特集 学生の研究活動報告−国内学会大会・国際会議参加記 17 RUBeC 演習を終えて 荒 谷 貴 夫 Takao ARATANI 機械システム工学専攻修士課程 1年 に,冠詞の必要としない名詞に対しても, φ (ゼ 1.はじめに ロ)をつけることによって冠詞に対する意識を高く 私は,アメリカ合衆国カリフォルニア州のバーク 持つことができました.授業後半においては,Ab- レー市にある RUBeC(Ryukoku University Berkeley stract の校正を行いました.Abstract については, Center)にて,龍谷大学の留学プログラムのひとつ はじめに前述した冠詞のチェックを行いました.そ である RUBeC 演習に 2012 年 8 月 18 日から 9 月 3 こから文法の間違いや英語として意味が通っている 日まで参加しました. か,先生方にチェックをしてもらい,修正するとい うことを繰り返しました.1 度,30 分から 1 時間程 2.プログラムの目的 度の時間を取り,現地の先生,日本からの引率の先 私がこのプログラムに参加するに当たって,主に 生と生徒の 3 人でカンファレンスを行いました.カ 二つの目的を持っていました.1 つは自身の研究概 ンファレンスでは,Abstract の内容について不明な 要である,Abstract の校正です.もう 1 つは英語に 点を 1 つずつ確認しながら,文章を修正,消去,加 よるプレゼンテーションを行うことです.プレゼン 筆していきました.しかし,文章を校正したことに テーションの内容は,基本的に Abstract の内容と よって,研究の内容が変わってしまう可能性があり 同じです.これらの知識や技術を習得することがで ます.それを回避するためには,研究の背景や内 きれば,英語論文の執筆や,国際学会での発表に繋 容,自身の研究に対する考えを相手に伝えなければ がります.また,2 週間という短い期間ではありま なりません.これは容易なことではなく,理解して すが,日本を離れ海外の文化や習慣そして言語に触 もらえないときには,絵や図を描くことや,引率の れることで,自身の視野を広げる良い機会になるの 先生に通訳していだたくことにより自分の意図を伝 ではないかと思い,このプログラムに参加しまし えることもありました.タイムスケジュールの兼ね た. 合いもあり,Abstract の内容すべてに対して正しく 修正することはできませんでしたが,このプログラ 3.授業内容 ムを通して,どうすれば自分の主張したいことを相 手に伝えることができるか,少し理解することがで 3. 1.テクニカルライティング授業 午前中のテクニカルライティングでは,英文作成 のための手法はもちろんのこと,日常会話に良く使 きました.また,これは英語に限らず日本語の文章 を書く上でも役に立つと感じました. われる言い回しやテクニックについて学びました. 英文作成においては,文の構成というよりも冠詞の 3. 2.プレゼンテーション授業 付け方などの細かな点に注意して文章を書くように 午後のプレゼンテーションの授業では授業最終日 言われました.冠詞についての理解を深めるため にある,自身の研究についてのプレゼンテーション ― 37 ― に向けてプレゼンテーションの手法について学びま 感じました.授業の終わりには毎回宿題が出され大 した.効果的なスライドの作り方に始まり,文と文 変ですが,授業終了後から 2, 3 時間は教室が自習 を繋ぐ言葉や Speaking の技術,質疑応答に関する 室として開放されており,先生方も残って指導をし フレーズなど,プレゼンテーションのために必要な てくださるのは非常に有難く,良い制度だと感じま たくさんの事柄について学びました.特に指導を受 した. けたのが,Speaking です.1 口に発音と言っても, 単語 1 つ 1 つに対する Word stress(アクセント) 4.ホームステイ先での生活 プログラム中は,バークレーから少し離れたとこ や,英語を話す際にフレーズごとに区切る Chunk, 語尾の上げ下げなど,英語を話す上でたくさんの手 ろでホームステイさせていただきました.私のホー 法があります.これらの手法が守られていないと, ムステイ先は毎年たくさんの人をゲストとして迎え いくら文法が合っていても相手には伝わらないこと 入れており,滞在中は私を含め最大 7 人のゲストが を学びました.プレゼンテーションの最終日の授業 いました.ゲストの中には中国や台湾の方をいらっ では,自身の研究についてのプレゼンテーションを しゃったので,米国以外の方ともコミュニケーショ 行いました.発表の事前準備として,各スライドに ンを取ることができ,非常に良い経験となりまし 対する原稿の作成やスライドの修正を行いました. た.ホストファミリーとのコミュニケーションは, Abstract と同様に,原稿の文章やスライドについて 上手く行く時もあれば,そうでない時もありまし も現地の先生と相談しながら修正していきました. た.特に苦労したのが電話での会話です.直接会っ 念入りにリハーサルを行った甲斐をあってか,本番 て話すときにはお互いの表情やジェスチャーなどか では緊張もせず,自分のベストを尽くすことができ ら言葉の意味を理解することができます.しかし, ました.発表途中に原稿の内容が飛んでしまうこと 電 話 に な る と そ れ が で き な い の で , Hearing と がありましたが,スライドから言葉を考えて話すこ Speaking のみでコミュニケーションを取らなけれ とができ,英語が少し身に付いたと感じた瞬間でし ばならないので,苦労しました. た. 5.おわりに RUBeC 演習を通して,様々な経験をすることが 3. 3.授業全体に関する感想 日本の授業では,主に講義形式で先生の話を聞い できました.本プログラムの目的であった Abstract たり,板書を移したりすることが典型的な形でいわ の校正や英語によるプレゼンテーションの手法につ ば先生が主体の授業です.本プログラムの授業で いても,学ぶことができました.演習前までは,日 は,少人数クラスなこともあり,生徒と先生との距 本語が通じない場所で 2 週間滞在することに不安を 離が非常に近く感じました.生徒はいつでも先生に 感じていましたが,毎日が楽しく,2 週間がとても 対して質問をすることができますし,授業内容に関 短く感じました.流暢に英語を聞いたり話したりす してもパートナー(隣席の人)と話し合いをし,そ ることはできませんでしたが,英語に対する恐怖心 れぞれの意見を発表しながら進めていくスタイルで は感じなくなりました.また,他国での授業や生活 した.また,日本では授業中にお手洗いに行く際に を体験することで自分の視野を広げることができ, 先生に許可を取りますが,こちらではそのやり取り たくさんの知見が得られました.RUBeC 演習で学 で授業が中断されることを懸念し,黙って席を立つ んだことを忘れずに,自身の英語力を高めるために のがマナーとなっています.周りの妨げにならなけ 日々邁進していきたいと思います. れば飲食も認められていて,日本との文化の違いを ― 38 ―
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