イギリス サセックス大学 Genome Damage Stability - 京都大学

University of Sussex (Sussex Centre for Genome Damage and Stability)
での 5 週間
京都大学医学部医学科
稲山嘉英
私は一回生の 2 月∼3 月にわたる長期の春休み(2009 年)を利用して、イギリスの南部
の中心都市、ブライトン近郊にある Sussex 大学のゲノムセンターに 5 週間ほど留学をして
きた。
前々から、大学に入ったら海外留学をしたいと考えていたところで、武田先生から留学
に興味がある人は相談しにくるとよいとの旨のことを伺ったので、相談しに行ったところ、
この Sussex 大学のゲノムセンターを紹介していただき、留学することが決まった。医学の
基礎研究の最前線と、海外の文化とに同時に触れることができた非常に貴重な 5 週間であ
った。この機会を提供してくださった武田先生には本当に感謝しています。
できれば 6 週間から 2 か月間は行った方が良いとのことだったのだが、野球部に入って
いる私は、部活の兼ね合いもあり、最終的に 5 週間という期間に落ち着いた。後期の試験
が終わった直後にあちらへ飛んで行ったといった感じである。ただ、現地に慣れるのに 2~3
週間は要するので、これから留学に行く人はできる限り長い期間で行った方が実験の成果
は出ると思う。回生が上がると、勉強、部活ともに忙しくなるであろうし、このタイミン
グで行くことができ、本当によかったと思う。
以下、今回の留学に関して、渡航前、渡航、現地での生活、英語の四項目に大きく分け
て報告する。
・渡航前
1.宿舎
渡航が決まってすぐ、宿舎の手配を行った。11 月中旬に、武田先生に Sussex 大学の Tony
Carr 教授を紹介していただき、すぐに Carr 教授にメールを送った。すると、秘書の方と、
配属先の宮部先生と連絡を取ってくれとのことだったので、その後は宮部先生と、秘書の
方と連絡を取っていた。宿舎について秘書の方に尋ねてみると、研究所で働くテクニシャ
ンの所にホームステイするか大学の寮のようなところに泊るか、どちらが良いか聞かれた
ので、ホームステイを希望した。その方が英語の練習になると思ったからである。ホーム
ステイに空きがあるかどうかがわかるのに時間がしばらくかかったが、12 月中旬にはホー
ムステイできることに決まった。
あとは、現地のことについてのわからないこと(気温、交通手段等)などを宮部先生に伺
った。
2.航空券
航空券の手配も重要である。日程が確定しないと予約ができないが、込む時期であるな
らなおさら、早く予約する必要がある。航空券が確保できないことには始まらない。いろ
いろ調べてみると、関空から、JAL の直通便が Heathrow
Airport まで出ており、時期も
よかったので、価格も 12 万ほどとあまり高くなかったのでそれにした。JAL のホームペー
ジ(Web 悟空)から直接購入したので、座席指定のサービスも受けられて得だった。直通
便は確か、JAL のみだった。アジア系の海外の航空会社にすれば、もう少しだけ安くなっ
たようだが、ただでさえ長い距離であるし、海外経験もあまりなかったので、日本の航空
会社にしておいた。機内で中国語が流れても意味わからないだろう。直通に乗ると、片道
約 12 時間である。
3.通貨
現地での通貨についての準備も必要だ。現金を多額に持ち歩くのは物騒なので、大きく
分けて、トラベラーズチェックとしておくか、クレジットカードを使うか、インターナシ
ョナルキャッシングカードを持って行って現地で必要に応じておろすかの 3 通りがあるよ
うに思う。私はトラベラーズチェックをメインに使い、紛失時やトラベラーズチェックが
尽きた時の予備として、クレジットとインターナショナルキャッシングカードを持って行
った。特に資金に関しては、予備の手段があった方が、紛失時に安心である。
トラベラーズチェックの利点としては、紛失時に再発行できることと、有利な為替レート
のうちに現地の通貨に両替できることであると思う。インターナショナルキャッシングカ
ードはいくつかの銀行でサービスを行っている。時期も時期だったので、5 週間いて、航空
券込みで滞在費は 20 数万円だったと思う。観光しようとすると、もっとかかる。
4.携帯
会社や機種によっても違うが、私の携帯はそのまま現地で使えたので、そのまま持って
行った。現地の携帯電話会社と提携してのサービスなので、あちらで電波が通じるところ
であれば携帯は使えた。充電器が必須だ。充電器によっては、変圧器を使用するなとの注
意書きがあることがあるので注意してほしい。その場合、たいてい変圧器なしで使える。
プラグだけ使えばよい。
5.その他持ち物
普通の旅行に準じて考えればいいうる。変圧器とプラグは、ないと持って行った電気製
品が使えなかったりする。電気屋に行けばそろう。スリッパは、機内が狭く(エコノミー
クラス)長時間座ったままになるので、靴を履いているのはしんどいからである。機内で
はジャージなど楽な服装をした方が良い。アイマスクがあると寝やすい。
・渡航
飛行機が午前中だったので、念のため関空近くのホテルに一泊した。12 時間は長いので
何をするか前もって決めておいた方が良いかもしれない。画面が座席の前についていたの
で、映画を見ることは可能だった。
Heathrow Airport から Sussex 大学のある Brighton までは大きく分けて 2 通りの方法があ
る。直通の Coach(バス)か、London 経由の鉄道かである。荷物が大きいことから、Coach
の使用を推薦されていたのであるが、あいにく私の到着した 2 月 2 日は 18 年ぶりの大雪と
いうことで、Coach が運休、鉄道も大幅に遅れているという状況だった。Coach 以外の行
き方をきちんと調べていなかったので、仕方ないから駅員に尋ねてみると、London の
Victoria Station にまず Underground で向かい、そこから鉄道に乗り換えろとのことであ
った。しかし、Victoria Station から Brighton 行きの鉄道が動いているかどうかわからな
いので現地に行って聞け、といわれてしまった。他にどうすることもできなかったので、
ひとまず Victoria Station へと向かった。Underground は Victoria Station まで直通では
ないので、途中で District Line に乗り換える必要がある。Victoria Station へ行ってみる
と、鉄道は案の定運休していた。Victoria Station から Brighton 行きの Coach ことも検討
してみたが、こちらも動いていなかった。鉄道が動くことを祈り、3 時間ほど待っていると、
なんとか動き出したので、無事 Brighton へとその日のうちにつくことができた。この日は
持って行った携帯電話が大活躍した。宮部先生が Brighton まで迎えに来てくれることにな
っていたので、先生と連絡を取りながら交通手段を検討することができた。このような緊
急事態のために、携帯は持っていくことをお勧めする。
・現地での生活
現地では、ゲノムセンターで働くテクニシャンのインド人のサンディアさん夫婦の所に
泊めていただいていた。インド料理が多少辛かったが、料理はおいしい。ただ、ベジタリ
アンの方なので、肉は出ない。料金は一週間、朝食と夕食込みで 125 ポンド、朝食だけだ
と 100 ポンドだった。私は、食べる量も多く、夕食を用意するのは大変なので、夕食もお
願いしていた。昼食は大学構内の shop でパンと飲み物を購入して食べていた。一食 3 ポン
ド前後だった。
月曜から金曜まではラボに通い、土日は休みをもらっていた。運動不足になりそうであ
ったので、ホームステイ先から大学までは毎日歩いて通っていた。約 30 分である。バスを
使うことも可能。10 ポンドで weekly ticket が買える。
ラボには、ヨーロッパを中心に、世界中の様々なところから来た人が集まっていて、話し
ていて楽しかった。イギリスはもちろん、フランス、スペイン、スイス、ドイツ、ベルギ
ー、ポーランド、イタリア、オーストリア、デンマーク、オランダ、オーストラリア、台
湾、中国、インドなどである。日本人は多かったので、なじみやすかった。
生活のリズムとしては、朝 9 時くらいにラボに行き、夜 7 時くらいまで実験をして帰ると
いう形であった。これは配属先の先生によってだいぶ変わると思う。結構ハードであった
が、ラボのメンバーでサッカーやバドミントンをやったり、昼食に誰かの誕生パーティー
をやったり、週末にはみんなで遊びに出掛けたりと、息抜きも多く、非常に楽しかった。
大学の中でやっていたダンスにみんなで行ったこともあった。日本ではまずないことであ
り、楽しめた。陽気な人ばかりなので、すぐに仲良くなれると思う。
週末はフリーだったので、ラボのメンバーと遊ばない日は観光をしていた。一人でいろい
ろ歩き回ってみるのも、それだけで貴重な経験となった。
実験は、遺伝子改変をしたイーストを使って、DNA の replication fork を安定化させる
タンパク質について調べていた。ChIP という手法を用いて、replication fork が不安定に
なったときに集まってくる特定のタンパク質の量が、時間の経過とともにどのように変化
するのかということについて調べていた。
・英語
話す方は特に不自由は感じなかった。困ったのはリスニングである。きれいな英語は聞き
取れるのであるが、訛りが入ると聞き取れなくなる。電車のアナウンスや博物館のガイド、
ニュースキャスターなどのきれいな英語は聞き取れた。しかし、普段周りの人としゃべっ
ていると、いろいろな国の出身の人がそれぞれの訛りを持ってしゃべるので、リスニング
は結構しんどかった。渡航前にネットや iPod で BBC のニュースを聞くなりして、練習し
たつもりだったが、訛りのある英語を聞く練習はしていなかった。最後の方は結構慣れて
きたが、リスニングが課題であるなと思った。周りの人の会話が聞こえないと、会話に入
っていくことができない。買い物での店員の英語が聞き取りづらいこともしばしばだった。
まあ、買い物の際は雰囲気でわかるのだが。
最後に
今回の留学は、5 週間という短い期間であったが、非常に貴重な経験を数多くすることが
できた。留学に行って本当によかったと思っている。機会があればまた行きたいと思って
いる。海外の文化に触れることで、いろいろと見えてくるものもあるので、留学に行って
みることを薦めたい。最前線の研究と、海外の文化に触れることの両方ができて、一石二
鳥である。
渡航前に武田先生もおっしゃっていたが、現地の環境に慣れるのに時間がかかるので、6
週間は行った方が良いと思う。それよりも長い期間がとれるならば、それにこしたことは
ない。時差ボケが直るのに 1 週間かかり、ラボに慣れるのにもう1,2週間かかったので、
実験のリズムが良くなってきたのは 3,4 週目くらいからであった。