尼崎市における認定こども園の現状と今後の取組みについて(PDF 498.9

尼崎市における認定こども園の現状と
今後の取組みについて
平成21年2月
尼崎市児童環境づくり推進協議会
認定こども園部会
目
次
Ⅰ 保育所と幼稚園の現状分析・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1
① 全国的な保育所、幼稚園の現状について.
② 尼崎市内の保育所、幼稚園の現状について
③ 尼崎市の財政状況と財政再建の取組みについて
Ⅱ 認定こども園制度について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・7
① 制度創設の背景
② 認定こども園制度について
施設類型について
認定の基準について
財政措置について
認定施設数について
認定こども園の特徴について
③ 認定こども園のメリット・デメリットの検討
運営者側の立場
利用者側の立場
市側の立場
④ 特定認可外保育施設型認定こども園について
Ⅲ 尼崎市としての対応について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・17
Ⅳ 最後に・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・19
資料編
Ⅰ
①
保育所と幼稚園の現状分析
全国的な保育所、幼稚園の現状について
保 育 所 は 、 児 童 福 祉 法 上 、「 日 々 保 護 者 の 委 託 を 受 け て 、 保 育 に 欠 け る そ の
乳児又は幼児を保育することを目的とする」とされており、利用対象児童は
0 歳から就学前の保育に欠ける子どもで、利用者の入所の手続きは公立、私
立を問わず市に対して行うこととされている。
一 方 、 幼 稚 園 は 学 校 教 育 法 上 、「 義 務 教 育 及 び そ の 後 の 教 育 の 基 礎 を 培 う も
のとして、幼児を保育し、幼児の健やかな成長のために適当な環境を与えて、
その心身の発達を助長することを目的とする」とされており、対象児童は 3
歳から就学前の児童で、利用者の手続きは、各園へ直接手続きを行うことと
されている。
このように、保育所、幼稚園はそれぞれ異なる目的・役割を持ち、保育を
行ってきている。しかしながら、両施設とも就学前の幼児を対象とした施設
であることや、保護者の就労形態が複雑になる中、保育ニーズも多様化し、
類似した機能が求められているということも事実である。
こうしたことから、厚生労働省、文部科学省においても保育所保育指針と
幼稚園教育要領の内容の整合性の確保に努めているところである。
保 育 所 、幼保 園児数比較
幼稚園の児童数の比較
万人
施設の利用児童数と施設数について見
260
てみると、幼稚園の利用児童数は年々減
240
少し、施設数も同様に減少傾向にある。
220
一方、保育所の利用児童数は、年々増
加してきており、それに併せて保育所数
249万7,895
237万1,422
229万2,810
211万8079
206万7,951
212万9,471
199万6,082
204万1,820
197万7,611
200
209万0,374
201万6,224
178万9,599
191万3,140
180
も同様に増加傾向という、幼稚園とは対
160
照的な傾向を示している。
140
175万3,393
185万2,183
188万0,122
178万4,193
173万7,202
178万6,129
173万8766
167万5,877
142万5,637
昭和48
この理由は一般的に、保護者、特に
51
54
57
出典)
保育所:厚生労働省「社会福祉施設等調査報告」による。
幼稚園:文部科学省「学校基本調査報告書」
60
63
3
6
9
幼稚園園児数
12
15
女性の社会進出に伴い、保育所の利用が多くなっているからであると考えら
れる。
このように保育所を利用する保護者が多いことから、保育所については、
全国的に「待機児童」が多く存在しているという状況がある。待機児童とは、
保育所への入所申し込みが提出され、入所要件に該当するが、入所していな
い児童のことであるが、各自治体は「定員の弾力化」をはじめとする各種の
- 1 -
17
保育所入所児数
取 組 み に よ り 待 機 児 童 の 解 消 に 努 め て い る と こ ろ で あ る 。 な お 、「 定 員 の 弾 力
化」とは、保育所の最低基準の範囲内で定員を超えた保育に欠ける子どもの
受入れを行うものである。
全 国 の 定 員 の 弾 力 化 の 状 況 に つ い て は 、 平 成 17 年 10 月 1 日 現 在 で 、 保 育
所 が あ る 2,162 市 町 村 中 、 定 員 の 弾 力 化 を 認 め て い る 市 町 村 が 1,749
( 80.9%) あ り 、 さ ら に 実 際 に 定 員 の 弾 力 化 を 実 施 し て い る 保 育 所 が あ る の は
1,494 市 町 村 ( 69.1%) と な っ て い る ( 図 -1 )。 ま た 、 弾 力 化 を 実 施 し て い る
保 育 所 及 び 構 成 割 合 は 、 平 成 11 年 、 14 年 、 17 年 と 順 に 増 え て い る と こ ろ で
あ る ( 表 -1)。
図−1
全国的な定員の弾力化の状況
平成17年10月1日現在
実施している保育所が
あ る市町村
保育所定員の弾力化を
1 494 (69.1%)
認めていない市町村
413(19.1%)
公営・私営とも に実施
している保育所があ る
市町村 722 (33.4%)
実施している保育所が
ない市町村
255(11.8%)
保育所がある市町村
2 162
公営のみ実施している
保育所があ る市町村
362(16.7%)
私営のみ実施している
保育所があ る市町村
410(19.0%)
保育所定員の弾力化を
認めている市町村
1 749(80.9%)
資 料 : 平 成 17年 度 地 域 児 童 福 祉 事 業 等 調 査
表−1
全国的に見た保育所における定員の弾力化の状況の年次比較
増減
平成11年度 平成14年度 平成17年度 (17年−14年)
実 数
保育所総数
22,275
定員の弾力化を実施している保育所数
9,597
公営保育所数
12,849
定員の弾力化を実施している保育所数
2,846
私営保育所数
9,426
定員の弾力化を実施している保育所数
6,751
22,288
12,479
12,422
4,510
9,866
7,969
22,633
13,405
11,857
4,708
10,776
8,697
345
926
△ 565
198
910
728
構 成 割 合 (%)
保育所総数
100.0%
100.0%
100.0%
定員の弾力化を実施している保育所数
43.1%
56.0%
59.2%
公営保育所数
100.0%
100.0%
100.0%
定員の弾力化を実施している保育所数
22.1%
36.3%
39.7%
私営保育所数
100.0%
100.0%
100.0%
定員の弾力化を実施している保育所数
71.6%
80.8%
80.7%
資 料 : 平 成 17年 度 地 域 児 童 福 祉 事 業 等 調 査 ( 抜 粋 )
- 2 -
②
尼崎市内の保育所、幼稚園の現状について
尼崎市の人口は年々減少傾向であり、その中でも就学前の児童数について
も減少傾向となっているところである。
保 育 所 の 状 況 と し て は 、 平 成 20 年 5 月 1 日 現 在 、 30 ヵ 所 の 公 立 保 育 所 、 51
ヵ 所 の 私 立 保 育 園 が あ る 。 ま た 、 幼 稚 園 で は 、 公 立 が 18 ヵ 所 、 私 立 が 24 施
設となっており、このほか休園中の私立幼稚園が 2 園ある。
保 育 所 と 幼 稚 園 の 数 、 利 用 児 童 数 の 推 移 は 、 以 下 の と お り で あ る ( 図 -2、 図 -3)。
図−2
保育所利用児童数と保育所数の推移
施設数(ヵ所)
利用児童数(人)
80
16,000
14,000
81ヵ所
公立30ヵ所 私立51箇所
70
12,000
60
10,000
50
8,000
40
6,000
472
4,000
310
2,000
220
273
256 259
909
9 7 7 1 ,0 9 6
352 347
374 395
634
1,048
410 413
1,705 1,808 1,855
1,878
1,859
1,888
1,983
1,873
1,932
1,873
1,894
1,877
1,889
1,961
1,883
1,920
2,210
1,879
4,105
3,610
3,206
749 869 1,050
4,384
2,406
20
3,846
3,529
2,765
30
4,237
10
1 ,4 4 6 1 ,6 9 5 1 ,9 9 6 2 ,0 7 7 2 , 3 5 5 2 ,5 7 0 2 ,7 6 5 2 ,8 3 6 3 ,1 8 8 3 ,4 0 3 3 ,5 7 8 3 ,5 3 4 3 ,5 0 5 3 ,5 3 4 3 ,4 7 9 3 , 4 7 5 3 ,4 4 4 3 ,4 0 3 3 ,3 7 7 3 ,3 4 3 3 ,3 2 5 3 ,2 8 1 3 , 2 0 6 3 ,1 0 1 3 ,0 3 4 3 ,0 4 6 3 ,0 3 0 3 ,0 6 9 3 ,1 3 1 3 , 1 3 5 3 ,2 1 5 3 ,1 4 3 2 ,9 7 8 2 ,8 9 0 2 ,7 9 9 2 ,7 5 7 2 ,7 7 5 2 ,6 9 9 2 ,4 4 7 2 ,2 9 4 2 , 2 3 2
0
0
昭和39年
41年
43年
45年
47年
49年
51年
53年
55年
57年
59年
61年
公立
63年
2年
私立
4年
6年
8年
10年
12年
保育所数
14年
16年
18年
各年度3月1日現在
利用児童数
図−3
幼稚園利用児童数と幼稚園数の推移
施設数(ヵ所)
利用児童数(人)
80
16,000
14,000
70
46ヵ所
公立18ヵ所 私立28箇所
12,000
19年度で私立2園が廃止
また、私立2園は休園中
50
10,000
7,090
8,000
9,901
8 ,2 7 5
9 ,8 3 1
11,404
10,759
10,261
9,269
8 ,8 0 8
8,155
7 ,7 0 9
7,802
40
7,809
6 ,5 8 2
7,858
6,893
7 ,5 1 0
9,453
9 ,6 1 5
10,940
11,069
10,364
9 ,5 9 1
9,039
8,523
7,974
7,654
7,691
7,836
7,068
6,350
7 ,4 1 9
6,578
5,853
6,107
6,000
5 ,6 4 9
5,722
5,759
5,699
5,889
5,864
5,869
5,808
5,867
30
20
4,000
3,071
2,000
60
2,526
2,232
2,901
2,824
3,749
3,952
3,889
3,381
3,288
3,037
3,208
3,798
4,134
3,840
2,871
2,337
0
昭和39年
42年
45年
10
2,444
3,661
48年
51年
54年
公立
1,529
1,897
1,412
1,118
2,145
1,183
1,622
1,418
1,0188 4 5
57年
60年
私立
63年
3年
1,513
768
1,381
1,052
1,018
6年
幼稚園数
1,527
1,504
9年
1,494
1,513
12年
1,475
1,473
1,442
1,460
15年
1,422
1,401
18年
0
2年保育開始( H8)
資料:尼崎市統計書 各年5月1日現在
利用児童数
- 3 -
1 日の生活の流れや施設において実施している子育て支援の事業につい
てみてみると、私立幼稚園においては通常の教育時間終了後に園児を預か
る「預かり保育」を実施し、午後 5 時近くまで受入れを行っているなど、
保育時間では保育所との差はほとんどないという状況である。
また、幼稚園は通常 3 歳以上の就学前児童が通う施設であるが子育て支
援の観点から 2 歳児を受け入れているなど、低年齢児の受入れについても
新たな試みが実施されているところであり、ここでも保育所との差は縮ま
りつつある。
しかしながら、保育所と幼稚園の利用児童数を見てみると、現在、保育
所 に お い て は 、 定 員 を 超 え た 受 入 れ を 行 っ て お り 、 平 成 20 年 5 月 1 日 現 在
の 保 育 所 の 入 所 の 状 況 で は 、 市 内 全 体 で 定 員 6,124 人 に 対 し て 、 6,135 人
という受入れ状況である。
一 方 、 幼 稚 園 は 定 員 10,320 人 に 対 し て 7,113 人 と い う 受 入 れ 状 況 と な っ
ている。
施設の定員と利用児童数の関係
施設種別
施設数
公立保育所
私立保育所
(保育所)計
公立幼稚園
私立幼稚園
(幼稚園)計
30
51
81
18
24
42
(平成20年5月1日現在)
定員 利用児童数 充足率
(B)/(A)
(A)
(B)
86.7%
2,430名
2,106名
109.1%
3,694名
4,029名
100.2%
6,124名
6,135名
58.0%
2,300名
1,334名
72.1%
8,020名
5,779名
10,320名
68.9%
7,113名
このように全国的な傾向と同様、尼崎市においても、保育所を希望する
保護者は多いが、阪神間と比較しても保育所数は多く、また公立保育所の
民間移管による定員増や定員の弾力化により待機児童の解消に努めている
ところであり、その結果、待機児童は少ない状況である。
- 4 -
市 内 各 地 域 における保 育 所 、幼 稚 園 の状 況 について
- 5 -
③
尼崎市の財政状況と財政再建の取組みについて
尼 崎 市 の財 政 状 況 は、平 成 20 年 度 の一 般 会 計 の当 初 予 算 で 1,834 億 円 (市 民
1 人 当 たりにすると約 39 万 8 千 円 )になっている。
歳 入 は、根 幹 である市 税 収 入 について一 定 の回 復 が見 られたものの、現 在 非 常 に
厳 しい状 況 であり、地 方 交 付 税 は 大 きく減 少 している。歳 出 では 、人 件 費 につ いては
減 少 し ているが 、生 活 保 護 費 などの 扶 助 費 、市 債 の 償 還 である公 債 費 は 増 加 し 、義
務 的 な経 費 全 体 は依 然 として高 い水 準 にある。
また、財 政 の健 全 性 を示 す指 標 の一 つである経 常 収 支 比 率 は 100%前 後 で推 移 し
ているという状 況 で、新 しい取 組 などに充 てる余 力 がないという極 めて硬 直 化 した財 政
構 造 にある。
歳入の推移(一般財源ベース)
その他
収益事業収入
地方譲与税等
(億円)
1,200
地方交付税
市税収入
1,100
114
1,000
91
87
100
3
6
11
28
107
0
80
78
900
78
800
160
173
164
1200
1100
1000
81
135
711
722
828
758
H17
H18
1067
103.6
96.5 98.3
101.0
100.5 100.4
99.1 98.5 98.5 96.8
97.6 99.1
100
1051
H19
H20
80
336 353 347
300 306 311 314
375 400
430 408
395 383 379
扶助費
経常収支比率
60
人件費
40
359
194 194 197 215 223 214 214 197 209
20
H6 H7 H8 H9 H10 H11 H12 H13 H14 H15 H16 H17 H18 H19 H20
0
136
121公 123
債費
50.8 51.4
47.2 46.5 46.6
44.5 44.3 44.1
41.8
38.8 36.9
30.2 31.7 29.1 29.9 30.7 29.1 30.3 30.6 30.7 30.2
35.3 33.3
30.3
31.7 30.6
19.7 19.4 19.6
18.6
16.8
15.8
14.6
14.5
公債費
11.1 11.6 11.8 13.1 13.9
10.0 11.1 11.5 11.6 12.1
8.5 8.9 8.4 8.8 9.8 9.5 9.9
13.3
その他経常経費
200
0
H16
1076
100.6
1055
600 517
498 510 525 503 513 501 495
487
466
452 458 459 475
500 人 件 費
431
100
600
H15
1064
1041
1056
700
400
814
723
938 927
1083
1063
1042
957 992 996
義務的経費計
300
700
経常収支比率の推移
120
800
50
55
3
123
%
義務的経費の内訳
900
64
73
億円
153 157
175
扶助費
H6
H7
H8
H9 H10 H11 H12 H13 H14 H15 H16 H17 H18
資 料 : 平 成 20 年 4 月 「尼 崎 市 の再 生 と発 展 をめざして」
尼 崎 市 では、こうした状 況 を改 善 するため、行 政 改 革 の取 組 みが進 められている。特
に平 成 15 年 度 以 降 の取 組 みを見 ると、財 政 再 建 団 体 への転 落 阻 止 、行 財 政 の体 質
改 善 等 を目 指 し、「尼 崎 市 経 営 再 建 プログラム」を策 定 し、改 革 改 善 に取 り組 み、その
結 果 、平 成 15 年 度 から平 成 19 年 度 で 500 億 円 を超 える効 果 を上 げ、財 政 再 建 団
体 への転 落 の危 機 は回 避 している。
しかしながら、平 成 20 年 度 以 降 も、市 債 の発 行 などを講 じずに歳 入 に見 合 った歳
出 の規 模 で財 政 運 営 を行 っていくため、新 たに「
あまがさき
行財政構造改革推進
プラン」が策 定 され、さらなる財 政 の健 全 化 の取 組 が進 められているところである。
- 6 -
Ⅱ
①
認定こども園制度について
制度創設の背景
保育所と幼稚園は、その目的・役割を異にしてはいるが、就学前児童の保
育・教育を行っている点では同一である。しかしながら、近年の急速な少子
化の進行や家庭・地域を取り巻く環境の変化に伴い、小学校就学前の子ども
の保育と教育に関するニーズが多様化し、必ずしもこれまでの保育所、幼稚
園といった取組みだけでは対応しきれない状況となっていた。
具体的には、保護
者が働いていれば
保育所、働いてい
なければ幼稚園と
いうように保護者
の就労の有無で利
用施設が限定され
てしまい、保護者
に希望に合わない
という状況、過疎
「認 定 こども園 」制 度 化 の背 景
これまでの取組み(幼保の連携促進)
これまでの取組み(幼保の連携促進)
○幼稚園・保育所の施設の共用化のための指針の策定 等
少子化の進行や教育・保育ニーズの多様化に伴い、必ずしもこれまでの取組みだけ
では対応できない状況が顕在化。
・親の就労の有無で利用施設が限定(=親が働いていれば保育所、働いていなけ
れば幼稚園 )
・少子化の進む中、幼稚園・保育所別々では、子どもの育ちにとって大切な子ども
集団が小規模化。運営も非効率
・保育所待機児童が約2万人存在する一方、幼稚園利用児童は10年で10万人減
少
・育児不安の大きい専業主婦家庭への支援が大幅に不足
新たな選択肢としての
「認定こども園」制度
化の進む地域にお
いて保育所、幼稚
園別々では、子ど
・ 親の就労の有無に関わらず施設利用が可能に。
・ 適切な規模の子ども集団を保ち子どもの育ちの場を確保。
・ 既存の幼稚園の活用により待機児童が解消。
多様なニーズに対応
・ 育児不安の大きい専業主婦家庭への支援を含む地域子育て支
援が充実。
資 料 :文 部 科 学 省 ・厚 生 労 働 省 幼 保 連 携 推 進 室 説 明 資 料
もの育ちにとって
大切な子ども集団が維持できず、運営も非効率となっているという状況、ま
た、保育所には待機児童が多く存在する一方で、幼稚園利用児童は減少し、
既存の幼稚園のインフラを活用できていないという状況である。
このような状況を受け、地域において子どもが健やかに育成される環境が
整備されるよう保育所、幼稚園における小学校就学前の子どもに対する教育
及び保育並びに保護者に対する子育て支援の総合的な提供を図る必要があっ
た。
こ う し た 中 、 政 府 の 「 経 済 財 政 運 営 と 構 造 改 革 に 関 す る 基 本 方 針 2003( 平
成 15 年 6 月 閣 議 決 定 )」 に お い て 「 就 学 前 の 教 育 ・ 保 育 を 一 体 と し て 捉 え た
一貫した総合施設の設置」として検討することとされたものである。
- 7 -
そ の 後 、 平 成 16 年 5 月 以 降 、 国 の中 央 教 育 審 議 会 幼 児 教 育 部 会 と社 会 保 障
審 議 会 児 童 部 会 の合 同 の検 討 会 議 において検 討 が進 められ、平 成 16 年 12 月 、そ
の基 本 的 なあり方 について審 議 のまとめが行 われた。
さらに、平 成 17 年 度 には全 国 35 ヵ所 でモデル事 業 を先 行 実 施 、「総 合 施 設 モデ
ル事 業 評 価 委 員 会 」による職 員 配 置 、施 設 設 備 、教 育 保 育 等 に関 する評 価 が実 施 さ
れ、平 成 18 年 3 月 に最 終 まとめが行 われたところである。
これらの検 討 を踏 まえたものとして、平 成 18 年 10 月 1 日 、「 就 学 前 の 子 ど も に 関
す る 教 育 ・ 保 育 等 の 総 合 的 な 提 供 の 推 進 に 関 す る 法 律 」( 平 成 18 年 法 律 第 77
号 ) が 施 行 さ れ 、「 総 合 施 設 」 が 「 認 定 こ ど も 園 」 と い う 形 で 制 度 化 さ れ た も
のである。
資 料 :文 部 科 学 省 ・厚 生 労 働 省 幼 保 連 携 推 進 室 説 明 資 料
②
認定こども園制度について
認 定 こども 園 制 度 は 、保 育 所 等 (認 可 外 保 育 施 設 を含 む )及 び 、幼 稚 園 が保 育 に
欠 ける子 どもも欠 けない子 どもも受 け入 れて保 育 ・幼 児 教 育 を行 う機 能 と、すべての子
育 て家 庭 を対 象 に、子 育 て不 安 に対 応 した相 談 活 動 や、親 子 の集 いの場 の提 供 など
を行 う機 能 を備 え、認 定 基 準 を満 たす場 合 に、都 道 府 県 知 事 から「認 定 こども園 」の認
定 を受 ける仕 組 みである。
- 8 -
施設類型について
「認 定 こども園 」の認 定 を受 ける施 設 には、地 域 の実 情 に応 じて選 択 が可 能 となる
よう、4 つの類 型 が設 けられている。
その内 容 は、認 可 保 育 所 と幼 稚 園 が連 携 して一 体 的 な運 営 を行 う「幼 保 連 携 型 」、
認 可 保 育 所 が保 育 に欠 ける子 ども以 外 の子 どもを受 け入 れるなど幼 稚 園 的 な機 能
を備 える「保 育 所 型 」、幼 稚 園 が保 育 に欠 ける子 どものために保 育 時 間 を確 保 する
など保 育 所 的 な機 能 を備 える「幼 稚 園 型 」、認 可 外 保 育 施 設 が 認 定 こども園 として
必 要 な機 能 を果 たす「地 方 裁 量 型 (兵 庫 県 は特 定 認 可 外 保 育 施 設 型 )」となってい
る。
資 料 : 文 部 科 学 省 ・ 厚 生 労 働 省 幼 保 連 携 推 進 室 認 定 こ ど も園 パン フレ ット
このように認 定 こども園 とは、保 育 所 でも幼 稚 園 でもない第 3 の施 設 類 型 ではなく、
保 育 所 、幼 稚 園 の法 的 位 置 付 けを維 持 したまま認 定 を受 けることができる仕 組 みで
ある。
認定の基準について
職 員 配 置 等 の具 体 的 な認 定 基 準 についても、文 部 科 学 大 臣 と厚 生 労 働 大 臣 が
協 議 して定 める指 針 を参 酌 して都 道 府 県 の条 例 によって定 めることとされている。
これを受 けて兵 庫 県 では、平 成 19 年 1 月 に「認 定 こども園 の認 定 基 準 等 に関 す
る条 例 (平 成 18 年 兵 庫 県 条 例 第 63 号 )」を、続 いて 2 月 に「認 定 こども園 の認 定
手 続 き等 を定 める規 則 (平 成 19 年 兵 庫 県 規 則 第 7 号 )」を施 行 し、兵 庫 県 におけ
る認 定 こども園 制 度 について、準 備 を整 えたところである。
- 9 -
財政措置について
で記 載 したように、認 定 の基 準 では、地 域 の実 情 に応 じた柔 軟 な対 応 を認 める
一 方 で、現 在 の国 の財 政 措 置 については、これまでの方 針 と同 様 に、子 どもに対 す
る保 育 ・教 育 の質 の確 保 の観 点 から、保 育 所 、幼 稚 園 の認 可 を持 たない施 設 に一
方 的 な活 用 が集 中 することがないよう、保 育 所 、幼 稚 園 の認 可 を受 けた施 設 に対 し
てのみ行 うこととされている。
こうした中 、兵 庫 県 では、独 自 に認 定 こども園 の設 置 推 進 を図 ることを目 的 として、
平 成 19 年 度 に「認 定 こども園 運 営 助 成 事 業 」を創 設 し、特 定 認 可 外 保 育 施 設 型 を
除 き、その財 政 支 援 を進 めている。
兵 庫 県 認 定 こども園 運 営 助 成 事 業 補 助 金 について
兵 庫 県 「 認 定 こど も園 運 営 助 成 事 業 実 施 要 綱 」
認定施設数について
認 定 こども園 について国 は、「2,000 ヵ所 の認 定 を目 標 」としている中 で、平 成 20
年 4 月 1 日 現 在 、全 国 で認 定 こども園 の認 定 を受 けた施 設 数 は 229 ヶ所 となって
おり、目 標 に比 べて認 定 数 は伸 び悩 んでいる状 況 と言 える。
兵 庫 県 においては 15 ヶ所 と全 国 的 に見 ると認 定 数 は比 較 的 多 い。その中 にあっ
て、尼 崎 市 では 3 ヶ所 の私 立 幼 稚 園 が幼 稚 園 型 認 定 こども園 の認 定 を受 けている
ところである。
- 10 -
認定こども園の特徴について
認 定 こども園 は、保 護 者 の就 労 の有 無 を問 わず受 入 れ、保 育 、教 育 を一 体 的 に
行 い、すべての子 育 て家 庭 を対 象 に子 育 て支 援 を行 うという点 が特 徴 であるが、そ
の他 の特 徴 としては利 用 手 続 きが挙 げられる。現 在 、幼 稚 園 については、利 用 者 が
施 設 に申 し込 み、施 設 との契 約 によって利 用 が決 定 されるが、保 育 所 については、
利 用 者 が希 望 の保 育 所 について市 町 村 に申 し込 みを行 い、市 町 村 によって入 所 の
承 諾 が行 われるという仕 組 みである。これに対 して認 定 こども園 となった保 育 所 に関
しては、幼 稚 園 と同 様 に利 用 者 と施 設 とが直 接 、入 所 の手 続 きを行 うことになる。
また、認 定 こども園 となった保 育 所 では、市 が定 める保 育 所 の保 育 料 とバランスを
逸 しないような指 導 の下 、その利 用 料 についても保 育 所 で決 定 し、独 自 に徴 収 を行
うことになる。
③
認定こども園のメリット・デメリットの検討
このような新 た な選 択 肢 とされた 認 定 こども 園 について、その導 入 する際 のメリット・
デメリットについて考 えてみることにする。それに当 たっては、運 営 者 側 の立 場 、利 用 者
側 の立 場 、市 側 の立 場 という 3 つの視 点 で検 証 を行 った。特 に運 営 者 側 の立 場 として
は、尼 崎 市 内 にある 3 つの幼 稚 園 型 認 定 こども園 の運 営 者 の意 見 も踏 まえたものとし
ている。
運営者側の立場
運 営 者 側 か ら 見 て各 施 設 類 型 で共 通 し て いるメ リ ット は 「 園 児 獲 得 機 会 が 拡 大 す
る」という点 である。保 育 所 については、本 来 0∼5 歳 の保 育 に欠 ける子 どもの受 入 れ
を行 う施 設 であることからそれ以 外 の子 どもの入 所 は原 則 できない。一 方 、幼 稚 園 につ
いては、子 どもが保 育 に欠 ける、欠 けないについては問 わない反 面 、利 用 可 能 な年 齢
は 3∼5 歳 であるが、認 定 を受 けることで、従 来 の保 育 所 、幼 稚 園 で対 応 できない子 ど
もの入 所 が可 能 になることから、新 たな児 童 の獲 得 の機 会 が拡 大 することになる。特 に
幼 稚 園 にとっては、保 育 に欠 ける 0∼2 歳 の子 どもを新 たに確 保 することができること、
さらに、その子 どもが 3 歳 になった後 も引 き続 きその施 設 を利 用 することが期 待 できる。
このことは、幼 稚 園 の定 員 に空 きが生 じていることもあいまって、施 設 や職 員 の有 効 活
用 をすることにも繋 がっている。
しかしながら、保 育 所 については 、定 員 の 弾 力 化 を 行 っているため、定 員 を 超 えて
保 育 に欠 ける子 どもを受 け入 れていることは前 述 のとおりである。こうした状 況 下 では、
- 11 -
保 育 所 にとって、保 育 に欠 ける子 ども以 外 の子 どもを受 け入 れるという選 択 は難 しいも
のと考 える。なぜなら、現 在 の保 育 に欠 ける子 どものための定 員 の一 部 を、それ以 外 の
子 どものための定 員 に充 てる、又 は、施 設 の規 模 を拡 大 する必 要 があり、運 営 者 として
慎 重 にならざるを得 ないためである。
この ことは 、尼 崎 市 が 行 った市 内 の 私 立 保 育 所 、私 立 幼 稚 園 へ の認 定 こども 園 の
認 定 申 請 意 向 調 査 (平 成 20 年 8 月 実 施 、以 下 「意 向 調 査 」という。)の結 果 (図 ‐4)
においても、私 立 幼 稚 園 では今 後 の検 討 を含 めて半 数 以 上 が申 請 を検 討 すると回 答
している一 方 、私 立 保 育 所 では、9 割 近 くが既 に認 定 を申 請 する考 えはないと回 答 し
ているという点 からも明 らかである。
図−4
認定こども園認定意向等に関する調査(平成20年8月実施)
施設種類別
: 回答があったもののみ、施設種類別に集計を行った。
私立幼稚園(回答があった22園のみ)
現在認
定を受
けてい
る
13.6%
申請し
たい
4.5%
私立保育所(回答があった35園のみ)
申請す
る考え
なし
27.3%
現在認
定を受
けてい
る
0.0%
申請し
たい
0.0%
今後検
討した
い
11.4%
申請す
る考え
なし
88.6%
今後検
討した
い
54.5%
「申請したい」と回答した施設は1施設で、幼稚園型を希望
さら に「 認 定 を 申 請
図−5
「申請したい」と回答した施設は、0施設。
意向調査
する考 えがない」と回
認定を申請する考えがない理由について
30
答 したとした私 立 保
100%
0
施25
設
数
︵ヵ
育 所 は、その理 由 とし
て「保 育 所 、幼 稚 園
69.2%
︶
20
所
の役 割 と責 任 を果 た
0
21
15
46.2%
すことが大 事 」だとす
次 に「定 員 に空 きが
ない」と回 答 している。
28.2%
回答対象施設数
私立幼稚園= 6
私 立 保 育 所 =31
認可外保育施設= 2
合
計 =39
18
8
35.9%
0
28.2%
25.6%
9
8
2
2
8
25%
5
6
3
0
認可外保育施設
私立保育所
私立幼稚園
回答対象施設に対する割合
4
0
保育所幼稚園の役
既存の施設で対応
手続き等が多さ、煩
割と責任を果たすこ
定員に空きがない 事務増が予想される 可能(認定こども園
雑さ
とが大事
のニーズがない)
0
21
6
69.2%
- 12 -
0
8
3
28.2%
0
18
0
46.2%
0
9
2
28.2%
0
8
2
25.6%
0%
その他
2
8
4
35.9%
全
施
設
種
類
︶
(図 -5)。
10
2
0
︵
る園 が最 も多 く、その
0
回
答
75% 対
象
施
設
全
体
50% に
対
す
る
割
合
他 方 、デメリットについては、各 施 設 類 型 で共 通 するものとして「会 計 処 理 の方 法 が
未 整 理 となっている」ことが挙 げられる。現 在 、保 育 所 と幼 稚 園 は異 なる会 計 基 準 とな
っているが、認 定 こども園 の認 定 を受 けた場 合 でも、新 たな会 計 基 準 の適 用 はないた
め、勘 定 科 目 をどのように整 理 するかが難 しく、実 態 として経 理 上 いったん仮 の勘 定 科
目 で整 理 し、その後 正 しい科 目 に整 理 しなおすという手 間 が生 じている点 が挙 げられ
る。
また通 常 、保 育 所 の運 営 費 の単 価 は、施 設 の規 模 が大 きくなると下 がるという仕 組
みになっている。幼 保 連 携 型 認 定 こども園 は保 育 所 、幼 稚 園 の認 可 を持 つことから両
制 度 による運 営 経 費 の負 担 金 、補 助 金 を 受 けることができる一 方 、幼 保 連 携 型 の 認
定 こども園 となった場 合 には、保 育 所 の運 営 費 の単 価 は保 育 所 部 分 と幼 稚 園 部 分 を
合 わせた幼 保 連 携 型 認 定 こども園 全 体 の定 員 によって決 定 されるため、運 営 費 が下
がってしまうというデメリットも生 じることもある。
さらに、認 定 、運 営 に係 る手 続 きや提 出 する書 類 が煩 雑 であり、幼 稚 園 とっては、認
定 こども園 の設 備 基 準 、職 員 の配 置 基 準 が従 来 よりも厳 しいものが多 い。その代 表 的
なものとして、0・1 歳 の子 どもの受 入 れに関 しては、保 育 所 の基 準 に準 じ、乳 児 室 又
はほふく室 の整 備 が必 要 となり、その整 備 には、多 額 の経 費 がかかるため、大 きなデメ
リットとなってしまう。
一 方 、保 育 所 にとっては、現 行 の保 育 制 度 において馴 染 みのない利 用 者 と直 接 入
所 の手 続 きを行 うことや保 育 料 の徴 収 を行 う必 要 が出 てくるため、事 務 負 担 の増 が大
きいものと考 えられる。
運 営 者 側 の立 場 から見 たメリット・デメリットについては、表 -2 にまとめているとおりで
ある。
- 13 -
表 −2 運 営 者 側 の立 場 としてのメリット・デメリットについて
メリット
デメリット
○ 園児獲得機会の拡大
<人口の減を幼稚園危機的状況として認識>
・3歳児未満を受け入れておけば、その後は幼稚園児となってくれる
ため、少子化の流れの中、園児確保の手段として有効。
・保護者の子育て力が低下しているといわれる現在、相談ができる場
となることで、地域に開かれた施設としてPRができる。(社会的信用)
○ 会計処理の方法が未整理のため、勘定科目をどうした
らよいか等が不明で手探りの状態。
→ 経理上、一旦仮で処理しておくといった2度手間が生じている。
○ 認定・運営に係る手続きや提出する書類が煩雑。同じ
内容を報告するものであっても、別様式に記入すること
や、別の呼び方をするなど。
・認定こども園運営状況報告書と学校基本調査
・幼稚園児(預かり保育利用なし) → 短時間利用児
(保育に欠けない児童)
・預かり保育利用児童
→ 長時間利用児
(保育に欠ける児童)
○定員に対して園児が減ってきているところであるが、
施設や職員を有効活用できる。
幼稚園型
<幼稚園では保育に欠ける・欠けないは問わない>
○認定こども園制度開始前から条件が整っている園
が多い
・特に私立幼稚園では、すでに平日、土日、夏休み等を問わず預かり
保育を含めた長時間保育を実施している園が多く、保育時間を延長
する必要がない。
○ 預かり保育の実施基準よりも、認定こども園の長時間利
用の基準のほうが厳しいため、職員配置を手厚くしなけ
ればならないときもある。
→ さらに認定こども園運営助成事業補助が創設された
認定こども園運営助成事業補助が創設された
○0・1歳児の受入のためには、乳児室又はほふく室を整
備することが必要になる。
○幼稚園児としてかかわることがない低年齢児の保護
者の悩みなどを知ることができた。
→ 職員にとってもプラスになった
○ 園児獲得機会の拡大
・保育所の入所要件に該当しない「保育に欠けない児童」の受入が可
能になる。
○幼保連携型になることを望むが新規の保育所認可がと
れないため、なれない。
○定員に空きがなく、保育に欠けない児童の対応までは困
難。
○保育に欠けない児童を入所させる場合、その分は保育
所運営費が支弁されず、園の「持ち出し」が増える。
○直接契約方式導入に伴う事務の増
・保育所の入所は、市に対して行い、市が入所を承諾する仕組み。
認定こども園では、保護者と利用者の直接契約となるため、保育料の決
定などの事務が増える。さらに、「保育に欠ける」という認定は市が行うこ
とになるため、事務も煩雑。
保育所型
○会計処理の方法が未整理のため、勘定科目をどうしたら
よいか等が不明で手探りの状態。
○新規の幼稚園認可がとれないため、幼保連携型なれな
い。
○ 園児獲得機会の拡大
○保育所・幼稚園の認可がともにあるため、保育所運
営費負担金及び私立学校経常費補助を受けること
が可能。
○預かり保育の実施基準よりも、認定こども園の長時間利
用の基準のほうが厳しいため、職員配置を手厚くしなけ
ればならないときもある。 (幼稚園由来)
○定員に空きがなく、保育に欠けない児童の対応は困難。
仮に保育に欠けない児童を入所させれば、運営費の補助
が少なくなる。 (保育所由来)
○施設や職員を有効活用できる。
幼
保
連 携 型
○幼稚園部分として定員を増やすと、保育所運営費の単
。
価は認定こども園全体の定員に対して適用される。
(保育所由来)
○直接契約方式導入に伴う事務の増(保育所由来)
○会計処理の方法が未整理のため、勘定科目をどうしたら
よいか等が不明で手探りの状態。
- 14 -
利用者側の立場
次 に、利 用 者 側 に立 って見 ていくこととする。
幼 稚 園 が認 定 こども園 の認 定 を受 けた場 合 には、幼 稚 園 児 としては本 来 3 歳 児 以
上 の受 入 れしかできなかったが、3 歳 未 満 の保 育 に欠 ける子 どもへの対 応 が可 能 となる
ことで、例 えば、兄 弟 を同 じ施 設 に通 わせることができ、2 カ所 に分 かれて送 迎 するとい
う問 題 は一 定 解 消 できる。
また、幼 稚 園 において保 育 に欠 ける 3 歳 未 満 の子 どもの受 入 れが可 能 となることで、
保 育 所 の定 員 がいっぱいであり、入 所 できなかった子 どもの利 用 施 設 としての選 択 肢 が
広 がることになる。
また、保 育 所 につ いては、本 来 の目 的 である保 育 に欠 ける子 どもを受 け入 れる施 設
であるということから、保 育 所 入 所 中 に育 児 休 業 を取 得 したとしても継 続 した施 設 利 用
が可 能 となるほか、利 用 者 にとっては施 設 に直 接 申 し込 むという方 法 は手 続 きとしてわ
かりやすい。
これに対 して、国 が実 施 したアンケート調 査 によるとデメリットとして、「制 度 が保 育 所 、
幼 稚 園 、認 定 こども園 となることでどの施 設 を選 んでよいかわからない」とか「同 じ施 設 の
中 で保 育 時 間 が異 なる子 どもがいることにより、子 どもに与 える影 響 を懸 念 する」声 は確
かにあるが、これらはメリットに対 してそれほど大 きなものではなく、従 来 の保 育 所 、幼 稚
園 の際 も生 じていたものである。こうしたことから利 用 者 側 からは、一 定 の評 価 を受 けて
いると言 える。
市側の立場
最 後 に、市 の立 場 で見 ていくこととする。
認 定 こども園 制 度 が創 設 された際 の背 景 については前 述 のとおりであるが、市 として
のメリットとしては、待 機 児 童 の解 消 につながる可 能 性 があるという点 が大 きいと考 えられ
る。
一 方 、公 立 で認 定 こども園 を運 営 する場 合 については、メリットとして、幼 稚 園 施 設 の
有 効 活 用 が大 きいものと考 えられる。
しかしながら 、デメ リットとし て行 政 事 務 の 煩 雑 化 、保 育 士 と幼 稚 園 教 諭 に 関 する人
事 給 与 制 度 上 の問 題 など解 決 を必 要 とするという課 題 もあるのが現 実 である。
これらの課 題 は、既 に公 立 で認 定 こども園 を運 営 している他 の自 治 体 も抱 えており、有
効 な解 決 策 にまで至 っていないと言 われている。
- 15 -
④
特定認可外保育施設型認定こども園について
さらに、認定こども園の 4 つの類型のうち、地方裁量型に当たる特定認可外
保育施設型についても見ていくこととする。
従来から認定こども園の認定基準を満たすことが可能な規模の認可外保育施
設の場合には、新たな整備も不要であり、さらに運営費の助成もないことから、
認定こども園の認定を受ける前と後では、それほど大きな変化はない。
こうした場合、認可外保育施設に
図−6
と っ て は 、「 認 定 こ ど も 園 の 認 定 を
認定こども園認定意向等に関する調査
認可外保育施設(回答があった8施設のみ)
受けている」というPRができるた
今後検
討した
い
12.5%
め、認定こども園の認定を受けるこ
現在認
定を受
けてい
る
0.0%
と自体が大きなメリットとなり得る。
このことは、意向調査でも明らか
で、今後、特定認可外保育施設型が
申請す
る考え
なし
25.0%
増えることも予想される。
申請し
たい
62.5%
「申請したい」と回答した施設は5施設で、うち4施設が
特定認可外保育施設型、1施設が保育所型を希望
これまでも、保育所の定員の空き状況との関係から、特に低年齢児の場合に
は認可外保育施設に通うこともあるため、待機児童が存在する状況においては
認可外保育施設の担っている役割は一定あるものと考えられ、認可外保育施設
そのものを否定するものではないが、国や県においては認可施設による保育を
基本としており、認可外保育施設が特定認可外保育施設型の認定こども園とな
ることに対して財政支援を行っていないところである。
- 16 -
Ⅲ
尼崎市としての対応について
このように、認定こども園について検証してきたが、尼崎市では、待機児童
がそれほど多くないという現状の中で、認定こども園を活用しなければ待機児
童が解消できないという状況ではなく、既存の保育施策の枠内で保育所の定員
の弾力化を活用しながら対応していくことが可能な状況である。
加えて、幼稚園については定員に対して利用児童数は少ないものの、運営が
成り立たないほどの状況ではないものとも考えられる。
例えば、待機児童が多く存在する市町村や過疎地であって保育所、幼稚園の
一方しか存在しないような市町村であれば、制度の創設背景に合致し、目的に
沿って、運営、推進していくことが可能となるだろうが、尼崎市の場合、国が
制度創設した背景や本来意図した目的に、合致していない部分もあるように思
われる。
こうしたことから、現時点では、尼崎市として市内に「いくつの認定こども
園を整備する」というように具体的な目標を掲げて、保育所、幼稚園から認定
こども園への移行を促すといったほど積極的な推進策を取る必要性は低く、認
定こども園に移行するかどうかは、運営者がその施設を現在まで運営してきた
経緯や考え方、さらに運営状況や利用者からの希望を加味した上で判断するこ
とがまず第 1 である。
しかしながら一方で、兵庫県においては、独自の補助制度により、設置の推
進を図っているという状況もある。さらに現在、既に私立幼稚園が認定こども
園の認定を受けている実績もあり、意向調査からも読み取れるとおり、今後も
その設置は見込まれるところである。
また、一般的に利用者にとって、保育に欠ける子どもと欠けない子こどもが
保育所、幼稚園の機能を有する認定こども園という同一施設に入所することが
できるというメリットがある。その際、特に、従来の幼稚園利用者からすれば、
兄弟で通っている子どもがいる場合に利便性が高くなることが期待できる。
こうしたことから、当面、施設の運営主体が認定こども園を運営することを
決定した場合には、その考えを尊重する中で、尼崎市としてのこれまでの保育
施策の取組み、就学前児童の状況及び現在の財政状況も考慮し、国、県の支援
制度の枠内で認定こども園へのスムーズな移行の手続きが行えるなどの後押し
をしていくことが望ましいと考える。
- 17 -
なお、前述のように、国、県では認可施設による保育を基本としており、認
可外保育施設や特定認可外保育施設型(地方裁量型)認定こども園に対する財
政支援はされていないところであり、これまでから尼崎市においても、認可基
準を満たす認可外保育施設については、保育需要を踏まえつつ、認可保育所に
移行してもらえるような取組みを進めてきたという経緯からも、特定認可外保
育施設型認定こども園に対して財政支援を行うことは望ましくないと考える。
- 18 -
Ⅳ
最後に
これまで議論してきたように、認定こども園については、3 つの視点からそ
れぞれメリットがあった。これに加えて、施設に通う子どもの視点で見ると、
少子化の進行の中で、子どもの数が減ってきている地域においても、子どもの
発育にとって大切な集団活動や異年齢交流の機会を得ることができること、ま
た、子育て不安を抱える保護者が虐待等に発展することを予防することを考え
れば、制度の意義は非常にあるものと考える。
しかしながら、尼崎市においては、待機児童が少ない上に、認定こども園で
0・1 歳 の 受 入 れ を 行 う 園 は な い と い う 実 態 が あ る な ど 、 制 度 的 な 意 義 と 実 態 に
乖離があるという課題はある。
こうした課題やデメリットについては、多くの自治体からも出されていると
こ ろ で あ り 、 国 に お い て 集 約 す る 中 で 、 内 閣 特 命 担 当 大 臣 ( 少 子 化 対 策 )、 厚 生
労働大臣、文部科学大臣の 3 大臣の合意により設置され、学識経験者をはじめ、
自治体の首長や認定こども園の運営者等の委員で構成される「認定こども園制
度の在り方に関する検討会」において、現在もその改善策が検討されていると
ころである。今後、この検討会による検討の結果が示されることになるだろう。
ま た 、 尼 崎 市 に お い て も 、 公 立 保 育 所 の 基 本 的 な 考 え 方 に つ い て は 、「 公 立 保
育所の今後の基本的方向」で既に示されているところであるが、公立幼稚園の
基本的な考え方については検討を進めようとしているという状況である。
そうしたことから、今後も引き続き、制度創設の背景・目的や国の動向を踏
まえることが必要になる。その中で、人口変動などを考慮した上での将来の保
育需要を見越し、市として就学前児童にとって望ましい環境についての考え方
を整理し、子育て支援施策における認定こども園の位置付けについて改めて検
討することが望ましいと考えられる。
- 19 -