IMO ばら積み液体・気体小委員会 BLG16(ロンドン) - 海上技術安全研究所

海上の安全と海洋環境保護に貢献する海上技術安全研究所
(独)海上技術安全研究所
会
議: 国際海事機関(IMO)第 16 回
国際会議報告
ばら積み液体・気体小委員会(BLG 16)
開催場所: 国際海事機関(IMO)、英国、ロンドン
会議期間: 2012 年 1 月 30 日∼2 月 3 日
参 加 国: 日本をはじめ、53 ヶ国、1 地域、19 機関
海技研からの参加者: 吉田
公一(国際連携センター長)
太田
進
工藤
潤一(海洋リスク評価系
柳
(運航・物流系
裕一朗(運航・物流系
国際連携センター併任
上席研究員)
リスク解析研究グループ
運航解析技術研究グループ
研究員)
研究員)
概要
LNG 等ガス又は低引火点物質を燃料として使用する船舶の安全規定(IGF Code)について
は、LNG 燃料船の安全に関する暫定ガイドラインをベースに作業部会(WG)が作成した案文
に関して、審議が行われ、日本の提案は概ね受け入れられた。小委員会は再度通信部会(CG)
を設置して、次回 BLG 17 会議(2013 年 2 月)で IGF Code 案を仕上げるべく、作業を継続す
ることに合意した。
改正液化ガスのばら積み運送のための船舶の構造及び設備に関する国際規則(IGC Code)に
ついては、CG による改正案を基本として検討し、概ね審議を終え、他の小委員会の検討を経
て、次回 BLG 17 会議(2013 年 2 月)にて仕上げる予定である。
新しく建造する載荷重量20,000トン未満のタンカーに不活性ガス装置(IGS:タンク内の酸素
濃度を下げて爆発を防止する装置)の搭載を義務付けることがIMOの海上安全委員会(MSC)
ですでに合意されているが、国際ばら積みケミカルコード(IBC Code)の中のIGSの運用に係
る規定を改正する必要がある。今次会合では、ノルウェーからの同改正案(新造船に対する規
定)を検討したが、IBC Codeは現存船に関する措置も規定していることから、本件の検討を継
続することとなった。すなわち、今年10月のESPH(Evaluation of Safety and Pollution Hazards
of Chemicals)作業部会でさらに検討して、2013年1月の防火小委員会(FP 56)に報告し、
BLG 17会議(2013年2月)において仕上げて、MSC 92会議(2013年5月)での承認とMSC 93
会議(2014年5月)でのIBC Code改正の採択を目指すこととなった。
主な貢献:
吉田は、国際ばら積みケミカルコード(IBC Code)に関する検討、特に、載荷重量 20,000 トン未
満のタンカーでのイナートガス・システムの運用要件の検討に船舶防火の専門家として参画し、議
事進行に貢献した。
太田及び工藤は、改正液化ガスのばら積み運送のための船舶の構造及び設備に関する国際規則
(IGC Code)の審議に参画した。この議題については、起草部会(DG)が設置され、太田及び工藤
は DG にも出席し、日本提案の実現及びコード案の改善に貢献した。
柳は、LNG 等ガス又は低引火点燃料を使用する船舶の安全規定(IGF Code)の審議に参画した。
この議題については、WG が設置され、WG にも出席し、IGF Code 案の明確化等に貢献した。
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海上の安全と海洋環境保護に貢献する海上技術安全研究所
海上技術安全研究所からの会議出席者の様子
主な審議結果
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新造船(建造年は後から決める)及びバイオ燃
料混合油を運送する全ての現存及び新造船へ適
用される旨の明確化を求め、また現存船に関し
ては、適用日以降の最初の乾ドック検査時まで
とするよう求め、BLG 16 はこれに合意し、次
回 ESPH-18 作業部会で引き続き検討を行うこ
とに合意した。
IBC Code の改正及び関連事項
1.1 タンカーの爆発事故防止
載荷重量 20,000 トン未満のタンカーへの IGS
の搭載は新造船に対してのみの要件であること
を確認した。一方、ノルウェー提案
(BLG 16/3/4)は新造船のみへの適用を考慮し
て現 IBC Code を書き換えようとするものであ
るが、IBC Code は現存船へも適用されるため、
その改正案は新造船に適用される新要件と現存
船に適用される既存の要件を考慮し、慎重に検
討する必要がある旨、日本が指摘した。そこで、
今次会合では解決が困難であるため、本件の検
討を継続することとなった。すなわち、今年
10 月の ESPH-18 作業部会でさらに検討して、
防火小委員会会議(FP 56、2013 年 1 月)に報
告し、BLG 17 会議(2013 年 2 月)において仕
上げて、MSC 92 会議(2013 年 5 月)での承認
と MSC 93 会議(2014 年 5 月)での IBC Code
改正の採択(改正の発行は 2016 年 1 月 1 日)
を目指すこととなった。
1.3 物質の評価と IBC Code 等の改正
新規の物質及び混合物、並びに 43 の洗浄剤
の評価を行い、IBC Code 等へ盛り込むことに
合意した。本件の IBC Code の改正は、2012 年
春 の 海 洋 環 境 保 護 委 員 会 ( MEPC 63 ) 及 び
MSC 90 での承認,2012 年秋の MEPC 64 及び
MSC 91 での採択を経て 2014 年 7 月 1 日の発効
が見込まれている。
1.4 洗浄剤の海洋投棄の制限
海洋汚染防止(MARPOL)条約附属書 V の
改正では、甲板及び船倉洗浄剤の排出が制限
(制御)され、有害な洗浄剤の海上への排出が
禁止される。そこで、有害性の判断基準を策定
する必要があり、今次会合は「MARPOL 条約
附 属 書 III に お け る 有 害 物 質 ( harmful
substance)ではなく、かつ長期健康影響のうち
CMR(発がん性・変異原性・生殖毒性)を含
まないこと」を判定基準とすることに合意した。
また、有害性の評価は製造者自身に委ねること
とし、製造者に対し基準に合致することを証明
する書類を要求することに合意した。
1.2 油排出監視装置(ODME)に関するガイ
ドライン
バイオ燃料への ODME の適用は 2016 年 1 月
1 日から開始される。そこで、バイオ燃料にも
対応するよう ODME に関するガイドライン
(MEPC 決議 108(49))を改正する作業が進め
られている。日本は、この改正ガイドラインは
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海上の安全と海洋環境保護に貢献する海上技術安全研究所
1.5 IBC Code 第 17、18 及び 21 章の見直し
も、船体縦強度の基準を満たすこと
今後は、貨物格納装置の Limit State Design の
詳細について、引き続き検討される予定である。
現行輸送要件と最新の GESAMP ハザードプ
ロファイル(GHP)に基づいた輸送要件の矛盾
を解決するための IBC Code 第 17 及び 18 章の
見直しに関する検討を行ったが、海洋に排出さ
れた場合の挙動を判断する基準(溶解性、沈殿
性、飽和蒸気濃度、急性毒性等)をさらに慎重
に検討する必要があることを認め、2014 年ま
でに第 21 章(運送要件)の見直しを行い、こ
の見直し結果に基づく第 17 及び 18 章改正案を
2015 年 中 に 準 備 し 、 2018 年 の こ れ ら の
IBC Code 改正は、2018 年の発効を見込むこと
となった。
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今次会合では、CG が作成した IGF Code 案を
報告した(BLG 16/6)。日本はこれに対して修
正提案(BLG 16/6/2)を提出した。日本の修正
提案の大半は、基本的には支持され、一部表現
を修正の上、改正コード案に取り入れられた。
また、再度 CG を設置して、次回 BLG 17 に向
けて IGF Code 案の策定作業を進めることと
なった。具体的には、以下が合意された。
z タンク接続間の最初のフランジまでにあり、
タンクの要件を満たす溶接継ぎ手はタンク
コネクションとはみなさないこと
z 二重管については、爆発が起きないとして
よいこと
z 応力解析に関する規定をコード内に入れる
こと
今 後 は 、 2014 年 を 完 成 目 標 に 、引 き 続 き
コードについて CG で検討される予定である。
1.6 船上での貨物の混合及び生成
船上における貨物の混合作業を禁止する
SOLAS 条約第 VI 章 5-2 規則案は、MSC 89 会
議ですでに承認され、MSC 90 会議(2012 年 5
月)で採択されることとなっている。これに関
連して、船上における貨物の化学反応を伴う処
理も禁止することが原則合意されており、今次
会合でそのための規則案を作成し(SOLAS 条
約第 VI 章 5-3 規則案)、MSC 90 会議(2012 年
5 月)へ承認のため上程されることとなった。
これに対して、洋上油田基地等に物資を供給す
る船舶での日常業務が妨げられる懸念が示され、
MSC 90 にてさらに議論することとなった。な
お、品質管理及び温度管理のために行われる貨
物の船内循環は混合作業ではないことに合意し
た。
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IGF Code 案について
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バラスト水の管理関係及び船体外板付着物
による生物の越境移動
船舶のバラストによる生物の有害な越境移動
を抑制するためのバラスト水管理条約は、ここ
1年間で新たに 6 カ国(イラン、レバノン、モ
ンゴル、モオテネグロ、パラオ及びトリニダー
ド・トバゴ)が批准し、合計 33 カ国(その合
計船腹量は世界船腹量の 26.46%)が批准して
いるが、まだ条約成立には至っていない。
同条約に係るポートステート・コントロール
において、船上での書類検査で不備が見つかっ
た場合にオプションとして実施されることが予
定されている船上でのバラスト水のサンプリン
グ検査に関して、今次会合のバラスト水管理に
関する作業部会が、同サンプリングと分析方法
関するに関するガイダンス案を作成し、MEPC
へ承認を求めるよう提案した。
しかしながら、国際船主協会(ICS)をはじ
め多くの国が、船上に搭載するバラスト水管理
装置は国際基準に則って型式承認されたもので
あり、その有効性を港でのサンプリングで検証
することはこの承認を無効にする行為であるこ
と、サンプリングを取る場所及び方法、サンプ
ルされたバラスト水の搬送と保管方法によって
分析結果が大きく異なる懸念があることを理由
IGC Code の改正
今次会合では、CG が作成した IGC Code の
改正案を報告した(BLG 16/7)。日本はこれに
対して修正提案(BLG 16/7/1)を提出した。日
本の修正提案の大半は、基本的には合意され、
一部表現を修正の上、改正コード案に取り入れ
られた。具体的には、以下が合意された。
z 危 険 場 所 ( Hazardous area) / 非 危 険 場 所
(Non-hazardous area)に関する定義及び例
示の修正
z 縦構造部材の heating による保護については、
環境温度条件が基準値であっても、以下の
条件を満たせば認めることに合意した。
¾ 材料は、-30 度または heating による温度
より 30 度低い値の低い方に耐えること。
¾ heating によって保護された部材が無くて
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海上の安全と海洋環境保護に貢献する海上技術安全研究所
に、同ガイダンス案が極めて未完成であると主
張し、作業部会が作成したガイダンス案の
MEPC への送付に反対した。
今次会合は、同ガイダンス案をさらに次回
BLG 17 で引き続き検討することとし、MEPC
への送付を見送った。
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に関する追加のガイドライン作成の優先順位
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次回会議
次回 BLG 17 は、2013 年 2 月 4 日から 2 月 8
日)に開催される予定である。
当記事に関する問い合わせ先:
大気汚染防止関係
(独) 海上技術安全研究所
国際連携センター 吉田公一
[email protected]
今次会合は、以下に合意した。
z 船上焼却炉のウォーミングアップ時にスラッ
ジ油の使用を認める統一解釈
z 北極海での船舶からのブラック・カーボンの
排出を検討するための CG の設置;検討事項
は、ブラック・カーボンの定義及び測定方法、
並びに可能な排出制御方法
z MARPOL 条約附属書 VI に係る大気汚染防止
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