1オリックスの執行体制

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オ リ ッ ク ス の 事 業 の 特 色
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オリックスの執行体制
幅広い事業の統括執行機関
1964年の設立以来、オリックスは常に時代の変化を先取りし、既成の枠組にとらわれな
い革新的な商品やサービスをお客さまに提供してまいりました。ファイナンス・リースから
始まり、そこで培った経験や知識を生かせる新たな周辺分野へと、次々に事業を多角化し
てきております。現在ではコンピューターおよびOA機器などの情報関連機器、産業工作
機械、商業・サービス業用設備、輸送機器などの法人向けファイナンス・リースや、計測機
器、輸送機器、パソコンなどの法人向けオペレーティング・リースを中心に、営業貸付金、不
動産関連事業、投資銀行業務、生命保険、証券、信託銀行など、その事業領域は金融サービ
スを中心に幅広く多岐にわたっております。
これらの事業は本体各事業部門やグループ会社により運営されており、それぞれが独自
の戦略に基づき利益を追求しておりますが、全体を俯瞰し、経営資源を最大限に生かすた
めの調整を図るのが、
「月例戦略会議」です。
「月例戦略会議」は、本体各事業部門やグルー
プ会社個々の利益の拡大を目指すだけでなく、グループで得られるシナジー効果や、効率
的な組織編成を担うコントロール機能を果しております。オリックスの連結経営を支える
業務執行機関として、その機能は欠かせないものとなっております。
月例戦略会議による業務執行
約20年間継続して行っている月例戦略会議は、本体各事業部門、グループ会社ごとに毎
月定期的に開催されております。会議を構成するメンバーをごく少数に限ることにより、
CEO
(最高経営責任者)およびCOO
(最高執行責任者)をはじめとするトップマネジメント
は、各執行責任者から直接詳細な情報を得ることができ、それとともに広範にわたるオリッ
クスの事業の方針決定や選択、集中を迅速に判断することが可能となります。
月例戦略会議では、本体各事業部門、グループ会社ごとの目標達成状況や月次決算など、
計数的な報告が行われ、営業実績がモニタリングされます。その上で、損益に重要な影響
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を及ぼすことが予想される案件やマーケットの状況、今後の課題など、各事業の収益性に
ついて広範囲に検討が加えられ、様々な側面から解決手段が示されます。
また経営課題によっては、報告した本体各事業部門、グループ会社だけの課題ではなく、
グループ全体の中での位置付けにまで、検討が及ぶ場合があります。
月例戦略会議は、こうしたグループのシナジー効果を極大化する決定に際し、非常に重
要なコントロール機能を果します。課題は徹底的に検討された上で、例えば、重複してい
る事業の整理統合や撤退、あるいは新規事業立ち上げのためのグループにまたがる専門
推進チームの創設など、組織の壁を超えた判断が下され、重要性によっては取締役会に最
終決定が委ねられます。
多岐にわたるオリックスの各事業は、このようにそれぞれの収益性から判断されるだけ
でなく、グループ全体を横断的に見た上で、その位置付けや方向性が常に検証されており
ます。
月例戦略会議は、経営戦略を実践する上で根幹となる重要な執行機関として機能し、迅
速な経営を実現することで、オリックスのさらなる収益性向上に大いに貢献しております。
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オリックスの営業体制
創意提案型の営業
お客様とオリックスのつながりは、財務データをいただくことから始まります。新規に
ファイナンス・リースを行う場合、与信判断の材料としてお客様から貸借対照表や損益計
算書などを提供していただきます。いただいた資料は慎重に分析され、与信判断の重要な
要素となるわけですが、その過程でお客様自身も気づかれていない様々な課題が見えて
きます。例えば、資金需要に応えるファイナンス・リースを申し込まれてきたお客様でも、
売掛金などの流動化可能な債権を多額に保有されているケースがあります。こうした場合、
オリックスの営業担当者は、リースで資金需要に応えるだけではなく、売掛債権の流動化
により、お客様自らが資金を作り出す取組をご紹介いたします。また貸借対照表から多数
の営業用車両を保有していることが見て取れれば、煩雑な車両管理をアウトソーシングす
ることでコストダウンを実現する自動車リースをご提案いたします。
目に見えるニーズに応えるだけでなく、隠れたお客様のニーズを見つけ出し、積極的に
独自の商品を創造、提案する営業活動、オリックスはこうした創意提案型の営業活動を進
めてまいりました。
同時に、国内の営業ネットワークの構築も進め、現在では中堅優良企業を中心とする約
50万社のお客様にお取引いただいております。国内に広がる577拠点の営業ネットワーク
は、クロスセリングと並び、多岐にわたるオリックスの事業を根底から支える営業基盤と
なっております。
そして、創業以来の事業であるファイナンス・リースは、様々な商品を提案するクロスセ
リングにおいても、新たなお客様との関係を築く最初のきっかけとして、重きを増してお
ります。
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クロスセリング
創意提案型の営業活動のもと、オリックスはリースに始まりお客様の事業活動の推移に
合わせ、最適な商品を選び提案するクロスセリングを進めてまいりました。このクロスセ
リングは、オリックスの国内営業活動における大きな特色であり、お客様のニーズに豊富
な商品で迅速、かつ的確に応えるとともに、大変効率的に営業展開することが可能になり
ます。
クロスセリングの結果、
2001年3月期のオリックス・オート・リースの新規契約台数約7万
4千台のうち約34%が、すでにオリックスとお取引いただいているお客様による契約でし
た。また、オリックス生命保険の2001年3月期新規契約のうち、約56%(年換算保険料ベー
ス)も同様に既存のお客様によって成約されたものです。
こうしたクロスセリングの土台となるのが、オリックス・オート・リース、オリックス・レ
ンテックなど様々な分野に特化したグループ会社や、投資銀行本部、不動産ファイナンス
本部などの専門部門です。多彩な商品の開発や販売を行う専門部門には、営業担当者を通
じて常にお客様のニーズやマーケットの動向が綿密に伝えられ、専門部門ではよりふさわ
しい商品提案を行うためのアドバイスや、お客様のニーズに合わせた商品のアレンジが行
われます。また専門部門の担当者が営業活動に同行し、お客様に対して直接ご説明するこ
ともしばしばあります。こうした営業体制は、お客様とオリックスの間の信頼関係をより
一層強化するとともに、新たな商品やサービスの開発における重要な情報収集の機会とも
なっております。
もちろん、お客さまのニーズを的確に捉えるには、営業担当者一人ひとりが持つ、取扱
い商品に関する高い専門性も欠かせません。
営業担当者は、専門部門と連携した営業活動から、様々な専門知識やノウハウ
(ナレッジ)
を会得するとともに、専門部門が開催する取扱い商品の説明会などで、その専門性を高め
ております。
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またオリックスでは、生命保険および損害保険の募集人資格など関連資格の取得を奨励
しており、生命保険募集人の有資格者数は、現在では約2,500名となっております。一方で
は、グループに無い専門知識に富んだ人材の中途採用も積極的に行っており、変化の激し
い金融サービス業務に対応するため、常に専門性の向上を図っております。
また、クロスセリングによる営業活動をより一層効果的に行うため、営業ノウハウの共有
を実現する営業ナレッジシステムなどの、営業サポート体制を構築しております。営業ナレ
ッジシステムは、個々人が持つ専門性を全体で共有し、レベルアップさせると同時に、異な
る専門性を融合させることで新たな付加価値を生み出す源泉として活用されております。
商品の利益に基づく目標管理制度
オリックスの営業部門には、各商品の利益に連動した営業目標が定められております。
営業部門は各部門のマーケットの特性や、担当するお客様のニーズを考慮した上で、年間
の販売商品の構成、販売目標額を決定いたします。
オリックスの営業担当者は、この営業目標の達成を目指し、リースや営業貸付金をはじ
め、自動車リースや計測機器レンタル、最近注目を浴びている廃棄物の処理に関する提案
など、グループ会社や専門部門の提供する様々な商品を取り扱っていくことになります。
販売する商品の組合せに制限はなく、どの商品を取り扱っても目標の達成に近づくため、
営業担当者は何よりもお客様のニーズに応えることを考えて、商品の提案を行うことがで
きます。このように、利益という各商品にわたって共通した目標を掲げることにより、特定
の商品に偏ることのない、付加価値の高いクロスセリングを実現しております。
また、戦略的な新商品を取り扱う際にも迅速に対応できるよう、構築されております。
こうした営業目標の達成率は、部門や個人の評価要素となっております。このため、一人
ひとりの営業担当者が常日頃から収益性を重視し案件を選別することを心がけております。
ナレッジ・マネジメント
オリックスは、より強力にクロスセリングを推進するため、ナレッジ・マネジメントの重要性に着目いたし
ました。各営業担当者が日常の営業活動を通じて生み出した創意工夫やノウハウ、あるいは専門知識などの
ナレッジ(知識)を、広く全社共有の財産とすることでナレッジの融合が図られ、多様な商品の開発や全く新
しい付加価値の創造が可能となります。以前は毎月各営業部門から報告されるナレッジを集め、それを冊子
として全社に配布しておりましたが、
1997年からはI
T
(情報技術)を利用した営業支援システムの一部として、
営業ナレッジシステムの運用を開始し、より迅速かつ効果的に全社におけるナレッジの共有化を果たしてお
ります。
営業ナレッジシステムには、新商品の紹介や販売成功事例、既存商品の新たな販売手法、あるいはお客様
のニーズの動向やマーケットの状況など、様々なナレッジが登録されております。また成功事例だけでなく、
担当者の反省や原因分析を含めた失敗事例も数多く登録されております。営業担当者の積極的なナレッジ
の公開を促すため、登録事例の有用性を測る投票制度が設けられており、こうした失敗事例は常に上位にラ
ンクされる貴重な情報となっております。
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さらなる専門性の追求
事業の専門化により収益性を強化
今後の日本においては、規制緩和による市場経済化の波が高まり、オリックスの主たる
事業領域である金融サービスにおいても、変革の時代が訪れ、お金や物の動きは、今まで
とは大きく変化することが予想されます。
こうした変化を大きなビジネスチャンスとして活かし、金融サービスの領域のなかで、オ
リックスが引き続き優位性を確保し、収益性を向上させていくためには、何より専門性を
高めることが重要となります。オリックスは、長年にわたり培ってきた経験とノウハウを集
中化させることで、専門性を高め、付加価値の高いサービスの開発、提供を今後も続けて
いくため、投資銀行本部や不動産ファイナンス本部といった専門部門を再編いたしました。
投資銀行本部
オリックスは2000年8月に投資銀行本部の再編を行い、収益性のさらなる向上を目指し
た新たな事業展開を開始いたしました。従来より行ってきた、高度な専門性と経験を併せ
持つ航空機や船舶関連の事業などに加え、グループに点在していた投資銀行業務関連の部
署を集約し、以前にも増して専門性に富んだ本部といたしました。同時に、これまで採用
していた部課単位の組織制度を廃止、業務に応じて要員を配置する流動的な組織とし、新
たな金融商品の創造のための専門知識の融合がより可能となる体制をとりました。
これまで他社に先駆けて取り組んできた、商品ファンドやリース債権流動化、債権買取
の経験やノウハウの蓄積を生かすために、投資銀行本部にはファイナンシャルプロダク
ツ・チームとアセットファイナンス・チームを組み込んでおります。ファイナンシャルプロダ
クツ・チームは、商品ファンドの組成、販売の実績を持つ専門チームであり、新たな運用、
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借入ニーズに応える様々な金融商品の開発を進めております。アセットファイナンス・チー
ムは、お客様が資本市場から資金調達を行う際のABS
(資産担保証券)発行の支援サービ
スや債権買取を行っております。
また従来オリックスは、リースやコーポレートファイナンスなどのデットファイナンスを中
心とした業務を行っておりましたが、近年はM&Aや投資による資本参加などに積極的に取
り組んでまいりました。これらの経験やノウハウを生かし、
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PO
(新規株式公開)やMBO
(経
営陣による企業買収)
に関連する業務一切を行うプリンシパルインベストメント・チームを
設立いたしました。プリンシパルインベストメント・チームは、オリックスのネットワークを
通じて、投資先の発掘を行い、投資先の企業にノウハウ、情報、人材を投入し、市場価値の
増大を図りながら、株式上場によるキャピタルゲインや仲介手数料などを得ることを目標
にしております。
今回の投資銀行本部の再編は、幅広い投資銀行業務すべてに対応することを目指した
ものではなく、そのなかでもこれまでの経験と構築してきた営業基盤により、特にオリッ
クスの優位性が見込まれる既存の業務を高度に専門化、集中化することを目的としたも
のです。
不動産ファイナンス
1980年代の住宅ローンや法人向け融資に始まる、オリックスの不動産関連事業は、商業
用不動産の開発・管理やマンション分譲、
不動産売買の仲介、
オフィスビルの賃貸などへと、
その事業内容を大きく拡大してまいりました。国内では不動産ファイナンス部門の専門性
をより一層高めるため、
1999年3月に不動産ファイナンス本部を新設するとともに、マン
ション分譲やオフィスビル賃貸などすべての不動産事業を分社化したオリックス・リアルエ
ステートに移管いたしました。
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不動産ファイナンス本部では、従来の不動産担保融資と一線を画す、不動産が生み出す
キャッシュ・フローを重視した、ファイナンス事業を展開しております。例えば、賃貸マン
ションやオフィスビルおよび商業用不動産などの賃貸不動産や、開発型マンション分譲事
業を対象としたノンリコースローン(担保物件以外に返済原資を求めない非遡及型融資)
の取組です。これらの取組では、ローンの元利金の返済原資は対象となる不動産の賃料収
入や販売代金に限定されており、オリックスは実質的に不動産賃貸事業や分譲事業のリス
クを一部負担することになります。しかしその分アレンジメント手数料や通常より高い金
利収入を得ることが可能となります。取り組むにあたっては、対象不動産に対する事前の
詳細な調査、検討が必要となり、金融だけでなく不動産事業に関する幅広いノウハウを有
することが不可欠となるため、二つの事業を併せ持つオリックスの優位性が発揮される分
野と考えております。
また2000年10月には、このようなノンリコースローンをもとに、オフィスビルやマンシ
ョンなど不動産41物件を担保とした本格的なCMBS
(商業用不動産ローン担保証券)を発
行いたしました。多様な複数物件を対象としたことで、ローンの借り手とともに物件の立
地や用途、入居者が分散されており、投資家のリスク低減が図られたものとなっておりま
す。また複数のローン、物件を担保とする米国型CMBSとしては国内初の発行となるもの
です。こうした事業展開では、米国において長年にわたりCMBS関連事業に携わり、有数
の地位を保持しているグループ会社オリックス・リアルエステート・キャピタル・マーケッ
ツ
(ORECM)における経験、ノウハウも遺憾無く発揮されております。
さらに、米国、欧州において一般化している不動産投資信託(RE
I
T)に対応するため、収
益性を重視しながらオフィスビルやマンションなどの物件取得を着々と進めております。
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