原著論文 外傷患者における血中プロカルシトニンの急性期の 上昇についての検討 原田 正公 1 上之原広司 2 杉田 京一 3 菊野 隆明 4 小井土雄一 5 木村 昭夫 6 高橋 立夫 7 若井 聡智 8 川崎 貞男 9 宮加谷靖介 10 金 子 唯 11 熊谷 和美 11 高山 隼人 12 高 橋 毅 1 要旨 【目的】プロカルシトニン(PCT)は全身性感染症,とくに細菌感染症で上昇するといわ れているが,一方で外傷などでも受傷後早期に上昇する例が報告されている。そこで,外傷患者 における受傷後早期 PCT を調査し,外傷部位や外傷の重症度,在院転帰との関連を調査した。 【対 象と方法】2010 年 4 月 1 日から 2012 年 2 月 28 日までに国立病院機構の 11 箇所の救命救急センター を受診し,入院を要した外傷患者を対象とした。重症度,来院時(Day0)および来院後 12 ∼ 24 時間(Day1)のバイタルサイン,CRP と PCT を記録し,外傷部位や外傷重症度と PCT との関連 について単変量解析を用いて検討し,また在院転帰と PCT の関係について多変量解析を用いて 検討した。 【結果】218 名の患者が登録された。Day0 と Day1 の CRP と PCT を比較するとほとん どの部位の外傷において Day1 で有意な上昇を認めた。ISS(injury severity score)別にみてみると Day1 の PCT は ISS が高値になるほど高くなった。Day1 の PCT は頭部,四肢,多発外傷で有意に ISS>20 群で高くなった。在院転帰に関して調査項目の比較検討を行ったところ,GCS および Day1 の PCT で有意差を認めた。頭部外傷患者に絞ってロジスティック回帰分析を行ったところ, GCSおよびDay1のPCTが説明変数として選択され,両者を組み合わせたROC曲線下面積は0.98309 であった。 【結語】外傷患者の Day1 の PCT は,頭部,四肢,多発外傷では外傷の重症度が高いほ ど高値となる。また頭部外傷患者では,GCS と Day1 の PCT を組み合わせることで,予後予測に 有用である可能性がある。 (日救急医会誌 . 2014; 25: 81-92) キーワード:頭部外傷,重症度,転帰 はじめに Investigation of increase of the serum procalcitonin levels in the acute phase in trauma patients 国立病院機構熊本医療センター, 国立病院機構仙台医療セ ンター,3 国立病院機構水戸医療センター,4 国立病院機構東 京医療センター,5 国立病院機構災害医療センター,6 国立国 1 2 際医療研究センター,7 国立病院機構名古屋医療センター, 国立病院機構大阪医療センター,9 国立病院機構南和歌山医 療センター,10 国立病院機構呉医療センター,11 国立病院機 8 プロカルシトニン(PCT:procalcitonin)は 116 個 のアミノ酸からなる分子量 13kD のポリペプチド 1) であり,全身性感染症,とくに細菌感染症で上昇し, ウイルス感染症や局所の細菌感染症ではほとんど上 昇しないと言われている 2)。PCT は正常状態では甲 構関門医療センター,12 国立病院機構長崎医療センター 状腺の C 細胞で産生 3) され,代謝によりカルシトニ 著者連絡先:〒 860-0008 熊本県熊本市中央区二の丸 1-5 国立病院機構熊本医療センター救命救急部・ 集中治療部 原稿受理日:2012 年 11 月 6 日(12-123) ンとなり甲状腺外に分泌され,PCT 自体は血中へは 日救急医会誌 . 2014; 25: 81-92 放出されないが,細菌感染やサイトカイン,エンド トキシンなどの刺激を受けると,全身の臓器から 81 原田 正公,他 PCT が産生され,血中 PCT が上昇する。現在では細 3)血液検査:白血球数,C-reactive protein(CRP), 菌感染症,敗血症のマーカーとしての重要な検査と procalcitonin(PCT) して位置づけられている。しかし,その一方で熱傷 来院時(D0)および来院後 12~24 時間後(D1) や外傷で PCT が上昇した例も報告されている 。 4,5) そこで我々は,感染症・敗血症のマーカーとして 確 立 さ れ て い る PCT を 外 傷 患 者 に お い て 来 院 時 の血液検体を用いて検査を行った。D1 は前述 のバイタルサインの測定と概ね同時刻とした。 4)重症度評価に関する項目 (Day0:以下 D0)と来院後 12-24 時間後(Day1:以 Injury severity score(ISS)6),revised trauma score 下 D1)で測定し,外傷部位,重症度,在院転帰と (RTS)7),systemic inflammatory response syndrome の関連性について調査研究を行った。 (SIRS)の診断基準 8) 該当項目数 対象と方法 2010 年 4 月 1 日から 2012 年 2 月 28 日までに 11 箇 所の国立病院機構救命救急センターの救急外来を受 診し,入院を要した外傷患者を対象とした。下記の 除外基準を満たす患者は除外した。 1)来院時において,受傷後 12 時間以上経過した 患者。 2)来院時において,何らかの感染症に罹患してい ると考えられる患者。 3)白血病などの造血器悪性腫瘍患者。 4)骨髄異形成症候群や骨髄増殖性疾患などの患者。 5)関節リウマチなどの膠原病や自己免疫疾患の患 者。 5)転帰:在院死亡の有無 (2)PCT 測定 株式会社 SRL に委託し,測定方法は ECLIA 法と した。 (3)統計学的解析 測定値は平均値±標準偏差(mean ± SD)で記述した。 単変量解析による比較は Wilcoxon 検定を用い,デー タは中央値(25% 分位点 -75% 分位点) (median (quartile))で記述した。多変量解析はロジスティック回 帰分析を用いた。これらの解析には,JMP®version 10 (SAS institute Inc.)を用いた。統計学的有意水準は 5%(p = 0.05)とした。 (4)倫理的配慮 本研究に参加する施設は,それぞれの施設の倫理 6)免疫抑制剤,ステロイドを内服中の患者。 委員会の承認を受けた後に研究に参加した。情報収 7)重度の肝硬変症(Child-Pugh 分類 B または C)の 集時には個人情報は連結可能匿名化して取扱い, 患者。 8)その他,研究者が不適切と判断した患者。 (1)研究デザインと調査項目 研究デザインは前向き観察研究とし,下記の項目 について調査した。 データの取り扱いには第三者への漏えいなどがない ように十分に留意した。 結 果 有効症例数は,218 例であった(Table 1)。AIS 区 分別では,頭部が 48 例,顔面が 4 例,頸部が 2 例, 1)患者背景:年齢,性別 胸部が 21 例,腹部が 14 例,脊椎が 15 例,四肢が 46 2)バイタルサイン:Glasgow coma scale(GCS) ,体 例,体表が 13 例,多発外傷が 55 例であった。在院 82 温,収縮期および拡張期血圧,心拍数,呼吸数 死亡症例は 7 例で,その内訳は頭部で 5 例,顔面で 来院時(D0) ,および来院後 12-24 時間で最も 1 例,四肢で 1 例であった。 患者の状態を適切に現す一点(D1)のバイタ CRP と PCT をそれぞれ D0 vs. D1 で比較すると,全 ルサインを記録した。鎮静されている患者の 体ではCRP,PCTともにD1で有意な上昇を認め,AIS GCS は,鎮静がない状態で記録した。 区分別では,CRPは頭部,顔面,胸部,腹部,脊椎, JJAAM. 2014; 25: 81-92 外傷患者における PCT の上昇についての検討 Table 1. Characteristics of the patients. Site if injuries Total Head Face Neck Chest Abdomen Spine Extremity Surface Multiple trauma Number of patients (men, women) n=218 (137, 81) n=48 (31, 17) n=4 (1, 3) n=2 (1, 1) n=21 (15, 6) n=14 (12, 2) n=15 (7, 8) n=46 (27, 19) n=13 (7, 6) n=55 (36, 19) Age 57±22 62±22 78.5±12 72±8 51±21 56±23 58±17 57±24 47±23 55±21 ISS 15±10 19±9 9±12 15±1 17±6 12±9 13±8 12±9 6±5 19±12 13±3 36.5±0.9 10±4 36.2±1.0 14±1 36.3±1.1 9±8 35.1±0.7 14±1 36.6±0.9 13±2 36.7±0.6 14±3 36.5 14±1 36.5±0.9 15±0 37.0±0.6 13±3 36.5±0.9 132±32 146±31 162±17 165±14 127±24 96±16 137±37 127±32 151±32 127±28 76±19 84±21 82±5 83±18 75±17 62±14 86±26 73±14 82±17 73±17 86±21 20±7 12.1±5.6 90±27 22±7 11.6±5.9 79±17 19±5 11.4±3.9 78±16 15±1 9.4±3.3 87±16 22±6 11.7±3.9 89±26 21±7 14.0±6.7 78±18 18±7 10.5±5.0 86±17 19±6 12.1±5.3 83±12 17±4 9.9±3.8 85±23 19±7 12.9±5.7 0.36±1.00 0.36±2.19 0.16±0.18 0.17±0.31 0.36±0.57 0.03±0.02 0.15±0.02 0.03±0.01 0.15±0.13 0.13±0.20 0.81±2.48 0.09±0.10 0.39±0.62 0.16±0.41 0.26±0.63 0.36±2.12 0.23±0.49 0.05±0.07 0.39±1.37 0.46±2.45 7.8408±0 7.3764±1.0001 Day 0 GCS BT (˚C) Systolic BP (mmHg) Diastolic BP (mmHg) HR (/minute) RR (/minute) WBC (×103/µl) CRP (mg/dL) PCT (ng/mL) RTS The mumber of SIRS 7.2807±1.0644 6.5091±1.5230 7.6066±0.4684 5.9672±2.4697 7.6403±0.4069 7.1192±0.7996 7.4681±0.7868 7.6537±0.4381 1.3±1.1 1.5±1.1 Day 1 GCS 13±4 10±5 BT (˚C) 36.9±0.8 36.9±0.8 Systolic BP 125±21 129±23 (mmHg) Diastolic BP 70±14 71±13 (mmHg) HR (/minute) 81±17 81±18 RR (/minute) 18±5 20±7 WBC (×103/µl) 9.5±3.8 10.3±4.3 CRP (mg/dL) 4.56±4.43 4.09±4.65 PCT (ng/mL) 1.65±6.92 2.54±10.37 RTS 7.3771±1.0349 6.4816±1.5084 1.3±0.5 1±0 1.4±1.1 1.6±1.0 0.7±0.8 1.2±1.1 0.8±0.8 1.3±1.1 14±1 36.9±0.6 9±8 34.9±1.2 14±2 36.8±0.6 14±2 37.2±0.6 14±3 36.6±0.9 14±2 37.1±0.6 15±0 37.1±0.5 14±3 37.0±0.8 134±17 127±38 128±25 128±16 122±22 120±17 112±16 126±22 69±5 63±25 71±14 77±13 67±18 68±13 66±14 70±16 79±15 17±3 10.0±2.4 3.13±2.00 0.29±0.33 73±1 12±4 9.2±4.2 1.66±0.52 0.08±0.07 78±16 18±4 8.9±3.0 4.15±3.22 0.33±0.38 89±17 19±3 11.4±4.1 6.23±5.64 1.8±3.21 74±16 17±4 8.9±3.8 3.37±3.42 0.74±1.36 84±15 16±3 8.5±3.7 5.14±4.18 1.15±2.49 77±9 15 ±1 7.5±1.7 2.39±3.10 0.09±0.11 80±18 17±4 7.8408±0 9.7±3.0 5.06±4.77 1.32±2.78 5.6764±3.0609 7.7752±0.2818 7.7070±0.3402 7.4309±0.9809 7.6620±0.5747 7.7844±0.2032 7.6023±0.7033 The mumber of SIRS 0.7±0.9 1.0±1.0 0.8±1.0 1.5±1 0.5±0.7 1.4±0.8 0.5±0.8 0.5±0.8 0±0 0.7±0.9 Number of death 7 5 1 0 0 0 0 1 0 0 四肢,体表,多発外傷で,PCT は頭部,胸部,腹部, D1 の PCT を比較すると,頭部,四肢,多発外傷で 四肢,多発外傷で有意な上昇を認めた(Table 2)。 。 ISS>20 群で有意に高かった(Table 3-B) ISS 階層別に CRP,PCT を D0 vs. D1 で比較すると, D0 と D1 の CRP,PCT を RTS>5 群 vs. RTS<5 群で CRP,PCT ともに全ての ISS 階層で有意な上昇を認め 比較すると,D1のPCTでRTS<5群で高い傾向があっ た。D0とD1のCRP,PCTをISS階層間で比較すると, た(Table 4-A)。RTS は意識(GCS),呼吸数,収縮 D1 の PCT は ISS 10~19 vs. ISS 20~29 のみ有意差がな 期血圧より算出される指標だが,それぞれの因子ご かったが,それ以外の ISS 階層間は有意差を認めた とに D1 の PCT を比較したところ,GCS のみで有意 。AIS 区分別に ISS ≤ 20 群 vs. ISS>20 群で (Table 3-A) 差を認め,RTS<5 における D1 の PCT 高値は GCS が 日救急医会誌 . 2014; 25: 81-92 83 原田 正公,他 Table 2. Comparison of the serum CRP and PCT levels between Day0 and Day1 for each site of injury. Day 0 median (quartile) Day 1 median (quartile) p value CRP (mg/dL) 0.08 (0.05-0.27) 3.14 (1.4-6.45) <0.0001 PCT (ng/mL) 0.03 (0.02-0.06) 0.18 (0.05-0.92) <0.0001 CRP (mg/dL) 0.08 (0.05-0.20) 1.8 (0.82-6.44) <0.0001 PCT (ng/mL) 0.03 (0.02-0.09) 0.24 (0.03-0.88) 0.0002 CRP (mg/dL) 0.09 (0.04-0.94) 2.67 (1.59-5.14) 0.0304 PCT (ng/mL) 0.02 (0.02-0.04) 0.19 (0.05-0.63) 0.0545 CRP (mg/dL) 0.15 (0.13-0.16) 1.66 (1.29-2.02) 0.2453 PCT (ng/mL) 0.03 (0.02-0.03) 0.08 (0.03-0.13) 0.4142 CRP (mg/dL) 0.06 (0.05-0.3) 3.96 (1.71-6.27) <0.0001 PCT (ng/mL) 0.04 (0.03-0.09) 0.16 (0.06-0.54) 0.0045 CRP (mg/dL) 0.11 (0.05-0.3) 5.75 (1.61-8.21) 0.0002 PCT (ng/mL) 0.06 (0.03-0.11) 0.34 (0.17-2.56) 0.001 CRP (mg/dL) 0.12 (0.05-0.55) 2.19 (1.32-4) <0.0001 PCT (ng/mL) 0.03 (0.02-0.12) 0.04 (0.02-1.1) 0.3083 CRP (mg/dL) 0.1 (0.05-0.3) 4.23 (1.99-6.75) <0.0001 PCT (ng/mL) 0.03 (0.02-0.04) 0.1 (0.04-1.06) <0.0001 CRP (mg/dL) 0.05 (0.05-0.11) 1.08 (0.79-3.25) 0.0001 PCT (ng/mL) 0.02 (0.02-0.04) 0.04 (0.03-0.12) 0.0145 CRP (mg/dL) 0.08 (0.05-0.18) 3.58 (1.98-6.77) <0.0001 PCT (ng/mL) 0.03 (0.02-0.08) 0.33 (0.09-1.23) <0.0001 Site of injuries Total Head Face Neck Chest Abdomen Spine Extremity Surface Muituple trauma The p values were assayed by the Wilcoxon’s test. 最も影響していた(Table 4-B) 。そこで,頭部を含 と死亡原因のみ調査を行った。頭部の 5 例では,1 例 む外傷と含まない外傷に分けて,GCS3-8 群と 9-15 のみ感染症(誤嚥性肺炎)による死亡(Day46)で 群で D1 の PCT を比較したところ,いずれにおいて あり,他の 4 例は水頭症(Day105) ,脳腫脹 2 例(Day7, も GCS3-8 群で PCT が有意に高かった(Table 4-C)。 Day19) ,脳挫傷(Day5)と頭部外傷自体に起因した D0 と D1 の CRP,PCT を SIRS 群 vs. non-SIRS 群で比 死亡であった。また顔面・四肢の死亡例の死因はい 較すると,CRP は D1 のみで SIRS 群が有意に高かっ ずれも誤嚥性肺炎(Day25,Day69)であった。 たが,PCT は D0,D1 ともに SIRS 群が有意に高かっ 。 た(Table 4-D) 死亡例は頭部が 5 例のため,頭部を含む外傷と頭 部以外の外傷に分けて検討を行った。頭部を含む外 本研究における調査項目を在院転帰別に比較する 傷における在院転帰別の調査項目の比較では,D0 の と,年齢,D0 の GCS・RTS,D1 の GCS・呼吸数・ GCS と RTS,D1 の GCS と PCT と RTS で有意差を認め PCT・RTS・SIRS 該当数で有意差を認めた(Table 5)。 。また頭部以外の外傷における在院転帰 た(Table 6) 本研究での在院死亡を AIS 区分でみると,頭部で 5 別の調査項目の比較では,有意差を認める項目はな 例,顔面で 1 例,四肢で 1 例であった。在院中の感染・ かった。RTS は GCS,収縮期血圧,呼吸数から算出 敗血症の合併に関する検討は行っておらず,死亡日 される指標であり,GCS の影響を受ける。そこで前 84 JJAAM. 2014; 25: 81-92 外傷患者における PCT の上昇についての検討 Table 3-A. Comparison of the serum CRP and PCT levels between Day0 and Day1 in each ISS score group (horizontal row) and comparison of the CRP and PCT levels among the ISS score groups. Day 0 median (quartile) Day 1 median (quartile) p value (Day 1 vs. Day 2) CRP (mg/dL) PCT (ng/mL) CRP (mg/dL) PCT (ng/mL) CRP (mg/dL) PCT (ng/mL) ISS < 10 (A) 0.08 (0.05-0.30) 0.03 (0.02-0.04) 2.56 (1.33-4.47) 0.07 (0.03-0.32) <0.0001 <0.0001 10 ≤ ISS < 20 (B) 0.06 (0.05-0.20) 0.04 (0.02-0.08) 3.48 (1.43-6.09) 0.19(0.06-0.87) <0.0001 <0.0001 20 ≤ ISS < 30 (C) 0.10 (0.05-0.21) 0.03 (0.02-0.12) 3.68 (1.00-6.71) 0.56 (0.12-1.14) <0.0001 <0.0001 30 ≤ ISS (D) 0.15 (0.06-0.36) 0.08 (0.03-0.78) 7.58 (4.23-10.40) 1.84 (0.59-4.23) <0.0001 <0.0001 A vs. B 0.031 0.022 0.2558 0.004 A vs. C 0.9175 0.2354 0.3995 <0.0001 A vs. D 0.2387 0.0012 <0.0001 <0.0001 B vs. C 0.0883 0.6404 0.9747 0.0733 B vs. D 0.0263 0.0486 0.0006 <0.0001 C vs. D 0.2596 0.0451 0.0022 0.0011 p value ISS: injury severity score The p values were assayed by the Wilcoxon’s test. Table 3-B. Comparison of the serum PCT levels on Day1 between the ISS ≤ 20 group and ISS>20 group for each site of injury. ISS ≤ 20 median (quartile) ISS > 20 median (quartile) p value Total 0.09 (0.03-0.38) 0.7 (0.22-5.06) <0.0001 Head 0.10 (0.02-0.54) 0.52 (0.13-1.39) 0.0228 Face 0.12 (0.03-0.76) 0.25 (0.25-0.25) 0.6547 Neck 0.03 (0.03-0.03) 0.13 (0.13-0.13) 0.3173 Chest 0.09 (0.05-0.48) 0.34 (0.14-0.82) 0.1985 Abdomen 0.30 (0.14-1.76) 6.62 (1.14-12.1) 0.1437 Spine 0.04 (0.02-0.88) 0.24 (0.03-2.81) 0.3062 Extremity 0.07 (0.03-0.33) 2.30 (0.99-5.04) 0.0003 Surface 0.05 (0.03-0.13) 0.03 (0.03-0.03) 0.3422 Muituple trauma 0.11 (0.06-0.58) 0.93 (0.33-3.02) 0.0004 ISS: injury severity score The p values were assayed by the Wilcoxon’s test. 述した単変量解析で有意差を認めた項目から RTS を D1 の GCS で RC=-0.7633,p=0.0142,OR=0.4661 除き,D0のGCS,D1のGCSとPCTの3因子を説明変 (0.1312-0.9020) ,D1 の PCT で RC=0.3853,p=0.0074, 数,在院予後を目的変数としたロジスティック回帰 OR=1.4701(1.0557-2.6905)となった。それぞれの説 分析を行った。その回帰係数(RC) ,尤度比検定p値, 明変数の ROC 曲線下面積(AUC)を比較すると,D1 オ ッ ズ 比(OR) (95% 信 頼 区 間 ) は,D0 の GCS で 。また D0 の GCS の PCT が最も高値となった(Fig. 1) RC=-0.3878,p=0.0760,OR=0.6785(0.3339-1.0357) , と D1 の PCT,D1 の GCS と D1 の PCT を組み合わせる 日救急医会誌 . 2014; 25: 81-92 85 原田 正公,他 Table 4-A. Comparison of the serum CRP and PCT levels between the RTS>5 group and RTS<5 group on Day0 and Day1, respectively. Day 0 median (quartile) Day 1 median (quartile) CRP (mg/dL) PCT (ng/mL) CRP (mg/dL) PCT (ng/mL) RTS > 5 (respective day) 0.08 (0.05-0.27) 0.03 (0.02-0.06) 3.1 (1.44-6.27) 0.16 (0.04-0.91) RTS < 5 (respective day) 0.16 (0.07-0.27) 0.03 (0.02-0.78) 4.54 (1.17-7.86) 0.43 (0.12-2.79) p value 0.1165 0.6873 0.6902 0.079 RTS: revised trauma score The p values were assayed by the Wilcoxon’s test. Table 4-B. Serum PCT levels on Day1 in relation to the GCS score, systolic blood pressure, and respiratory rate. PCT (ng/mL) median (quartile) PCT (ng/mL) median (quartile) PCT (ng/mL) median (quartile) GCS 9-15 0.64 (0.19-4.35) Systolic BP ≥ 90mmHg 0.17 (0.05-0.91) RR 10-29 0.20 (0.04-0.93) GCS 3-8 0.14 (0.04-0.77) Systolic BP < 90mmHg 0.28 (0.04-2.04) RR < 10 or RR > 29 0.11 (0.06-0.25) p value 0.0008 0.7547 0.6638 GCS: Glasgow coma scale, BP: blood pressure, RR: respiratory rate The p values were assayed by the Wilcoxon’s test. Table 4-C. Serum PCT levels on Day1 with the GCS score in relation to the site of injury: all injuries including head injuries and all injuries except injuries of the head. PCT (ng/mL) median (quartile) All injuries including head injuries All injuries except including of the head GCS 9-15 0.28 (0.04-0.91) 0.11 (0.04-0.72) GCS 3-8 0.63 (0.17-3.04) 1.04 (0.19-7.94) p value 0.04 0.0355 GCS: Glasgow coma scale The p values were assayed by the Wilcoxon’s test. Table 4-D. Comparison of the serum CRP and PCT levels between SIRS group and non-SIRS group on Day0 and Day1, respectively. Day 0 median (quartile) Day 1 median (quartile) CRP (mg/dL) PCT (ng/mL) CRP (mg/dL) PCT (ng/mL) non-SIRS (respective day) 0.08 (0.05-0.30) 0.03 (0.02-0.05) 3.00 (1.37-6.09) 0.15 (0.04-0.76) SIRS (respective day) 0.09 (0.05-0.20) 0.04 (0.02-0.19) 7.37 (3.68-14.07) 3.54 (0.42-4.75) p value 0.4208 0.0007 0.0089 0.0004 SIRS: systemic inflammatory response syndrome The p values were assayed by the Wilcoxon’s test. 86 JJAAM. 2014; 25: 81-92 外傷患者における PCT の上昇についての検討 Table 5. Comparison of the characteristics and surveyed variables between the survivor and non-survivor group among trauma patients. Survivors median (quartile) Non-survivors median (quartile) Number of patients (men, women) Age ISS n=211 (131, 80) 60 (37-75) 13 (9-20) n=7 (6, 1) 80 (77-91) 25 (16-34) 0.0015 0.0687 Day 0 GCS BT (℃ ) Systolic BP (mmHg) Diastolic BP (mmHg) HR (/minute) RR (/minute) WBC (×103/µl) 15 (13-15) 36.6 (36.0-37.0) 132 (111-154) 78 (66-87) 83 (71-95) 18 (15-23) 7 (3-14) 36.2 (343.7-36.6) 124 (55-172) 77 (35-99) 96 (73-120) 20 (16-30) 0.0008 0.1297 0.432 0.6898 0.2446 0.3155 CRP (mg/dL) PCT (ng/mL) RTS The number of SIRS 10.6 (8.0-14.5) 0.08 (0.05-0.24) 0.03 (0.02-0.06) 7.8408 (7.1082-7.8408) 1 (0-2) 11.1 (10.2-16.5 0.30 (0.07-0.55) 0.03 (0.02-0.09) 5.6764 (3.8028-6.3756) 2 (1-3) 0.5126 0.13 0.5975 0.0002 0.249 Day 1 GCS BT (˚C) Systolic BP (mmHg) 15 (14-15) 37.0 (36.6-37.4) 121 (110-137) 4 (3-6) 36.3 (35.6-37.8) 115 (108-121) <0.0001 0.2307 0.4143 69 (59-80) 80 (70-90) 16 (15-20) 66 (62-75) 86 (75-114) 22 (17-29) 0.8027 0.107 0.0069 8.8 (7.0-10.7) 3.16 (1.40-6.38) 0.16 (00.4-0.76) 7.8408 (7.8408-7.8408) 0 (0-1) 9.3 (8.6-14.1) 2.56 (0.84-7.37) 5.27 (1.37-14.50) 5.0304 (4.0936-5.9672) 1 (1-2) 0.299 0.855 0.0023 <0.0001 0.0202 p value Characteristics Diastolic BP (mmHg) HR (/minute) RR (/minute) WBC (×103/µl) CRP (mg/dL) PCT (ng/mL) RTS The number of SIRS ISS: injury severity score, GCS: Glasgow coma scale, BT: body temperature, BP: blood pressure, HR: heart rate, RR: respiratory rate, WBC: white blood cell count, CRP: C-reactive protein, PCT: procalcitonin, RTS: revised trauma score, SIRS: systemic inflammatory response syndrome The p values were assayed by the Wilcoxon’s test. とAUCはさらに高値となった(Fig. 1) 。 ISS ≥ 20 で有意に PCT が高値となり,PCT は Day1-2 がピーク(CRP は Day2-3)となること,Day1-7 の 考 察 CRP と PCT を 28 日予後で比較すると,PCT は死亡 本研究は,外傷患者における受傷後早期の PCT 患者で有意に高く(CRP は差がない),受傷後 21 日 と解剖学的重症度,生理学的重症度,在院転帰との 間に敗血症,重症敗血症,敗血症性ショックを合併 関連を調査した研究である。一般的に PCT は細菌 した患者では PCT は有意に高いことを報告した。 感染症のマーカーであり,細菌感染症では CRP よ Castelliら11) は94名の外傷患者のPCT,CRPを調査し, り PCT が鋭敏に上昇する 9)。一方で,外傷において PCT は外傷受傷直後に上昇(trauma-related peak)し は た後に低下し,敗血症を合併すると再び上昇(敗血 も受傷後早期より PCT が上昇する。Meisner ら 10) 90 名の外傷患者の Day1-7 の PCT と CRP を調査し, 日救急医会誌 . 2014; 25: 81-92 症合併の 1 日前と比較し有意に上昇)するが,CRP 87 原田 正公,他 Table 6. Comparison of the characteristics and surveyed variables between the survivors and non-survivors among patients with only head injuries and those multiple injuries including head injuries. Including head injuries Survivors median (quartile) Non-survivors median (quartile) p value Number of patients (men, women) Age ISS n=70 (45, 25) 68 (40-75) 18 (13-26) n=5 (5, 0) 77 (70-83) 25 (16-34) 0.0424 0.3753 Day 0 GCS BT (˚C) Systolic BP (mmHg) Diastolic BP (mmHg) HR (/minute) RR (/minute) WBC (×103/µl) 13 (8-14) 36.3 (35.8-36.9) 137 (126-161) 81 (73-91) 85 (70-100) 19 (15-24) 6 (3-9) 36.2 (34.4-37.4) 124 (57-184) 87 (27-118) 112 (79-152) 22 (16-36) 0.0064 0.4963 0.5169 0.8817 0.1209 0.2663 CRP (mg/dL) PCT (ng/mL) RTS The number of SIRS 10.9 (7.4-15.7) 0.08 (0.05-0.18) 0.03 (0.02-0.09) 7.8408 (5.9672-7.8408) 1 (1-2) 11.1 (10.3-19.5) 0.09(0.05-0.43) 0.08 (0.03-0.64) 5.4388 (3.2156-5.8218) 2 (0.5-3) 0.4257 0.6144 0.2843 0.002 0.4605 Day 1 GCS BT (˚C) Systolic BP (mmHg) 14 (8-15) 37.0 (36.4-37.3) 130 (115-147) 4 (3-5) 35.6 (35.3-37.6) 0.0026 0.0849 70 (63-81) 80 (67-91) 17 (15-22) 115 (103-141) 72 (54-83) 86 (74-127) 28 (17-30) 0.2646 0.8234 0.1607 0.0675 9.5 (7.2-11.6) 3.19 (1.33-7.25) 0.32 (0.06-0.83) 7.8408 (5.9672-7.8408) 1 (0-1) 9.2 (7.0-14.8) 5.59 (1.15-8.33) 6.80 (2.21-42.7) 4.7396 (4.0936-5.4988) 1 (1-3) 0.807 0.6327 0.0009 0.0019 0.0628 Characteristics Diastolic BP (mmHg) HR (/minute) RR (/minute) WBC (×103/µl) CRP (mg/dL) PCT (ng/mL) RTS The number of SIRS ISS: injury severity score, GCS: Glasgow coma scale, BT: body temperature, BP: blood pressure, HR: heart rate, RR: respiratory rate, WBC: white blood cell count, CRP: C-reactive protein, PCT: procalcitonin, RTS: revised trauma score, SIRS: systemic inflammatory response syndrome The p values were assayed by the Wilcoxon’s test. は持続的に高値(敗血症合併の 1 日前と比較して有 で有意に高いが,Day1 と ICU 退室時の CRP と PCT は 意な上昇がない)であることを報告した。Sakran 敗血症,重症敗血症,敗血症性ショックと無関係で ら 12) は 80 名の多発外傷患者の PCT を調査し,敗血 あることを報告した。これらの研究は,外傷患者で 症を合併してもしなくても受傷後早期 (24時間以内) は PCT は受傷後早期に一過性に上昇した後に,敗 に PCT は一旦上昇した後に低下するが,敗血症合 血症を合併すると再上昇することを示唆している。 併患者ではその後再上昇することを報告した。Balci つまり外傷患者の PCT は受傷後早期(急性期)と ら 13) は 113 名の多発外傷患者の Day1,7,ICU 退室時 敗血症合併期(亜急性期)の二峰性のピークをとり, の PCT と CRP を 調査 し,PCT,CRP とも に ISS>20, 亜急性期のピークは敗血症合併の早期診断に非常に 30 日以内死亡例は有意に(とくに Day7 で)高く, 有用である。一方,急性期の PCT 上昇は敗血症合 Day7 の CRP と PCT は重症敗血症や敗血症性ショック 併がなくても上昇するが,敗血症を合併する患者で 88 JJAAM. 2014; 25: 81-92 Sensitivity 1.00 0.90 0.80 0.70 0.60 0.50 0.40 0.30 0.20 0.10 0.00 0.00 0.20 0.40 0.60 0.80 1.00 1-Specificity GCS (Day 0) + PCT (Day 1) AUC = 0.94203 1.00 0.90 0.80 0.70 0.60 0.50 0.40 0.30 0.20 0.10 0.00 0.00 0.20 0.40 0.60 0.80 1.00 1-Specificity GCS (Day 1) AUC = 0.91304 Sensitivity Sensitivity 1.00 0.90 0.80 0.70 0.60 0.50 0.40 0.30 0.20 0.10 0.00 0.00 0.20 0.40 0.60 0.80 1.00 1-Specificity GCS (Day 0) AUC = 0.88768 Sensitivity Sensitivity Sensitivity 外傷患者における PCT の上昇についての検討 1.00 0.90 0.80 0.70 0.60 0.50 0.40 0.30 0.20 0.10 0.00 0.00 0.20 0.40 0.60 0.80 1.00 1-Specificity PCT (Day 1) AUC = 0.90700 1.00 0.90 0.80 0.70 0.60 0.50 0.40 0.30 0.20 0.10 0.00 0.00 0.20 0.40 0.60 0.80 1.00 1-Specificity GCS (Day 1) + PCT (Day 1) AUC = 0.98309 1.00 0.90 0.80 0.70 0.60 0.50 0.40 0.30 0.20 0.10 0.00 0.00 0.20 0.40 0.60 0.80 1.00 1-Specificity RTS (Day 0) AUC = 0.89855 Fig. 1. ROC curve in head trauma patients. AUC is area under the curve. はより高くなる。Castelli ら 11) は前述研究のなかで, とを示唆する。またD1のPCTは頭部外傷,四肢外傷, 入院時の PCT は敗血症合併患者で有意に高いこと 多 発 外 傷 で ISS>20 の 方 が 有 意 に 高 か っ た(Table を報告した。本研究は急性期の PCT 上昇に着目し, 3-B) 。Maierら 14) は.74名の外傷患者のPCTを調査し, その臨床的意義を明らかにすることを目的とした。 Day1 に PCT はピークとなるが ISS が高い患者ほどよ 解剖学的重症度に関する検討:D1 の PCT は ISS が り高く上昇すること,外傷部位では ISS ≥ 25 の腹部 高いほど高値となった(Table 3-A) 。これは急性期 外傷患者(とくに胸部外傷を伴う肝脾・肝・腸管外傷) の PCT 上昇が解剖学的重症度をいくらか反映するこ で高いことを報告した。また Sauerland ら 15) は 98 名 日救急医会誌 . 2014; 25: 81-92 89 原田 正公,他 の外傷患者の PCT を調査し,PCT は腹部・四肢外傷 た(Table 4-A, B, C)。Oconnor ら 17) は前述の調査で, で受傷後早期に高値となり,頭部・胸部外傷でも若 GCS が低い程 Day0 の PCT が高くなることを報告し 干上昇することを報告した。本研究でも腹部外傷の た。また頭部以外の外傷において GCS と PCT を検 PCT は有意ではないもののその絶対値は他部位より 討した先行研究はない。頭部外傷における GCS は 高 値 で あ っ た。Russwurm ら 16) は 全 身 の 各 臓 器 の 解剖学的重症度を反映していると思われた。 PCT 産生に関連する遺伝子を調査し,肝,精巣,肺, 在院転帰に関する検討:頭部外傷において在院転 前立腺,腎,小腸,膵などで多く発現し,心や脳で 帰に関連する因子として GCS と D1 の PCT が抽出さ も若干多いことを報告した。急性期の PCT 上昇は, れ,これらを組み合わせることでより高い AUC と 敗血症合併の有無に関わらず(合併すればより高く なった(Fig. 1)。Oconnor ら 17) の前述した調査では, なるが) ,外傷自体の刺激により上昇し,その上昇 死亡率に関する AUC は Day0 の PCT で 0.56,Day7 ま は外傷部位の PCT 産生遺伝子に関連している可能 での PCT の平均値で 0.64,PCT のピーク値で 0.68 で 性がある。AIS 区分では四肢外傷は骨盤外傷を含む あった。頭部外傷において GCS はその重症度を表 ため,本研究の四肢外傷を骨盤外傷と非骨盤外傷に す指標の一つである。急性期の PCT 上昇は敗血症 分けて D1 の PCT(中央値(四分位点) )を比較する 合併のみではなく,その解剖学的重症度をいくらか と,骨盤外傷は 1.23(0.09-3.16),非骨盤外傷は 0.09 反映する。頭部外傷患者では,これらを組み合わせ (0.04-0.35) で 有 意 に 骨 盤 外 傷 が 高 値(p=0.0021) ることで,頭部外傷自体の重症度評価・予後予測を であった。四肢外傷で PCT が上昇するのは主に骨 行うことができたり,より早期からの抗生剤投与を 盤外傷であり,これは骨盤内臓器への刺激の為と思 行うことで敗血症への進展防止につながる可能性が われた。本研究では頭部外傷,ISS>20 の四肢(主 ある。しかし,本研究の頭部外傷患者はわずか 75 に骨盤) ,多発外傷例で D1 の PCT が有意に高く,腹 例で,死亡例も 5 例であり,ロジスティック回帰分 部外傷で絶対値が高いのは,外傷自体の刺激や PCT 析を行うには不十分な症例数であるため,解析結果 産生遺伝子が関連している可能性がある。 には限界が存在することを申し添える。 生理学的重症度に関する検討:RTS<5 群で D1 の 結 語 PCT が高い傾向があり(Table 4-A) ,SIRS 群で D0・ D1 の PCT は有意に高値であった(Table 4-D) 。Sakran 外傷患者の急性期(24 時間以内)の PCT 上昇は ら 12) は,敗血症群と SIRS(敗血症なし)群,敗血症 外傷自体の刺激で上昇し(部位特異性あり),解剖 群と non-SIRS 群の PCT を比較し,敗血症群では有意 学的重症度が高いほど高値となる。 に高値であったが,SIRS(敗血症なし)群と non- また頭部外傷では,GCS ≤ 8 の患者では急性期の SIRS 群の PCT の比較では有意差がないことを報告し PCT は高値となり,GCS と組み合わせて重症度評 た。Oconnor ら 17) は,62 名の頭部外傷とくも膜下出 価・予後予測の一助となる可能性がある。 血の患者の Day0-1,4-7 の PCT について調査し,こ れらの PCT の平均値は non-SIRS 群より SIRS(敗血症 利益相反:本研究は国立病院機構共同臨床研究事業 なし)群で有意に高く,敗血症群ではさらに高くな における多施設共同研究であり,開示すべき利益相反 ることを報告した。 関係は一切ない。 本 研 究 で は D0 の PCT と D1 の CRP,PCT は SIRS 群で有意に高く,SIRS 群では CRP よりも PCT が早 期に反応し上昇するといえる。一方,D1 の PCT は RTS<5 群で高い傾向を認め,GCS が主要因子であっ 90 文 献 1) 松本哲哉 : プロカルシトニン . Med Technol. 1999; 27: 325-6. JJAAM. 2014; 25: 81-92 外傷患者における PCT の上昇についての検討 2) Assicot M, Gendrel D, Carsin H, et al: High serum procalcito- and C-reactive protein to inflammation, complications, and nin concentrations in patients with sepsis and infection. Lan- outcome during the intensive care unit course of multiple- cet. 1993; 8844: 515-8. 3) Becker KL, Nylen ES, White JC, et al: Clinical review 167: Procalcitonin and the calcitonin gene family of peptides in inflammation, infection, and sepsis: a journey from calcitonin back to its precursors. J Clin Endocrinol Metab. 2004; 89: 1512-25. 4) Nylen ES, O’Neill W, Jordan MH, et al: Serum procalcitonin as an index of inhalation injury in burns. Horm Metab Res. 1992; 24: 439-43. 5) Sauerland S, Hensler T, Bouillon B, et al: Plasma levels of procalcitonin and neopterin in multiple trauma patients with or without brain injury. 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Anaesth Intensive Care. 2004; 32: 465-70. 91 原田 正公,他 ABSTRACT Investigation of increase of the serum procalcitonin levels in the acute phase in trauma patients Masahiro Harada 1, Hiroshi Uenohara 2, Kyoichi Sugita 3, Takaaki Kikuno 4 Yuichi Koido 5, Akio Kimura 6, Tatsuo Takahashi 7, Akinori Wakai 8 Sadao Kawasaki 9, Yasusuke Miyagatani 10, Tadashi Kaneko 11, Kazumi Kumagai 11 Hayato Takayama 12, Takeshi Takahashi 1 1 National Hospital Organization Kumamoto Medical Center 2 National Hospital Organization Sendai Medical Center 3 National Hospital Organization Mito Medical Center 4 National Hospital Organization Tokyo Medical Center 5 National Hospital Organization Disaster Medical Center 6 National Center for Global Health and Medicine 7 National Hospital Organization Nagoya Medical Center 8 National Hospital Organization Osaka Medical Center 9 National Hospital Organization Minami-Wakayama Medical Center 10 National Hospital Organization Kure Medical Center 11 National Hospital Organization Kanmon Medical Center 12 National Hospital Organization Nagasaki Medical Center Purpose: It has been reported that the serum procalcitonin (PCT) levels increase in patients with systemic infections, especially bacterial infections. On the other hand, there are also some reports of increase of the serum PCT levels after injuries, e.g., in trauma patients. In this study, we investigated the changes in the serum PCT levels in emergency trauma patients to determine if there might be correlations between the serum PCT levels and the site of injury, severity of injury and outcome of the patients. Objectives and Methods: Trauma patients admitted to 11 participating emergency and critical care centers affiliated to the National Hospital Organization, Japan, from April 1, 2010 to February 28, 2012 were registered for this study. Data on the severity of the injuries, vital signs, serum CRP and PCT levels at admission (Day0) and at 12-24 hours after admission (Day1) were recorded. The outcome of the patients were reviewed, and the relationships between the site of injury/ severity of injuries and the serum levels of PCT were determined by univariate analysis, and the relationship between the in-hospital outcomes and serum PCT levels was evaluated by multivariate analysis. Results: A total of 218 patients were enrolled. Comparison of the serum CRP and PCT levels between Day0 and Day1, revealed significantly higher values of these parameters on Day1, irrespective of the site of injury. Serum PCT levels on Day1 increased as the ISS (injury severity score) increased. In the ISS>20 group, the serum PCT levels on Day1 were significantly higher in the patients with head injuries, extremity injuries and multiple injuries. A comparison of the variables in relation to the in-hospital outcome revealed significant differences in the GCS on Day0 and Day1, and in the serum PCT levels on Day1. A logistic regression analysis focusing on head trauma patients, identified serum PCT levels on Day1 and the GCS scores on Day0 and 1 as predictors of the in-hospital prognosis, and the area under the ROC curve for the GCS score and serum PCT levels on Day1 was 0.98309. Conclusion: Our results indicate that the serum PCT levels on Day1 increase in proportion to the trauma severity in patients with head, extremity and multiple injuries. A combination of the GCS score and serum PCT levels on Day 1 may be useful for prediction of prognosis in these patients. (JJAAM. 2014; 25: 81-92) Keywords: head injury, severity, outcome Received on November 6, 2012 (12-123) 92 JJAAM. 2014; 25: 81-92
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