資料6 経済協力を巡る最近の情勢変化(PDF形式:244KB) - 経済産業省

資料6
我が国経済協力を巡る最近の情勢変化
《目次》
Ⅰ.経済協力を巡る内外の動向
(1)国内の動向
(2)国際的な動向
Ⅱ.途上国との貿易・投資関係の深化
Ⅲ.東アジア諸国等との経済連携の強化
Ⅳ.地球的規模の問題の深刻化
Ⅴ.経済協力の効果・効率の向上の要請
(1)円借款と技術協力の連携
(2)公的資金と民間資金の連携(PPP)
平成17年5月24日
経済産業省
貿易経済協力局
1
Ⅰ.経済協力を巡る内外の動向
(1)国内の動向
(2)国際的な動向
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(1)国内の動向
日本の経済協力の実績
・日本の政府開発援助(ODA)には無償資金協力、有償資金協力、技術協力からなる二国間ODA及び国
際援助機関等への多国間ODAがある。
二国間ODA
約7,000億円
政府開発援助(ODA)
約1兆円
有償資金協力
〔国際協力銀行(旧OECF)〕
約1,700億円
(※供与と償還のネットベース)
技術協力
〔JICA((独)国際協力機構)、AOTS((財)海外技術者研修協会)、
JODC(財)海外貿易開発協会 等〕
約3,300億円
【重点5分野】
①知的財産権の保護
②基準認証の制度整備・共通化
③物流の効率化
④環境・省エネ
⑤産業人材育成
無償資金協力
約2,000億円
(※数字は2003年実績ベース)
国際機関への拠出等〔世銀、アジア開銀、米州開銀、アフリカ開銀、国連機関等〕
約3,000億円
3
ODA大綱
・2003年8月に改定された新ODA大綱では、途上国の安定と発展への貢献を通じ、我が国の安全と繁栄
を確保するという国益の観点が我が国ODAの目的として明確に位置づけられた。
Ⅰ.理念−目的、方針、重点
1.目的
2.基本方針
3.重点課題
4.重点地域
Ⅱ.援助実施の原則
Ⅲ.援助政策の立案及び実施
1.援助政策の立案及び実施体制
2.国民参加の拡大
3.効果的実施のために必要な事項
Ⅳ.ODA大綱の実施状況に関する報告
(※目的より抜粋)
「・・・我が国は、世界の主要国の一つとして、ODA
を積極的に活用し、これらの問題に率先して取り組
む決意である。こうした取組は、ひいては各国との
友好関係や人の交流の増進、国際場裡における我
が国の立場の強化など、我が国自身にも様々な形
で利益をもたらすものである。
さらに、相互依存関係が深まる中で、国際貿易の
恩恵を享受し、資源・エネルギー、食料などを海外
に大きく依存する我が国としては、ODAを通じて開
発途上国の安定と発展に積極的に貢献する。この
ことは、我が国の安全と繁栄を確保し、国民の利益
を増進することに深く結びついている。特に我が国
と密接な関係を有するアジア諸国との経済的な連
携、様々な交流の活発化を図ることは不可欠であ
る。・・・」
4
ODA予算
・近年の厳しい経済・財政状況やODAに対する国民の厳しい見方などもあり、ODA予算は年々減少傾向
にある。
ODA予算とその他の主要経費比較(指数)
ODA予算の推移
年度
1995
1996
1997
2001
11,061
11,452
11,687
10,152
9,106
8,578
8,169
7,862
対前年度
比(%)
4.0
3.5
2.1
▲ 3.0
▲ 10.3
▲ 5.8
▲ 4.8
▲ 3.8
ピーク時
比(%)
▲ 5.4
▲ 2.0
(ピーク)
▲ 13.1
▲ 22.1
▲ 26.6
▲ 30.1
▲ 32.7
予算額
(億円)
2002
2003
2004
2005
5
経済産業省の経済協力(有償資金協力)
・途上国のインフラ整備や構造改革を支援するための円借款を供与。また、我が国の優れた技術や経験等
を活用する観点から、円借款案件の形成を実施。さらに、途上国のインフラ整備にあたり民間企業の活力
を活用するための政策も実施。
1.円借款関連
(1)円借款(年間事業規模:約7,000億円)
・大規模プロジェクトファイナンス(1件数十億円∼1,000億円超)
→ インドネシア タンジュンプリオク港とアクセス道路(約384億円)
・構造調整ローン(世銀との協調融資など)
→ ベトナム 貧困削減支援借款(約20億円)
・本邦技術活用条件(STEP:日本タイド)
→ ベトナム カイメップ・チーバイ国際港開発事業(約364億円)
(2)円借款案件形成等
・地球環境プラント・プラント活性化事業等調査
→ 円借款候補となる民間企業提案型F/S(Feasibility Study(実現可能性調査))の作成を
支援。(エジプト:ザファラーナ風力発電所建設計画 1999年に調査実施、2003年に円借款
供与)
2.民活事業関連
・開発途上国民活事業環境整備支援事業
→ 民活インフラ事業候補となる民間企業提案型F/Sの作成を支援。2003年度新設。
・アジアPPP研究会、アジア電力タスクフォース等研究会の実施、途上国政府との政策対話等
6
経済産業省の経済協力(技術協力)
・知的財産権の保護、基準認証制度整備、環境・省エネ、物流の効率化、産業人材育成といった分野を中
心とした技術協力政策を実施。
1.民間ベースの協力
○JETRO((独)日本貿易振興機構)、AOTS((財)海外技術者研修協会)、JODC((財)海外貿
易開発協会)を通じて、実証事業(J−Front)、専門家派遣(JEXSA(JETRO専門家派遣:J
ETRO Expert Service Abroad)、JODC)、研修生受入事業(AOTS)等を実施。
・e-パスポート導入に向けた認証基盤構築実証評価(中国、フィリピン:JETRO実証事業)
・中小企業診断事業
(タイ:JICA、JEXSA、JODC)
→4年間で約400名の中小企業診断士(補)を輩出。さらに日本人専門家指導の下、タイ
中小企業診断士(補)が4年間で約1000社の中小企業診断を実施。
・自動車産業資格構築支援事業(タイ、フィリピン:JEXSA、AOTS)
→産業資格制度を構築し、鋳造、プレス加工、機械加工、樹脂成形の4区分で検定試験
を実施。
2.政府間ベースの協力
○JICAを通じて専門家派遣、研修、技術協力プロジェクト(専門家派遣、研修、機材供与等)、開
発調査を実施。
・各国特許庁の機械化支援(マレーシア、フィリピン、ベトナム、インドネシア)
・国家計量標準機関の機能強化(タイ)
・首都圏貿易環境改善計画調査(インドネシア)
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(2)国際的な動向
DAC主要国のODA実績の推移
・主要国のODAは増加傾向にある一方、我が国のODAは減少傾向。
・我が国のODA実績は主要国中第2位。(DAC(開発援助委員会:Development Assistance Committee))
DAC主要国のODA実績の推移
(出典:OECD DAC)
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DAC諸国におけるODA実績の対GNI比
・日本のODAの対GNI比率は0.19%。DAC諸国22カ国中第20位。
・対GNI比の国連目標0.7%を達成している国は5ヶ国のみ。
(2004年)
DAC諸国におけるODA実績の対GNI比
(出典:OECD DAC)
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ODAを巡る近年の国際的な動き
・国際社会においては、2000年にミレニアム開発目標を策定して途上国の開発問題に取り組んできたこと
に加え、多発する紛争やテロを予防し、平和を構築する観点等から、G7やサミットにおいて、開発問題へ
の取組強化の議論がある。
1.関連スケジュール
4月22、23日
アジア・アフリカ首脳会議(インドネシア・バンドン)
5月3日
OECD閣僚理事会(開発セッション)(フランス・パリ)
7月6、7日
G8サミット (イギリス・グレンイーグルス)
9月14∼16日
国連ミレニアム宣言中間レビュー首脳会合(アメリカ・ニューヨーク)
11月15∼19日 APEC大臣会合・首脳会談 (韓国・釜山)
12月12∼13日 ASEAN+3首脳会談、東アジアサミット (マレーシア・プトラジャヤ)
12月13∼18日 WTO公式閣僚会議(中国・香港)
2.ミレニアム開発目標(MDGs:Millennium Development Goals)について
○MDGsとは、2000年9月ニューヨークで開催された国連ミレニアム・サミットで採択された国連ミレ
ニアム宣言と1990年代に開催された主要な国際会議やサミットで採択された国際開発目標を統
合し、一つの共通の枠組みとしてまとめたもの。2015年までに達成すべき8つの目標として、極
度の貧困及び飢餓の撲滅、普遍的初等教育の達成、環境の持続可能性の確保、開発のため
のグローバル・パートナーシップの推進等を具体的数値と共に掲げている。
《ターゲット等》 →・2015年までに1日1ドル未満で生活する人口比率を半減。
・2015年までに飢餓に苦しむ人口の割合を半減。
・2015年までに全ての児童が初等教育を修了 等
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ODAを巡る近年の国際的な動き(続き)
3.アナン国連事務総長による報告書におけるODA関連の記述(2005年3月)(粋)
○先進国は、遅くとも、2015年までにODAの対GNI比0.7%目標を達成するためのタイムテー
ブルを策定すべき。
○手始めに遅くとも2006年までに大幅にODAを増加し、また2009年までに少なくとも0.5%
を達成すべき。
4.アジア・アフリカ首脳会議における小泉首相の発言(2005年4月)(粋)
○ODAの対GNI比0.7%達成に向け努力。
(1)アジア・アフリカ地域を中心に今後5年間で防災・災害復興関係に25億ドル以上を支援。
(2)2008年にTICADⅣを開催。今後3年間でアフリカ向けODAを倍増。
(3)アジア青年協力隊の創設、アジアの生産性運動の知見をアフリカで活かすための支援等に
より、今後4年間でアフリカにおいて1万人の人材育成支援を実施。
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ODAを巡る近年の国際的な動き(続き)
5.アジア・アフリカ首脳会議におけるアフリカ首脳の発言(2005年4月)(粋)
○アフリカ諸国はアジアの商品の輸入国。アジアからのさらなるアフリカへの投資によりアフリカ
がアジアへ輸出できる能力を持てるようになることを歓迎。(ボツワナ)
○先進国は、ODAのGNP比0.7%という約束を守ることができていない。(コートジボワール)
○経済面でのAA協力を強化するために投資促進の枠組、市場アクセスの改善、投資を促進す
る金融面での協力などが重要。(ウガンダ)
○MDGsはAA諸国の連帯により達成可能。アジアの経験に学びたい。(ザンビア)
6.OECD閣僚理事会における声明(2005年5月)(粋)
○ODA:モンテレイ合意の援助総額の大幅な増額にコミット。全てのドナーに最善を尽くすよう求
める。
○アフリカ:投資のための環境整備、内外の資本の動員、農業生産性の向上等、アフリカ諸国に
よるMDGs達成のための努力を多角的に支援。
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Ⅱ.途上国との貿易・投資関係の深化
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民間資金とODA
・途上国の持続的成長のためには、民間投資を呼び込むことが重要であり、民間投資の導入を図るための
貿易・投資環境を整備することが必要。また、民間資金と公的資金との協力関係の構築を図ることも求め
られている。また、タイ・マレーシア等を始めとして、公的債務縮減を求める傾向が強まってきていることも
あり、民間資金の重要性は一層高まっている。
1.先進国から途上国へのFDI(海外直接投資)の推移
経済発展を遂げているアジア地域は、他の途上国地域と比して、民間資金の流入が大きい。
DAC加盟国からアジア・アフリカへのFDI(海外直接投資)の推移
(出典:OECD DAC)
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民間資金とODA(続き)
2.アフリカ地域においても、以下のような民間投資の成功事例がある。
○三菱商事によるハーニック・フェロクロム社の買収(南アフリカ)
・2000年3月、ヨハネスブルク近郊のハーニック・フェロクロム社株式の9.35%を取得。
・2002年8月には約44%買い増しを実行し、同社の過半数株式を取得。
・南アは世界のクロム鉱石埋蔵量の80%弱を有し、また、世界の年間フェロクロム生産量の
50%超を供給する世界最大の供給国。フェロクロムはニッケルと並ぶ主要ステンレス原料。
○三菱化学によるサソールとの合弁会社の設立(南アフリカ)
・安定して原料を供給できる南アフリカでの合弁を検討した結果、2003年に南アのサソール社
との合弁会社であるサソール・ダイヤ・アクリレーツ社を設立(アクリルの製造・販売)。
○マツシタ・エレクトリック(タンザニア)
・松下電器産業100%の出資により、1968年操業開始。
・ラジオ、ラジオカセット、乾電池製造販売。
・乾電池製造ラインを拡張し、東南部アフリカ地域への市場拡大を図る。
(参考:タンザニア)
・住友化学がマラリア対策として使用される蚊帳を現地(タンザニア)プラスチック工場にて生産
中。現在、現地生産の拡大を目指して検討中。
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民間資金とODA(続き)
3.貿易・投資環境整備の必要性
①ハードインフラ
世銀等の推計によると、アジア地域のイ
ンフラ整備のために、2005年から2010
年までの5年間に、毎年2000億ドル以上
の資金が必要だとされており、公的資金
以外による資金調達が必須。
②ソフトインフラ
海外進出企業が直面する問題には、雇用問題、
基準認証、知財、行政制度等の途上国の制度に
かかるものが多い。このため、ハードインフラの
みならず、人材支援、制度整備支援等のソフトイ
ンフラの整備支援も重要。
海外において日本企業が直面する問題点の件数(2003年)
東アジアにおけるインフラに対するニーズ調査(2005∼2010年)
※(出典:ADB・JBIC・世銀「CONNECTING East ASIA」))
1位(355件)
通関規制 輸出入規制・関税
2位(243件)
税制
3位(224件)
雇用
4位(138件)
非効率な行政手続 諸制度・慣行
5位(107件)
工業規格、基準安全認証
6位(81件)
突然の変更、法制度の未整備
7位(76件)
為替管理
8位(62件)
知的財産制度運用
9位(58件)
金融
10位(47件)
廃棄物処理問題 環境問題
(※貿易・投資円滑協議会「各国・地域の貿易・投資上の問題点
と要望「2003年版」より企業アンケート上位10項目を抜粋)
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具体的な協力事例
・投資環境整備
・知的財産権保護
・基準認証
・物流効率化
・環境・省エネ
・産業人材育成
・中小企業振興及び起業家育成
・情報通信
・途上国のガバナンス等の向上
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投資環境整備
・民間企業の海外展開・現地での事業展開を促進するため、存在する種々の障壁をODA等を通じて取り
除く。
【資金協力】
(1)プロジェクト借款
・インドネシアのタンジュンプリオク港リハビリ事業(2003年度 約120億円)、同港へのアクセスを
改善する道路整備事業(2004年度 263億円)に円借款を供与。
・ベトナム北部地域の物流効率化のため、ハイフォン港リハビリ事業に円借款を供与(2000年
度 133億円)。
(2)プログラム借款
・世銀との協調融資でベトナムに円借款を供与(2004年度 20億円)し、二輪車・四輪車への課
税問題等の解決をベトナム政府に働きかけ。
・インドネシアの開発政策を支援する円借款を供与(プログラム・ローン:2004年度108億円)し、
その際の政府協議を通じ、民間投資を呼び込むためのリスクシェアの枠組みを構築するようイ
ンドネシア政府に働きかけ。
(3)案件形成等支援調査
・スリランカ政府に対し、電力セクター改革を支援するため開発プログラム・ローン(2002年度74
億円)を供与。
・経済成長に伴い電力需要の増大が確実視されるインド電力市場の開発・改革動向等を調査。
(民活F/S)
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知的財産権保護
・国境を超えた経済活動のコスト・リスクを下げ、企業の資産を守る。
・中長期的に、各国における知的な創造活動、技術革新を通じた経済発展に寄与する。
【資金協力】
・ベトナムにおいて、知的財産権の保護や執行強化等を通じ、経済改革支援や貧困削減に資
するため、円借款を供与。(1999年、2004年)
【技術協力】
・日中知財誤訳問題の解消に向けて、日中共同で知財翻訳教育の講習のためのカリキュラム、
教材等を作成し、検定試験を試験的に実施。(J−Front)
・タイ、ベトナムにおいて知的財産研修を実施。(AOTS)
・中国において渉外事務所の能力構築のための研修。(AOTS)
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基準認証
・国境を超えた経済活動のコストを引き下げる。
・基準認証制度に関する共通の基盤形成を促進することにより、東アジア域内の産業競争力の強化および
貿易の円滑化に寄与する。
【技術協力】
・ASEAN自動車燃料性状の改善・調和の推進に向けて、フィリピン、インドネシアにおいて石
油製品の試買・分析のモニタリング実証事業を実施。(JETRO)
・中国技術・規格標準化及び適合性評価プロジェクトの実施。(中国:JICA)
・民間部門に対する総合的品質管理(TQM)導入指導事業の実施。(フィリピン、タイ:JETRO)
・フィリピン標準・適合性評価強化プログラムの実施。(フィリピン:JICA)
・タイ国家計量標準機関の機能強化。(タイ:JICA)
・ASEAN域内自動車燃料性状調和の推進。(JETRO)
・e-パスポート導入に向けた認証基盤構築実証評価の実施。(中国、フィリピン:JETRO)
・タイバイオメトリック認証技術を活用した社会ID基盤構築に関する実証実験の実施。(タイ:
JETRO)
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物流効率化
・ロジスティクスの重要性に対する東アジア諸国の理解を浸透させることにより、情報技術、パレットの共通
化等のソフト化を促進する。
・国境を超えた経済活動のコストを下げ、リードタイムの縮小、域内分業の効率化を推進。
【資金協力】
・アジアにおける電子部品共同配送センター運営事業のF/Sを実施。(民活F/S)
【技術協力】
・メコン地域における陸路物流網構築に関わる実証事業を実施。(J−Front)
・インドネシア首都圏貿易環境改善計画調査を実施。(JICA)
・東南アジアにおける輸出用リターナブルコンテナの標準化と相互利用型モデルの実証実験を
実施。(J−Front)
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環境・省エネ
・貿易・投資を通じた経済成長を持続可能なものにする。
・高度成長期の公害を始めとする日本の「苦い経験」に関する情報の共有は、東アジア諸国の今後の発展
においで大きなメリットとなる。
・地球環境問題への対応における協力(ODAを活用したCDMの推進)
【資金協力】
・エジプトにおける紅海西海岸風力開発事業のF/Sを実施し、円借款を供与。(2003年度135
億円)。CDMを期待。ODA流用の議論を回避するべく、ODA以外の資金で排出権購入する
優先交渉権を確保する方向で調整中。
・インドネシアにおける地熱発電、水力発電事業においても、同様の事業のCDM化を検討中。
【技術協力】
・タイにおける公害防止管理者制度の導入に向けて、研修生受入等を実施。(AOTS)
(※水質・大気分野については2004年5月に公害防止者管理者試験がスタート。研修生を平
成16年度は32名受け入れ。)
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産業人材育成
・アジア域内への再投資を含めた投資の促進
・アジア大での優秀な人材活用の促進
・エンジニア、工場の管理職レベルのハイエンドの産業人材を育成することで、日本や中国に対して比較優
位のある労働力を確保。
【資金協力】
・タイ自動車産業に対して実施してきた技術協力事業の成果を受け、量的展開を図る段階を円
借款で支援するため、自動車産業の人材育成プロジェクトのF/Sを実施。(JETRO F/S)
・ベトナムにおいて、国際競争力のあるIT人材の育成やIT分野における大学のCOE(中核的人
材育成機関:Center of Excellence)化等を目的に、日本の高等教育機関と連携してIT教育・能
力向上事業を円借款・技術協力を連携させて行うことを検討中。
【技術協力】
・ASEAN4ヵ国(タイ、マレーシア、フィリピン、インドネシア)において自動車の裾野産業巡回
指導を実施し、うちタイ、フィリピンについては自動車産業資格構築支援事業を実施。
(JODC、JETRO、AOTS)。
(※鋳造、プレス加工、機械加工、樹脂成形の職種で技能検定試験を実施。)
・民間主導型技術支援機関(タイTPA(泰日経済技術振興協会:Technology Promotion
Association (Thailand-Japan)))の設立支援。(AOTS、日タイ協会)
→ASEAN域内での展開可能性の模索。ベトナムにおいて具体的なアクションプランを策定。
23
中小企業振興及び起業家育成
・途上国の持続的成長のためには中小企業振興も重要であり、そのための環境整備、人材育成等を実施。
・日本の大企業のみならず、中小企業の海外展開を促進。中小企業を通じて途上国への技術・ノウハウの
展開を図る。
【資金協力】
・スリランカに対し、中小企業育成のために設備投資資金を低利で融資するツーステップローン
(2004年度96億円)を供与。(円借款)
・ベトナムに対し、金融機関の審査能力強化及び中小企業の資金アクセス改善を図るため、
ツーステップローン(2004年度61億円)を供与。(円借款)
【技術協力】
・タイ、カンボジアにおいて起業家育成支援のための調査及び研修を実施。(アジア産業基盤
強化等事業委託費、AOTS)
・タイ中小企業診断事業(制度構築・診断士養成・工場診断)(JICA・JODC・JETRO)
→タイにおいて、次のステップとして集団診断への取組を支援。(JETRO)
→タイをモデルとして、インドネシア、フィリピンにおいて、事業を展開。(JICA)
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情報・通信
・モノではなくシステムということもあり、今までODAの活用が困難であったが、昨年、円借款の運用基準等
の明確化・透明化を図ったところ。今後、より一層の活用が望まれる。
【資金協力】
・タイにおけるe-パスポート発給・管理事業のF/Sを実施。(民活F/S)
・インドネシアにおける電子調達モデルシステム開発事業のF/Sを実施。(JETRO F/S:前述)
・IT分野の促進を図るためODAの制度実施に係る運用基準等の明確化・透明化を実施。
【技術協力】
・ASEAN各国との試験相互認証を踏まえた情報処理技術者試験制度の普及・拡大に向けた協
力を実施 (フィリピン、ベトナム:IPA((独)情報処理推進機構(Information-Technology
Promotion Agency, Japan)、JICA、JETRO、AOTS、CICC((財)国際情報化協力センター :
Center of the International Cooperation for Computerization)
・e-パスポート導入に向けた認証基盤構築実装評価(中国、フィリピン:JETRO)
・タイバイオメトリック認証技術を活用した社会ID基盤構築に関する実証実験(タイ:JETRO)
25
途上国のガバナンス等の向上
・持続的成長のためには、途上国政府が自ら制度構築や産業基盤整備に取り組んでいく仕組みを作ること
が必要であり、国際機関等においても、途上国にPRSPの策定を奨励する等の取組が進められている。
我が国もこのような国際機関の取組等に積極的に参画している。
※ベトナムにおけるPRSC(日本はPRSC3から参加)
ベトナムPRSC3の概要
1.市場経済化
・貿易自由化
・国営企業改革
・金融セクター改革
・民間企業育成
・大型インフラ
2.開発政策
・教育
・保健 等
3.ガバナンス
・公的財政管理
・法整備
・行政改革
・汚職対策
・情報提供能力
【日本として積極的に関与している部分】
公共支出管理、投資・ビジネス環境整備
・国営企業改革・補助金の削減等による政府
支出の改善
・日越共同イニシアティブ(※)を踏まえた投資
環境の改善
※ベトナムの投資環境の改善を目的とした日越両国による
アクション・プログラム。2003年に両国間で合意された。
※PRSCとは
各国が定めた貧困削減戦略(Poverty Reduction Strategy Paper:PRSP)に基づき、その実施を支援するために供与される世銀
の構造調整型プログラムローンをPRSC(Poverty Reduction Support Credit)という。
PRSCは、従来の構造調整型借款とは異なり、より長いタイムスパンでの国家戦略を支援するものとして、その国の予算サイク
ルに合わせ、複数回にわけて実施される。また、PRSCでは、PRSPの改革方向性に見合った改革項目が当該国政府により実施
されたことを確認し、その達成へのいわば報酬の形で融資が行われる。
26
Ⅲ.東アジア諸国等との経済連携の強化
27
アジア諸国との経済連携の強化
・従来、米国中心であった我が国の貿易関係において、東アジアの比率が高まっており、東アジア地域との
輸出入関係が最大となっている。
・我が国経済産業が安定的な成長を遂げていくためには、他の経済圏も視野に入れつつ、成長性が高く、
我が国との経済・産業上の結びつきが深い東アジアに対して、一層の経済連携の強化を図っていく必要
がある。
直接投資:27%
直接投資:38%(1992∼2001年度合計の世界シェア)
輸入シェア 26%(1992)→20%(2002)
14%→13%
EU
EU
輸出シェア31%(1992)→31%(2002)
20%→15%
人口:約4.2億
実質成長率:約3.4%、
人口:約1.27億人
実質成長率:約0.3%
人口:約3.8億
実質成長率:約1.0%
NAFTA
NAFTA
直接投資:18%
33%→42%
31→43%
資料)経済産業省作成。
備考)年の記載なき場合は、
一例に倣う。
人口・実質成長率は
2002年のデータ。
東アジア
東アジア
(中韓台香
(中韓台香
ASEAN10)
ASEAN10)
人口:約18.9億
実質成長率:約7.7%
28
我が国の貿易・投資構造
日本、アセアン、中国、韓国(、米国、EU)の貿易関係(2003年)
(単位:億ドル)
520
中間財貿易の拡大 <①一般機械類部品総額>
1990年
452
日本
1173
722
日本
404
日本
254
EU
米国
2001年
(単位:億ドル)
28
4
4
50
24 0.6
アセアン4
715
583
873
697
中国
14
27
348
612
0
25
アセアン4
11
14
中国
140
220
0.6
12
163
中間財貿易の拡大 <②電気機械類部品総額>
193
444
ASEAN
10
1990年
日本
586
日本
308
213
246
5
11
中国(香港含む)
494
(注) ・出所:IMF DOT。全て輸出データ(FOB)。
・アセアン10はフィリピン、インドネシア、マレーシア、シンガポール、
ブルネイ、タイ、ベトナム、カンボジア、ラオス、ミャンマー
2001年
(単位:億ドル)
韓国
(参考)2004年の財務省貿易統計によると、
日本の対中国(含香港)貿易総額(輸入額+輸出額)は、221990億円、
対米貿易総額(輸入額+輸出額)は、204780億円。
対中貿易総額が、対米貿易総額を上回った。
29
アセアン4
0.1
87
1
110
60
107
2
中国
27
アセアン4
37
17
485
中国
193
12
(注)上記表の円内の数字は総輸出額
29
EPA(経済連携)の主な内容(3本柱)
(1)自由化分野
物品貿易、サービス貿易、投資、人の移動
(2)円滑化分野
原産地規則、税関手続き、ペーパーレス貿易、基準認証、知的財産、政府調達、競争
(3)協力分野
金融サービス、情報通信技術、科学技術・環境、教育及び人材育成、貿易・投資促進、
中小企業、観光、農業、ビジネス環境整備、紛争解決手続
※現在、韓国、フィリピン、マレーシア、タイ、ASEANと交渉中であり、インドネシアとは近々交渉
開始予定。インド、チリ、オーストラリア、スイス等とは連携可能性について検討中。なお、シン
ガポールとメキシコは、それぞれ2002年11月、2005年4月に既に協定発行済み。
30
EPAに関する協力事例(看護師・介護士、IT人材育成等)
【資金協力】
・インドネシアのEPA協議で求めていく投資環境改善等は、プログラム・ローン(2004年度108億
円:前述)に係る政府協議を通じても尼政府に要請。(円借款)
・ベトナムで、世銀との協調融資で円借款を供与(2004年度 20億円)し、二輪車・四輪車への課
税問題等の解決を働きかけ。
【技術協力】
・フィリピン人による日本の看護師・介護福祉士資格取得に向けて、看護師・介護福祉士の業
務に特化した日本語教育プログラムの作成及び日本語研修等を予定(AOTS)
・日比IT担当大臣の合意に基づき、「IT・ソフトウェア人材育成支援プログラム」を実施し、情報
処理技術者試験制度の普及・拡大に向けた協力を実施。(JICA、JETRO、AOTS)
31
Ⅳ.地球的規模の問題の深刻化
32
地球環境問題とODA
・途上国の発展とともに、地球温暖化問題等の地球環境問題が深刻化し、我が国の技術も活用したグロー
バルな対応が求められてきている。さらに、2005年2月に京都議定書が発効し、我が国として京都議定
書の6%の温室効果ガス削減目標を確実に達成することが求められている。
・目標達成に当たっては、国際的ルールを踏まえながら、ODAも有効に活用しつつ、京都メカニズムを本格
的に活用していくことが必要。
京都メカニズムの概要
○海外で温室効果ガスの削減事業を実施し、そ
の成果である削減量(クレジット)を、京都議
定書の目標達成に利用できる制度。
・クリーン開発メカニズム(CDM):
途上国と共同で削減事業を実施。
・共同実施(JI):
他の先進国と共同で削減事業を実施。
・排出量取引: 他の先進国から割当量を取得。
日本
資金・技術
削減量
↓
我が国の目標達成に利用
途上国・
ロシア等の先進国
:削減事業の実施
京都議定書目標達成計画(2005年4月
閣議決定)における位置付け
○京都メカニズム推進・活用の意義
・我が国は、「京都議定書の確実かつ費用効果的な達
成」と「地球温暖化防止への国際貢献」の観点から、
京都メカニズムを適切に活用していくことが重要。
○プロジェクトの形成支援等
・京都メカニズムを推進・活用するための基盤の整備、
プロジェクトの発掘及び案件形成を支援するための
取り組みを進める。
・京都メカニズムを推進・活用するに際しては、国際的
なルールに従いつつ、被援助国の合意を前提として、
ODAの有効な活用を進める。
33
環境・省エネに関する協力事例(再掲)
・貿易・投資を通じた経済成長を持続可能なものにする。
・高度成長期の公害を始めとする日本の「苦い経験」に関する情報の共有は、東アジア諸国の今後の発展
においで大きなメリットとなる。
・地球環境問題への対応における協力(ODAを活用したCDMの推進)
【資金協力】
・エジプトにおける紅海西海岸風力開発事業のF/Sを実施し、円借款を供与。(2003年度135
億円)。CDMを期待。ODA流用の議論を回避するべく、ODA以外の資金で排出権購入する
優先交渉権を確保する方向で調整中。
・インドネシアにおける地熱発電、水力発電事業においても、同様の事業のCDM化を検討中。
【技術協力】
・タイにおける公害防止管理者制度の導入に向けて、研修生受入等を実施。(AOTS)
(※水質・大気分野については2004年5月に公害防止者管理者試験がスタート。研修生を平
成16年度は32名受け入れ。)
34
資源・エネルギー問題とODA
・BRICs 諸国の発展により、世界の資源・エネルギー需給情勢は今後逼迫していくことが懸念される。資
源・エネルギーの太宗を海外に依存している我が国としては貿易保険、政策金融、ODA等をより一層戦
略的に活用し、引き続き安定的な供給を確保していくことが必要。
(石油換算百万トン)
世界のエネルギー需要見通し
(出典:IEA World Energy Outlook 2004)
18000
その他
20%
ブラジル
14,404
15000
12,194
2%
12000
10,345
9000
28%
約2倍
5%
6%
28%
15%
26%
25%
28%
27%
6000
約2 倍
26%
24%
3000
16,487
7%
6%
ロシア
インド
BRICs
28%
中国
ASEAN等
東アジア
28%
(OECD)
日本・韓国
44%
42%
39%
36%
2002
2010
2020
2030
0
(OECD)
北米
ヨーロッパ
オセアニア
35
資源・エネルギーに関する協力事例
【資金協力】
・資源確保に資する港湾、鉄道、電力等の関連インフラ整備を円借款で支援。
・インドにおける鉄鉱石長期購入契約交渉に関連し、円借款を活用した鉄鉱石積出港の整備
等を検討中。
・インドネシア、ロシアにおける石炭資源を確保するための周辺インフラ整備支援の検討(円借
款・JBIC旧輸銀融資を検討)。
【技術協力】
・トルコにおける鉱物資源探査技術の向上のため、専門家派遣、研修生受入等を実施。
36
Ⅴ.経済協力の効果・効率の向上の要請
・途上国の持続的な経済成長のためには、より一層、経済協力を効果的・効率的に行っていくこと
が必要。このためには、経済協力の様々な手法の組み合わせや、官民の適切な役割分担による
新たな官民協力の手法を構築することが必要。
(1)円借款と技術協力の連携
(2)公的資金と民間資金の連携(PPP)
37
(1)円借款と技術協力の連携
・資金協力と技術協力の連携等、我が国援助スキームの総合化・一体化を図ることにより、各援助案件の
効果・効率の向上を図り、受入国側の便益向上、貿易・投資環境の整備、我が国の技術の活用等を促進
する。
技術協力と円借款によるインフラ整備の連携
・円借款によるハードインフラ整備案件につき、技術協力によるソフトインフラ整備を行う。
→効率的な物流ルート構築のための実証調査としてJ-Front事業を実施。これを受け、輸出入
手続きの改善(ソフト開発技術協力)、工業団地開発、道路・橋梁等整備、物流ターミナル整
備等について円借款案件を構築。(メコン案件:タイ∼カンボジア∼ベトナム など)
民活型インフラ事業における制度整備・人材育成とインフラ整備の連携
・民活型インフラ事業支援につき、民活事業(ファイナンス)と技術協力との融合を図る。
→アジアPPP研究会やアジア電力タスクフォースなどにおいて、様々なスキームの活用を検
討する。
STEP案件形成のための技術協力の活用
・優良なSTEP案件を実現するため、ODAスキームの連携を行う。
→JICA開発調査(マスタープラン)に基づくJETRO F/S案件形成や、STEP候補案件に対する
円借款連携F/S、連携D/D(Detail Design(詳細設計))の実施。
38
(2)公的資金と民間資金の連携(PPP)
・公的資金と民間企業の連携によるPPP型インフラ整備(電力、都市交通、上下水道、港湾、行政サービス
等)を促進することにより、行政サービスの質的効率の向上を図る。
※PPP(官民パートナーシップ:Public-Private Partnership)とは、インフラ建設、行政サービス整備等を官
と民との間で適切な役割分担によって実施すること。
※発展途上国に存在する膨大なインフラ建設需要を政府財政(外国借款を含む)のみでファイナンスするこ
とは、政府の肥大化、対外債務の増大等をもたらし、また事業の効率化に関するインセンティブも限定的
にしか働かない。このためPPPを推進し、民間部門の参入による事業の効率化を進めるとともに、ファイ
ナンスについても民間ファイナンスの本格的な導入を図ることが合理的である。
【資金協力】
・ベトナムのフーミー発電コンプレックスにおいて、円借款による発電所1号機及び送電線、サイ
ト周辺基盤整備を支援した後、我が国企業を含む民間投資により2号機及び3号機を建設。
・同様にベトナムのオモン、ニョンチャックにおいても円借款と民間投資を組み合わせて発送電
コンプレックス整備を進めている。
(参考)ASEAN主要国におけるセクター別に見た我が国企業による民活プロジェクト参画数
インドネシア
フィリピン
ベトナム
タイ
電力
2
7
2
10
都市交通
0
1
0
0
港湾
0
0
0
1
上下水道
0
1
0
0
行政サービス
うち通信
空港
2
0
1
1
0
0
1
0
〈注〉我が国企業がスポンサーとして参加しているプロジェクト数
39