いい病院 2007年

く れ る医師 や病 院を選 ぶ こと が重
要 です ﹂
験 に基 づ いて、 きち んと説明 し て
﹁
頭を開け る手 術 だけ に、数多く
の異 な った症 例を扱 った豊富 な経
都 立府中病院 脳神経外科 部長 の
水谷徹 医師 は、 こんな話 をす る。
選 べば いいのだ ろう か。
未破 裂 の手術 の内 訳も記載 したが、
って、瘤 の根 元を チタ ン製 など の
クリ ップ ではさ み、血流を断 つ。
、
0
脳血管内 治療 ︵
2否︶と比 べ 頭
の中を直接見 な がら手術 をす るた
方法 とし て確 立 し て いる のは、 ク
約 5割 が死亡す る。命 をとり と め
め確 実性 があり、術中 に脳動脈瘤
が破 裂 し ても直 ち に対応 でき る メ
リ ットがあ る。 しかし、頭蓋骨を
リ ツピ ング手 術 だ。 開頭手 術 によ
が ん、心臓病 と並 ん で、 日本人
ても、重篤 な後遺症 が残 る こと が
多 い。発症 したら 一刻も 早 い治療
が必要 であ る。
切 って頭を開け る手術 は患者 の負
担 が大きく 、脳 や神経 、血管 を損
脳動脈瘤開頭術
の3大死因 の 一つであ る脳卒 中。
3万人 が亡く な るこ の病気
年 間約 1
は、 脳血管 の中 が詰 ま って起 こる
脳動脈瘤 と は、 そ のくも膜 下出
血 の原因となり かねな い病気 だ。
き、合併 症 や後遺 症 が 4%、死亡
率 が 0 ・8%あ る開頭手 術を、く
も膜 下出 血 の予防 のた め に受 け る
か ど う か。ま た、破 裂 の可 能 性
どう かも判断 が難 し い。脳動脈瘤
が見 つかり、 不安 に思う患者 さ ん
には、精神安定 剤的 な意味 で の治
療 が必要 な ことも あ る のです﹂
16
2007
いい病院
医療機 関 によ つて比率 が大 きく異
な る のがわ か る。
では、患者 は何 を目安 に病院を
、脳内 部 で微細 な血管 が
﹁
脳梗塞﹂
、主要 な
破 れ て出血す る ﹁
脳出血﹂
脳動脈 の分岐点 など に でき る瘤 で、 傷す るおそれも あ る。複数 の脳動
放置す ると血流 の影響 など で膨 ら
み、破裂 し やすく な る。 い った ん
破 裂す ると、大 きな出血 に つなが
る のだ。
脳動脈瘤 が巨大 にな ると、頭痛
や視覚 障害 と い った症状 が現 れ る
ことも あ るが、通常、未破 裂 の状
態 では症状 はな い。 そ のため、 い
つ破 裂 し ても おかしく な い″
爆弾″
を抱え た状態 にな つても 、本人 は
︵
9ミ
ヴ以下 の脳動脈瘤 であ れば、
年 間 0 。7%程度 ︶と比較 し て、
ただ し、両氏 は未破裂 脳動脈瘤
を抱え る患者 に対 し て、﹁
必要 以上
脳動脈瘤 が見 つか ったと し ても、
の説明をし て、治療 を勧 め ること
があ ってはならな い﹂と強調す る。
脳ド ックなど の検査 で発見 され る
手 術をす べきな のかどう か、と い
と、瘤 の大き さ や形 、発症部位 な
う点 が患者 を悩 ま せ る。
ど様 々な要因 から危 険度を判断 し、
しかも 、ど の状態 で未破裂 脳動
それ に応 じ て治療 の必要性 が決 め
脈瘤 を手術す べき かは、病院 や医
多 く は緊急 を要す る疾患 ではな い。
じ っくり と判断 し てほし い。
ら れ る こと にな る。
現在 、脳動脈瘤 の標準的 な手 術
師 によ つても、考え方 が違う のが
実情だ。 ランキ ングには破裂後 と
病気 だと自覚す る こと が難 し い。
脈瘤 があ る場合 、治療す る部位 が
旭 川赤 十字病 院第 一脳神経外科
限ら れ ると いう デメリ ットもあ る。 部長 の上山博康 医師 は こう 言う 。
脳動脈瘤 が発見 さ れたと し て、
﹁
医者 や病 院選び はと ても重要 な
未破 裂 の状態 では自覚 症状も なく 、 のです が、
一概 にど の病 院 へ行 く
生活 上 は何 の支障 も な い。 そ のと
べきだと いう 基 準を作 る のは難 し
いし、ど の動脈瘤 に治療 が必要 か
血管 が破 れ、脳を覆うくも膜 の内
な か でもくも膜 下出血 は、初 回
0%、発症者全体 では
の出 血 で約 2
であ る。
側 に血 が広 が る ﹁
くも膜 下出 血﹂、
と いヽ
2 二つの疾患 の総称 だ。 いず
れも 死と隣り合 わ せ の恐 ろし い病
動脈瘤のク リッピング手術
1図
■
脳動脈瘤開頭術
全国ランキングTOP40
北海道旭川市
旭川赤十字病院
国立循 環器 病 センター
聖麗メモリアル病院
青森県立中央病院
秋田県立脳血管研究センター
静岡県伊豆の国市
日本医科大学千葉北総病院
済生会八幡総合病院
神奈川県伊勢原市
埼玉医科大学総合医療 センター
埼玉県川越市
NTT東 日本関東病院
17
担刊1朝 日
頭蓋内手術等 の うち、 ク リッピング術 など脳動脈瘤 に対する手術数 (2005年 1年 間)
でラ ンキング し、内訳 と して破裂脳動脈瘤 と未破裂脳動脈瘤 の手術数 を記 した
■
未破裂双方 の治療 に豊富な経験が
あ る。
5位 の順
ま た 、 開 頭 手 術 では、 1
天堂 大学 静 岡病 院 脳 神 経外 科 教授
の森 健 太 郎 医 師 が提 唱 す る キ ー ホ
鍵 穴手 術 =
ー ル ・ク リ ツピ ング ︵
剃 髪 せず 、切 開幅 2∼ 3彙ンで の小
開 頭 手 術 ︶ や、 6位 の国 立 循 環 器
病 センタ ー脳血管外科 の宮本享 部
長 ら による、開頭手術 と血管内 治
療 の複合 治療 など、病 状 に応 じ て
さまざ まな選択肢 があ る。
脳 の手術 は重 い後遺症 などを招
く 可能性も あ る。病状 に ついて詳
しく 説明 したう え で、幅広 い選択
肢を提 示し、治療 の選択 に ついて
相談 に の ってく れ る医師を選 ぶ ベ
2007
備 が充実 し て いる。主任 教授 の佐
野公俊 医師 は、
所在地 :旭 川市曙 1条 1丁 目 1-1
電話 :0166-22-3111
交通手段 :」 R旭 川駅からタクシーま
たは徒歩
病床数 :765床
常勤医師数 :110人
看護スタッフ数 :554人
脳動脈瘤手術 の主な執刀医 (個 人症
例数):
第一脳神経外科部長 上山博康 (91例 )=写 真
第一脳神経外科副部長 中村俊孝 (74例 )
第二脳神経外科副部長 瀧澤克己 (30例 )
佐藤正夫 (3例 )、 原田洋― (2例 )、 古明地孝
宏 (1例 )、 浅岡克行 (1例 )、 航 晃仁 (1例 )
きだ ろう 。
所在地 :熊 本市近見 5-3-1
電話 :096-351-8000
交通手段 :」 R熊 本駅からバスまたは
タクシー
病床数 :400床
常勤医師数 :128人
看護スタツフ数 :411人
脳動脈瘤手術 の主な執刀医 (個 人症
例数 ):
脳卒中センター部長 藤岡正導 (48例 )=写 真
脳神経外科部長 西 徹 (64例 )
脳神経外科医長 古賀一成 (38例 )
″
をつくらぬため
脳 動 脈 瘤 難 民〃
難手術に取り組む旭 川赤 十字病院
1-4-48
いい病院
今 ま で の多 く の経験 から破裂 し
﹁
やす いと考 え た症例 に ついて、患
民を つく り出す よう な ことを し て
者 さ ん の意思を尊 重 し つつ積 極的
はなりま せ ん﹂
ま た、 3位 の済 生会熊本病院 は、 に治療 にあた って います﹂
電話 :06-6568-1601
交通手段 :」 R難 波駅から徒歩
病床数 :306床
常勤医師数 :30人
看護スタツフ数 :190人
脳動脈瘤手術の主な執刀医 (個 人症例数):
理事長 富永紳介 (121例 )=写 真
副院長兼脳神経外科部長 長谷川洋 (34例 )
脳神経外科副部長 山里景祥 (23例 )
脳神経外科副部長 乾 敏彦 (52例 )
脳神経外科副部長 久保重喜 (32例 )
脳神 経外科 チー ム のスタ ッフや設
203例
旭 川赤十 字 病院
199例
ランキ ング ー位 は前年 に引き続
き富永病院 。手 術数 の内 訳 でわか
るよう に、未 破裂 脳動脈瘤 の手 術
脳卒 中治療 で最先端 地域 と いわれ
る熊本市 の中心的存在 。脳卒中 セ
と話 す。
ランキ ングを見 ると、上位 の病
に積 極的 に取 り組 む病院 だ。
他 院 で断 られ るよう な難 し い手
262例
済生会熊本病院
院 に東京 など首 都圏 の病院 が少な
ンター部長 の藤 岡正導 医師 は、
術 でも、積極的 に手 がけ、好成績
いこと がわか る。脳動脈瘤 を含 む
手 術 の適応 は慎重 にす べき です
﹁
を残 し て いる のが 2位 の旭川赤 十
が、破裂 したとき の悲惨 な状況を
脳卒中 の治療 にお いて、東京 など
字病院 の上山博康 医師 。 クリ ッピ
は症例数 が分散 し てノ ウ ハウ の蓄
ング手 術 と い っても 、 瘤 の形 状 や
考え ると、家 族歴 やさまざ ま な要
お寒 い″状 況
積 など が進 まな い、″
因を考慮 し て積 極的 に手 術を し て
大 き さ に よ ってさ ま ざ ま で、 ク リ
180で の
ツプ が か け にく いな ど 難 し い症 例
と いわれ て いる のだ ︵
いく こと が大事 です﹂
。
特集記事参 照︶
と話 す。静脈 温存 など、患者 に
も あ る。
そ んな東京郊外 を カバーす る拠
﹁
簡 単 な動 脈 瘤 ば か り を 手 術 し て、 負 担 の少 な い開頭手 術 が評判だ。
0位 の都立府中 病院 。
4位 の藤 田保 健衛生大学病院 は、 点病 院 が、 1
難 し い部 位 の瘤 や大 き い瘤 は経 過
救命救急 セ ンターも あり、破裂、
所在地 :大 阪市浪
観 察 す るな ど と いう 、 脳 動 脈 瘤 難
1
富永 病 院
Best 3
破裂脳動脈瘤は手術すべきか
体 に賣 鬱鍮魃撞を与 え鶴炒蜀朧釉季籠
適慮 の第針 餞聰隋 鐘議 ってば穆鐵 うだ
7
5ミ
以後毎
2 リ以上 では初年度 1% ︵
年 1 ・2%増加 と
と いう デー タが発表 された。大
脳 ド ックなど で未破 裂脳動脈瘤
が見 つか ったと き、重要 な のが、
破 裂 の可能性 を考慮 し て手術適 応
き さが ︲彙ン未満 のう ち は、それ ほ
ど高率 には感 じら れな い。
ま た、都立府中病院 の水谷徹 医
。
っ
船 と大きな風船を 同じ大き さ に膨
そも ガ ド ラ
ち
ま
ち
そ
も
て
ま
イ
らま せた場合 、どちら が破裂 し や
イ ン自 体 が、 かなり いい加減 な の
す いか考 え てみ てく だ さ い﹂
です。単 な る大き さ によ る適 応決
さら に脳動脈瘤 の表 面積 の広 さ
定 であ ったり、患者 の年 齢も単 に
手 術合併症を考慮 したり したも の。 や、先 天的 に血管 の弾力 が弱く破
裂 し やす いケー スが多 い若 い患者
の場合も考慮 す べきだと いう 。
病気 にな る前 の生活 習慣 への考慮
が不足 し て いるなど、現実的 には
不備 なも のです﹂
師 は、 い
﹂
う話 す。
上山医師 は、瘤 がど の血管 に発
開頭手術 に向 いて いる脳動脈瘤 、
生 したかを問題 にす べきだと話 す。 ﹁
脳血管内 治療 が優先 のも のなど、
﹁
たとえ ば、内頸動脈 の大 さはお
さまざ まな適応 があ る ので、 血管
型父通動脈 は 1
よそ 6が です が、一
内 治療 の医師 と クリ ッピ ング の医
∼ 2ぼ程度 です。 同 じ 5ぼ の動脈
瘤 でも発生 した血管 以下 のも のと、 師 が議論 し て決 め る のが理想 。自
をどう 決 め るかと いう ことだ。
日本脳 ド ック学会 が 2003年
本誌 は調査 の際、治療 の適応方
日本
針 に ついても病 院 に尋ねた。﹁
脳 ド ック学会 のガイ ド ライ ンに従
って いる﹂と の回答 が多く を占 め
血管 の数倍もあ る動脈瘤 があ る こ
担 を加え る。脳 ド ック で見 つか っ
未 破裂脳動脈瘤 は、 予防的な治
療 にも かかわらず 、体 に大きな負
め て、各 病院 に情報 開示を促 すと
い った ことも 必要 だ ろう 。
悪化 した症 例数 の比率 の基準を定
治療 し ても しなく ても、 そ の後 に
る医師 が いると したら問 題 です﹂
未 破裂脳動脈瘤 を診断 した場合、
分 が手術 できな い症例を適 応外 と
し て、他 院 へ紹介も せず に放置す
た が、中 には、﹁
脳 ド ックによ って
と になります。も とも と小 さな風
部位 や形状 そ の他 の要 因を考慮 せ
動脈瘤 を手術適応 と し て症 例数を
微 小と いう だけ で、
稼ぐ ﹂病 院 や ﹁
発見 さ れた破裂 の可能性 が低 い脳
に制定 した ガイド ライ ンには、
﹁
最大径 が 5ぼ前 後 より大きく 、
、
年 齢 がほ ぼ0
7歳 以下 で そ の他 の
条件 が治療 を妨 げな い場合 は手 術
、
的治療 が勧 めら れる。 こと に0
1デ
前後 より大き い病変 には強く勧 め
られ るが、 3、 4ド の病変 、また
0歳 以上 の場合 にも 、脳動脈瘤 の
7
大き さ、形 、部位、手 術 のリ スク、
ず に放置 し てしまう ﹂病 院 があ る、
患 者 の平均余命 などを考慮 し て個
と いう 指摘もあ った。
別的 に判断 す る﹂
破
ランキ ングに入 った病 院 の ﹁
とあ る。 かなり小 さめ の瘤 でも 、
裂﹂﹁
未破 裂﹂の内 訳 からも、実 際
には病院 によ つて手 術適 応 の方針
たなら、そ の結果を厳 しく精査 し、
患者 の立場 で厳密 に適 応判断す る
ことを病 院 や医師 に望 みた い。
宮坂 洸
19
手 術 を勧 め て いる。
一方 、未破裂脳動脈瘤 の年 間破
は異 な って いる のが明白 だ。
裂率 は、研究 によ って多 少異 な る
こ の状 況 に苦 言を呈す る のは、
が、 2年 の国際 脳卒 中会 議 では、
0
旭 川赤 十字病院第 一脳神経外科 部
﹁2∼ 6が では O ol%、 7∼ 9
0 4
長 の上山博康 医師 だ。
∼
が では O o7%、 1
2が では初
、 ﹁ガイド ライ ンの解釈 は医師 によ
年 度 7% ︵
以後毎年 1 ・1%増加 ︶
)
顕微鏡 を見 ながら開頭 クリッピング手術 をする
水谷徹医師 (者 F立 府中病院で