課題名:地球温暖化予測研究のための高精度 気候モデルの開発研究 プロジェクト代表:野田彰(海洋研究開発機構地球環境変動領域地球温暖化予測研究P) 高精度気候モデルMIROCの開発と気候数値実験 MIROC: Model for Interdisciplinary Research On Climate 1.氷床モデル・凍土モデル・海氷モデルの開発 2.大気、海洋、陸面の物理過程の評価と改良 3.地球温暖化予測ならびに古気候再現に関わる気候モ デルの感度実験 2013年1月30日10:40-10:55横浜研究所三好講堂平成24年度 地球シミュレータ利用報告会 1 長期気候予測のための日本モデルの開発 共生プロジェクトRR2002 2002 革新プログラムKakushin 2007 2008 IPCC/AR4 地球シミュレータを用いた 世界最高解像度の気候予測 FRCGC/CCSR/NIES 共同開発 MIROC3.2 T42+1deg (med) T106+1/4x1/6deg (hi) 高解像度モデルによるシナリオ実験 地球システムモデルの開発開始 2009 Earth Simulator 2 MIROC 開発史 2010 2013 IPCC/AR5 AR5 data 提供 RIGC・IPCCLP/AORI/NIES 共同開発 MIROC4.0 (bug fixed version of 3.2) T42+1deg (med) T213+1/4x1/6deg (hi) MIROC‐ESM T42L80+1deg MIROC4.1 (prototype new model) MIROC5.0 T85+1deg (med) 2 気候モデル(MIROC)の概要 MIROC5 (for AR5) MIROC3 (for AR4) 大気上端 解像度 水平 T42 (~300km) 鉛直 20層 水平 T85 (~ 150 km) 鉛直 40層 鉛直座標 Sigma Eta (hybrid sigma‐p) 2方向 DOM 37ch 2方向 DOM 111ch (Nakajima et al. 1986) (Sekiguchi et al. 2008) 放射強制力 放射 雲 中層雲 境界層雲 乱流 雲応答 気候感度 積雲対流 ENSO 診断的 (LeTreut & Li 1991) + 予報的 PDF (Watanabe et al. 2009) 簡易 水/氷 分配 + 氷微物理 (Wilson & Ballard 1999) M‐Y Level 2.0 MYNN Level 2.5 (Mellor & Yamada 1982) (Nakanishi & Niino 2004) 予報的 A‐S + 臨界相対湿 度 (Pan & Randall 1998, 予報的 AS‐type + オリジナル ス キーム (Chikira & Sugiyama 2010) Emori et al. 2001) 放射強制力 エアロゾル 陸面 簡易 SPRINTARS SPRINTARS + 雲核予報 (Takemura et al. 2002) (Takemura et al. 2009) MATSIRO+固定河川流量 new MATSIRO+可変河川流量 土地利用 海水準 海氷 海洋 COCO3.4 COCO4.5 海氷 2カテゴリー EVP マルチカテゴリー EVP 3 氷床 陸面 海氷 課題名:地球温暖化予測研究のための高精度 気候モデルの開発研究 プロジェクト代表:野田彰(海洋開発研究機構地球環境変動領域地球温暖化予測研究P) 1.氷床モデル・凍土モデル・海氷モデルの開発 氷床モデルの高解像度化 (達成度70%) 2.大気、海洋、陸面の物理過程の評価と改良 結合モデルでの海氷モデリングの評価(達成度90%) 陸面モデルの改良(達成度85%) 3.地球温暖化予測ならびに古気候再現に関わる気候モ デルの感度実験 温暖化時の赤道準2年振動(QBO) (達成度90%) 古気候シミュレーション (達成度85%) 4 1.氷床モデル・凍土モデル・海氷モデルの開発 南極氷床の変動は棚氷やgrounding line の効果が重要な役割を果たす 棚氷モデルの開発と実装 • Shallow-shelf 近似の棚氷流動を実装 • 水平一次元および二次元のある理想的 な状況下で試験 •解析解が求められる条件下での確認 •氷床-棚氷系の時間発展の試験(図) 今後の課題 •解の収束性の向上 •熱力学の導入、並列化 •最適化、ベクトル化の向上 •現実氷床への適用 5 2.1 大気、海洋、陸面の物理過程の評価と改良 陸面広域熱水収支の検証、地表面アルベドスキーム高度化の感度調査 ●陸面広域熱水収支の検証:気候湿潤度(WI)=降水量(Pr)/可能蒸発散量(Ep) ・全球データ(GPCC, NNRP) およびMIROC5の20世紀再 現実験結果から気候湿潤度 (WI)の全球分布を算定。 GPCC/NNRP MIROC5 ★1950-2000年の年間WIの 気候値は、乾湿の気候帯の 全球分布とよく一致。 ★MIROC5はWIの全球分布の再現性が、CMIP3のGCMと比べてよいことが示された。 ●地表面アルベドスキーム高度化に向けた感度調査 ・旧スキーム:土壌アルベドの固定値(VIS, NIR)を外部データから読込み。 ・新スキーム:土壌水分の増加によって土壌アルベドが低下。 αsoil=αmax-(αmax-αmin)×Wg/Ws αmax, α/min:土壌アルベドの最大値, 最小値(VIS, NIR)、Wg/Ws:土壌水分飽和度 (参考) 全球データ(ERA40)に対するGCMの2m気温のバイアス ★新スキームでは(半)乾燥域でのアルベドが上がり、現在の2m気温のモデルバイアス 6 が広範囲で緩和される可能性。 2.2 マルチカテゴリー海氷モデルの評価 8-9-10月 海氷厚分布(モデル) 年平均海氷厚 8-9-10月 海氷厚分布(潜水艦) 7 3.地球温暖化予測ならびに古気候再現に関わる気候モデルの感度実験 赤道準2年振動(QBO)と半年振動(SAO)の将来変化 ●重力波パラメタリゼーションを組み込まず、モデル上端を90kmに した気候モデルを長期間積分し、QBOよびSAOの再現を試みた 赤道上での帯状平均東西風 (T106L168 AGCM) 90km 50km 地表 成層圏にQBO、上部成層圏∼中間圏にSAOが再現された このようなモデルの長期積分(50年間)は初めての事であり 温暖化に伴うこれらの現象の変化を調べる事が可能になった 8 3.地球温暖化予測ならびに古気候再現に関わる気候モデルの感度実験 赤道準2年振動(QBO)と半年振動(SAO)の将来変化 本モデルでは中間圏と結びついた成層圏突然昇温(SSW)も再現 北緯70度 東西風の 時間−高度断面図 衛星観測 (2009年) 西風 西風 東風 Monney et al. 2009 モデル 西風 西風 東風 SSWが中間圏と結びついている事が最新の衛星観測から発見 本モデルでも再現。QBOとの関連、温暖化時の変化等が解析可能 9 3.地球温暖化予測ならびに古気候再現に関わる気候モデルの感度実験 Eemian 間氷期の気候再現とそれを用いたグリーンランド氷床実験 Eemian 間氷期の例として 125ka における気候再現実験(MIROC4 T42) 日射量の変化 気温変化(上:年平均, 下:JJA 平均, 左:植生有, 右:植生無) 植生 feedback (O’ishi and Abe-Ouchi 2011) を考慮すること で古気候データによる気温復元に近い結果が得られた 約1000年おきに得られた Eemian 間氷期の気候変化 を入力にしたグリーンランド氷床実験(図は体積最小時) 10 4年間の成果(1) 1.氷床モデル・凍土モデル・海氷モデルの開発 凍土に重要な土壌物理過程の改良方法を調査して、鉛直1次元オフライン 実験によって凍土の再現性が改善されることを確認するとともに、MIROC の陸面過程への組み込みを行った。 並列化棚氷モデルを実装し、様々な状況下で動作試験を行った 2.大気、海洋、陸面の物理過程の評価と改良 積雪のサブグリッド被覆率過程を高度化することにより、積雪涵養期の被覆 率分布が大きく改善されて、積雪面積の季節変化や年々変動の再現性が 向上した。 土壌水分によって土壌アルベドが低下する効果を導入すると、2m気温の高 温バイアスが緩和される可能性があることが分かった。 植物由来の揮発性有機炭素(VOC)発生量に土地利用を加味したところ、熱 帯雨林でのVOC発生量が大きくなり、プレモンスーン期にエアロゾルの直 接効果によって負の放射強制力と持つことが分かった。 気候湿潤度による広域熱水収支の全球分布は、全球データによる結果とよ く一致することが分かった。 11 4年間の成果(2) 3.地球温暖化予測ならびに古気候再現に関わる気候モデルの感 度実験 重力波パラメタリゼーションを組み込まない高解像度気候モデルを用いた QBO等の中層大気力学に関する研究を行った。また地球温暖化時のQBO 変化を世界に先駆けて示した。またSAOや中間圏と結合した 成層圏突然 昇温の再現も出来た。 MIROC大気海洋結合モデルを用いて、気候が現在と大きく異なる時代の 代表として最終氷期、完新生温暖期の再現実験を行った。最終氷期につい ては淡水流入に対する海洋循環の応答が背景となる気候場に影響される ことを明らかにし、完新世条件下ではモンスーンを通して水循環が強化され ることを明らかにした。さらに、氷期の気候下で生物化学物理過程を通じて 氷期の大気中CO2濃度に与える影響を定量的に明らかにした。 12 次年度以降の計画 1.氷床モデル・海氷モデルの開発 ●氷床モデルの完全並列化、高速化、最適化向上。棚氷モデルの現実氷床への 適用。合わせて、南極海洋ー氷床結合感度実験の実施。 2.大気、海洋、陸面の物理過程の評価と改良 ●海洋:西岸境界流再現性の評価 ●陸面:気候湿潤度のバイアス原因の評価、土壌アルベドスキームの高度化手法 の検討、湖スキームの問題点の調査 3.地球温暖化予測・古気候再現に関わる気候モデルの感度実験 ●更なる高解像度気候モデルを用いて、赤道準2年振動や成層圏突然昇温等の 対流圏−成層圏結合過程に重要な現象について、温暖化時の変化メカニズ ムとその成因について考察する ●Eemian間氷期から現在までの時代について、気候モデルを用いたタイムスライ ス実験を数多く実行し、様々な外部強制条件の組み合わせに対する感度を 解析する 13
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