環境配慮型商品【船舶用塗料】 特集 環境に配慮し、最先端の機能を持つ 船舶用塗料が世界から高い評価を受けています 日本ペイントのグループ会社である日本ペイントマリン (株) では、 2004 年から単独で 世界展開を進めています。 世界的に環境問題への関心が高まる中、 環境に配慮し、 かつこれまでにない 機能を備えた日本ペイントマリンの船舶用塗料が、 世界の船主や造船会社から高い評価を受けています。 膜の厚さを目視で確認でき、 船体を守る塗料 見え、一定の色が付けば規定の膜厚になるという最先端のSI テクノロジー※を備えています。塗装者はもちろん、塗装の管理 者も規定の膜厚に達していることが一目瞭然で分かるので、 船舶用塗料は、 日本ペイントの前身である光明社設立の起 塗り直しや検査の手間が大幅に省けます。 また、在庫管理の 源となった事業です。 日本ペイントマリンはその歴史を受け継 省力化と廃缶・廃塗料・廃溶剤など産業廃棄物の削減にも ぎ、世界の注目を集める画期的な塗料を次々と開発・販売し 役立つと、世界の造船所から高い評価を受けています。 てきました。海洋環境への配慮のため、IMO(国際海事機関) ではすずを含んだ船底防汚塗料を2003 年 1月から使用を禁 止していますが、 日本ペイントマリンではすでに1990 年に世 界に先駆けてすずフリーの船底防汚塗料「エコロフレックス」 を発売し、 今では世界市場で広く採用されています。 日本ペイントマリンが 2001 年から本格的な販売を開始し た 「NOAシリーズ」 は、船舶の外板・デッキ・上構・バラスト タンクなど、主要な部分に適用できるさび止め塗料です。 この 塗料は、低 VOC(揮発性有機化合物)の環境配慮型商品 であるとともに、塗った塗膜の厚さを目視で確認できるという 世界で初めての機能を備えています。 さび止め塗料は一定の膜厚がなければ海水が浸透してさび が発生し、 船体の寿命を縮めてしまいます。 これまでの塗料では、 どれだけの膜厚になったかは塗装する人の経験と勘に頼ってい ました。 そのため、 塗装後の検査で規定の膜厚に達していなけれ 08 黄色い部分がNOAの塗布された部分。 下地が透けたところは、 規定膜厚に達していない 環境性能に優れた水性塗料や 画期的な防汚塗料が注目を浴びる 新造船の80%以上が日本・韓国・中国で建造されており、 ば、 再度塗り直して検査することが頻繁に行われていました。 中でも韓国は世界一のシェアを占めています。韓国の造船所 これに対してNOAは、規定の膜厚になるまで下地が透けて で環境対策として注目され、採用が増えているのが、 日本ペイ NIPPON PAINT CO.,LTD. A Special Feature Article 「オーデマリン PF」 が塗装されたエンジンルーム ントマリンが 2004 年に発売した 「オーデマリンPF」 です。 で覆って摩擦抵抗を減らしているマグロにヒントを得て、 大阪 オーデマリンPFは、居住区内や機関室向けの1 液型水性 大学および神戸大学と共同開発したものです。 図のように塗料 エポキシ塗料です。低 VOC、低臭気、重金属フリーなど環境 表面の凹部に水をキャッチし、 表面を平坦にするという従来に に配慮されているとともに、 さび止め・上塗り兼用塗料で、塗 はないアイデアで摩擦抵抗を減らし、 現在一般に使われている 装回数を減らすことが可能です。従来の油性塗料ではさび止 自己研磨型の船底防汚塗料よりもさらに数パーセントの燃費 め塗料・上塗り塗料・シンナーと3 種類の在庫が必要ですが、 低減効果があることが実際の船舶で検証されています。 水性のオーデマリンPFは1 種類で済み、在庫管理の省力化 LF-Seaは本格的な販売活動に入る前から世界中で注目を集 や廃棄物の削減にも役立ちます。 さらに、油性に比べて高い め、 船舶運航時のCO₂削減に大きな期待が寄せられています。 防食性・耐久性があり、塗料としての性能にも優れています。 日本ペイントマリンは、1980 年代から環境性能の向上を 環境負荷の低減とともに、作業環境の向上、塗料性能の向 テーマにした製品開発に取り組んできました。 その成果である 上などが評価され、世界をリードする韓国の造船所で次々と採 各種の新製品が、今世界から注目されています。 用が決まり、 販売数が急増しています。 船舶用塗料の環境への貢献を考える上では、 フジツボなど 船底に付着する生物を防いで燃費低減し、CO₂を削減する船 底防汚塗料の開発も、塗料会社の重要な使命です。 日本ペ ※ SI(SeIf-Indicating) テクノロジー 色差と隠ぺい性の制御により、塗 装中に設計規定膜厚に達したことを目視で容易に判定できる方法 ■LF-Seaのメカニズム イントマリンは先に紹介した 「エコロフレックス」 の開発で、海洋 環境の改善と船舶の燃費低減に貢献してきました。 さらに、 塗膜 塗膜 塗膜 塗膜 2007 年に燃費低減効果をあげるニューテクノロジー防汚塗 料 「LF-Sea」 を発表しました。 LF-Seaは平滑で弾力性のあるイルカの皮膚や、 表面を粘膜 塗膜表面に水をキャッチすることで凹凸を減らし摩擦抵抗を少なくする NOA 開発担当者の声 オーデマリン PF 開発担当者の声 目視で膜厚が分かる世界初の塗料、 開発は苦労の連続でした 今後も環境配慮だけではない、 付加価値のある水性塗料を 開発します 日本ペイントマリン (株) (左から) 技術本部 技術第2部 寝屋川第二グループ グループマネージャー 鍛治 弘一 技術本部 研究開発部 研究開発第3グループ グループマネージャー 石原 慎一 技術本部 技術第 2 部 東京第一グループ 次長 菅原 勝也 塗装の初心者でも簡単に規定の膜厚が確保できる塗料ができない かということから、 「NOA」 の目視で膜厚が判断できるシステムという 発想が生まれました。塗料の開発では、NOA の機能を高めるため の色の選択、 「透ける」塗料のための材料選択、塗装現場で目視判 断ができる隠ぺい性の調整など、 苦労の連続でした。 IMO で船舶の 新塗装基準が議論されるなど、近年、世界的に塗料の膜厚の重要 性が注目されています。NOA が世界中の船に塗装され、船舶の保 護や造船所の作業効率に貢献できるようになればと願っています。 日本ペイントマリン (株) 技術本部 技術第 2部 寝屋川第一グループ リーダー 森本 眞人 環境配慮の水性塗料というだけでは採用されません ので、 「オーデマリン PF」は従 来の油 性 系 塗 装 が 2 回塗りであることに対し、1 回塗りを目指しました。 また、 居住空間の塗料は、防錆性はもちろん、光沢も求めら れます。1 回塗りで防錆性を付与するための膜厚を保 持できる 「ダレ性」 と、光 沢の両 立に苦 労しました。今 後は居住区、エンジンルームだけでなく、 より多くの場 所で塗装できる水性の新商品を開発し、造船所の環 境負荷の低減や火災や爆発などのリスク低減、作業 環境の向上、工期の短縮に寄与することが目標です。 NIPPON PAINT CO.,LTD. 09
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