電子回路基板用 縦型投影露光装置 - オーク製作所

電子回路基板用 縦型投影露光装置
∼電子回路基板の最先端デザインルールに対応する次世代標準露光機∼
(株)オーク製作所
1.はじめに
パソコン・携帯電話・デジタル家電機器に
利用されている電子回路基板は、多機能化
や軽薄短小化に対応する為、高精細化・高
密度化が進んでいる。その中でもパソコンの
心臓部であるMPU部・各種グラフィックコント
ロール部のパッケージ基板は、特に高精度
が要求されており、従来の露光装置では対
応が困難になってきている。
従来の露光装置は、フィルムマスクを用い
た一括コンタクト露光方式であり、基板自身
とフィルムマスクの伸縮の為にオーバーレイ
精度に限界がある。また高精細化にも限界
があり、次世代電子回路基板の生産に適用
するには難しい問題が顕在化していた。
そのような中、露光装置メーカ各社から分
割投影露光装置が提案されているが、未だ
量産工程において主力製品の生産に利用さ
れていないのが現実である。これはスルー
プット、解像性能、限定された変倍機能など
の諸問題等が理由である。
オーク製作所はこれらの問題を解決する
「ステップ&リピート縦型投影露光装置
EXP-2330」を市場投入し、次世代・次々世
代の電子回路基板の生産に対応している。
本稿ではEXP-2330について、その特徴と
優れた諸性能について紹介する。
写真1 EXP-2330外観
李
徳
2.装置コンセプト
従来の投影露光装置の問題点は、下記の
点であった。
① 分割露光をする為、処理能力が低く生産
性が悪い
② 投影レンズに色収差があり、波長を限定
する為に照度が低く、処理能力が低い
③ 波長が限定されてしまい、使用レジスト
が限定される
④ 基板伸縮に対応しきれていない
上記問題点を解決しつつ、次世代・次々世
代の市場ニーズに応える為、オーク製作所は
以下の点を装置コンセプトに盛り込んだ。
(1)g-h-i線の3波長すべてを利用した、高照
度・高解像力を有する投影レンズ
(2)量産性を高める為の、結像倍率1:1の
大面積一括露光
(3)基板伸縮に対応する為の、XY変倍機能
+X変倍機能
(4)高スループット・低ランニングコストを両
立する低COOの量産装置
図1 OPL-020概観
色収差はレンズのプリズム効果により発生
する収差である為、レンズパワー(屈折力)が
強ければ強い程、色収差量が増大する。通
常のレンズのみで構成された屈折投影レンズ
では、レンズが全ての屈折力を担っている為、
3.高性能投影レンズ
色収差が大きくなる。
それに対し、「OPL-020」では屈折力の大半
を凹面ミラーが有しており、レンズは一部の
露光には紫外光であるg、h、i 線を利用し
マスク像を基板表面に塗布されたレジストに 光学収差の補正の役目しか担っていない為
転写するが、この際に投影レンズ自身の色収 にレンズパワーが小さく、色収差の発生を極
小に抑制できる。
差によって波長毎のピント位置が異なり、解
像力の低下を招いていたのが従来の投影レ
ンズである。この問題を回避する為、従来は
i 線以外の光をカットし、単波長の紫外光とし
て露光を実施していた。この為に照度が低く、
露光処理に時間がかかるという問題点を抱
えていた。
この問題を解決する為に、投影レンズには
レンズとミラーの複合光学系である反射屈折
投影レンズ 「OPL-020」を新規開発し、装置
に搭載した。色収差が理論上無いミラー系
(反射光学系)と、大面積露光エリアを確保す
る事が容易なレンズ系を組み合わせる事に
図2 色収差イメージ
より、電子回路基板の生産に最適な投影レン
ズを、提供する事が可能となった。
図3に通常の屈折投影レンズとOPL-020の
色収差量の比較グラフを示す。通常の屈折
投影レンズは色収差発生の為、波長によるピ
ントズレ量が大きく、波長選択しない限り高解
像力を達成する事が出来ないのがわかる。
それに対し、OPL-020は紫外線に限らず、可
視光であるe線(546nmの緑色光)までピント
が良好に補正されている。この優れた色収差
特性により、OPL-020はg,h,i 線3波長露光に
よる高解像力を達成する事が可能である。
写真2 アライメント画像例
図4 変倍機能による伸縮補正能力
図3 色収差比較
4.変倍機能
基板は基板自身の材質的な要因に起因す
る伸縮、露光・現像・エッチングなどの製造工
程に起因する伸縮など、様々な伸縮を発生す
る。基板が伸縮する事で、基準寸法からズレ
が発生し、その分位置合わせの精度が悪化
する事が大きな問題として顕在化していた。
従来はこの基板伸縮量のコントロールが難し
い為、基板の伸縮に応じて基準マスクに対し
て一定のスケーリングを施し、マスクの再描
画をしていた。
この問題を解決する為、EXP-2330は独自
の変倍機能を標準装備している。投影レンズ
「OPL-020」にはXY方向を均一に変倍できる
『XY変倍機能』、X方向のみを変倍できる『X
変倍機能』を達成する為に、可変光学素子が
配置されている。この機能を用いる事で、アラ
イメント時に計算されたXY変倍量・X変倍量
をフィードバックし基板伸縮に対してリアルタ
イムで最適な変倍を実現できる。
図4は変倍機能による基板伸縮補正の概
念である。伸縮補正をしていない場合、露光
エリア周辺の4点をアライメントした際に、基
準寸法に対してXY方向ともに拡大寸法となっ
ており、位置ズレが大きい事がわかる。ここで
XY変倍機能を利用すると、XY方向均一に縮
小変倍がかかり、位置ズレが小さく抑制でき
る。しかしこの場合、基板はX方向とY方向の
伸縮率が異なる為、Y方向に最適化するとX
方向が最適倍率になってない事がわかる。
ここでX変倍機能を利用すると、X方向とY
方向の異なる伸縮率を補正できる為、露光面
全面において最適な伸縮補正が実現できる。
図5に示すように、前記のXY変倍機能と高
精度アライメント機能を用いる事で、露光面
全面でのオーバーレイヤ精度(総合重ね合わ
せ精度)は次世代の電子回路基板の要求精
度を十分に満たす事が可能である。
また、これにX変倍機能を加える事で次世
代に留まらず、次々世代の電子回路基板の
要求精度に応える事も実現可能となった。
6.高照度・高均一照明系
5.高精度アライメント
高精度アライメントに必要不可欠な4点アラ
イメントを標準装備。マスクマークは露光に影
響の無いe線(546nmの緑色光)で投影する
TTL方式を採用し、ワークマークは専用の別
光源でリアルタイムに同時画像取得する為に
高速で鮮明なマーク認識が可能である。
様々なマークに対して鮮明なアライメント像
写真3 露光照明ユニット概観
を得る為に、独自光学設計による専用アライ
メントスコープを開発・製作し装置に搭載した。 ショートアークランプを自社生産している強
これにより、画面視野の周辺まで歪みのない みに加え、高精度な独自照明解析技術によ
り、プリント配線板用投影露光装置として業
均一な像取得を可能となった。
界最高照度を達成し、仕様値で照度分布
94.2%(照度ムラ±3%相当)を実現した。
(3kWショートアークランプ使用時)
また使用するレジスト感度に合わせ1kW、
2kW、3kWのランプを選択可能とする事で、
低ランニングコストを達成できる。
図5 オーバーレイヤ精度
図6 ランプ電力による照度の差
7.パーティクルフリーな装置構成
日立化成 RY-3325
ニチゴーモートン NIT2025
太陽インキ AUS303
25μmt 10μmL/S
25μmt 10μm L/S
20μmt φ50μm Hole
マスクと基板を垂直に配置する縦型露光装
置の構成とした為、浮遊ゴミなどのパーティク
ルによる不良を大幅に低減する事が可能で
ある。またHEPAフィルターを介した理想的な
ダウンフローを実施している為、レジスト昇華
物が光学パーツに付着する問題も最小限に
抑制可能である。
図7 解像力評価結果 サンプル
8.おわりに
型式
EXP-2330
基板サイズ
MAX. 510×610mm ∼ MIN.250×330mm
マスクサイズ
10インチ ガラスマスク
板厚
0.06mmt ∼ 2.0mmt (銅箔、レジスト含む)
レンズ型式
反射屈折光学系 「OPL-020」
露光面積
200×100mm
露光波長
g-h-i 3波長
解像力
10μmL/S (DFR 20μmt)
使用ランプ
AHD-1000PH , AHD-2000PH , AHD-3000PH
初期照度
140mW/cm2 (オーク製作所製 UV-M03 SN-35センサ)
照度ムラ
照度分布 94.2% (照度ムラ±3%)
アライメント方式
非露光波長 4点TTLアライメント
重ね合わせ精度
±6μm
(3σ 6μm)
サイクルタイム
(2.5秒+露光時間)×ショット数+12秒(ワーク交換時間)
今後、「スーパーコネクト領域」と呼ばれる配
線・接続技術である、配線パターン10μmL/S、
オーバーレイヤ精度10μm以下の市場は急
速に拡大していく事が予想される。
当社は高精度コンタクト式露光装置を広く市
場に販売しており、EXP-2330がラインアップ
に加わる事で次世代・次々世代の高精度基板
の生産に対応する事が可能である。EXP2330は国内外の電子回路基板製造トップメー
カーへ順次納入される予定であり、次世代の
電子回路基板の生産には欠かせない製品で
あると確信している。
光応用技術に脚光が浴びる中、当社は
ショートアークランプに代表される光源技術を
ベースに、各種応用製品を展開し業界の発展
に寄与していく所存である。
図8 装置仕様
【 筆者紹介 】
李
徳
(株)オーク製作所 露光機器事業部 設計グループ
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