受ける. 本研究では,RTT に基づくネットワーク負荷の計測方法 として,青木ら(2)が開発した NEPRI を利用する.NEPRI は 計測用パケット を 一定速度で 送出し て RTT を 計測し , それを基に計測用パケット 間の相関を求める.具体的な計 測原理は次のとおりである.計測用パケットがネット ワー クのボトルネックを同時に 通過し ない (キュー イング され な い) 場合 ,各パケット は 独立し た 関係とな る.し かし , 同時に通過する (キューイングされた) 場合,前のパケット が送出されてからでないと後のパケットは送出されないた め,必然的に前後のパケット 間で相関が 現れ る. 図 2 に計測結果の一例を示す.横軸に i 番目のパケット の RTT を,縦軸に i+1 番目の RTT がとってある.また, 図 2(a) および (b) は,計測用パケットの送信速度 (プロービ ング 速度)γ[pps] で分けてある.このとき,送信間隔δ[sec] は 1/γとな る.また ,パケット サ イズ P は 1448[bytes] と し た.図 2(a) では相関が 見られないものの,図 2(b) では はっきり相関が 見られ る. 次に ,相 関が 現れ るこ と を 利 用し て 利 用 可 能 帯 域 幅 µ[bytes/sec] を求める.図 3 にフローチャート を示す.ま ず,δを 設定し て 計測用パケット を 送出し RTT を 計測す る.次に ,∆RTT(=RTTi+1 − RTTi ) の正の割合Φを次式 により求める. n−1 Φ= i=1 Di , n−1 Di = 1 0 if RTTi+1 ≧ RTTi otherwise 算出されたΦとあらかじ め相関有 (Φが 大きい場合) と認め られる場合の閾値Φthとを比較し ,Φ≧ Φthであれば 利用可 能帯域幅µを P/δにより求める.もし ,Φ≧ Φthを満たさな ければ ,δを新たに設定し 再度プ ロービング する.ただし , δは 前回計測時のδから 閾値に 向か う値を 順次選択するこ ととし た. Fig 1: Block diagram of compression and transmission of visual data 日本機械学会[No.00-2]ロボティクス・メカトロニクス講演会’00講演論文集 [2000.5.12∼13,熊本] 2P2-35-043(1) 400 350 350 300 300 RTTi+1 [msec] RTTi+1 [msec] 400 250 200 150 250 200 150 100 100 50 50 0 0 50 100 150 200 250 300 350 0 400 0 50 100 150 RTT [msec] 200 250 300 350 (a) Load (heavy) 400 (b) Load (light) RTT [msec] i i (a) γ=10pps (δ=100msec) (b) γ=200pps (δ=5msec) Fig 5: Visual information with variable window Fig 2: Correlation between probing packets Table 1: Inside area of high resolution Load Heavy Light start Size (pixels) 64 × 64 128 × 128 Data (bytes) 640 1821 Rate (fps) 1.6 1.4 select send probing packets N ト ワーク負荷を計測し ,負荷に応じ て伝送する画像情報量の調整 ができることを確認し た.ネット ワーク負荷状態に おける画像情 報量と画像更新レ ート の結果を表 1 に 示す. th Y =P/ 5 end 情報通信の分 野では ,メディア 同 期制御に ついて 盛んに 研究 が 行われている.メディア同期制御とは ,マルチ メディア情報を 伝送する際に メディア内あるいは メディア間の時間関係を維持す る制御である(3) .本研究では ,ネット ワークロボ ティクスの分野 でも,同様の同期問題が 存在し ,検討し ていく必要が あると考え ている. 表 2 に 各研究分野に おけ る同期すべき メディア,同期させる 際に主となるメディアおよび その制約を示す.一般的なマルチ メ ディア情報である音声とビデオの同期では ,音声を認識させるた め の時 間的制約がビ デ オのそれ より厳し いため ,音声が 同期さ せる際の主となる.これに対し て,ネット ワークロボ ティクスで は ,リモート サイトからの力覚情報と視覚情報を同期させる必要 が あるが ,その際,安定性,操作性を保つために ,力覚情報を同 期させる際の主とする必要が ある.特に ,ストアせずにライブ の 情報を 扱 う必要が あることから いくつか の技術課題を 克服し な ければ ならない.今後,ネット ワークロボ ティクスにおけ るこの 種の メディア間同期制御について 検討し ていく予定である. Positive ratio of ∆RTT Φ [%] Fig 3: Flow chart 100 50 0 0 100 200 Number of probing packets n 300 200 400 150 100 500 50 0 図 4 に Φとγ お よび 計 測 用パケット 数 n の 関 係を 示す. 図 4 からわか るよ うに ,計測用パケット 数を 減らし か つ 計測精度を 上げ るよ うに ,閾値および 計測用パケット 数 を 設定する必要が あ る.本研究では ,それぞ れ Φth =0.7, n=101 とし た. 高画質エリアの制御 推定した利用可能帯域幅µを用いて ,その時点で適切な 高画質エ リアの 縦横サ イズ w[pixels] を次式に 従って求め る.なお,ト ラッキングエリアは正方形とし た. w= Table 2: Synchronization problem Probing rate γ [pps] Fig 4: Positive ratio of ∆RTT Φ 4 力・視覚の同期問題 µ − 3W 2 α2 F2 , 3α1 F1 w≦W ここで ,W は全体画像の縦横サイズ [pixels],α1 ,α2はそ れぞれ エ リア内とエ リア外の圧縮率,F1 ,F2は それぞれ エリア内とエリア外のフレ ームレ ート [fps] である. Research Field Popular Multimedia Networked Robotics Synchronization Voice/Video (Stored, Live) Reflecting Force/Visual Information (Live) Master Restriction Condition Voice Recognition Reflecting Force Stability, Maneuverability 参考文献 (1) 佐 野明 人 ,藤 本英 雄 ,岡 本啓 史: “ト ラッキング エ リアを 持った画 像デ ータの圧縮・伝送”, ロボ ティク ス・メカト ロ ニクス講演会’98 講演論文集 (CD–ROM), 1CV3–2(1),(2), 1998. (2) 青木武司,菊池慎司,高橋英一,岡野哲也,安達基光,勝山 恒男: “IP ネット ワークの性能測定技術”, 電子情報通信学 会技術研究報告 (信学技報, CQ98–32), pp.9–16, October 1998. (3) 中西博幸,田坂修二,石橋豊: “無線 LAN におけ る MPEG ビデ オ・音声の メディア同期実験”, 電子情報通信学会論文 誌, B-I, Vol.J80-B-I, No.11, pp.886–895, November 1997. 提案し た手法を,Windows 98 上に Visual C++を用いて 実装 し ,LAN 上で検証を行った.画像提示の一例を図 5 に示す.ネッ 日本機械学会[No.00-2]ロボティクス・メカトロニクス講演会’00講演論文集 [2000.5.12∼13,熊本] 2P2-35-043(2)
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