胚性幹細胞(ES 細胞)の胚様体(EB)形成 のための培養容器及び培養

No.02-16
FEB 2003
題
名
胚性幹細胞(ES 細胞)の胚様体(EB)形成
のための培養容器及び培養方法
セールスポイント
ES 細胞はいろいろな細胞に分化する能力(多能性)を有しているが、
細胞を分化させる場合、胚様体(EB)を形成させてから行うのが一般
的である。EB の形成は、これまでハンギング・ドロップ(HD)法とい
う培養法で行われてきたが、この方法は操作が煩雑で、難易度が高く、
EB の形成率も十分とはいえない。新規に開発した EB 形成法は、簡便
で、特別な技術を用いることなく、形状的、質的に均一な EB を形成
することが可能である。さらに、HD 法に比べて、大型の EB の形成が
可能であることを特徴とする。
発
明
者
黒 澤
佐々木
尋(山梨大学工学部)
克典(信州大学医学部)
今村
哲 也(信州大学医学部)
1.タイトル
胚性幹細胞(ES 細胞)の胚様体(EB)形成のための
培養容器及び培養方法
2.特許出願
特願2003−050155
3.発明者
黒澤 尋(山梨大学工学部・助教授)
佐々木 克典(信州大学医学部・教授)
今村 哲也(信州大学医学部)
(1)発明の要点
胚性幹細胞(ES 細胞)は一般に「万能細胞」とよばれ、高い増殖能と
あらゆる細胞へ分化する可能性を有している。ES 細胞から特定の細胞へ
分化させるには、中間段階として胚様態(EB)を経るのが通常である。
EB を形成させるための従来法であるハンギングドロップ法は、操作が煩
雑な上に EB の形成率が低いという問題点がある。また、形成された EB
の質も不安定である。このため、その後 EB から特定の細胞へと分化させ
る場合、分化の程度が不均一になりやすい。
本発明は、ES 細胞から質的に安定した EB を簡便に効率よく形成する
ことを可能にする培養容器及び培養方法に関するものである。
4.技術の概要
(2)発明(考案)の特徴
2.1 容器の材質
ES 細胞を培養して EB を形成させるには、培養中に ES 細胞が容器に付
着することを避けなければならない。このため、容器の材質をポリプロピ
レンとした。
2.2 容器の形状
ES 細胞が EB となるには、細胞集塊が形成されなければならない。細
胞が一所に集合して集塊を形成しやすいように、培養容器の形状はコニカ
ル型の円筒状チューブとした(全容量は 1.5ml)。開口部の直径は 10mm、
底部は R=2mm の丸底で、深さは 30∼40mm である。コニカルな形状を
有している部分は、容器底部から 15∼20mm の範囲である。すなわち容器
の上半分は容器径が 10mm の円筒である(図 1)。これにより、細胞同士
の接触度合いが高まり、細胞集塊が形成されやすくなる。
スクリューキャップ
30∼40 mm
10 mm
自立スタンド
胚様体(EB)
丸底(R=2mm)
図 1 スクリュー式のフタを有する丸底のコニカルチューブ
2.3 胚様体の形成
培養 5 日後、図 2 に示した様な EB が形成される。形成された EB を、
分化を促す条件に移して培養すると、速やかに心筋などに分化するのが認
められた。
図 2 マウス ES 細胞から形成された胚様体(EB)
2.4
従来法との比較
表 1 従来法であるハンギングドロップ法との比較
新規培養方法
操作性
ハンギングドロップ法
簡便・迅速、熟練を要しな 煩雑で、熟練を要す
い
培養日数
5 日間
7 日間
EB 形成率
99%
80%
細胞数
2×104∼2×105 cells/well
1×103 cells/well
5.本技術シー
近い将来、再生医療関連のビジネスが興ると考えられる。例えば、細胞
ズが解決する
プロセッシングの受託ビジネスが考えられる。細胞プロセッシングとは、
課題
医師が採取した細胞を受け取り、培養して細胞数を増幅する、分化誘導す
る、細胞を三次元的に組織化する、などの加工を施すことである。治療目
的により様々に加工された細胞が現場の医師のもとへ届けられ、再生医療
の治療が行われる。従って、細胞プロセッシングの受託ビジネスを展開す
るには、再生医療を目的とした培養器具(容器)や装置は不可欠である。
ES 細胞は、再生医療を実現する上で注目されている細胞であり、産業化
するには EB を簡便かつ迅速に大量生産する必要がある。また、産業化の
前段階では、基礎研究が必要であり、基礎研究の過程においても手軽に EB
の形成が可能になれば、基礎研究が促進されるであろう。
6. 関 連 マ ー ケ
ット
細胞プロセッシングの受託ビジネス
7. 発 明 者 の 最
ES 細胞の分化に及ぼす物理化学的因子の解明
大学等の試験研究機関
近のテーマ
8. 発 明 者 の 主
Cultivation of rat hepatocytes in a medium based on commercially available
な論文
infusion solutions, H. Kurosawa, M. Chino, Y. Amano, J. Biosci. Bioeng., 89,
(6) 615-616 (2000)
Polyurethane membrane as an efficient immobilization carrier for high-density
culture of rat hepatocytes in the fixed-bed reactor. H. Kurosawa, K. Yasumoto,
T. Kimura, Y. Amano, Biotechnol. Bioeng., 70 (2) 160-166 (2000)
Adult rat hepatocytes cultured on an oxygen-permeable film increases the
activity of albumin secretion, H. Kurosawa, R. Yasuda, Y. Osano, Y. Amano,
Cytotechnology, 36 (1-3) 85-92 (2001)
Morphology
and Albumin Secretion of Adult Rat Hepatocytes
Cultured on a Hydrophobic Porous Expanded Polytetrafluoroethylene
Membrane. H. Kurosawa, E. Yuminamochi, R. Yasuda, Y. Amano, J.
Biosci. Bioeng., 95, (1) 59-64 (2003)
9. 発 明 者 の 所 日本生物工学会、日本人工臓器学会
属学会
日本バイオマテリアル学会、日本動物細胞工学会
日本再生医療学会など
10.その他
株式会社 山梨ティー・エル・オー
〒400-8510 山梨県甲府市武田 4 丁目 3−11
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