学校事務職員は、学校経営を変えることができる ∼提言!!「学校業務改善

学校事務職員は、学校経営を変えることができる
∼提言!!「学校業務改善」推進のキーパーソンは学校事務職員に…∼
篠山市立味間小学校
学校主幹 小谷 茂之
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取組の内容・方法
(1) 学校事務職員の存在感を高め、教育の振興へ寄与貢献すること
篠山市公立学校事務研究会は、平成11年4月1日、平成合併全国第1号としてスタ
ートした篠山市の教育現場において、学校経営事務、教育環境・条件整備の均衡化、平
準化、標準化、適正化、正常化、活性化を目指して、篠山市教育委員会及び篠山市小・
中学校校長会と連携を深めながら、その伝統と専門性を生かして、管理運営規則などの
諸規程制定、様式の整備、学校予算の積算など、様々な取組を展開しました。
目的を「会員の資質の向上と学校事務の改善を図り、篠山市立小中特別支援学校教育
の振興に寄与する」と規約に謳い、「学校運営を担う学校事務の創造」を永年のテーマ
とする市事務研は、組織(幹事会、領域別研修会、委員会)を有効活用し、常に篠山市
の将来を担う子どもたちの健やかな成長を念頭に、原案作成、協議、連絡調整、再構築
に関わりました。その過程において、学校事務職員の存在感を高め、意識(基幹職員と
しての学校経営参画)の昂揚とともに、学校事務職員自身の職の位置付け(職指定)と
職務内容、責任、権限等の明確化を進めてきました。
(2) 資質と能力の開発向上のための研修を充実化させること
学校事務職員の研修は、教員と比較して少なく、各市町の事務研究会や各教育事務所
管内の事務研究協議会という任意団体等の自主的な研修・研究活動に委ねられてきた面
があります。しかし、各地区により、その内容には差があるのが実情といえます。それ
を補うため、全県規模研修の制度化による標準的な研修内容と各地区の実践交流等の実
現に向けて取り組みました。
(3) 唯一の行政職としての学校経営に参画すること
ほとんどの小中学校において、学校事務職員は単数配置ですが、学校規模、組織等に
応じて、また勤務年数に比例して、どう学校事務を確立し学校経営に関わっていくかが
重要です。要は、それぞれがいかに事務室経営を確立し、いかに学校経営に参画し、最
終的には、管理職と三者一体となって学校経営をいかにサポートしていくかだという認
識に立って取り組んできました。
(4) 「学校業務改善」推進のキーパーソンを目指すこと
「子どもとふれあう時間の確保」
「多忙化解消」「勤務時間の適正化」
「校務の情報化」
「ワーク・ライフ・バランス」等々…、今や「学校業務改善」流行となってきました。
本年度、
「学校業務改善実践事例普及推進校」
(県内13校)に指定され、プロジェク
トチームの推進役としてリーダーシップを発揮し、意識改革、環境改善を中心に取り組
むとともに、県内各所において、普及推進広報活動を行ってきました。
2
取組の成果
(1) 学校事務職員の位置付けの獲得とその展開
篠山市合併以後、制度化された主なものは、下表のとおりです。
施行年月
平成11年12月
平成13年 4月
平成14年 4月
規
程
事務職員の位置付け
篠山市立小学校・中学校・特別支援学校・幼稚園管
理及び運営に関する規則(一部改正)
篠山市公立学校文書取扱規程
職名毎の職務内容の明文化
文書取扱者として明記
篠山市立学校事務職員の標準的な職務に関する基
本要綱
標準職務の明確化
篠山市立小学校、中学校、特別支援学校、
備品管理事務取扱者として
幼稚園備品管理に関する規程
明記
平成15年 4月
篠山市立学校職員出勤簿取扱規程(一部改正)
出勤簿担当職員として明記
平成16年 4月
篠山市立学校財務事務取扱要綱
平成15年 4月
契約事務担当者、検査員
経理事務担当者として明記
これは、順に、篠山市の学校経営事務、文書管理事務、備品管理事務、服務事務、学
校予算事務等の標準化、適正化を図り、学校事務職員の参画を目指すものです。これら
の諸規程を実効あるものにしていくため、教職員ハンドブック、文書管理事務マニュア
ル、学校財務事務マニュアル、管理運営事務マニュアル等も作成してきました。
(2) 兵庫県立教育研修所における経験者研修の年次的な充実化
平成9年度から、県立教育研修所において現職教育研修講座として学校事務職員「経
験者研修」が始まりました。当初2講座でしたが、年々改良され、平成21年度には大
幅にリニューアルされ、下表のとおり、体系化された職務級別5講座となりました。
種
別
初任者研修
(新規採用者)
目
的
公務員としての基本的な心構えや学校教育活動における学校事務の在り方
及び、学校教育の一般的な内容について理解するともに、事務職員として必
要な基礎知識や技能の習得を図る。
備考
1泊
2日
経験者研修Ⅰ
公務員や学校事務職員としての意識を高める。また、職務上必要な法規及び
(行政職2級)
教育行政制度を理解し、正確かつ適正な事務を遂行する能力の向上を図る。 2日
経験者研修Ⅱ
(行政職3∼4級)
経験者研修Ⅲ
(行政職5級)
経験者研修Ⅳ
(行政職6∼7級)
高度な専門知識を習得し、総合的な判断力、企画力、調整力を養う。また、
自ら意識改革を図り、柔軟な思考力、創造性を発揮し、主体的に判断して行
動する意欲や能力の向上を図る。
教育行政の環境変化に対し、学校運営上の課題を主体的に判断し対応する中
堅職員としての心構えや役割を認識し、課題を解決するために必要な職務遂
行能力の向上を図る。
地域のリーダーとしての心構えや役割を認識し、総合的な視野や高度な知
識・技能を習得するとともに、地域において組織的に教育課題に対応できる
マネジメント能力の向上を図る。
1泊
1泊
2日
1泊
2日
1泊
2日
研修の改善に向け、学校事務職員も積極的に関わったことは、受講者である学校事務
職員自身にとって大きな意識改革となりつつあります。
(3) 事務室経営から学校経営への飛躍
各種の規定や校務分掌だけに留まらないで、それぞれの学校において、各々の経験年
数等に応じて、
「自分は何をすべきか」「自分にできることは何か」「優先順位は」
「学校
の流れは」
「子どもの目線は」
「保護者の願いは」… 日々モチベーションを高め、積極
的に守備範囲を広げ、試行錯誤により知見を増やし続けています。
学校事務職員の専門性(唯一の行政職、最新情報、法的根拠、事務手続、財政、会計、
渉外等々のスキルとノウハウ)を最大限に活かして、事務室(学校事務)を確立し、教
育行政とのパイプ役など、経年に応じてリーダーシップを発揮する必要があります。
「子ども」を教え育む「先生」を指導する「校長・教頭」をサポートするのが「事務
職員」であるという年々高まる認識の元、
「学校組織マネジメント」をイメージしつつ、
職員の意識改革、資質・能力の開発向上、職場の民主化、ガラス張り化、協働化、活性
化を図り続けています。全教職員の日々の能力発揮と成長が、陰に日向に、地元の未来
を担う子どもたちの成長、健全育成、豊かな学びに直結すると実感してきました。
(4) 学校業務改善は学校事務職員の本業に一番近い仕事です
学校業務改善について、現任校である味間小学校では先ずは調査アンケート集約から
始め、下表の取組を推進しています。各種の取組を進める中で、これこそ学校事務職員
の新たな職務分野の位置付けとすべきではないのかと日々感じてきました。
区
分
本校の学校業務改善実践具体例(計画も含む)
校務の情報化
LAN、ファイル・データ共有、電子・デジタル化(通知表、体の
(IT ICT)
記録)、名簿データベース化、ペーパーレス化ほか
物的環境
事務機器等保守・更新、整理整頓、机上整理、見える化、注意喚
ハード
起・警告シート表示、クレセント開閉シール貼付ほか
(環境改 システム・ソフ
ト
善)面
備品台帳、図書台帳、徴収金、校外活動、各種会計(学年費、自
システム・ルー
ル
ソフト
然学校、旅行、など)、アンケート集約、セキュリティほか
校内規定、学校生活ルールブック、校務分掌見直し、行事見直し、
時程表見直し、公文書起案の見直し、会議の見直し、学校評価と
引継連動システム、記入例・早見表、校舎管理記録簿ほか
調査・アンケー
実態・意識・方向性等把握、学校評価、年度初め、学期末、年度
ト
末、行事毎、校内外比較統計、アイデア意見(目安)箱ほか
チェックシート
業務改善、情報、服務、常識、人権、Q&A、チェックリスト…
(意識改 適正化・正常
革)面
化・活性化
啓発資料
時間厳守、期限・締切厳守、決定事項厳守、複数点検、職員作業、
長期休業日の平常化、公務員意識(名札、名刺、電話、来客)、
セルフ意識、節倹・環境、主人公意識、ホウレンソウほか
各種資料による日常的な意識付け、研修、情報提供ほか
勤務時間
記録簿記入習慣付、ノー残業(会議)デー、休暇取得促進、超勤
適正化
の自覚、メリハリ、ケジメ、ワーク・ライフ・バランスほか
指導・支
教育課程見直し、授業の創意工夫改善、教材教具の点検、ICT 化、
援
研究授業、生活指導、コミュニケーションほか
その他
∞
組織マネジメント、ベテランのリーダーシップ、サロン(憩いと
癒しコーナー)設置、カウンセリング、職員レク・体育ほか
また、兵庫県教育委員会の「学校業務改善実践事例集」
(H22.3)を礎とする味間小学
校での取組を基に、様々な機会に、市内、丹波管内、県内への普及推進活動(実践報告、
リポート発表、講義等)を重ねてきました。
また、市事務研の中に新たにプロジェクトチームを設置し、来年度の全校実施を円滑
かつ平準的に推進するため、全体研修を実施し合意形成を図るとともに、各校の実践事
例を中心とした「事務職員版学校業務改善対応ハンドブック」を作成中です。
3
課題及び今後の取組方法
(1) 学校間連携と地域協働
今後、ますます加速度的に変化し課題山積していく学校現場の経営事務の改善改革の
ため、組織と個人のレベルアップ、コンセンサス、次代を担うミドルリーダーの育成、
内外の連携と協働、引継、スクラップ&ビルド、学校・学級適正規模・適正配置、「学校
事務協働実施」など近未来を想定したシミュレーションの必要性を強く感じています。
(2) 研修の体系化
喫緊の課題としては、学校事務職員の研修全般を体系化しなければならないことがあ
げられます。どの小中特別支援学校へ行っても、教育実践、教育環境、教育条件、経営
事務内容等に差があってはなりません。その命題に対峙するため、新規採用から退職に
至るまでの間断なき自学(自己啓発)を礎として、OJT、各市町教委、各市町事務研、
各教育事務所、各地区事務研、県教委、県立教育研修所、文科省、他団体、その他の各
種研修をマトリックス状態に体系化していくこと、及び、職務級に応じた研修計画、研
修内容、役割と責任の明確化、方向性等を合体させた兵庫県モデルを構築していくこと
が急務です。
(3) 地域の中の学校
今後の最重要課題一つである地域連携(地域協働)を念頭に、事務職員として、何が
できるか、何をやるべきかを、組織的に解決すべき時が来ています。
(4) 学校事務職員がキーパーソンとなって、学校改革への一里塚にしよう
これからは学校改革、学校業務改善が必要です。校内で最も標準的かつ適正な職務を
担っている教育の分かる行政職たる学校事務職員がキーパーソンとして活躍すべき時
です。時代、社会の流れに敏感かつ柔軟に対応して、PDCA サイクル(スパイラル)を基
本とし、校長・教頭と学校事務職員が連携しながら、すべての学校業務を見直し、「全
職員で」
「意識を換え」
「共通理解し」
「今できることから」
「できるだけ」
「同一歩調で」
「毎日継続して」「積み重ねて」改善していくことが、子どもたちの「生きる力」を育
み、教職員の「働く力」を高め、「地域力」を育てていくことにリンクするはずです。
それがそれぞれの「学校力」の推進・高揚であります。
結論は、「幼児児童生徒が通いたい学校」+「保護者が通わせたい学校」+「教職員
が働きたい学校」=「地域コミュニティーの中に入って寄与貢献できる学校」を全教職
員、全学校関係者で協働しながら築き上げることです。その中で、学校事務職員は、従
来以上の重要な役割を果たさなければならならないと考えます。
最後に、「校長」や「教頭」が換われば学校が変わると言われることがありますが、本
心として、
「学校事務職員」が変(換)われば学校を変(換)えられると言いたいものです。