物件名: 「 学校法人嶺南学園 敦賀気比高等学校 」 1.建物概要 建物名称 学校法人嶺南学園 敦賀気比高等学校 所在地 福井県敦賀市沓見 164 号 1 番地 建物構造・階数 SRC 造、地上4階 延床面積 10,029㎡ (校舎のみ) 主要用途 教育施設 写真1.建物外観 2.空調リニューアル工事概要 建物名称 管理棟 空調面積 既存空調方式 964㎡ 吸収式(冷暖房)×1台 普通教棟 2,071㎡ ボイラー(暖房)×1台 特別教棟 2,788㎡ ボイラー(暖房)×1台 新空調方式 ⇒ エコアイス(冷暖房) (内訳は次に紹介) 蓄熱式空調設備/システム内訳 空調システム 氷蓄熱式個別分散型 (空調方式等) (ビル用マルチ方式) 容量(型式)×台数 20馬力相当×17台 (PUHY-P560ICM-B) 16馬力相当×4台 (PUHY-P450ICM-B) 10馬力相当× 1台 (PUHY-P280ICM-B) 合計冷房能力 : 1160.0kW 合計暖房能力 : 1160.0Kw 空調機器メーカー 蓄熱空調導入年月 三菱電機株式会社 平成15年6月 その他 写真2.空調機器(蓄熱槽&室外機) 3.導入経緯 学校法人嶺南学園敦賀気比高等学校は、昭和 61 年 4 月に時習・自律・慈愛の精神に富み、社会性・ 国際性のある人間として、知・徳・意・体の調和のとれた人材の育成を目的として設立され、敦賀市西方 の小高い丘の上に建設された高等学校です。 学校建設より 17 年を経て、既存空調設備の老朽化が進み修繕費も増加傾向にあり、さらに近年の夏 季の最高気温の上昇や、学校外での冷房設備の普及拡大から、 学校内での学習環境の改善を目的として、 冷房設備の導入が検討がされていました。 その後、検討結果として平成 15 年 6 月にエコアイスによる冷暖房設備が導入されました。 導入にいたっては次の項目について検討が行われました。 1.設備費が安いこと エコアイス 電気式 GHP 吸収式 設備費 × ○ △ ◎ 維持費 ◎ × × ○ メンテナンス ○ ○ △ × 制御性 ○ ○ ○ × 検討設備としては、エコアイス 運転ロス ○ ○ ○ × 電気式、GHP、吸収式の 暖房能力 ◎ △ ◎ ○ 4方式を表1のように検討 総合評価 ◎ ○ ○ △ 2.維持費が安いこと 3.メンテナンス等が少ないこと 4.運転制御が簡単なこと 5.環境にやさしいこと しました。 ◎:非常に優れている ○:優れている △:やや劣る ×:劣る 表1.比較検討表 最終的にエコアイスに決定した理由は次の通りです。 1. 設備費 ⇒ 価格は高いが維持費が安いため長期的に見てメリットがある 2. 維持費 ⇒ お得な付帯契約を活用し、4方式の中で一番安い (蓄熱調整契約+蓄熱ピーク時間調整契約+電化空調契約に加入) 3. メンテナンス ⇒ 蓄熱槽への水補給以外は電気式と同様でほとんど手間がかからない 4. 制御性 ⇒ 吸収式以外は、各教室ごとに運転の入切から、温度設定まで事務室に 設置した1台のパソコンで集中管理ができる。(写真3参照) 5. 環境性 ⇒ 運転ロスが無く、夜間電力を利用することで環境にやさしい 写真3.パソコンでの運転管理操作画面 4.考慮した点 学校施設は広大でありますが、 体育館 構内はきれいに整備されており (写真2) 設置可能場所も限られていまし たが、冷媒配管ロスを極力低減 普通教棟 させるために、図1に示すよう 管 理棟 に6箇所に分散設置しました。 ただ極端に目に付く場所につい 中庭 ては樹木による目隠しを行った。 正面東側 (写真2) (写真2は西側設置の2箇所) 特別教棟 図1.構内平面図 5.運転実績 ここでは、エコアイス導入後の至近1年間の使用電力量の実績を報告します。(グラフ1参照) 使用期間は平成 15 年 6 月∼平成 16 年 5 月までの1年間です。 kWh kW 450 140,000 130,000 120,000 110,000 100,000 90,000 80,000 70,000 60,000 50,000 40,000 30,000 20,000 10,000 0 400 350 300 250 蓄熱分 空調分 200 150 100 50 0 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5 グラフ1.至近1年間使用電力量実績 当該年は、冷夏の影響で平均気温が2∼3℃ 低かったため、夏期の使用電力量が極端に少 なくなっています。例年通りの気温であれば 空調での使用電力量はもっと増加していると 考えられます。また、デマンド値についても 冬期に記録されていますが、夏期での更新も あると考えられます。 19% 23% 58% さらに、グラフ2の使用電力量の割合を見 ますと空調分が42%にもなり、昼間と夜間 の割合もほぼ半分と、夜間へのシフトが行わ れていることもわかります。 グラフ2.使用電力量割合 一般分 デマンド 次に、夏期と冬期の1日の運転データをグラフ3とグラフ4に示します。 夏季電力計測グラフ : 9月11日(木)∼12日(金) kW 400 ℃ 40 350 35 300 30 250 25 200 20 150 15 100 10 50 5 0 受電総 合 エコアイス 外気温 度 室内温 度 0 8 12 16 20 0 4 8 グラフ3.夏季の1日の運転データ グラフ3より、夏季の特長としましては蓄熱ピーク時間調整契約に加入していただいているため 昼の 13 時∼16 時の間、エコアイスの消費電力を約 100kW 下げ室外機の能力を抑制しています。 しかし、室内温度をみてみますと外気温度が 35℃を超えた状態でも約 26℃を保っており夜間に 蓄えた氷を優先的に使用しながら快適な空調運転を継続していることがわかります。 kW 冬季電力計測グラフ : 1 月2 6 日(月)∼2 7 日(火) ℃ 400 35 350 30 300 25 250 20 200 15 150 10 100 5 50 0 0 受電 総合 エコアイ ス 外気 温度 室内 温度 -5 8 12 16 20 0 4 8 グラフ4.冬季の1日の運転データ グラフ4より、冬季の特長としては早朝の室温が蓄熱(お湯)により素早く立ち上がっていること がわかります。その後は外気温度の変化に応じて室外機の消費電力は変化していますが、室内温 度が約 24℃前後で推移していることがわかります。さらに夜間に8時間近く蓄熱運転していると ころから、日中に蓄熱を有効に使いきっていることがわかります。 なお、計測期間中の最大デマンド値は 26 日の 17 時ごろに 393kW を記録していますが、これは クラブ活動のため体育館の照明と空調運転が重なったため発生しており、今後は重ならないよう に配慮したいとのことです。 6.ランニングコストについて ランニングコストについては、次の表2のように使用電力量は導入前より約55%増加していますが、 電気料金的には導入前の1年間と比較しますと約25%増加に止まっています。これは各種蓄熱契約に より電気料金の割引を受けているためです。 項 目 導入後1年間 導入前1年間 増加率 使用電力量 813,000kWh 524,000kWh 55%増加 電気料金 125% 100% 25%増加 表2.電気使用状況前年度対比表 また、次の表3のように表2.電気使用状況を冷房期間と暖房期間に分けてみますと、冷夏だった 影響もありますが冷房期間では、使用電力量が42%も増加しているにもかかわらず電気料金は若干 8%の増加で収まっています。(蓄熱ピーク時間調整契約の影響が大きい) 次に暖房期間では、電気使用量は67%増加し、電気料金も45%の増加していますが、 増加電気料金 ≒ 従来のボイラー燃料費 と言うことで、暖房期間としてはメンテナンス費が削減された形になりました。 結果的には、構内を全館冷暖房に変更した割には、全体のエネルギー料金は大きく増加しなかった ため蓄熱式空調のランニング面での有効性もみることができました。 ・冷房期間(5 月∼10 月の 6 ヶ月間) 項目 導入後1年間 導入前1年間 増加率 使用電力量 338,000kWh 239,000kWh 42%増加 電気料金 108% 100% 8%増加 ・暖房期間(11 月∼4 月の 6 ヶ月間) 項目 導入後1年間 導入前1年間 増加率 使用電力量 475,000kWh 285,000kWh 67%増加 電気料金 146% 100% 46%増加 表3.電気使用状況季節別 7.おわりに 導入後、1年間の運転状況と計測データにより蓄熱の有効性を確認することができました。 また、ランニングコスト面でもメリットがあることも確認できましたので、トータルでの蓄熱の有 効性が確認されました。 最後に実測や計測データの活用を許可してくださいました、学校法人嶺南学園敦賀気比高等学校の 皆様に御礼申し上げます。 北陸電力株式会社 丹南支社 営業部営業担当 奥田 恵治
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