1-148 土木学会第60回年次学術講演会(平成17年9月) 空き缶を利用した衝撃緩衝工の開発(その 2) JR 東日本 正会員 ○ 川人 飯嶋 1.はじめに (その1)で述べた角型管軸圧壊の衝撃実験を踏まえ, 橋桁への自動車の衝撃に対して,より現実的な荷重・エネ ルギを試算した結果,直径 60mm 程度の薄肉円筒シェルが 妥当と判断し,空き缶を TP に採用した.本稿ではスチー ル缶の実験について述べる. 2.シェル側面の加工および配置の効果 以下,面積,缶の形状,軸方向の積み重ね(直列配置) , 水平面への配置個数(並列配置)の影響を取り上げる. なお図-1のように TP の吸収エネルギに対して入力が過大 な場合,錘は缶の高さ内で静止せずにロードセルを叩く.こ れは変形のストローク不足が原因であり,TP の高さを増すこ とで解消されるが,このような計測データを一律に比較す るため,TP の高さに対して 75%までの変位を解析の対象 とした. 0.50 利夫 栗田 淳 0.4677 0.45 0.40 0.3541 0.35 0.2804 0.30 0.25 0.20 0.15 0.10 0.05 0.00 しぼり+ベローズ し ぼ り ストレート 図-3 平均荷重/A ピークと平均の差 kN/mm2 0.25 0.224 高さの75% 0.154 0.146 0.15 0.098 0.088 0.10 40 0.214 0.186 0.20 60 0.078 0.060 0.05 20 mm 変異-荷重 レ ー ト 120 ト 100 ス 80 ぼ 60 し 40 ヘ ゙ロ 20 し ぼ り + 0 ース ゙ り 0.00 0 -20 優 エネルギ 吸収効率 缶の高さ 80 島津 (2)側面の加工による影響 図-3,4は各 TP の側面に施された加工を3タイプ に分類し,比較した結果である.軸方向の荷重に対して 側面の加工が弱点となり,ピーク荷重が低減され,エネルギ 吸収効率が向上したと考えられる.図-5は各加工の荷 重-変位関係の例である. ピーク荷重/A KN 100 麻紀夫 図-4 図-1 解析対象とした変位 12 上端しぼり 上端しぼり&ベローズ 8 kN (1)面積の影響 図-2はピーク荷重・平均荷重と面積との関係である. ピーク荷重のばらつきが目立つが,これには以下に述べる 側面の加工の影響等が含まれていると考えられる.2つ の荷重はいずれも面積にほぼ比例している. ストレート 10 6 4 2 0 平均荷重 線形 (平均荷重) 0 ピーク荷重 線形 (ピーク荷重) 20 30 40 50 mm 60 70 80 90 100 110 図-5 側面の加工による荷重-変位関係の相違 50 荷重(kN) 10 40 30 (3)直列配置の影響 図-6は缶を単独で配置した場合と,同じ種類の缶を 軸方向に積み重ねた場合との比較である.単独の場合よ りもエネルギ吸収効率は向上する傾向がみられ,緩衝材のス トローク不足は軸方向の缶の積み重ねによって対策が可能で あることを確認できる. 20 10 0 0 50 100 150 断面積(mm2) 図-2 ピーク荷重および平均荷重と面積との関係 キーワード:衝撃緩衝工,側面加工,ピーク荷重,エネルギ吸収効率 連絡先:〒260-0031 千葉県千葉市中央区新千葉1丁目3番 24 号 千葉土木技術センター tel (043)221-7582,fax (043)221-7582 -293- 1-148 土木学会第60回年次学術講演会(平成17年9月) エネルギ 吸収効率 0.60 0.40 0.30 0.4778 0.4646 0.50 3.荷重波形の解析 図-10 は衝撃荷重のフーリエスペクトルである.図- 11 は n=1(49Hz),n=2(98Hz)におけるスペクトル比とエネル ギ吸収効率との関係である. 0.3312 0.20 5.0 0.10 しぼり+ベローズD しぼり+ベローズC 4.5 0.00 直列1本 直列2本-case1 4.0 直列2本-case2 しぼり+ベローズB 3.5 図-6 直列配置した場合のエネルギ吸収効率傾向 しぼりA kN 3.0 しぼり+ベローズA 2.5 ストレート しぼりC 2.0 45 荷重 (kN) 40 35 30 25 20 15 0 50 100 150 並列配置した缶の断面積の総和 (mm2) 図-7 エネルギ 0.40 吸収 効率 0.35 0.347 0.355 0.276 0.30 0.25 0.223 0.20 0.15 0.10 0.05 4 本 3 本 並 列 並 列 並 列 並 列 1 本 2 本 0.00 図-8 並列配置におけるこのような問題の対策として,缶の 上端の高さにズレを持たせる方法を考案した.図-9は 単独配置,4本並列配置,単独配置の4倍荷重,単独配 置の変位を4缶で各 10mm スライド・重ね合せた場合の 荷重-変位関係である.缶上端のズレによって荷重の突 出が抑えられることが確認できる. エネルギ吸収効率に関し ては4本並列の 0.223 に対して,10mm のズレを持たせ た場合には 0.532 と大幅な改善がみられた. kN 並列4本 単独配置波形を 10mmスライドし 4本重合せ 単独配置 20 0 20 40 60 80 100 120 140 Hz 図‐10 4.0 3.5 3.0 2.5 2.0 1.5 1.0 0.5 0.0 線形近似 0.10 0.20 0.30 0.40 0.50 0.60 図‐11 0 0 0.0 エネルギ吸収効率 と スペクトル振幅(n=1)/スペクトル振幅(n=2) との関係 5 単独配置の 4倍荷重 0.5 0.00 10 45 40 35 30 25 20 15 10 5 0 しぼりB 1.0 kN (4)並列配置の影響 図-7,8は缶を単独で配置した場合と,同一種類の 缶を複数個配置した場合との比較である.水平面に置か れた缶の増加によって各ピーク荷重が重複し, 缶の本数 (面 積)に比例して増加する様子が図-7から窺われる.図 -8ではピーク荷重の増加に従いエネルギ吸収効率が低下し ている. ピーク 1.5 40 60 80 100 mm 図-9 並列配置の問題と対策(荷重-変位関係) -294- エネルギ吸収効率は,図-4 からも明らかなように荷重履 歴の平均値に依存するため,n=0(0Hz)のスペクトルは重 要な評価指標となるが,図-10,図-11 からは, n=1, n=2 程度までがエネルギ吸収効率に影響を与えることが確 認された. 図-10 から、しぼり+ベローズのタイプは n=1 のスペ クトルが相対的に大きいことがわかる.また図-11 から はn=1とn=2のスペクトル比がエネルギ吸収効率と相関が強 い傾向がみられる. 6.おわりに 金属材料を用いた衝撃緩衝機構として,中空断面部材 の軸圧壊の有効性を確認した.空き缶を用いた実験では シェル側面の加工がピーク荷重の低減・エネルギ吸収効率の改善 に効果的であることがわかった.また直列配置は機能低 下がなく,並列配置では衝撃のタイミングの調節によりピーク 荷重の突出を抑える効果が確認された. 試算によれば空き缶の直列・並列を組み合わせること で重量 1.5ton,速度 10m/sec 程度の剛体のエネルギ吸収は現 実的なオーダーであり, 今後は落石対策工や鉄道以外の利用 にも期待が持てる. 参考文献 1)先端材料技術協会監修:ハニカム構造材料の応用,CMC 出 版,1995.1 2)日本機会学会:衝撃破壊工学,技報堂出版,1990.6 3)多谷虎男:振動・衝撃の基礎理論とラプラス変換(下),学 会出版センター,1984.7
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