グローバル経済における日韓の競争力 - 経済広報センター

経済広報センターポケット・エディション・シリーズ No.109
韓国ジャーナリスト招聘シンポジウム
グローバル経済に
おける日韓の競争力
韓国はわが国に先立ち米国やEUなどと積極的にFTA(自由貿易協定)を締結するとともに、電気・
電子や自動車産業などの関連企業はアジアや中国、中南米などの新興国や途上国市場で、新たな需要を的
確に取り込んでいる。最近では、先般の世界的な経済危機を政府の積極的な財政支出で乗り切る一方、李
明博大統領のもと官民一体となってアブダビの原子力発電所の受注に成功するなど、途上国や新興国での
大型インフラ事業でも、その存在感を一段と高めている。
経済広報センターは、日韓の相互理解を促進するため、二〇〇三年より毎年韓国の有力メディアのジャー
ナリストを招聘し、各界有識者との面談の機会を提供するプログラムを実施している。今回は、二〇一〇
年三月一五日から一九日にかけて、六名のジャーナリストを招聘した。
三月一八日に「グローバル経済における日韓の競争力」と題するシンポジウムを開催し、
韓国ベビーブー
マー世代の引退、李明博大統領のリーダーシップ、韓国経済・産業・企業の強さと課題について報告があっ
た。
二 〇 〇 四 年 と 二 〇 〇 八 年 に「 サ ム ス ン 言 論 賞 」 を、
職したい韓国企業トップ四〇社』
(二〇〇八年)
。
(二〇〇二年)
、
『世界最強ミニ企業』
(二〇〇七年)
、
『就
著書(韓国語、
共著)に、『韓国大企業のリーダーたち』
いる。
より論説委員。経済、産業、労働、日韓問題を担当して
二〇〇六年経済部長、二〇〇八年産業部長、二〇〇九年
九 七 年 よ り 東 京 特 派 員。 二 〇 〇 一 年 経 済 部 次 長、
社。八八年東亜日報入社、社会部、経済部記者を経て、
ソウル大学外交学科卒業。一九八七年MBC放送局入
東亜日報
論説委員
権純活 (クォン・スンファル)
【スピーカー略歴 】 (敬称略・順不同)
本稿はそのシンポジウムの概要を紹介するものである。
韓国ジャーナリスト招聘シンポジウム
「グローバル経済における日韓の競争力」
日
時
二〇一〇年三月一八日
一五時~一七時
場
所
経団連会館
講演者
以下参照
二〇〇七年に「広告クライアント協会が選んだ良い新聞
企画賞」を受賞。
韓国ジャーナリスト招聘シンポジウム「グローバル経済における日韓の競争力」
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朝鮮日報
首席論説委員
呉太鎭 (オ・テジン)
一九八一年高麗大学新聞放送学科卒業。八一年朝鮮
毎日経済新聞 論説委員
温基云 (オン・キウン )
一九九二年神戸大学にて経営学博士号を取得。八五年
員研究員。二〇〇二年より論説委員を務め、現在は論
(二〇〇六年~二〇〇七年)
。
(二〇〇二年~二〇〇六年)
、金融発展審議委員会委員
日報入社。社会部記者、ロサンゼルス特派員 八
( 五年 、) ~二〇〇〇年、韓国産業研究院 上級研究員、二〇〇〇
経済部次長 九
年 か ら 毎 日 経 済 新 聞 論 説 委 員。 政 府 政 策 評 価 委 員
( 三 年 、) 社 会 部 次 長 九
( 六 年 、) 文 化 部
長(九七年)を経て、二〇〇一年ミシガン州立大学客 (二〇〇〇年~二〇〇四年)
、産業発展審議委員会委員
説委員室の首席論説委員。
文喜秀 (ムン・ヒス )
韓国経済新聞
論説委員
鄭善九 (チョン・ソング )
学 院( 経 済 学 ) 卒 業。 八 八 年 韓 国 経 済 新 聞 社 入 社。
一九八四年延世大学経済学科卒業、八六年延世大学大
中央日報
経済専任部長
院にて政治学修士号を取得。英カーディフ大学ジャー
延世大学政治外交学科卒業。慶熙大学言論情報大学
程修了。二〇〇二年~二〇〇三年コロラド州立大学にて
二〇〇一年延世大学サンナム経営院最高企業家分析過
研修。二〇〇四年証券部長待遇、二〇〇五年四月国際部
ナリズムスクールにて、コミュニケーション修士号を
長、二〇〇五年一〇月建設不動産部長。二〇〇八年、韓
取得。一九八八年中央日報入社。社会部、
政治部
(国会・
政党、国防部担当)
、経済部(証券金融、経済省庁担当)
、
国 のC E O 教 育 専 門 機 関 で あ る 世 界 経 営 研 究 院 の 交 渉
より論説委員。
課程を修了。二〇〇八年より証券部長、二〇一〇年三月
流 通 サ ー ビ ス デ ス ク・ 部 長 を 経 て、 現 在、 経 済 部 長、
産業部編集委員および放送本部国内コンソーシアム推
経済部次長、産業部(財界チーム長、流通チーム長)
、
進室副室長を兼務。
余峴鎬 (ヨ・ヒョンホ )
ハンギョレ新聞
論説委員
ンギョレ新聞入社、政治部、経済部、社会部、国際部な
一九八七年ソウル大学法科大学法学科卒業、八八年ハ
どの記者を経て、
二〇〇三年ハンギョレ新聞政治部次長。
二 〇 〇 五 年 政 治 部 長、 二 〇 〇 六 年 国 際 部 編 集 長、
二〇〇七年四月より論説委員。
【モデレーター略歴】
宇惠 一郎 (うえ・いちろう)
読売新聞
編集委員
聞社東京本社入社。青森支局、社会部、国際部を経て、
一九七七年早稲田大学第一文学部哲学科卒業。読売新
九五年ソウル支局長。九九年解説部次長、二〇〇七年四
月より編集局編集委員。
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代とは、朝鮮戦争直後の一九五五年から、少子
代の定年退職が始まる。韓国のベビーブーム世
韓国は二〇一〇年から、戦後ベビーブーム世
「韓国におけるベビーブーマー世代の引退」
【呉太鎭(オ・テジン)
】
牽引してきた側面もある。五五年に一人当たり
の数は大変多く、この多さで韓国の経済成長を
と呼んでいる。前述通り韓国ベビーブーム世代
ている。これを韓国では「二〇一〇年ショック」
経済全体が萎縮し悪循環の連鎖を招くと警告し
社会保障費用の増加から財政悪化につながり、
を及ぼすこ ととなる。専門家は、 内需の萎縮、
化政策が始まる直前の六三年に生まれた世代を
六六ドルであった国民所得を二〇〇七年には
●ジャーナリストによるプレゼンテーション
指し、
全人口の一四・六%、
七一二万人に達する。
ら の ア イ デ ン テ ィ テ ィ ー を 出 せ な か っ た り、
二万ドルにし、経済成長の神話をつくり上げた。
ラリーマン)三一一万人が退職する。こうした
九〇年代アナログからデジタルへと社会がシフ
その五五年生まれの世代が二〇一〇年に五五歳
急激な退職は、六五歳以上の人口が既に七%を
トしていく過程で、後輩に先を越されたり、ま
一方で彼らは、個人としての幸せの追求より、
超えた高齢化社会の韓国に、非常に大きな影響
をしなければ、およそ二三年間無収入の生活を
を迎え、比較的定年年齢の早い大企業で退職が
た九七年のアジア通貨危機の際、生涯をささげ
過ごすという計算になる。それでも親として子
家族あるいは社会のための犠牲を強いられた世
て働いていた会社を追われるという挫折を味わ
供を養う責任を負う立場にあり、七一二万人の
始まる。そして九年間にわたり、ベビーブーム
った世代でもある。時には、上の世代である親
ベビーブーマー一人の退職が、三人あるいは四
代でもある。韓国のさまざまな変化の中で、自
の権威によって抑え込まれ、下の世代である子
人の人生をも左右することとなる。
世代の就業者五三二万人のうち、
賃金労働者
(サ
供の顔色を窺うという、サンドイッチ世代とも
に生まれた世代を「団塊の世代」という。この
呼ばれている。彼らは、三〇年にわたるサラリ 日本では、終戦後一九四七年から四九年の間
ーマン生活の中で、親の世話と子育てという二
団塊の世代は六八〇万人で、日本の人口の五%
ま た 人 口 全 体 に 占 め る 割 合 も、 韓 国 の 場 合 は
重の負担を負わされ、老後の準備に手が回らな
韓国のベビーブーム世代はさらに長寿という
一四・六% を占め、団塊の世代が日本で及ぼし
を 占 め る が、 韓 国 の ベ ビ ー ブ ー ム 世 代 は
リスクにもさらされている。世界的な長寿国で
た影響よりもはるかに大きな影響を、今後韓国
かった。まさにここに韓国のベビーブーム世代
ある日本には及ばないが、韓国も平均寿命が長
で及ぼしていくことになる。また韓国の合計特
七一二万人で、日本の団塊の世代よりも多い。
くなり、現在約八〇歳となっている。仮に五五
殊出生率は一九六〇年に四・〇人だったが、現
の問題がある。
年生まれの人が二〇一〇年に定年退職し再就職
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ない。
ベビーブーム世代を埋める人口層が非常に少
在一・一八人になり世界で最も低く、退職する
を実施した。
九六%が定年を延長、もしくは高齢者の再雇用
に 導 入 し、 都 内 の 従 業 員 五 一 人 以 上 の 企 業 の
代の大量退職を控え、それに先駆けさまざまな
テムの受け皿が未整備である。日本では団塊世
長、セーフティーネットの作成など、社会シス
とも大きな問題だ。再就職の支援や、定年の延
という状況である。
などにより、多くの人は五〇代半ばで退職する
る企業であっても、社内競争あるいはリストラ
儀なくされている。仮に六〇歳定年となってい
大企業の場合、役員以外は五五歳での定年を余
また社会的な受け皿づくりが不十分であるこ 韓国の場合は六〇歳定年を推奨しているが、
対応をした。このような日本の経験は、韓国に
に開始される二〇一〇年になって、ようやく定
多くの示唆を与え、韓国はそこから学ぶべきで 韓国政府は、ベビーブーム世代の退職がまさ
ある。
用する法案を成立させた。日本の企業も積極的
年に六〇歳から六五歳に定年を延長または再雇
政府、企業が一体となって取り組み、二〇〇四
明博大統領のトップセールスを褒め、またうら
はどのようにその受け皿をつくったのか、そし
退職が、どういった影響をもたらし、また日本
遅しではないかと感じるが、日本の団塊世代の
年延長についての議論を始めるとしている。時
て、その受け皿はどれだけ効果があったのか、
やましがっている。ある人は、李明博大統領を
日本は団塊の世代の労働力を活用するため、
ここから韓国は学ぶ必要がある。
輸入したいという話までされる。一国のトップ
いては、高く評価しているようだ。二月末、韓
である大統領が国家競争力の重要な要素になっ
韓国政治の生産性は全体的に非常に低い。国
国の各マスコミが調査した結果によると、李明
【余峴鎬(ヨ・ヒョンホ)
】
会での討論は不十分であり、必要な法律は適時
博 大 統 領 の 国 政 運 営 に 対 す る 支 持 率 は、 ほ ぼ
ているという点で、韓国人として非常に誇りに
処理されないばかりか、その多くは与野党大争
五〇%であった。これは金泳三(キム・ヨンサ
「李明博(イ・ミョンバク)政権のリーダーシ
議の後、国会期末になってやっと処理されるよ
ム)、金大中(キム・デジュン)、盧武鉉(ノ・
思い、韓国国民も李明博大統領のその部分につ
うな状況だ。恥ずかしい話だが、韓国の政治を
ムヒョン)など、韓国民主化以降の歴代大統領
ップの見通し」
「経済・企業は一流だが、政治は三流だ」とよ
の中で、在任二年終了時では最高の支持率だ。
ここからも国民が評価していることがわかる。
く言う。
しかし大統領に関して話すのであれば、少し
状況が変わってくる。日本の多くの方々が、李 しかし私が考えるのは、果たしてこの韓国の
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カリスマ的な非常に強い支持層を李明博大統領
国 家 競 争 力 の 要 素 と な っ て い る 李 明 博 大 統 領 そ の 上、 金 大 中、 金 泳 三、 盧 武 鉉 の よ う に、
の 支 持 率 が、 こ の ま ま 維 持 で き る か と い う 点
は持っていない。これらから支持率が、引き続
き同レベルで維持できるか、私は懐疑的である。
である。
最初にお話ししたいのは、李明博大統領の現
代から低くなり、三〇才代になると三〇%台を
以上は五〇~六〇%の支持率を示すが、四〇才
う。世論調査を年代別に分析すると、五〇才代
主化運動の結果であり、また長期政権であった
これは一九八七年の韓国権威主義から脱する民
が、 韓 国 の 大 統 領 制 度 は 五 年 単 任 制 度 で あ る。
制度は、議員内閣制度より有効で効率的である
支持率は、決して高いレベルではないように思 また韓国の国家制度にも理由がある。大統領
下回る。
李承晩(イ・スンマン)大統領、朴正煕(パク・
りを持っている。しかし最も大きなポイントは、
また一部の世論調査専門家は、年代別支持率
野党である民主党の力がなく、その代替として
就任直後は強い影響力のある大統領として運営
チョンヒ)大統領時の拒絶反応として制定され
李明博大統領を支持しているのではないかとい
できるが、三年たって成果がなければ四、五年
の問題だけではなく、競争相手である野党の勢
うことである。
り、長期の支持 者ではな い。日本的 に言うと、
た経緯がある。李明博大統領も単任制にこだわ
目には全く影響力のない大統領になってしまう
李明博大統領は派閥の中心ではないと言える。
力がいないことを理由にしている。つまり、現
ということである。金泳三大統領がそうであっ
候補の朴槿恵(パク・クネ)氏(元ハンナラ党
たように、就任初期は八〇%以上あった支持率 一方、最大のライバルであり次期大統領有力
が、三、四年目のスキャンダルと通貨危機によ
代表)は、オーナー色を持った政治家と言える。
占めているにもかかわらず、円滑な議会運営が
って急落し、最後まで任期を全うしたとは言え
李明博大統領には、また別の問題もある。そ
できてない。特に今韓国で注目されている世宗
朴正煕元大統領の長女であり、ハンナラ党の中
れは、オーナー社長ではないサラリーマン的社
市議論がある。これはソウルから南方に車で約
ない状況となった。このようなことは、大統領
長の性格を帯びていることだ。彼はヒュンダイ
二時間の新都市へ政府・省庁を移転させる政策
でも強い結束力を持つリーダーである。その朴
グループの出身で、社長として雇用、任命され
のことだが、李明博大統領は再考する方針を出
の強いリーダーシップを前提とする韓国で、権
た。その後政治家になり、大統領になったが、
し、推進派の朴槿恵と意見が合ってない。もし
槿恵氏と意見が合わず、与党が圧倒的過半数を
その性格はまだ現存している。
側近についても、
李明博大統領の方針が達成できなければ、威信
力の空白、混沌を起こすことになる。
多くは二〇〇〇年初めソウル市長時代からであ
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を失い、国論を分裂し、最悪の場合レームダッ
権を揺るがす問題が多数存在する。
ーシップを維持していけるか、これまでの韓国
クにつながる可能性がある。そうなれば日本の これらからも李明博大統領が継続してリーダ
小沢・鳩山関係の性格とは異なるが、政権後半
の歴史、慣行からみれば悲観的にならざるを得
ないのではないだろうか。
に、二重権力構造が存在する可能性もある。
さらに李明博大統領の国家運営戦略について
可能性が高い。代表的なものが、四大河川洪水
って非常に重要な節目になると思う。
に、韓国の六月地方選挙は、李明博大統領にと
も、野党議員や進歩勢力からも今後批判が出る 日 本 の 七 月 の 参 議 院 選 挙 が 重 要 で あ る よ う
防止事業である。韓国のように資源が制限され
してこれが有効なのか。制限された資源をもっ
「韓国産業と企業の強み」
【温基云(オン・キウン)】
ており、資本も制約されている国として、果た
と有効に活用するべきではないかなど疑問に思
韓国産業にももちろん弱みは多数存在する
する。
が、 今 回 は 強 み に つ い て 焦 点 を 絞 っ て お 話 し
うことも多い。
その他、派遣労働者問題、低所得者層・高齢
者に対する福祉優遇措置の減少、上位企業二〇
のか、その強みについて紹介したい。
%に集中された減税など、今後李明博大統領政 最近日本のマスコミを見ると、韓国を賞賛す
る報道が多い。日経ビジネスでは、サムスン電
スが決定的であったと伝えている。私もこれら
作戦があり、特に李明博大統領のトップセール
た。この成功の秘訣について、官民挙げた共同
電プラントで、韓国が最終的に受注にこぎつけ
聞では、四〇〇億ドルに上るアブダビ原子力発
をする意味がないとも言っている。日本経済新
ような商品づくりをしなければ、今後技術開発
品づくりに変化する必要があると主張し、この
の強みであったものづくりが、韓国のような商
子、この四社を四天王であると例え、また日本
ている。
南米市場といった途上国マーケットへ移行し
イ ン ド な ど の ア ジ ア 市 場、 ア フ リ カ 市 場、 中
のターゲットも、先進国マーケットから中国・
ットをより広く利用する戦略である。また市場
出金額の八割を占めることとなり、世界マーケ
国と、すべてFTAを締結した。これは韓国輸
一〇輸出先の国々のうち日本、中国を除く八カ
FTA締結を積極的に推進している。韓国上位
市場を見出すしかない状況であった。そのため
て、積極的に海外に乗り出し海外マーケットで
子、ポスコ、ヒュンダイ自動車、そしてLG電 韓国は国内マーケットが大変狭い。したがっ
について、
ほぼ正しい評価をされていると思う。
行 う な ど 瞬 発 力 と 柔 軟 性 の 高 さ が 挙 げ ら れ る。
それでは、私個人とし、韓国の産業、あるい 次に現地のニーズに合った商品開発を迅速に
は韓国の企業について、どのように思っている
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中主人が外出した後使用人が冷蔵庫のドアをあ
している。インドではカースト制度があり、日
ると、LG電子は鍵付き冷蔵庫の生産、販売を
ズに合った商品開発についてインドの例を挙げ
に攻撃的な投資と言えるだろう。また現地ニー
にも時間がかかることが多い。単独投資は非常
ナーとのトラブルが起きやすく、また意思決定
るが、単独での投資が多い。合弁の場合パート
韓国企業はインド、中国に多額の投資をしてい
定が維持されている。
いが、それでも速やかなトップダウン式意思決
の第一線から退いており以前のような速さはな
場を先取りした。既に創業者のほとんどが経営
な意思決定でメモリー半導体の投資を決め、市
サムソンも八〇年代初め、非常にスピーディー
丈夫にしたところ、これも予想外の販売をした。
に 使 用 す る た め ク ラ ク シ ョ ン の 音 量 を 大 き く、
て車高を高くした。また、クラクションを頻繁
け、勝手に食べ物を盗むことがある。それを防 ま た 垂 直 系 列 化 に よ る ス ピ ー ド の 強 み も あ
止するためである。冷蔵庫に鍵をかけたいとい
がある。シーク教徒のターバンの高さに合わせ
ュンダイ自動車が販売している車に
「サントロ」
造したところ、予想外の売上げをした。またヒ
【鄭善九(チョン・ソング)】
レイ、半導体とグループ内で部品あるいは中間
をいかし、液晶テレビ製造において、ディスプ
をつくったが、サムスン電子は垂直系列の強み
る。サムスン電子とソニーが設立したS L
―C
D(合弁の液晶パネル生産会社)が韓国で工場
材を速やかに調達することができた。これによ
「韓国の長寿企業の条件」
ったニーズにいち早く対応し鍵付き冷蔵庫を製
り速やかな生産、スピーディーな販売が可能と
なる。全く短所がないわけではないが、スピー 二一世紀の経営について争点となっているの
かしきれてない。かつて韓国ではこの独寡占状
乱立し過当競争となり、スケールメリットを生
ある。日本の電子分野、自動車分野では企業が
最後に、韓国企業の独占状態も強みの一つで
企業が何と五万社以上、一〇〇〇年以上の企業
三六・六年だそうだ。日本では一〇〇年以上の
韓 国 証 券 所 に よ る と 上 場 会 社 の 平 均 寿 命 が、
可欠な課題である。韓国の企業も同様である。
経営など、企業が長期に存続するために必要不
は持続可能な経営、持続可能な企業である。特
態が脆弱点として映っていたが、現在世界にマ
が七社もあると聞いており、ほんとうに驚くべ
ドという観点で、垂直系列化は大きな強みを持
ーケットが広がったため、二社または三社とい
き数字だと思う。一方で韓国は、一〇〇年以上
に企業の社会的責任、エコ・環境問題、倫理的
う寡占状態の競争体制が、スケールメリットを
の企業はたった二社しかない。日本と違い韓国
っている。
生むこととなった。
では、古くから商売、ビジネスを非常に卑しい
ことと思われており、むしろ二社あることに驚
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見舞われた。この時斗山グループも存続が危ぶ
ったわけではない。九八年、韓国は通貨危機に
斗山グループは、現時点までずっと順風満帆だ
二〇一〇年で一一五年目を迎える。しかしこの
こ の 斗 山 グ ル ー プ は 一 八 九 六 年 に 設 立 さ れ、
の斗山グループと製薬会社の東和薬品である。
きを隠せない。この二社は業界一〇位、一三位
たかもしれない。
も古い会社、斗山グループは現在存在しなかっ
を見張るようなスピードがなければ、韓国の最
出は周りを驚かせた。しかしこのオーナーの目
心であり、この全く異なった重工業企業への進
ビールなど食品関係を中心とした軽工業企業中
あった。それまで斗山グループといえば、OB
ループのオーナーが、コンサルティング会社の
ングループは一九三八年に創業したが、グルー
ン)顧問のスピード経営も参考になる。サムス
まれる非常に厳しい状態になった。当時斗山グ またサムスン電子の尹鍾竜(ユン・ジョンヨ
マッケンジーの企業診断を受け、早急に経営方
鍾竜顧問である。彼は常に「サムスンはまだま
プの母体であるサムスン電子は六〇年代に創業
営診断したマッケンジーの社員を系列企業のC
だ超一流なんかではない。トップだと喜んでい
針を改革しないと六カ月以内に倒産すると言わ
EOにスカウトし、そして実行した措置が、韓
るうちに危険に陥る。
サムスンの最大の強みは、
された。このサムスン電子を育て上げたのが尹
国重工業の代名詞である大宇総合機械の買収で
【文喜秀(ムン・ヒス)】
れた。斗山グループのオーナーはあわてて、経
光のようなスピードある意思決定である。問題
発生後意思決定するのではなく、
事前に集まり、 「韓国経済の成長エンジンと証券市場」
日本の経営の神様と言われる松下幸之助氏も朝
瞬時に方向転換をすることだ」と言っている。
す。
また方針通り進めてもうまくいかなければ、
ン経済研究所は分析している。
政繰り上げ投入が大きく功を奏したと、サムス
と言われている。政府主導の補正予算による財
長を遂げ、世界的金融危機をうまく乗り越えた
今後の方針を論争、討論し、一つずつ結論を出 韓国経済は、二〇〇九年〇・二% のプラス成
令暮改と言ってこの方針転換を上手に使い、尹
「パンリパンリ」という、
「早く、早く」という
きな変身を成し遂げるスピードや韓国特有の
な条件があるが、カメレオンのように非常に大
ろうサムスン電子や、その他長寿企業には色々
このように、韓国で一〇〇年以上存続するだ
二〇〇七年五・一% と、五% 前後の経済成長を
二 〇 〇 五 年 四・〇 %、 二 〇 〇 六 年 五・二 %、
ークに二〇〇三年三・一%、二〇〇四年四・七%、
の韓国経済の成長率は、二〇〇二年の七%をピ
ベルに回復できるだろうと見ている。いままで
と見込んでおり、金融危機前の二〇〇七年のレ
韓国政府は、二〇一〇年の経済成長率を五%
文化習慣が、大きな効果を発揮したのではない
続けてきた。しかしまだ楽観視するには時期尚
鍾竜顧問も大変参考にされていた。
かと思う。
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韓国ジャーナリスト招聘シンポジウム「グローバル経済における日韓の競争力」
韓国ジャーナリスト招聘シンポジウム「グローバル経済における日韓の競争力」
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韓国のUBS証券によると、二〇一〇年のGD
早だ。六カ月先行指数は依然として良くなく、
産業を育成することにかかっている。
成できるかは、原子力発電、航空、そして防衛
して喜べないレポートを発表した。韓国の造船
産業についてイギリスのエコノミスト誌は、決
学の七大産業であると言われている。その七大
電子、自動車、携帯電話、造船、鉄鋼、石油化
韓国で国内経済を牽引しているのは半導体、
半期には三・五%に下降するだろうと見ている。
るようだ。
発電所の受注に成功した自信が支えになってい
針を掲げている。二〇〇九年、UAEで原子力
置など、三大コアテクノロジーを国産化する方
冷却ポンプ、あるいは原子力プラントの制御装
ングハウスに依存している設計コード、原子炉
と、二〇一二年までに、アメリカのウェスティ
P の伸び率は、第1 四半期六・六% だが第4 四 まず原子力発電について具体的に申し上げる
と石油化学は中国にほぼ追随されている。半導
体と電子、鉄鋼も時間の問題だ。自動車と携帯 また韓国の中型原子炉は、特に競争力が高い
り韓国の競争力がわかる。その上プラントの安
月、アメリカ五七カ月、フランス六〇カ月であ
かる。また建設期間についても、韓国は五二カ
の原子力プラントの単価は非常に低いことがわ
ドルに増大させる方針を立てている。それが達
は、二〇二〇年に一人当たりの国民所得を四万
これらの懸念を踏まえ韓国政府の知識経済省
今後を注視する必要があるが、韓国政府の非常
さまざまな計画が果たして計画通りに進むか、
成などにも強い意欲を示している。このような
ス産業、低炭素社会、そしてグリーン産業の育
だ。さらに雇用創出も兼ね、医療観光、サービ
アメリカ三五〇〇ドルであり、これらから韓国
二 八 〇 〇 ド ル、 日 本 と フ ラ ン ス 二 九 〇 〇 ド ル、
韓国はキロワット当たり二三〇〇ドル、カナダ
と見ている。原子力製造コストの単価をみると、
全性、安定性でも競争力があり、韓国国内二〇
に強い意欲、意思からも、ある程度は進展があ
電話は何とか安定圏内であると分析している。
基の原発で、いままで一件も事故が発生してい
るだろうと産業界では見ている。
証券市場、株式・株価はどうなるか、展望を示す。
では、このようなマクロ経済の中で、韓国の
ない。これらから韓国政府は原子力発電に大い
に期待しているのだ。
次に航空分野について、中型の航空機製造を
中心に計画している。二〇〇八年の売り上げは 韓国には韓国総合株価指数(KOSPI指数)
が あ る が、 二 〇 〇 九 年 は 五 〇 〇 ポ イ ン ト と 約
かった。本日は一六八〇ポイントとグローバル
一九億ドルだったが、二〇二〇年には二〇〇億
防衛産業についても二〇〇九年の輸出は
金融危機前の二〇〇八年初頭レベルになってお
五〇%近く上昇し、日本の株価上昇率より大き
一 一 億 七 〇 〇 〇 万 ド ル だ っ た が、 こ れ を
り、株価については、韓国はほぼ危機から脱し
ドルに増加させる計画だ。
二〇一二年には、世界一〇大輸出国にする方針
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韓国ジャーナリスト招聘シンポジウム「グローバル経済における日韓の競争力」
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ウォンの株を売却しており大変対照的である。
二〇〇八年、外国人投資家は三三兆六〇〇〇億
ォ ン を 購 入 し た。 リ ー マ ン シ ョ ッ ク 前 の
二〇〇九年一年間で過去最高額となる三二兆ウ
国 人 投 資 家 の 存 在 が 大 き い。 外 国 人 投 資 家 は
たと言える。このように株価が上昇したのは外
と考えているからだ。
ォンの外国人投資家マネーの買いが入るだろう
数が組み込まれれば、四兆ウォンから一〇兆ウ
二〇一〇年MSCI指数に韓国のKOSPI指
外 国 人 投 資 マ ネ ー の 流 入 が あ っ た。 同 様 に
に韓国のKOSPI指数が組み込まれ、多額の
ト台まで上昇するだろうと見られている。
一八〇〇ポイント台、一部では二〇〇〇ポイン
たが、後半になって外国人投資家の買いにより、
ウォンとドルの為替レートも考慮に入れると数 二〇一〇年、上半期の株価は少し低調であっ
十%の収益を外国人投資家は得ている。
韓国の証券市場は、二〇一〇年に期待をして
いる。それは、モルガン・スタンレー・キャピ
タル・インターナショナル指数(MSCI指数) 次に日本経済について述べると、韓国と日本
トック・エクスチェンジ指数(FTSE 指数)
ヨーロッパのファイナンシャル・タイムズ・ス
ないかと考えているからである。二〇〇九年、
三国の間で、料理、映画、音楽といった文化産
ト ラ イ ア ン グ ル と い う 視 点 に 切 り か え た 場 合、
況は生まれない。しかしこれを中国までも含め、
こういった産業構造の中ではウィンウィンの状
の 産 業 構 造 が 非 常 に 似 て お り 競 争 関 係 に あ る。
新たな道が見えてくる。例えば石油・原油など
業の分野でさらに交流を活発にすれば、この三
に韓国のKOSPI指数が組み込まれるのでは
は日中韓共同基地の設立なども検討することが
国の新しいパラダイムの基盤も再構築できるの
ではないか。
できる。
また今後の一〇年間を見据え、日中韓三国の
パラダイムを再度考える必要がある。中国には
日本には世界トップレベルの技術力と資金力が
り組み~人と効率の共存~」
「 世 界 的 な 経 済 危 機 に 対 す るL G グ ル ー プ の 取
大きなマーケットがあり、
経済が成長している。 【権純活(クォン・スンファル)】
ある。韓国にはクリエーティビティーと、とに
突破口を見出そうと思う。
日本での韓流ブーム、
情をどう克服するかは、これからの若者にその
韓・反中といった国民感情がある。これらの感
できないか。もちろん日中韓の間には反日・反
ある。この三国の強みをそれぞれ持ち寄り融合
ンショックの影響が、再び大規模なリストラへ
した。その後、十数年ぶりに再び訪れたリーマ
員の三〇%~五〇%の大々的なリストラを実施
サムスンをはじめとする主な韓国の企業は、社
な解雇など、大変苦い経験を味わった。例えば
長率が大きく低下し、企業実績の悪化と大規模
かくやってみようという強い意欲、ファイトが 韓国は九七年のアジア通貨危機の際に経済成
韓国での日流ブームなど、日韓、日中、韓中の
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ーマンショックから一年半ほど経過した今、そ
繋がるのか、韓国国民は動揺した。しかし、リ
だが、韓国LGグループのトップである具本茂
を傾けた。日本ではあまり知られていないよう
貨危機時点のようなリストラを避けるため総力
ころが多くあり、皆様にご紹介したい。
( ク・ ボ ン ム ) 会 長 の エ ピ ソ ー ド は 示 唆 す る と
の心配は無用であった。
韓国経済は日本同様、依然として内需不振に
あ え い で い る が、 輸 出 中 心 の 韓 国 企 業 は
では、今回の危機から比較的早期に脱出した国
小幅ながらプラスになり、OECD加盟国の中
げている。
二〇〇九年の韓国実質経済成長率も、
レンスミーティングを行った。各CEOは構造
Oと二〇〇九年経営計画ついて、個別コンファ
ループの具本茂会長は、LG系列各会社のCE
二〇〇八年の一一月から一二月に、当時LGグ
二〇〇九年、史上最高かそれに近い好業績を上 韓 国 産 業 界 の 危 機 感 が 非 常 に 高 ま っ て い た
として挙げられている。
れ、社会的に大きな影響を及ぼした。具本茂会
の発言を特集したところ、韓国社会に広く知ら
にしなかったが、私が東亜日報産業部長時代こ
発言は社内向けだったため、LGグループは公
おろそかにしてはならない」と指示した。この
しい状況でも未来の競争力確保に向けた投資を
この問題を解決していこう。そしていかなる厳
をしてはいけない。その他の経営改革を通じ、
特に韓国の大企業はリーマンショック時に、通
様に、韓国企業家たちの役割も重要であった。
とウォン安によるところが大きいが、それと同
二〇〇九年よりも更に二八・二% 増の一五兆ウ
( 五 一・九 % 増 ) に 増 加 し、 二 〇 一 〇 年 は
の 二 〇 〇 九 年、 一 一 兆 七 〇 〇 〇 億 ウ ォ ン
二〇〇七年の七兆七〇〇〇億ウォンから二年後
の 中 L G グ ル ー プ は、 年 間 の 投 資 金 額 を
で、全体の雇用を増加させた。このような状況
用維持の並行という決して容易ではないやり方
年は一万人を採用すると発表し、新規採用と雇
職以外によるリストラはしなかった。二〇一〇
しいからと、新入社員の採用中止や社員の解雇
て表れ非常に厳しかった。今回も経営環境が厳
大量解雇は、その後の業績に大きな後遺症とし
改革、社員のリストラが必要だと話したが、具
長は韓国産業界、各大企業オーナーの中でも特
ォンの新規投資をすると発表している。LGグ
このように、韓国企業の受けた打撃が比較的
に影響力があり、LG グループだけではなく、
ループ三大柱のLG電子、LG化学、LGディ
本茂会長は「アジア通貨危機の時代に実施した
サムスン、ヒュンダイ自動車、SK、ポスコな
スプレイ全てが、二〇〇九年創立以来最高の業
弱かったのは、李明博政府の迅速な財政の支援
ど、主要な企業がほとんど大規模な雇用調整を
績であったことなどから、業務効率とともに人
しかったと言える。
を尊重する企業として、最高経営者の選択が正
実施しなかった。
二 〇 〇 九 年 L G グ ル ー プ は、 新 入 社 員 を
九六〇〇人も採用し、一方で定年退職や自主退
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●パネルディスカッション
韓国企業の元気の原因が、トップダウンのス
日六名の方々から聞いた話と重なると感じた。
ピード感ある決定システムと変わり身の早さ、
【宇惠一郎(モデレーター)
】
韓国の元気さは、今お聞きになったとおりだ
【 呉 】 私 は 経 済 専 門 で は な い の で、 印 象 と し て
そして、大統領の強権によるトップセールスで
トだけ頑張っており、正規のトラックスケート
申し上げる。あまりにも長きにわたって経済低
が、先日の冬季オリンピックでの韓国の活躍を
ではいまひとつ。しかし今回韓国はショートト
迷が続いたので、国民が自信を失ってしまった
あるが、今回日本を視察され、この日本の沈滞
ラックだけでなく、五〇〇メートルでも男女と
のではないか、喪失感、閉塞感があるのではな
見て、非常に象徴的だった。かつての冬季オリ
も優勝した。
フィギュアスケートでは金姸兒
(キ
いかと思う。構造改革や政策の変化なども必要
感の原因は何だと思うか。
ム・ヨナ)選手が優勝し、どうやら日本人の深
かもしれない。
ンピックでは、韓国はショートトラックスケー
層心理の中に、
「韓国は本物で、これまでの日本
めた。これを経済の話と置きかえると、まさに本
されているのではないのか」との思いができ始
態度などからも分かる。
で、気持ちを改める必要があるのでは。当時ア
変な人気らしいが、あの明治維新の精神、気概
の得意分野に追いついてくる、あるいはもう越 明治維新に関連するNHKの大河ドラマが大
ジアで最初に近代化を成し遂げた日本のあの精
が、 や は り 政 治 的 な リ ー ダ ー シ ッ プ が 必 要 だ
体、 民 間 レ ベ ル の 努 力 も も ち ろ ん 求 め ら れ る
ではそのためにはどうすればよいのか。社会全
論説委員のLGグループの紹介について大変意
にやりにくいというイメージがあるが、権純活
大変激しく、リストラなど人材の合理化が非常
【 宇 惠 】 日 本 企 業 の 間 で は、 韓 国 の 労 働 運 動 は
神が、
今の日本社会には必要なのかもしれない。
と思う。
【権】かつて韓国の労働運動は、世界で最も戦
外であった。現在の韓国労働運動の現状につい
わった。いわゆる光速の変化の時代になったの
闘的で攻撃的と言われてきた。しかし李明博大
【温】日本の相対的な弱点は何なのか。
だ。この変化に見合った意思決定のスピードが
統領政権発足から、この労働運動に重要な大き
て伺いたい。
必要ではないかと思う。日本の慎重さも強みで
な変化が起きている。
今、時代はアナログからデジタルの時代に変
はあるが、もう少しスピードアップし、技術を
インドにおける韓国企業の積極的でスピーディ
盟(韓国労総)の二つがあり、民主労総が過激
働組合総連盟(民主労総)と韓国労働組合総連
先取りしていくような姿勢が必要ではないか。 韓国の労働団体には大きく分けて全国民主労
ーな投資や、日本のFTA問題に対する消極的
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【宇惠】鳩山政権の旗印の一つは東アジア共同
日本、価格面での中国から板挟みのサンドイッ
で攻撃的な団体だ。盧武鉉政権時は非常に大き
しかしここ数年大きく変化し、LGグループ
チ状態になっているが、現実的に日中韓での協
体であるが、まさに日本・中国・韓国が牽引者
では労組が協力的であるように労使の協調主義
力は可能なのか。
な影響力を持っていた。最近も雙龍自動車労組
が増加しており、民主労総、韓国労総などの影
【文】韓国のサンドイッチ状態は今も昔も同じ
としてどのような関係・役割を担い、分担する
響力が縮小してきている。韓国最大手の通信会
であり今後もなかなか克服できないと思う。韓
の工場不法占拠や、KORAILという韓国鉄
社、KTも民主労総から脱退したように、大手
国の立場としては、日本、中国とのFTA締結
かにかかっていると思う。韓国は、技術面での
企業の多くが合理的で穏やかな労働運動を進め
が残っているが、重要なのは、FTAがどちら
道公社の労組がデモ、ストライキをした。
る労組になっている。そのため、韓国経済、企
とってもプラスになるということだ。日本は韓
かにだけ有利になるのではなく、三国いずれに
国企業の韓国投資を不安視する大きな要因の一
国 に 対 し て、 韓 国 は 中 国 に 対 し て そ れ ぞ れ
業の足かせが少なくなり、日本企業はじめ、外
つが次第に減っていくと思う。
プロセスを短期間で変化させることはなかなか
品として海外に輸出しているからだ。これらの
を韓国が輸入し、それを加工し、完成品・最終
の対韓貿易黒字は、高度な技術による部品素材
どうだろうか。
いへの利益が深められる糸口を見出してみては
文化産業、アイデンティティーを模索し、お互
成世代ではなく、若者に委ねてみてはどうか。
うことが必要だ。そして、そのような交流は既
三〇〇億ドルの貿易収支黒字が出ている。日本
考えられない。長期的視野にたって改革する必
がまだ残っているが、ビジネス上で進展するた
三国は、歴史的にも文化的にも、悪い国民感情
完して共生してこそ成功できると思う。日中韓
を、日中韓三国が一つになって、お互い相互補
積極的な意気込みと情熱などそれぞれの強み
長、そして韓国企業の創意力、クリエイティブ、
し、中国の今後ますます拡大する市場と経済成
レベルである日本の技術力と資金の強みをいか
常に似通っている。したがって、日韓のFTA
あまりにも似ており、業種、産業の競争力も非
くさんあった。しかし韓国と日本は産業構造が
国との違いもあり、双方にとってメリットがた
【鄭】韓米、韓チリのFT A は、農業国と工業
に対応されたのか。
が、韓国側はこのような問題についてどのよう
今後大量のオレンジや牛肉が輸入されると思う
【宇惠】韓国とアメリカのFTA締結について、
要がある。個人的な意見としては、世界トップ
めには、ビジネスと文化を同時に交流するとい
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面している。はたして日中韓三国の協力がなさ
韓中FTAも同様であり、さまざまな問題に直
政府はあまり急いではいないような気がする。
がうまくいくかどうか、疑念もある。現在韓国
を受ける産業に支援するなど産業政策を推進
あ る。 利 益 を 得 る 産 業 か ら 税 を 徴 収 し、 被 害
府が資金面あるいは税制面で支援をする制度で
ら施行している。これは農業や中小企業へ、政
るいは貿易調整支援制度というものを二年前か
した。
れるか、まだまだ疑問が多い。
【 宇 惠 】F T A 締 結 に よ り 恩 恵 を 受 け る 産 業 と
ついてはどうか。
経済圏に対抗するための東アジアの共同体は必
あるいはその先にある北米あるいはEUの広域
【宇惠】いずれにしても、日中韓三国のFTA、
【 温 】 韓 国 が い ろ い ろ な 国 とF T A を 締 結 す る
要だと言われながら、やはり口で言うほど簡単
そうでない産業があるが、政府のとった制度に
上で、チリとのFTAによるブドウ栽培農家の
ではなく、非常に難しい現状があることが理解
No・
「CFRとの対話
─新時代の日米グローバル課題─」
(文責
国際広報部主任研究員
加藤博也)
できたと思う。
反対や、EUとのFTAによる中小企業の反対
や、一方で電子メーカー・自動車メーカーなど
利益を享受する産業の推進派がある。これらを
調整するために韓国では、事業転換支援制度あ
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ポケット・エディション・シリーズ
※当センターホームページでバックナンバー全文を
ご覽いただけます。
( http://www.kkc.or.jp/
)
◆二〇〇九年発行
No・
「将来の金融システムはどうあるべきか」
コロンビア大学ビジネススクール教授
チャールズ・W・カロミリス
No・
「世界経済危機と日本企業の課題」
(米国ビジネススクール教授招聘シンポジウムより)
No・
「労働市場の環境変化と日欧の対応」
(ベルリン日独センター・ケルン経済研究所との共催
シンポジウムより)
(韓国ジャーナリスト招聘シンポジウムより)
「グローバル経済における日韓の競争力」
No・
(米国シンクタンク研究者シンポジウム)
「日本経済の再活性化 ─ 米国研究者の視点 ─」
No・
No・
「中国の景気対策と世界経済への影響」
中国社会科学院世界経済政治研究所所長
余
永定
「新時代の日米中関係を探る」
No・
◆二〇一〇年発行
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(財)経済広報センター
ポケット・エディション・シリーズの発刊に際して
経済広報センターは、土光敏夫氏(第四代経済団体連合会会長)のイニシャティブによって一九七八年に設立
された財団法人です。当時国内では、企業の存在意義、あり方が厳しく問われ、また海外では、台頭してきたア
ジアの経済パワー、すなわち日本の動向に注目が集まっておりました。そこで、日本企業の考え方、行動、社会
における存在意義などを広く内外にお伝えし、相互理解のチャネルとなるという志の下に、政府から独立した民
間非営利組織として当センターが設立されました。
現在当センターは、経済界の政策提言や意見を社会にお伝えすることに力を入れております。そのような活動
を支える基礎として、国内ではビジネスパーソン、消費者、ジャーナリスト、教育者、有識者との対話の機会を
数多く設け、また、海外からは、多くのジャーナリスト、研究者、経済人、教育者を日本に招き、あるいは海外
諸都市において日本の経済人、研究者による講演会やシンポジウムを開催するなどして、日本に関する理解の深
化に努めております。
幸い、これら対話・講演・シンポジウムは、知識、情報、知見という観点からして深い内容となっており、会
員各位から、当センター関係者のみが知るにとどめず、広く公共の財産として共有するに値するものであるとの
ご指摘をいただきました。
そこでこれからは、内外における対話や講演会やシンポジウムの記録をまとめ、
「経済広報センター・ポケッ
ト・エディション・シリーズ」として、逐次刊行することといたしました。会員の皆様のみならず、各界の方々
に広くご愛読いただければ幸いでございます。
このポケット・エディション・シリーズをより良いものとしていくために、各位のご教示を賜われば、幸甚に
存じます。
一九九九年一二月 財団法人 経
済広報センター
発 行 2010 年 6 月 11 日
発 行 所 財団法人 経済広報センター
東京都千代田区大手町1−3−2 経団連会館
TEL:03(6741)0011 FAX:03(6741)0012
編集・発行人 中山 洋
印 刷 株式会社 大巧
財団法人 経
済広報センター
一企業の賛助を得て、経済界の広報活動を展開しておりま
経済広報センター ポケット・エディション・シリーズ No.109
経済広報センターは、財団法人として三七業界団体、一六
す。
会長は御手洗冨士夫氏(日本経団連名誉会長)
、副会長は、張
富士夫氏(トヨタ自動車会長)
、米倉弘昌氏(住友化学会長)
、
がつとめております。
岩沙弘道氏(三井不動産社長)
、清水正孝氏(東京電力社長)
活動は次の四つの柱で展開しております。第一に、経済界
の情報や提言を広く国の内外へ発信し、政策形成プロセスに
おける議論を活性化するための広報活動、第二に、社会のメ
ッセージを多角的に受信し、経済界の活動にフィードバック
する広聴活動、第三に、豊かな知識社会を創造するための教
育界との対話、第四に、会員企業・団体の広報活動の支援な
ど、各種サービスの提供です。
参加いただく活動を幅広く展開していきたいと考えておりま
これからも皆様方のご意見を伺いながら、各界の方々にご
す。
(本シリーズの緑色は国内広報活動、青色は
)
海外広報活動に関するものです
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(財)
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●日本政策投資銀行
経団連
会館 ★
● 三井生命
J A ビル
東京消防 庁
● 三井物産
日経ビル
三菱東京● ●
UFJ 銀行
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大手町駅
半蔵門線
大手町駅
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●NTT
●読売新聞
●サンケイビル ●逓信博物館
●
● 丸の内線
●大手町ビル
大手町駅
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大手町駅
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丸の内線 ●
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