>> 愛媛大学 - Ehime University Title Author(s) Citation Issue Date URL 別府鍋山白土鉱床産rhomboclase 皆川, 鉄雄; 佐古, 友香里 愛媛大学理学部紀要. vol.12, no., p.55-59 2006-03-25 http://iyokan.lib.ehime-u.ac.jp/dspace/handle/iyokan/401 Rights Note This document is downloaded at: 2014-11-14 19:20:08 IYOKAN - Institutional Repository : the EHIME area http://iyokan.lib.ehime-u.ac.jp/dspace/ 愛媛大学理学部紀要第12巻55-59ページ,2006年 Mem,Fac・Sci・EhimeUniv・Vol、12,p、55-59,2006 別府鍋山白土鉱床産rh0mboclaSe RhomboclasefmmtheNabeyamaacidclaydepositatBeppu,OitaPrefEcture Abstract 皆川鉄雄佐古友香里 Rhomboclase,HFe(SO4)2.4HzO,anewoccurrencein 琵応uojl"ifna瞳wzョaIzd”妃9面鈎如 Japan,wasfbundfr0mtheNabeyamaacidclay depositatBeppu,OitaPrefbcture・Itiscolorless, thintabularcrystalsupto0.2mmacrossand occursasfineroselikeaggregatesonpyrite+ 愛媛大学理学部地球科学科 DepartmentofEarthScience,Facultyof Science,EhimeUniversityb2-5Bunkyo-cho, Matsuyama790-8577,Japan marcasitelensesintheacidicalterationzone composedofcrist0balite,aluniteandhalloysite, ASSociatedmineralsaremelanterite,rozeniteand ferricopiapite・CeⅡparametersarea=9.727(5),b=18.32(2), C=5.428(4)AandV=967(1)A3.Rh0mbOClaSewaS fbrmedbythedecompositionofpyriteandmarcasite underthesupergeneconditi0n. Keywords:Rhomboclase,Ironsulphate,Beppu,Nabeyamaacid claydeposit,恥urumidakevolcano 永・松本(1989)によるburkeite,皆川(1994)による t a m a r u g i t e , v o l t a i t e , m e t a v o l t a i t e な ど の 報 告 が あ る 。 は じ め に 大分県別府市鶴見岳一帯には,鶴見岳火山活動 今回調査を行った鍋山白土鉱山跡は明馨温泉か により形成された多くの酸性熱水変質帯が広がっ ら2kmの林道終点地点,鍋山の西に位置してお ている。かつては別府白土と称し塚原,明馨温泉, 鍋山地域で盛んに採掘された。現在はすべて廃山 となっているが採掘跡は現在も残っている(崩壊 り(Fig.1),塚原白土鉱山変質帯とほぼ同様の変質 鉱 物 ( 主 と し て h a l l o y s i t e , c r i s t o b a l i t e , a l u n i t e ) か ら な る。変質帯には暗黒色のpyrite+marcasite共生塊 防止工事のため小規模な採掘跡はコンクリートに が散在している。この鉄硫化鉱物塊は数10ミク よって被覆されてしまった)。一帯では変質作用 を与えた噴気活動が現在でも認められ,噴気孔に ロン以下の微粒結晶集合体から形成されているた は針状∼錐状結晶をなす昇華硫黄の群晶が生じて め分解しやすく,塊の上や割れ目に,各種含水 Fe-硫酸塩鉱物の生成が認められる。このような いる。噴気孔周辺や噴気の及んでいる崩壊地には, H2Sを含む噴気ガスと変質帯粘土(halloysite)や pyriteあるいはmamasiteなどの鉄硫化物との反応 により生成したalunogen,halotrichiteが多量に認め 含水硫酸塩鉱物は硫化鉄鉱に富む泥岩などの風化 られる。明磐温泉にある「湯の華」小屋では噴気 の側壁中や,あるいは転石として認められるpyrite 帯に変質粘土(酸性白土)を敷き詰め,藁小屋で湿 度調整を行い,半人工的にalunogen,halomchite とma1℃asite共生塊の表面や割れ目に露華をなす を製造しており,これらの鉱物の成長過程を観察 や崩壊の原因物質として知られており,これらの 詳細な産状や記載は防災面からも重要と考えられ る。今回,鍋山白土鉱床を流れる小川 rhomboclaseを見出したので産状等を報告する。 することができる。これまでに別府地域の変質帯 RhomboclaseはHFe(SO4)2.4H20の組成を持つ斜 方晶系の鉄硫酸塩鉱物でありmelanterite, からgypsum,alunogen,halotrichiteなどの湯ノ memeriteなど共に報告されているが,これまで本 華構成鉱物(松本ら,1975)の他に,皆川・野戸 (1987)によるparacoquimbite,ferricopiapite,友 邦からの報告例はない。 −55− 皆川鉄雄・佐古友香里 Fig.1LocationmapoftheNabeyamaand猛ukaharaacidclaydeposits ( 1 : 2 5 0 0 0 t o p o g r a p h i c m a p , B e p p u , p u b l i s h e d b y t h e G e o g r a p h i c a l S u r v e y l n s t i t u t e o f J a p a n ) l:Nabeyamaacidclaydeposit,2:Eukaharaacidclaydeposit TablelSulphateminerals丘omthehydrotheramalalterationzoneattheBeppuarea Allmite AIunogen B u r k e i t e ( 1 ) K A l 3 ( S O 4 ) 2 ( O H ) 6 A 1 2 ( S O 4 ) 3 . 1 7 H 2 0 N a 4 S O 4 ( C O 3 , S O 4 ) F e r r i c o p i a p i t e F e 3 も ( S O 4 ) 3 . 9 H 2 0 F e 2 + F e 3 雲 卜 4 ( S O 4 ) ‘ ( O H ) 2 . 2 0 H 2 0 Gypsum CaSO4・H20 Halotrichite F e 2 十 A 1 2 ( S O 4 ) 4 . 2 2 H 2 0 F e 2 + S 0 4 . 7 H 2 0 K 8 F e 2 + F e 3 + 6 ( S O 4 ) 1 2 0 2 . 1 8 H 2 0 Coquimbite M e l a n t e r i t e ( 2 ) Metavoltaite N a t r o a l u n i t e ( 3 ) N a A l 3 ( S O 4 ) 2 ( O H ) 6 P a r a c o q u i m b i t e ( 4 ) F ざ も ( S O 4 ) 3 . 9 H 2 0 句 p Rhomboclase H F e g 〒 ( S O 4 ) 2 . 4 H 2 0 Romerite F e 2 + F e 3 ち ( S O 4 ) 4 . 1 4 H 2 0 F e 2 ÷ S 0 4 . 4 H 2 0 Rozenite T a m a r u g i t e ( 2 ) NaAl(SO4)2.6H20 Vo1taite K 2 F e 2 ÷ う F e 3 ÷ 3 A l ( S O 4 ) , 2 . 1 8 H ’ 0 (1)友永・松本(1985),(2)皆川(1994), (3)尾崎・吉井(1991),(4)皆川・野戸(1987) −56− 別府鍋山白土鉱床産rhomboclase じた小さな割れ目に1mm以下のバラ状集合体を 鍋山白土鉱山産硫酸塩鉱物 なし生成しているrigo2-2)。集合体は径0.5mm以 鍋山白土鉱山は角閃石安山岩を主とする鶴見火 下の無色透明,ガラス光沢のある薄板状結晶の亜 山岩中に発達した酸性変質岩を採掘した鉱山であ 平行連晶からなっている(Fig.2-3)。バラ状集合体 る。採掘跡はそのまま放置されており,至る所で をなすIhomboclaseをガラス板上で破砕し偏光顕 硫黄の生成を伴う噴気活動が観察され,硫酸塩鉱 微鏡観察を行った。結晶は鏡下で菱形を基調とす 物が採掘斜面を被うように生成している。この地 域で現在までに報告された硫酸塩鉱物のリストを るC(001)面からなる板状結晶をなす。C(001)面に 平行に跨開が認められ『i9.2-4),破断面はカイガ 唖blelに示している。生成鉱物は噴気活動の影 ラ状を呈する。浸液法による屈折率はα=1.54(1), 響を受けて生成した鉱物群(タイプ1)と,黄鉄鉱 や白鉄鉱の集合体が雨水などの作用により分解生 γ=1.63(1)(βは未測定),複屈折はやや高く(γ− α=0.09)であり,このような鉱物学的性質はこれ 成した鉱物群(タイプ2)に分けることができる。 までの報告例と良く一致している。Rhomboclase る崩壊斜面を被って幅10数mの範囲に生成して を見出した鉄硫化鉱物塊上には無色透明,霜柱状 ∼紛状のmelanteriteが生成しており,その一部は おり,また噴気帯周辺部に数10cm径のコロニー 脱水しrozeniteに変化している。またカリフラワ 状に露華をなしている。これらの斜面を被う硫酸 ー状をなす黄色のfeITicopiapiteがmelanteriteある 塩鉱物はFe-Al-SO4-H20系鉱物であり,Alを含む いはrOzenite結晶を被って生成している。鍋山産 鉱物で特徴付けられる。白色皮殻状からリンペン IhomboclaseのX線粉末回析値(測定条件:日本電子 製X線粉末回折装置Fe管球,Mn‐filte喝 30kV-10mA)を通ble2に示している。JCPDS 27-245,およびCerrodePasco,Peru産のX線デー タイプlの鉱物は噴気ガスの影響がおよんでい 状そして毛状集合体をなすalunogen,halotrichiteが 大半を占め,窪みや噴気近くでは大きく成長して いる。これらの鉱物は水溶‘性であり,湿度の高い 環境や降雨によって,短期間に溶解してしまう場 合も多い。また降水量が少ない乾燥した期間が続 Table2X-raypowderdataofRhomboclase くと,脱水,酸化等によりhalotrichiteの一部は黄 定した鉱物は,本邦初産のrhomboclase及び melanterite,rozenite,ferricopiapiteである。 Rhomboclaseの生成している試料には常に melanteriteが認められる。現地調査及び試料採集 は平成16年7月,降雨後一週間程度たった日に行 った。 Rhomboclaseの記載 Rhomboclaseは変質帯縁辺部に鉱染状をなす pyrite+mamasite塊(Fig.2-1)の表面や,塊内部に生 −57− 皿加肥犯奉塑循濁如おお梨⑩5675555 すpyrite+marcasite塊レンズや転石から採集した 鉄硫酸塩鉱物試料のx線粉末回折実験結果から同 95406074445218575614 5 0 6 4 9 1 5 5 3 9 1 3 5 4 0 5 9 7 0 8 1 2 8 7 2 2 0 5 3 2 1 4 3 1 1 0 7 7 7 6 ●4 ●4 ●4 ●4 O4 ●3 c3 ●3 砂3 ●2 ●2 ●2 ●2 ●2 ●1 ●1 ●1 ●1 ● 9●5 り,これらはAlを主要成分として含まないことで 特徴付けられる。採掘跡を流れる小沢に露頭をな 。(A)obs.d(A)calc.’/I。hkl 00000003316187375607 0 1 7 4 9 1 6 5 3 9 1 3 4 4 0 5 9 7 0 8 2 2 8 7 2 2 0 5 3 2 1 4 3 1 1 0 7 7 7 6 ゆ4 ●4 ●4 ●4 ●4 ●3 ●3 ●3 ●3 ●2 ●2 ●2 ●2 ●2 ●1 ●1 ●1 ●1 ● 9●5 色のcopiapite∼企rricopiapiteに変化する。 タイプ2の鉱物はpyriteとmarcasite集合塊の分 解により生成したFe-SO4-H20系硫酸塩鉱物であ 020 0 1 1 200 1 0 1 220 1 2 1 0 3 1 2 1 1 240 1 4 1 2 3 1 400 212,420 440 242 361 461,521 422,103 5 4 1 442 皆川鉄雄・佐古友香里 乳感霧零 ﹄篭蕊 懲忠。溝. 鶴v鉾 ・一・尋 、鍵 圃 霞霧 瀞電 霧 癖堂望唾…。 趣 痔冒 圃吟.愈‘雲‘., ン 琴 『 ロ 匙 g r, 郡 一■RE . 篭 管,fg鼻 鰯毎 凡因 出、. 。 ■ 聖 . ‐ △ E u Fig.2Photographsof、rhomboclasefiomtheNabeyamaacidclaydeposit. ',Pyrite+marcasiteaggregatesaccompaniedwithrhomboclase,2,Rhomboclase occurredonpyrite+marcasiteaggregates,3,Photographofrhomboclasefbrmed Roselikeaggregates,4,Photomicrographofrhomboclaseshowingthintabuler crystals(opennicol),Scalbar:1cm タ(massel,1974)と良く一致している。 化学分析は行っていないが,pyrite及び 鍋山産rhomboclaseの格子定数はa=9.727(5), b = 1 8 . 3 2 ( 2 ) , c = 5 . 4 2 8 ( 4 ) A で あ り , J C P D S 2 7 2 4 5 に 示 されている格子定数a=9.723,b=18.295,c=5.424A marcasite:FeS2の分解物として生成していること, と良い一致を示す。 またRhomboclaseの1000℃加熱(1h)試料・が hematiteのX線データとよく一致すること,格子 定数が亜ssel(1974)のFe端成分組成に与えられた 格子定数とほぼ一致していることから判断して, ま と め 鍋山産lhomboclaseは理想式:HFe(SO4)2.4H20に 近い組成を持っていると推測される。 RhomboclaseはこれまでにSocavonmine,Bolivia, Rhomboclaseの生成反応式は①FeS2+3.750)+ SmolnikSlovakia,Esperanzamine,CerrodePasco, 4.5HフO→HFe(SO4)2.4H20,②FeSO4・7H20+ Peru,AlcaparrosaChileなどから,鉄硫化鉱物の H2SO4+0.2502→HFe(SO4)2.4H20+3.5H20の2 分解物として見出されている(Gaineseta1.,1997)。 式が推定される。①はpyrite+marcasiteの直接の いずれも多様な含水鉄硫酸塩鉱物と共生しており, 酸化加水反応物質として,②はmelanterite‐ 鍋山産rhomboclaseも前途の産地とほぼ同じ産状, roseniteの分解物として生じた場合の生成反応式 共生鉱物を示している。Rhomboclaseは である。Rhomboclaseとmelanteriteは密接に共生 melanteriteとほぼ同じステージのやや酸化的条件 しているがmelanterite結晶上に,homboclaseは認 下で生成し,ferricopiapiteはこれらの分解物として められず,rhomboclaseの多くは①の生成反応式で やや後のステージで生じている。Rhomboclaseの 生じた可能性が高い。しかしながら,一般に含水 −58− 別府鍋山白土鉱床産rhomboclase 世話になった受川智春氏,X線分析の補助をして 頂いた福島宏幸氏に心から感謝いたします。 硫酸塩鉱物の生成反応,共生関係は複雑であり, 酸化的環境,脱水などにより短時間に安定な鉱物 相に変化していく。鍋山産rhomboclase生成にお いても母材であるpyriteやmarcaSiteの分解速度(風 化の程度)、温度(気温),酸素分圧,湿度(H20分 圧)などの様々な条件が影響を与えている。ちな 文献 Gaines,R、V:,Skime喝H、C、W,Foord,E、E、,Mason,B, みに,rhomboclaseを見出した標本で密閉容器中に Rosenzweig,A・’1997,Dana1sNewMineralogy8 保存していなかった標本は多量のfeITicopiapiteで Ed・JohnWileyandSons,Inc・ 被われてしまったが,密閉容器中のrhomboclase は未だ分解していない。今回報告したrhomboclase 松本征夫・小川留太郎共編,1975,鉱物採集の旅九 は産状からFe3+‐硫酸塩鉱物の最も早期の生成物 皆川鉄雄・野戸繁利,1987,地学研究.36,177-182. と推定される。 皆川鉄雄,1994,地学研究.43,195-199. 州北部編.築地書館. Tnssel,R、V;,1974,Mineral・Maz、39,610-612. 友永晋・松本征生,1989,日本鉱物学会講演要旨集, 謝辞 58. 小論をまとめるに当たり,現地調査に同行し,お −59−
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