平成11年度雑草防除基準に採用した水田畦畔除草剤

平 成10年度試験研究成果
区分 普 及 題名
平成11年度雑草防除基準に採用した水田畦畔抑草剤
〔要約〕水田畦畔抑草剤ビスピリバックナトリウム塩液剤は、畦畔雑草の生育を40∼60日抑制する作用を
示す。このことから、畦畔管理上、草刈り回数の軽減ができる。また裸地化による土壌流亡を生じない等
の効果が得られることから平成11年度雑草防除基準に採用した。
キーワード
畦畔抑草剤
グラスショート 雑草防除基準
農産部 銘柄米開発研究室・水田作研究室
1.背景とねらい
水田の畦畔管理には、雑草の生育に応じて刈払い機等での草刈り、または畦畔除草剤による防除が必要で
ある。グラスショート液剤は、チガヤ等の多年生イネ科雑草、ヨモギ等の多年生広葉雑草に対して40∼60日程
度生育を抑制し、草刈り回数の軽減ができること、また、雑草を完全枯殺する作用とは異なり、主に雑草の
草丈を抑制する作用のために、裸地化による土壌流亡を生じない等の畦畔管理上良好な効果が得られること
から新たに畦畔抑草剤として防除基準に採用した。
2.技術の内容
(1)薬剤名等
商 品 名
:グラスショート液剤
有効成分・含有率:ビスピリバックナトリウム塩 3.0%
毒
性
:普通物
(2)作用機作
ビスピリバックナトリウム塩は、植物の根部、茎葉基部および茎葉部から吸収され、植物体内の分
岐鎖アミノ酸の生合成に関与するアセト乳酸合成酵素 (ALS)を抑制する。このため、生長に不可欠な
分岐鎖アミノ酸の生産量が低下し、体内のアミノ酸バランスが変動して生育を停止または遅延し、一
部枯死に至る。
(3)使用方法
雑草の刈り取り後、再生初期(草刈り10∼20日後、草丈10cm程度)に散布する。刈り取りをし
ないで散布すると、草種によっては抑草効果が不十分となる場合がある。散布量は、実面積10a当たり
500mlを100Lに希釈し、噴霧器(動力噴霧機等)により、霧なしノズル等を用いて散布する。
(4)使用基準
適用場所
適用雑草
使用方法
使 用 時 期
使用薬量
希釈水量 使用回数の制限
一年生雑草
草刈り後10∼20日の
水田畦畔 および
雑草茎葉散布 雑草再生期(ただし水 500ml/10a 100 L
2回
多年生雑草
稲の収穫60日前まで)
(実面積)
(5)適用雑草
イ ネ
一 年 生
スズメノテッポウ
スズメノカタビラ
科 雑
草
多
広 葉
一 年 生
枯
ハコベ、ナズナ、シロザ
アオビユ、クサネム、
殺
イボクサ、ブタクサ
抑 ノビエ、メヒシバ、エ チガヤ、オギ、ススキ、 オオイヌタデ、ツユクサ
草 ノコログサ、アゼガヤ キシュウスズメノヒエ、 ヒメムカシヨモギ、
大 カズノコグサ
アシカキ、ギョウギシバ オオアレチノギク、タウ
コギ、ハルジョオン
抑草
ノシバ、ウィーピング
小
ラブグラス、カモジグサ
不効 オヒシバ、カラスムギ イタリアンライグラス
タネツケバナ
年
生
雑
草
多 年 生
シロツメクサ、クズ、
オオバコ、カラムシ
エゾノギシギシ
ヨモギ、スギナ、イタ
ドリ、ハマスゲ、セイ
タカアワダチソウ、
ヨメナ
(6)散布の効果
40∼60日ほど抑草効果が得られることから、1回の散布で約1回刈り払い機等による除草作業が省ける。
3.普及上の留意事項
(1)雑草全体にかかるように均一に散布する。
(2)展着剤の加用の必要はない。
(3)散布後6時間以内の降雨は効果を減ずることがあるので、天候を見て散布する。
(4)流入、飛散による周辺作物への影響に十分注意すること、特に水稲に直接かからないように霧なし
ノズル等を使用して散布する。
(5)れんこん、くわい、せり、大豆、小豆等のマメ科、なす、トマト等のナス科きゅうり、メロン等の
ウリ科、はくさい、大根等のアブラナ科作物には、薬害が強いため周辺にこれらの作物がある場合
は、ドリフトに十分注意して散布する。
4.技術の適応地帯
県下全域
5.当該事項に係る試験研究課題
[水田利用2]−2−(2) ア 新除草剤の効果の解明
6.参考資料・文献
1)平成8年度水稲関係除草剤試験成績書
2)平成10年度農薬展示圃成績書
7.試験成績の概要
(1)平成8年 農試県南分場
対象雑草名:畦畔雑草全般
処理方法 :電池式噴霧器(容量5L)
1)薬剤散布と効果
(平成8年 岩手農試県南分場)
(平成10年)
6月21日(メヒシバ10∼15cm)
7月 4日(メヒシバ10∼15cm)
処理日:1回目処理
2回目処理
区
番
処理回数
処 理 時 期
使 用 量
(ml/10a)
効
果
1
1回処理
草刈り18日後
500ml
希釈水量100L
オオバコは完全枯死し、広葉雑草で60日程度の生
育抑制効果が認められた。イネ科雑草に対する抑草
期間は短かく、20日程度であった。
2
2回処理
草刈り18日後
→草刈り31日後
500ml
希釈水量100L
オオバコは完全枯死しイネ科雑草(メヒシバ)には
処理後黄変し、効果が認められた。完全枯死しなか
ったものも強いわい化・茎数抑制が認められた。
抑草期間は広葉雑草で60日、イネ科雑草では50
日程度であった。
・2回処理を行えば、イネ科雑草は強いわい化をし、広葉雑草の主なものは枯死するので畦畔の
草刈りの回数を、より軽減出来ると考えられる。
2)水稲に散布した場合の薬害 (畦畔の近くの稲に散布して観察を行った。)
区番
処理回数
水稲に対する影響(多量に付着した場合)
1
1回処理
わい化・茎数抑制、細化、幼穂形成期までに草丈は回復したが、穂数が減少した。
2
2回処理
わい化・茎数抑制、細化
(2)平成10年 農業研究センター 水田作研究室
対象雑草名:畦畔雑草全般
処 理 日:7月14日
供試散布法:背負い式動力噴霧器(容量20L)
処理面積 :1.0a(4×25m)
処理回数
処 理 時 期
使 用 量
(ml/10a)
効
1回処理
草刈り8日後
500ml
希釈水量100L
果
処理時、広葉雑草中心に生育しており、処理17日後には広葉
雑草は枯死していた。8/9∼10にかけて、試験区以外の畦畔は
草刈りを実施したが、試験区の草丈はまだ草刈りを要するま
でには至っていなかった。抑草期間約60日。1回の処理で、
1回草刈りを省略できた。
(3)平成10年普及展示圃成績
処理 処 理 時 期
回数
散 布 日
使 用 量
(ml/10a)
散布方法
散布面積
作
業
時
間
効
果
水 1回 草刈り11日後
500ml
背負い式動力
0.8a
試験区 :12.5分/a 抑草期間約45日
6月1日
希釈水量100L 噴霧器 霧な
慣行区 :12.5分/a 作物への影響 無
沢
しノズル使用 2.1×40.6m (刈り払い機)
畦畔崩れ 無
久
背負い式動力
1.0a
試験区 :15 分/a
1回 草刈り16日後
500ml
噴霧器 霧な
慣行区 :10 分/a
慈
6月8日
希釈水量100L しノズル使用 24×(2.5+ (刈り払い機)
1.0+0.6)m
抑草期間約40日
作物への影響 無
畦畔崩れは無かった
が法面効果やや劣る
農 1回 草刈り10日後
500ml
背負い式動力
3.0a
試験区 :40 分/a 抑草期間約50日
6月20日 希釈水量100L 噴霧器 霧な
慣行区 :100 分/a 作物への影響 微
大
しノズル使用 1.2×260m (刈り払い、集草) 草刈りを1回省ける