産業技術センターニュース 2009年3月号 産業技術センター contents ●トピックス 伝統技術とテクノロジー . . . . . . . . . . .1 ●研 究 真空紫外光を用いた表面改質 . . . . . . .3 2009 年 3 月号 を学ぶ 1 伝統的工芸品から「ものづくりの原点」 Topics ある調査によると、日本には創業200年以上の 企業が3,000社もあり、西暦578年に宮大工が創 ●業界情報 ソニー株式会社がオープンラボ開設 . . . . . . . . . . . . .4 ●設備紹介 ゼータ電位・粒径分布測定システム、 DNAマイクロアレイシステム . . . . . . .5 ●企業紹介 身近なおしゃれゴムにこだわり30年 株式会社 イノウエ . . . . . . . . . . . . . .6 ●技術支援事例 機械・材料技術部/電子技術部/ 化学技術部 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .7 ●お知らせ 神奈川県知的所有権センターのご紹介、 産技センターの一般公開、 神産協会員募集のご案内、神奈川工業 技術開発大賞募集など . . . . . . . . . . . . .8 は中小・零細企業が多く、非常に厳しい状況にあ りますが、当産地には自社の特性を生かしコンス タントに売り上げている企業もあります。 そのような企業には、お客様の喜ぶ笑顔を生き 設した 「世界最古の企業」 も存在しているそうです。 がいに、伝統の技を現在に生かしたものづくりを この幾多の荒波を乗り越えてきた多くの長寿企 する姿勢に優れ、「技術力と提案力」が高いと考 業は、家訓(経営理念)を厳しく守り継いで本業を えられます。 大切にしてきており、自社の優位性「コアコンピ 「企業は社会に貢献することで存在意義が生じ タンス」を重視した経営哲学が、はるか昔から根 る」と言われていますが、伝統的工芸品が長年に 付いていたのです。 (日経PC21 2007年7月号) わたり生活用品として育てられてきたという事実 産業技術センター工芸技術所は、伝統技術を基 は、伝統的工芸品産業が我が国の生活文化の発展 盤とした、国指定の伝統的工芸品である鎌倉彫、 小田原漆器、箱根寄木細工などの県内工芸産業の 技術支援を行なってきました。 に貢献してきた証でもあります。 単に儲けを追求するのみの商品よりも、社会の 中で自分が担う使命を自覚しながら、つくり手の 小田原箱根地方には、1200年の伝統を誇る多 熱い思いのこもった「売りたい商品づくり」を目 様な産地固有技術があり、その伝統の技を生かし 指し、「売れる商品」にする努力が「ものづくり た様々な木製品を生産しています。木製品製造業 の原点」ではないでしょうか。 1 産業技術センターニュース 2009年3月号 2 T 時代に合わせたものづくりの視点 opics ライフスタイルの多様化、安価な輸入品の増大、 生産拠点の空洞化、想像を超えるスピードで進む 情報革新など、日本のものづくり、特に中小企業 は、厳しい対応を迫られています。 技術や組織を融合させる使命を持ち、経営戦略の 中にデザインを生かしてこそ、有効な技術となり ます。 4 T これからの産地木製品産業と若手職人たち opics 後継者不足が深刻な伝統的工芸品産業ですが、 社会経済の急激な変化に馴染めないのが、伝統 いわゆる「職人」への若者の関心は、ゆとりと豊 的工芸品産業の弱点とされますが、長寿企業の経 かさをもたらす質の高い製品に対するニーズや、 営者は、時代に合わせた柔軟な対応をしてきたの 地域独自の文化を見直そうとする風潮の高まり、 です。伝統工芸の 世界でも、IT・ 「和」の暮らしや「ものづくり」に対する再評価 などにより、高まってきています。 CADなどの先端技 小田原箱根の木製品業界においても、寄木細工 術を利用した商品 の若手グループ(雑木囃子)を筆頭に、小田原漆 開発も行なわれて 器のロクロ研修生、からくり創作研究会の若手、 います。 木製玩具・クラフト製品等の若手従事者の活躍が CADでデザインした 寄木細工(矢羽根模様) のワイングラス 目立つようになっています。 今年の2月には、小田原駅ビルで開催された 「木のWAZA展」に、7人の若手女性職人が女性な また、自社の持つコア技術・コアサービスを有 らではの感性を生かした作品を出品するなど、若 効に生かすには、他社と異なる「差異化」が必要 手職人たちの今後の活躍が大いに期待されます。 で、商品企画から生産、マーケティング、営業、 流通、人事管理にいたるまで、ライバルと異なる 視点での戦略が求められています。 3 T デザインを経営戦略に生かす opics 成熟した市場では、機能や性能は良くて当たり 前で、外観デザインだけでは差別化が難しく、 木のWAZA展における女性職人のコーナー フィーリングや「なんとなくよさそう」といった 情緒的な視点や、使用による愛着も求められます。 (財)日本産業デザイン振興会では、経営者自 身の哲学に基づきデザインを総合的に活用するこ とによって、社会的信頼性を高め業績を伸ばしつ つある企業を、「企業活動全体がデザインされて いる企業=デザイン・エクセレント・カンパ ニー」として顕彰しています。 デザインは、経済活動が中心課題(儲け第一主 義)ではありません。デザイナーは分散している 2 これからの時代は、デザインを取り入れた経営 戦略とオンリーワン技術が必要です。 神奈川県では、「都市型工芸産業」と位置付け た新商品開発支援を目指しています。 そのためには、産業技術センターを拠点として、 「かながわらしい」デザインを切り口としたもの づくり支援を、次世代を担う「企業モデル」の一 つとして定着させていきたいと考えています。 問合せ先 工芸技術所 小堀 誠 産業技術センターニュース 2009年3月号 研究 真空紫外光を用いた表面改質 化学技術部 はじめに 熱あるいは真空紫外光照射により酸化シリコンに 1980年代後半に、誘電体バリア放電を利用し 転化する様子が、ポリシラザンのSi-N, Si-H, N-H た強力な真空紫外光源であるキセノン・エキシ バンドの消失や酸化シリコンのSi-O-Siバンドの マ・ランプが開発されました。この光源の出す波 出現から分かります。ゾル−ゲル法などのウェッ 長172nmの光は、多様な分子内化学結合を光解 ト法により無機酸化膜を作製する場合、触媒を含 離可能な7.3eVという高いエネルギーを持ち、従 まない良質な膜をつくるには500℃以上の熱処理 来の水銀灯などの紫外光源では考えられなかった が必要でしたが、真空紫外光照射により、常温で ような光表面処理を可能にしました。この技術は も良質な酸化膜を作製できることが確認できまし 現在、液晶表示パネル用ガラス基板の精密光洗浄 た。この手法は、耐熱性に劣るプラスチック基板 などへ実用化されています。当センターでは、こ への無機酸化膜のコート手法として有用です。 の真空紫外光を用いた材料の表面処理とそのメカ ニズムを調べています。 高分子の表面改質 図1に、真空紫外光を用いてポリエチレンシー トに濡れ性を付与した例を示します。真空紫外光 照射により、元来は疎水性のポリエチレン表面の 照射前 照射後 図1.真空紫外光を用いてポリエチレンの表面に濡れ 性を付与した例(左は未処理、右は光照射したポリエ チレンに水滴を滴下して横から観察したもの) 濡れ性が増し、水滴が平らになっていることが分 かります。各種の表面分析法を用いて化学構造の 変化を調べたところ、ポリエチレンの分子内化学 結合が切断されると共に、照射雰囲気中にある酸 素から原子状酸素が生成され、これがポリエチレ ンの表面に -OH、-COOH などの官能基を形成し て、親水化していることが確認できました。この ように表面の濡れ性を制御できれば、接着剤や塗 料などが付着しにくい材料に、各種のコーティン グを行うことが容易になります。 無機酸化薄膜の低温作成 図2に、酸化シリコン膜を塗布法により製膜し た例を示します。前駆体であるポリシラザンが加 図2.ポリシラザン塗布膜の赤外吸収スペクトル (下から室温乾燥後、300℃での熱処理後、500℃で の熱処理後、真空紫外光照射処理後) ❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇ 執筆者より 真空紫外光源は、精密光洗浄や濡れ性の制御、薄膜の改質以外にも様々な分野に使えるものと考え ています。新たな応用法など、ご興味を持たれた方のご連絡をお待ちしております。 問合せ先 化学技術部 材料化学チーム 加藤 千尋、田中 聡美 技術支援推進部 長沼 康弘 3 産業技術センターニュース 2009年3月号 業界情報 ソニー株式会社がオープンラボ開設 ー神奈川R&Dネットワーク構想による成果のご紹介ー はじめに ただしトライアルの結果によっては、ソニー 神奈川県では、大企業等と県内中小企業との技 (株)との共同研究や共同開発に発展する可能性も 術連携を推進する「神奈川R&Dネットワーク構 あるので、加工に必要な最低限の情報は事前に開 想」に取り組んでいます。 示していただき、またソニー(株)と依頼者の双方 その取り組みの一つとして、県内中小企業の優 れた技術を大企業の技術者に紹介する技術展示会 でトライアルの情報を共有できることが利用の条 件になります。 をこれまで5回開催し(2008年7月号参照)、い くつかの取引が成立しています。 そのような中で、ソニー株式会社が、同社に対 して出展した中小企業の技術を活用し、オープン <フェムト秒レーザー微細加工装置> 非加熱の状態で様々な材料への微細加工が可能 です。 主な特徴 ラボを開設したのでご紹介します。 光源基本波波長: 2006年2月、ソニー(株)厚木テクノロジーセン 800nm ターで開催した「かながわR&D技術紹介セミ ナー」に、サイバーレーザー(株)は、フェムト秒 平均出力:1W レーザーを出展しました。この技術がソニー(株) パルス幅:180fs の技術者の目にとまり、展示会終了後、両者の間 繰返し周波:1kHz で性能評価等の実験や打合せがありました。 加工範囲:10cm× 10cm その後、このレーザーをソニー(株)が導入する にあたり、「オープンイノベーションを進める企 業として、導入技術を、研究開発や試作に必要な <マイクロ光造形装置> 外部の方々にも活用してもらおう」というソニー ミクロン精度で大面積の高速微細造形が可能で (株)研究所トップの判断で、厚木テクノロジーセ す。 ンター内にオープンラボを開設し、このレーザー 主な特徴 をもとにソニー(株)が新たに開発したレーザー微 ・ダブルパス光学 系により高速高 細加工装置を設置することになりました。 精細の造形が可 能 ・タイリング法に より高精度大面 積造形が可能 ・規制液面法により均一な積層厚みを実現 オープンラボ開所式のひとこま(H20年11月12日) 利用をお考えの方は、まず下記の産業技術セン ターにお問い合わせください。 このラボにはレーザー微細加工装置の他に、ソ ニー(株)で独自に開発したマイクロ光造型装置も 問合せ先 設置されており、位置づけは同社の社内研究開発 産業技術センター 交流相談支援室 大沼 正孝 設備ですが、外部の方の技術検討提案に基づく試 験にも対応可能です。 4 産業技術センターニュース 2009年3月号 設備紹介 このような設備機器をご利用ください ゼータ電位・粒径分布測定システム(大塚電子 ELS-Z 2) この装置は・・・ 微粒子の、大きさの分布やゼータ電位(帯電状 利用するには・・・ <依頼試験>(1試料) 態)を、溶液中で測定します。乾燥した粉末でも、 粒径分布:8,500円(微粒子) 溶媒に分散すれば測定できます。また、平板形状 ゼータ電位:9,780円(微粒子)、11,900円(平板試料) 試料のゼータ電位も測定できます。 用途、特徴は・・・ 短時間で沈殿しない、光の散乱体であれば何で も測定可能です。セラミックスや高分子のような 固形物はもとより、乳化物も対象となります。溶 媒も、粒径分布については制限はありません。 主として、1マイクロメートル程度以下の小さ な粒子を対象としており、1ナノメートル程度の 極めて小さい粒子まで、十分に対応しています。 濃厚な状態でも測定することができ、最大で濃度 40%まで可能です。 問合せ先 機械・材料技術部 ナノ材料チーム 奥田 徹也 ❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇ DNA マイクロアレイシステム(アジレント・テクノロジー(株)) この装置は・・・ 利用するには・・・ 生物は、環境や摂取した食品によって体内の遺 原則として受託研究での対応となりますが、内 伝子の発現量(遺伝子の働き)が増減し、生体活 容によっては機器利用 (1時間あたり6,090円) 動に影響が現れます。この装置は、遺伝子が働く での対応も可能ですのでご相談ください。 時にできる成分を生体から抽出し、DNAマイク ロアレイと呼ばれるチップ上に並べたいろいろな DNA(デオキシリボ核酸)と反応させることで、 遺伝子の発現量の変化を解析する装置です。 用途、特徴は・・・ 動物実験等により発現した遺伝子を本装置で解 析することにより、食品成分の機能性やアレル ギー性など生体に及ぼす影響を、遺伝子レベルで 網羅的に知ることができます。また、食品等の機 能性や安全性の評価、新しい機能性食品や医薬品 問合せ先 化学技術部 バイオ技術チーム 荒木 真由美 などの開発に役立ちます。 *料金等につきましては、平成20年10月1日現在です。 ご利用の方は、直接問合せ先にお問い合わせください。 5 産業技術センターニュース 2009年3月号 企業紹介 身近なおしゃれゴムにこだわり 30 年 株式会社 イノウエ どの家庭でもある、100円ショップの安くてお しゃれな髪留めのゴムは、中国製だと思いますか? 株式会社イノウエは、創業80年を超える老舗 の製紐会社ですが、おしゃれゴムに取り組んでか ら既に30年、実は全国で身近に見かける100円 ショップの製品も幅広く手がけ、業績を伸ばして います。 ISO9001、特許や意匠登録と、アイディア豊富な 井上 旭 代表取締役社長にお話を伺いました。 * Q A 主力はヘアゴムだそうですが、社長が10年かけ て完成したヘップリングとはどんな製品ですか? 最近20年ほど日本の女性はロングヘアが 増えていて、その影響もありヘアバンドや ヘアゴムの売り上げが年々伸び、ヘアゴムのヘッ プリングは看板商品になりました。国内にメー カーは約10社ありますが、直販は当社のみです。 ヘップリングは、輪の接着方法の開発に時間が かかりました。最初は金具で接着していましたが、 不具合が多く、髪も傷む。熱処理を試みたのです が、ゴムと糸の両方をうまく接着できる方法がな い、と試行錯誤が続き、米国の接着剤メーカーに 開発を依頼、その 後接着法の開発に3 年かかり、特許を 取得し、ヘップリ ングが誕生しまし た。接着法の特許 を持つメーカーは 本社ロビーのカラフルなヘアリング 国内唯一です。 毎年ギフトショー等の全国的展示会に出 展し、PRにも力を入れられています。 Q A 今回(2月)は、消臭効果のある絹や綿の ヘアバンドやマフラー、椿油を使ったヘア ゴムなど新商品を出して、お客様からアンケート をとります。 展示会はお客様の反応や流行を見るのが主な目 的で、批判やクレームが あった方が改良に生かせる し、視点が違う製品を次に 開発できます。 アイディア勝負で2ヶ月に 1度くらい新製品開発をす るので、取引先に紹介し商 品化が見込まれるものを出 展し反応を見ます。全くの 新開発を出すとかえって真 似される可能性があります。 ビッグサイトでの出展風景 6 Q A ISO9001の取得にも積極的に取り組まれていま すが、社内の人材育成についてお聞かせ下さい。 ISO9001は8年前、ヘアリングを小売に直 接納品するのに品質保証できるものを、と 取得しました。おかげさまで平成18年には県から 優良工場に表彰されました。ISO取得当時より社 員も増え、外部研修に行かせたり商工会議所に講 師を依頼したり、研修には力を入れています。 今、商品は安全性がより求められ、中国製から 当社のような国産にシフトしています。今年はエ コテックス100の取得をめざして、社員にも安全 や環境などの意識を持たせ、お客様がより喜ぶも のを作りたいです。 社員との信頼関係のため、安心して働ける職場 を心がけ、新商品の意見もどんどん出してもらい ます。 特に女性の意見は厳しく参考になります(笑)。 退職も少なく皆長く勤めてくれて、定年延長で幅 広い年齢層がおり、スタッフに恵まれています。 産技センターを利用されたきっかけは? 利用されていかがでしたか? Q A 繊維工業指導所時代から利用しています。 指導員の方には、繊維物性や素材分析など 技術的な話から、新商品のアイディアを聞いたり、 自社製装置の改良を手伝って頂いたり、大変お世 話になっています。日々の仕事につい追われるの で、ありがたい存在です。 時代の趨勢で 繊維の専門家が 減っているのは 残念ですが、先 端技術を繊維な どの一般的な製 造業にどう生か せるのか、今後 も相談できると 工場では多数の製紐機が日夜回り続ける いいです。 株式会社 イノウエ 所 在 地 相模原市津久井町鳥屋750 T E L 042-785-0136 代表取締役社長 井上 旭 設 立 昭和3年5月 従業員数 30人 得意技術 製紐機を使ったものづくり。組紐関連の企 画、開発、試作品づくり。 企業 P R 装飾品、手芸用ゴムひも、衣料、産業資材な ど、 ゴムひも関連製品の製造と販売を中心に、 お客様のニーズにお応えして、喜ばれる製品 を創造することを心がけています。 問合せ先 化学技術部 今川 久好、阿諏訪 静江 (文)企画部 檜垣 桜子 産業技術センターニュース 2009年3月号 技 術 支 援 事 例 ∼産業技術センターで実施した支援例です。技術改善の参考にお役立てください∼ シート状樹脂を用いた 摩擦試験 各種機械部品には物と物が擦れあう摺動部が数多く存在し、その摺動 性能を評価する手法の一つに摩擦摩耗試験があります。従来は金属材料 プラスチック製品製造業 の摩擦特性評価の要望が多く、当センターでも評価実績が蓄積されてき 評価技術 ましたが、最近では樹脂材料の耐久部材への使用が多くなり、その評価 の要望が増加しています。 問合せ先 厚みのある硬い樹脂であれば金属と同様に試験が可能ですが、薄片や 機械・材料技術部 軟質な物は、試験機冶具への固定ができないか、変形するなどの問題が 吉田 健太郎 生じ、試験が不可能でした。そのような試料に対しては、金属などの硬 い材料を台座として試料を接着剤で固定し、その上で試料が破壊されな いような荷重・速度の条件を設定し、薄く柔らかい試料でも摩擦特性の 評価を可能にしました。この方法で今年度は複数案件を支援しています。 半導体デバイスの性能には、半導体物質内の微量不純物の濃度制御や 半導体材料の光学評価 結晶欠陥の制御が重要となります。これらを作製プロセス中に非破壊で 電子部品・デバイス製造業 評価することは、デバイス開発スピードの向上につながり、設計の重要 技術開発 な指針となります。 今回フォトルミネッセンス分光分析を用いた発光特性評価、及び測定 問合せ先 温度による発光スペクトルの変化を調べることによって、それら半導体 電子技術部 物質内部の結晶欠陥、結晶品質の評価を行い、開発支援につながりまし 秋山 賢輔 た。最近は無機物の半導体だけではなく、有機物の評価にもこのフォト ルミネッセンス分光分析が利用されることがあります。極低温(約4.5K) から室温(300K)における可視光域(500nm以上)から近赤外域 (1650nm以下)での発光特性を調べたい場合には、ご相談下さい。 製造している電子部材に不良品が発生したため、その原因を調査して 製品不良発生の原因汚染物 質調査とその対策 対策を行いたいとの相談を受けました。 この不良の原因は、加工処理工程で発生した分子状(ガス状)化学物 電子部品・デバイス製造業 質が部材へ吸着し、残留することによると考えられました。そこで、製 品質向上 造工程ごとに現場室内空気の汚染物質濃度を調査するとともに、その汚 染物質の発生状況、部材の製造工程、空調・排気設備の稼働状況、室内 問合せ先 化学技術部 石丸 章 気流等の実態を調査しました。 これらの調査結果に基づいて、製造工程・設備配置の変更、空気清浄 装置や局所排気設備の設置などの対策を行うことで、不良発生率を減少 させることができました。併せて、対策後の改善状況の確認やその後の 品質向上のための課題についても支援しています。 7 産業技術センターニュース 2009年3月号 神奈川県知的所有権センターのご紹介 神奈川県産業技術センターは、特許庁から知的所有権センターとして認定され、県内に3支部を 設置し、中小企業等の技術開発を支援しています。センターには特許情報活用支援アドバイザー (以下、アドバイザー)が配置され、無料で支援を行っています。 特許情報アドバイザーによる主な支援内容 1.無料講習会 産業技術センター、神奈川県立川崎図書館、大和市生涯学習セン ター、神奈川県民センター等において、あわせて年間50回以上の無 料の講習会を開催しています。 講習会の主な内容は、 ①産業財産権制度の概要と初心者向け特許検索 ②中級者向け特許検索 ③上級者向け特許検索 ④特許検索演習 ⑤米国、欧州特許庁の特許検索データベースを利用した外国特許検 索 ⑥中国、韓国、台湾特許庁の特許検索データベースを利用した 特許検索 ⑦特許情報の整理・分析・加工(特許マップ) ⑧意匠制度の概要と意匠検索 ⑨商標制度の概要と商標検索 ⑩特許明細書の作成方法 ⑪知財創出のための問題解決方法です。 (⑩、⑪については、平成21年度より新たに開始する講習会です。) お問合せ:企画部企画調整室(神奈川県知的所有権センター) 2.中小企業等を訪問して行う支援 中小企業(製造業の場合は資本金3億 円以下、従業員数300人以下のいずれか を満たす)等については、アドバイザー が訪問して、講習会の開催やその他の個 別相談をお受けします。 3.産技センターにおける相談 アドバイザーが産業財産権(特許、意 匠、商標)についてのご相談を、原則と して月曜日、水曜日に産技センターでお 受けします。事前予約制ですので、下記 にご連絡ください。 046-236-1500 内線 2312 産技センターの一般公開 神産協 会員募集のご案内 神奈川工業技術開発大賞募集 産業技術センターでは、県民や企 業の皆様に当センターの設備や機器、 技術分野、支援内容などを知ってい ただくため、一般公開します。ぜひ ご来所ください。 日 時:4月17日(金) 9時∼17時(入場自由) 場 所:産業技術センター 海老名市下今泉705-1 (海老名駅から徒歩15分) 内 容:設備の公開・実演・展示・ 相談(技術、経営) ・見学等 講 演:「超電導と環境・エネルギー ∼現状と期待される活用∼」 時間 13:30∼15:00 講師 塩原 融氏((財)国際超電 導産業技術研究センター超 電導工学研究所 所長) その他①電気自動車(EV)の展示・試 乗会(終日) ②県の事業説明(15∼16時) ・EVの普及支援の取組み ・新現役チャレンジ支援事 業及び支援事例紹介 問合せ:技術支援推進部交流相談支 援室 046-236-1500 内線2211 詳細は、当センターホームページへ http://www.kanagawa-iri.go.jp/ 神産協(神奈川県産業技術交流協 会)は、県内企業を中心に約500事 業所が参加する団体で、平成20年4 月1日に神研連(神奈川県工業技術研 究機関連絡会)と統合しました。 産業技術センターと連携して、会 員企業を中心とする技術開発力の向 上を目指す事業を展開しています。 主な事業としては、品質管理講習 会、生産管理講習会、ISO14001、 ISO9001内部監査員養成講座等を開 催しています。また、会員の皆様の 関心が高く研究・技術開発に役立つ テーマを選び、講演会や見学会を実 施しています。 企業の皆様にとって、会員になる と多くのメリットが期待できます。 入会の受付は随時行っていますの で、事務局までお問い合わせいただ き、ぜひ、ご入会をご検討ください。 問合せ:神産協事務局(産技センター 技術支援推進部交流相談支援室内) 046-236-1500 内線2205∼7 詳細はホームページをご覧ください。 http://www.kanagawa-iri.go.jp/ sinsankyou/index.html 県では毎年、優れた工業技術や製 品を表彰しています。受賞企業は県 内最大級の工業見本市である「テク二 カルショウヨコハマ」 に出展できます。 対象:県内の中堅・中小規模企業等 で、3年以内に開発や商品化さ れた技術・製品 応募期間:4月1日∼30日 応募要項等詳細は下記へ http://www.pref.kanagawa.jp/ osirase/kogyo/taisyo/index.html 問合せ:県工業振興課 045(210)5646(直) 技術相談専用電話(直通)をご利用下さい。 首都圏公設試験研究機関 連携体の活動について 埼玉、千葉、東京、神奈川、横浜の 公設試は、利用される中小企業の利 便向上のため、その強み技術を生か して連携しています。 産技センターホームページから、 TKF(首都圏テクノナレッジ・フリー ウェイhttp://tkm.iri-tokyo.jp/)サイト もご利用下さい。 046-236-1510 産業技術センターニュース Vol.14 No.6 神奈川県産業技術センター 〒243-0435海老名市下今泉705-1 TEL0 46-236-1500 (代表)FAX0 46-236-1526 平成21年3月発行 工 芸 技 術 所 〒250-0055小田原市久野621 TEL0465-35-3557 (代表)FAX0 465-35-3936 通巻83号 印刷所 (株)相模プリント 〒229-1104相模原市東橋本1-14-17TEL0 42-772-1275 (代表)FAX0 42-774-1913 (複製を希望する場合は、当センター企画調整室までご連絡ください。) 8
© Copyright 2024 ExpyDoc