第3章 工作機械

第3章
工作機械
1.旋削加工に使用される工作機械 ······· 30
⑴ 汎用旋盤(普通旋盤)
⑵ NC 旋盤
⑶ 複合加工機
2.フライス加工用の主な工作機械 ········ 31
⑴
⑵
⑶
⑷
立形汎用フライス盤
立形マシニングセンタ
横形マシニングセンタ
門形マシニングセンタ
3.穴あけ加工の主な工作機械 ··········· 33
4.研削加工用の主な工作機械
⑴
⑵
⑶
⑷
·········· 34
平面研削盤
円筒研削盤
心なし研削盤(センタレス)
内面研削盤
5.電気エネルギー加工用の主な工作機械 ·· 36
⑴ 形彫り放電加工機
⑵ ワイヤ放電加工機
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第3章 工作機械
工作機械とは?
工作機械とは、広い意味ではいろいろな材料を必要な形状、寸法、表面状態に加工する機械で
す。一般的にはもっと狭い意味に用いられ、主に金属を、切りくずを出しながら目的の形状、寸法、
表面状態に加工する機械のことをいいます。材料から一つの品物を作り出すとき、その材料の余
分な部分を削りとって、次第に希望する形状、寸法に近づけることができます。このとき、削られて
いる材料を加工物といい、また削りとられた不必要な部分を切粉といいます。このような加工法を切
削加工といいます。
金属加工
切削加工
旋削加工
フライス加工
汎用旋盤
フライス盤
NC旋盤
マシニングセンタ
穴あけ加工
ボール盤
複合加工機
砥粒加工
電気加工
研削加工
放電加工
平面研削盤
形彫り放電加工機
円筒研削盤
ワイヤ放電加工機
心なし研削盤
内面研削盤
1. 旋削加工に使用される工作機械
旋削加工とは、円柱状の原材料を高速で回転させ、それにバイトとよばれる切削工具を押し当てな
がら任意の方向に送って原材料の不要な部分を削り取り所要の形状、寸法にする加工をいいます。
旋削加工を行う工作機械を総称して旋盤といいます。
原材料
旋削加工
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製品
(1) 汎用旋盤 (普通旋盤)
作業者がハンドルなどを操作して回転速度や切込みを設定し、
レバー操作で送りをかけたりするため加工精度や生産性は作
業者個人の技能に依存し、大量生産には不向きな工作機械
です。国内ではNC旋盤(後述)が主流で汎用旋盤の使用台
数とともに使いこなせる作業者も減少してきております。
汎用旋盤
テクノワシノ、滝澤鉄工所、光畑製作所、貨泉機械工業、キン
グストン
(2) NC旋盤 (NC:NUMERICAL CONTROL=数値制御)
NC旋盤とは、切削工具の動きが数値プログラムによる指令で自動
的に加工する旋盤です。自動的に加工を行うため、特殊な形状や
複雑な形状でも容易に加工でき、加工精度、品質が安定します。
また加工精度や生産性を作業者個人の技能に依存せず、自動的
に加工ができるため作業者が一人で複数台の機械を担当すること
NC旋盤
ができます。
ヤマザキマザック、森精機製作所、オークマ、テクノワシノ、滝澤鉄工所
(3) 複合加工機 (ターニングセンタ、マルチタスキングマシン)
NC旋盤とマシニングセンタ(後述)の両方の機能を併せ持った工
作機械です。従来では旋盤で加工した後に、マシニングセンタや
その他の工作機械に、加工物を取り付け直して加工していたもの、
つまり複数の工作機械を必要としていたものを、1台の工作機械で 複合加工機
すべての加工を完了させられる機能を持った工作機械です。
ヤマザキマザック、森精機製作所、オークマ、滝澤鉄工所、中村留精密工業、日本ディーエムジー
2. フライス加工用の主な工作機械
フライス加工とは主に直方体の材料を固定し、切削工具(カッタ、エンドミルなど)を回転させて平
面や溝を削る加工をいいます。このように旋盤とは逆に切削工具が回転し、原材料を削る機械の
代表がフライス盤です。工具をあらかじめ複数本セットすることができ自動交換できるマシニングセ
ンタを使えば平面加工、穴あけ加工など多種多用な加工ができます。
原材料
フライス加工
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製品
(1) 立形汎用フライス盤
汎用フライス盤は、古くからある形式で、工具交換やテーブルの調整
などを作業者が行わなくてはならないため加工精度および生産性は作
業者に依存し、大量生産には不向きな工作機械です。回転している工
具(フライス、エンドミル、ドリル)を用いて平面や溝などの加工を行いま
す。主軸の先端に取り付けた工具に回転を与え、対象物はテーブル
上にバイスを介して固定し、テーブルを工具の回転中心軸と垂直の方
向へ動かして切削します。
立形汎用フライス盤
静岡鉄工所、牧野フライス製作所、大阪機工、日立ビアエンジニアリング、武田機械
(2) 立形マシニングセンタ
立形マシニングセンタは立形汎用フライス盤に自動工具交換装置
(ATC ともいいます)とNC装置を付加したものです。マシニングセン
タは、プログラムに沿って自動的に工具を交換しながらフライス加工、
エンドミル加工、穴あけ加工など各種加工を連続的に行う多機能工
作機械であり、汎用フライスと比較して3~5倍の生産性向上を図る
ことができます。
立形マシニングセンタ
ヤマザキマザック、森精機製作所、オークマ、牧野フライス製作所、大阪機工、三井精機工業
(3) 横形マシニングセンタ
マシニングセンタの中でカッタやエンドミルを回転させる主
軸が水平のものを横形マシニングセンタといいます。テーブ
ルを旋回・割出すことで加工物の段取り換えを行わず多面
的な加工が連続してできます。 テーブルは正方形のパレッ
トといわれるものが多く、パレットチェンジャを付加して使用
するのが一般的です。さらにパレットの上に2面イケールや4
横形マシニングセンタ
面イケールを載せて、その側面に治具やバイスを介して加工物を取り付け、一度の段取りで多数
個の加工を行うことができます。このような周辺機器と相まって比較的軽量の部品の大量生産や長
時間無人運転に対応できる特徴があります。
ヤマザキマザック、森精機製作所、オークマ、ジェイテクト、安田工業、大阪機工、三井精機工業
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(4) 門形マシニングセンタ
門形マシニングセンタは前述してきた立形・横形マシニ
ングセンタと比較して機械本体及び加工物質量が非常
に大きいタイプのマシニングセンタです。一回の段取り
で加工物の上面と前後左右の5面を加工し、大型部品を
能率的に加工することができます。五面加工機ともよば
れます。
門形マシニングセンタ
オークマ、新日本工機、東芝機械マシナリー、ヤマザキマザック、キタムラ機械、三菱重工業
3. 穴あけ加工の主な工作機械
ボ-ル盤は、ドリル等を取り付けた主軸を回転させ、ハンドルによって、主軸を上下させ、切り込み
を与え加工する工作機械です。一般に、直径 13mm 以下のドリルを用い、主軸の送りを手動で行
い、主軸の回転数をプーリで変換するタイプを「卓上ボ-ル盤」といいます。また、主に 13mm以上
のテーパドリルを用いて加工物をテ-ブルに固定し、主軸の送りは、自動送り装置によって行い、
主軸の回転数を機械的に変える事が出来るものを「直立ボ-ル盤」といいます。ア-ムが昇降、旋
回し、ア-ムの上を主軸が水平に移動する様になっており、大形のワ-クを加工する様にしている
ものを「ラジアルボ-ル盤」といいます。
卓上ボール盤
日立工機、マキタ、リョービ、レクソン
直立ボール盤
日立工機、キラコーポレーション、遠州工業、
ラジアルボール盤
大鳥機工、小川鉄工、ヨシオ工業、善友ST
直立ボール
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ラジアルボール盤
4. 研削加工用の主な工作機械
研削加工は、高速で回転している研削砥石を用いて、加工物を削り取っていく加工法です。
研削加工に用いられる砥石の特性として、砥粒よりも硬度のある素材の加工が可能であり、砥粒が
摩耗しても新たな砥粒が砥石内部より現れるため、刃物のように再研磨が必要で無いことがあり、ま
た砥粒切れ込み深さが微少であることから良好な加工精度、仕上げ面粗さが得られます。研削加
工の種類には、平面研削、円筒研削、心なし研削(センターレス研削)、内面研削などがあります。
研削加工の種類
方法
行える加工
平面研削
平面研削盤を用いて、主として工作物 平面の研削。
の平面を研削する。
円筒研削
円筒研削盤を用いて、主として円筒工 円筒外面の研削。
作物の外面を研削する。
心なし研削
主として円筒工作物を調整車、支持刃と ピンやパイプなど支持が困
(センターレス研削) 研削砥石で支えて外面を研削する。
難な円筒工作物の研削。
内面研削
工作物の穴の内面を研削する。
穴の内面の研削。
(1) 平面研削盤
平面研削盤とは、円盤型の砥石の回転運動で加工物の平面を研削する工作機械です。加工物を
固定するテーブルが、往復運動する長方形のテーブルになっています。平面研削盤の種類として
は、砥石軸や砥石頭の形式などによって、横軸形、立て軸形、門形などの角テーブル形平面研削
盤があります。平面研削盤は一般的に、”平研(へいけん 又は、ひらけん)”ともいわれます。
岡本工作機械製作所、テクノワシノ、ナガセインテグレックス、日立ビアエンジニアリング
平面研削盤(横軸形)
(2) 円筒研削盤
円筒研削盤は、主として円筒状の加工物の外面を研削加工する工作機械です。加工物は両端の
センタで支持され、旋盤の場合と同様に回転運動が与えられます。砥石は同様に回転運動し、円
形の側面で研削を行います。円筒研削盤には並形と万能形があり、並形は、円筒研削でしか研削
出来ませんが、砥石台、及び、主軸台が旋回する万能形では、テ-パ軸や内面研削も出来ます。
ジェイテクト、シギヤ精機製作所、岡本工作機械製作所、三菱重工業、オークマ、ツガミ、
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円筒研削盤
(3) 心なし研削盤(センタレス)
心なし研削盤は、センタレス研削盤ともいい、主に小径の円筒形の加工物を2つの砥石車の間に
入れて、研削する円筒研削盤の一種です。高能率の加工が出来るので、同じ径のものを大量に研
削するのに適しています。寸法精度や表面粗度、真円度において高精度が求められる場合に使
用されます。
光洋機械工業、大宮マシナリー、日本精機、日進機械製作所
心なし研削盤
(4) 内面研削盤
内面研削盤とは、比較的小径の研削砥石により、主に円筒やリング形状の加工物の内周面に種々
の加工を施す工作機械をいいます。内面研削盤は、一般的に、”内研(ないけん)”ともいわれます。
内面研削盤には、工作物の穴の軸心に直角な端面の研削も可能なタイプもあります。
岡本工作機械製作所、太陽工機、トーヨーエイテック、山田工機、大成機械
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内面研削盤
5. 電気エネルギー加工用の主な工作機械
放電加工は、絶縁性の液体中にセットした加工電極と加
工物の間に、電圧を加えることにより、アーク放電を発生さ
せ、その熱によって加工物を溶融、同時に液体の気化す
る際の圧力で溶融部分を吹き飛ばして除去する加工方法
です。加工物が導電性であれば、材料硬度に関わらず加
工が行えるため、難削材の加工も容易に行えます。また
加工時に電極は加工物に接触しないため、薄板加工時
にもひずみを招かず、加工面は精密な仕上がりになる反
面時間を要します。
(1)
形彫り放電加工機
形彫り放電加工機は、電極が総形あるいは棒状の工具電極を使用する放電加工機です。
加工物を加工液中に浸漬して加工物と電極間に放電現象を発生させることにより、金属材料を溶
融除去することで高精度、微細加工が可能です。加工物の硬度に制約が無いため、焼入れ鋼、超
硬合金、難削材料などの加工にし、電極さえ揃えば他の加工では対応できない複雑な加工も容易
に行えます。ソディック、三菱電機、牧野フライス、
電極
加工物
形彫り放電加工機
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(2)
ワイヤ放電加工機
ワイヤ放電加工機は、0.05~0.25mmの髪の毛ほどの太さのワイヤを電極として使用する放電加工
機です。ワイヤを 1 方向に巻き取りながら加工物との間に放電を発生させ、金属を溶かして切断し
ます。イメージは糸鋸で加工するのに似ています。ワイヤ放電加工機は高精度、微細加工が可能
で、ワイヤ電極と放電現象を発生させる金属材料であれば、焼入れ材などの硬い材料やねばい材
料など、切削加工が苦手とする材料の加工も高精度な加工が可能です。また、加工中の工具の取
替えなしに、複雑な曲線形状の加工が可能です。
ソディック、ファナック、日立ビアエンジニアリング、三菱電機、西部電機、牧野フライス
ワイヤ
加工物
ワイヤ放電加工機
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