防府市街に「昭和館」と「うめてらす」が同日オープン

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防府市街に「昭和館」と「うめてらす」が同日オープン
4月29日、防府市にまちの駅「うめてらす」と、
● 取り残された防府中心商業地
昭和レトロを体験できる「ほうふ昭和館」がオ
防府の中心商業地は、古くから防府天満宮の
ープンします。
今回は、
同日にオープンする両施
門前町として栄えてきました。防府駅から天満
設の概要や意義についてご紹介します。
宮までは、商店街を通ってそぞろ歩きをしても
15 ∼20分の距離。かつて神社の参拝は、参道を
● コンパクトシティ化が進む防府駅周辺
通って正面からアクセスするのが当然の風習で
防府駅周辺は、駅南北ともに鉄道高架事業に
もありました。つまり天満宮は、中心商業地の一
伴う区画整理事業で再開発等が進んだこともあ
番奥に立地するマグネットだったわけです。
って、
コンパクトシティ化してきました。図書館、
ところが、世の中が車社会となり、道路も、か
市役所、音楽ホールなどの公共施設が駅から歩
つて市街地を通っていた国道2号線が市街地の
ける距離に集積しているだけでなく、通常なら
はるか北に新たに整備され、同じく北に山陽自
郊外のロードサイドに立地しているような形態
動車道が開通してインターチェンジも出来まし
の大規模小売店、スーパー、レストラン、シネコ
た。そして天満宮の北裏手には大規模な駐車場
ンなどが駅近辺に集積しています。また、マンシ
が用意されました。その結果、市外からの参拝客
ョンも林立するようになりました。
は市街地より北側から車で南下して来て、天満
ただし、
区画整理事業区域から北側の、
かつて
宮北裏手に車を停め、参拝がすむとそのまま車
防府の中心地であった中心商業地(地図参照)
で防府を離れることとなりました。観光客数ベ
は、
今では活気がありません。
シャッターが下り
ースで年間55万人に及ぶ天満宮参拝客は、防府
た店や空き地が目立っています。
市街に足を踏み入れなくなり、中心商業地のマ
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グネットだった天満宮は、位置こそ移動してい
買い物以外の動機でも、人々がここに足を運ん
ないものの、
実質的には市街地を離れ「郊外型」
でくれるようになる可能性があります。新たな
施設に変貌してしまったのです。
市街地来訪動機となるわけです。なお、このよう
商店街の衰退にはその他にも大型店の影響な
な昭和をキーワードとした施設を、将来的には
ど各種の要因がからんでいるのでしょうが、少
界隈に複数立地させる構想もあります。そうな
なくとも、かつて天満宮の活躍で多くの人が訪
ると、おのずと街歩きにもつながります。
れていた駅北側(区画整理事業区域以北)の市
街地に人が来なくなったことは確かです。
● 成るか防府市街地の街歩き復活
「うめてらす」は防府市(および防府市観光協
● 「うめてらす」
で市街地の街歩き需要創出
会)が主体となっている行政主導の事業です。一
まちの駅「うめてらす」
は、
中心商業地の北端、
方「ほうふ昭和館」は防府商工会議所(および
天満宮参道沿いにあります(地図参照)
。
まちの
地元商店街)が主体となっている民間主導の事
駅とは、
道の駅の市街地版のようなもので、トイ
業です。別々の動きが、くしくも同時期に結実し
レ、
休憩施設が整備され、
地域案内人がいる交流
ました。そしていずれも、市街地への来訪・街歩
施設です。全国的には商店がまちの駅機能を併
きの活発化を狙っています。当面は、旧国道2号
せ持つケースが多いのですが、
「うめてらす」の
線以北は主に「うめてらす」主導の街歩き、以南
場合は新たに施設整備されました。
は主に「昭和館」主導の街歩きが活発化するで
施設内には土産物売り場や飲食店もあります
しょう。両者とも、今後互いに連携を深めて相乗
が、施設の最大の目的は防府市内の観光情報案
効果を発揮していくつもりのようです。このこ
内です。中でも、防府市街の山の手に広がる、国
とで、再び旧来の防府中心市街地・商業地に人々
分寺など防府天満宮以外の観光地や、地旅的魅
が行き交うようになることが期待されます。
力のある街並み(宮市地区など)の情報を提供
また、
「うめてらす」は、立地場所からみてター
し、
車で防府に来た人も含め、
ここを拠点にして
ゲットは天満宮参拝客であり、彼らを市街地方
防府市街の山の手を街歩きしてもらうことに力
面にも流していく役割を担いますから、ある意
を入れています。
従って、
電動自転車のレンタサ
味、天満宮を市街地に人を流す玄関口にしよう
イクルなども行います。
としていると見ることもできます。一方「昭和
館」の方は、せっかく天満宮に行くなら昭和のコ
● 「昭和館」
で新たな市街地来訪動機創出
ンセプトの楽しめる商店街側経由で行こう(あ
「ほうふ昭和館」
は、
中心商業地南側の、アーケ
るいは、商店街側にも足を伸ばしてみよう)とい
ード街の中にあります(地図参照)
。空き店舗を
う相乗効果もねらっています。両者の思惑は結
利用して設置されたもので、
内部は、昭和30年代
果的に、一旦「郊外型」となってしまった天満宮
から40年代前半まで、つまり高度成長期時代の
を、再び「市街地型」のマグネットに引き戻そう
商店・飲食店・茶の間などを再現したものとな
という動きにつながっています。これが実現す
っています(入館料百円)
。
れば、防府駅を中心としたコンパクトシティの
いまは高齢化社会ですし、その当時幼少時代
広がりが有力な観光地である防府天満宮にまで
を過ごした団塊世代やポスト団塊世代も含め、
達し、ひいては駅北部の新たな都市開発の契機
「高度成長期の昭和」
を懐かしむ人は非常に多い
はずです。
商店街にこのような施設ができれば、
となってくるかもしれません。
(宗近 孝憲)
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