NDIS3415「設備及び装置の目視点検方法」 - 日本非破壊検査協会

NDIS意見受付
NDIS 3415 原案作成委員会
このNDISは「日本非破壊検査協会規格(NDIS)制定等に関する規則」に基づき関係者
にNDISの制定前の意見提出期間を設けるために掲載するものです。
意見は規格原案決定の際の参考として取り扱いさせていただきます。
掲載されているNDISについての意見提出は下記メールアドレスまでお願いいたします。
意見受付締切日:2014 年 10 月 17 日(金)
意見提出先:Email
[email protected]
日本非破壊検査協会規格
NDIS 3415:XXXX
設備及び装置の目視点検方法
Method of visual check for facilities and equipment
日本非破壊検査協会規格
NDIS 3415:2014
設備及び装置の目視点検方法
Method of visual check for facilities and equipment
適用範囲
1
この規格は,設備及び装置の目視点検を実施する場合の方法について規定する。
引用規格
2
次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成する。これらの
引用規格は,その最新版(追補を含む。
)を適用する。
JIS Z 2300 非破壊試験用語
NDIS 3413
非破壊検査技術者の視力及び色覚の試験方法
用語及び定義
3
この規格で用いる主な用語の定義は,JIS Z 2300 によるほか,次による。
3.1
目視点検
視覚などによって,設備及び装置の異状,変化,漏れなどの有無をチェックリストに従って確認するこ
と。
4
点検技術者
次に述べる 2 条件を満足しなければならない。
a)
視力は,遠方視力 0.7 以上かつ近方視力は 30 cm の測定距離で Times Roman(Times New Roman)N6,
又は Jaeger Number J2 相当以上であること。色又は無彩色のコントラストの判定を必要とする点検を
行う場合は,色覚が正常であること。それら試験方法は,NDIS 3413 による。また,聴覚の規定が必
要な場合は,当事者間の協議により規定するものとする。
b)
点検を実施する設備及び装置を熟知し,想定される異状などに関する必要な知識をもつこと。
5
点検手順
点検の対象物ごとに箇条 6 から箇条 10 の内容を記入した点検手順を作成する。
6
事前調査
点検を実施する前に次に述べる項目について設備及び装置ごとに事前調査をする。
a)
設備,装置に発生する異状現象を想定しておく。
b)
高い応力を受け,変形,き裂発生などが予想される箇所を想定しておく。
-1-
c)
環境条件,使用年数などにより,腐食,疲労,クリープなどの発生箇所を予測しておく。
d)
過去の点検記録,前回からの運転記録,運転中に発生した異状記録。
7
チェックリスト
点検する設備又は装置ごとに,必ずチェックリストを作成する。チェックリストには,点検順序に従っ
て,次の項目などを具体的に明示する。
a)
点検箇所
設備又は装置ごとに点検箇所を明確に記載する。
b)
点検項目
重要部分の表面状況及び変形,き裂発生の有無,軸受・減速機の音及び温度,作動部の状
態,取付けボルトの弛み,計器の指示値などの点検箇所ごとに点検項目を具体的に明示する。
c)
点検時期
運転中点検又は停止時点検の別を明記する。両者を取り違えると危険をともなう恐れがあ
るばかりでなく,点検の目的を達成できない場合もあるので注意する。
d)
点検方法
具体的な点検方法を明記する。目視による観察,手をあてて振動又は温度を調べる,テス
トハンマーで調べる,聴音棒で音を聞くなど,具体的な方法を記載する。
e)
点検周期
点検周期として,1 回/日,1 回/週,1 回/月などを明確にしておく。
f)
点検基準
点検した結果の判断ができる基準を明確に記載する。
g)
測定具
点検の際に携帯する測定具を記入しておく。
h) 補助具 点検に際して,拡大鏡(ルーペ)
,内視鏡,双眼鏡,望遠鏡,カメラ,などの光学的補助具を
用いる場合は,それらを記入しておく。
なお,テストハンマー,聴音棒などの聴音的補助具を用いる場合は,それらも追記する。
i)
処置方法
8
点検の実施
点検した結果,判断基準に基づいて判定した結果の処置方法を明確に決めておく。
あらかじめ定められた点検順序及びチェックリストに従って,設備及び装置などの異状及び変化の有無
を点検し,点検結果をチェックリストに記載する。
9
報告書
報告書には少なくとも次に挙げる項目を記録する。
a)
試験体の名称
b)
目的とする対象事項の名称と許容値
c)
点検日時及び点検実施場所
d)
発見した異状(きずなど)の位置・名称,形状寸法,個数,必要に応じて記録写真など
e)
異状発見時の処置
f)
使用した補助具名
g)
点検技術者氏名
10 保管
点検を実施した年月日,点検技術者名,点検結果を記録したチェックリストを必要な期間保管する。
-2-
NDIS 3415:2014
設備及び装置の目視点検方法
解 説
この解説は,規格に規定・記載した事柄を説明するもので,規格の一部ではない。
この解説は,一般社団法人日本非破壊検査協会が編集・発行するものであり,これに関する問合せ先は,
一般社団法人日本非破壊検査協会である。
1
今回の改正までの経緯
社団法人日本非破壊検査協会(以下、JSNDI という。
)では,1989 年から次の 8 件の日本非破壊検査協
会規格(以下,NDIS という。)が制定された。
NDIS 3202:1996 目視試験用補助具
NDIS 3403:1996 型取法による表面のきず及び形状の測定方法
NDIS 3412:1996 表面きずの写真撮影方法
NDIS 3413:1989 非破壊試験技術者の視力,色覚及び聴力の試験方法
NDIS 3414:1989 目視試験方法通則
NDIS 3415:1989 目視点検方法通則
NDIS 3417:1991 光学機器による目視試験方法
NDIS 3501:1996 目視試験による表面きずの表示分類基準
2005 年に JSNDI の標準化委員会目視専門別委員会で,目視試験に関連するこれらの NDIS の全体的な
見直し・再整理が行われた。上記規格のうち NDIS 3413 は,他の規格とは独立しており,その内容が他の
JIS などの規格に引用され整合性が要求されてきていたため,先行して改正された。その他の規格につい
ては,それぞれの規格の関連性及び位置づけを解説図 1 に示すように整理し,NDIS 3414(目視試験方法
通則)及び NDIS 3415(目視点検方法通則)を基軸に,観察,測定及び記録のための補助具並びにきずの
分類方法を加え,統合が図られた。
NDT 全般
3413(視力,色覚及び聴力)
MT 及び PT を含む
3412(写真撮影方法)
3414(目視試験方法通則)
3415(目視点検方法通則)
3202(補助具)
表面きずを対象
3501(表面きずの分類方法)
3403(型取法)
3417(光学機器)
解説図 1―目視試験に係わる規格(NDIS)の関連性及び位置づけ
-3-
審議の過程で,一般に,目視試験は,材料,加工品及び製品を対象として,きず,腐食,変形,変色,
図面との相違,その他の異常,漏れなどを検出する試験として定義されるのに対して,目視点検は,設備
及び装置を対象として,表面状況,変形,き裂,音,温度などの異常部を検出することとして定義されて
いることを考慮して,目視試験と目視点検を別規格とすることとし,2006 年に NDIS 3415(目視点検方法
通則)を「設備及び装置の点検方法」としてこの規格が制定された。
今回の改正は,JSNDI の標準化委員会目視専門別委員会のメンバーを中心として,NDIS 改正原案作成
委員会を組織し,NDIS 原案を作成した。
今回の改正の趣旨
2
これまで,
「点検技術者」及び「補助具」において,NDIS 3414(目視試験方法)とつながりをとってい
たが,それらを排除し,独立性をもたせた。
主な改正点
3
今回の主な改正点を次に示す。
表題,1 適用範囲,3 用語及び定義,4 点検技術者,5 点検手順 表題,適用範囲,用語及び定義で
a)
は,「目視点検」とし,それ以外は「点検」とした。
b)
2 引用規格 NDIS 3414(目視試験方法)を削除した。
c)
4 点検技術者 目視試験技術者に関する文書を削除した。
d)
7 チェックリスト,h) 補助具
別項目として記載されていた「補助具」をチェックリストの項目に繰
り入れ,NDIS 3414(目視試験方法)の附属書からの引用を削除した。
審議中問題となった事項など
4
今回の改正で問題となった主な事項は次のとおりである。
前回の改正時の審議で,
「表題」及び「適用範囲」では「点検」を用いることとし,それ以外は「目視点
検」を用いることとした。この件については今回も審議の対象となり,
「点検」だけでは,定期点検など広
い意味に捉えられかねず,また,点検の主体は目視であり,聴覚による点検などは副であるので,
「目視点
検」が相応しいとの意見が多く寄せられた。審議の結果,規格全体の内容を表す「表題」及び「適用範囲」
,
並びに「用語及び定義」には「目視点検」を用いることとし,それ以外の個所については「点検」を用い
ることとした。
懸案事項
5
2006 年のこの規格の制定時に,近方視力の要求事項に関して,小数視力の採用と Jaeger 視力表による評
価方法の問題点の提示(下記 a)~d))があり,議論された結果,今後の検討事項となった。JIS Z 3413(非
破壊検査技術者の視力及び色覚の試験方法)の改正で,小数視力による近方視力の評価が採用されたこと
により,目視試験技術者の近方視力を小数視力によって規定することも可能となったが,今回の改正に当
たって,上記の検討事項についての結論が得られなかったため,従来どおり,Times (New) Roman 活字又
は Jaeger 視力表による方法のままとした。これらの検討事項については,JSNDI の標準化委員会目視専門
別委員会で引き続き検討していくこととした。
5.1
Jaeger 視力表による近方視力と分数視力又は小数視力による近方視力の対応
一般に,Jaeger 視力表には指標ナンバー(J1,J2 など)の他に,指標の大きさに対応する視角 5 分にお
-4-
ける距離(in.)が数値として併記されている。J2 に併記されている数値は 20 であり,測定距離を 12 in.
(30 cm)とした場合,分数視力で表すと 12/20(≒20/32:測定距離 20 ft での視力との対応で表した場合)
となり,小数視力で表せば 0.6 である。
近方視力の測定距離
5.2
近方視力の測定距離は,年齢又は個人差で,長くすることで見え難くなるとは限らず,かえってよく見
える場合もあり,近方視力の測定距離は固定せず,幅をもたせるべきとした報告もある。
単眼,両眼での視力
5.3
一般に,単眼よりも両眼の方が視力が勝っているとの認識で,単眼については付帯的に記載している場
合が多いが,左右の視力が大きく異なる場合,また,乱視の場合などでは,単眼の視力が両眼の視力より
勝ることがある。
小数視力の優位点
5.4
小数視力は,Landolt 環のすき間の視角(分)の逆数(単位:1/degree)として求められることから,そ
の値を基に空間周波数(単位:cycles/degree)を計算できる。空間周波数より line pair(ラインペア)値へ
の換算が可能となり,要求される視力を小数視力で与えることにより,将来的な目視試験の間接化及び自
動化といった対応にも分解能の要求値を計算で与えることが可能となる。
その他の解説事項
6
6.1
点検技術者の視力
目視点検では,設備類の形状・機能の不具合の検出を目的とした距離をおいた観察と表面きずの検出を
目的とした至近距離からの観察を必要とすることから,遠方視力と近方視力を規定した。
6.1.1
遠方視力
遠方視力については,我が国で広く用いられている小数視力(0.7,1.0 など)を採用し,一般の自動車
の運転に支障がないとされる視力にならって 0.7 以上とした。
6.1.2
近方視力
近方視力については,非破壊試験の分野で普及している Jaeger 視力表又は JIS Z 2305(非破壊検査技術
者の資格及び認証)で採用している Times (New) Roman 活字を用いることとし,目視点検ではサブミリオ
ーダーのきずの検出まで要求されることはないため,要求する視力を,Jaeger 視力表を用いた場合は J2,
Times (New) Roman 活字を用いた場合は 6 ポイントとした。
6.2
目視点検手順
設備及び装置の点検において重要なことは,具体的にどのような手順で点検を実施するかである。しか
し,具体的手順は対象とする設備,装置の種類により異なるため,次項以降に具体的手順として必要な項
目だけを記載することとした。なかでも,事前準備(箇条 6)及びチェックリスト(箇条 7)は重要である
ことから,これらについてはさらに小項目を記載に入れた。
-5-