スライド2枚

第5回チーム医療実践セミナー
2010年10月7日
なぜチーム医療に
取り組むのか?
一般社団法人チーム医療フォーラム
代表理事
東葛クリニック病院 副院長
秋山和宏
なぜチーム医療に取り組むのか?
本日のコンテンツ
1. 患者中心の医療実現のため
(レバレッジ戦略)
2. 医療人としての成長のため
3. より良き医療、社会の実現のため
1
レバレッジ(leverage)とは
てこの原理。てこを使えば軽い錘で重い荷
物を動かせるように、レバレッジを使えば少
ない自己資本で大きな資本を動かせる。
チーム医療の真骨頂
2
NST加算額は妥当か
2,000(円)×30(人)×4(週)=24万円
,
保険料、福利厚生費などを考慮する
までもなく、専従者1名の年間所得も
賄えない。
↓
専従者問題がクリアできずに加算算
定を断念している施設が多い。
3
NST加算算定病院が少ない訳
•
加算額では専従者1人の年間所得
も賄えない
•
誤った原価計算
•
NST活動のコスト=間接費・固定費
活動
間接費 固定費
直接費と間接費
直接費 その発生が事業や製品等に
直接結び付けられる費用
間接費 コストの発生が事業や製品と
直接結びつかない費用
(間接費の大半は固定費である)
4
間接費の配賦
allocation
•
間接費は何らかの基準で配賦する(割り振
る)必要がある
•
合理的な配布基準を見つけるのは難しい
•
より正確な間接費配賦を目的とした原価計
算として活動基準原価計算(ABC)がある
尾鷲総合病院におけるNST導入効果
1.
2.
3
3.
4.
5.
6.
7.
8.
9.
平均在院日数の短縮(21.0→15.9日)
医学管理料・指導料の増加(113% 1億3千万円増加)
注射薬使用量の減少(69 7% 1億3千万円削減)
注射薬使用量の減少(69.7%
アルブミン製剤使用量の減少(40.3% 1,438万円削減)
褥瘡経費削減(1,800万円)
摂食可能症例の増加・治療期間の短縮
医療安全管理のコスト削減
生活習慣病対策チームによる地域予防医学への貢献
年間1億4,000万円の経費削減(2億6千万円のキャッ
シュ・フローの増加)
出典:東口髙志、日外会誌 105 (2) :206-212, 2004
5
レバレッジ効果
利益
投資利益率ROI
= ―――― × 100
(return on investment)
投資額
支点=専従者
NST加算 支点は何?
診療の質を担保するための条件
• 多職種の参加
多職種 参加
• 研修修了者
• 専従者の設置
支点こそ重要
支点=専従者の力量
6
チーム医療をスタートさせるための必要条件
NSTを例に
1 チ ム医療の風土
1.チーム医療の風土
•診療科、職種の枠を超える概念
2.メンバーの存在
•栄養に関する「知識」
•NSTに関する「見識」
•医療人としての「胆識」
NSTに関する「見識」とは?
•
•
•
•
•
単なる「知識」ではない
マニュアルとも違う
栄養の重要性を痛感
体験に基づく「知」
「暗黙知」
7
NSTが始められない理由
↓
栄養に関する“知識”はあるが、
チーム医療に関する“見識”がない。
↓
他(多?)施設見学
NSTが壁に突き当たる理由
• NSTの正論だけでは受け入れられない
(EBMのガチンコ勝負は避けるべし)
→“これまで、NST無しでうまくやってきた”
という保守的正論には勝てない(抵抗勢力?)
• “もうこれ以上、仕事を増やさないで…”
という現場の声。
組織の制度疲労、組織の衰退
8
抵抗勢力って本当にあるの?
• NSTは所謂、ニッチである。
• 既得権を有する組織、勢力無し。
既得権を有する組織 勢力無し
→実際、命がけで抵抗する勢力なんて無い。
→存在するとすれば、もう仕事を増やさないで
という「事なかれ主義」、やっても無駄という
「虚無主義」ぐらい。
抵抗勢力ならぬ“虚無勢力”
虚無勢力に対抗するために:
医療人としての「胆識」を持て!
• たと
たとえ自分ひとりだけでも活動し続ける
自分 と だ
も活動 続 る
(修羅場ではエビデンスは役立たない)
• 医療人としてのモラル、覚悟
• 生きざま、哲学、思想
生きざま 哲学 思想
チーム医療成功のリトマス試験紙
9
仕事量の増加にどう答えるか
現場の声:
「これ以上仕事を増やさないで・・・」
「これ以上仕事を増やさないで
(組織の制度疲労、閉塞感、事なかれ主義)
「もう満腹。
でも おいしいデザ トは別腹よ!」
でも、おいしいデザートは別腹よ!」
→NSTも別腹と考えよう!!
医療人としての成長のため
チーム医療の経験
•
•
•
•
•
•
患者視点
多職種、多視点
実力主義、下克上
生産性向上の機会、ストレッチ
コミュニケーション能力強化
「知識」「見識」「胆識」の養成
10
日本の医療界の問題
1 エビデンス
1.エビデンス
2.医療政策
足りない
ものは?
3.やりがい、働きがい、
生きがい
この国の医療を
元気にしたい
11
この国の医療を良きものに変える
チーム医療
↓
医療人の生きがい
↓ 「ES無くしてCS無し」
患者満足度向上
↓
新たな医療の可能性
二人の石切り職人
田坂広志:『自分であり続けるために』より
一人目の石切り職人:時間労働者
人目の石切り職人:時間労働者
二人目の石切り職人:有意の人材、プロの職業人
• その仕事の彼方に、
何を見つめているか
• それが、我々の
事の価値」を定める
「仕
ご静聴 有り難うございました
12
第5回チーム医療実践セミナ- 神戸
臨床検査技師のチーム医療への取り組み
病棟臨床検査技師
社団医療法人養生会かしま病院
医療技術部臨床検査科
金子隆子
社団医療法人養生会
≪かしま病院≫
• 診療科目:内科 呼吸器科 消化器科 循環器科 外科 整形外科 婦人科
•
リハビリテ―ション科 放射線科
• 開設年月:昭和58年4月
• 病床数 :237床 回復期リハビリテ-ション病棟(59床-1単位)
•
一般病床(178床―4単位 うち亜急性期17床)
• 付帯設備:健診センター
≪クリニックかしま≫
• 付帯設備:在宅療養支援診療所収容
•
透析センター(最大数125名 血液透析&腹膜透析)
•
通所リ ビリテ ション
通所リハビリテーション
•
外来リハビリテーション
≪かしま訪問看護ステーション≫
≪かしまヘルパーステーション≫
1
病棟臨床検査技師誕生の経緯
• 看護師不足などにより、病棟看護師の業務が激
務となっていた(リサ チ)
務となっていた(リサーチ)
• 「病棟臨床検査技師」の資料を人事部・看護部
に配布
• 看護部で「病棟クラーク」を探していた(このとき
事務職でよかった)
• 臨床検査技師で産休補助のパート職員が継続
雇用を希望していた
• 関係部署と粘り強く交渉し、交渉成立
• 看護部所属で、始めは否定的だったが、受け入
れられ、次第に「いなくてはならない人」となった
病棟臨床検査技師としての障害
• 当初は看護師の仕事の領域を奪わ
れるという拒絶感があった
• 検査科のスタッフに検査科内の業務
が優先ではという意識が強かった
2
病棟臨床検査技師として
看護部所属 1名 終日業務
担当病棟 急性期混合病棟(西2病棟)
外科 内科 呼吸器科など
医療技術部所属 1名 午後のみ業務
担当病棟 急性期混合病棟(東2病棟)
整形外科 婦人科 内科など
病棟臨床検査技師
3
検査関連業務
① 医師からの検査指示受け・結果報告・異常値報告
②
③
④
⑤
⑥
⑦
⑧
⑨
⑩
⑪
⑫
採血業務(8:30~17:00)・出血時間・採取管準備
感染症管理:HCV・HBV・STS・MRSA・疥癬など
検査指示ひろい・検査依頼伝票作成
検査報告書の管理
検査室~問い合わせ,病棟~問い合わせ対応
検査関係物品管理
緊急時の心電図検査
チーム医療:NST・褥瘡研究チーム・乳癌チームなど
看護師への検査項目説明や特殊検査説明など
病棟測定器のチェック
病棟と検査室間の患者搬送
NSTとして
4
病棟の感染症管理
事務的業務
•
•
•
•
•
•
•
入院患者登録
病棟日誌記入
勤務表入力
アセスメント評価入力
各種伝票管理
カル 整理
カルテ整理
レントゲンフィルム整理
etc
5
その他の業務
•
•
•
•
ナースコール対応
ナ
ス
ル対応
患者家族の対応
面会者の対応
NSTや乳癌チームでの症例検討会のため
に資料のまとめスライド作成などを若い
看護師への指導
etc
病棟看護師へのアンケート
• 所属病棟
所属病棟:急性期混合病棟
急性期混合病棟
• 看護師34名に無記名でアンケートを
実施し、33名から回答を得た
6
どのような人材が適していると思いますか
[性格]
静か・明るい・ま どうでもよい
6%
じめ
3%
静か・明るい
3%
明るく・まじめ
31%
明るい
57%
どのような人材が適していると思いますか
[年代]
20代 20~40代
3%
3%
幾つでも
16%
20~30代
12%
30代
50%
30~40代
16%
7
5)他の病棟にも検査技師は必要ですか
わからない
9%
必要ない
6%
必要
85%
ぜひやってもらいたい
業務な何ですか
感染症管理
2
DM指導
指導
2
蓄尿関係
3
血糖検査
6
検査相談
12
NST
15
採血
15
ベットサイド生検補助
16
検査説明
18
ポータブル心電図
19
0
5
10
15
20
8
病棟に臨床検査技師が
いてよかったことは?
• わからない時すぐ聞くことができ、ミスをすることが
減った
• 特殊項目などのとき、採血管の種類や手技など教
えてもらえる
• 状態の悪い患者の検査データをいち早く医師に
提示し、医師と早急な対応が図れるようになった
• 検査内容の詳細を説明し教えてもらえる
• 検査室とのコミュ二ケーションが良くなった
• 急な検査依頼や輸血の発注など任せられる
病棟臨床検査技師として飯ケ谷が勤務してい
ますが率直な意見をお聞かせ下さい
• 検査データに対して的確なアドバイスがもらえ、医
師の間に看護師がはいらなくてもよい
• NSTラウンドでもデータ分析が的確であり学ぶこと
ができる
• 医師や看護師に言いづらい患者や家族の話の聞
き役になってくれる
• 業務以外にもテキパキと仕事をこなしとても頼れ
る存在である。
る存在である
• とても助かる、これからも居てほしい
• 家族の背景や患者さんの情報をよく把握してい
て、教えてもらうこともある
9
病棟医師からのコメント
• 患者の経過などをリアルタイムに把握すること
が可能となり 治療計画をたてるにあたり医師
が可能となり、治療計画をたてるにあたり医師
が必要な検査などについて相談しやすい
(電話や口頭では伝わりにくい細かなニュアン
スなど情報を共有することが可)
• 異常値が出た場合など、病態に直結するもの
であるか あるいは不適切な採血採取による
であるか、あるいは不適切な採血採取による
ヒューマンエラーなのかの判断が容易となり無
駄な再検を少なくできる
まとめ
• 病棟に臨床検査技師が常駐し、4年経過した。
• 病棟で検査技師は検査関連業務は勿論様々な
病棟 検査技師 検査 連業務 勿論様々
場面で必要とされ信頼されているのがわかった
• また、当初考えてもいなかった多忙な医師や看護
師では埋めきれなかった「患者と家族」の心のケ
アというニーズもあった
• 病棟は検査技師にとって計り知れない魅力的な
場といえよう
10
当院における肝臓病教室の
現状について
倉敷中央病院 臨床検査科
○宇野 二郎
山田佐知枝
影岡 武士
はじめに
当院ではチーム医療の一環として、糖尿病教室、
肝臓病教室、腎臓病教室など患者さんやそのご家族
を対象とした勉強会を、各科が主催で医師、看護師、
栄養士、薬剤師、臨床検査技師、ソーシャルワーカー、
理学療法士など、多数の職種がメンバーに加わり、定
期的に教室を開催している。
今回、2005年4月より第2土曜日の14時から開催し
ている、消化器内科主催の肝臓病教室について、内容
を現状および改善点について紹介する。
1
肝臓病教室企画運営に必要なデータ(共有ファイル)
1.肝臓病教室メンバー表
2 肝臓病教室年間計画表
2.肝臓病教室年間計画表
3.肝臓病教室本番手順・肝臓病教室準備会の当番表
4.肝臓病教室本番手順・肝臓病教室準備会の手順マニュアル
5.肝臓病教室準備会議事録
6 本番肝臓病教室実施記録
6.本番肝臓病教室実施記録
7.講義内容フォルダ(印刷用・過去の講義内容の記録)
8.肝臓病教室アンケート調査結果
9.50回記念教室プロジェクト(議事録・画像など)
肝臓病教室メンバー表( ☆代表者)
職種
所属部署
氏名
連絡先
医師
消化器内科
☆下村Dr
3121
医師
消化器内科
詫間Dr
3742
医師
消化器内科
守本Dr
3694
職種
人数
栄養士
栄養治療部
☆高瀬
3909
医師
5
栄養士
栄養治療部
柏谷
2510
栄養士
2
薬剤師
薬剤部
☆有澤
2568
薬剤師
8
薬剤師
薬剤部
大本
2561
MSW
5
ソーシャルワーカー
医療相談室
石井
3999
PT
4
ソーシャルワーカー
医療相談室
☆板谷
2406
臨床検査技師
5
PT
理学療法室
☆泊
3641
事務
1
臨床検査技師
化学・免疫検査室
☆宇野
2495
看護師
16
臨床検査技師
化学・免疫検査室
馬渕
2494
放射線技師
2
臨床検査技師
第二生理検査室
石坂
3507
事務
医事(外来)
☆中島
3937
看護師
外来
☆橋本
3895
構成人数
2
平成22年 肝臓病教室計画(案)
肝臓病教室(患者さん・ご家族向け)
肝臓病教室準備会
1月16日(土)
肝臓病教室50回スペシャ
ル
全職種
2月13日(土)
第51回 肝硬変の消化管
合併症と肝腫瘍
医師(詫間)、
薬剤師、
放射線技師
看護師(コーディネーター)
3月13日(土)
第52回 肝硬変:日常生
活上の注意
医師(利国)、
栄養士
PT
看護師(コーディネーター)
4月10日(土)
第53回 肝臓とアルコール、 医師(○○)
薬・サプリメント(微量金属
栄養士
やビタミンなど)
薬剤師
看護師(コーディネーター)
5月8日(土)
第54回 慢性肝炎:肝硬
変 進まな よう するた
変へ進まないようにするた
めの治療
医師(下村)
薬剤師
MSW
看護師(コーディネーター)
6月12日(土)
第55回 健診でみつかる
肝臓病
医師(守本)
臨床検査技師
栄養士
理学療法士
看護師(コーディネーター)
7月第3週
(7/21)
*講演内容は、1月の50回記念の
アンケート内容やスタッフの意見を
組み込み変更される可能性があり
ますのでご了承ください。
実施予定
(23年度の内容について)
肝臓病教室および準備会の実務担当月の決定
肝臓病教室(本番)会場準備当番表
グループ
部署
1グループ
薬剤部
2グループ
3グループ
4グループ
グ
プ
2-5
担当月
外来
H22.11 H22.2 H22.6
9-5
栄養治療部
H22.12 H22.3 H22.7
5-3
医療相談
検査科
リ ビリ
リハビリ
H21.11 H22.4 H22.9
H21.12 H22.5 H22.10
2010年8月と2011年1月は休み
4グループでサイクルします。
肝臓病教室(準備会)担当表
開催年月
進行担当
検査科
書記担当
外来
開催年月
H.20.7
進行担当
医療相談
書記担当
リハビリ
H.19.6
H.19.11
5-3
2-5
栄養治療
部
薬剤部
5-3
2-5
栄養治療部
薬剤部
医療相談
H.20.11
H.21.7
H.21.11
H.22.7
リハビリ
9-5
検査科
外来
5-3
9-5
検査科
外来
5-3
2-5
外来
2010年8月と2011年1月は休み
3
肝臓病教室 本番会場準備担当者用手順
<資料印刷担当の方>
資料
・次回本番担当者は、2週間前までに講義担当者にTELし、資料の確認と送付先を伝達する。
・送られた資料に通し番号をつける。
・コピーの場所は、庶務課のカラーコピー機か図書室のカラー印刷できるパソコンを使う。
庶務課でコピーの場合
庶務課の人に声をかけ、許可をもらう。
(印刷時間が長いのでコピーをあまり使わない夕方の時間帯がよい)
図書室のカラー印刷
・時間はかかるが庶務課のコピ 機と平行して利用すると効率的
・時間はかかるが庶務課のコピー機と平行して利用すると効率的
・資料印刷の枚数は70部(カラー50部、白黒20部)A-4サイズ
・本番1週間前までに共有ファイルから印刷を行う。
<講義担当の方>
・本番一週間前までに、共有ファイルに入れ、担当部署にメールで送る。
・分かりにくい漢字には振り仮名をつける。
・専門用語や略語はなるべく使わない。
・印刷しても見える文字の大きさにする。
・資料の残り分は外来で患者サービス用として使用する。
<ポスター(A-4サイズ)>広報課にメールで送付・1か月前の本番受付で配布する。
(カラー50部、白黒20部)
<ポスター(B-4サイズ)>の掲示場所と配布枚数(合計11枚)
・外来 (3枚)、9-5棟 (1枚)、5-3棟 (1枚)
・2-5棟(1枚)、医療相談 (1枚)、スカイテン (1枚)
・採血室 (3枚)
会場
予約
橋本師長さんが予約
優先順位 ①第1会議室
②第5会議室
③大原記念ホール
④古久賀ホール:岡崎所長さんに電話で予約(PHS3908)
よく分かる検査データの読み方
(肝臓編)
臨床検査科
検査データ
AST
ALT
化学・免疫検査室
宇野 二郎
4
LDH(乳酸脱水素酵素)
全身のアンテナの役目!
精査
肝臓や心臓、その他いろいろな臓器
肝臓や心臓
その他いろいろな臓器
に存在するため、肝臓病や心臓病以
外の病気でも上昇します。
LDH1↑・LDH2↑:心筋梗塞・腎梗塞・溶血性貧血
LDH2↑,LDH2,3↑:白血病・リンパ肉腫・癌・肺梗塞
LDH3↑,LDH4↑,LDH5↑:転移癌
LDH5↑:急性肝炎・脂肪肝・原発性肝癌・うっ血肝
臨床参考値:120~240 IU/l
健診でみつかる肝臓病
(健診検査データの読み方)
(肝臓編)
臨床検査科
化学・免疫検査室
宇野 二郎
5
血液でわかる検査項目
生化学検査
血液検査
総蛋白、アルブミン、ZTT、TTT
白血球、赤血球、
CHE、AST、ALT、LDH、ALP
ヘモグロビン、血小板
γ-GTP、総コレステロール
ヘマトクリット
ビリルビン、中性脂肪
血清検査
腫瘍マーカー(オプショ
ン)
CEA CA19 9 AFP
CEA、CA19-9、AFP
HBs抗原、HCV抗体
CA-125
血液
CRP
受講者数の推移
30
25
20
15
10
5
0
2005年
2006年
2007年
2008年
2009年
2010年
2005年~2008年:ポスターの掲示、次回開催パンフレットの配布
2009年以降は、広報課より新聞および市の広報紙に案内を掲載する
6
アンケート調査からの要望事項
1.膵臓や胆のうについてもトピックスとして取り上げて欲しい。
2.年間の予定表を教えて欲しい。
3.専門用語を使わず、病人にわかるように説明して欲しい。
4.高齢者には資料の文字が小さいようだ。
5.実際の血液検査結果を聞きたい。数値が解らないと日常生活
の注意につながらない。
6.5分くらい休憩を入れて欲しい。ずっと集中するのはしんどい。
7.超音波は解りにくい。
8.もう少し、ゆっくり分かり易く話して欲しい。
アンケート調査からの感想
1.普段は聞けない肝臓病の症状が医師から聞けてよかった。
2 講座を楽しく聴いている C型肝炎は憎いが 勉強できるので
2.講座を楽しく聴いている。C型肝炎は憎いが、勉強できるので
感謝している。
3.食事づくりに気をつけなければいけない事がよくわかった。
4.家族として、病人管理に役立った。病気を知る大切さを学べた。
5 自分の画像でないので、落ち着いて客観的に見たり、考えたり
5.自分の画像でないので、落ち着いて客観的に見たり、考えたり
できた。
6.正常な画像と比較して見えるので、分かりやすかった。
7
肝臓病教室第50回記念スペシャル
肝臓病教室の風景
8
ま と め
1.チーム医療の一環として、他職種の方と交流ができ、
他職種との連携が高まった。
2.分かり易い言葉で説明することの大切さを学んだ。
3.外来受診時の診療時間では、病気や検査についての
説明が十分、行われていない現状がわかった。
4.今後、受講者の方の生の声やアンケートのご意見・ご
要
望を取り入れて、教室に来てよかったという感想が今、
以上に増えるよう努力したい。
9
第5回チーム医療実践セミナー:神戸
臨床検査技師のチーム医療への取り組み
ー 呼吸リハビリテーションについて
呼吸リ ビリテ シ ンについて ー
獨協医科大学越谷病院
臨床検査部
内山 健二
呼吸リハビリテーション(呼吸リハ)開始の背景
• COPD患者の増加等により呼吸リハの重要
性と必要性が広く認識されてきた。
性と必要性が広く認識されてきた
• 呼吸リハは呼吸器の病気による障害を持つ
患者に対して機能の回復あるいは維持させ
患者自立を継続的に支援するための医療で
ある。
日本呼吸器学会ステートメント(2002年)より
日本呼吸器学会ステ
トメント(2002年)より
• 当院では2007年1月より主にCOPD患者を
中心に呼吸リハを開始した。
1
獨協医科大学越谷病院呼吸リハチーム
立ち上げまでの経緯
2006年6月 病院へ提案
呼吸器内科より、呼吸リハ入院を病院に対して提案を行う。
2006年7⽉
呼吸リハチーム結成
病院長を始め各部門(看護部・臨床検査部・薬剤部・栄養
部・事務部)に協力の要請を行い、承諾を得る。
2006年9⽉
勉強会開始
第2、4木曜日に勉強会を開催し、入院プログラムとパンフ
レットを作成するなど準備を進める。
2007年1⽉
スタート
呼吸リハの目的
• 呼吸困難の軽減
• 運動耐容能の改善
• 生活の質(QOL)の向上
)
• 日常動作(ADL)の向上
2
呼吸リハチームのメンバー構成
•
•
•
•
•
•
•
•
•
呼吸器内科医師 2名
病棟外来看護師 4名
理学療法士 2名
作業療法士 2名
薬剤師 1名
管理栄養士 2名
医事課事務員 1名
臨床検査技師 4名
臨床心理士(必要に応じて)1名
呼吸リハのチームカンファレンス
月2回開催(毎月第2・4金曜日)
• 呼吸器内科医師を中心に各職種による呼吸
リハ患者の状況報告
• 入院予定患者の面談結果と患者プロフィール
の報告
• 検査結果と検査時の患者状態の報告(臨床
検査技師)
3
呼吸リハのプロセス
患者の選択
家族をふくめた面接
呼吸リハ前の評価
入院呼吸リハ
外来呼吸リハ
呼吸リハ後の評価(半年後、1年後)
患者の選択基準
• 症状はあるが病態の安定しているCOPD
患者
• 呼吸器疾患による機能的制限がある患
者
• 呼吸リハに対し積極的な参加意思がある
患者
4
患者・家族との面談内容
面談者
医師 外来看護師 医事課事務員
• 医師、外来看護師、医事課事務員
面談内容
• 患者プロフィール
• 身体障害の有無
• 既往歴
• 日常生活の近況(日常動作の程度)
• 呼吸リハの目的を何にするか(動機付け)
患者の評価項目
医師・看護師等
・問診および身体所見
・呼吸困難感
呼吸困難感
・経皮的酸素飽和度
・栄養評価(BMIなど)
・健康関連QOL評価
・動脈血液ガス分析
・胸部X線
・ADL評価
理学療法士
・上肢筋力測定
・下肢筋力測定
・握力測定
臨床検査技師
・心電図
心電図
・スパイロメトリー
・6分間歩行試験
・運動負荷試験
・呼吸筋力測定
・睡眠時無呼吸検査
• 医師による評価
5
呼吸リハのクリニカルパス概要
• 入院から退院まで11日間のプログラム
(HOT導入などの場合は16日間)
• 教育的指導(病態・薬・酸素療法・栄養・心
理面の援助・自己管理)
• 運動療法
• 生理機能検査(臨床検査技師)
当院呼吸リハのクリニカルパス
臨床検査技師が主に関わる検査
6
クリニカルパスにおける
生理機能検査のスケジュール詳細
検査項目
・スパイログラ
ム
・運動負荷試験
・呼吸筋力測定
・6分間歩行試
分間歩行試
験
・呼吸筋トレー
ニング
・SAS(簡易)
入院
前
2日目
4日目
5日目
6日目
7日目
8日目
◎
◎
◎ ◎
◎
9日目
◎
◎
◎
◎ ◎ ◎ ◎ ◎
◎ ◎ ◎
院内の廊下を利用した6分間歩行試験(6MWT)
6分間で歩行した距離の測定(片道30m)
・50m以上の増加で運動能力の自覚的改善が認められる
7
呼吸リハによる収入概算額
(COPD10泊11日の場合)
DPC点数:32,694点
出来高:2,948点
内訳・呼吸リハ・計画評価・退院時リハ指導
・栄養管理実施加算・地域加算
合計:35,642点
その他:食事療養費
*リハ単位数により金額は増減あり。
薬剤指導・退院時投薬も出来高算定できる。
呼吸リハ教室の開催頻度と目的
開催頻度
• 5月と11月の年2回
開催目的
• 呼吸リハを経験した患者、家族のフォローアップ
• 今後呼吸リハに参加を希望している患者への
内容説明
• 患者および家族同士の連携の強化
8
呼吸リハ教室開催までの流れ
• 講義内容のテーマを各担当部署で決める。
↓
• 呼吸リハ教室の開催をポスターを掲示し参加者の募
集を行う。
↓
• チームカンファレンスで予演会を行い,発表内容の
確認を行う。
確認を行う
↓
• 当日の役割分担を確認しシミュレーション等を行う。
呼吸リハ教室の開催案内ポスター
開催日時・内容を示し
たポスターを呼吸器内
科外来、呼吸機能検
査室等に掲示し参加
者の募集を行った。
9
呼吸リハ教室の内容(第1回)
1.肺の病気について・・・・・・・・・・・呼吸器内科医師
2.肺機能の簡単な解釈・・・・・・・・・臨床検査技師
3 費用と医療制度のこれから・・・・医事課事務員
3.費用と医療制度のこれから
医事課事務員
4.吸入薬使用法の実習 ・・・・・・・・
・・薬剤師
5.呼吸法と呼吸介助の実習・・・・・
・・・・・理学療法士
6.食事の工夫 ・・・・・・・・・・・・・・・・管理栄養士
7.在宅酸素療法のしくみ・・・・・・・・関連業者
8 日常生活の工夫 ・・・・・・・・・・・・病棟看護師
8.日常生活の工夫
9.呼吸リハ後の効果・・・・・・・・・・・外来看護師
10.質疑応答・・・・・・・・・・・・・・・・・・・全体
11.感想・今後の要望のまとめ ・・・・全体
呼吸リハ教室における検査技師の講義内容
• 肺機能の簡単な解釈について約7分の講義
を行 た
を行った。
講義内容:肺活量と一秒率の評価方法
(拘束性障害・閉塞性障害について)
6分間歩行試験の評価
分間歩行試験 評価
質疑応答:15分(予定では3分であった。)
10
呼吸リハ教室に参加後の意見と感想
• 患者同士の会話が弾み、活気があり前向きなことに
驚いた。
驚いた
• 患者同士での横のつながりが構築されて本当に良
かった。
• 呼吸リハで習得した知識を再認識することが出来た
ので今後も続けて欲しい。
• 介護者・家族も勉強出来たので日常生活に役立て
介護者 家族も勉強出来た
常生活に役立
たい。
• 吸入薬の正しい吸入方法がとても参考になった。
次回の呼吸リハ教室に対するテーマ要望
•
•
•
•
•
実際の運動方法について
料理の献立について
運動負荷試験の検査項目について
検査デ タの意味について
検査データの意味について
薬の効果と副作用について
11
まとめ
• 今回、呼吸リハの立ち上げから参画したことでチー
ム医療として臨床検査技師の役割を明確にできた。
• 呼吸リハに参画することで臨床検査技師の新たな
業務および知識・技術の活用の場が拡大できた。
• カンファレンス等を通して他職種のチームスタッフの
検査に対する理解が深まった。
• 呼吸リハ教室に参加できたことで患者が検査に対し
て興味を持っている事が分かり、臨床検査技師が
医療の担い手であることが実感できた。
12
第5回 チーム医療実践セミナー
チーム医療への取り組み
~薬剤代謝酵素遺伝子検査~
佐藤優実子
横田浩充
矢冨 裕
東京大学医学部附属病院検査部
はじめに
- 薬剤代謝酵素遺伝子検査の目的 薬剤服用時の血中動態,副作用発現には個体差がある
薬剤代謝酵素遺伝子の一塩基多型
*一塩基多型(SNP)
DNAの塩基配列のうち1%以上の頻度で出現している
配列の違い(変異)=遺伝子タイプ
 遺伝子タイプから薬の効果や副作用の起きやすさを予測可能
 個人個人にあった治療(オーダーメード医療)が可能
1
薬剤代謝酵素の遺伝情報を基にした安全で効果的な
オ ダ メ ド医療システムの構築
オーダーメード医療システムの構築
薬剤代謝酵素遺伝子検査の院内実施・普及を目指す
薬剤代謝酵素遺伝子検査アンケート調査実施
全診療科対象
2003年12月17日
各科長 殿
各科外来医長 殿
各科病棟医長 殿
各科医局長 殿
検査部長 中原一彦
薬剤部長 伊賀立二
薬剤反応性遺伝子検査の要望に関するアンケート調査のお願い
現在,検査部遺伝子検査室において,先進医療支援遺伝子検査の
整備を進めております。東大病院のような高度な医療を提供する病院では,
診療報酬未収載の先進的検査を各診療科が自己負担で民間の検査セン
ターに依頼したり,診療の合間に自らの研究室で不定期に施行することが
多く,特に遺伝子検査はそうではないかと考えております。
2
アンケート調査結果
主な検査実施要望項目
1. CYP2C9
4. NAT2
7. TPMT
GST
グルタチオン-S-転移酵素
UGT
グルクロン酸転移酵素
TPMT
チオプリンメチル転移酵素
2. CYP2C19
5. GST
8. ADH2
(14科より回答)
3. CYP2D6
6. UGT
9. ALDH2
10
8
6
4
2
0
NAT
N-アセチル化転移酵素
その他:CYP1A1 , CYP1A2 , CYP3A4 , ドーパミンD2受容体
2005年7月
Pharmacogenomics Working group発足
臨床ゲノム診療部,企画情報運営部,薬剤部,検査部
診療科:消化器内科,循環器内科,神経内科,胃食道外科
薬剤代謝酵素遺伝子検査の院内実施・普及を目指して
薬剤
謝酵素遺伝 検査 院内実施 普 を 指
定期的に協議
3
実施項目
CYP2C19
対象診療科
(2006.8~)
プロトンポンプ阻害薬代謝
CYP2C9, VKORC1
(2007.8~)
ワルファリン代謝
CYP3A5
(2008.8~)
消化器内科、神経内科、
胃食道外科 循環器内科
胃食道外科、循環器内科
循環器内科、消化器内科、
神経内科、血液内科
移植外科
免疫抑制剤・タクロリムス代謝
UGT1A1
(2009.4~)
消化器内科、脳神経外科
抗癌剤・塩酸イリノテカンの副作用発現
実施手順(CYP2C19多型検査の場合)
募集
(医師)
消化器内科・胃食道外科にて治療中の
PPI投与開始あるいは継続の16歳以上の患者さま
未成年の場合は、保護者のIC取得も必要
・案内文書
申込
(医師)
薬剤部・PG窓口にIC取得説明を予約
(薬剤師の説明は基本的に翌日以降の10:00-14:00に実施)
システムから血液特殊検査のCYP2C19のオーダーを発行
(この段階では同意済みとはしない)
実施手順を
確認すること
IC取得は基本的にお薬相談室(外来棟玄関横)で薬剤師が行う
が、入院患者さまは病棟でも可能
医師自身がICを取得しても良い
その場合には患者さまのIDを薬剤部に連絡する
IC取得 必要事項を説明、ICを取得
(薬剤師・ 結果伝達の希望を患者さまに確認(将来はシステムに入力)
医師) 同意書をカルテに添付、コピーを薬剤部にファイル
薬剤師は専用採血管を患者さまにわたす
護
ただし病棟では医師あるいは看護師にわたす
・詳細説明文書
・説明スライド
・同意書
薬剤部PG担当 36593
(受付8:30~17:30)
検査部
35033

質問、必要文書類の配布申し
こみ等は上記薬剤部PG担当
まで
文書はMulinsの薬剤部ページ
からもダウンロードが可能
同意撤回の場合
医師が連絡を受けた場合は薬剤部
PG窓口に連絡
薬剤師は担当医師、検査部に連絡
同意撤回書はカルテに添付
コピーは薬剤部でファイル
検査部にて検体を匿名化し、結果をシステムに入力
結果はPG担当薬剤師とオーダーした医師が閲覧可能
医師は伝達を希望する患者さまに検査結果カードを渡す
検査結果の詳しい説明が必要な患者さまについては、薬剤
部・PG窓口での説明も可能
連絡窓口

基本的に23番窓口に患者さまが出向いて採血
検査
(検査部) 病棟で採血の場合、通常の検体搬送に従い検査部に送付
説明
(医師・
薬剤師)
2006年8月2日作成
利用する文書
・判定結果カード
4
薬剤代謝酵素遺伝子検査フローチャート(外来患者)
外来
主治医
患者
薬剤部
受診
場所:お薬相談室(外来棟玄関隣り)
予約
検査依頼入力
結果確認
内線: 36593
(IC取得・結果説明)
検査説明・ICの取得
IDの匿名化
匿名化
オーダリング修正
「同意済み」登録
診療システム
薬剤師
患者
採血管ラベル印刷
IDのみ匿名化
氏名: 本名で記載
ID:*****匿名化
バーコード IIIIIIIIIIIIII
匿名化された
依頼情報
ラベル貼付済み血算用
採血管(ピンク)を持参
遺伝情報入力
検査部
23番 採血受付
遺伝子検査室
採血室
遺伝子検査技師
遺伝子検査施行
検体
技師
個人情報の
交換はない
患者
被検者の確認
匿名化ラベルの貼付
単独依頼: 採血順番号なし
黄色札を渡し誘導
他の検査と同時に依頼: 採血順番号あり
検査依頼
(医師)
5
診療系依頼画面
検査説明・IC取得
検査説明
IC取得
(薬剤部, 医師)
6
IC取得時に用いられる資料 遺伝子解析の目的をご理解いただくために
遺伝子とは?
薬物代謝酵素や薬物受容体の遺伝子多型を解析
すると何がわかるのでしょう?
生物の機能は、多くが酵素、
抗体などのタンパク質の働
きで決まります。遺伝子は
タンパク質の設計図です。
全てのタンパク質は遺伝子
の情報のとおりに作られま
す。
酵素などの
酵素など
タンパク質
遺伝子
遺伝子多型とは?
お酒に弱い 分解の遅い酵素
効果が出る濃度域
分解の速い酵素
お酒に弱いタイプ
血中のお薬の濃度
お酒に強い
血中アルコール等の濃度
遺伝子の情報は人により少
しずつ異なります。これを
「遺伝子多型」といいます。
遺伝子多型により、作られ
るタンパク質が少しづつ異
なり、個人ごとの特性の違
いが生まれます。例えば、
アルコールの分解経路の酵
素の遺伝子には人による差
があり、そのために、お酒に
強いタイプと弱いタイプの人
が生じます。
最近では、遺伝子の違いの検査が以前より容易になり
ました。例えば遺伝子解析でお酒に強い人、弱い人を
判断し、弱いタイプの人はあらかじめ飲む量を控える
ことが理論的に可能です お薬に関しても同じことが
ことが理論的に可能です。お薬に関しても同じことが
言えます。お薬に関係するタンパク質には多くの種類
がありますが、それぞれ遺伝的に働きの強い人、弱い
人のいることがわかっています。遺伝子解析を行うこ
とで、例えば患者さんが薬の分解が速いタイプか遅い
タイプかを特定できれば、最適な薬の量を予測するこ
とができると考えられます。
お薬が有効
分解の遅いタイプ
分解の速いタイプ
お酒に強いタイプ
時間
時間
効果が出ない
同じ量のお薬を服用
遺伝子多型情報に基づくプロトンポンプ阻害剤の用量調節の意義
胃酸の分泌を抑制する薬
商品名
⼀般名
の1種で、胃潰瘍、逆流性
オメプラール
オメプラゾール
食道炎の治療に使われま
す。また、胃潰瘍などでの
タケプロン
ランソプラゾール
H.ピロリの除菌に、同時に
パリエット
ラベプラゾール
使う抗生物質が 胃酸で
使う抗生物質が、胃酸で
分解されるのを防ぐために使います。日本では上の3種
類が承認されています。安全な薬ですが、長期間大量に
飲んだ場合にはがんになる可能性が少し高まると考える
研究者もいます。
CYP2C19 とその遺伝子多型
CYP2C19 は 体 遺伝⼦タイプ 酵素の機能 ⽇本⼈での頻度
内でプロトンポン
○
EM
38.2%
プ阻害剤を不活
△
hEM
47.2%
性化する酵素の
×
PM
14.6%
1つです。その
遺伝子には多型があり、お薬を分解できない酵素の遺伝子
を持つ人が、日本人にはある程度います。我々は父母から
一組ずつ遺伝子を受け継いでおり、その両方が分解できな
いタイプの人を「薬物の分解が遅い人(PM)」、片方に持つ
人を「薬物の分解が中程度の人(hEM)」、両方とも分解でき
るタイプの人を「薬物の分解が速い人(EM)」 と分類します。
上の表は日本人のCYP2C19のEM、hEM、PMの平均的な割
合を示します。
CYP2C19 遺伝子多型とプロトンポンプ阻
害薬の体内動態の関係は?
プロトンポンプ阻害剤は複数の酵素で分解されるため、CYP2C 19
のPMであっても分解速度が完全に0にはなりません。しかし、分解
速度は大幅に低下します。下図はオメプラゾールを服用した後の
血漿中濃度を示したもので、EM、hEM、PMの順に高く、その違い
は数倍から10倍程度に及びます
は数倍から10倍程度に及びます。
○: EM (n=5)
□: hEM (n=4)
△: PM (=6)
血漿中オメプラゾール濃度(ng/mL)
プロトンポンプ阻害剤とは?
0
2
4
6
8
10
12
14
16
服用後の時間
服用後の時間
18
20
22
24
お薬の効果や副作用は、その血中濃度と完全には比例しません。
ある程度以上に血中濃度が高くなると、効果は頭打ちになります。
また、同じ血中濃度でも、発現する効果の強さは人によって多少異
なります。ですから、オメプラゾールの効果が、PMではEMの10倍近
くになるわけではありません。しかし、PMではEMやhEMよりも、より
少ない薬の量で同程度の効果が発現する可能性はあります。した
がって、遺伝子解析によりPM、hEM、EMを判定すれば、患者さんの
薬の種類や用量を、より適切に調整できるのではないかと我々は考
えております。
7
検 査
(検査部)
検査の流れ
匿名化ラベル
診療システム
①
患者
匿名化された
依頼情報
⑤
氏名が記載された
依頼ラベル貼付済み
採血管(ピンク)を持参
結果入力
遺伝子検査室
④
遺伝 検査室技師
遺伝子検査室技師
遺伝子検査施行
薬剤部にて
IC取得済み
検査部
検体
採血以降、
個人情報の
交換はない
採血室 ③
採血室技師
患者
②
採血受付
1. 被検者の確認(氏名確認)
2. 匿名化ラベルの貼付
3. 採血
8
遺伝子検査施行
操作工程
匿名化ラベル
① 末梢血 200μL
② 自動核酸抽出装置(6GC)にてDNA抽出
③ ライトサイクラーを用いたReal‐time PCR法
④ 融解温度解析による遺伝子多型解析
⑤ 診療システムへ結果入力
DNA抽出
Real‐time PCR法
(Light Cycler)
(Light Cycler)
遺伝子多型解析
EM
PM
hEM
検査部ホームページ
「ワーファリン関連遺伝子型検
査結果の解釈について」
閲覧可能
文献から引用
9
運用上の問題点
[ 事例 1 ]
診察後、担当医から遺伝子検査室に直接検査依頼の連絡がきた。
→医師が検査の流れを十分に理解していなかった。
[ 事例 2 ]
患者様が、薬剤部でのIC取得を忘れてしまい、検査に必要な採血をし
なかった。会計時、未検査分としてオーダーが残っていたため発覚した。
→患者様にとって、「診察→薬剤部(IC取得)→採血」の流れを理
解するのが難しい。医師の説明不足。
[ 事例 3 ]
IC取得後、患者様が採血受付にいらしたが、受付から採血(本人確認、
匿名化ラベル貼付)までの流れに混乱が生じた。
→受付担当者・採血担当者が、検査の流れを十分に理解してい
なかった。
- 対応策 医師、採血受付・採血担当者(専任者に限る)
に対して、本検査の流れを周知徹底した
① 診察時、資料(右)に基づいて
検査の趣旨を説明する。
2010年8月10日
お薬カウンターへ
② 患者様が検査を希望される場
合は、次回外来受診と同日に 医師
IC 予 約 を 入 れ る ( 端 末 オ ー
ダーすると同時に薬剤部へ電
話連絡する)。
③ 資料(右)にIC予約日時等を記
入し、患者様にお渡しする。
④ 次回外来受診時(予約日)、薬
剤部に行き、検査説明をうけ 患者様 改善点:IC取得までの流れが
円滑になった
る(IC取得)。
10
⑤ 薬剤部担当者は、遺伝子検査
室に、「これからIC取得済患者
様が採血室に向かう」ことを電 薬剤部
話連絡する。
⑥ 遺伝子検査担当者は、採血受
⑥ 採血室に向かう。
採血室に向かう
患者様
付担当者と採血担当者(専任
者)に、本検査実施予定の患
者様が採血にいらっしゃること 遺伝子検査室
を伝える。
⑦ 採血受付担当者が、採血担当
者(専任者)のもとへ患者様を 採血受付
直接ご案内する。
⑧ 採血担当者は、本人確認・匿 採血室
名化ラベル貼付後に採血し、
改善点:採血時の混乱が回避された
遺伝子検査室へ提出する。
まとめ

チーム医療としての本体制の構築により、薬剤代謝酵素
遺伝子型 薬物代謝・動態 臨床情報が有機的に連結し
遺伝子型、薬物代謝・動態、臨床情報が有機的に連結し
たオーダーメード医療の実現が可能となった

薬剤応答遺伝子検査の結果が、診療サイドへ即時的に
フィードバックできる体制は、患者への最適な医療の提
供のみならず、今後の臨床検査の位置づけを向上させ
るものとして期待される
11
検査部活性化の切り札―NST
熊本大学大学院医学薬学研究部、病態情報解析学 安東由喜雄
大学病院の中央検査部が重要な役割を果たすべき院内の横断的診療活動の一つに、
NST がある。一時期、NST の活動が患者の生命予後を改善させ、ひいては病院経営に多
大な益を産むことが指摘され、全国的に盛り上がりを見せたが、本活動に対する診療科
ごとの温度差や、その効果が数字として現れにくいこともあり、活動を発展的に継続し
ていくことは難しい部分がある。NST 活動が定着している多くの病院では、外科などの
診療科が中心になって活動しているが、本院では、中央検査部が主体になり、活動、運
営を工夫しながら行っているので、その活動の実際と問題点を提示する。
本院の NST チームは、中央検査部長が委員長となり、検査部、栄養指導室、薬剤部、
リンクナース、リンクドクターにより運営されている。週に 1 回のカンファランスおよ
び回診、月に一度のコア会議、および勉強会、栄養ドリンクの試飲会、3 か月に一度の
講演会などを行っている。回診に至る具体的なプロセスは、毎週、あらかじめリンクナ
ース、リンクドクターからコンサルトを受けた栄養状態に問題があると考えられる患者
数名に対し、長期的栄養指標として血清アルブミン、Zn レベルを、また短期的栄養マ
ーカーの指標として血清 TTR を測定するとともに、これらのファクターが炎症で影響を
受けるため、ヘモグラム、CRP、SAA、肝障害、腎機能マーカーなどを検査部で測定して
おく。また該当患者の、栄養状況、感染情報や薬剤情報をそれぞれ、栄養指導室、検査
部、薬剤部が調べておき、カンファランスを施行、問題点をピックアップした後、検査
部長を中心に回診を行い、文書でその結果を主治医、病棟ナースに報告、輸液や栄養補
助食品の変更や生活指導などについて報告している。検査部教員は毎回全員、検査部員
はローテーションを組み、必ず 4 名は回診に参加するようにしている。
こうした活動により、検査部員が病棟の実態を知るようになり、院内に栄養状態の観
点を通して感染情報や生化学データを見ようとする動きが出るようになってきた。また、
特に看護師がより検査データに興味を持つようになってきたのは収穫であった。また、
NST といえば検査部、
とのイメージが定着し、検査部に対する意識が変わってきている。
一方、NST に活動そのものに対する関心のない診療科も一部にあり、回診に参加する
診療科のドクターは限られている。また外科系の一部に「検査部がやっていて大丈夫な
の」という意識があるのも否めない。
しかし、こうした活動を通じて、TPN 投与数の減少や、在院日数の短縮につながった、
と思われるデータも得られており、本院においては、NST の活動は次第に定着しつつあ
る。
最近トランスサイレチン(TTR)が注目されている。私がトランスサイレチン(TTR)研究を始
めた二十数年前、本蛋白質はプレアルブミンと呼ばれていた。ヒト TTR の場合、アガロー
ス電気泳動 pH8.6 の条件で泳動するとアルブミンの前にバンドが描出されることからそう
呼ばれたが、機能面での詳細な解析はほとんど行われていなかった。遺伝的に変異を起こ
した TTR (ATTR)が組織でアミロイドに変わり家族性アミロイドポリニューロパチー(FAP)
を引き起こすことがわかった 1980 年代初め頃から、TTR の研究は俄然活発に行われるよう
になった。TTR は 127 個のアミノ酸からなる分子量約 14K の蛋白質であるが、現在までに
100 を超える ATTR 遺伝子の点変異や欠失が報告されており、ATTR により通常中年期以降に
末梢神経や心、腎、腸管、眼、自律神経系などに異型 TTR がアミロイドを形成し、さまざ
まな臨床症状を引き起こす。
この頃から動物実験も盛んに行われるようになったが、げっ歯類の TTR がヒトのものとは
異なる pI を示し、
アルブミンの前に泳動されないことから、当時わかっていた TTR の機能、
すなわち T4 のキャリア蛋白であること、レチノール結合蛋白(RBP)と結合しビタミン A の
担体となることを持って「トランスサイレチン」の名前がついた。ところが TTR の機能は
それだけではなかった。
腫瘍マーカーとしての局面
2004 年、Zchan らは、Surface Enhanced Laser Disorption/Ionization time of flight
(SELDI/TOF-MS)を用いた ProteinChip の手法によるがん患者血清の網羅的解析の結果、早
期卵巣癌患者では N ターミナルが切れた TTR の低下、アポリポタンパク AI の低下、インタ
ートリプシンインヒビター・重鎖 H4 の上昇が認められ、この三蛋白質の情報により高率
に早期卵巣癌患者の診断がつくことを発見した。TTR は反急性期蛋白質であることから、腫
瘍によって引き起こされる micro-inflammation を反映している可能性もあるが、本法によ
り卵巣がんの診断がつくとする報告は画期的である。現在 SELDI/TOF-MS を開発したサイフ
ァージェン社は、診断試薬としてのキットを作成し、FDA に申請中である。今度さらにこう
した解析法を用いたありふれた蛋白質の組み合わせによる腫瘍の診断が提唱されていく可
能性が高い。
インスリン強化蛋白質としての局面
TTR は肝臓、網膜色素上皮細胞、脈絡叢から産生されることが以前から知られていたが、
最近、膵臓のラ氏島のα細胞からも産生されていることが、組織学的検査に加え、in situ
hybridization によっても確認されている。Refai らはこの点に注目し、マウスを用いて耐
糖能の研究を行ったところ、TTR にはβ細胞を刺激してインスリン分泌を促進させる働きが
あることが判明した。
神経組織保護作用
TTR には神経組織保護作用があることが次々に明らかにされている。記憶障害を誘起し
たマウスにω3 系を継続的に投与すると TTR の発現が海馬を中心に誘導され、記憶障害が改
善することが明らかにされている。また末梢神経損傷に対しも、TTR が保護的に働くことも
明らかにされている。
脂質代謝に及ぼす機能
ATTR によって形成されるアミロイドは、脂肪組織に親和性が高いことから、FAP の診
断には腹壁脂肪吸引による Congo red 染色が汎用されている。以前から TTR はリポ蛋白、
特に HDL と結合することが知られていたが、
TTR は脂肪組織周辺でカイロミクロンに作用し、
間接的にアシル化刺激蛋白質を刺激し、血中の中性脂肪を上昇させる作用やアポリポタン
パク AI を代謝する作用があることなどもわかってきた。
21 世紀に入り、TTR 学は世界 TTR 学会が組織されるまでに発展した。今後の 10 年の TTR
学の更なる発展が新しい医学を切り開いていくものと確信している。
参考文献
1.
Zhang Z, et al: Three biomarkers identified from serum proteomic analysis for the
detection of early stage ovarian cancer. Cancer Res 64: 5882-90, 2004
2.
Refai E et al: Transthyretin constitutes a functional component in pancreatic cell
stimulus–secretion coupling. Proc. Natl. Acad.Sci. USA 102: 17020-5, 2005
3.
Liz MA et al: ApoA-I cleaved by transthyretin has reduced ability to promote
cholesterol efflux and increased amyloidogenicity. J Lipid Res 48: 2385-95, 2007