空き缶を利用した衝撃緩衝工の開発(その 2) - 土木学会

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土木学会第60回年次学術講演会(平成17年9月)
空き缶を利用した衝撃緩衝工の開発(その 2)
JR 東日本
正会員 ○ 川人
飯嶋
1.はじめに
(その1)で述べた角型管軸圧壊の衝撃実験を踏まえ,
橋桁への自動車の衝撃に対して,より現実的な荷重・エネ
ルギを試算した結果,直径 60mm 程度の薄肉円筒シェルが
妥当と判断し,空き缶を TP に採用した.本稿ではスチー
ル缶の実験について述べる.
2.シェル側面の加工および配置の効果
以下,面積,缶の形状,軸方向の積み重ね(直列配置)
,
水平面への配置個数(並列配置)の影響を取り上げる.
なお図-1のように TP の吸収エネルギに対して入力が過大
な場合,錘は缶の高さ内で静止せずにロードセルを叩く.こ
れは変形のストローク不足が原因であり,TP の高さを増すこ
とで解消されるが,このような計測データを一律に比較す
るため,TP の高さに対して 75%までの変位を解析の対象
とした.
0.50
利夫
栗田
淳
0.4677
0.45
0.40
0.3541
0.35
0.2804
0.30
0.25
0.20
0.15
0.10
0.05
0.00
しぼり+ベローズ
し ぼ り
ストレート
図-3
平均荷重/A
ピークと平均の差
kN/mm2
0.25
0.224
高さの75%
0.154
0.146
0.15
0.098
0.088
0.10
40
0.214
0.186
0.20
60
0.078
0.060
0.05
20
mm
変異-荷重
レ
ー
ト
120
ト
100
ス
80
ぼ
60
し
40
ヘ
゙ロ
20
し
ぼ
り
+
0
ース
゙
り
0.00
0
-20
優
エネルギ
吸収効率
缶の高さ
80
島津
(2)側面の加工による影響
図-3,4は各 TP の側面に施された加工を3タイプ
に分類し,比較した結果である.軸方向の荷重に対して
側面の加工が弱点となり,ピーク荷重が低減され,エネルギ
吸収効率が向上したと考えられる.図-5は各加工の荷
重-変位関係の例である.
ピーク荷重/A
KN
100
麻紀夫
図-4
図-1 解析対象とした変位
12
上端しぼり
上端しぼり&ベローズ
8
kN
(1)面積の影響
図-2はピーク荷重・平均荷重と面積との関係である.
ピーク荷重のばらつきが目立つが,これには以下に述べる
側面の加工の影響等が含まれていると考えられる.2つ
の荷重はいずれも面積にほぼ比例している.
ストレート
10
6
4
2
0
平均荷重
線形 (平均荷重)
0
ピーク荷重
線形 (ピーク荷重)
20
30
40
50
mm
60
70
80
90
100
110
図-5 側面の加工による荷重-変位関係の相違
50
荷重(kN)
10
40
30
(3)直列配置の影響
図-6は缶を単独で配置した場合と,同じ種類の缶を
軸方向に積み重ねた場合との比較である.単独の場合よ
りもエネルギ吸収効率は向上する傾向がみられ,緩衝材のス
トローク不足は軸方向の缶の積み重ねによって対策が可能で
あることを確認できる.
20
10
0
0
50
100
150
断面積(mm2)
図-2 ピーク荷重および平均荷重と面積との関係
キーワード:衝撃緩衝工,側面加工,ピーク荷重,エネルギ吸収効率
連絡先:〒260-0031 千葉県千葉市中央区新千葉1丁目3番 24 号 千葉土木技術センター tel (043)221-7582,fax (043)221-7582
-293-
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土木学会第60回年次学術講演会(平成17年9月)
エネルギ
吸収効率
0.60
0.40
0.30
0.4778
0.4646
0.50
3.荷重波形の解析
図-10 は衝撃荷重のフーリエスペクトルである.図-
11 は n=1(49Hz),n=2(98Hz)におけるスペクトル比とエネル
ギ吸収効率との関係である.
0.3312
0.20
5.0
0.10
しぼり+ベローズD
しぼり+ベローズC
4.5
0.00
直列1本
直列2本-case1
4.0
直列2本-case2
しぼり+ベローズB
3.5
図-6 直列配置した場合のエネルギ吸収効率傾向
しぼりA
kN
3.0
しぼり+ベローズA
2.5
ストレート
しぼりC
2.0
45
荷重
(kN) 40
35
30
25
20
15
0
50
100
150
並列配置した缶の断面積の総和
(mm2)
図-7
エネルギ
0.40
吸収
効率 0.35
0.347
0.355
0.276
0.30
0.25
0.223
0.20
0.15
0.10
0.05
4
本
3
本
並
列
並
列
並
列
並
列
1
本
2
本
0.00
図-8
並列配置におけるこのような問題の対策として,缶の
上端の高さにズレを持たせる方法を考案した.図-9は
単独配置,4本並列配置,単独配置の4倍荷重,単独配
置の変位を4缶で各 10mm スライド・重ね合せた場合の
荷重-変位関係である.缶上端のズレによって荷重の突
出が抑えられることが確認できる.
エネルギ吸収効率に関し
ては4本並列の 0.223 に対して,10mm のズレを持たせ
た場合には 0.532 と大幅な改善がみられた.
kN
並列4本
単独配置波形を
10mmスライドし
4本重合せ
単独配置
20
0
20
40
60
80
100
120
140
Hz
図‐10
4.0
3.5
3.0
2.5
2.0
1.5
1.0
0.5
0.0
線形近似
0.10
0.20
0.30
0.40
0.50
0.60
図‐11
0
0
0.0
エネルギ吸収効率 と スペクトル振幅(n=1)/スペクトル振幅(n=2) との関係
5
単独配置の
4倍荷重
0.5
0.00
10
45
40
35
30
25
20
15
10
5
0
しぼりB
1.0
kN
(4)並列配置の影響
図-7,8は缶を単独で配置した場合と,同一種類の
缶を複数個配置した場合との比較である.水平面に置か
れた缶の増加によって各ピーク荷重が重複し,
缶の本数
(面
積)に比例して増加する様子が図-7から窺われる.図
-8ではピーク荷重の増加に従いエネルギ吸収効率が低下し
ている.
ピーク
1.5
40
60
80
100
mm
図-9 並列配置の問題と対策(荷重-変位関係)
-294-
エネルギ吸収効率は,図-4 からも明らかなように荷重履
歴の平均値に依存するため,n=0(0Hz)のスペクトルは重
要な評価指標となるが,図-10,図-11 からは, n=1,
n=2 程度までがエネルギ吸収効率に影響を与えることが確
認された.
図-10 から、しぼり+ベローズのタイプは n=1 のスペ
クトルが相対的に大きいことがわかる.また図-11 から
はn=1とn=2のスペクトル比がエネルギ吸収効率と相関が強
い傾向がみられる.
6.おわりに
金属材料を用いた衝撃緩衝機構として,中空断面部材
の軸圧壊の有効性を確認した.空き缶を用いた実験では
シェル側面の加工がピーク荷重の低減・エネルギ吸収効率の改善
に効果的であることがわかった.また直列配置は機能低
下がなく,並列配置では衝撃のタイミングの調節によりピーク
荷重の突出を抑える効果が確認された.
試算によれば空き缶の直列・並列を組み合わせること
で重量 1.5ton,速度 10m/sec 程度の剛体のエネルギ吸収は現
実的なオーダーであり,
今後は落石対策工や鉄道以外の利用
にも期待が持てる.
参考文献
1)先端材料技術協会監修:ハニカム構造材料の応用,CMC 出
版,1995.1
2)日本機会学会:衝撃破壊工学,技報堂出版,1990.6
3)多谷虎男:振動・衝撃の基礎理論とラプラス変換(下),学
会出版センター,1984.7