学会抄録 - 日本皮膚科学会雑誌 検索データベース

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昭和39年7月20日
393
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学会抄録
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東京地方会第416回例会
座長 小嶋理一教授(東医大)
(昭和39年3月21日,於朝日生命会議室,新宿)
一般演説
らびに組織学的所見から天庖癒とジこi一リング庖疹状皮
Naevoxanthcendothelioma 浜田芳郎(沼津市立),
膚炎(D.h.Dに)の中間に位する1独立疾患として提唱
松岡 孝(口火)
されたもので,わが国においても仁木(昭31)の発表以.
追 加
来,これに賛同するものが少なくない.われわれは69才
北村精一(国立静岡) 3才,男児,初診:38年10月
女子にみられた臨床ならびに組織学的に本症と考えられ,
30日.経過:生後4ヵ月の頃後頭部に黄色調の腫瘍の発
る1例を経験し,それがDexamethasone静注によって
生を気づ乱満1才頃より全身性に播種状に同様腫瘍の
軽快するとともに,躯幹所見は円形ならびに連圏状の辺l
多発を認める.即ち手掌,足誂,肘頭及び膝蓋部を除く
縁隆起した紅斑と群生する小水庖からなるD.h.D.に一・
殆ど全身に播種状に黄色調(新しいもの)より紫褐色調
致する所見に変ってきたLever自身1953年に発表し
(古いもの)の半米粒大より小豆大の無数の皮膚面より
た論文めなかで,本症には臨床的にDuhringの原著に,
やや隆起,表面扁平の腫瘍を認める.硬度は正常皮膚よ
みられる所見と相異する点が見出されるが,
りやや硬い程度,浸潤なく又融合傾向なし.両上眼瞼に
の鑑別に困難な問題かおる.それは組織学的に同一所見
著明.又この経過中眉毛部に発生せるものは自然に消失
を示し,しかも軽快していく前にD.h.D.の臨床所見を
したという.自覚症状なし.家族歴:両親は遠縁に当り
D.h.D.と/
呈することがあるといっているyそのため,本症をD.h。
血族結婚ではない.同胞1名生後3ヵ月,該疾患なし.
D.の水庖型とみる考え方を否定することはできない.
検査:総コレステロール 144mg畑,エステル型コレス
そのため,両者を同一視するか否かの問題は,ダD.h.D.
テロール 40mg/dl.
にっいての個々の考え方による点が大きいとしている.
討 論
さらに10年後の1963年Leverは本症の討論において,
北村精一:なぜnaevo-という言葉を使うめか.
今日においても両者の間に明確な一線をひくことがでぎ
野波英一郎(都立駒込):本症は出生直後海ら始ま
るか否かにっいてはなお意見の一致をみないとしてい
り,5才頃までに消退すること吐,疾患の経過がstraw-
る.要するに,今日においてはPemphigoidの概念は,
berry
それを天庖唐から区別した点に大きな意義が認められる,
mark
碕型,殊にCaf6
と類似している.更にしばしば他の臓器の
au
lait
を伴うことなどから臨床的に
が, D.h.D.との鑑別は,今日の臨床的,あるいは組織万
母斑性を考えたく,又組織学的に本症初期には血管内皮
学的所兄から決定的なことをひき出すことは困難で,
細胞の増殖,次いで血管周囲性の組織球増殖が著明とな
それは原因的な鑑別が明らかにされたときに解決される,
り,それが脂肪を含有する泡沫細胞として完成するが,
ものといえよう.
更にすすむとこれが線蔀化して消失していく.これらの
討 論
所見からNaevoxanthoendotheliomaの診断名をとりた
山碕 順(群大):ジューリング庖疹状皮膚炎の水庖
χ,≒ .●
型又は老大型と全く同じものと思う.要するに症状をよ
類天庖康
安田利顕,宮本正光,吉m公乃利(関東逓
信)
Pemphigoid bullosaはLeverによって臨床,経過な
く理解しておれば,両者のどちらの病名で呼んで屯よ加
ろう.
野口義圀(横市大):Dr.
Carson (横須賀米国海軍病
S94
日本皮膚科学会雑誌 第74巷 第7号
院皮膚科)はこのような例を米国ではSenile
disease乃至はbuUous
Duhring's
症例I=患者は56才,女性,生下時左側前頭部に脱毛
disease of the aged といって
斑かおり,40才頃より次第に疵贅状に隆起し始め,掻破
恥り,安司先生の御意見に賛成している.
により出血,’びらんし,痴皮形成を繰返していた.肉眼
隆起性皮膚線維肉腫の1例 増田栄司,姉小路公久
的に3種類の腫瘤を区別できた.組織学的には定型的な
(同愛記念)
乳嘴状,絨毛様構造を呈し,問質に強度のプラスマ細胞
27才,男子.右蝋径皺腰に約半年前より小結節発生,
浸潤を認め,アポクリンMetaplasieを伴う本症と,皮
その後徐々に増大してきた.腫瘤はクルミ大に突出,硬
脂腺上皮腫及び基底細胞上皮腫の合併例であった.症例
く,表面の一部は塵爛,出血傾向を認めるが潰瘍はな
Ⅱ:患者は15才,女性.出生時右耳上部より頬部に至る
し.一般状態は正常,胸部レ線像に腫瘍の転移なし,腫
線状腫瘤があったが,掻破により頬部の腫瘤は弧立して
瘍は広範囲に周囲リンパ節を含めて摘出した.摘出標本
大きくなり,出血性で,痴皮を形成していた.組織学的
の肉眼的所見:腫瘍の縦断面はほぽ円形,境界は鮮明で
に本症及び線状腫瘤は詫状母斑であった.この症例では
一見貝柱を思わせる腱様光沢を有す.顕微鏡的所見:真
表面乳嘴状部分とアポクリン腺との連絡が明らかに認め
皮表層から皮下組織にわたる比較的鋭界な線維腫でエオ
られた.以上の2症例と,現在までの本邦報告例12例に
ジンに淡赤染する紡錐形細胞が束状を呈し,種々の方向
つき若干の考察を試みた.
にうねりのある流れを示し,細胞核は密でその尖端は鋭
追 加
尖化し,その中央に核分裂像を認める.膠原線維は細胞
小林健正(干大):第410回例会でスライド供覧せる
の密な所では弱々しく細いが,それに連なる所では太く
17才男子例について若干の組織化学的検索を行ない次の
発達している.嗜銀線維は細胞の流れと平行して豊富に
如き結果を得た.1)グリコーゲンは若干の分泌細胞の
発達している.所属リンパ節には組織学的に腫瘍像は認
辺縁部にごくわずかに,そして嚢腔内細胞残屑に少しく
められない.
詰められた.2)フォスフォリラーゼはそれにもかかわ
Subcarneal Pustular Dermatosis
(Sneddon・
‘Wilkinson)山碕 順,松永信弥(群大)
らず分泌細胞と細胞残屑の両者に陽性であった.3)酸
フォスファターゼは分泌細胞の外縁,又はこれに附着す
72才,老女.約7ヵ月前発病.主として胸,背,腹
る細胞残屑を級どる形に証明された.4)アルカリフ示
部,脹高,蝋蹊部,四肢屈側等にほぼ対側性に碗豆大ま
スフアターゼは若干の分泌細胞及び細胞残屑に強く現わ
で水庖,膿庖が環状,連圏状乃至蛇行状に配列または融
れた.5)コハク酸脱水素酵素は殺気状態で証明できな
合し,一部孤立する.紅輦の明らかなものと然らざるも
かった.6)ズダソ黒Bによる脂肪物質は筋上皮基底部
のおり.庖内容はすべて無菌.水庖発生までにかなりの
と細胞残屑に点状に認められた.
掠みあり.皮疹はそれぞれ約1週間後色素沈着を残して
胃癌を伴ったボーエン氏病 中西淳朗(済生会中央),
治る.粘膜疹なし.全身状態侵されず,諸検査では沃度
前田昭二(同外科),河村潤之輔(同内科)
加里貼附試験陽性以外殆ど異常所見なし.3回の組織学
内臓悪性腫瘍を伴ったボーエソ氏病は近来注目されて
的検査の結果はすべて同一で,中性多核白血球を充満す
いる4バ¥),東大皮膚科の子宮頚癌を合併した1例を数
る表皮内角層下膿庖を形成する.しかしacantholysis
えるのみである.われわれの症例は,68才の男子.吐血
なく,庖底の表皮にexocytosis,
にて入院した.既往には梅毒かおり30年前に駆梅療法を
spongiosis,部分的
liquefaction degenerationを,また真皮上層に浮腫,血
受けたことがある.以前より下腹部の黒子様皮疹に気づ
管拡張,血管周囲細胞浸潤(好中球,淋巴球,僅少の好
いていたが,最近10円銅貨大に増大し,疵状の黒色斑と
酸球)を認む.ペータタサソソは症状を抑制するが,目
なってきた.胃のレ線検査で潰瘍を,胃カノラでは悪性
下スルフアjトキシピリダジソ1日0.5g内服中(16日
化像が指摘され,手術により潰瘍癌が疑われたが,病理
間)で同様新生を見ない.
組織学的には癌病巣は筋層の下部にまで侵入し,潰瘍癌
討 論
とは判定不能であった.皮疹は定型的ボーエソ氏病で,
松岡 孝(口火):6∼7才頃に発疹出現し,n才頃
組織学的には,種々の異型が特徴的で,単独角化細胞,
に至るも皮疹が消退しないが,他に例があるか.又治療
clumping
cell等を有鯨層に認めるも,基底層は正常で,
i
腺嚢胞性腺腫様 母斑の2例 中村絹代,
jラこソは表皮,真皮に一様に増量していた.以上,文
)
ソ氏病を報告した.
献上本邦第2例と考えられる悪性腫瘍を合併せるボーエ
395
昭和39年7月20日
-−〃`・’
A7で・us
Leiomy・matcsusの?
池E刊重雄,水谷
Naevus
leiomyomatosus
を呈したものは未だ記載がな
い.そこでわれわれはNaevus
症例I
leiomyomatosus
とは「比
較的良く分化した立毛筋の束状増殖を示すもの一時に皮
:19才,女子.約3年来,左頬に栂指頭大,表
面淡褐色,弾性軟の腫瘍あり,自発痛,\圧痛なし.診断
膚附属器のnevoid
不明のまま生検したところ,立毛筋の存在する部位にほ
と考えたらよいのではないかと思っている.
ぼ一致して比較的良く分化した平滑筋束(普通の皮膚平
学童の皮膚疾患に関する統計的観察 岩重 毅,秋田
滑筋腫のそれより,より正常の立毛筋に近い)の増殖が
昭(昭医大),阿部信雄(阿部医院)
みりれるが,毛嚢,脂腺,汗腺に異常はみられない.本
われわれは昭和38年4月の定期身体検査を機会に杉並
症例はstout
区内の小学校3校2,308名の皮膚疾患の調査を行なった
(1937)のnevoid
leiomyomaに一見類
似するが,とれは普通の典型的なsolitary
cutaneous
disturbance を伴うことがあるー」
ので,その結果と過去十数年間に.おける他府県との年度
別比較を併せて報告する.その成績は下表り如し.
leiomyomaに脂腺の軽度の増殖を伴ったもので,症例I
とは明らかに異なる.症例II:3才の女子.生来背部か
線状萎縮症並びに副腎皮質ホルモン局注による皮膚変
ら腰部の正中線沿いにやや濃い生毛が逆三角形状に認め
化‘i)組織学的比較研究 ;4じ
られ,左腰部には,太く長く真黒な硬毛が約4×5Cm位
詳細は原著に譲る(日皮会誌,第74巻,第67号).
の局面内に限局して群生.視診乃至触診上健常部皮醍と
ヒスタミン癈雄闇値測定について 木下正子(東大)
の差異はみられず,穿刺しても発赤乃至膨隆したり・,硬
Schelly以来純粋な起椋物質として知られている燐酸
結を生じたりはせず,自発痛及び圧痛もなく,
localized
ヒスタミソ液を用い更にCormiaらの実験にならって癈
hypertrichosis以外の診断は考えられなかった.組織で
椋闘値を測定,癈禅闘値の生理的乃至病的因子の影響,
は,立毛筋に類似した,比較的良く分化した滑平筋束
更に薬剤に対する態度?を追試した.即ち実験的に癈椋は
が,真皮網状層の上y/3から皮下脂肪組織にわたり増殖し,
新鮮燐酸ヒスタミソ液の皮内注射により定量的変化を惹
毛嚢の肥大,延長を認めた.脂腺及び汗腺はほぼ正常.
起させ得た.これにより他覚的反応は健常部では疾患F
1941年Radermecker及びVan
よる特異性は殆ど見られなかった.癈椋は被検者の64.3
躯幹のmultiple
Bogaertは,32才男子の
cutaneous leiomyoma
の結節周辺め一
%に発生させ得た.特に60才以下の例では76.2%に生じ
見正常皮膚様に見えるが,触診上ボール紙様硬度を有
た.老人特に60才以上では急に低下する傾向を認めた.
する局面内に,これらと同様な所見を認め,これを
癈椋感覚は性質上ピリピリする感,チク手クする感所謂
Naevus
leiomyomatosus
systematicusと命名,
1951年
Sonckは26才男子の躯幹及び下肢に同様な所見を,
1959
癈椋に分けられるように思われる.癈標闘値は種々変化
するがほぼ10-4∼10-6の値を示し,疾患による特異性は
年, Nickelは生後3週の乳児の右側胸部の色素性募麻疹
認められないように思われるが,一般に癈痕性疾患病変
様部位に同様の所見を認めている力りわれわれの症例l
部では癈椋闘値の低下が認められた.更に身体各部によ
の如く,臨床的にlocalised
り癈椋闘値は差を示し,身体中央部の方が,末端部より
hypertrichosis. 組織学的に
学童の皮膚疾患に関する統計的観察
要加療及び注目すべき疾患と他府県との年度別比較
396
日本皮膚科学会雑誌 第74巻 第7号
t→八∼。
。y
低い傾向を示す.抗ヒ剤の使用により,ヒスタミンによ
め,その水庖は落屑を形成し,色素沈着をのこして軽快
って生する血管反応の低下,及び同癈標同値の上昇が多
した.このよ5な発疹が繰返して発生し,ジューリング
くの場合認められた.癈標闘値上昇の著しい場合には当
庖疹状皮膚炎と診断された.38年にいたり発疹の軽快を
該抗ヒ剤が有効に.作用するかに思われる.
みることはなく,39年1月本皮膚科に来院,来院時は顔
太田母斑のNatura!
面はステロイドによる満月様顔貌を思わせる紅斑をみと
History 肥田野 信,加島英
雄(東京警察,東大)
め,前胸部,背部の脂漏部位に指頭大より栂指頭大の疵
約200例にっい七調査した.1)初診年令は18∼25才
疲,粛爛局面をみとめ,その部位より採取した組織標本
が大部分.2)ヽ発生年令は半数が生後1年以内,半数が
では真皮血管周囲性の細胞浸潤と表皮内水庖形成をみと
10才台である.3)谷野の分類によるla型は年令によ
め,水庖内容には表皮系細胞と思われる大型の細胞をな
る発生頻度ほぼ一定,lb型は15才前後に多く発生,Ⅲ
どめた.入院後ステロイド中止後に,両大腿に癈痔激し
型は1才までに.大部分発生する.4)色別では青色系は
い紅斑生じ,その上に栂指頭大の水庖か多発した.モo
1才までに出るのが多く,褐色系は1才までにも見られ
時期に採取した組織標本では表皮下水庖形成をみとめ
るが,10才以後の発生が多い.いずれにせよ2∼9才で
た.その後下腿にジューリング庖疹状皮膚炎を思わせる‘
の発生は絶無に返い.5)小児の太田母斑は一般にくす
ような環状紅斑の上に.小水庖の形成をみとめ,再度組
んだ灰青∼灰紫色,びまん性色素斑を呈し,点状の要素
織標本を採取する.水庖は表皮内に形成され,水庖内容
が少ない.組織学的に真皮全層に色素細胞の散在するも
には表皮系細胞の存在をみとめ,表皮頷粒層にもアカン
のが多い.基底層の色素は不定.
トリーゼを思わせる所見をみとめた.臨床検査所見:赤
6)
35才以後老令者の
太田母斑は臨床的,組織学的に特にレ若年者のそれと大差
血球382×10\
を認めず,老人に本症をみることの少ないのは受診する
A/G
ことのないためだろうかと推測している.
お長い経過中,粘膜疹は全くみとめなかるた.以上の所.
皮膚におけるCytcchrome
Oxidase
の組織化学
IV. Burstone法 中嶋 弘(横市大)
皮膚におけるいわゆるrespiratory
環としてcytochrome
(Amine
Hb 74%,白血球7500,総蛋白6.4,
1.3,こコノレスキー陽性,ツアンクテスト陽性.だ
見より多彩な病像を呈するPempligus
vulgarisの1症
と考えた.
chain
研究の一
oxidase活性をBurstone法
;N-phenyl p-phenylene diamine, coupler; 8 ・
討 論 レ
小堀辰治(東京逓信):臨床的にSenear-Usherに似
ているが,
Histologischにsuprabasale
acantolytische
amino l・2・3,4
t etrahydroquinoline, chilating metal;
Blase,あるときは表皮下Blase,あるときはGranular
cobalt acetate)により組織化学的に研究した.ヽマウス
layerのBlaseが認められ,このような症例を何と診
皮膚においては一般にbrown
fat, 脂腺,皮膚筋層,毛嚢
断すべきかをお教え願いたい.
下部,表皮の順比活性を認めたが,上皮においてはhair
石原 勝(東京逓信):私自身は脂漏性天庖癒’と考え
cycleとかなりの関係があるように思われた.即ち活動
ている.本症は脂漏部位その他に紅斑,落屑局面及びこ
期により強く,静止期に弱い反応を示した.しかし脂腺
れらの上に,時には健常皮膚面上にも水庖形成をみる.
ではあまりはっきりした関係を認め得なかった.人皮膚
天庖癒の1つの良性の形のもの(ただし,しばしば落葉
ノにおいてはエックリソ腺,脂腺,アポタリソ腺は表皮下
状天庖癒時には尋常性天庖座に移行して死亡)と一般に
層並びに毛嚢下部に比して酵素活性がまさっているよう
見なされており,その水庖の組織は時に尋常性天庖癒と
だった.これら酵素活性を細胞レ・ベルで観察すると暗青
区別がっかぬこともあるといおれている.従ってこの,症‘
色・微小頚粒としてcytoplasmに限局しでいた.なお脂
例は臨床,組織所見いずれも脂漏性禾庖癒でよい,と恩
肪は殆ど酵素活性を呈しなかった.
患者供覧
十Pemphigus
Yulgaris (?)戸田 浄(東京逓信)
75才,男ニ既往歴,家族歴に.特記・することなし.
現症:昭和3!年顔面に・落屑性紅斑生ず.昭和32年四肢に
う.
戸田 浄:本症例をSenear-Usherと考えることはで
きないか,お教示願いたい.
古谷達孝(東大分院):Senear-Usherは臨床的概念
多形浸出性紅斑様発疹生ず.昭和34年より,顔面,四
である.即ち顔面に紅斑性狼癒様皮疹,躯幹特に脂漏性
肢,躯幹に癈禅強い紅斑生じ,その上に水庖形成を多と
部位に脂漏性湿疹,尋常性乾癖或いは伝染性膿痴疹様皮
昭和39年7月20日
397
疹を生ずるもので,天庖疸の1型でしかも天庖癒群中で
正常・EMG(M.
は比較的予後良好とされているものである.膿虹疹様皮
Carotis-angiographie正常.眼底K.W.
疹が発生すると記載されているので多少水庖性皮疹が発
異常(一).血圧130∼80.ワ氏反応(-).
orbicularis oculi,M. masseter)正常,
1度.局所知覚
生してもよいと思おれる.本症の大部分は放置する総合
討 論
落葉状天庖療に移行するが,尋常性天庖癒に移行したと
官野 英利(東京開業):限局性輦皮症と診断する.
の報告がある.木供覧例はそのAnamnese,現在の所見
顔面の中央部にあるのは帯状蒙皮症の形態で,左頬より
よりSenear-Usherとしてよいと思う.
下顎にかけてあるのはMorpheaと見儲される.
診断例,(単純性血管腫?) 石橋 明(日大)
山碕 順(慈大):Morpheaと思う.
16才,女子.約4年前に胸部に初発して,次第に拡
同胞(妹,弟)に発生せる汎発性輦皮症 野波英一郎
大,現在胸部,上背,両上肢,両手掌右側下肢等に,淡
(都立駒込)
紅乃至淡紅褐色で皮膚と同高の紅斑が広く存在し,その
姉は31才,家婦で初診1962年5月18日,現病歴は1958
境界は明確で不規則地図状を呈し,硝子圧により消槌す
年頃から手足にレーノー症状あり,
る.組織的に著明な変化なく,わずかに乳頭下層の小血
手指に潰瘍形成,
管拡張と血管中心性の小円形細胞浸潤,表皮基底層の色
下腿,‘次いで顔面,頚,上胸部の皮膚硬化,両肘膝関節
素増殖とが,軽度に認められるに過ぎない.組織所見に
痛,恢面様顔貌を呈するに至った.組織学的所見は本症
明らかなものはないが,若年者では血管拡張の見られな
に典型的,治療としてプレドこン内服,
いことがあるという成書の記載を考慮に入れると,単純
タミソE,サークレチソ,べレルガル内服の併用により
性血管腫が最も考えられる.
軽快,その間1963年6月第2子分娩後に一時レーノー症
診断例 佐藤和三(巨大)
状の再発を見たが,ごタミyEとベレ4がzレ内服のみで
60才の婦人.約2年半前から何ら誘因と思われるもの
症状が軽快している.弟は25才,商業に従事.
なく,鼻背,眉間に.発赤を生じ,それより1年後に頚部,左
月,両下腿の浮腫性腫脹と全身の関節痛,
1961年第1子分娩後
1962年1月頃から両手,前鱒,両足,
ATP筋注,ビ
1959年3
1960年からレ
顎下,左頬部に,続いて前額正中にも現われてきた.自覚
ーノー症状を訴え,
.症はなかった.既往歴:54才の時,下痢のため1ヵ月加
背部の皮膚硬化,色素沈著並びに色素脱失斑等に気づい
療.55才の時.慢性喉頭炎にて1ヵ年治療.家族歴:同胞
1962年5月頃から右前腕,胸部,上
た.総蛋白量8.4g/dl,
A/G
0. 7,血沈31-58-90.
5人,うち1人は精神分裂病,他は健康.子供4人全部健
組織学的所見は本症に典型的,治療としてデキサタサフ
良.現症:前額正中から鼻背,鼻尖にいたる毛細管拡張か
ソ,ATP筋注,ビタミソE,ビタミソB1内服の併用
ら成る線状紅斑が認められ,前額では軽度陥凹し,色素沈
により,症状は次第に寛解しつつある.なお両親は血族
着と一部色素減少が混ずる.左下眼瞼の外側半分と左頬
結婚(従兄妹),母は凍瘍に.かかりやすく,筋肉リウマ
骨突起部では毛細管拡張が集銕する.左こめかみの部と
チがある.輦皮症の宗族内発生氾ついてはMiillerほか
左耳前部では色素減少斑を混ずる紅褐色,不整形の斑が
二,三の報告があり,本邦では三浦,李などの記載はあ
£`り,同部は指でっまむに粗大な皺を作り得ず,周囲健康
るが,これは家族歴に同症らしきものおりと記載されて
皮膚に比較しやや抵抗を感ずる.順部,瞑下部,前頚の正
いるに過ぎない.最近エリテマトーデスにおいて家族内
中線を境に左側に,それより左下顎に沿って糸屑様或い
発生例,同一家系内にロイ’マチスムスを有するもののあ
は点状の毛細管拡張が多発し,その中に密に集合した毛
ること,更に家族内にdysproteinemiaの証明される
細管拡張と一部色素沈着から成る紅褐色の不整形斑が散
ことなどが注目されているが,かかる見地から常皮症の
在する.組織像=表皮は扁平萎縮し,基底層のjラユソ
家族内発生例として興味があるので供覧した.
は増強する.真皮では特に表層にbasophilic
Senear・Usher症候群 山畑阿良太(日医大)
degenera-
tionと高度のelastosisを証し,ほぼ全層にわたり軽度な
35才,男子.家族歴は母が子宮筋腫で死亡,弟が肺結
がら禰漫性の小円形細胞浸潤が認められるが,
sclerosis
核ス.既往歴に特別なことはない.現病歴は昨年4月中頃
の所見はない.検査事項:CCF
26単位,
より,何らの原因なく,胸部に癈掠ある水庖を生じ,被
BSP 10%45分,4イレングラハト8.
(十),
ZTT
EKG並びにEEG
膜は容易に被れ,湿潤面を呈し,・その後に痴皮及び色素
日本皮膚科学会雑誌 第7儲
398
沈着を残し,背部にも同様発疹を生じた.初診時所見で
つた).現在ベータメサソソ投与は中止したため,躯幹に
は,碗豆大から鶏卵大の境界明瞭な紅斑及び結痴性局
も一部びらん面を認めるが,中止時には色素沈着を残す
面,色素沈着を認めた.顔面には初め110小紅斑があ
のみといってよい程度に軽決していた.
ったのみで,さほど気にかけていなかった.比較的新し
Parakeratosis
Variegata 川田陽弘,石原文之(東
いと思われる水庖の組織所見では Parakeratoseかお
大分院) づ……,T
り,表皮は全般的にややAcanthoseがみられ,又表皮
38才,男.昭和38年3月下旬頚部の色素脱失を他人に
内の上層部に水庖形成Acantholyse
指摘されて始めて気づく.その際既に躯幹に同様の色素
もみられる.真皮
上層は血管周囲性に,淋巴球,プラスマ球の浸潤がみら
脱失が存在していた.昭和38年4月1日初診: 初診時
れ,好酸球もわずかながら認められた.以上より落葉状
背,腰,胸,腹都,上下肢とほぼ全身に小豆大位の色素
天庖癒としてベータタサソンによる治療を行ない,2ヵ
脱失斑多発,融合していた.その他に紅色小丘疹,大豆
月間に約40mg投与し,色素沈着を残し略治の状態になっ
大位までの落屑面がまじる.滴状類乾癖の診断のもとに
たが,顔面の発疹は治療に反応せず拡大し,数を増して
ビタミソA,Dの内服,11月からタソデリール1
きた.顔面の組織像では,表皮の Papillomatoseが著
呵内服現在に至る.現症:頚,肩,側胸,側腹,背,
0 300
明で,この部分は肥厚し,穎粒細胞は膨化,剥脱がみら
腰,暫部及び上,下肢屈伸両面にヒョウ紋様の色素説失
れ,又真皮も中等度の細胞浸潤がみられ全般的には落葉
斑が広汎に存在,そのものの多くは多少の潮紅,また所
状天庖癒に近い像を呈していた.最近では本症を落葉状
により批糠性鱗屑が附着.色素説失の周辺にはむしろ色
天庖癒の1異型とする考え方が多いようで,顔面の皮疹
素増強が認められる.上記の皮疹は融合して粗大な網を
と躯幹の皮疹に明らかな差はなく,顔面では,小水庖形
形成,その間に島状に正常皮膚が残る.瞥部,下肢では他
成一破潰一脂漏性痴皮一脱落の経過をとるという意見も
部に比し潮紅が強く,かっ所々に径2乃至3nの紅色小
ある.この症例では,組織学的には両者似ている点もある
丘疹が散在している.この小丘疹は経過と共に漸次表面
が,ベータタサソソ投与により躯幹の皮疹は略治の状態
に落屑を呈するようなる.自覚症状欠除.諸検査:血
になったが,顔面では新たに脂漏性皮疹の増悪を認めた.
清ワ氏反応陰性.血液像 血色素量85%,赤血球数402
討 論
万,白血球数7,100
小堀辰治(東京逓信):定型的落葉状天庖疸というの
好酸球3,単球2,リンパ球42%.血沈1時間値平均
はどういう意味であるか.
15.血清総蛋白量7.0g/dI,
宗像 醇(日医大):典型的な落葉状天庖疸といった
色小丘疹の部は表皮殆ど不全角化を示さず,鯨細胞層お
のは組織学的に小水庖が表皮内の上層部にあるとい5こ
よび一部基底層に空隙形成,細胞の空胞化.真皮乳頭
とで申し上げた.
層,同下層更にそれよりでや深部に及ぶ血管周囲性リソ
簸野 倫(慶大)z尋常性天庖疸の副腎皮膚ホルモソ
s球様小円形細胞浸潤.これに細網組織球性細胞がまじ
療法の場合に,今示されたような顔面の脂漏性変化を示
る.浸潤部は浮腫著明.表皮層下半に浸潤細胞が遊走し
すことがある.強いてSenear-Usher症候群としないで
ている.色素脱失兼軽度の紅斑の部では上記の変化と類
尋常性天庖療としてよいのでないか.
似している.組織学的に菌状息肉症と診断出来る変化は
宗像 醇:Senear-Usherとした理由は顔面皮疹と躯
認められない.
幹の皮疹とは組織学的には似ており,落葉状天庖癒とし
keratosis variegataと parapsoriasis lichenoides とを
ても良いと思うが,ベータメサソソによる治療で前者は
別症視するCivatte以来のフランス学派の考えに組する
,うち好中球梓状核3,分葉核50,
A/G比L3.組織所見:紅
parakeratosis variegata (演者はpara-
増悪,後者は良好となり,両皮疹に対し二元説もあるの
ものである)が独立症であるか否かは論議のあるとこ
で,表題の如き診断名にした.
ろで,本症例は現在,菌状息肉症あるいはその他の所謂
戸田 浄(東京逓信):ステロイドの投与で皮疹が完
lymphomaとする所見を示さず,かっその皮疹は従来
全に消失したか.痴皮の消失はみないといわれるがどう
porakeratosis variegata として記載されているものに
か.
よく合致している.そして本症例に認められた小丘疹は
山畑し阿良太:ベータメサソソ投与前には顔面の皮疹は
滴状類乾癖のそれに極めてよく似ている.即ちparake-
わずかな紅斑のみあった(最初は大して気にしていなか
ratosis variegataはparapsoriasis
guttata の或る時期
昭和39年7月20日
399
の皮疹あるいは融合型乃至網状型とみなす見解に有利な
性で一種の小ジワが認められる.左上腕内側,両乳房下
材料を提供しているようである.
方.腹部,側腹部,背1/3∼腰∼愕部に,局面状あるい
討 論
は境界の不明確な上記と同様の紅斑,網状色素沈着,落
小嶋理−(東医大): parakeratosis
variegata と
屑,萎縮がまじりあっている.腰中央部∼尾骨部に魚鱗
parakeratosis lichenoides とは根本的に別のものなの
様皮疹.左大腿伸側全面にほぼびまん性の紅斑,表面は
か.
萎縮性,落屑,周辺部では索状あるいは線状の紅斑を呈
川田陽弘:parakeratosis
variegata にみられる紅色
小丘疹の経過を観察すると,小丘疹からerythematosquamQsなHeがeに移行して行くことが分る.
したり,丘疹がまじる.全体として浸潤をふれる.左膝
咽部を中ごに約手掌倍大の,左大腿と同様の皮疹を認め
para-
る. 右大腿屈伸両面,両側下腿の屈側,一部伸側に境
psoriasis lichenoidesでは。Brocqは紅色小丘疹(lichen
界のあまり明瞭でない,小指頭大∼栂指頭大∼小鶏卵大
planusの丘疹に似ているといわれる)が原発疹である
までの色素脱失斑が多発,融合の傾向あり,また多少の
と考えたが, Civatteは必ずしもそうとは限らないとい
潮紅,枇糠性落屑を認める.自覚症状欠除.血清ワ氏反
っている,初期のある時期だけをみる時に,両症にみら
応陰性.血液像 血色素量98%,赤血球数466万,白血
れる小丘疹が区別できるかどうか,必ずしも容易でない
球数4,800,うち好中球68,好酸球2,単球0.5, リソ
と思うが,経過をみれば,
゛球28.5%.血沈値1時間平均9.5.血清蛋白量7.6
parakeratosisでは粗大な網
状の落屑を伴う紅斑を生じ(Unnaはmarmoriertと表
g/dl, A/G比1.4.
現している)てくるがparapsoriasis
酵素235単位.尿蛋白,糖,ウロビリノーゲンいずれも
lichenoides(こ
G0T15,
GPT
n単位,乳酸脱水素
の際には径2√3u程度の細かい網状の落屑を伴う紅斑
陰・邑組織所見:軽度の潮紅を示す色素説失斑部では,
を生じる)では網状の色素沈着と萎縮を呈してくる.
1乃至2ヵ所わずかの不全角化,基底層および聯細胞層
parakeratosis variegataはかかる所見は呈さない.
の下半の空隙形成,細胞の空胞化,真皮乳頭層,同下
Par^psoriasis
層における血管周囲を主としたリンパ球様小円形細胞浸
en Plaques
et Lichenoides?, My。
cosis Fungoides? 川田陽弘,石原文之(東大分院)
潤,更にこれに細網組織球細胞の増殖がみられたが,明
30才,男.小学生の頃左大腿仲側かいわゆる鮫肌様に
らかな異型性を欠く.その他少数の担色細胞が認められ
なる.18才の頃需部,腰部に軽度の癈禅を伴う皮疹を生
た.色素沈着を伴う陳旧な紅斑では,表皮突起消失し,
じ,次いで側胸,肢商にも同様の皮疹が拡大した.昭和
真皮乳頭層,同下層に朋漫性,帯状の細胞浸潤.浸潤せ
32年(24才)2月頃から左大腿次いで右大腿,下腿に栂
る細胞に異型性が認められる.また多数の担色細胞が認
指頭大までの自覚症を欠く紅斑が発生してきた.同年5
められる.組織学的に菌状息肉症の疑いが大きい.
月東大分院初診.同6月第360回東京地方会に「腫瘍前
菌状息肉症? 川m陽弘(東大)
期の菌状息両症?」として供覧されたが,局面性類乾癖
20才√女.初発した時期は本人及び両親にもはっきり
とする意見もあった(日皮会誌,
した記憶はないが,小学校入学時,即ち6才頃に既に
67#,
799頁,昭32).
当時側胸部,腹部,腰∼脊部,両上腕内側,肩評部,膝
右股関節部附近に約鶏卵大の,軽度の枇糠性鱗屑を伴
謳部に.発赤,苔癖化,肥厚(湿疹様変化)と,両大腿部
う,白っぽく見える局面1コ存在するのを気づいてい
に栂指頭大までの境界鮮明な,わずかに隆起した局面状
る.12∼3才頃にはその局面が直径12∼13cmに拡大した.
紅斑が散在していた.また右肩脛部から肢寓後面にかけ
13∼14才頃両側大腿伸側に10円貨大の同性質の局面状皮
一部萎縮が詔められた.以後アルソソソ(数回),−ファ
疹が発生,次いで4年前より両側上腕屈側にも同様の皮
ルソール注,ビタミソD2注,コソドロソ注,`マフ,チゲ
疹が発生,徐々に拡大した.6年前に最初の右股関節部
ソ内服,レソヒソ,プレドエソ内服,ATP注等の種々
附近の皮疹に約1年間,3乃至4日置きにヨードチソキ
の治療をうけたが,プレドユソ内服中腸潮紅の軽快がみ
を塗布したことがあり,塗布時しみる感じあり,多少落
られた.昭和38年11月よりタソデリール1日300mg内服
屑が多くなったという.現症:①右股関節部附近の皮疹
中.現症:右肢商から上腕内側にかげ約手掌倍大の局面
(最初に発生した皮疹)一径約13cmのほぼ円形の局面で,
あり,境界は明瞭でない.その局面は紅斑と径2∼3∼
境界明瞭.局面内の後上方に径4Cmの比較的境界の明瞭
5皿位の黒褐色の網状の色素沈着よりなり,表面は萎縮
な,隆起した潮紅局面あり,表面多少小葉状鱗屑が附着
日本皮膚科学会雑誌 第74巷 第7号
400
する.浸潤をふれる.局面のその他の部分は褐色調を伴
息肉症の診断を下している.本症の診断は,臨床症状,
う淡紅色の潮紅を呈し,表面には多少の小ジワあり.中
経過から疑い,その際組織検査に.よってこれを裏付ける
心部は殆ど潮紅を欠き,淡黒褐色,細標状の色素沈着を
ようになる場合が多い.臨床症状で本症を考えず,組織
認める.表面はpseudoatrophisch.盧作その他の自覚
検査で本症の診断を下すというような場合はすくないと
症状を欠く.②右愕部に径3∼4
考える.②局面性類乾癩を菌状息肉症と別個に,独立し
cm,円形,隆起した,
浸潤せる紅斑11.③両側大腿伸側,左右対称的に,
た疾患とするかどうかは人により意見が分れている.私
径約10cmの短楕円形,境界明瞭な局面で,全体に不完
は局面性類乾疸なる疾患は菌状息肉症あるいはその他の
全色素脱失あり,表面軽度に批糠性落屑を認める.多
lymphomaにおける皮膚顕現とするのが妥当であると
少の潮紅を伴っている.④両側上腕内側に大腿部伸側と
最近考えるようになってきている.
同様の局面状皮疹あり.血液像 血色素量10.6g油,赤
野口義圀(横市大):類乾癖と菌状息肉症とでは臨床
血球数435×104,白血球数7,700,うち好中球梓状核
的意味に重要な差かおる.どのようにして premycotic
24,分葉核48,好酸球3,好塩基球2,単球8,リンパ球
ということができるかお教え頂きた4ヽと思5.またリン
15%.尿に異常なし.血沈値11.
パ球様細胞及びHistiocytic
CRP陰性.組織学所
cell とはどういうもりをい
見:①右股関節部附近の浸潤せる紅斑一部分的に不全角
うのか.
化を示す.赫細胞層肥厚及び表皮突起の延長顕著.真皮
乳頭層,同下層に血管周囲の細胞浸潤.細胞種類は小リ
川田陽弘:①通常の組織標本ではリンパ球とリンパ球
dl11
l
に似た粗網細胞即ちkleine lymphoide Retikulumzellen
ソパ球様円形細胞及び細網細胞よりなり,他に大リンパ
とを区別するのは困難なことが多い.従ってリンパ球様
球様円形細胞がまじる.少数のクロマトフォーレソ.細
小円形細胞と表現している.②組織球と厳密に同定する
胞の異型性は認められないが,表皮基底層及び一部諒細
には貪食能の有無をみなければならない(勿論貪食を示
胞層に真皮の浸潤細胞がかなり遊走し,
Pautrier mi-
さない組織球の存在も報告されているが).従って通常の
croabscessの所見をも呈する.菌状息肉症を疑わせる所
組織標本のみでこれが組織球で紅るというのは厳密にい
見である.②軽度の潮紅を呈せる不完全色素脱失兼批糠
えばむずかしいが,従来の組織標本上の特徴から判断し
性落屑を示す皮疹−一莉度な韓細胞層肥厚及び一部に.お
ているわけである.
いて表皮突起の消失を示す.真皮上層に比較的密々血管
永井隆吉(佼成):局面性類乾癖と臨床的な診断で,
周囲性細胞浸潤.浸潤細胞は①と類似している.クロー
組織学的にはいわゆるpremycoticな像のない例を経験
トフォーレソが多い.
したことかおるか.もしあれば,そういう例で菌状息菌
追 加
症等に発展した例かおるか,
菌状息肉症 北村精一(国立静岡)
川田陽弘:局面性類乾癖は将来菌状息肉症あるいはそ
60才,・男子.初診:39年1月18
H.経過:約10年前特
の他の所謂lymphomaの発生する可能性が多いものと
別の誘因もなく右手脊に紅斑を生じ特に自覚症状なきま
考えて経過をみるぺきと考える,
霞に放置せるところ両手脊,足脊にも拡大腫瘍状に腫大
扁平紅色苔癖 林 懇(東大)
する.最近は項部,耳介,前額部にも紅斑を生ずる.腫瘍
49才,女.約5年前,両下腿に小紅色斑を認め,その
は新しいものは鮮紅色を,古いものは暗紫赤色を呈する.
後顔面,前腕,頚部に拡大した.軽度の癈津を訴える.
この全経過を通じ癈標,疼痛等全然なく又湿潤或いは潰
現症:両下腿,顔面,右前腕,前頚部に扁豆大,円形又
瘍化傾向なし.又全身状態に何らの異常もない.検査:
は不規則多角形,わずかに隆起した紅斑,一部紫斑又は
ごく軽度の肝機能障碍を認める以外異常なし.知覚異常
粟粒大より米粒大までの紅色充実性丘疹が数個集族して
(一).治療:Cyclophosphamide
局面形成する.可視粘膜疹は認められない.組織所見z
(エソドキサソ)施行中,
討 論
中等度の角質増殖,表皮の肥厚を認めるが,不全角化は
小堀辰治(東京逓信):局面性類乾打と premykotiscli
ない.所々,表皮突起延長,基底細胞の変性,真皮上層
のExanthemの区別は臨床所見に重きをおくのか,組
織学的所見に重きをおくのか.又,両者の関係をど5考
えるか.
川田陽弘:①私は臨床所見と組織所見を合わせて菌状
から中層にかけて下縁に水平な帯状の細胞浸潤,主とし
て淋巴球より成る.一部出血巣を認める.
討 論
小堀辰治(東京逓信);東京医科歯科大学口腔外科伊
昭和39年7月20日
藤教授のお話しではLichen
401
planus の60%に粘膜疹ヽをみ
新生がやや認められる.
るとのことであるが,粘膜疹を認めたか。
診断例(Pyoderma
林 患:ロ腔粘膜には発疹は認められない。 。͡
/ 15才・女.尋常性痙癒゜前歴なし.初診より約8ヵ月
Faciale ?)‘竹内 達(干大)
j・ まえに両眼瞼から眉間にかけて丘疹と腫張を生じた.放
㎜ 壊疸性丘疹状結核疹 大城戸宗男(慶大) (/Tや・
36才,男子.約2ヵ月前より四肢に初まり瞥部に至る
`置したところ鼻背√鼻唇溝にかけてひろがり,やがて膿
多発性褐赤色丘疹あり.それらは膿庖乃至中心部族疸状
瘍をつくるに至った,某医にて結核の治療を受けたが好
丘疹となり,遂には小潰瘍乃至痴皮形成に至る.自覚症
転鮮ず.初診時,顔面の主として中心部に一部融合せる
は認めない.既往歴にて15年前頚部リンパ腺結核に罹患.
膿瘍多発し,部分的にケロイド様癈痕を認めた.レソト
諸検査にて,ツ反応強陽性,血沈中間値5.5,胸部レ線像
ゲソ照射,切開排膿,抗生物質投与等により膿瘍は改善
では右肺野に石灰化像あり.発疹部の組織所見は真皮の
されたが,ケロイド状の巌痕を認めるようになった.培
一部に壊死像があり,その周辺に慢性非特異性炎症像及
養にては双球菌を得た.・マソトー反応陽性.
び類上皮細胞の集銕による肉芽腫様変化が存在するも,
討 論
巨細胞は認められない.更にこの周辺には,血管周囲性
小堀辰治(東京逓信)卜:1)どのような細菌を培養で
の小円形細胞浸潤を散在性にみる.頭初の診断の下に・,
きたか.嫌気性培養でAcne
INAH内服1ヵ月後にして発疹の「新生は軽減している.
発見できなかったか. ‥
尋常性乾寥(副腎皮質ホルモン剤内服例)秋山まり子
竹内 達:細菌のくわしい検索はやっていない.臨床
(慶大) ニ
的にかかる’例をAcneの重症型とするのがよいかどうか
27才,男子.主訴は全身の小紅斑.家族歴,既往歴に特
をうかがいたいと思った.
記すべき事なし.現病歴及び現症:約5年前半身に汗疹
診断例(Urticaria
様発疹初発,漸次全身に皮疹拡大,他の二,三の病院を訪
・医大) ,
れ乾癖の診断で,昭和34年4月より36年7月まで時々プ
30才,男子.約6ヵ月前に右肘頭附近に半米粒大∼小
レドこソ総量20∼60iiig, 1週∼2週にわたり医師に投与
豆大,褐色斑∼褐色丘疹あるに気づ仏漸次増加,両上
されているが,何ら副作用を認めない.昭和36年8月よ
肢,躯幹全体に散発.既往歴,家族歴共に特記すべきこ
becillus がComedoから
Pigmentcs・?) 園田節也(東
りデカドロソ治療開始,以後3年半にわたり総量2800mg
となし.末梢血液 好酸球5%.その他検査事項特記す
内服.昭和36年10月,満月様顔貌を認め,37年2月多毛症
べきものなし.組織学的所見:表皮軽度肥厚,基底層に
及び線状萎縮症,同年秋紫斑,38年夏両足の浮腫,全身
ズラニソ増加レ真皮上層,乳頭層に血管周囲性リンパ球
倦怠感おり,39年1月口渇及び体重減少に気づく.本年
浸潤,肥詐細胞軽度増殖.
2月初診時は顔面潮紅,満月様顔貌,全身小紅斑表面に
スポロトリクム症儀保元彦(東医大)
ダ7才,男子.東京都世田谷区在住.昭和38年3月頃,
白色鱗屑附着,躯幹の線状萎縮症及び多毛症あり.検査
成績=血圧正常,糞便潜血反応陰性,尿糖1日250
g∼
に漸次増大,小指頭大となる.そめ間,2度程治癒状態‥
4109, プドウ糖経口負荷法著明上昇し,電解質著変な
く,尿中17K
S 48mg/day,
総170HCS
2.5mg/day,
中好酸球1%,心電図異常なく,胸部レ線写真,胃十二
指腸レ線検査正常,総・ロレステロール240ing/dl,肝機能
正常.組織学的所見:1)線状萎縮症の病変部は,表皮
左下眼瞼部に小豆大紅色の結節を生ず.中心潰瘍化と共
血
を示した.外傷の記憶はない.スポロトリキソ皮内反応陽∧
性,組織内に.遊離胞子を認む. Sporotrichum
schenckii
を培養す.現在,ヨードかリ内服中.
スライド供覧 コ
Acanthosis Nigrricans
中条知孝(社保横浜中央)
やや萎縮性で表皮突起消失し,真皮上層浮腫著明で膠原
63才,男.既往症:職業性難聴,家族歴:特記すべき
線維一部離開している所もIあり,血管拡浪も著明だが周
囲の小円形細胞浸潤ごく軽度であり,ワソギーソソ染色
及びワイゲルトの弾力線維染色著変なし.乾意発疹部
ことなし.現病眼:昭和38年8月初句,歩行時の息切ダ・
れ,眩彙感にて内科受診.貧血,持統的潜血,上腹部無
痛性索状腫瘤を指摘された.全身所々に色素沈着及び散卜
は,角雪増殖,不全角化,籾層肥厚,真皮上層に血管拡
在せる疵贅様の皮疹を認めて当科を受診す.なお30年前
張及び小円形細胞浸潤あり.治療及び経過:デカドロソ
より左前腕伸側に硬い局面の形成があり現在まで変化な
3mgより漸次減量中で,糖尿病食を用いており,発疹の
ぐ継続しているという.現症:頭部,項部,頚部,両肢
日本皮膚科学会雑誌 第74巻 第7号
402
寓,臍囲,乳頭,乳彙,左前腕伸側,手掌,足礁に皮膚
約4∼5ヵ月,顔面鼻を中心として両側頬部に紅斑出現
肥厚,乳頭状増殖,著明な角質増殖,灰褐色乃至黒褐色
し,躯幹の水庖形成と共に特異な病変を形成するに至っ
の色素沈着を示す定型的なAcantbosis
た.躯幹の水庖は終始小指頭大を出なかったが病勢の盛
nigricans の皮
膚変化を薩める.頭部の一部及び肢寓には毛髪の脱落を
んな時はその剥離庖膜によって落葉状の外観を呈したこ
認め,口腔粘膜,口唇に変化なく,舌背に軽度の舌乳頭
ともあったが,顔面では水庖形成は見られず,軽い浸潤
増生を見る.頚部,肢寓,前腕,躯幹に沈贅様の丘疹を
を触れる褐紅色0斑はその上に脂漏性の鱗屑を附着させ
多数認める.組織:肢寓の組織所見は,表皮は乳嘴状で
一見紅斑性狼癒様の配置を示すが,詳細に見るとむしろ
軽度の角質増殖があり一部にはAcanthoseを認め,基
脂漏性皮膚炎の性質を示すものであった.なお顔面の皮
底層にjラニソ増生があり,真皮には著変はない.千掌
疹は治療に反応し難い.
では,角質増殖とAcanthoseが著明で,基底層にはタ
Thrombocytapenic
Hemangioma
(Kasabach・
ラユソ色素沈着は認められず真皮にも著変なし.検査:
Merritt)姉小路公久(同愛)
レ線上で胃小弩に腫瘍像が認められ外科的に切除した.
生後1ヵ月の女児.現病歴:生後1週頃から右下顎の
papililary adenocarcinomoma
腫脹.現症:右下顎部の巨大血管腫.紫紅乃至暗赤色.
であった.
追 加
弾力性硬.表面平滑で点状紫斑ありj検査:中等度の貧
中西淳朗(済生会中央),松島茂昌(同内科)
血(Hb
58才,男.胸腹水にて入院した患者で,3年前より頚
×104).骨レ線像正常.治療及び経過:レ線200r
58%,
R
316×104),著明な血小板減少(
部,前胸部,肢寓,下腹部,陰のう,背部,側腹部等に
治癒.生後3ヵ月目に血小板敷著明増加(42×104).
軽度の落屑を有する禰漫性の色素沈着を訴え,生検によ
扁平紅色苔癖 岩重 毅(昭医大)
1.9
4回で
り菌細胞増殖による表皮突起の延長と,軽度の角質増殖
39才,男子.約1ヵ月前に両側陰股部に癈標性発疹を
を認め,メラニンは基底層に.のみ増加するのを認めた.
生じ次第に大腿内側,腹部,背部,被髪頭部,顔面及び
本患者は胃のレ線検査により腫瘤を認め,
手背にまで拡大し癈滓激甚のため睡眠不足となる.現
I.p.では左腎
の上極に転移と思われる陰影を認めた.
症:両側陰股部から大腿内側にかげて米粒大∼大豆大の
落葉状天庖唐 平井敏之(下谷病院)
紅褐色のやや硬い境界明確な丘疹が集銕,大型の丘疹は
59才,家婦.約4ヵ月前から躯幹,下肢に小紅斑が散
わずかに落屑と中心に臍寓を有す.かかる大小の丘疹が
在性に発生し聞もなく水庖となり漸次拡大して数週後に
陰茎,腹部,背部,頭部,顔面,手背に散在す.組織所
は躯幹,四肢の全面は大小の水庖と,その破砕後の厚い
見:表皮やや肥厚,表皮突起の延長,基底細胞の液状変
痴皮を以て被われ悪臭分泌物の流出が著明となった.病
性,真皮上層の小円形細胞の浸潤が著しく,その下方は
変は頚部,躯幹,四肢の全面,顔面,頭部の一部に及
境界截然と水平線をなしている.以上の所見により扁平
び,大小種々の廉爛面と葉状庖膜並びに厚い膿苔様痴皮
紅色苔癖と診断する.治療:ソラルソソが著効を示し約
が附着して悪臭が著しい.比較的新しい病変部にぱなお
1ヵ月にて治癒.
大小の水庖が存在している.口腔内粘膜には異常はな
汗管腫 岩重 毅(昭医大)
い.ニこ1ルスキー現象強陽性.ヨードカリ反応陰性/ワ
第1例:40才,家婦.4∼5年前より顔面に自覚症の
氏反応(−).総蛋白量 5.4,
A/G 0.8,白血球
14,000,赤血球 300万,血色素量 59%.水庖内細菌
陽性,血液内細菌培養陰性治療として輸血,アiノ酸輸
液,クロマイ,プレドエソロソ投与にて漸次軽快.現在
維持量1日プレドユソロソ5
mg. 組織所見は表皮上層部
ない小丘疹が多発し最近増生.両側眼瞼の上下部に粟粒
大∼米粒大の小丘疹集頷.組織所見:真皮上層に大小
の嚢腫様腺様構造物,細胞索及び結締織の増殖おり,か
っこれらの嚢腫及び細胞索が毛嚢に連絡していることを
認めた,第2例:37才,家婦.現病歴:12才の頃前胸部
に水庖形成を伴57カソiヽリーゼの存在を認める.
に座標性発疹りできたことを記憶しているがその後別に
追 加
自覚症もないため放置していたところ,4∼5年前より
Senear-Usher症候群丿平井牢之(下谷病院)
次第に増生し,腹部,大腿部,左下眼瞼にまで拡大しき
46才,会社員.3年前から主として背部,前胸部に座
た.現症:前胸部,腹部にわたり粟粒大の円形の硬い丘
禅を伴う小指頭大の庖膜のうすい水庖が散在性に発生.
疹が密集又は播種状に存在する.色は帯黄褐色で落屑は
やがて褐色の色素沈着を既して治癒していたが,初発後
認められない.大体毛嚢に一致している.組織所見:真
403
昭和39年7月20日
皮上層に大小の嚢腫及び細胞索を認め,その部位の結締
型的なBloch黒色上皮腫1型が3こ1見られた..
織はやや増殖す.これらの嚢腫及び細胞索は互いに連絡
Sporotrichosis 吉田実夫(関東逓信)
しておりかっ毛嚢と関係のある所見を認めた.
70才,女.中野区に居住.,昭和36年春に右第2指背に
Keratoma
潰瘍を生じ,約1ヵ月後に右前腕に小丘疹を2コ発し次
Senile とEpithelioma
Spinocellulare
Seerrerans 池田重雄(東京日立,東大)
第に増大し,同年秋には栂指頭大の発赤を伴う結節とな
75才,男子.
り更に.潰瘍化したという.この間に手関節背面にも潰瘍
1)
3年来,左耳輪上部に小指頭大,褐
色,疵賞状皮疹発生.老人性疵贅の診断で切除.紅織は
を生じたが,これと原発巣は自然に治癒したとい‰外
Freudenthalのシェー.に.あると同様の老人性角化腫の
傷の記憶はない.現在両手には凍癒がみられるが,この
典型像.即ち毛嚢孔に一致してOrthokeratose,
他に右第2指背末節と手関節背面とに自然治癒したとい
dermis上部ではParakeratose,
Deckepi-
Deckepidermisは増殖,
う痘痕がみられる.右前腕伸側には鶏卵大の発赤を伴う
肥厚し,細胞の大小不同,ミトーゼ,軽度の異型性が見ら
局面かおり,辺縁は痘痕化し,中央部には鳩卵大の隆起
れ,メラノサイトは基底層からはなれて上昇し,
した肉芽面がみられ,触れると出血しやすく,表面は小
Pigment-
blockadeがみられる.真皮上層では前毛細血管の洞様
頚粒状を呈する.同前腕の肘関節附近にも鳩卵大の局面
拡張, senile Flastaeがみられる.切除後1年目でほ再発
があり,辺縁はやはり痘痕化し,中央部は隆起して帯黄
はない.2)約3年来,右対輪(Anthelix)に,上記
色の汚い痴皮を附着する.自覚症状はなく,また表在リ
皮疹と同様の疵贅状皮疹が生じ,爪で角質をむしり取っ
ンパ節の腫脹もみられない.スポロトリキソ反応は発赤
ていたところ,6ヵ月来難治性の潰瘍を生じ漸次拡大し
が4.6×5.3cm,硬結は3.2×2.9cmで水庖の形成がみ
てきた.皮表よりわずかに隆起した辺縁を有する栂指頭
られた.なお組織片を培養しSporotricum
大の浅い潰瘍で,内に真白な島嶼状の塊りが見られ,潰
証明した.組織は主として肉芽腫性変化を示すが,いわ
Schenkiiを
瘍周囲には軽度の発赤,浸潤がみられる.有縁細胞癌の
ゆる微小膿瘍の部分でも多核白血球と類上皮細胞はむし
疑いの下に一部耳介軟骨を含めて切除.割面では,真白
ろ少なく,リンパ球と形質細胞が目立ち,出血もみられ
な円柱状索状物が数条深部に向かって増殖.組織,腫瘍
た.巨細胞はみあたらず,またいわゆる三層をなす構造
細胞は表層より深部に向かい柱状増殖をし,深部では,
も明らかでなかった。PAS染色で分芽した胞子がみら
腫瘍細胞相互の結合は比較的良く保持されているが,表
れたが,星芒状体は発見できなかった.リンパ系の典型
在部に行くに従って細胞間の結合は弛緩し,いわゆる
例と思われる.
Segregationの状態を呈する.腫瘍細胞は大小不同,異
妊娠性庖疹 上野 陽(都立大久保)
型性を示し,各個細胞角化,ミトーゼの増加がある.
本症例は30才で,4ヵ月の妊婦.前回の妊娠時にも同
Segregationを示す腫瘍細胞群は恰かも毛嚢孔から排出
様の水庖形成を伴う皮疹が発生した.今回も約3週間前
されるが如き所見を示す.xラニソは深部腫瘍病巣の基
より,頭部,顔面を除き,殆ど全身に,癈禅を伴う多形
底層に見られるがSegregationを呈する細胞内にはわず
紅斑様皮疹が見られ,特に前胸部,両肢寓部及び背部で
かにしかみられない.グリコーゲンは深部腫瘍巣内に多
は,内容の半透明な大小の水庖を生じ,その一部は水庖
くSegregation部では僅少乃至皆無.真皮全層にわた
が破れて廉爛,痴皮を形成している.又紅斑面を掻破す
り,リンパ球及びプラスマ細胞を主とする中等度の細胞
ると,該部に灼熱感を伴う水庖の発生を認める.・口腔粘
浸潤がみられる.なお老人性角化腫から本腫瘍への移行
像は見られなかった.①毛嚢の一部より腫瘍性変化が始
まっている.②数条の腫瘍索間の表皮は肥厚を示すが,
腫瘍性変化を示さない.③Segregationを示す腫瘍細胞
は恰かも毛嚢孔から排泄されるが如き所見を示す等の所
膜等には異常を認めない.検査成績:ヨードカリ反応強
陽性,白血球増加(14000),好酸球増加(80%)を認め
た.組織学的には,表皮下に大小の水庖形成があり,水
庖中に好酸球,好中球その他を認める.真皮の膠原線維
は浮腫性に膨化し,主に小円形細胞,好酸球等の浸潤を
見から,数条の腫瘍性変化もおそらくは毛嚢より生じた
認める.治療:オレフソドマイシソを15ロ間に6400mg投
ように考えられる.なおPalzelt染色では,上皮線維は
与し,ネオミノファーゲソC
Segregationの変化の進むに従って漸次太く膨化し,核を
皮疹は殆ど消失した.
幾重にも取り囲むようになってくる(森俊二).術後1年
討 論
では再発は見られない.なお患者の側胸部,背部には典
園田節也(東医大):ジューリング庖疹状皮膚炎と異
lOccを15回注射したところ,
404
日本皮膚科学会雑誌 第74巻 第7号
7LyJ
なるか.その鑑別は?
額部に碗豆大,表面平滑,光沢を有し,暗紫紅色,扁平
上野 陽;前回(3年前に)妊娠4ヵ月叫てジ.一リ
に隆起せる硬い結節が2コ隣接して存在.境界比較的鮮
ング氏皮膚炎(v.a)でプレドこソ約2ヵ月内服で治癒し
明.下床に対し移動性がある.軽度の圧痛があるj組織
た.再度妊娠4ヵ月で多形性紅斑性皮疹を伴う大小の水
的叫表皮は基底細胞層の著明なjラニン増殖以外に著変
庖を形成,前胸部,両側旅寓.より背部の一部で水庖が破
なく,主な病変は真皮内の各所に楕円形乃至暇円形の比
れビラソ,痴皮を形成し,水庖内容は半透明である.
較的大型の核を持ち,核質淡く原形質にやや富む組織球
組織球腫の2例 五十嵐∧勉(東医大)
様細胞の増殖からなる.,病変の一部に細胞が集合し巣状
19才,男子.初診z昭和39年.家族歴既往歴に特別の.
を呈している所もある.核分裂像は殆どみられない.一
ことなし.し現病歴は約1年半前右前額部に痙癒様赤色丘
部にリツパ球様小円形細胞浸潤,真皮上層に出血.巨細
疹に気づき半年後i該皮疹に隣接し同様の丘疹発生.初
胞の出現はみられないL又PAPの染色で嗜銀線維を作
診時には3コの皮疹は融合し1×0.501の結節を形成し
る.像はみられない.真皮上層にヘモジデリy沈着を認め
た.外傷はかく又ケロイド素質もない.皮膚所見s右前
る.1