第1章 演習問題・研究課題などの解答

第1章
演習問題・研究課題などの解答
☆1.3.3 電気分野の研究課題
1.磁束 Wb (ウエーバ)および磁束密度 T (テスラ)はそれぞれつぎのように
定義される。すなわち、磁束は Wb  V  s 、磁束密度は T  Wb / m 2 である。
これをもとに、それぞれの組立単位を求めよ。
解答:1.3.3 節(ページ 5)において示したように、電圧 V の組立単位は、
電圧 V 
J
J
N  m kg  m 2
J
;したがって V は 
となる。一方、磁束は



C A s
A s
C
A  s3
Wb  V  s より、Wb 
より、 T 
kg  m 2
kg  m 2
2
となる。さらに、磁束密度は T  Wb / m

s

3
2
A s
A s
Wb
kg  m 2
kg
となる。


2
2
2
m
A s  m
A s2
☆1.4.1 密度、比重量などの研究課題
1.温度が高くなると空気の密度は大となるか小となるか。
解答:小となる。
2.圧力が上がると空気の密度は大となるか小となるか。
解答:大となる。
3.では問題1.2.を総合して任意温度 T (K ) 、圧力 P(kPa) における空気の密
度はどのような式で表されるか考察せよ。ただし、温度0  C で圧力が大気
圧(101.325 kPa )のとき、空気の密度  は1.293 kg / m 3 とする。
解答:完全ガスの状態方程式(1.6)から、   1.293 

273.15
P

となる。
T
101.325

4.工学密度  の単位が kgf  s 2 / m 4 となることを証明せよ。
解答:密度 
質量 力 加速度

であり、工学の基本単位である力は kgf であるから、
体積
体積
上の式に単位を代入して
工学密度=
kgf m / s 2  kgf  s 2

となる。
m3
m4
- 17 -
5.水の密度は温度や圧力によってどのように変化すると考えられるか。

3
解答:水の密度は4 C で最大であり、1000 kg / m となる。ただし、圧力が変化しても
その密度変化は小さく実用的な工学の範囲では非圧縮性流体とみなせる。温度が

100 C でも密度は 999 kg / m であり、ほとんど温度に対する依存性も無視できる。
3
6.標準状態(温度 15  C 、圧力 101.325 kPa )における酸素の比重量は 1.429
kgf / m 3 である。酸素5 kg はどれだけの体積を占めるか。
5(kgf )
解答:比重量の定義から、
 3.5m 3 となる。
3
1.429(kgf / m )
7.地球上で体重 60 kgf の人が地球の 1/6 の重力加速度を有する月面上に行っ
たとき、その人の月面における工学質量、物理質量、月面重量はそれぞれ
いくらになるか。
解答:物理質量=60 kg (質量は全宇宙空間で変化しない固有の物理量)
ニュートンの運動の第 2 法則から力は質量×加速度で与えられ、月の重力加速度によ

って月面を押す力は、地球上の重力加速度を g  9.807 m / s
60( kg )×
2
とすれば、
g
 10 g( N )  98.07( N )  10kgf 。したがって、月面重量=10 kgf
6
工学質量 
月面重さ(kgf) 10(kgf)

 6.12 ( kgf  s 2 / m )
月面加速度 g 6
☆1.4.2 比容積の研究課題
1.表 1.7 を参考にして、つぎの空欄を数値で埋め、表を完成せよ。
物質
比容積( m 3 / kg )
水
1.003×10-3
比容積( m 3 / kgf )
1.34×10-3
ガソリン
0.769
酸素
0.850
空気
注)温度 300 K 、圧力 101.325 kPa
解答:結果を以下の表に示す。
物質
比容積( m 3 / kg )
比容積( m 3 / kgf )
水
1.003×10-3
1.003×10-3
ガソリン
1.34×10-3
1.34×10-3
酸素
0.769
0.769
空気
0.850
0.850
注)温度 300 K 、圧力 101.325 kPa
- 18 -
このように、単位質量 kg と単位重量 kgf は数値が同じであるから、比容積も同一の値
となる。
☆1.4.3 比熱などの研究課題
1.体積が 330 m 3 である教室の温度 15  C 、標準大気圧(101.325 kPa )におけ
る空気の重さを求めよ。ただし、0  C における空気の密度は 1.293 kg / m 3 で
ある。

解答:まず 15 C における空気の密度は、温度 T =288.15( K )、圧力 P =101.32( kPa )
を代入して
  1.293 
273.15
P
273.15 101.32

 1.293 

 1.226 ( kg / m 3 )
T
101.32
288.15 101.32
教室の体積=330 m より、空気の質量は 330×1.226=404.6( kg )=404.6( kgf )
3
2.この教室の温度を 15  C から 20  C まで上昇させるのに必要なエネルギは何
kcal か。ただし、空気の比熱は 1.007 kJ / kg  K  とする。
解答:加熱に必要なエネルギ Q は Q  mCT で与えられる。ここで、空気の比熱は
C =1.007×103( J / kg  K  )、温度差 T =5  C 、質量 m =404.6( kg )を代入して、
Q  mCT =404.6×1.007×103×5=2.037×106( J )=486.7( kcal )
3.0.5 kW の電気ポットに 15  C の水を 0.8 リットル入れるとき、沸騰開始する
までの時間を求めよ。ただし、電気ポットに供給された電力の 75%が有効
に使用されるものとする。ただし、水の平均比熱を1 Kcal /( kg  K ) とする。
解答:加熱に要する温度差=85 C 、水の比熱 1 kcal / kg  K =4186 J / kg  K 

水の質量=0.8( kg )、供給されるエネルギ=0.5×0.75×103( J / s )、より、 x 秒で沸
騰すると考えれば、
0.5×0.75×103× x =4186×0.8×85。したがって、
x =759.1(s)=0.21(時間)
☆1.4.4 ガス定数の研究課題
1.家庭用ガスとして使用されるプロパン C3 H 8 のガス定数はいくらか。ただし、
炭素および水素の原子量は C  12 、 H  1 とみなす。
~
解答:まず、プロパン C3 H 8 の分子量は 44 である。一般ガス定数 R よりガス定数は
~
~
R  MR  8315 より、 R  R / M  8315 44  188.98
- 19 -
J /( kg  K )
☆1.4.5 粘度および動粘度の研究課題
1.粘度  および動粘度 の単位を SI で導き、表 1.10 に記された単位となる
ことを確認せよ。
解答:ニュートンの粘性法則からせん断応力は    du dy  で表されるから、粘度


du dy

となる。したがって、それぞれの単位を代入して、
Pa
Pa

 Pa  s となる。さらに、動粘度は    よりその単位は
m / s  / m 1 s


Pa  s
N  s / m2
N sm
kg  m / s 2  m  s
m2





kg
kg
s
kg / m 3
kg / m 3
となり、その物理的な意味は、単位時間に流体が拡散する速さを表している。
2.空気および水の粘度と動粘度は温度に対してどのように依存するか考察せ
よ。
解答:水は温度が上昇すればμ、νは下がる。逆に空気はμ、νが大となる。
3.未知の新しい流体の粘性係数  または動粘性係数 を調べる実験装置を設
計せよ。
解答:現在検討中である。未知材料が液体か、固体か、はたまた気体かによって装置の
設計は異なるので、まずは粘度の測定対象である流体の種類の提示が必要である。
☆1.4.7 温度の研究問題
1.摂氏と華氏の温度計において、目盛りの数値が一致するところがあるか。
あるとすればその数値はいくらか。
解答: F 
9
t  32 より、題意から t  F とおいて、
5
9
4t
t  t  32 。したがって、  32 ;t=-40  C ;F=-40  F
5
5
2.摂氏は水の氷点と沸点間を 100 分割したもの。では華氏はどのようなもの
かな?


解答:氷と水と塩化カリウムの混合物(当時の最低温度を0 F とした。ちなみに 96 F
はおおよそ人体の温度である。
)
☆1.5.2 ニュートン流体の研究課題
1.縦軸にせんだん応力  、横軸に速度こう配 du dy をとりニュートン流体の特
- 20 -
性をグラフ表示せよ。
解答:ニュートンの粘性法則からせん断応力は
 
u
y
であり、せん断応力τと速度こう配 du dy の関係は直線となる。
☆1.5.4 マッハ数研究課題
1.空気(1気圧、20  C )の音速は約 340 m / s である。体積弾性係数 K はいく
らとなるか。

解答:1気圧、20 C の空気の密度は、
  1.293 
273.15
P
273.15 101.32

 1.293 

 1.205 ( kg / m 3 )
T
101.32
293.15 101.32
したがって、体積弾性係数 K は、空気の音速を a とすれば
K  a 2   340 2  1.205  1.393  105 ( Pa )
2.地球の半径は 6375 km である。海水中で鯨が仲間を呼んだとき、その音が
地球を1周して戻ってくるのには何秒かかるか。
解答:1.5.3 節の例題の解答を使うと、水の音速は a =1438.7( m / s )であるから、
必要な時間=(距離/音速)=2π×6375×103/1438.7=27841.3(s)=7.7 時間
☆第1章 総合演習問題
1.ある油2 m 3 の重量が 1742 kgf であるとき、この油の比重量、比容積、工学
密度および比重を求めよ。ただし、重力加速度は 9.807( m / s 2 )とする。
3
解答:比重量γ=1742/2=871( kgf / m )
3
比容積v=1/γ=1/871=1.148×10-3( m / kgf )
工学密度=871/9.807=88.8( kgf  s / m )
2
4
比重=871/1000=0.871
2.水銀の比重が 13.6 であるとき比重量、比容積、密度(SI)を求めよ。
3
解答:比重量=13.6×1000=13600 ( kgf / m )
比容積=1/13600=7.353×10-5 ( m / kgf )
3
3
密度=13600( kg / m )
3.標準大気圧、温度-20  C における空気の密度(SI)を求めよ。ただし、空
気のガス定数を 287 J / kg  K とする。
解答:完全ガスの状態方程式(ボイル・シャルルの法則)から、 Pv  RT であり、
- 21 -
P =101.3( kPa ); R =287( J /( kg  K ) ); T =253.15( K )を代入すると、比容
積は
v  RT / P =287×253.15/(101.3×1000)=0.7172( m 3 / kg )
したがって密度は、   1 / v より、ρ=1/0.7172=1.394( kg / m )
3
4.平板に沿って流れる流体の速度分布が次式
2y y2

)
H H2
で与えられるとき平板上 y  0 mm 、および y  25 mm における速度こう配と
せん断応力を求めよ。ただし、y は平板表面から測定した垂直方向の距離、
u U(
U  3m / s ;平板間隔 H  50 mm 、流体の粘性係数は 1.6  10 3 Pa  s とする。
解答:速度こう配は
du
 2 2y 
 U  2 
dy
H H 
となる。 y  25mm ; U  3m / s ; H  50mm を代入して、
du
2  0.025 
 2 2y   2
 U   2   3

  340  20  60 ( 1 / s )
dy
0.05 2 
 H H   0.05
同様にして、 y  0mm の壁面上では、
du
20 
 2 2y   2
 U   2   3

 340  0  120 ( 1 / s )
2 
dy
 H H   0.05 0.05 
ニュートンの粘性法則から、せん断応力τは、 y  25mm では、
du
 y 25mm  
 1.6  10 3  60  9.6  10 2 ( Pa )
dy y 25
同様にして、 y  0mm の壁面上のせん断応力は、
 y 0 mm  
du
 1.6  10 3  120  1.92  10 1 ( Pa )
dy y 0
このように、壁面上でせん断応力が最大となることに注目すること。
5.水の体積を 0.2%減尐させるために必要な圧力を求めよ。ただし、水の体積
弾性係数は 2.2 GPa とする。
解答:圧力と体積ひずみの関係から体積弾性係数 K は次式で与えられた。
P   K
V
V
上式から、 V / V  0.002 ; K  2.2  10 ( Pa )を代入して、
9
P  2.2×109×0.002=4.4×106 ( Pa )
- 22 -
6.標準大気の比熱はおおよそ 0.23 kcal /( kg  K ) である。300 m 3 の教室に学生
40 人が静かに勉強しているとき、教室の空気は1時間で何度  C 上昇するか。
ただし、教室と外気との間に熱の授受はないものとし、空気の密度は
1.3 kg / m 3 、学生1人が1日に消費(発散)する熱量は 2400 kcal とする。
解答:学生一人が1時簡に発散する熱量=2400/24=100( kcal /(時間・一人))
学生 40 人が1時間に発散する熱量=100×40=4000( kcal / h )
=1.6744×107( J / h )
この熱量で教室の空気が暖められるわけだから、まず、教室の質量は

=300×1.3=390( kg )、1時間当たりの温度上昇を T ( C /h)とすれば、


0.23×390× T =4000; T =44.6( C /h)=0.012( C /s)
7.つぎの表の空欄を埋め物理量の単位、次元および定義を明らかにせよ。
物理量
比熱
単位
J / kg  K 
次元
LT 
2
2
粘度
動粘度
ガス定数
Pa  s
1
L2T 1
kg  m 2 /( kg  s 2  K )
定義
解答:以下に解答結果示す。
物理量
比熱
粘度
動粘度
ガス定数
単位
J / kg  K 
Pa  s
m2 / s
J / kg  K 
次元
定義
LT 
kg  m 2 /( kg  s 2  K )
2
2
1
1 1
1
M L T
kg /( m  s)
- 23 -
2
1
LT
m2 / s
L2T 2 1
kg  m 2 /( kg  s 2  K )