第6章 1 青森県の農林水産業 農林水産業の概要 (出典:あおもりの農林水産業) 青森県の農林水産業は、全国トップの生産量、漁獲量を誇るりんご、ごぼう、にん にく、ヒラメを始め、多様で豊富な農林水産物を生産し、県経済や地域社会を支える 基幹産業となっています。 1) 県経済の中での位置づけ 青森県の全産業の就業人口に占める農林漁業就業人口の割合は、13.2%で、全国 平均の 4.9%に比べ高い水準となっています。 ■就業人口に占める農林漁業就業人口の割合 農林漁業就業人口 91千人 13.2% 青森県全就業人口 688千人 その他就業人口 596千人 86.8% 0% 20% 40% 60% 農林漁業就業人口 3,110千人 4.9% 80% 100% 全国全就業者人口 63,082千人 その他就業人口 59,972千人 95.1% 0% 20% 40% 60% 80% 100% (出典:青森県県民経済計算、国民経済計算) 平成 21 年度の県内純生産に占める農林水産業の割合は 3.8%で、うち農業は 2.8%、 林業、水産業がそれぞれ 0.3%、0.8%となっています。 平成 22 年の青森県の農業産出額は 2,751 億円、農林水産業と密接な関係にある 食料品・飲料等製造業の出荷額は 3,941 億円となっています。 58 ■県内純生産(21 年度) 区分 ■農業産出額及び食料品・飲料等製造業の出荷額 区分 純生産額 県全体 31,931 億円 農業産出額 食料品及び飲料等 製造業の出荷額 (100.0) 1,224 (3.8) 2年 3,270 億円 4,691 億円 農業 891 (2.8) 7年 3,193 4,547 林業 92 (0.3) 12 年 2,648 3,921 水産業 241 (0.8) 17 年 2,797 3,506 19 年 2,858 3,674 20 年 2,828 4,038 21 年 2,664 4,005 22 年 2,751 3,941 農林水産業 ()内は構成比率(%) (出典:青森県県民経済計算) (出典:生産農業所得統計、青森県の工業) 2)生産概要 県内では、夏季冷涼で病害虫の発生が少なく農薬を減らした栽培が可能であるな どの地域特性を生かした米や、全国の生産量の半分を占めるりんご、全国一の生 産量を誇るにんにく、ごぼうなどの野菜、牛肉用などの生産が行われ、多様な農 業が各地で展開されています。 農業の産出額は、畜産物、果実、野菜、米の順に多く、りんごは全国一、野菜は 東北一です。 花きでは夏秋期を中心に高品質な切り花等が生産されています。 木材の県内生産量は全国第 8 位の約 601 千㎡となっており、戦後に植林したスギ が本格的に利用可能な時期を迎えています。 海面漁業・養殖等の総生産量は全国第 4 位で、総生産額は全国で第 7 位となって います。 ■農産物 (平成 22 年) 区分 ■畜産物 作付面積 生産量 産出額 (ha) (t) (億円) 米 49,400 285,500 410 り ん ご 21,700 452,500 710 特産果実 1,729 - 36 417,200 643 野 菜 17,400 花 き 159 工芸作物 - - 54 そ の 他 - - 24 38,000 26 (千本、千鉢) (出典:農林水産省統計より作成、花きは県農産園芸課) 59 飼養頭羽数 区分 (頭) 産出額 (億円) (H23.2.1 現在) (H22 年) 乳用牛 13,500 72 肉用牛 48,900 120 豚 395,800 258 鶏 - 357 その他 - 12 (出典:畜産統計、生産農業所得統計) ■林産物 (平成 22 年) 区分 生産量 産出額 林業の全国ランキング (億円) 木 材 601 千㎥ 61 き の こ 1,316t 6 その他 特用林産物 計 第1位 ヒバ蓄積量 H19 年 第4位 スギ人工林面積 - 3 第8位 素材生産量 - 70 第9位 森林面積 第9位 なめこ生産量 (出典:青森県特用林産物統計、 青森県における木材需給動向) H22 年 ■水産物(海面) (21 年) (属人) 生産量(t) 区分 (漁獲量) 水産業の全国ランキング (平成 21 年) 生産量 (億円) ヒラメの漁獲量 (漁獲金額) ホタテガイ 107,696 113 イカ類 80,307 164 サバ類 14,792 10 タラ類 8,088 17 サンマ 7,504 8 カツオ類 5,471 17 その他 35,773 202 計 259,631 531 全国ランキング 第4位 第7位 スルメイカの漁獲量 第1位 アカイカの漁獲量 シラウオの漁獲量 ワカサギの漁獲量 コイの漁獲量 マスの漁獲量 キチジの漁獲量 第2位 (出典:漁業・養殖業生産統計年報) ホタテガイの生産量 コンブ類の漁獲量 シジミの漁獲量 クロマグロの漁獲量 スケトウダラの漁獲量 第3位 ホッケの漁獲量 ウニ類の漁獲量 60 2 農 業 平成 22 年度の農家戸数は 54,210 戸となっており、農業就業人口は 80,483 人で女 性の割合が 51%となっています。また耕地面積は 15 万 6,800ha で、うち田が 53%、 普通畑が 22%、樹園地が 15%、牧草地が 10%となっています。 1) 米 ① 森の米づくり 青森県の米づくりは、本州最北端の厳しい気象条件に対応するため、冷害の克服 が大きな課題でした。その振興方針は、昭和 40 年代には「冷害克服」、昭和 50 年 代は「安定多収稲作の確立と品質向上」、近年は販売環境の変化を背景に、豊かな 自然と水、冷涼な気候を活かして、農薬の散布回数の使用量を節減した「青森クリ ーンライス」など、「安全・安心な米づくり」を進めています。 栽培品種は、多収品種から高品質・良食味品種への切換えが進み、平成 23 年産 うるち米の作付比率は、 「つがるロマン」 「まっしぐら」の2品種で 96%を占めてい ます。 また、品質の良さを示す一等米の比率も全国平均を上回っています。 ■作付品種構成割合と検査数量及び等級割合(平成 23 年産) 区分 作付品種構成 検査数量 1 等米比率 つがるロマン 44% 73,764t 89.6% まっしぐら 52% 104,153t 87.0% むつほまれ 1% 2,207t 95.7% その他 3% 3,140t - 100% 183,264t - 計 注1)検査数量及び1等米比率(水稲うるち米)は平成24年1月現在 注2)作付品種構成割合は種子申込み量からの推定値 (出典:青森県及び東北農政局) ②豊かな自然が育むあおもり米 (出典:青森産品情報サイト「青森のうまいものたち」) ●天の恵み「日照時間の長い青森県」 青森県の日照時間は稲の生育に関係ある 5 月から 10 月まで、東北で最も長く、 東京と比較しても約 20%も長くなっています。米の単位面積当たりの収穫の多さや、 健康な生育をささえているのがこの日照時間の長さなのです。 61 ●水の恵み「豊かな水系に恵まれた平野」 我が国有数の透明度を誇る十和田湖から流 出する清水が青森県東部(南部)の農業用水 に、また白神山地にその源を発する岩木川が 津軽地方の穀倉地帯を、奥羽山脈から流れ出 た馬淵川は三八地域を潤しています。 岩木山と田んぼ ●森の恵み「豊かな森林資源と肥沃な土壌」 青森県南西部には、東アジア最大級のブナ原生林を有する世界遺産「白神山地」、 中南部の八甲田連峰にはブナ、カツラ、ナラなどの広葉樹林がひろがり、落葉は朽 ち果て、春先になって降り積もった広大な雪が解け、清流となって滋味ある成分を 平野に運び、肥沃な土壌を作り出しています。 青森県の主なお米 つがるロマン コシヒカリの孫にあたる品種で、食味、品質に優れたあおもり 米のエース。津軽中央地帯を中心に、津軽西北、県南内陸地帯で の気候・土壌条件の良好な適地で作付けしています。 まっしぐら 平成 18 年にデビューした期待の新品種。優れた食味やブレンド 特性を有し、「ゆめあかり」よりいもち病抵抗性が強く、減農薬栽培 にも向いています。 ③米の流通 (参考資料:「いのちはぐくむあおもりの農林水産業」) 生産された米が家庭に届くまでには、さまざまな流通経路があります。一般的な ものでは、JA(農業協同組合)などに集められた後、卸売業者を経由してスーパーマ ーケットや米販売店の店頭に並び、消費者が購入します。その他直接農家や JA から 購入することなども可能です。 青森県産米は、県内での販売のほか学校給食にも使用されています。また、県外で も人気が高まってきており全国各地に出荷されています。 62 ■お米の流通 JA・集荷業者 卸売業者 生産農家 消費者 スーパー ・販売店 農業全国ランキング りんごの生産量(H22) 2)野菜 第1位 (出典:青森産品情報サイト 「青森のうまいものたち」) にんにくの生産量(H22) ごぼうの生産量(H22) 果樹作付延べ面積(H21) 青森県で生産される野菜のなかに は、全国一の出荷量を誇るにんにく、 ごぼうをはじめとして、ながいも、に 第2位 んじん、だいこん、かぶなど、出荷量 が全国の 10 位以内に入る品目が数多 くあります。 第3位 ながいもの生産量(H22) だいこんの生産量(H22) かぶの生産量(H22) さくらんぼの生産量(H22) 牧草地面積(H22) たばこ耕作面積(H23) 西洋なしの生産量(H22) 夏でも比較的冷涼な青森の気候が、 品質の優れたおいしい野菜づくりに 適しています。東京都中央卸売市場へ の出荷量は、東北で第 1 位です。 第4位 食料自給率(H21) 耕地面積(H22) ブロイラー出荷羽数(H22) 第5位 にんじんの生産量(H22) メロンの生産量(H22) 第6位 ばれいしょの出荷量(H22) 第7位 ねぎの生産量)H22) 63 ●青森の特産品 (出典:青森産品情報サイト「青森のうまいものたち」 青い森の機能性食品素材ハンドブック) ①にんにく 国内出荷量の約 7 割を占める青森県のにんにくは、 大玉で一片が大きく、実が引き締まって雪のような白 さが特徴です。 にんにく独特のスパイシーな香りはアリシンによ るもので、殺菌作用があるといわれています。また、 アリシンは、にんにくに含まれるビタミンB1 と結び つくことで、動脈硬化や疲労回復などに効果があるといわれています。 本県の気候に適した「福地ホワイト」という系統が生産されており、辛さが少なく、 甘みがあり、市場で高い評価を得ています。 青森県におけるにんにくの栽培は、昭和 30 年代まではほとんどが自家用でした が、旧福地村(現南部町)に際だって品質の良いにんにくがあると評判となり、こ の種が県全体に広まって一大産地に成長しました。 青森県は、種の良さのみならず、にんにくの栽培に適した風土や土づくり、高度 な栽培技術やきめ細かい管理、さらには乾燥・貯蔵技術によって、日本一品質の良 いにんにくを供給しています。 主な産地は十和田市を中心とした上北地域や「田子にんにく」で有名な三八地域 などの県南地域で、通年で全国に出荷されています。 また、にんにくは加熱加工処理を行うと、処理の程度(温度、期間)によって果 肉が白色→こはく色→黒色に変化し、機能性食品であるS-アリルシスティン等が 生成されます。この処理を行ったにんにくは「黒にんにく」として活用されていま す。 ②ごぼう 日本一の出荷量を誇る青森県のごぼうは、香りや風味が良 く、繊維質が邪魔にならない程度に身が締り、シャキシャキ とした食感が特徴で、高品質なごぼうとして市場から評価を 得ています。 ごぼうは主要野菜の中でも食物繊維を特に多く含む野菜 として一般的に知られています。また、ポリフェノールな どが機能性成分として注目をされています。 本県のごぼうの産地が集中している太平洋側は、夏場に「偏東風(ヤマセ)」と呼ば れる冷たい風が吹く夏季冷涼な気候のため、病害虫の防除回数が少なくてすみます。 三沢市を中心とした本県の太平洋側に産地が集中しており、秋から春先にかけて全 国に出荷されています。 64 ③ながいも 青森県のながいもは国内出荷量の約 4 割を占め、出荷 量は全国第2位(平成 22 年度)です。県内で広く栽培さ れているのは、青森で誕生した首が短く肉付きの良い 「ガンクミジカ」という系統です。ちなみに「ガンク」とは 首のことで「首が短い」という意味です。 ながいもはアミラーゼなどの消化酵素を多く含むこ とから、昔から消化促進、滋養強壮によい食べ物として 食されてきました。また、食物繊維の一種であるムチンが含まれており、ながいも独 特のぬめりの元となっています。 色白で粘りが強く、柔らかい肉質とアクが少ないのが特徴で、品質の高いながいも として全国の市場から評価を得ています。青森ながいもは、国内だけではなくアメリ カや台湾にも輸出されていて、東洋系住民向けの食材や薬膳用として使われています。 収穫は、11 月から 12 月の秋掘りと越冬後の 3 月から 4 月の春掘りの年 2 回で、主 な産地は太平洋側の上北・三八地域に集中しています。各産地には低温貯蔵庫が整備 されているため、年間を通して全国に出荷されています。 ④だいこん 青森県のだいこんは、全国第 3 位(平成 22 年)の出荷 量を誇ります。全国的にだいこんの生産は秋冬が中心 ですが、本県では涼しい気候を利用した夏場の生産も 盛んです。だいこんには、消化を促進する酵素アミラ ーゼが豊富に含まれています。 だいこん畑 ⑤にんじん 青森県のにんじん出荷量は全国第 5 位(平成 22 年)です。 やわらかくて甘味があり、保存性の高さにも定評があり ます。 にんじんは、ベータカロテンが豊富です。ベータカロ テンは体内でビタミン A に変換され、目や皮膚の健康を 保ったり、抗酸化作用による生活習慣病の予防に効果が あると言われています。 65 ⑥トマト 青森県のトマトは、夏場の生産が中心です。特に 7~ 9 月の東京都中央卸売市場のシェアは第 1 位で、実に 5 個に 1 個が青森県産です。昼夜の気温差が大きい本県で 生産されるトマトは色が鮮明で味が良く、保存性の高さ にも定評があります。 野菜の中ではクエン酸やビタミンC、リコピン、r- アミノ酸が多く、品種や栽培方法によって含有量は大きく異なります。 トマトに含まれている色素リコピンは抗酸化作用が高く、生活習慣病の予防に効 果があると言われています。また、ベータカロテンも多く含まれています。 ⑦ばれいしょ ばれいしょの産地としては北海道が有名ですが、青森県も出荷量 は全国第 6 位(平成 22 年)です。品種は、煮崩れの少ない「メークイ ン」が約 9 割を占めますが、最近ではヨーデル、デストロイヤー、インカのめざめ など色も味もカラフルな、色々なばれいしょを組み合わせた商品である「テイステ ィングポテト」なども人気を呼んでいます。 ばれいしょに含まれるビタミン C は加熱しても壊れにくいので、大いに食した い野菜です。 ⑧こかぶ 主に関東地域に出荷される青森県のこかぶは、夏場が出荷のピー クです。皮が薄く、色白で鮮度がよいと好評を得ており、出荷量は全 国第 3 位(平成 22 年度)になっています。 特に野辺地町で栽培されているこかぶは、昭和 55 年の大冷害を機 にヤマセを逆手に取った栽培作物として導入され、農薬を少なくしたり、予冷施設 の導入や出荷方法の改善など様々な取組を進めてきました。いまでは、出荷先市場 ヤ マ セ から「日本一」の折り紙付きと言われています。平成 19 年には「偏東風と大地の 恵み 野辺地葉付きこかぶ」として商標登録しています。 私たちが普段食べているのは根の部分ですが、葉の部分にはより多くの栄養が含 まれています。 ⑨ねぎ 青森県のねぎの生産は土寄せして軟白化させた根深ね ぎが主体で、特に夏ねぎの出荷量は東北一、全国の第7 位(平成 22 年)にランクされます。 ねぎには独特のにおいがありますが、このにおいの成 分である硫化アリルは、消化液の分泌を促し、食欲を増 進するとともにビタミB1 の吸収をよくします。 66 ⑩メロン 生産量全国第5位(平成 22 年)のメロンは、値ごろ感と高い糖度 がセールスポイントで、豊かな香りと口一杯にひろがる甘さが命です。 甘さの元である糖は、素早く吸収され、夏場のエネルギー源となりま す。 青森県の主力品種である「タカミ」は果肉は緑色で糖度が高く、爽やかな甘みが あり、日持ちもよいという特徴があります。 3)花き 青森県では、夏の冷涼な気候を活かして、夏秋期を中心に高品質な花の生産が 行われています。 青森県産の花は色が鮮やかで長持ちするのが特徴です。生産は切り花類が中心 で、栽培面積の約 70%を占めています。キクの栽培が最も盛んで、その他には、 トルコギキョウ、バラ、ヒマワリ、リンドウ、アルストロメリ ア、アスター、グラジオラス、ディルフィニウムなどが栽培さ れています。 切り花以外では、シクラメン、ポットローズなどの鉢花の栽 培が盛んです。また、県オリジナル品種として、輪ギク「えみ あかり」、ディルフィニウム「ブルースピアー」「スカイスピア ー」 「イエロースピアー」 「アメジストスピアー」 「なつぞらスピ アー」などの切り花が生産されています。 輪ギク 「えみあかり」 デルフィニウム 「ブルースピアー」「スカイスピアー」 「イエロースピアー」「アメジストスピアー」 「なつぞらスピアー」 67 4)果樹 (出典:青森産品情報サイト「青森のうまいものたち」 青い森の機能性食品素材ハンドブック)」 青森県では、全国第1位(平成 22 年)の生産量を誇るりんごのほかにも、さくらん ぼ、ぶどう、なし、ブルーベリー、すもも、ももなど、たくさんの果物が作られて います。生産量はさくらんぼが第 3 位(平成 22 年)、西洋なしが全国第 4 位(平成 22 年)などとなっています。 青森の気候・風土に育まれた果物には、おいしさがギュッとつまっています。 ①りんご 日本一の生産量を誇る青森りんごは、一日 の寒暖の差が大きい気候の中で栽培されてい るため、実の締りが良く、みずみずしい食感 と甘み・酸味のバランスが絶妙で、全国から 高い評価を受けています。 りんごには、ペクチンなどの食物繊維、カ リウムなどのミネラル、ビタミンCなどのビ タミンが含まれており「1 日 1 個のりんごで 医者いらず」といわれています。 今やりんごと言えば青森ですが、これまでの道のりは決して平坦なものではなく、 未知の病気や害虫との闘いをはじめ、収穫が始まる秋口の台風による壊滅的な被害 など、幾多の試練を乗り越えてきました。昭和 30 年代後半からは、関係団体が一 丸となって CA 貯蔵技術(低温と酸素濃度の調整により品質の低下を防ぐ技術)の 導入を進めることで長期貯蔵出荷が可能となりました。 近年は光センサーで瞬時に糖度や蜜の入り具合を測定できる機械の導入も進み、 新鮮で美味しいりんごを全国の消費者に一年中届けています。 りんごの品種 世界中にあるりんごの品種は約 15,000 種で、うち日本では約 2,000 種あり、青 森産業技術センターでは約 300 種、青森県内では約 50 種ほどが販売されています。 品種別の栽培量は、「ふじ」が約5割を占め、次いで「王林」、「ジョナゴールド」、 「つがる」となっています。 また、「青り 24 号・25 号」などの個性的な新品種がまもなくデビューします。 彩香 星の金貨 68 北紅 (出典:地方独立行政法人青森県産業技術センター作成資料) ②さくらんぼ 青森県におけるさくらんぼ栽培は明治時代に遡り、当時はりんご園の周りの防風 林として植えられていたと言われています。その後、さくらんぼの栽培に適した県 南地域を中心に、品種更新や高品質生産に努めながら 産地化が進みました。 現在、本県で作付けされている品種の半分以上は「佐 藤錦」となっています。 毎年6月中旬から7月中旬にかけて開催されている 「名川さくらんぼ狩り」の期間中には観光農園に県内外 から多くの観光客が訪れています。 ③ぶどう 青森県内で主に生産されているぶどうに、スチューベンがあります。 「スチューベン」は、ニューヨーク生まれのぶどうで、津軽地方の夏季冷涼な気 候と冬期間の積雪といった気象条件が栽培に適していることもあり、全国の約8割 69 が鶴田町を中心とした津軽地方で生産されて います。 酸味が少なく濃厚な甘みが特徴で、貯蔵 性に優れているため真冬まで美味しく食べ られます。 ぶどうの皮の部分に多く含まれているア ントシアニンは、抗酸化作用が高く生活習 慣病の予防に効果があると言われています。また、実の部分に多く含まれるブドウ 糖や果糖は、疲労回復に効果があると言われています。 ④西洋なし 青森県で主に生産されている西洋なしに 「ゼネラル・レクラーク」があります。 「ゼネラル・レクラーク」は、本県の南部町 がいち早く産地化に取り組んだフランス原産 の西洋なしで、厳しい栽培協定に基づきたっ ぷりの有機質肥料や独自の棚仕立てにより手 間ひまをかけて生産されています。 ひときわ目を引く大きさと、熟すと黄金色 で独特の芳香を有し、ジューシーでヨーグルトのような舌触りが特徴です。 5)冬の農業 (出典:「冬の農業普及拡大計画」 ) 青森県は、冬の厳しい寒さや大地を覆う雪などが妨げとなって、冬季間の農業生 産活動が困難な状況にありましたが、平成 13 年度から冬の土地や豊富な労働力、 寒さや雪のメリット、温泉熱などの自然エネルギーを活用しながら安全・安心な野 菜や花き等の生産拡大や農産加工に取り組むことにより、冬期間の農業者の就労期 間の拡大と農業所得の向上を目指した「冬の農業」を推進しています。 これまでの取り組みより「寒締めほうれんそう」「促成アスパラガス」「雪にん じん」など多岐にわたって栽培されるようになっており、着実に生産が拡大してい ます。 ①寒締めほうれんそう 収穫前の一定期間徐々に寒さに慣らしていくと、 糖分などの凍りにくい成分が蓄積されてます。根の 吸水能力が低下し糖分やビタミン類などの濃度が高 まる一方、シュウ酸などのえぐみ成分は少なくなり ます。 冬季栽培であっても無加温栽培ができるため燃料 70 費が不要で、病害虫の発生がほとんどないため、無農薬栽培も可能です。 食べ方は、甘味と旨みがあり、そのままおひたしでもおいしいですが、こってり としたバターやホワイトソース、チーズなどとの相性もよいことから、キッシュ、 グラタン、パスタなどもよりおすすめです。 ②促成アスパラガス 春から秋まで露地の畑で太陽を浴びて育った株を、冬 直前にハウスに移植し、加温して育てます。農薬を使用 せず、えぐみや苦みが少ないのが特徴で、露地物よりも ビタミンCが多いとの報告もあります。 独特の風味があるホワイトアスパラは、輸入品に比べ ると細めですが、レストラン等の業務用としてニーズが 高い高級野菜となっています。 アスパラガスにはアミノ酸の一種のアスパラギン酸が栄養成分として含まれ、 体内の新陳代謝を促し、疲労回復の作用があります。また穂先部分にはルチンが多 く含まれ、毛細血管を強くして血圧を下げる効果があります。 食べ方は、鮮度がよいうちにできるだけシンプルに料理することがおすすめです。 ③雪にんじん 寒さや乾燥に強いにんじんの特性を生かし、秋まで に収穫できるサイズに育てたにんじんを、雪の下でじ っくり熟成させて、冬に手作業で掘り出し収穫します。 旨みや酸味成分であるアスパラギン酸や、甘味成分 のセリン(アミノ酸の一種)、香り成分のカリオフィレ ンが増加して、味も栄養価も高まります。 にんじんのオレンジ色はβ-カロテンで、体内で粘膜や皮膚、髪を健康に保つ働 きがあるビタミンAに変わります。β-カロテンは、芯よりも皮に近い果肉部分に 多くふくれていますので、よく洗って皮ごと調理することをおすすめします。 また、β-カロテンは油と一緒に摂取することで吸収が高まるため、生でサラダ やジュースにするよりも、油を使った料理がおすすめです。 ④雪室りんご 雪室は、積雪地帯に古くから伝わる天 然の冷蔵庫です。雪室の中の温度は摂氏 1 度前後で、湿度は 90~100%に保たれ ており、保管された野菜や果物は「みず みずしさ」 「おいしさ」 「糖度」が増すと いわれています。 雪室りんごは、秋に収穫したりんご箱 に詰めて、ビニールをかけて上から雪ですっぽりと覆う簡易な雪室で春まで貯蔵し 71 ます。 雪があれば容易に取り組むことでき、あまりコストはかからないことから、青森 市浪岡の道の駅アップルヒルから取組が始まった「雪室りんご」は、今では青森市、 弘前市、黒石市、西目屋村など県内各地の地域活性化に一役買っています。 このほか、長いもや自然薯、ヤーコンなどの野菜を雪室で貯蔵する取組も見られ ます。 ⑤一町田せり(伝統野菜) 冬でも凍ることがない「清水っこ」と呼ばれている 弘前市一町田地区(岩木山麓)の湧水で、古くから栽 培されている伝統野菜のせりは、雪がちらつく中、摂 氏約 10 度の水温が保たれる湧水を利用して藩政時代 から栽培が続けられています。 露地ものから収穫が始まり、厳冬期はハウスものが 主流となります。 独特の強い香りと、シャキシャキの歯触り、根までおいしく食べられるのが特徴 です。食べ方は、すき焼きに入れるほか、おひたしや天ぷら、きんぴらなどがおす すめです。 6)畜産物 (出典:青森産品情報サイト「青森のうまいものたち」) ①鶏肉 青森県には、「青森シャモロック」「味鶏肉」「めぐみどり」といった地鶏や銘柄鶏が あります。 それらの中でも人気を集めているのが特産地鶏「青森シャモロック」です。これは 横斑シャモと横斑プリマスロックを掛け合わせて、青森県が独自に開発した高品質 な肉用鶏で、ほど良い歯ごたえと濃厚なうまさが楽しめます。 ◆青森シャモロック 「青森シャモロック」は、五戸町にあった県畜産試験場(現 地方独立行政法人青森県産業技術センター畜産研究所)が 20 年もの歳月をかけて育成し、平成2年にデビューした青森県 オリジナルの地鶏です。 肉のきめが細かく濃厚な味わいをもつ青森県原産の「横斑 シャモ」が父親、肉質に優れダシがよく出る「速羽性横斑プ リマスロック」が母親で、両親の良いところを併せ持ってい ます。 72 青森シャモロック 「青森シャモロック」は優れた品質や食味を維持するために、「特産地鶏青森シャ モロックブランド化推進協議会」で承認された指定生産農場で、専用の飼育マニュア ルに基づき育てられています。 「地鶏」の飼育基準 (日本農林規格/特定 JAS)と青森シャモロックの飼育基準 JAS 青森シャモロック 在来種由来の血液百分率が 50%以上 素びな のものであって、出生の証明ができ るものを使用していること。 液百分率 100%)と横斑プリマスロック (同 50%)を交配して生産。素ビナの在 来種由来血液百分率は 75%。 雄:100~120 日 飼育期間 ふ化後 80 日以上 雌:110~130 日 飼育施設 28 日齢以降、平飼いで飼育 飼育密度 青森県原産の横斑シャモ(在来種由来血 鶏舎内で平飼い 28 日齢以降、1平方メートルあたり 10 羽以下で飼育 1平方メートルあたり5羽以下で飼育 ②豚肉 青森県は、八戸市にある飼料穀物コンビナートの立地により、豚飼養頭数全国8 位(平成 24 年調べ)という有数の養豚生産地となりました。 最近では、各生産者が特色ある飼育方法や工夫した飼料を給与した銘柄豚生産の 取組を盛んに行っていて、県特産のにんにくを飼料に使用した奥入瀬ガーリックポ ークが人気を集めていますが、「長谷川の自然熟成豚」や「やまざきポーク」など も県内外から高い評価を得ています。 ◆奥入瀬ガーリックポーク 「奥入瀬ガーリックポーク」は、奥入瀬川が流れる 自然豊かな環境のもとで飼育されており、飼料の原料 に青森特産のにんにくを使用しています。 にんにくを与えることで、ビタミン B1 やうま味成分 であるイノシン酸が豊富な、脂身まで美味しい豚に育 ちます。 奥入瀬ガーリックポーク 73 ③牛肉 青森県には八甲田山麓、十和田湖周辺、下北半島、津軽地域に合わせて 99 か所 (全国第3位の牧場数)の公共牧場があり、約 6,500 頭の肉用牛が放牧されていま す。青森の牛肉は、緑豊かな大地と清らかな水、そして畜産農家が愛情たっぷりに 大切に育てた逸品です。 県産牛肉の銘柄は、品種によって「あおもり黒毛和牛」「あおもり短角牛」「あ おもりディリービーフ」の3つに分けられます。これらの総称は小売り段階ではさ らに細分化され、それぞれ地域に根付いた銘柄で販売されています。 総 称 品種 あおもり黒毛和牛 黒毛和種 あおもり短角牛 日本短角種 あおもりディリービーフ 乳用種 銘 柄 倉石牛、三戸・田子牛、十和田湖和牛、東通牛 八甲田牛、十和田牛 開拓牛 ◆あおもり黒毛和牛 十和田湖や八甲田山などを有する豊かな自然の中 で育てられているのが、「あおもり黒毛和牛」です。 脂肪が細かく入った美しい霜降りが特徴で、倉石牛を はじめ三戸・田子牛、十和田湖和牛などの銘柄があり ます。 中でも倉石牛は、数々のコンクールでチャンピオン に輝くなど、首都圏でも高い評価を得ています。牛肉は、脂質、必須アミノ酸を含む 良質のたんぱく質、鉄分、亜鉛が多く栄養価の高い食品です。 ◆あおもり短角牛 八甲田山麓などの大自然で牧草を食べながら のびのびと育った「あおもり短角牛」は、「日本 短角種」という和牛の一種です。 脂肪が少ない赤身肉が主体で、一般の和牛に比 べてうま味成分の遊離アミノ酸に富んでいるの が特徴です。 74 ≪県基幹種雄牛≫ 青森県には、数々の枝肉共励会を制した子牛の父である「第1花国」やその子 となる「第2花国」、新種雄牛として期待されている「優福栄」など、優秀・有望 な県基幹種雄牛がそろっています。 第 1 花国 3 水産業 寒流と暖流の流れがぶつかる青森県の海には魚の餌となるプランクトンがたくさ ん発生し、多くの魚が集まってきて豊な漁場がつくられます。 スルメイカ、マグロ、ブリ、マサバなどが暖流に乗って北上し、サケ、マダラ、ホ ッケなどが寒流に乗って南下してきます。また陸奥湾ではホタテガイの養殖が盛んで あり、全国有数のホタテガイの生産地となっています。 1)漁業生産 (出典:あおもりの農林水産業) 平成 21 年の海面漁業・養殖業の生産量は、海面漁業が 15 万トン、海面養殖業が 11 万トンで、生産額は海面漁業が 413 億円、海面養殖業が 118 億円となってい ます。 魚種別の生産量は養殖などによるホタテガイが最も多く、次いでイカ類となって います。 2)漁業の種類 (出典:青森県の水産業) 漁業は、漁業を行う海域や漁船の大きさによって、次の3つに分けることができ ます。 75 ① 遠洋漁業 100 トン以上の設備が整った大型船を使って、何ヶ月も日本をはなれて漁をし ます。遠洋かつお・まぐろ船はインド洋や大西洋で、遠洋いか釣り船は太平洋の日 付変更線付近やニュージーランド沖、南米沖の太平洋まで行って操業しています。 ② 沖合漁業 沿岸漁業で使う船よりも大きな船で、沖合で 何日もかけて漁をします。沖合底びき網、まき 網、沖合いか釣りなどの漁業があります。 沖合底びき網船は、北海道の千島列島沖まで、 まき網船は三陸沖や常磐沖、沖合いか釣り船は 日本海の大和堆まで行って操業しています。 まき網漁業 ③ 沿岸漁業 岸に近い海で漁をするもので、小型船による漁船漁業、定置網漁業、地曳き網漁 業などのほか海面養殖業があります。 青森県の沿岸漁業の生産量は、遠洋、沖合を含めた総生産量の 58%以上を占め ています。 沿岸漁業の中では海面養殖業の割合が最も高く、そのほとんどは陸奥湾のホタテ ガイ養殖業です。平成 21 年のホタテガイ養殖業の生産量は 10 万 6,130 トンで、全 国では北海道に次いで第 2 位の生産量となってい ます。 漁船漁業では八戸港を中心に、スルメイカを対 象とする沿岸いか釣り漁業の生産量が多く、2万 5,000 トン、サケ、スルメイカ、ヤリイカ、ブリ、 ヒラメなどを漁獲する定置網漁業が1万 5,800 ト ン、コンブを中心とする採介藻が 2,400 トンとな っています。 定置網起こし(沿岸漁業) 3)つくり育てる漁業 昔から行われてきた自然の海にいる魚介類をとる漁のことを「とる漁業」と言う のに対し、養殖や栽培漁業などを「つくり育てる漁業」と言います。近年、貝や魚 などの資源が少なくなってきているため、こうしたつくり育てる漁業の実施・研 究が進んでいます。 ① 栽培漁業 栽培漁業は、卵からふ化した稚魚や稚貝を海や川に放流し、育ったものを獲 る漁業です。本県ではサケ、ヒラメ、サクラマス、クロソイ、マダラ、コマガ レイ、ウスメバル、ホタテガイ、アワビ、ウニ、ナマコなどの栽培漁業が行わ 76 れています。 ■ ヒラメの資源管理 ② 養殖漁業 養殖漁業は、稚魚や稚貝を施設内で管理し、販売でき る大きさまで育てる漁業です。本県の養殖漁業では、ホ タテガイが最も多く生産されています。ほかにもコンブ やワカメ、ホヤなどの養殖漁業も行われています。 ホヤ 4)青森県で獲れる主な海産物 (出典:青森産品情報サイト「青森のうまいものたち」) ① ホタテガイ 全国第2位の生産量を誇る青森ほたては、下北 半島と津軽半島に囲まれた陸奥湾で育っていま す。陸奥湾には八甲田山系の自然豊かな山々を源 とする川から、ホタテガイの餌となるプランクト ンを育てるミネラルたっぷりの水が注ぎ込みま す。 77 冷水性の二枚貝であるホタテガイにとって、北国の冷涼な気象条件と湾特有 の穏やかさは、生育に最も適した環境となっているため、品質・味ともに優れ たホタテガイが生産されています。 陸奥湾のホタテガイは、うま味はもちろん、引き立つような甘みと貝柱の厚 みが特徴となっています。 ② イカ 八戸沖合は「スルメイカ」の好漁場であるため、夏から秋にかけて全国からイ カ釣り漁船が集まります。 また、国内はもちろん世界中のイカが水揚げさ れる八戸港は、イカの水揚げ量が日本一で、周辺 には水産加工場や冷凍・冷蔵施設なども整備され、 全国有数の漁港となっています。 ③ ヒラメ ヒラメは「青森県の魚」に指定されています。特 に、津軽海峡のヒラメは、潮の流れが速い荒波に もまれているため身が厚く、締まっているのが特 徴です。本県は全国に先駆けてヒラメの稚苗生産、 放流及び漁業者が主体となった資源管理に取り組 み、天然のヒラメは日本一の水揚げを誇っていま す。 ヒラメは、高タンパク・低脂肪で、ビタミン・ミネラルといった栄養成分もバ ランス良く含まれているので、離乳食や病人食にも用いられるほか、ダイエット 中の方にもおすすめです。 ④ マグロ 津軽海峡の本マグロは「大物」が多く、その重量は 200kg~300kg 級にもなります。特に、豪快な1本 釣りで全国的に有名な「大間の本マグロ」は市場で の評価が高く、高値で取引されています。マグロは、 生鮮食品の中でもたんぱく質の含有量がトップク ラスとなっています。 78 ⑤ サバ 青森県は古くからサバの全国的な産地として知られ ていますが、特に八戸前沖は、餌が多いことや、秋口 の早い時期から海水温が急激に下がることで、他の海 域よりサバのおいしさの決め手である脂肪分が高まり、 品質・食味ともに市場から高い評価を受けています。 サバには、EPA や DHA などの不飽和脂肪酸が豊富 に含まれていて、動脈硬化など生活習慣病の予防に効果があると言われています。 ⑥ しじみ 青森県のしじみ生産量は全国第2位となって います。満潮時に海水が流入する汽水湖である十 三湖と小川原湖は、「ヤマトシジミ」の生息にとっ て最高の環境で、その美しさから全国有数の産地 となっています。 しじみは、タウリンなどが豊富に含まれており、 肝臓の機能を活性化させることで、二日酔いに効果を発揮するとともに、コレス テロール値上昇を抑える働きもあると言われています。また、鉄分やビタミン B12 も多いので貧血予防にも効果があります。 青森県の旬のさかな 太平洋 津軽海峡 春 夏 秋 コウナゴ アイナメ ウニ スルメイカ サクラマス 海峡サーモン 冬 ホッキガイ サケ、コンブ サメ (ドナルドソン系ニジマス) 陸奥湾 トゲクリガニ ホタテガイ ホヤ クロソイ ナマコ 日本海 ワカメ モズク サザエ ヒラメ ヤリイカ 内水面 モクズガニ しじみ シラウオ ワカサギ 79 4 林 業 1)森林の役割 森林は、私たちの暮らしのなかで重要な役割を担っています。 (出典:「いのちはぐくむ あおもりの農林水産業」平成 24 年度版) ●緑のダム 森林は、雨水や雪どけ水を蓄える性質から洪水・水不足を 防ぎ絶えず一定の適量の水が流れる環境をつくりだしてい ます。川の水量が急激に増えたりするのを防ぐため、緑のダ ムとも呼ばれています。 水源林造成(五所川原市金木) ●きれいな空気 木は二酸化炭素を吸収し、森はきれいな空気を作り出しています。 ●土砂崩れを防ぐ 木の根が地中深くに張り巡らされ、土砂崩れをおさえてくれます。また、木の根と 地面を覆う落ち葉や下草などが、雨水を吸収し、一気に流出するのを防いでくれます。 ●風よけになる 海岸に植えられた木々が盾となって、家々や畑を風や雪、 飛砂から守ります。 海岸防災林(むつ市中野沢) ●動物のすみか 自然豊かな森は生き物にとって暮らしやすいすみかに なります。 80 ●水をきれいにする 雨水が土壌にしみこんでいく過程で不純物を吸着してきれいな水にします。 また、森の腐葉土には、魚が食べる植物プランクトンの栄養源が含まれており、森 から川、海へと運ばれています。 新緑の奥入瀬渓流 ●木材を生産する 人々が使う木材を生産してくれます。 ●食料を生産する 山菜やきのこなどを育てます。 ネマガリダケ 県産しいたけ また森林は、熱をさえぎり涼しくしてくれる効果や森林浴、バードウォッチング、 レクリエーションなど安らぎの場をもたらします。 2)青森県の森林 (出典:あおもりの農林水産業) 青森県の森林面積の 62%は国有林が占めています。 青森県の森林面積(平成 23 年) 区分 面積(ha) 比率(%) 国 有 林 396,463 62.0 民 有 林 239,284 38.0 635,748 100.0 合 計 (出典:青森県森林資源統計書) 81 日本三大美林の青森ヒバ、白神山地のブナ、県南の南部アカマツ、スギなど多様な 森林が県土面積の 66%を占めています。 民有林樹種別蓄積割合(%)(平成23年) 針葉樹 その他0.0% 針葉樹 ヒバ 0.5% 針葉樹 カラマツ 3.2% 針葉樹 クロマツ 3.6% 広葉樹 22.2% 針葉樹 スギ 56.9 % 針葉樹 アカマツ 13.5% 天然ヒバの資源量は全国の約8割を占めています。 スギ人工林は全国第4位の約 20 万 ha となっていま す。 ヒバの長期育成循環林(東通村大利) スギ林(大鰐町) 3)特用林産物(きのこ・山菜) 青森県では昔から山の恵みである山菜やきのこ を郷土料理や家庭料理に活用してきました。 特用林産物の生産額の約7割がきのこ類となっ ており、平成 22 年度におけるきのこ類の生産量 は、対前年比2%減の 1,316 トンで、中でも主要 品目であるしいたけは、対前年比 13%減の 260 トンとなっています。 (地独)青森県産業技術センター林業研究所で開発した初雪たけの生産量は対前 年比変化なく、23 トンでした。 82 主な青森県産きのこの生産量 (t) 900 平成18年 800 700 平成19年 600 500 平成20年 400 300 平成21年 200 100 平成22年 0 生 し い た け ( 初 雪 た け ) な め こ え の き た け ま い た け (出典:「平成23年度青森県の森林・林業」) 平成22年 主な青森県産きのこの生産割合(%) まいたけ 5% 0% えのきたけ 14% なめこ 61% 生しいたけ 20% (出典:「平成 23 年度青森県の森林・林業」 ) 現在ではしいたけ、なめこ、まいたけなどのきのこや、うど、たらの芽、みず(ウ ワバミソウ)などの山菜が栽培されています。 ≪初雪たけ≫ 「初雪たけ」は、なめこの突然変異種で、昭和 50 年から県林業試験場(現地方独立行政法人青森県産 業技術センター林業研究所)が約 20 年にわたって 品種改良を重ね、平成 12 年にようやく誕生した青 森県生まれのなめこです。 83 「初雪たけ」という名前のとおりカサからクキまで全体が真っ白です。最近では、 白いしめじなどが販売されていますが、白い「なめこ」は「初雪たけ」だけです。 主な産地は県南の田子町で、青森市や平川市でも栽培されています。主に、県内 のスーパーで販売され、学校給食用としても供給されています。 5 青森県産品の機能性食品 (出典:「青い森の機能性食品素材ハンドブック第1版」 ) 昔から「医食同源(薬食同源)」という言葉があります。食事で病気を防ぎ、健康 を保つという考え方です。食品にはもともと健康を維持する成分が含まれているこ とを意味しており、疾病の予防は日常の食生活を通じて行うことが重要です。 青森県は三方を海に囲まれ、四季折々の豊富な農林水産資源に恵まれており、特 長的な機能性を示す食品素材が数多くあります。 1)アピオス ~100 年前りんごと共に運びこまれたと言われている驚異の自然食品~ 生産・特性 アピオスは、青森では「ホドイモ」と呼ばれる北米原産の マメ科の植物です。昔から食べられてきたものですが、明 治の時代、青森県に「りんご」の苗木がアメリカから輸入さ れた際、土と一緒に紛れ込んだのではないかと言われて います。 主な機能性成分 ① ペプチド:アピオスのたんぱく質由来のペプチドに、血圧降下作用のあることが 明らかになっています。 ② カリウム:生のイモ類の中で最も多く含まれています。 ③ カルシウム:ゆでたホウレンソウ、板こんにゃく、ゆでた豆類と同等に含有してい ます。 利活用の方法や用途など 通常は茹でて食べますが、普通の料理の食材として利用でき、栗とイモをあわせ たような味です。最近は栽培や保存に工夫が施されているので皮付きでも美味しく食 べられます。 84 加工用としては、生、茹で、粉末等、いくつかの素材が用い られています。アピオスコンニャクは、野菜 99%でありながら 肉やハムのような食感を造り出したアピオスの加工食品で す。 アピオスの花 2)カシス(黒房すぐり) ~「カシスの街 青森市」が全国収穫量の9割~ 生産・特性 「カシス」はフランス語読みで、和名は「クロ フサスグリ」です。 青森市は、全国の約9割という日本一の生産量 を誇り、日本での本格的な栽培は、昭和 50 年に 弘前大学の望月教授がヨーロッパから取り寄せたことが始まりです。 ビタミンCやアントシアニンが豊富で、ブルーベリーと比べて動脈硬化や脳 梗塞を防ぐポリフェノールは2倍、アントシアニンは3倍多く含み、抗酸化力 も高いことがわかっています。 また、近年では、カシスによって、毎年流行しているA型インフルエンザウイルス、B型 インフルエンザウイルスの 98%以上を不活性化できることがわかっています。 主な機能性成分 ① リノレン酸:カシスの種子からとれる油に多量に含まれています。 ② ポリフェノール:カシスに含まれる「カシスポリフェノール」は、末梢の血 流を改善する効果が確認されています。 ③ アントシアニン:カシスに含まれる「カシスアントシアニン」には、眼精疲 労を改善するはたらきがあります。また、末梢の血流を活発にさせるはたら きにより、筋肉のこりをほぐす効果も確認されています。 ④ ビタミンC:オレンジの2倍のビタミンCが含まれています。 利活用の方法や用途など ジャムや飴、ケーキなどのお菓子、ジュース、お茶、ワインなどの食品や、 視覚改善、抗酸化作用、血流改善をサポートするためのサプリメントなどに加 工されています。 3)ガマズミ ~冬山で狩りをするマタギが見つけると喜んで食べたという言い伝え~ 85 生産・特性 スイカズラ科の落葉低木樹で、日本全国の丘陵 地帯に自生しています。ビタミンCと有機酸が豊 富に含まれているため、独特の酸味が強いのが特 徴で、生食も可能ですが、果汁飲料や果汁加工品 が主流になっています。 主な機能性成分 ① ポリフェノール(アントシアニン、クロロゲン酸) :ガマズミの総ポリフェノール含有 量は高く、果汁中濃度は赤ワインに匹敵します。 ② カリウム:ガマズミ果汁 100gにカリウムが 250mg、果肉皮粉末には 580mg含まれ ています。 ③ 食物繊維:ガマズミ果肉皮粉末の 60%を食物繊維が占めています。 利活用の方法や用途など 生食も可能ですが、果実の大きさに対して種子が大きいため食べにくい等によ り、飲料とするのが一般的です。果汁残滓から食物繊維とポリフェノールが豊富 な粉末素材も開発されています。 4)サケ鼻軟骨 ~平安時代、朝廷へ奉納されていたという「氷頭(ひず)」~ 生産・特性 青森県や北海道では、サケの鼻軟骨は郷土料理 「氷頭なます」として食されてきました。この サケの鼻軟骨には、動物の軟骨の主成分である プロテオグリカンが豊富に含まれています。 主な機能性成分 ① プロテオグリカン:タンパク質と糖鎖が共有結合した複合糖質の一種です。 コラーゲンやヒアルロン酸と並ぶ動物の軟骨の主成分で、保湿性に優れ、ア ンチエイジングの効果も期待できます。経口摂取が可能なことから、人体に きわめて安全な素材であるとされ、化粧品や機能性食品、医薬品などに加工 されています。 86 ② コラーゲン:サケ由来のコラーゲンでは、皮を利用して抽出した純度の高い 素材が開発されています。ほ乳類由来のコラーゲンに比べてアレルギー性が 少なく、新たな機能性も確認されています。 利活用の方法や用途など これまでは、氷頭は薄切りにして大根と合わせ、「氷頭なます」として正月や 祝い膳などで食されてきました。弘前大学が民間企業との共同研究により、サケ 鼻軟骨から高純度かつ大量にプロテオグリカンを生成する技術を確立したことか ら、今後は変形性関節症等の治療剤、皮膚に対して保水効果の高い化粧品やりん ご酢への配合など、より多様な商品展開が期待されています。 5)シジミ ~日本のみならず中国でも、古くから肝臓病の特効薬と言われる~ 生産・特性 シジミ科の二枚貝です。日本全域の汽水湖等に生息し ています。シジミは縄文時代の発掘調査から、当時から 利用されていたことがわかっています。本県では十三湖 と小川原湖が主な産地です。 シジミは古くから肝臓病の特効薬といわれており、シジ ミに含まれている肝機能改善に有効な成分としては、オルニチン、良質のたんぱ く質、タウリン、アラニン、ビタミンB12 などがあげられます。 主な機能性成分 ①オルニチン:アミノ酸の一種で、肝機能改善に有効な成分です。 ②アコルビン:シジミエキスに含まれており、肝機能保護効果のあることが判 明しました。 利活用の方法や用途など みそ汁やスープの具が一般的ですが、佃煮等の加工品もあります。シジミは 冷凍することにより、オルニチン含量を増加させることができます。冷凍後の シジミエキスを活用した商品もあります。 87 ■ おいしいしじみの見分け方 貝の色が真っ黒よりも、少しあめ色がかったものがおいしいそうです。 ■ 土用しじみと寒しじみ 夏のしじみは、産卵に備えて身が肥えているので、プリッとした食感が楽しめます。 「土用しじみ」とも呼ばれます。 他方、冬にとれる「寒しじみ」は、寒さから身を守るためアミノ酸を体内に貯える ので、うまみが増すといわれています。十三湖の「寒しじみ」は、漁期(4月~10 月)に獲ったしじみを個人が所有する蓄養場で育て、寒くなってから出荷しています。 冬は漁をする人が減るので、出回る量も少なくなるそうです。 88
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