Morse position of knots and closed incompressible surfaces 小沢 誠 ( 駒澤大学) 2005 年 5 月 9 日 ✓ ✏ ✒ ✑ 定義( Morse 関数) 多様体 M 上の関数 f : M → R の各臨界点が非退化 であり、それらの臨界値が異なるとき、f を Morse 関数という。 R f M h : S 3 → R を S 3 上の標準的な Morse 関数とする。 即ち、 i : S 3 → R4 : 包含写像 p : R4 → R: 射影 (x, y, z, w) → w とするとき、h = p ◦ i R 1 h 0 S3 -1 ✓ ✏ 定義( Morse position ) Morse 関数 h : S 3 → R の結び目 K ⊂ S 3 への制限 が Morse 関数であるとき、K は h に関して Morse position にあるという。 ✒ R h K ✑ a0, . . . , an を K の臨界点で 、対応する臨界値 ti = h(ai ) が 、各 i に対して ti−1 < ti を満たすものとする。 正則値 si ∈ (ti−1, ti) に対して、Pi = h−1(si ) を ai−1 と ai の間の level sphere という。 ai−1 が 極大点で ai が 極小点であるとき 、Pi を thin level sphere という。 ai−1 が 極小点で ai が 極大点であるとき 、Pi を thin level sphere という。 ai Pi ai a i-1 Pi a i-1 thin level sphere thick level sphere 各 thick level sphere Pi に対して、thick region を h−1([ti−1 + , ti − ]) で定める。 全ての thick region の和を Mthick とし 、Mthick の残 りの各成分を thin region と呼び 、和を Mthin で表す。 M thin K M thick M thin M thick M thin F を S 3 内の closed surface で、K と交わらないか、又 は K と横断的に交わるものとする。 ✓ ✏ ✒ ✑ 定義( Morse position ) F が次を満たすとき、K に関して Morse position にあるという。 1. F は h に関して Morse position 2. F と K は一般の位置にあり、F ∩ K ⊂ Mthick 3. F の全ての極大点と極小点は Mthin に含まれ、全 ての鞍点は Mthick に含まれる。 M thin K F M thick M thin M thick M thin M を 3 次元多様体、T を M 内に適切に埋め込まれた 1 次元多様体、F を M 内に適切に埋め込まれた曲面で T と交わらないか又は T と横断的に F の内部で交わるも のとする。 ✓ ✏ ✒ ✑ 定義( 圧縮不能) F が次を満たすとき、(M, T ) 内で圧縮不能という。 1. 【 F = S 2, F ∩ T = ∅ の場合】 ∃ B 3 ⊂ M − T , s.t. ∂B 3 = F 2. 【 F = D2, F ∩ T = ∅ の場合】 ∀ D2 ⊂ ∂M − ∂T , ∂D2 = ∂F , ∃ B 3 ⊂ M − T , s.t. ∂B 3 = F ∪ D 3. 【その他の場合】 ∀ D2 ⊂ M − T , D2 ∩ F = ∂D2, ∃ D2 ⊂ F − T , s.t. ∂D2 = ∂D T M K ⊂ S 3 を h に関して Morse position にある結び目 とし 、F ⊂ S 3 を K に関して Morse position にある 閉曲面とする。 ✓ ✏ ✒ ✑ 定義( essential Morse position ) F が次を満たすとき、K に関して essential Morse position にあるという。 4. F ∩Mthin 及び F ∩Mthick の各成分が、それぞれ (Mthin, K ∩ Mthin) 及び (Mthick , K ∩ Mthick ) で圧縮不能 ✓ 定理 K ⊂ S 3 を h に関して Morse position にある結び 目とし 、F ⊂ S 3 を K と交わらないか 、又は K と横 断的に交わる閉曲面で、(S 3 , K) 内で圧縮不能である とする。この時、F は次のいずれかのようにイソトー プできる。 1. F は thin level sphere 、又は 2. F は K に関して essential Morse position ✒ ✏ ✑ 例 1. F は thin level sphere M thin K M thick F M thin M thick M thin 例 2. F は K に関して essential Morse position M thin K F M thick M thin 証明の流れ Step 1. F ∩ Mthin を圧縮不能デ ィスク又はアニュ ラスのみにする。 ↓ Step 2. |F ∩ Mthin| を最小にした上で、F ∩ Mthick の臨界点の個数を最小にする。 ↓ Step 3. F ∩ Mthick が (Mthick , K ∩ Mthick ) で圧 縮不能を示す。 ↓ もし F ∩ Mthick が極大点又は極小点を持たなければ 、 F は essential Morse position である。 ( 結論 2 ) もし F ∩ Mthick が極大点又は極小点を持つならば 、F は thin level sphere に イソトピックである。 ( 結論 1) 準備 S : 2-sphere F ⊂ S × I : surface p : S × I → S × {0} : projection h : S × I → I : height function ✓ ✏ ✒ ✑ ✓ ✏ ✒ ✑ 定義 S × I のイソトピー φt が 、任意の t ∈ [0, 1] に対して h ◦ φt = h を満たすとき、horizontal isotopy と いう。 定義 F が horizontally ∂-parallel in S × I ⇐⇒ ∃ horizontal isotopy φt, s.t. p ◦ φ1 is a homeomorphism on F ✓ ✏ ✒ ✑ 補題 1 S を球面、X を S 上の点の和、F ⊂ (S × I, X × I) を圧縮不能曲面とする。もし 、F が horizontally ∂parallel ならば 、F は (S × I, X × I) 内で ∂-parallel である。 証明 F は horizontally ∂-parallel であるから 、p は F 上 homeomorphism としてよい。 また 、X × I は単調であるから 、p は (X × I) ∩ V 上 homeomorphism としてよい。ここで 、V は F と p(F ) が bound する 3-manifold である。 このとき、p((X × I) ∩ V ) は disjoint arcs から成る。 仮に、(X × I) ∩ V の arc α で、∂α が F に含まれるも のがあったとすると、α と F 上の arc が disk を bound するので、F が圧縮不能であることに反する。 故に、(X × I) ∩ V の任意の arc は F と p(F ) を単調に 繋いでいるので、F は ∂-parallel である。 ✓ ✏ ✒ ✑ 補題 2 S を球面、X を S 上の点の和、F ⊂ (S × I, X × I) を h : S × I → I に関して Morse position にある 圧縮不能曲面とする。F のイソトピーで、F の臨界点 の個数を最小と仮定する。このとき、もし F が極大点 を持つならば 、F は (S × I, X × I) 内で ∂-parallel である。 証明 a0, . . . , an を F の臨界点で、対応する臨界値 ti = h(ai ) が 、各 i に関して ti−1 < ti を満たすものとする。 am を最も低い F の極大点とする。 もし m = 0 ならば 、F は唯一の極大点 a0 を持つディス クであり、(S × I, X × I) 内で ∂-parallel である。 以下、m ≥ 1 と仮定する。 Fmax を、am を含む F の極大な ∂-parallel 部分曲面 とする。 am Fmax as F’max Fmax に関与する次の臨界点 as は、am が最も低い極大 点であるから、鞍点又は極小点である。 鞍点の近傍をバンド B とみなし 、極小点の近傍をディス ク E とみなす。 Case 1 バンド B は Fmax の外側にあり、Fmax の同じ 境界成分を繋ぐ。 am Fmax B F’max この場合、更に大きな ∂-parallel 部分曲面ができ、 Fmax の極大性に反する。 Case 2 バンド B は Fmax の外側にあり、 Fmax の境 界成分と他の部分曲面の境界成分を繋ぐ。 am Fmax B F’max この場合、Fmax から Fmax へのイソトピーにより、 極大点 am と鞍点 as がキャンセルする。これは、F の臨界点の個数の最小性に矛盾する。 Case 3 バンド B は Fmax の内側にあり、Fmax の同じ 境界成分を繋ぐ。 am D Fmax B この場合、Fmax ∪ B に対する圧縮ディスク D が存 在する。F は圧縮不能であるから、ディスク D ⊂ F で ∂D = ∂D を満たすものが存在する。この時、 D から D へのイソトピーにより、鞍点 as が消去さ れる。 Case 4 バンド B は Fmax の内側にあり、Fmax の異な る境界成分を繋ぐ。 am Fmax D B この場合、Fmax ∪ B に対する圧縮ディスク D が存 在する。∂D は F 内本質的であるから、D は F の圧 縮ディスクであり、F が圧縮不能という仮定に矛盾 する。 Case 5 ディスク E は Fmax の境界成分に沿って Fmax に蓋をする。 am Fmax E Fmax がディスクでない場合、Fmax∪E から Fmax∪ E へのイソトピーにより、Fmax の鞍点と極小点 as がキャンセルする。 Fmax がディスクの場合は、F は level sphere にイ ソトピックとなる。 定理の証明 Step 1. F ∩ Mthin を圧縮不能デ ィスク又はアニュ ラスのみにする。 Mthin の各成分を thin level sphere Pi で二つに分割 する。 分割された成分と K との交わりは単調なアークか、唯 一の極大点又は極小点を持つアークのみとなる。 Pi M thin F が圧縮不能であるから、F ∩ Pi の各成分は Pi − K 内 で本質的なループのみとしてよい。 Pi から K の極大点( 又は極小点)に単調なアーク Ti を 繋ぎ 、F ∩ Ti を一般の位置にする。 この時、N (Pi ∪ Ti) と F との交わりは、圧縮不能なディ スク又はアニュラスのみとなる。 Pi Ti N (Pi ∪ Ti) の残りの部分は、( 球面, 点 ) の組の直積で あるから、F のイソトピーにより、F との交わりも直積 であるとしてよい。 Step 2. |F ∩ Mthin| を最小にした上で、F ∩ Mthick の臨界点の個数を最小にしておく。 Step 3. F ∩ Mthick が (Mthick , K ∩ Mthick ) で圧 縮不能を示す。 仮に F ∩ Mthick が (Mthick , K ∩ Mthick ) で圧縮可能で あったとすると、圧縮ディスク D ⊂ Mthick が存在する。 しかし 、F は (S 3, K) 内で圧縮不能であるから、ディス ク D ⊂ F − K で 、∂D = ∂D を満たすものが存在 する。 D ∩ Mthin = ∅ であるから、D から D へのイソトピー により、|F ∩ Mthin| が減る。 これは、|F ∩ Mthin| の最小性に矛盾する。 もし F ∩ Mthick が極大点又は極小点を持たなければ 、 essential Morse position の条件 1∼4 が満たされ 、 定理の結論 2 を得る。 ✓ 1. 2. 3. 4. ✒ essential Morse position の条件 F は h に関して Morse position F と K は一般の位置にあり、F ∩ K ⊂ Mthick F の全ての極大点と極小点は Mthin に含まれ、全 ての鞍点は Mthick に含まれる。 F ∩Mthin 及び F ∩Mthick の各成分が、それぞれ (Mthin, K ∩ Mthin) 及び (Mthick , K ∩ Mthick ) で圧縮不能 ✏ ✑ もし F ∩ Mthick が極大点又は極小点を持つならば 、F は thin level sphere にイソトピックであり、定理の 結論 1 を得る。 一般性を失わず、F ∩ Mthick が極大点を持つと仮定す る。 am を最も低い F ∩ Mthick の極大点とすると、補題 1 に より、am を含む F ∩ Mthick の成分 Fmax は、Mthin へ ∂-parallel である。 Fmax am M thick M thin Case 1. Fmax が F ∩ Mthin のアニュラスと繋がらな い。 この場合、F は planar surface Fmax と disks F ∩ Mthin の和となるから、F は Mthin に完全に含 まれる球面である。補題 1 により、F は thin level sphere Pi に parallel であるので、定理の結論 1 を 得る。 am Fmax planar surface M thick disks M thin M thick F M thin thin level sphere Case 2. Fmax が F ∩ Mthin のアニュラスと繋がる。 この場合、Fmax は thin level sphere Pi の部分曲 面 Fmax へとイソトピックである。 am Fmax planar surface M thick vertical annulus M thin Pi M thick Pi F’max M thin 従って、必要ならば ∂-compression を行うことに より、Fmax は唯一の極大点を持つディスクである と仮定してよい。 M thick planar surface Pi F’max M thin vertical annulus -compression M thick Pi F’max M thin 以上の操作において、|F ∩ Mthin| は増えず、少な くとも一つの極大点 as が消去される。 これは 、F ∩ Mthick の臨界点の個数の最小性に矛 盾する。
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