架橋ポリエチレンの二酸化窒素を用いた脱架橋 (宇 都 宮 大 院 工 ) ○(正 )葭 田 真 昭 *、船 山 泰 弘 、(日 立 電 線 ) 後 藤 敏 晴 、山 崎 孝 則 1. 緒 言 電力ケーブルは、経年使用後に銅を再利用するために回収されている。その被覆材であ る絶縁材料は、絶縁性と加工性が良好なために低密度ポリエチレンが用いられている。こ れらのポリエチレンは送電時の発熱で融けて変形しないように化学的な架橋処理がされて おり、そのために加熱溶融してマテリアルリサイクルすることが難しい。そのため回収さ れている年間 1 万トンの大部分が燃料化されている。これらのポリオレフィンは石油と同 等の資源価値があり、資源の次世代への継承という意義から、これらの有効なリサイクル 技術を開発することは急務である。 我 々 は 、架 橋 ポ リ エ チ レ ン (XLPE)を 超 臨 界 二 酸 化 炭 素 中 、二 酸 化 窒 素 (NO 2 )を 用 い て 酸 化 す る と 、ア ジ ピ ン 酸 を は じ め と す る ジ カ ル ボ ン 酸 へ と 変 換 で き る こ と を 明 ら か に し た 。NO 2 を用いることで、アジピン酸合成などの硝酸酸化反応に見られる様な温暖化係数の大きい 亜 酸 化 窒 素 (N 2 O)を 副 生 す る こ と な く 、 NO 2 は 反 応 後 無 害 な 窒 素 と な る こ と を 明 ら か に し て いる。また、これらの反応は超臨界二酸化炭素の高拡散性、高浸透性、溶解性という機能 が、反応の制御・効率化を実現しているものと考えられる。本研究では、二酸化窒素を用 いた酸化反応によって、架橋ポリエチレンを再度溶融加工可能な新たな高分子材料へと変 換することを検討した。 M 2. 実 験 、 結 果 NO 2 <可 塑 化 反 応 > 反 応 は 200ml の ス テ ン レ ス 製 オ ー ト ク レ ー P ブ (加 圧 容 器 )に 板 状 の XLPE 試 料 6 g(架 橋 度 chiller 82% )、 お よ び 液 化 CO 2 を 加 え 室 温 、 5 MPa と し て お く 。質 量 概 知 の 10ml オ ー ト ク レ ー ブ に BP TM CO 2 heater NO 2 を 2.3g 封 入 し た の ち 、 装 置 に 取 り 付 け 、 CO 2 液 送 ポ ン プ を 用 い 装 置 内 に NO 2 を 導 入 す る 。 200mL reacter TM あらかじめ温度-圧力図を作成しておき、 50℃ の 圧 力 を 設 定 す る こ と で 昇 温 後 、反 応 温 度 の 圧 力 を 設 定 し た 。反 応 後 の 生 成 物 は 、JIS C3005 に 準 拠 し て 架 橋 度 を 測 定 し た 。 結 果 は Table 1 に 示 し た 。 Run 1 の よ う な 高 温 低 圧 反 応 で は 、 ポ リ マ ー 表 面 で 反 応 が 進 行してしまい、ポリマー内部の架橋度を下げることができなかった。架橋度を1桁台にま で 下 げ る た め に 、 NO 2 量 を 増 や す と 、 表 面 が 脆 く 、 粘 り 気 の あ る 生 成 物 が 得 ら れ た (Run2)。 表 面 か ら 反 応 し て い る と 考 え ら れ る 。 一 方 、 反 応 温 度 を 下 げ 、 圧 力 を 高 く す る と (Run3)、 ポ リ マ ー 内 部 か ら 反 応 し 、 架 橋 度 が 低 下 す る こ と が わ か っ た 。 そ こ で Run5 の よ う に 低 温 、 高 圧 、 長 時 間 の 反 応 を 試 み た 結 果 、 少 な い NO 2 量 で ポ リ マ ー 全 体 を 均 一 に 酸 化 す る こ と が できた。この生成物の架橋度は Table 1. 架 橋 PE の酸 化 による熱 可 塑 化 0%で 、 し か も 脆 く な い 伸 び の あ る 反応条件 材 料 で あ っ た 。 IR 測 定 の 結 果 、 1710cm - 1 に カ ル ボ キ シ ル 基 由 来 の Run NO 2 g 吸収が現れた。生成物の平均分子 時 温 間 度 h ℃ 結果 圧力 収量 MPa g 架橋 反応性 度 形状 % 量を調べた結果、本反応はベース 1 1.03 1 140 12.8 6.50 23 表面反応 ポリマーに比べて分子量は低下す 2 2.30 1 140 10.2 7.13 3 表面脆い 3 1.04 1 120 19.1 6.55 16 表面反応 緩和 の方がより選択的に架橋を切断し 4 0.97 4 85 19.1 6.20 58 反応途中 ていることがわかった。 5 1.00 18 85 19.0 6.49 0 均一反応 る も の の 、 高 温 短 時 間 反 応 (Run2) に 比 べ て 低 温 長 時 間 (Run5)の 反 応 次に同様の可塑化反応を短時間 で 行 う こ と を 検 討 し た 。NO 2 を ポ リ マー全体に拡散させるのに長時間 は 必 要 と し な い の で 、 ま ず NO 2 を 高温短時間 低温長時間 ベースポリマー XLPE に 収 着 さ せ 、そ れ を 加 熱 す る ことで、均一かつ短時間での反応 を 試 み た 。実 験 は 50ml の ス テ ン レ ス 製 オ ー ト ク レ ー ブ (加 圧 容 器 )に 板 状 の XLPE 試 料 0.2g、 二 酸 化 窒 素 1.76g お よ び 液 化 CO 2 を 加 え 、 2 3 4 5 分子量/logM 6 7 60℃ に 加 熱 す る と 、8.6MPa と な る 。 混 合 物 を 60℃ で 1 時 間 処 理 し た の ち 、反 応 容 器 を 冷 却 し 常 圧 に 戻 し 過 剰 の 二 酸 化 窒 素 を 除 去 し た 。 こ の 得 ら れ た 試 料 に あ ら た め て 液 化 CO 2 を 加 え 、 140℃ 、 13MPa で 1 時 間 処 理 し 、 冷 却 後 常 圧 に 戻 し て か ら 板 状 の 試 料 を 取 り だ し た 。こ の 生 成 物 は 先 の Run5 の 結 果 と 同 様 、 架 橋 度 は 0%と な り 平 均 分 子 量 も 低 温 長 時 間 反 応 の 生 成 物 と 同 様 な 結 果 に な っ た 。 <材 料 評 価 > 得 ら れ た 架 橋 度 は 0%の 試 料 を プ レ ス 成 形 し て シ ー ト 状 に し て、引張試験を行ってリサイクルポリマーの材料特性を調べ た。プレス成形後のシートの外観を写真に示す。表面のなめ らかなシートが作成できた。また、シート周辺に薄いバリが できていることから、リサイクルポリマーは高い流動性を持 っていることがわかる。一般に架橋ポリエチレンの熱分解や 押 出 機 に よ る せ ん 断 力 で 熱 可 塑 化 し た 場 合 、架 橋 以 外 の 部 分 も 切 断 さ れ る の で 、伸 び は 0% に 近 い 。一 方 、本 リ サ イ ク ル ポ リ マ ー の 伸 び は 200%で あ っ た 。こ の 結 果 は 、架 橋 ポ リ エ チ レンをポリマーとしてマテリアルリサイクルできる可能性を示している。 【連絡先】〒321-8585 宇都宮市陽東 7-1-2 宇都宮大学大学院工学研究科物質環境化学専攻 葭田真昭 Tel&Fax:028-689-6141 E-mail:[email protected]
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