2010 年 10 月 7 日 電動パワーステアリング世界市場に関する調査結果 2010 【調査要綱】 矢野経済研究所では、次の調査要綱にて電動パワーステアリングシステム市場の調査を実施した。 1.調査期間:2010 年 6 月~9 月 2.調査対象:EPS システムメーカ、EPS 構成部品メーカ等 3.調査方法:当社専門研究員による直接面談、電話・e-mail によるヒアリング、ならびに文献調査併用 <電動パワーステアリングとは> ステアリングのアシストに、電気モータを利用する技術を電動パワーステアリング(EPS:Electric Power Steering)という。ドライバーの操舵力をトルクセンサで検出し、ECU(電子制御ユニット)でモータを制 御することで操舵をアシストする。基本的な構成に違いは無いが、アシストする箇所(モータの取り付け位 置)によって、コラムアシスト・ピニオンアシスト・ラックアシストの 3 つの方式が存在している。旧来の 油圧式システムと比較し、燃費と制御面で優れるため、急速に普及してきた。本調査では、電動モータで油 圧を発生させ操舵アシストに利用する電動油圧パワーステアリング(EHPS:Electronic Hydraulic Power Steering)も対象としている 【調査結果サマリー】 2010 年以降の EPS 市場はコラムアシスト式・ラックアシスト式が牽引する、2016 年の 市場は約 4,890 万台規模に、2009 年比約 2.5 倍と大きく伸長する 2009 年の EPS(電動パワーステアリング)世界市場は、1,920 万台規模と推計した。コラムアシ スト式が市場の半分を占めており、このトレンドは 2010 年以降も変わらないが、大型車中心の北米 市場での EPS 装着率が飛躍的に高まることから、これら車両に適したラックアシスト式も数量を伸ば すとみる。2016 年の市場は 2009 年比約 2.5 倍となる 4,890 万台規模に拡大すると推計する。 一方の EHPS(電動油圧パワーステアリング)は 2009 年に 330 万台の市場となっているが、燃費 性能で EPS に劣ることから徐々に EPS に取って代わられる可能性が高い。2016 年の市場は 2009 年比 42%減の 190 万台規模まで縮小するものと推計する。 主要構成部品(モータ・ECU・トルクセンサ)の金額ベースの市場は、年平均成長率 9.9%で成長、2016 年の市場は 2009 年比 1.9 倍にあたる 3,195 億円に達する 主要構成部品は EPS 市場の拡大とともに金額ベースの市場も拡大する。技術面では機能安全 規格への対応など、新たな要請とともに方式が変わっていく過渡期を迎えている。 ◆ 資料体裁 資料名:「電動パワーステアリングシステム市場の最新動向と将来展望 2010」 発刊日:2010 年 9 月 30 日 体 裁:A4 判 147 頁 定 価:136,500 円(本体価格 130,000 円 消費税等 6,500 円) 株式会社 矢野経済研究所 所在地:東京都中野区本町2-46-2 代表取締役社長:水越 孝 設 立:1958年3月 年間レポート発刊:約250タイトル URL: http://www.yano.co.jp/ 本件に関するお問合せ先(当社 HP からも承っております ㈱矢野経済研究所 営業本部 広報宣伝グループ http://www.yano.co.jp/) TEL:03-5371-6912 E-mail:[email protected] 本資料における著作権やその他本資料にかかる一切の権利は、株式会社矢野経済研究所に帰属します。 本資料内容を転載引用等されるにあたっては、上記広報宣伝グループ迄お問合せ下さい。 Copyright © 2010 Yano Research Institute Ltd. 2010 年 10 月 7 日 【 調査結果の概要 】 1. 市場概況とアシスト方式(タイプ)別将来予測 世界的に地球環境問題が議論されるなか、主要先進国では厳しい環境・燃費規制が施行されている。 さらに中国においても先進国と同等とまではいかないものの、15~20%の燃費向上を求める規制がまも なく発動される。このように自動車産業では地域を問わず、燃費向上に向けた取り組みが求められている。 このような背景から、EPS は油圧パワーステアリングと比較して 3~5%の燃費改善が図れる技術として、新 規採用が相次いでいる。 2009 年の EPS(電動パワーステアリング)搭載車両は 1,920 万台、EHPS(電動油圧パワーステアリ ング)は 330 万台と推計した。欧州と日本が先行して搭載を進めており、搭載率も 6~7 割と高いレベルに なっている。両市場は環境・燃費規制が厳しいことに加え、EPS と相性のよい小型車が多いという背景が あり、EPS の搭載が早い段階で進められた。 2000 年代後半には、EPS メーカ各社が大型車や SUV(Sports Utility Vehicle)への搭載を可能にする 高出力 EPS を相次いで製品化していることに加え、米国や中国市場でも燃費規制の強化が発表された。 EPS の搭載が 2 割以下の両市場では、今後 3~4 年で搭載率が大幅に向上する見込みである。2016 年 の EPS 市場は 2009 年比約 2.5 倍となる 4,890 万台規模に拡大すると推計する。 一方の EHPS は、油圧式と同等の優れた操舵感が得られるという長所を持つものの、燃費向上という面 では EPS に及ばないこと、さらにその EPS の操舵感が改善されていることを理由に、一部スポーティーカ ーや高級車への限定的な搭載となる可能性が高い。 EPS をタイプ別にみると、市場の約半分がコラムアシスト式である。低コストで搭載性に優れる特徴を持 ち、小~中型車の領域で搭載が拡大する見込みである。また、ラックアシスト式もシェアを拡大する可能 性が高い。米国市場を中心とした大型車の領域では、まだ油圧式パワーステアリングが多く残っている。 これらの車両に EPS を搭載する場合、出力の面で優れるラックアシスト式が最適であるため、大きく数量を 伸ばすとみられる。一方のピニオンアシスト式は、コストと出力で中途半端な位置づけとなっており、大き な伸張は難しい。これまでピニオンアシスト式を積極採用してきた自動車メーカにおいても、コラムアシスト 式へのシフトが検討されており、注目を集めるところとなっている。 2. 主要構成部品の技術動向と市場予測 EPS のモータにはブラシ付きとブラシレスの 2 タイプが使用される。コストではブラシ付きが優れるが、制 御面や振動特性ではブラシレスが勝る。また日系 EPS メーカでは両者を使い分ける傾向があるのに対し、 海外 EPS メーカはブラシレスのみで展開しているという傾向がある。各社は新興国向けに低コスト EPS を 開発しているが、モータの低コスト化やその使い分けについては注視すべきところとなっている。 また各構成部品について、機能安全への対応が求められるようになる。特にトルクセンサでは、現行主 流の自己インダクタンスタイプではその対応が難しく、ホール IC などの磁気素子タイプに置き換わってい く過渡期を迎えている。また昨今の ESC(横滑り防止装置)の拡大にともない、ESC で必要な操舵角情報 を EPS のトルクセンサで検出する方向でも開発が進んでおり、高機能化が進展していく見通しである。 主要構成部品(モータ・ECU・トルクセンサ)の金額ベースの市場は、年平均成長率 9.9%で成長、2016 年の市場は 2009 年比 1.9 倍にあたる 3,195 億円に達すると予測する。 Copyright © 2010 Yano Research Institute Ltd. 2010 年 10 月 7 日 図表 1.EPS とEHPSのタイプ別世界市場予測 (千台) 60,000 EHPS ラック ピニオン 50,000 コラム 34,000 39,100 2,400 2,600 10,800 40,000 27,100 30,000 20,000 22,500 3,500 3,300 3,360 3,130 5,800 3,600 10,000 30,000 3,000 7,500 4,000 43,300 2,200 46,800 2,000 50,800 1,900 14,900 13,500 12,300 8,900 4,400 4,400 4,400 4,400 4,200 12,710 14,200 15,500 18,300 2009年 2010年 2011年 2012年 24,400 26,900 29,600 21,500 2013年 2014年 2015年 2016年 0 矢野経済研究所推計 EPS 前年比 コラム 前年比 ピニオン 前年比 ラック 前年比 EHPS 前年比 EPS+EHPS 前年比 (単位:千台) 2009年 2010年 2011年 2012年 2013年 2014年 2015年 2016年 19,200 23,600 27,000 31,400 36,700 41,100 44,800 48,900 ― 122.9% 114.4% 116.3% 116.9% 112.0% 109.0% 109.2% 12,710 14,200 15,500 18,300 21,500 24,400 26,900 29,600 ― 111.7% 109.2% 118.1% 117.5% 113.5% 110.2% 110.0% 3,130 3,600 4,000 4,200 4,400 4,400 4,400 4,400 ― 115.0% 111.1% 105.0% 104.8% 100.0% 100.0% 100.0% 3,360 5,800 7,500 8,900 10,800 12,300 13,500 14,900 ― 172.6% 129.3% 118.7% 121.3% 113.9% 109.8% 110.4% 3,300 3,500 3,000 2,600 2,400 2,200 2,000 1,900 ― 106.1% 85.7% 86.7% 92.3% 91.7% 90.9% 95.0% 22,500 27,100 30,000 34,000 39,100 43,300 46,800 50,800 ― 120.4% 110.7% 113.3% 115.0% 110.7% 108.1% 108.5% 矢野経済研究所推計 注 1: 2009 年は実績値、2010 年以降は予測値 注 2:表中のコラムはコラムアシスト式 EPS、ピニオンはピニオンアシスト式 EPS、ラックはラックアシスト式 EPS、EHPS は電動油 圧パワーステアリングを指す 注 3:メーカ出荷数量ベース Copyright © 2010 Yano Research Institute Ltd. 2010 年 10 月 7 日 図表 2.EPS と EHPS 搭載車両数と構成電子部品の世界市場規模予測 (百万円) 350,000 トルクセンサ 319,500 ECU 300,000 301,600 EPS、 EHPS搭載車両数 250,000 263,600 46,800 43,300 233,800 40,000 39,100 211,200 194,500 200,000 50,800 50,000 284,900 モータ (千台 ) 60,000 34,000 164,500 30,000 30,000 27,100 150,000 22,500 20,000 100,000 10,000 50,000 0 0 2009年 2010年 2011年 2012年 2013年 2014年 2015年 2016年 矢野経済研究所推計 EPS、EHPS搭載車両数 前年比 2009年 2010年 2011年 2012年 2013年 2014年 22,500 27,100 30,000 34,000 39,100 43,300 ― 120.4% 110.7% 113.3% 115.0% 110.7% モータ 前年比 ECU 前年比 トルクセンサ 前年比 合計 前年比 2009年 2010年 2011年 2012年 65,200 77,200 83,900 92,500 ― 118.4% 108.7% 110.3% 80,700 93,800 100,000 108,800 ― 116.2% 106.6% 108.8% 18,600 23,500 27,300 32,500 ― 126.3% 116.2% 119.0% 164,500 194,500 211,200 233,800 ― 118.2% 108.6% 110.7% 2013年 104,300 112.8% 120,100 110.4% 39,200 120.6% 263,600 112.7% 2014年 112,600 108.0% 127,300 106.0% 45,000 114.8% 284,900 108.1% (単位:千台) 2015年 2016年 46,800 50,800 108.1% 108.5% (単位:百万円) 2015年 2016年 118,900 125,700 105.6% 105.7% 131,900 137,000 103.6% 103.9% 50,800 56,800 112.9% 111.8% 301,600 319,500 105.9% 105.9% 矢野経済研究所推計 注 4: 2009 年は実績値、2010 年以降は予測値 注 5:モータ、ECU、トルクセンサは部品メーカ出荷金額ベース 注 6: EPS と EHPS 搭載車両数はメーカ出荷台数ベース 注 7:モータと ECU は EPS、EHPS ともに、トルクセンサは EPS のみに使用されるものとして算出した Copyright © 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