【政策研のページ】日本を含む国際共同治験実施状況

政策研の 日本を含む国際共同治験実施状況
ページ 2006年度薬価制度改革の与える影響
最近、「国際共同治験」という言葉を新聞、雑誌などで目にする機会が多くなってきまし
た。国際共同治験とは、1ヵ国のみでなく、複数の国で同時に実施される治験を指しま
す。日本を含む国際共同治験データに基づき申請された医薬品が、今年初めて承認され
たことにより、国際共同治験がいっそう注目を集めることになりました。国際共同治験
を活用した医薬品開発により、世界中の患者さんに、より早く医薬品を提供できる可能
性が期待されています。そこで今回、国際共同治験の実施状況について調査した結果を
紹介します。
今回の調査では、臨床試験情報提供サイト
1)
およびⅢ治験のプロトコル登録状況を下図に示しま
に登録された被験者募集中
す。外国企業がスポンサーの治験合計1069件のう
(以下、予定を含む)のフェーズⅡおよびⅢ治験のう
ち、国際共同治験は369件、日本企業がスポンサー
ち、2005年度全世界医薬品売上8位までの外国企
の治験合計93件のうち、国際共同治験は44件あり
業および日本企業(関連会社を含む)の中で上位4
ました。しかしながら、この国際共同治験のうち、
"clinicaltrials.gov"
2)
社 がスポンサーとして登録されているプロトコル
日本も諸外国と同じプロトコルに組み込まれている
(治験実施計画書)を集計対象としました(2006
ものは、外国企業で5件、日本企業で1件の合計6件
年8月24日時点)。なお、今回の調査では、1つの
に過ぎません。
プロトコルに実施国として2ヵ国以上が組み込まれ
今回確認された国際共同治験(合計413件)に組
たものを国際共同治験プロトコルとみなして集計し
み込まれている国は計87ヵ国でした。この中で最も
ました。
多く組み込まれているのは米国(264件)です。ヨ
集計対象企業における被験者募集中のフェーズⅡ
ーロッパではドイツ(171件)、スペイン(133件)
、
1) 米国国立衛生研究所(NIH)と米国食品医薬品局(FDA)
が共同で、米国国立医学図書部(NLM)を通じて、臨床
試験情報を提供するインターネットサイト(http://
clinicaltrials.gov/)に基づく【2006.8.24時点】
2)集計対象企業:
外国企業
アストラゼネカ、グラクソ・スミスクライン、 サノフィ・
アベンティス、ジョンソン&ジョンソン、ノバルティス、
ファイザー、メルク、ロシュ
日本企業(国外関連会社含む)
アステラス、エーザイ、第一三共、武田
図 被験者募集中の治験プロトコル数(フェーズⅡおよびⅢ)
JPMA News Letter No.117(2007/01)
38
日本を含む国際共同治験実施状況
表 日本を含む国際共同治験の詳細
スポンサー
企業国籍
実施
国数
目標
症例数
フェーズ
対象疾患
日本
4
2930
3
重症セプシス
地域
実施国
アジア
北米
アジア
北米
7500
3
骨粗鬆症
欧州
大洋州
中東
2
アジア
胃癌
欧州
220
2
乳癌
イギリス
9
7
1212
260
3
2
エジプト、南アフリカ
日本、香港、韓国、台湾
イタリア、ポルトガル
アジア
17
オーストラリア
トルコ
アフリカ
160
アルゼンチン、ブラジル、コスタリカ、メキシコ
ベルギー、クロアチア、デンマーク、エストニア、
フィンランド、フランス、ドイツ、ハンガリー、
アイルランド、イタリア、リトアニア、ノルウェー、
ポーランド、ルーマニア、ロシア、スペイン、
スウェーデン、イギリス
米国
6
日本、香港、インド、韓国
米国、カナダ
中南米
32
日本
米国、カナダ、(プエルトリコ)
日本、インド、台湾
北米
米国、カナダ
欧州
オーストリア、ベルギー、フランス、ドイツ、ギリシャ、
イタリア、ポーランド、スペイン、スウェーデン、
スイス、イギリス
大洋州
オーストラリア
アジア
日本、中国、香港、インドネシア、マレーシア、
フィリピン、シンガポール、台湾、タイ
アジア
日本
肺癌
乳癌
欧州
チェコ、イタリア、ポーランド、ルーマニア、ロシア、
ウクライナ
フランス(132件)、イギリス(124件)といった
状況に置かれていることが明らかとなりました。日
数多くの国が組み込まれています。また、米国に近
本で最新の治験薬を用いての最先端の臨床試験が行
接するカナダ(175件)、メキシコ(86件)の他、
われていないという環境は、国内の臨床研究の停滞
オーストラリア(105件)も多く組み込まれていま
や、海外で使用されている医薬品が日本では使用で
す。アジアについては、インド(59件)、韓国、台
きないという「ドラッグラグ」につながる恐れがあ
湾 ( と も に 5 1 件 )、 マ レ ー シ ア ( 2 8 件 )、 中 国
り、ひいては、日本の医療水準に影響を及ぼす可能
(18件)などで多く組み込まれているなか、日本は
性が懸念されます。欧米諸国のみならず、多くのア
6件にとどまっています。
日本を含む国際共同治験の詳細を表に示します。
ジア諸国においても国際共同治験が実施されており、
これらの国々と共同で治験を推進できるような日本
癌を対象とした治験が6件中4件あり、日本は癌領域
のインフラ整備を進めていくことが重要な課題と考
で国際共同治験への取り組みが進んでいることが推
えられます。国内外の患者さんの手に、より早く、
察されます。
有効で安全な医薬品を届けるために日本を含めた国
今回の調査で、日本は実施企業の国籍にかかわら
際共同治験の活性化が望まれます。
ず、国際共同治験のプロトコルの対象とされておら
ず、新薬創出能力を有する欧米諸国では見られない
日本を含む国際共同治験実施状況
(医薬産業政策研究所主任研究員 石橋慶太)
JPMA News Letter No.117(2007/01)
39