中学理科の新教育課程について 94D2102006B 6年2組6番 岡 宏樹 1 はじめに 授業が成立しない学級崩壊、現役教師のわいせつ行為、進む理科離れ、受験生の学力低下、 学校給食への異物混入、学校内の飼育動物虐殺、中高生によるオヤジ狩り、イジメによる精 神的苦痛からの自殺、中学校でのイジメによる暴行の末の死、中学生による小学生の殺人事 件、などの学校及び生徒の関係する事件が新聞をにぎわせてしまいました。また、これらの ニュースがテレビや新聞で流されると、同じような事件が、他の地域で発生してしまいまし た。このような嘆かわしい現状から、教育改革が強く叫ばれています。それに対して、文部 省は、「ゆとりのある教育」をキーワードに、一般に新指導要領と呼ばれている、小・中学 校第6次改訂指導要領を告示したと、報道されました。中学校・高等学校の理科の教員を目 指している私にとっては、これらのニュースはとても興味深いものであると同時に、今後の 生徒が学ぶ内容について、いつかは本格的に学ばなければとの思いを強くさせました。 今年度の教育実習を行った経験から、理科の授業のあり方についていろいろと考えさせら れました。また、実習校での指導教諭や、いろいろな助言を下さった教諭から、現場と文部 省の関係、学校行事・授業の時間割の決定、今現在の実習校での中学生像、などを多少なり とも学ぶことができました。当然のことですが、教育実習で重要な位置を占める実習生によ る授業を通して、現在の中学生がどんな教科書を使い、どのようなカリキュラムで学習を進 めていくのかということも勉強になりました。私に教わる生徒がその分野だけ分からなかっ たということがないように、そして、担当教諭に迷惑がかからないように、授業をするにあ たって該当する個所だけではなく、その授業の前後の流れがどうなっているのかについても 調べ、授業に生かすことができました。このような経験から、これからの生徒の学習内容、 つまり、2002年から実施される学習指導要領についての興味が高まってきました。そん なときに、卒業研究の内容は田口先生から教育関係のことでも良いとの言葉をいただけたの で、2002年4月から実施される新教育課程を研究することにしました。 2 戦後から現在までの学習指導要領の変遷 そもそも、指導要領とは、戦後の民主化の中で1947年(昭和22年)に教師のための 手引き(試案)として発行されました。それからは、ほぼ10年ごとに、その時々の社会情 勢を反映させながら、改訂されてきました。今回の学習指導要領をよりよく理解するために も、どのように学習指導要領が変わってきたのか、最初の学習指導要領から順に特徴を調べ てみました。 2−1 最初の学習指導要領 1947(昭和22) 実施:小中1947.4 高1948.4 アメリカのコース・オブ・スタディを手本とし、経験主義、児童中心主義にたつものでし た。「一般編」と「教科編」があり、いずれも「試案」と付されて文部省から発行されまし た。特徴としては、以下の4点があります。 ①小・中学校では「修身」「歴史」「地理」を廃止し、「社会科」を新設した。 ②小・中学校に、児童・生徒が自発的な活動を行う「自由研究」を新設した。 ③小学校に、男女共修の「家庭科」を新設した。 ④中学校に「職業科」を設置した。 また、高校は、選択教科制、大教科制、単位制が原則とされた。 2−2 第1次改訂 1951(昭和26) 実施:小中高1951.7 1947年板に引き続き、教師用の手引きとされ、基本的な性格は変わっていません。た だし、従来の「教科課程」が「教育課程」と改称されて、教科以外の活動を含めたより広い 概念で教育活動をとらえるようになりました。改正の特徴は以下の3点があります。 ①小・中学校において「自由研究」がそれぞれ「教科外活動」と「特別教育活動」に変更 された。 ②小学校の各教科の時間配当が4領域(国語・算数、社会・理科、音楽・図画工作、体 育)に分割され、パーセンテージで示された。 ③中学校で日本歴史が復活、「体育」が「保健体育」に、「職業科」が「職業・家庭科」 に変更された。 2−3 高校第2次改訂 1955(昭和30) 実施:1956.4 高校の「一般編」と「教科編」が改訂されて、必修教科・科目が増え、コース制が採用さ れました。これにより、生徒は進級するにつれて自らの進路・特性に応じた選択必修が可能 になりました。また、1955年に「小学校学習指導要領社会科編」が、翌56年には「中 学校学習指導要領社会科編」が改訂発行されましが、小規模な改訂でした。この改訂により、 小・中・高校とも「試案」の文字が消えました。 2−4 小・中学校第2次改訂1958(昭和33)実施:小1961.4 高校第3次改訂 1960(昭和35) 中62.4 実施:63.4 形式・内容ともに大きく変化しました。基礎学力の充実、科学技術の向上、道徳教育の徹 底など義務教育段階の教育課程の抜本的な見直しがなされて、従来の経験主義から知識の系 統性を重視する系統主義へと移行していった。また、文部省著作・発行から官報への「告示」 という形式がとられ、教育課程の国家的基準となりました。改訂の主な特徴としては以下の 6点があります。 ①小・中学校で「道徳」の時間が特設された。 ②小学校では基礎学力の充実を図るため、国語・算数の時間数を増加した。 ③中学校で科学技術向上のため「職業・家庭科」が「技術・家庭科」となる。 ④中学校で社会科が「地理」「歴史」「政治経済」の3分野となった。 ⑤高校で「倫理社会」が新設され、必修とされた。 ⑥高校で、数学、理科、職業など科学技術の充実が強調された。 2−5 小・中学校第3次改訂 1968、69(昭和43、44) 実施:小1971.4 高校第4次改訂 1970(昭和45) 中1972.4 実施:1973.4 児童・生徒の個性、特性、能力に応じた指導、教育内容の系統性が重視されて全体として、 教育水準のレベルアップが図られました。改訂の特徴は以下の6点があります。 ①小・中学校の教育課程は「各教科」「道徳」「特別活動」の3領域、高校は「各教科に 含まれる科目」「各教科以外の教育活動」の2領域とした。 ②授業時数は従前の最低時数でなく標準時数とした。 ③小・中学校で算数(数学)、理科の教育内容の現代化が図られた。 ④小・中学校で、義務教育9年間の一貫性と高校教育との関連、基本的事項の精選などが 重視された。 ⑤高校で「数学一般」「基礎理科」「初等英語」「英会話」を新設した。 ⑥高校で「クラブ活動」が必修として新設されるとともに、「家庭一般」を女子の必修と した。 2−6 小・中学校第4次改訂 1977(昭和52) 実施:小1980.4 高校第5次改訂 1978(昭和53) 中1981.4 実施:1982.4 この時期あたりからいわゆる「落ちこぼれ」や不登校(登校拒否)、非行などの問題が顕 在化してきました。こうした状況を背景に、この改訂では調和のとれた人間性豊かな児童・ 生徒の育成が目指されました。改訂の特徴は以下の4点があります。 ①小・中・高校で「ゆとりある、しかも充実した学校生活」を基調に、授業時数を約1割 削減し、指導内容も大幅に削減した。 ②小・中・高校で、学校の創意工夫を生かし「ゆとりの時間」(学校裁量時間)を設け、 その活用を重視した。 ③高校の第1学年に総合的な内容の基礎教科目「現代社会」「数学Ⅰ」などを必修として 新設した。 ④高校の「各教科以外の教育活動」が「特別活動」と改称された。 2−7 小・中学校第5次改訂 1989(平成元年) 実施:小1992.4 高校第6次改訂 1989(平成元年) 中1993.4 実施:1994.4 社会の変化に対応できる人間の育成を目指して、小・中学校での授業時間数の弾力的運用、 中・高校での選択履修幅・科目数の拡大を図りました。その他改訂の特徴は以下の6点があ ります。 ①小学校低学年で社会科と理科を廃止して「生活科」を新設した。 ②小・中学校で、道徳教育の内容の重点化と道徳実践の指導の教科を図った。 ③中学校で、選択教科の履修幅を拡大し、習熟度別編成を導入した。 ④高校で「社会科」を解体し、「地理歴史科」「公民科」に再編成した。 ⑤高校の「家庭科」を男女必修とした。 ⑥入学式・卒業式などの行事で国旗・国家の取り扱いを明確にした。 2−8 小・中学校第6次改訂 1998(平成10) 実施:小中2002.4 高校第7次改訂 1999(平成11) 実施:高2002.4 2002年度から実施される完全学校週5日制の下で、各学校がゆとりのある教育活動を 展開して、子どもたちに「生きる力」をはぐくむべく、以下の4項目を基本的視点として上 げています。 ①豊かな人間性や社会性、国際社会に生きる日本人としての自覚の育成を重視する。 ②多くの知識を一方的に教え込む教育を転換し、子どもたちが自ら学び自ら考える力を育 成する。 ③ゆとりある教育活動を展開する中で、基礎・基本の確実な定着を図り、個性を生かす教 育を充実する。 ④各学校が、創意工夫を生かし特色ある教育、特色ある学校づくりを進める。 ①から④を達成するために、教育内容の厳選、各学校段階ごとの役割の徹底、授業時数の 大幅な削減(年間70単位時間)、学校による教育課程の自主編成、「総合的な学習の時間」 の創設、学習時間の弾力化、選択教科制の充実などを明確にしています。 3 中学理科の学習指導要領の歴史的変遷 2の「戦後から現在までの学習指導要領の変遷」では、小中高のすべての教科について、 書きました。この章では、私が教育実習で体験した中学の理科がどのようにして今の形とな ったのか、10年ごとに区切って調べてみました。 3−1 昭和20年代の中学校理科 昭和22年の中学校理科は、総司令部、民間情報教育局(CIE)の強力な指導的助言の もとに作成されました。ここに盛られているのは、アメリカにおけるプラグマティズムの思 想です。この教育思潮は、アメリカのJ・デューイによって提唱されたものです。彼は、人 間が社会や自然界にはたらきかけることによって、自己を形成しているとし、その課程を助 長する機能として教育をとらえていました。彼の教育理念は、直接経験を重視し、直接経験 は思考を促し、未来への洞察力を育成するというのである。このような彼の教育理念は、理 科教育における観察・実験の重視、演繹よりは機能の重視など、実践的、探求的な学習の理 論家にも適用されました。この考えから、学習指導要領理科編は、生徒の生活環境の中から 課題を見つけ、その課題を解決していく課程での中で学習を成立させるようになっています。 また、小学校と中学校が一つにまとめられていて、第1学年から第9学年の理科があり、中 学校理科は第7学年から第9学年です。中学校理科の単元名を以下に書きました。 第7学年(中学校第1学年) ・空気はどんなはたらきをするか。 ・水はどのように大切か。 ・火はどのように使ったらよいか。 ・何をどれだけ食べたらよいか。 ・植物はどのように生きているか。 ・動物は人の生活にどんなに役に立っているか。 第8学年(中学校第2学年) ・着物は何から作るか。 ・からだはどのように働いているか。 ・海をどのように利用しているか。 ・土はどのようにしてできたか。 ・地下の資源をどのように利用しているか。 ・家はどのようにしてできるか。 第9学年(中学校3学年) ・機械を使うと仕事はどのようにはかどるか。 ・空の星と私たち。 ・生活はどのように改めたらよいか。 ・電気はどのように役立っているか。 ・交通通信機関はどれだけ生活を豊かにしているか。 ・人と微生物のたたかい。 昭和22年板の学習指導要領は、終戦後の混乱の中で1年あまりのみの検討で作成された ので、単元全体として統一性に欠けるという批判がありました。これをふまえて昭和26年 に改訂が行われました。そして、学年毎に統一テーマが示されて、第1学年「自然のすがた」、 第1学年「日常の生活」、第3学年「科学の恩恵」として、内容の整理統合が行われました。 第1学年 「自然のすがた」 ・季節や天気はどのように変化するか。また、これらの変化は人生にどのように影響するか。 ・地球の表面はどのような形をしているか。また、それは人生にどのような影響を与えるか。 ・水は自然界のどんなところにあるか。また、水は生活にどのようなつながりをもっている か。 ・生物はどこで、どのように生育するか。 ・地下はどのようになっているか。また、そこからどのような資源がえられるか。 第2学年 「日常の科学」 ・われわれは自然界のどこから食物をえているか。またそれをどのように使っているか。 ・われわれが健康を保ち進めるためには、どのような飲食物や衣服を必要とするか。 ・家を健康によく安全で便利なものにするにはどうしたらよいか。 ・熱や光は近代生活にどのように利用されているか。 ・電気は家庭や社会でどのように使われているか。 ・機械や道具を使うと仕事はどのようにはかどるか。 第3学年 ・科学の研究は生物の改良にどのように役立つか。 ・天然資源を開発利用し、さらにこれから新しい物質をつくり出すのに科学はどのように役 立っているか。 ・科学によって見える世界はどのように広がったか。 ・交通に科学がどのように応用されているか。 ・科学は人生にどのような貢献をしているか。 このように、昭和20年代は生徒も身近な事象や経験を中心に学習が展開されるので主体 的、自主的に学習が行われていました。また、具体的な事象が入り、順次抽象化を行い、機 能的に原理・法則を導くという学習が行われていました。しかし、学習対象を身近な事象に 限定したため、恒星、銀河系などの天文や、分子・原子といった極小の世界は取り上げられ ませんでした。また、日常性は科学技術だけではなく、技術、芸術、経済性などの問題が深 くかかわってくるという問題点があった。その例として、衣服に関する単元で、織り方、染 色、保湿などを扱っていたことがあります。このようなことから、活発な学習活動が展開さ れていたにもかかわらず、理科としての知識体系の構築ができないという批判がなされまし た。当然、26年の改訂のときに指摘されましたが、民間情報教育局の指導下にあったので、 根本的な改訂はされなかったようです。 昭和20年代の学習指導要領の特徴としては、身のまわりにある事象と取り上げるので、 生徒が自主的に、主体的に探究的活動を行い、その過程を通じて機能的に原理・法則を見い だしていました。しかし、知的体系の確立には大きな問題があったようです。 3−2 昭和30年代の中学校理科 昭和27年4月の独立の回復から、産業界は産業のレベル、生産性の向上から、科学技術 の振興を打ち出しました。このことから、大学における工学部、理学部の強化充実がなされ ました。これが、初等・中等教育にも影響を与えました。また、産業界が教育界に要望した ことは、基礎学力の充実と科学技術の振興のもとになる科学的な知識・理解や技術的な能力 でした。産業界からの要請を受けて、理科は、内容を基礎的なものに精選し、観察・実験の 指導に重点をおいて、科学的な能力や態度の育成が図られました。内容は、物理と化学を主 とする第1分野と、生物と地学を主とする第2分野に分けて、小学校と高等学校の間にある 中学校としての系統かを図るように構成されました。なお、試案とされていた文字が消えて、 告示の形式がとられて、公教育の基準性が強められました。中学校理科での単元名を以下に あげました。 第1学年 ・第1分野 水と空気(固体・液体・気体、化合物・単体、元素・原子)、燃焼 ・第2分野 生物のつながり、生物の種類、細胞、地表の変化、鉱石・鉱物 第2学年 ・第1分野 酸・アルカリ・塩、力と仕事、音、電気と電流の熱作用・化学作用 ・第2分野 気象現象と日本の天気、植物の器官・組織、 人体の主な機関の構造とはたらき 第3学年 ・第1分野 光、気体の性質、沈殿、酸化、還元、電流と磁界、落下運動、力と運動、 エネルギー、電波、原子 ・第2分野 生物のふえ方、遺伝、地質時代、進化、生物の系統、地球の構造、太陽系、 恒星、生物の利用と保護、天然資源、エネルギー、 基礎学力の重視と系統性の重視を強調したこの教育課程は、自然科学の内容を反映したも のとなり、大学などにおいて、物理学や化学など自然科学を学んできている教師にとっては 教えやすいものとなったようです。世の中が安定するとともに、高等学校進学率が急上昇し、 昭和25年では43%であったものが、昭和40年には70%を越えました。このため、高 等学校の入試が中学校教育に大きな影響を与えるようになりました。つまり、高校入試対策 のために、知識が偏重となり、基礎的な内容に精選されたとはいいながら、内容の多さが指 摘されるようになってきました。また、昭和30年代の後半になると、世界的にも科学技術 は発展しました。この膨大な科学技術の成果を中学校理科がどのように対応するかという問 題も発生しました。 3−3 昭和40年代の中学校理科 昭和30年代からアメリカでは、中等教育の理科の内容が、急速に発展してきた自然科学 の成果が反映されていないこと、生徒の興味・関心とのずれ、大学進学者の物理・科学履修 者の減少なとが指摘されて、改革の気運が高まりました。これが、日本でも大きく取り上げ られ、アメリカのカリキュラムを研究しました。昭和40年代の初めには、アメリカで起こ った現代化運動一色となりました。 昭和40年代の指導要領では、分野制が強化され、各分野ごとに分野の目標が示され、そ れぞれの分野の内容が示された。このような構成は、中学校段階で各学年毎に生徒の発達に 即して書き分けることが困難なことと、指導法の進展などで他学年に移行したいときに、妨 げとなることからつくられました。各分野を独立することで、各学年で扱う内容の自由度が 増し、学習事項の学年の指定は標準として示されました。学習内容は、両分野とも基本的な 概念として、エネルギーが中核となって、質量、時間、空間、生命などが取り上げられ、第 1分野では「長さ、体積、重さなどは、それらの量を基準の量と比較した数値と単位で表さ れること」、第2分野では「生物は観点の決め方によって、いろいろに分類ができること」 などが掲げられた。単元名を以下に挙げました。 第1分野 ・物質の特性(物質の量、密度、融点と沸点、溶解性) ・気体の識別と物質の分離(気体の識別、物質の分離) ・力とエネルギー(力、力のつりあい、圧力、仕事とエネルギー、熱とエネルギー) ・光とレンズ(光のエネルギー、凸レンズ) ・物質の三態(物質の粒子モデル、気体の圧力と粒子の運動、熱と粒子の運動) ・物質と原子(化合物と元素、化学変化の量的関係、電流と電子、電気エネルギー) ・物質と電気(イオン、イオンの反応、物質の構造) ・電流と磁界(磁界、電磁誘導) ・運動とエネルギー(運動の表し方、等加速度直線運動、力と運動、 エネルギーの姿の移り変わり) 第2分野 ・自然とその中の生物(生物の生活環境としての地球、地表のおける変化と生物の生活) ・生物の種類と生活(生物の種類とその生活、生物と細胞、生物の分類と系統) ・地球を取り巻く宇宙(地球・月および太陽の形状と距離、太陽と地球の運動 太陽系と太陽系外の宇宙、太陽放射と地球) ・生活活動のエネルギーと光合成(生活活動のエネルギー、光合成と物質交代 植物体内の物質の移動) ・動物の物質交代(血液とその循環、消化器のつくりとはたらき 呼吸器と排出器のつくりとはたらき) ・大気とその中の水の循環(地表における水の循環と太陽放射のエネルギー、蒸発と凝結 雲と降水、大気の動きと気圧、天気と気象要素のと関係) ・流水のはたらきと地層(流水のはたらきと地表の変化、地層のつくりと堆積岩) ・生物の反応(刺激に対する反応、動物の運動と行動) ・生物と環境(生物と環境との関連、生物相互の関連) ・地かくの変化と地表の歴史(火山活動とマグマの性質、マグマの活動と火成岩の特徴 地震、地かくの変動と地表の歴史) ・自然界のつりあいとその保護(自然界のつりあい、自然の利用と保護) 昭和40年代は、系統重視の理科から、基本的な概念を中核とした構造化された知識体系 重視への移行、科学の方法の習得や探究の過程の重視という大きな変革が日本全国に及んで 円滑に行われたようです。探究の重視は、一時であるが中学校理科の教科書から、結果や答 に当たる記述が少なくなるなど多くの点で変革がなされた。しかし、探究を重視するには、 授業時間数に対して内容が多いので、いっそうの精選が望まれました。この頃、小学校では 理科に興味・意欲をもつ児童が30∼40%いるのに、中学校では10%台に落ち込むとい う統計が出ました。このことから、中学生の理科離れの原因は、抽象的なエネルギーなどの 概念が先行し過ぎなかったか、科学の方法の修得が生徒の必要感をもたないのに指導されて いないかなど、様々な議論が行われるようになりました。 3−4 昭和50年代の中学校理科 昭和50年代になる頃には、中学生、高等学校生の登校拒否、暴力行為など生徒指導にか かわることに世の関心が移っていったように思われる。我が国の産業も発達し、科学技術の 振興を声に大にして叫ぶことがなくなってしまった。そのため、教育界では、30年代、4 0年代の振興論は影が薄くなってしまった。このような状況のもとに、昭和52年版の中学 校理科は、それまで各学年4単位時間であったものが、第1学年、第2学年はともに3単位 時間となり、中学校全体では、それまで12単位時間あったものが10単位時間に縮小され た。このため、約20%以上の内容が削除され、基本的な概念が先行しすぎているというこ とから、エネルギーの考え方を除いて形成するようにした。単元名を以下にあげました。 第1分野 ・物質と反応(物質の様子、加熱と燃焼、加熱と分解・化合、気体を発生する化学変化) ・力(力のはたらき、力のつりあい、圧力) ・物質と原子(純物質と混合物、化学変化、原子と分子) ・電流(電流と電圧、電流による発熱、電流と電子) ・物質とイオン(水溶液、イオン、酸・アルカリ・塩、化学反応と熱) ・運動とエネルギー(運動、仕事、光・熱と仕事、電流と仕事、エネルギー) 第2分野 ・生物の種類と生活(自然と生物、植物の種類とつくり、動物の種類とつくり) ・地球と宇宙(地球の運動、太陽系の構成、恒星と宇宙) ・生物の体の仕組み(生物と細胞、多細胞生物の仕組み) ・天気の変化(大気中の水、大気圧と風のふき方、天気の変化) ・生物どうしのつながり(生物界における生産と消費、生物界における分解者、 生物界のつながり) ・地がくとその変動(地層の様子と堆積岩、火山の様子と火成岩、地震とその揺れ、 地かくの変動) ・人間と自然(人間の生存を支える物質とエネルギー、自然界のつりあいと環境保全) 探究重視の路線はそのまま引き継がれた中学校理科ではあったが、中学校3年間で2単位 時間の減少は、現場の理科教育を観察や実験の重視から再び知識偏重理科への道をたどる傾 向が現れてきた。高校進学率は全国平均で94%になり、大学進学率も37%を越えるよう になった。これらの上級学校への進学は、少しでも有名校を目指す傾向があり、学校の評価 は、○○教育賞をとるよりは、有名校に何名進学させたかということが重きをおかれる風潮 さえ生じていた。また、ある調査によると、中学生の科学観テスト(自然科とは何か、観察 や実験をどのようにとらえているか)は低下し、現代化の気運の芽生えた時代と等しいもの になってきているようである。 3−5 1990年代の中学理科 先進工業国として、科学技術の進展に即応した知的・文化的生産能力の高い個性的・創造 的な人間が求められ、国際化の進展にともなって先進諸国の一員として国際的な責任が果た せる人材の育成があげられていた。このようなことから、知識伝達型に偏りがちであった授 業から、観察・実験を一層重視、観察・実験を通して、自然を探究する能力や態度の育成、 日常生活との関わりなどに配慮した指導要領となった。以下に単元名をあげました。 第1分野 ・身のまわりの物質とその変化(水溶液、物質・状態変化、気体の発生) ・身のまわりの物理現象(光と音、熱と温度、力、圧力) ・化学変化と原子分子(化学変化、原子分子) ・電流(電流・電圧、電流、電子) ・化学変化とイオン(電気分解とイオン、酸・アルカリ・塩) ・運動とエネルギー(力のはたらき、物体の運動、仕事とエネルギー、化学気技術進歩) 第2分野 ・植物の生活と種類(植物の生活と種類、植物の仲間) ・地球・太陽系(身近な天体、惑星と太陽系) ・動物の生活と種類(動物の生活とつくり、動物の仲間) ・天気とその変化(天気の変化、日本の天気) ・生物のつながり(生物と細胞、生物のふえ方と遺伝、生物界のつながり) ・大地の変化と地球(火山と地震、地層と過去の様子、地球と人間) 1993年の改訂では、2002年から導入される完全週5日制に向けて、月2回の週5 日制ということで、理科の授業自体も中学全体で10単位時間から9単位時間に削減されま した。また、内容的には約3割減の精選・集約となっています。 1990年代に関しては、本に書いてあることよりも、自分の体験の方を重視したいので、 教育実習に行った経験を生かして、1993年から実施された、指導要領の問題点を自分な りに考えてみました。 93年度実施の指導要領での観察・実験を一層重視ということで、私のとき(1980年 実施の指導要領)に比べるとはるかに実験が多くなっていました。我々物理科の学生でさえ 週に1回の実験を何とかこなしているような状況なのに、我々より、授業数も多く、部活動 もあり、大半の生徒が塾に行っている現状では、実際に何の実験をどのような目的で行って いるのか理解するのが非常に難しくなっています。ですから、内容は厳選されていようと、 実験が多くなっているので、逆に生徒の負担が増えているように感じました。実際に、塾で、 生徒に実験の考察を質問されたことがあります。だからといって、私の時代のときの方が良 かったと言っているわけではありません。問題は、文部省と現場での生徒観の違いにあるの ではないでしょうか。学級崩壊などが問題になっている現状では、小学校できちんと実験に 対する考え方を教わっていない場合、中学校で実験でのデータから考えることを学ばせなけ ればならず、時間的に無理があるようです。特に、小学校時代で学級崩壊を経験している生 徒を見ると、その一年間で学ぶことがぬけていて、さらに、授業を受けていないわけですか ら、かなり深刻な学力低下が起きているように感じられます。 4 今回の改訂の基本的なねらい 平成10年7月の教育課程審査審議会答申を受けて、完全学校週5日制の下で、 「ゆとり」 の中で「特色ある教育」を展開し、幼児児童生徒に自ら学び自ら考える「生きる力」を育成。 特に次の点を重視。 4−1 豊かな人間性や社会性、国際社会に生きる日本人としての自覚を育成すること。 ・幼稚園や小学校低学年では、基本的な生活習慣や善悪の判断などの指導を徹底。また、ボ ランティア活動の重視。 ・小学校では人物・文化遺産中心の歴史学習の徹底、中学校では歴史の大きな流れをつかむ ことを重視する歴史学習に改善。我が国の国土や歴史に対する理解と愛情、国際協調の精神 など国際社会に生きる日本人としての資質を育成。 ・中学校外国語科の必修化と聞く話す教育の重視など 4−2 自ら学び、自ら考える力を育成すること。 ・各教科及び「総合的な学習の時間」で体験的な学習、問題解決的な学習の充実。 ・各教科等で知的好奇心や探求心、論理的な思考力や表現力の育成を重視。 ・コンピュータ等の情報手段の活用を一層推進。中学校技術・家庭科で情報に関する内容 を必修化など。 4−3 ゆとりある教育活動を展開する中で、基礎、基本の確実な定着を図り、個性を生か す教育を充実すること。 ・年間授業時数は、現行より週あたり2単位時間削除。 ・教育内容を授業時数の縮減以上に厳選し、ゆとりの中で基礎的・基本的な内容をくり返 し学習し、その確実な定着を図る。 ・中学校における選択学習の幅を一層拡大など。 4−4 各学校が創意工夫を生かし特色ある教育、特色ある学校づくりを進めること。 ・「総合的な学習の時間」を創設し、各学校が創意工夫を生かした教育活動を展開。 ・各学校が創意工夫を生かした時間割編成ができるよう、授業の1単位時間や授業時数の 運用の弾力化。 ・教科の特質に応じ目標や内容を複数学年まとめるなどの基準の大綱化。 5 新教育課程での理科の特色と改訂のポイント 5−1理科の目標の改善 今回の中学校理科の目標は、次のような点を重視して改善された。 (1)身近な自然について目的意識をもって観察、実験を行い、科学的に調べ、問題を解 決する能力や態度を育てるとともに、科学的な見方や考え方を養う。 (2)自然体験や日常生活との関連を一層重視し、自然に対する総合的な見方ができるよ うにする。 5−2 内容の改善 (1)内容の再構成 観察、実験や野外観察を行い、科学的思考力や化学に関する基本的概念を形成し、分析的、 総合的なものの見方ができるようにするとともに問題解決能力を育成するよう内容を再構 成する。 現行の第1分野、第2分野の基本的枠組みは維持しながらも、内容の配列については、光 や音、動物や植物、大地などの直接体験、直接観察に基づく学習から、電流、原子・分子、 天体など規則性を見つけて考察する学習、さらには、科学技術と人間や自然と人間のとのか かわりを考察させ、分析的、総合的な見方を育てるようにする。 (2)内容の厳選 扱いが高度になりがちな内容や、学校間で重複の見られる内容、日常生活でも身につけら れる内容などについては、以下のように厳選された。 ア 削除した内容 ・溶質による水溶液の違い・天気図の作成・情報手段の発展 イ 高等学校へ移行した内容 ・力とばねの伸び・質量と重さの違い・水の加熱と質量・比熱・水圧・月の表面の様子 地球の表面の様子・惑星の表面の様子・花のさかない植物・交流と直流・真空放電 ・電力量・無セキツイ動物・日本の天気の特徴・電気分解とイオン・電池 ・中和反応の量的関係・力の合成と分解・浮力・仕事と仕事率・遺伝の規則性 ・生物の進化・大地の変化の一部 ウ 軽減 ・溶解度とろ過・・・溶解度を定量的に扱わず、ろ過の仕方を削除 ・自由落下運動・・・斜面の運動は扱うが自由落下運動は扱わない ・火成岩・・・火山岩と深成岩をそれぞれ1種類ずつ扱う エ 集約、統合、重点化 ・「葉のつくりとはたらき」と「茎や根のつくりとはたらき」を統合 オ 選択 ・科学技術と人間と自然と人間のいずれかを選択 (3)問題解決の能力の育成 ・ 目的意識をもって観察、実験を行うとともに課題解決のために研究したり、野外観察を行 う時間を設けることを重視する。 (4)自然に対する総合的な見方の重視 「科学技術と人間」と「自然と人間」において、自然に対する総合的な見方を育成する中 で、自然環境保全の重要性について認識させることを重視する。 (5)指導計画の作成と内容の取り扱い 「指導計画の作成と内容の取り扱い」の改善の主なものは次のようなものである。 ア 各学年ごとの履修項目を示さないようにしたこと。現行では「およその内容の(1) と(2)は第1学年で、(3)と(4)は第2学年で、(5)と(6)は第3学年で取 扱うことを標準とする」とされているが、今回の改訂では「3学年間を通しておよそ り 同程 度の時間数を配当すること、各学年において両分野を扱うこと」とされた。 イ 十分な観察、実験の時間、課題解決のために研究する時間などを設けることを配慮す るよう記述された。 ウ 情報通信ネットワークなどを積極的に活用することを配慮するよう記述された。 エ 選択理科において、「補充的な学習、発展的な学習」を扱うことが記述された。特に、 発展的なことが扱えるようになったことが、これまでと大きく異なる点である。 6 今回の改訂による問題点 3学年での年間授業時間80時間 小さな単元数16個 おおよそ1単元5∼6時間 「仕事とエネルギー」が「エネルギーの変換と保存」に改訂されて点について 「仕事と仕事率」の高校への移行 学習指導要領の内容 エネルギーに関する実験や体験を通して、エネルギーには運動エネルギー、位置エネルギ ー、電気、熱や光など様々なものがあることを知るとともに、エネルギーが相互に変換され ること及びエネルギーが保存されることを知ること。 内容の取り扱い これについては、エネルギーの変換に関して摩擦にも触れること。 現行の教科書では、エネルギーをもつということは、他の物体に仕事をすることができる 状態となっているが、仕事と仕事率を高校へ移行することによって、この説明の仕方ができ なくなる。また、仕事を教えないということは、仕事とエネルギーの関係を教えないことで もあり、ただでさえ生徒に理解させにくい分野である(実際に塾で教えていて)のに、現在よ り教えるのが難しくなるように思われる。 文部省の学習指導要領の解説によると、エネルギーについては、運動している物体が他の 物体に衝突する場合、衝突する速さが大きいほど変形させたり破壊する作用は大きいこと、 他の物体に作用して動かしたり、電流や熱、光、音などを出すことができるものは、その状 態においてエネルギーをもっていることを実験や観察などを通して理解させるとある。この ことからエネルギーとは他の物体に影響を与える能力と教えることになるだろう。また、物 体のもつエネルギーの量は物体が他の物体になしうる仕事で測られるのであるから、実験は 計測するのではなく、観察する程度になる。つまり、物理的に計測するのではなく、感覚的 に生徒に理解させる必要がある。今までは、実験での数字を示して考えさせてきたが、もっ と日常的な事柄から理解させねばならない。 授業の進め方の例としては、以下のようになると考えました。 1時間目 実験 質量の違う3種類以上の台車を用意して、斜面を転がしてくいのようなものにぶつけ、そ のくいの動いた距離と台車の質量・斜面の高さ(台車の速さ)について調べさせる。 2時間目 生徒の前で実験 前回の授業のまとめとして、他の物体に作用して動かすことができるものは、エネルギー をもっていることを確認する。そこで、ヤカンをわかして風車を回す、太鼓などの音でロウ ソクをゆらす、などを実演し熱や音などもエネルギーをもっていることを理解させ、他にも どんなものがエネルギーをもっているか、考えさせる。 3、4時間目 生徒の前で実験 1時間目での運動エネルギーについて説明し、ドライアイスの動きと、木片(転がらない ような)の動きを比べさせて、摩擦と、摩擦がなければ運動エネルギーが保存されることを 理解させる。その上で、振り子を用いて、摩擦がない状態では運動エネルギーと位置エネル ギーが保存されることを説明する。実際には、摩擦によって熱エネルギーに変換されること を付け加える。 上の授業の計画の問題点と改善点 1時間目の実験の結果が明らかすぎる。何のために実験をしているのか、生徒にとっては、 わかりにくい。新たな発見や面白味に欠ける実験なので、生徒の興味を引きつけにくい。1 時間目の実験が、何のためなのかわかりにくい以上、2時間目での他のエネルギーの説明に ついても生徒が理解をしようと思うのか疑わしい。そこで、個人的には、空手家がやってい る瓦割りのエネルギーがどのくらいであるかを調べる実験にすると面白いと思うのだが、一 部の男子しか興味を示さないと思うのと、運動の単元で、自由落下を避けているので実験し ても良いものかどうか悩みどころではある。また、瓦割りの実験では、瓦の値段(1枚50 0円程度で、各クラス30枚使うとすぐに100枚以上になってしまい、その処理も大変) も考えねばならない。板でもいいのですが、同じような実験をする以上、驚きが欲しいので、 あの割れる音は非常に魅力である。実際には、1時間目の実験は生徒の前で瓦を1枚割り、 板を用意して高さと位置エネルギーについて考えさせる。2時間目に速さと運動エネルギー の関係の実験を持ってくる。そうするとこの単元が、上の試案では4時間だったが、5時間 になるので都合がよい。2時間目の実験は、ボールを投げて、どのようなボールが物体を一 番動かすことができるのか考えさせる。 実際に塾(アルバイト)と学校(教育実習)で教えてみて、生徒は塾の方が真剣に聞いたり、 考えたりしている。これは、時間的に学校は8時間あるのに対して、塾では2時間しかない ことや、お金を払っていることや、行く義務はないのに行っていることの差である。だから、 興味や関心を引きつけるためにも、体を動かす実験や、派手な実験の方が、良いのではない かと考え、このような実験を提唱しました。 今回の改訂による問題点 1学年での年間授業時間105時間 小さな単元数17個 おおよそ1単元6∼7時間 大きな単元「化学変化とイオン」が小さな単元「酸・アルカリと中和」に改訂されて点につ いて 「電解質、イオン、ボルタ電池」の高校への移行 学習指導要領の内容 酸、アルカリを用いた実験を行い、酸、アルカリの性質を見いだすとともに、酸とアルカ リを混ぜると中和して塩が生成することを見いだすこと。 内容の取り扱い なし 現行の教科書では、電解質からイオンにふれ、電解質の電気分解を教える。その後に、イ オンと酸・アルカリの関係から、中和反応とは酸のH+とアルカリのOH−が反応して水H2 Oが生成され、同時に塩ができると説明されている。さらに、イオンの数に注目して、中和 反応と酸・アルカリの濃度・体積の関係を学習する。改訂によってイオンは扱わないので、 どのようにして中和が起こるのかというメカニズムから、酸とアルカリを混ぜると中和が起 きるという経験をさせることに学習のポイントが移っている。 授業の進め方としては以下のようになる考えました。 1時間目 実験 あらかじめ、塩酸、硝酸、硫酸、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、水酸 化バリウムなどを用意して置いて、それぞれ、リトマス紙、BTB溶液、フェノールフタレ イン溶液、ph試験紙、金属、髪の毛、がどのように反応するのか調べさせる。 2時間目 授業 前回の授業のまとめをし、酸、アルカリの性質を理解させる。また、授業の最後に酸とア ルカリを混ぜるとどうなるのかという問いかけをしておく。 3時間目 実験 一定量の水酸化ナトリウムに塩酸を加えていき、だんだん中性に近づいていく様子をph 試験紙を用いて調べさせる。また、中性になったときの溶液の一部をシャーレにとっておく。 時間が許せば、硝酸と水酸化カリウム水溶液の中和もしておき塩について次の授業でより深 く学ばせたい。 4、5時間目 授業 前回の授業でのシャーレをもってきて、中性のときの溶質を観察させる。酸とアルカリを 混ぜると、中和が起こることと、塩ができることを理解させる。 上の授業の計画の問題点と改善点 この分野の目標である、身のまわりの物質の利用などについて理解させ、科学的な見方や 考え方を養うという観点から考えると、1時間目の授業でいきなり、硝酸や水酸化○○○が 出てくるのは目標から遠ざかっている。そこで、1回目の授業では、食酢、炭酸、消石灰(水 酸化カルシウム)を扱ってみたい。しかし、この場合は中和の反応でできる塩としては適さ ないので、上の授業計画を無視した形で1時間目に導入として使うしかない。次の授業につ ながらないことを考えると、小学校で水溶液による金属の変化を学んできているはずなので、 目標を無視して、塩酸などを扱う。身近な物質については、こちらで適当な酸(実験で使え るくらい強いかどうか調べてからコーラ)とアルカリ(同様に洗剤)を用意してきて、生徒の 前で実演をする。具体的には、1回目の授業の前の授業の最後に、酸にはアルミニウム箔、 アルカリには髪の毛を入れて、1回目の授業でその様子を観察させて、身近にも酸とアルカ リがあることを理解させてから、実験ではより強い酸とアルカリを使っていくというように 導入する。このことから、アルカリである洗剤を使ったり、トイレ用の酸性洗剤を使うこと が環境によくないと気付かせることができる。4、5時間目の授業では、酸性雨による川の 酸性を石灰で薄めることができることと、初めから、酸性雨が起きないようにしていればそ んな無駄なことをしなくても済むことを教える。ただし、酸性雨になってもそれを改善でき るわけではないことを強調する。このようにすると、少しは、身のまわりの物質について学 習できると考えました。 今回の改訂による問題点 3学年での年間授業時間80時間 小さな単元数16個 おおよそ1単元5∼6時間 中ぐらいの単元「生物のふえ方と遺伝」が「生物のふえ方」に改訂されて点について 「遺伝の規則性」の高校への移行 学習指導要領の内容 身近な生物のふえ方を観察し、有性生殖と無性生殖の特徴を見いだすとともに、生物が増 えていくときに親の形質が子に伝わることを見いだすこと。 内容の取り扱い 有性生殖のしくみを減数分裂と関連づけて簡単に扱うこと。その際、遺伝の規則性は扱わ ないこと。無性生殖については、単細胞の分裂や挿し木、挿し芽を扱うにとどめること。 2分野の現行の教科書が手に入ってないので、遺伝の規則性を使って有性生殖と無性生殖 のちがいを説明しているのかどうか分からないので、自分ならこのように教えるということ で話を進めてく。単元的には「有性生殖と無性生殖の特徴」「遺伝の規則性」と続いていき ますが、まずは、生徒が興味をもちやすい有性生殖の方から話を進める。次に、遺伝の規則 性(メンデルの法則)から、有性生殖では親と異なる(いろいろな)形質をもつ子ができること を説明する。その際に、血液型の話もできたら加えたい。最後に、有があるなら無もあるの ではということで、無性生殖とその特徴を説明する。現行では、このように教えられるのに 対し、遺伝の規則性が削除されると、有性生殖の特徴である子は親とは異なる形質をもつ、 さらには、兄弟でも形質が異なることを説明がしにくくなるのではないかと予想される。 授業の進め方としては以下のようになるのではないかと考えました。 1時間目 観賞 カエルの生殖をビデオで紹介する。 2、3時間目 授業 前回の授業での内容をまとめ、有性生殖について、減数分裂を中心に、子は親と異なる遺 伝子(染色体)をもつことを説明する。 4、5時間目 授業 挿し木を例にして、無性生殖では親のからだの一部が子の身体になることから、前単元の 細胞分裂の観察から、有性生殖とは違い、親と同じ遺伝子をもつことを説明する。 上の授業計画の問題点と改善点 やはり、教科書的に考えるとカエルの生殖が妥当なのだろうが、実験がないことを考える と、この単元の印象が薄まるので、できれば、人間の生殖の映像で話を進めていきたい。実 際問題、ビデオ鑑賞は興味のない生徒は授業よりももっと聞いてない(寝てしまう)ので、ど うせなら、盛り上がるであろう人間の話で進めていきたい。また、性に関することを学校の 先生には聞きにくいと思うので(教育実習では多少聞かれましたが)、そんな状況も、このよ うな機会で少しずつ改善していきたい。上の試案の2、3時間目の説明であるが、親と異な る遺伝子をもつことを説明するのは可能だと思う。単元の目標にある「生命を尊重する態度 を育て」という点については、やはり、メンデルの法則から、兄弟の形質が異なること。つ まり、1人として同じ人間は存在しないということを教えたい。この点に関しては、学習指 導要領を逸脱すると何かと問題が発生するので、他の理科の先生と相談して決めたい。メン デルの法則なしで進めるならば、1回目の授業であつかった人間の生殖から、生徒が生まれ てきた確率を話して、とんでもない確率の上での命だということを説明する。 今回の改訂による問題点 1学年での年間授業時間105時間 小さな単元数17個 おおよそ1単元6∼7時間 3つの単元「力の大きさとばねの伸び」、「力の表し方、質量と重さ」、「空間を隔てては たらく力」が1つの単元「力のつり合い」に改訂されて点について 「ばね、質量、重さ、」の高校への移行 学習指導要領の内容 物体に力をはたらかせる実験を行い、物体に力がはたらくとその物体が変形したり動き始 めたり、運動の様子が変わったりすることを見いだすとともに、物体にはたらく2力につい ての実験を行い、力がつり合うときの条件を見いだすこと。 内容の取り扱い 力の合成と分解は扱わないこと。また、力の単位として「ニュートン」を用いること。 現行での流れ ばねに加える力(おもりの重さ)とばねののびの関係から力の大きさをばねののびで表す ことができることを教える。また、このときの力の大きさの単位は「g重」である。次に、 力には、大きさ、向き、作用点があることから力の表し方(ベクトル)を教える。そして、接 触しないでもはたらく力(重力)があることと、質量と重さの違いを教える。 改定後の流れ 大きな変更としては、「フックの法則」を教えないので、ばねばかりは、力を測ることが できる器具であるとして紹介してしまうこと。また、力の大きさを表す単位は「ニュートン」 であり、100gの物体をつるすと約1ニュートンになることを示す。以上の2点が教える うえで、大きく変わる点であるように思われる。 また、重さと質量の違いを扱わないことから、単位が「g重」から「ニュートン」に変わ ったのかもしれないが、教える側からすると、「g重」の方が生徒は理解しやすいので大変 である。 授業の進め方としては以下のようになるのではないかと考えました。 1時間目 実験 ばねばかりが、力の大きさを測定する器具であることを説明。斜面の角度を変えると台車 にかかる力が変わることを理解させる。そして、台車にかかる力の大きさと台車の加速度(静 止していた台車の動き出し方の違い)について実験する。また、ゴムなどを用いて、力の大 きさと物体の変形の程度についても実験を行う。 2時間目 授業 前回の実験での内容をまとめ、力の3つの要素を教えて、力を矢印で表すことを理解させ る。 3時間目 実験 台車と重りをひもでつなぎ、重りを床に置き、台車を机の上で走らせる実験をする。この ことから、動いている物体に力がはたらくとどうなるか観察させる。また、ばねばかりの先 におもりをつけて、円運動をさせるとばねばかりの値はどうなるか、予想させてから、実験 を行う。 4時間目 授業 前回の実験での内容をまとめ、動いている物体に力がはたくとどうなるか理解させる。 5時間目 実験 物体に2つの力を加えても、物体が静止しているにはどんな条件が必要か、実験器具を使 わせて考えさせる。 6時間目 授業 前回の実験をまとめ、2つの力がつり合う条件を理解させる。 上の授業計画の問題点と改善点 1時間目の実験は簡単すぎるので、導入としては良くない。これほど、見え見えだと実験 をする意味がない。もっと、あっと驚くような実験をしたいが、力の大きさと物体の運動に ついて良い実験が思いつかないので、1時間目の実験はしない。ただ、ばねばかりは紹介し ておきたいので、生徒にばねばかりを引っ張らせて、力を加えるほど値が大きくなることだ けは、理解させておく。また、ばねばかりを紹介する際に、「ニュートン」を教えることに なるが、ここで生徒に質問された場合、質問から逃げることになると思う。 3時間目の実験に関しても円運動の方だけにする。このときに、1時間目の実験をしなか った場合は、その時間を使って、バケツに水を入れて回転させても水が落ちないことを理解 させたい。この説明をするときに、重力の話が入るので、指導要領からは逸脱してしまうが、 「日常生活と関連づけて科学的に見る見方や考え方を養う」という大きな単元の内容にあっ ているので、個人的には許されると思いますが、実際には、他の先生方に相談します。 やはり、この単元で一番痛いのは、力の単位が「g重」から「ニュートン」に変わったこ とです。確かに、質量と重さの違いを扱わないのであるから「g重」ではなく「ニュートン」 を用いるというのはわかるのですが、どっちにしろ、単位を用いるのであるならば、より身 近な単位を用いたほうが良いと思います。また、「ニュートン」という単位の説明はしない わけですし、質量と重さの違いを教えなくても「g重」の単位の説明はできるのですから、 単位を理解するという意味でも「g重」の方が適しています。細かいことですが、単位を変 えると言うことは、ばねばかりの買い換え、もしくは、ばねばかりの目盛りに上に新しい目 盛りのシールを貼ることになるので、その意味でも、余計な出費になります。 今回の改訂による問題点 1学年での年間授業時間105時間 小さな単元数17個 おおよそ1単元6∼7時間 2つの単元「圧力と力のはたらく面積」、「水圧と大気圧」が1つの単元「圧力と大気圧」 に改訂されて点について 「水圧、浮力」の高校への移行 指導要領の内容 圧力についての実験を行い、圧力は力の大きさと面積に関係があることを見いだすととも に、空気に重さがあることを調べる実験を行い、その結果を大気圧と関連づけてとらえるこ と。 内容の取り扱い 水圧は扱わないこと この単元については、中学校で、合力と分力を扱わないことから、浮力を扱わなくなり、 その関係で、水圧を扱わなくなったようである。 この単元での問題点 力の単位を「g重」から「ニュートン」に変えたことに関連して、圧力の単位をどうする のか気になるが、文部省の解説によると、スポンジなどのへこみ方は接触面積と関係がある という考え方を見いださせ、圧力は単位面積あたりの力の大きさで表されることを理解させ る、とある。だから、圧力の単位は「g重/cm2」から「Pa」に変更されるようである。 その後で、空気の重さがあることを確かめる実験をし、また、空気圧で缶をつぶす実験など から大気圧を理解させる。 前節では力の単位「ニュートン」を否定しましたが、圧力から気圧に進む段階を考えると 「g重」で教えるよりも、「ニュートン」で教えた方が筋が通っているように思われます。 しかし、「N/m2」を使わずに「Pa」を使うのであるから、すでに理解している人間に とっては筋が通っているように思われるのですが、どうも、これを学ぶ生徒にとっては、理 解しにくいように感じられます。 水圧を扱わなくなったことに関しては、浮力、合力、水圧がすべて高校に移行となってい るので、教える側としては何の問題もないようです。週5日制のための内容の厳選なのです から、これで良いのではないでしょうか。 今回の改訂による問題点 1学年での年間授業時間105時間 小さな単元数17個 おおよそ1単元6∼7時間 単元「大地の変動と地球内部のはたらき」が単元「磁針の伝わり方と地球内部のはたらき」 に改訂されて点について 指導要領の内容の取り扱い 地震の現象面を中心に取り扱い、初期微動継続時間と震源までの距離との関係も取り上げ るが、その公式は取り上げないこと。「地球内部の働き」については、プレートの動きに触 れる程度にとどめること。 この単元については大きな変更はなく、内容の取り扱いで触れている「初期微動継続時間 と震源までの距離との関係も取り上げるが、その公式は取り上げないこと」のところだけで ある。つまり、現在高校入試によく出題される初期微動継続時間の長さを公式に代入して震 源距離を算出することは取り上げなくて良いと言うことである。 今回の改訂による問題点 3学年での年間授業時間80時間 小さな単元数16個 おおよそ1単元5∼6時間 大きな単元「地球・太陽系」が大きな単元「地球と宇宙」に改訂された点について 「月・地球・惑星の表面、外惑星の視運動」の削減について 内容の厳選という点から考えると、月・地球・惑星の表面の削減は良いのではないでしょ うか。ただ、ここまで扱わないのであるならば、太陽の表面も扱わないほうが良いと考えま す。なぜなら、太陽の表面を扱う際に、どうしても、惑星の表面と比較して、恒星と惑星の 違いとともに関連づけて教えた方が、生徒の頭の中で知識が整理されて理解しやすくなるの ではないかと考えるからです。授業の進め方については、特にないのですが、理科の先生と しては、日食の起きるときは、学校中の生徒が全員授業を中断して、日食を観察して欲しい し、自分が先生になったときは、そうできるように行動しようと思っています。 もう一つの「外惑星の視運動」の削減についてですが、これに関しては、地動説・天動説 との関係で、どうしても教えたい内容です。化学の範囲でいえば、原子については、中学の 内容からはずせないように、地動説(さらに惑星の名前の由来)のもととなった「外惑星の視 運動」は天体の分野ではずことのできない内容だと考えています。ただし、このことを学ぶ のは、黒板ではつらいものがありますので、ビデオ等を使って、視覚的に生徒に納得させる ようにしたいと思います。ただ、少し難しいので、興味がないと寝てしまうので、興味を引 きつけるところに、教師としての力量が問われるので、導入に気を使いますが。 今回の改訂による問題点 今までとりあげてきた問題以外では、以下のようなものがあります。 ・溶質による水溶液の違い(現行では第1学年) この単元に関しては、ナトリウムなどの原子を知らない段階で、炎色反応を教えなければ いけない現状を考えると、この単元が無くなると、教えやすくなるのではないでしょうか。 ただ、新指導要領では、酸・アルカリ・塩が第1学年になったので、酸とアルカリを知るわ けですから、問題はないように思われます。 ・天気図の作成(第2学年) 新指導要領の目的でもある、日常生活と結びつきの深い理科にするということを考えると、 天気図を読みとることは必要であっても、インターネットなどの情報手段が発達した現在で は、天気図の作成は無用の長物であると考えられるので、これについても削除して問題はな いように思われます。 ・日本の天気の特徴(第2学年) 社会で教えているのであるから移行されたのでしょうか。私の考えとしては、義務教育の 役割の一つには、新聞を読んだり、ニュースを聞く基礎能力があると思います。ですから、 小笠原気団などの日本の天気に影響を及ぼすものや、梅雨前線などは、義務教育である中学 校で教えるべきであります。これらの、教えるべき内容は、せめて第3学年での選択理科の 授業で扱っていきたいものです。 ・水の加熱と質量、比熱(第1学年) 熱と温度という、非常にわかりにくい単元であるだけに、移行されるのはわかります。し かし、calという単位が、どんな単位であり、人間が生活していく上でどの程度必要なのか を知るためには教えておきたい単元でもあります。と思って調べたら、電流と熱・光という 単元でcalについてふれるようです。私の考えで授業をすると、きっと1時間使って、cal についていろいろ話をすると思いますが。余談ですが、塾で教えているときに、ポテトチッ プスなどのcalについて話をすると、すごく集中して聞いていました。 比熱に関しては、ほとんどの生徒が理解していない(通知表で5をとる生徒ぐらい)ことを 考えると、当然の処置であると思います。 ・花のさかない植物(第1学年) 理科を勉強していない人間は、花弁(花びら)がない花はないと思いがちです。しかし、本 来花とは、種子をつくるためのものであり、花弁をつくるためのものではありません。とい うようなことを学校の理科で理解していた生徒に塾であったことがないので当然かなとい った感じではあります。また、花弁のない花は見栄えもぱっとしないし、楽しくないので、 あえて義務教育で教える必要はないかと思っています。ついでに、進化も扱わないのですか ら、ソウ類から被子植物へのつながりがわからない以上、まとめて高校へ移行といったとこ ろでしょうか。 ・交流と直流(第2学年) これについても、乾電池とコンセントでは違うわけですから、義務教育として教えておく べき内容だと思います。しかし、現行では技術で教わっているようなので、新指導要領でも 技術で教わるのなら、問題はないのではないでしょうか。 ・真空放電(第2学年) 真空放電が無くなるということは、電子の存在をも教えなくなることであり、物理科の私 としてはこれで良いのか義務教育?などと思ってしまいますが、イオンが移行されるのと一 緒に、原子の構造にふれるということで、移行になったようです。ただ、電流とは電子の移 動によって起きていることがわかっても、現行では、このことを使って学習することがない ので、そう言った意味では当然かなとも思います。 ・電力量(第2学年) 電力あたりから、電位差が電圧だということを理解しにくい今の教え方では、生徒が理解 を示さなくなるので、電力も一緒に高校へ連れていって(移行して)欲しかった単元です。電 力量と水の加熱と質量が移行されたのにもかかわらず、電流と熱・光で、電熱線の発熱につ いての実験は残ってしまい非常に不愉快です。確かに、日常生活にとって、消費電力がどの ように発熱量と関係しているのかは重要だと思いますが、電流と熱・光の単元だけ残して、 電力量、熱量を省くのは納得がいかない。と、文句を言ってもしょうがない上に、水が電流 で、それを持ち上げる高さが電圧なんだよ、といった、ありきたりの方法で教えることしか 思いつかないので、この単元は終わりにします。 ・無セキツイ動物(第2学年) これも、花のさかない植物と同じように移行されたと思います。現行でも、あまり重要視 されていない(入試で)ので、塾の先生としては嬉しい限りです。学校の先生としては、男の 子の好きな昆虫を扱わないのはどうかなとも思うのですが、小学校である程度ふれるのです から、問題ないのではないでしょうか。 ・中和反応の量的関係(第3学年) イオンを扱わなくなった以上、当然のことと思います。 ・電池(第3学年)←化学電池、つまり、ボルタ電池のことです 上と同様に、イオンを扱わない以上、当然のことでしょう。 ・力の合成と分解(第3学年) 現行では、ベクトルを数学で習うのが高校2年なのに対して、中学3年で習っている方が おかしかったと思うので、よいのではないでしょうか。特に、3つのばねを使った実験を塾 で解説しているくらいですから(私はそうしているだけで、他の塾は知りません)、問題ない と思います。 ・浮力(第3学年) 合力・分力とともに、移行されましたので、当然だとは思います。 ・生物の進化(第3学年) 理系タイプの人は、結構好きな人が多いですが、女子はそれがどうしたのという生徒が大 半ですので、移行されて、ホッとする反面、面白いのになあと言った感じです。これも、選 択理科で取り扱い話です。もちろん、授業時間が余ったら、きっと話をすると思いますが。 7 まとめ 恥ずかしい話ですが、我々の学年は、ある先生に今までで一番できない学年だといわれた ことがあります(私が、そのできない代表になりますが・・・)。その我々の留年率を一つ下 の学年が更新したとかしないとか。こんな身近なところでも、学力の低下という現象は起き ているような気がします。そんな学力の低下をいわれているような私が、教育実習に行って、 ウワッと思ったのですから、今後の教育のあり方というのは、今まで以上に重要なのではな いでしょうか。 今回の改訂ですが、中学校の理科という観点から見ると、ますます学力が低下するのでは ないでしょうか。特に、今まで、日本人が強かった、知識、計算力が伸びないようなつくり になっています。では、今まで、日本人が弱いとされた、判断力、想像力、などがこの指導 要領で身に付くかというと、どうも、そうは思えません。特に、これからの教師は問題解決 学習(昭和20年代の指導要領、現在でも静岡県の安東小学校などで試験的に行われている。 生徒が自分たちで問題を解決していく=先生は何もしないように見える→先生が教えない のはけしからん、ということになったらしい)ではなく、系統学習(我々が受けてきた授業、 しかし、理解している生徒は自分で問題解決学習をしているらしい、ここらへんの話は難し い上に、教育実習で教職の授業にでられなくて、ますますもってわかっていません)で学習 してきたのに、いきなり、2002年から問題解決学習で授業をして下さい、といわれるよ うなものらしいのです。さらに、判断力、想像力をとる以上、知識力、計算力が劣るのはか まわないということでしょうか。理科ではないものの、円周率が、だいたい3と教えるのも いかがなものかと思います。特に、物理科に在籍している私としましては、今回の改訂で、 量を扱わなくなる分野が多すぎるのではないかということです。国語では、まるで山のよう に大きい人だと表現しますが、理科では、身長は2mで体重200kgと表現するのではな いでしょうか。つまり、科学とは、感情が入り込む余地がないものだと思います。そうであ る以上、いろいろなものを数値化して、比較していくべきなのではないでしょうか。だとす るならば、後は、そのような科学的な見方をいつ教えるかということでしょう。ここで、問 題は義務教育とは何かと、科学的な見方を養う年齢は何歳がベストかの2点になると思いま す。 まず、義務教育ですが、早い話、日本人として、これぐらいのことはできて欲しい、とい うことだと思います。だったら、もっと簡単でも良いような気もするのですが、高校や大学 を考えると、ある程度の基礎は教えておくべきでしょう。ですから、まだ、私の中では、こ こまでが義務教育で教えるべきだというのはなく、実際に塾で教えてみて、これは知っとけ よというのが何点かあるだけです。まだまだ、勉強中です。 次に、何歳がベストかということですが、これは、大脳や神経を研究している学者に聞く のが一番だと思います。ある本によると、14、5歳から論理的に考える力がつくそうなの で(当然個人差はあります)、中学3年からでしょうか。 以上の2点から考えると、高校から教えても問題はないが、できるならば、中学3年から、 本格的な科学のための基礎を学び出すのがよいのではないでしょうか。ですから、今回の改 訂で1、2年の内容が簡単になるのは賛成ですが(単元によってはさらに減らして欲しい)、 3年の範囲についてはもっと内容を濃くしたほうが良いのでないかと思います。 今までふれませんでしたが、新指導要領での時間配分を以下に記します。 国 1年 社 数 理 140 105 105 105 音 45 美 45 保 90 技家 英 70 105 道 特 35 35 選 総 合計 0 70 980 30 100 2年 3年 105 105 105 105 105 85 105 80 35 35 35 35 90 90 70 35 105 105 35 35 50 70 35 35 85 105 105 70 980 165 130 特=特別活動 選=選択教科 総=総合的な学習 980
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