MA2011-10 船 舶 事 故 調 査 報 告 書 平成23年10月28日 運 輸 安 全 委 員 会 (東京事案) 1 モーターボート第二日光丸転覆 2 自動車運搬船 PYXIS 火災 3 貨物船 MARINE STAR コンテナ専用船たかさご衝突 4 貨物船 DONG PHONG 乗揚 5 油タンカー第三十二大洋丸砂利運搬船第三十八勝丸衝突 (地方事務所事案) 函館事務所 6 漁船伸栄丸乗組員死亡 7 漁船第三十八天寵丸乗組員死亡 8 漁船第六十六総幸丸転覆 9 漁船正栄丸転覆 仙台事務所 10 漁船有幸丸火災 11 漁船金政丸乗組員死亡 12 漁船幸運丸乗組員死亡 横浜事務所 13 貨物船 MAO XIN 乗組員負傷 14 モーターボートHONEY MAY Ⅵ沈没 15 モーターボートスヌープドック衝突(係船浮標) 16 水上オートバイはまなす3号被引浮体搭乗者死亡 17 貨客船かめりあ丸衝突(岸壁) 18 漁船はなぶさ丸火災 19 モーターボートアドレナリンジャンキーⅡ衝突(護岸) 20 遊漁船福洋丸モーターボート BIG BIRD Ⅱ衝突 21 漁船第八十一鷹丸衝突(岸壁) 22 貨物船第拾弐榮壽丸衝突(護岸) 23 モーターボートおしごと丸モーターボートメンパ衝突 24 手漕ぎボート(船名不詳)沈没 25 貨物船すみほう丸乗揚 26 ミニボート(船名なし)操縦者死亡 27 漁船第5秋田丸乗揚 28 モーターボート F.THANKS 乗揚 29 漁船おおとり号転覆 広島事務所 30 モーターボート宗丸モーターボート納田丸衝突 31 交通船せとひめ乗揚 32 巡視艇いよざくら乗揚 33 油送船第八十三東洋丸油送船富士川丸衝突 34 漁船第二松栄丸乗組員死亡 35 プレジャーボートまさき衝突(かき筏) 36 漁船第三十八天王丸転覆 37 貨物船吉祥丸漁船航周丸衝突 38 漁船第五十一簸川丸定置網損傷 39 漁船第三大勘丸乗組員負傷 40 引船北木丸台船DK-1衝突 41 油送船日菖丸モーターボート中山丸衝突 門司事務所 42 遊漁船三晴丸モーターボート HIKOMARU 衝突 43 モーターボート節子丸乗揚 44 漁船 NO.3 DAE GWANG HO 漁船豊漁丸衝突 45 漁船大福丸浸水 46 巡視艇さたかぜ乗揚 47 漁船第二十七豊徳丸漁船一丸衝突 48 漁船第11大惠丸乗揚 長崎事務所 49 ミニボート(船名なし)転覆 50 遊覧船アルクマール爆発 51 廃棄物運搬船くいーんえいと油送船大和丸乗揚 本報告書の調査は、本件船舶事故に関し、運輸安全委員会設置法に基づき、 運輸安全委員会により、船舶事故及び事故に伴い発生した被害の原因を究明し、 事故の防止及び被害の軽減に寄与することを目的として行われたものであり、 事故の責任を問うために行われたものではない。 運 輸 安 全 委 員 会 委 員 長 後 藤 昇 弘 ≪参 考≫ 本報告書本文中に用いる分析の結果を表す用語の取扱いについて 本報告書の本文中「3 分 析」に用いる分析の結果を表す用語は、次のとおりと する。 ① 断定できる場合 ・・・「認められる」 ② 断定できないが、ほぼ間違いない場合 ・・・「推定される」 ③ 可能性が高い場合 ・・・「考えられる」 ④ 可能性がある場合 ・・・「可能性が考えられる」 ・・・「可能性があると考えられる」 43 モーターボート節子丸乗揚 船舶事故調査報告書 平成23年9月15日 運輸安全委員会(海事専門部会)議決 委 員 横 山 鐵 男(部会長) 委 員 山 本 哲 也 委 員 石 川 敏 行 事故種類 乗揚 発生日時 平成23年7月11日(月) 01時40分ごろ 発生場所 宮崎県宮崎市巾 着 島東方沖 きんちゃく 巾着島灯台から真方位118°300m付近 事故調査の経過 (概位 北緯31°44.2′ 東経131°28.6′) 平成23年7月13日、本事故の調査を担当する主管調査官(門司事務 所)ほか1人の地方事故調査官を指名した。 原因関係者としての船長からの意見聴取は、本人が本事故で死亡したた め行わなかった。 事実情報 船種船名、総トン数 船舶番号、船舶所有者等 せつこ モーターボート 節子丸、5トン未満 295-43064宮崎、個人所有 L×B×D、船質 7.25m(Lr)×2.28m×0.86m、FRP 機関、出力、進水等 ガソリン機関(船外機) 、85kW(連続最大) 、平成14年3月 乗組員等に関する情報 船長 男性 74歳 一級小型船舶操縦士・特殊小型船舶操縦士・特定 免 許 登 録 日 平成15年9月29日 免許証交付日 平成19年10月1日 (平成25年9月30日まで有効) 死傷者等 死亡 1人(船長) 損傷 乗揚後に転覆して大破 事故の経過 本船は、船長ほか同乗者2人(以下「同乗者A」及び「同乗者B」とい う ど う。 )が乗船し、平成23年7月10日夕刻から宮崎県日南市鵜戸埼沖で錨 泊して釣りを始めたが、目的魚であるいさきが釣れなかったので釣りをや うちうみ め、定係地の宮崎県宮崎市内 海 港内に浅所があるので、満潮時の前後に同 港に帰る必要があり、当日の満潮時刻が01時30分ごろであったことか ら、翌11日01時20分ごろ同港に向けて帰途についた。 本船は、船長が操舵室の右舷側で立って手動操舵に就き、同乗者Aが船 長の左側に立って見張りを行い、同乗者Bが左舷船尾付近で腰を掛け、1 0ノットよりも遅い速力で巾着島の南東方を北進した。 同乗者Aは、船長が日頃から陸岸寄りを航行する傾向があることを知人 から聞いており、左舷側の陸上灯火が近くに見えていたので、船長と操舵 を交代してもらおうとしたが、小型船舶の操縦免許を持っていなかったこ とから、船長から操舵を交代してもらえなかった。 同乗者Aは、本船が左舷側の陸岸寄りを航行するので、船長に対して陸 岸に接近しているので本船を沖に出さないと危険である旨を何度も進言し - 1 - たが、船長は、その後も陸岸寄りを北進し、平成23年7月11日01時 40分ごろ、巾着島灯台の東南東方約300mの浅瀬に乗り揚げた。 本船は、前進惰力で離礁し、船長が、沖に向けて航行を始めたものの、 再び陸岸寄りを北進するようになったので、同乗者Aが、船長に対して本 船を沖に出さないと危険である旨を進言したが、そのまま北進を続けて間 もなく再び浅瀬に乗り揚げた。 同乗者Aは、01時48分ごろ、海上保安庁に118番通報して救助を 要請した。 同乗者2人は、本船がうねりによって岩などに当たっていたので、本船 が岩に寄せられたときに岩に乗り移り、船長に対して岩に乗り移るように 言ったが、船長が浅瀬から離れようとして操船しているうち、引き波で本 船が岩から離れたため、船長が岩に乗り移ることができなかった。 本船は、その直後にうねりを受けて大きく傾斜したとき、船長が落水 し、間もなく転覆した。 救命胴衣を着用していた船長は、海面に顔を出して浮いていたので、同 乗者2人が、船長を引き揚げようとしたものの、船長の意識がなく、手が 届かなかったので引き揚げることができず、暗かったことから間もなく船 長が見えなくなった。 同乗者2人は、船長を探していたところ、03時45分ごろ、本船が転 覆した場所付近で打ち上げられた船長を発見し、引き揚げて人工呼吸を行 いながら救助を待った。 船長及び同乗者2人は、04時25分ごろ、海上保安庁のヘリコプター で吊り上げられ、救急車により病院に搬送されたが、船長の死亡が確認さ れた。 気象・海象 .. 本船は、地元の漁船により内海港までえい航された。 気象:天気 晴れ、風向 北東、風速 約5m/s、視界 良好 海象:東寄りのうねり 波高 約1m、潮汐 ほぼ満潮時、水温 約22℃ その他の事項 死体検案書によれば、船長の死因は溺死であった。 本船は、GPSプロッター及び魚群探知機を備え、船首約0.30m、船 尾約0.55mの喫水であった。 船長のGPSプロッターの使用状況については不明であり、魚群探知機 は作動させていなかった。 巾着島の東方には、巾着島灯台の東方約200mに「ぐんかん瀬」と呼 ばれている南北に細長い瀬があり、同島から同瀬にかけて干出浜(岩)が 拡延し、さらに、同瀬の東方から南西方にかけて洗岩及び暗岩が多数存在 して小型船舶にとっても航行に危険な海域となっており、本事故発生場所 は、ぐんかん瀬南東方の浅瀬であった。 同乗者2人は、小型船舶操縦免許を受有していなかった。 船長及び同乗者2人は、救命胴衣を着用していた。 同乗者Aは、GPS機能付きの携帯電話で118番通報したので、海上 保安庁では同機能により通話者の位置を特定することができた。 分析 乗組員等の関与 あり 船体・機関等の関与 なし 気象・海象の関与 なし 本船は、巾着島南東方沖を北進中、船長が浅瀬 判明した事項の解析 - 2 - の存在する巾着島寄りの海域を航行したことか ら、浅瀬に乗り揚げたものと考えられる。 船長は、同乗者Aから本船を沖に出すように何 度も進言されたのちも、巾着島寄りの海域を北進 したものと考えられるが、その理由を明らかにす ることはできなかった。また、船長のGPSプロ ッターの使用状況については、明らかにすること はできなかった。 船長の死因は、溺死であった。 船長は、乗り揚げたのち、うねりによって本船 が傾斜したときに落水し、溺水したものと考えら れるが、溺水するに至った状況を明らかにするこ とはできなかった。 原因 本事故は、夜間、本船が、巾着島南東方沖を北進中、船長が浅瀬の存在 する巾着島寄りの海域を航行したため、浅瀬に乗り揚げたことにより発生 したものと考えられる。 参考 今後の同種事故等の再発防止及び被害の軽減に役立つ事項として、次の ことが考えられる。 ・夜間においては、危険な岩場が存在する海域から十分に距離を隔てて 航行すること。 ・GPSプロッターにより船位を確認しながら航行すること。 ・救命胴衣を着用すること。 ・本事故では、GPS機能付きの携帯電話で118番通報したので、救 助機関において通話者の位置を特定することができたことから、携帯電 話は、防水型でGPS機能付きのものが望ましい。 - 3 -
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