別紙 諮問第313号~第314号、第316号~第317号、第322号、第328号~第 330号、第334号~第335号、第340号~第343号、第351号~第352号、 第354号~第358号、第361号、第369号~第372号、第464号、第478 号~第482号 答 1 申 審査会の結論 別表に掲げる本件開示請求1から 32 については、権利の濫用として本来却下すべき ものであるが、不存在を理由として非開示とした決定は、いずれも取り消すべきものと は認められない。 2 異議申立ての内容 (1)異議申立ての趣旨 本件異議申立ての趣旨は、東京都個人情報の保護に関する条例(平成2年東京都条 例第113号。以下「個人情報保護条例」という。)に基づき、異議申立人が行った別表 に掲げる本件開示請求1から32に対し、東京都知事が行った別表に掲げる非開示決定 について、それぞれその取消しを求めるというものである。 (2)異議申立ての理由 異議申立書における異議申立人の主張を要約すると、以下のとおりである。 決定の取消しを求める。 3 異議申立てに対する実施機関の説明要旨 理由説明書における実施機関の主張を要約すると、以下のとおりである。 本件各請求個人情報について、実施機関では作成及び取得していないため、それぞれ 不存在による非開示決定を行った。 - 1 - 4 審査会の判断 (1)審議の経過 審査会は、本件異議申立てについて、以下のように審議した。 年 月 日 別表のとおり 審 議 経 過 諮問 平成25年12月19日 審議(第140回第二部会) 平成26年 1月28日 審議(第144回第一部会) 平成26年 1月30日 審議(第141回第二部会) 平成26年 1月31日 審議(第80回第三部会) 平成26年 2月26日 審議(第145回第一部会) 平成26年 2月27日 審議(第142回第二部会) 平成26年 2月28日 審議(第81回第三部会) 平成26年 4月15日 審議(第146回第一部会) 平成26年 4月17日 審議(第143回第二部会) 平成26年 4月24日 審議(第82回第三部会) 平成26年 4月24日 審議(第80回総会) (2)審査会の判断 審査会は、実施機関及び異議申立人の主張を具体的に検討した結果、以下のように 判断する。 - 2 - ア 審議の併合について 別表に掲げる各諮問については、異議申立人が同一人であること及び異議申立て の趣旨が同様であることから、審査会は、これらを併合して審議することとした。 イ 本件請求個人情報について 本件異議申立てに係る各請求個人情報について、実施機関は別表に掲げる情報と 解して、それぞれ不存在を理由とする非開示決定を行った。 ウ 異議申立人に係る開示請求等の経過について (ア)開示請求及び不服申立ての状況について 異議申立人は、平成 22 年度から実施機関における多数の部局に対して、東京 都情報公開条例(平成 11 年東京都条例第5号。以下「情報公開条例」という。) に基づく公文書の開示請求並びに個人情報保護条例に基づく保有個人情報の開 示請求、訂正請求及び利用停止請求を多数行っており、それらに対する決定の多 くに不服申立てを行ってきた。 異議申立人がこれまでに行った各請求に対する開示・非開示等の決定件数は、 平成 22 年度から 25 年度までの合計で 762 件にも及び、これを年度別にみると、 平成 22 年度は公文書及び保有個人情報の開示請求に係る決定が合わせて7件、 平成 23 年度は公文書の開示請求及び保有個人情報の開示・訂正請求に係る決定 が合わせて 233 件、平成 24 年度は保有個人情報の開示・訂正・利用停止請求に 係る決定が 333 件、平成 25 年度は保有個人情報の開示請求に係る決定が 189 件 となっている。 また、異議申立人が平成 22 年度から 25 年度までに行った不服申立ての件数は、 情報公開条例に係る決定に対するものが 40 件、個人情報保護条例に係る決定に 対するものが 267 件で、合計で 307 件となっている。 (イ)請求内容及び不服申立て理由について 審査会が異議申立人の開示請求書、異議申立書又は審査請求書(以下「不服申 立書」という。)、意見書等の記載内容を見分したところ、異議申立人の請求内容 は、実施機関の行う一般的な事務処理や事務手続の根拠条文を求めるなど、個人 - 3 - 情報保護条例における個人情報に該当しないものであるか、仮に個人情報に関わ るものであると解した場合であっても、開示請求に係る事務事業が実施機関の所 管ではないことが明白なものであるなど、実施機関に保有個人情報として存在し ないことが明らかな情報の開示を求めるものが多数見受けられる。 審査会はこれまでに、上記内容に相当する開示請求に係る不服申立て事案につ いて、実施機関の不存在を理由とした非開示決定が妥当又は本来開示請求を却下 すべき旨判断してきている。 また、実施機関の説明によると、異議申立人の不服申立書や意見書等の記載内 容から、異議申立人は何らかの形で東京都を関与させることにより自身と第三者 との私的紛争を有利に解決したいという意図がうかがえ、異議申立人の意図する ところと異なった対応を実施機関が行った場合には、本来は個別の事務事業の相 談等により解決すべきものと考えられる滞納や未払いの処理といった問題につ いてまで、異議申立人は個人情報保護条例に基づく開示制度を利用して、制度の 趣旨目的とは異なる旨を実施機関が説明したにもかかわらず、多数の開示請求を 行っているとのことである。 審査会が見分したところ、実施機関の上記説明内容に相当するものと解される 開示請求書を異議申立人が多数提出している事実が確認できた。 さらに、実施機関が請求に係る保有個人情報の全部を開示する決定を行った事 案に対する異議申立人の不服申立てにおいては、開示請求書に記載された請求内 容と不服申立書において主張する請求内容が明らかに異なるものに変遷してい ると認められるなど、不服申立ての趣旨内容が不明であり、審査会に提出された 意見書についても、大半が当該不服申立て事案とは直接関係のない自身の民事訴 訟に係る主張や他の自治体、機関等における職員の対応に対する不満等が記載さ れていることが認められた。 (ウ)請求時における補正拒否等の状況について 実施機関の説明によると、異議申立人の提出する開示請求書は、記載内容が抽 象的かつ意味不明なものが大半であるため、開示請求において対象保有個人情報 の特定を行うための補正が必要であるが、請求書の受付時に実施機関が補正を要 請しても、自己の主張を繰り返すのみで具体的な特定ができない事案が非常に多 - 4 - いとのことである。 実施機関が対象保有個人情報を特定するための具体的な内容を記載するよう 補正を求めた複数の開示請求では、異議申立人は実施機関の要請等を聞き入れず、 「対象保有個人情報は実施機関の職員が決めろ。」、「分からなくても何とかし ろ。」、 「特定できないなら不存在だ。」などと発言し、自己の主張が受け入れられ ない場合には、大声で実施機関の職員の説明を遮り、開示請求書を置いて立ち去 る等の事例もあったとのことである。 審査会が確認したところ、実施機関が作成した異議申立人の開示請求に係る補 正の経緯についての記録には、上記説明内容に相当する事実が記載されているこ とが認められた。 (エ)個人情報とは解されないものに対する開示請求について 情報公開制度と個人情報保護制度はそれぞれ趣旨目的の異なる別個独立の制 度であり、それぞれ開示請求の対象となる情報についても異なるものであって、 情報公開制度においては情報公開条例で「公文書」と規定され、個人情報保護制 度においては個人情報保護条例で「実施機関が保有する自己を本人とする保有個 人情報」と定められているところである。 実施機関の説明によれば、明らかに個人情報とは解されない情報に対して異議 申立人が個人情報保護条例に基づく保有個人情報の開示請求を行った際に、開示 請求の対象とはならない旨を異議申立人に繰り返し説明し、情報公開条例に基づ く公文書の開示請求に切り替えるよう求めたが、異議申立人は、情報公開条例に 基づく公文書の開示請求には閲覧の際に所定の手数料が必要とされているので、 閲覧が無料である保有個人情報の開示請求しか行わない意思であるから、個人情 報保護条例における自己を本人とする保有個人情報には該当しないと実施機関 から説明されても公文書の開示請求に切り替えるつもりはなく、却下するならす れば良いとする旨主張する事例が複数あったとのことである。 審査会が確認したところ、実施機関が作成した異議申立人の開示請求の受付に 係る記録には、上記説明内容に相当する事実が記載されていることが認められた。 - 5 - (オ)特定の職員に対する誹謗や中傷と解される開示請求について 実施機関の説明によると、開示請求の受付時等における実施機関の職員の対応 が異議申立人の意に反する場合において、異議申立人が当該職員を名指しして誹 謗した内容の開示請求を繰り返し行った事案や、異議申立人に対する通知書等に 発送の担当者として職員の氏名が記載されている場合において、異議申立人が当 該文書の記載内容に不満を持ち、当該職員を名指しして中傷するような内容の開 示請求を行った事案も存するとのことである。 これらの開示請求については、本来行政に対する苦情や相談という方法により 行うべき内容のものであると実施機関は説明しており、審査会は、平成 23 年度 から 25 年度の間に、異議申立人から同種のものと解される開示請求が 30 件以上 行われている事実を確認した。 (カ)形式要件に不備がある訂正請求について 実施機関の説明によると、異議申立人は、自身の個人情報に対する訂正請求も 多数行っているが、その内容は個人情報保護条例 18 条1項で定める「事実の誤 り」に関するものではなく、また、個人情報保護条例 19 条2項では「訂正請求 をしようとする者は、当該訂正を求める内容が事実に合致することを証明する書 類等を提出し、又は提示しなければならない。」と規定しているところ、異議申 立人は当該証明書類等を提出しない、あるいは全く関係のない書類等を提出した とのことである。 審査会は、これまでの不服申立て事案において、異議申立人が個人情報保護条 例 19 条2項に基づく証明書類等を提出していない事実を含め、実施機関の上記 説明が是認できるものであることを確認した。 (キ)制度の不適正な利用と業務への著しい支障について 実施機関の説明によると、異議申立人の開示請求に対して実施機関が開示又は 一部開示の決定を行った情報について、異議申立人が閲覧を行っていないものが 平成 25 年度末時点で 142 件あるとのことである。 また、異議申立人は平成 23 年度から 25 年度までの間に、実施機関の一つであ る警視総監に対して、自身に関する 110 番処理簿及び自身の申し出た苦情等に係 - 6 - る広聴処理票の開示請求及び訂正請求を合わせて 487 件行っているが、実施機関 の説明によると、異議申立人は警視庁に苦情の申出等を行った場合にこれらの公 文書が作成されることを認知しており、そのことを前提として、都内の警察署等 において多数の苦情の申出等を行った上で、警察官の対応への不満等を理由とし た開示請求及び訂正請求を短期間に大量に行っているとのことである。その結果、 実施機関は、著しい業務への支障が生じている旨説明する。 審査会が調査したところ、平成 25 年度に異議申立人に対し一部開示決定等の 処分がなされた 153 件の広聴処理票のうち、136 件が平成 25 年2月7日から同月 18 日までの 12 日間に開示請求されているものであることが確認できた。さらに、 上記 153 件の広聴処理票について、不存在を理由として非開示決定とした 14 件 を除く一部開示決定の 139 件に対して、異議申立人は閲覧を行っていない事実が 認められた。 また、平成 24 年7月 10 日から同月 31 日までの 22 日間に 23 件、同年 12 月6 日及び同月 11 日の2日間で 28 件の訂正請求を行っている事実が認められた。 エ 本件各請求について (ア)個人情報保護条例の趣旨について 個人情報保護条例1条は、条例の目的として「保有個人情報の開示、訂正及び 利用停止を請求する権利」を明らかにするとともに、「都政の適正な運営を図り つつ、個人の権利利益を保護すること」にある旨を規定しており、この目的を達 成するため、12 条以下で、何人に対しても、実施機関が保有する自己を本人とす る保有個人情報の開示、訂正及び利用停止を請求する権利を認めている。 (イ)権利の濫用について 個人情報保護条例における保有個人情報の開示請求等の権利は、個人の権利利 益を保護する観点から最大限尊重されるべきものであるが、その権利は無制限で はなく、都政の適正な運営を図るという条例の趣旨目的に沿って、適正に行使さ れなければならないことは明らかである。 したがって、外形上は権利の行使のように見えるが、具体的事案に即してみる と、条例によって設けられた制度の趣旨目的から明らかに逸脱していると解され - 7 - る場合については、正当な権利の行使、制度の利用として是認することができな いものであり、権利の濫用と解すべきものである。 (ウ)本件各請求と権利の濫用の該当性について 前記のとおり、異議申立人は、社会通念上、本人の権利利益の保護にとってお よそ必要とは解されない内容の開示請求及び実施機関に異議申立人の求める保 有個人情報が存在しないことを前提とした開示請求を大量に繰り返し行ってい る事実が認められ、これらの中には、明らかに個人情報保護条例上の保有個人情 報ではない情報についての開示請求が多数含まれている。 また、異議申立人は、実施機関の不存在を理由とする非開示決定の多くに対し て不服申立てを行うとともに、開示や一部開示の決定があった保有個人情報につ いては閲覧を行わないものが多数存在するなど、個人情報保護条例上の開示請求 や行政不服審査法(昭和 37 年法律第 160 号)に基づく不服申立制度の趣旨目的 を逸脱した利用を行っている状況が認められる。 このような異議申立人の開示請求等に対し、実施機関は適正な対応に努めてい るものと認められ、多数の開示請求等や不服申立てにより、実施機関における円 滑な行政事務の遂行に著しい支障や停滞が生じている状況が確認された。 上記のような状況は、本件各請求についても同様に認められるところであり、 開示請求等の権利が最大限尊重されるべきことを考慮したとしても、異議申立人 による本件各請求は、もはや個人情報保護条例に基づく制度の趣旨目的を逸脱し たものと言わざるを得ず、審査会としては、権利の濫用であると解し、その情報 の存否、開示の可否等を判断するまでもなく、請求を却下すべきであると判断す る。 オ 本件各請求個人情報の不存在を理由とした非開示決定の妥当性について 本件各請求については、前記エで判断したとおり権利の濫用として本来却下すべ きものであるが、実施機関が不存在を理由として非開示とした各決定は、請求に係 る情報について開示することを要しないという点において、いずれも取り消すべき ものとは認められない。 - 8 - よって、「1 審査会の結論」のとおり判断する。 (答申に関与した委員の氏名) 秋山 收、横山 洋吉、浅田 乳井 昌史、山田 洋、渡辺 登美子、神橋 忠嗣、鴨木 - 9 - 一彦、隅田 房子、寺田 憲平、中村 麻佑、前田 晶子、 雅英
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