第 1 編 練習問題解答

第 1 編 練習問題解答
第 1 章 材料
◆練習問題1−1
解答:
(等価アルカリ量:Na2Oeq.,%)= Na+0.658K なので,
0.45 + 0.658×0.21 = 0.588 %
JIS A 5210「ポルトランドセメント」附属書では,等価アルカリ量が 0.6%以下のセメント
を低アルカリ形と規定しているので,このセメントは低アルカリ形である。
◆練習問題1−2
解答例:
セメントに関する主な規格(JIS)には,以下のものがある.
・セメントの密度試験(JIS R 5201)
セメント中の焼成程度や化学成分による密度の変化の把握,セメントの風化の目安の把
握,未知のセメント種類の判定,またはコンクリートの配合設計を行う際にセメントの密
度が必要となるため。(89 字)
・セメントの粉末度試験(JIS R 5201)
セメントの比表面積の大小は,セメントが水と接触する面積の大小に連動し,水和の進
行に大きな影響を及ぼし,モルタルおよびコンクリートの諸性質を左右する物理的な重要
因子であるため。(87 字)
・セメントの凝結試験(JIS R 5201)
実際のコンクリート工事に際して,セメントの凝結時間が長すぎても,短すぎても不都
合が生じるので,使用するセメントの凝結の初め(始発)と終わり(終結)を把握してお
く必要があるため。(88 字)
・セメントの安定性試験(JIS R 5201)
不安定なセメントを使用すると,これを使用したコンクリートが膨張性ひび割れや反り
などを生じる可能性があり,コンクリートの耐久性を害する原因となるので,セメントの
安定性の把握が必要である。(92 字)
・セメントの強さ試験(JIS R 5201)
一定の配合ならびに水量のモルタルを作製し,これらの強度特性からセメントの持つ強
さを知るとともに,同一のセメントを使用したコンクリートの強度発現性状をある程度予
測するために行われる。(90 字)
◆練習問題1−3
解説:
a. 正しい:セメント(1000kg)の主原料は,石灰石(約 1080kg),粘土(約 220kg)
,けい
石(約 60kg),石こう(約 35kg) ,鉱さい(約 30kg)の順に多い。
b.
正しい:粉末度が高いほど水と接触する表面積が大きくなるので水和反応が早くなり,
凝結も早くなる。
c. 誤
り:粉末度が高いほど水と接触する表面積が大きくなり,水和反応の進行速度が速
まることになるので,ブリーディング水は減少する。
d.
正しい:けい酸三カルシウム(エーライト:C3S)は,セメントクリンカーの4つの主
要組成化合物中でアルミン酸三カルシウム(C3A)とともに水和は早い。
e. 正しい:セメントは,通常,単独で用いられることはなく,モルタルあるいはコンクリ
ートとして用いられる,したがって,JIS ではモルタルに使用した場合の圧縮
強さで判断されている。
正解: c.
◆練習問題1−4
解答例:
(1)40mm
(2)(5+57+82+97+100×5)/100 = 7.41
(3)(0+0+0+0+3+11+30+52+79+95)/100 = 2.70
◆練習問題1−5
解答例:
骨材の湿潤状態を図示すると,以下のようになる。また,吸水率は表乾状態の骨材に含
まれる水量であり,表面水率は骨材の表面に付着する水量のことをいう。
絶対乾燥状態
(絶乾状態)
空気中乾燥状態
(気乾状態)
湿潤状態
表面乾燥飽水状態
(表乾状態)
有効吸水率
吸水率
図
表面水率
骨材の湿潤状態の説明
◆練習問題1−6
解答:
骨材の実積率は次式で求められる。
(実積率)={単位容積質量×(100+吸水率)}/表乾密度
したがって,
(実積率)={1.67×(100+1.62)}/2.65 = 64.0 %
(答)
(空隙率)= 100 −(実積率)= 100 − 64.0 = 36.0 %
(答)
◆練習問題1−7
解説:
ビニロン繊維は強度において炭素繊維やアラミド繊維よりも劣っているが,セメント系
マトリックスに対する付着性が優れている。
正解:c
◆練習問題1−8
解答例:
(a)フライアッシュ
(b)シリカフューム
(c)高炉スラグ微粉末
(d)収縮低減材
◆練習問題1−9
解答例:
(1)ナフタレン系の高性能 AE 減水剤などの場合,セメント粒子を負に帯電させることに
より,粒子表面のゼータ(ζ)電位が上昇し,これによってセメント粒子が分散され,セ
メントペーストの粘性が低下する。このような機構を静電気的な作用という(図−1)。
(2)ポリカルボン酸系などの水溶性高分子の場合,水溶性高分子がセメント表面に吸着
し,粒子のまわりに立体的な吸着層を形成し,これが障害となってセメントの水和の進行
にともなう水和物による粒子表面の被覆から保護され,電位の低下が緩和される。このよ
うな作用を立体障害作用という(図−2)。
セメント粒子
セメント粒子
水溶性高分子
図−1
静電気的な分散作用
図−2
立体障害作用
◆練習問題1−10
解説:
a.
誤
り:上水道水は,とくに品質試験を行わなくても使用することが出来る。
b. 誤
り:下表に示す数値を満たせば,上水道水以外の水(河川水,湖沼水,井戸水,地
下水,工業用水,回収水など)も使用することができる。
c.
正しい:
d.
正しい:
表
上水道以外の水の品質
項目
品質
懸濁物質の量
2 g/ℓ以下
溶解性蒸発残留物の量
1 g/ℓ以下
塩化物イオン量
200ppm 以下
セメントの凝結時間の差
始発は 30 分以内,終結は 60 分以内
モルタルの圧縮強さの比
材齢 7 日および材齢 28 日で 90%以上
表
回収水の品質
項目
品質
塩化物イオン量
200ppm 以下
セメントの凝結時間の差
始発は 30 分以内,終結は 60 分以内
モルタルの圧縮強さの比
材齢 7 日および材齢 28 日で 90%以上
正解:②
第 2 章 配合
◆練習問題2−1
解説:
W/C=50%(C/W=2.0)で圧縮強度が 28N/mm2,W/C=40%(C/W=2.0)で圧縮強度が 43N/mm2
なので,圧縮強度とセメント水比(C/W)の関係式 f = a + b C/W を求めると,
28 = a + 2.0b,
∴
43 = a + 2.5b
a = 32,b = 30
となるので,圧縮強度とセメント水比(C/W)の関係式は,
f = 32 + 30 C/W
40N/mm2 のコンクリートを製造するためには,上式を用いて,
∴
40 = 32 + 30 C/W
C/W = 2.4
となる。したがって最適な水セメント比は,1/2.4 = 41.6%または 42%
正解:
41.6%
あるいは
42%
◆練習問題2−2
解説:
細骨材の表面水率から,余剰水量を求めると,
625 × 0.023 = 14.375 kg
したがって,単位水量と細骨材量は以下のように修正する。
細骨材: 625 + 14.375 = 639.375
→
639 kg
水
→
154 kg
: 168−14.375 = 153.625
現場配合の各単位量は以下の通りである。
正解:
水
セメント
細骨材
粗骨材
154
373
639
1135
単位:kg/m3
◆練習問題2−3
解説:
変動係数 10%より,割増し係数は 1.2
f ' 28 = 30 × 1.2 = 36
36 = −19.5 + 30.0 ⋅ C W → C W = 1.85
凍結融解抵抗性より, W C max = 0.65 −②
∴W C = 0.54
コンクリートの水密性から, W C max = 0.55
−③
−①
①,②,③のうち最も小さい W C を採用する。よって, W C = 0.54
AE 減水剤を用いた AE コンクリートの空気量,細骨材率 s a ,スランプ等の概略値をひろ
う。 G max = 20mm より, W C = 0.55 ,粗粒率 2.80,スランプ 8.0cm, s a = 45 , W = 165 ,空
気量 6.0%。
各数値を配合条件にあうように修正していく。
s a の補正
区分
−
粗粒率(2.80→2.78)
W の補正
(2.80 − 2.78) × 0.5 = −0.1
スランプ(8→10)
−
空気量(6→5)
+ (6 − 5) × 0.7 = +0.7
W
C
−
(0.55→0.54)
−
0.1
+ (10 − 8) × 1.2 = +2.4
+ (6 − 5) × 3 = +3
(0.55 − 0.54) × 1 = −0.2
−
0.05
増減量
∆ s = −0.1 + 0.7 − 0.2 = +0.4
a
∆W = 2.4 + 3 = 5.4%
補正後の値
s = 45 + 0.4 = 45.4%
a
W = 165 × (1 + 0.054) = 174
セメント量 C =
174
= 322
0.54
骨材の容積 a = 1000 −
174 322
−
− 50 = 673
1.0 3.13
細骨材量 S = 673 × 0.454 × 2.62 = 801
粗骨材量 G = 673 × (1 − 0.454) × 2.69 = 988
AE 減水剤量 Ad = 322 × 2.5 = 805 cc
正解:
コンクリートの示方配合
粗骨材
スランプ
水セメン
の最大
の範囲
ト比
率
W/C
s/a
寸法
空気量
(cm)
(mm)
20
10
単位量(kg/m3)
細骨材
(%)
(%)
(%)
54
5
45.4
水
セメン
混和材
細骨材
粗骨材
混和剤
ト
W
C
F
S
G
A
174
322
―
801
988
0.805
◆練習問題2−4
解説:
修正:スランプを 5cm 小さくする。
区分
s a の補正
W の補正
スランプ(15→10)
−
− (15 − 10 ) × 1.2 = −6.0
増減量
−
∆W = −6.0%
補正後の値
−
W = 174 × (1 − 0.06) = 164
セメント量 C =
164
= 304
0.54
骨材の容積 a = 1000 −
164 304
−
− 50 = 689
1.0 3.13
細骨材量 S = 689 × 0.454 × 2.62 = 820
粗骨材量 G = 689 × (1 − 0.454) × 2.69 = 1012
AE 減水剤量 Ad = 304 × 2.5 = 760 cc
正解:
修正後のコンクリートの示方配合
粗骨材
スランプ
水セメン
の最大
の範囲
ト比
率
W/C
s/a
寸法
空気量
(cm)
(mm)
20
10
(%)
(%)
(%)
54
5
45.4
◆練習問題2−5
解説:
f
'
28
は次のとおりである。
f ' 28 = −19.5 + 30.0 ⋅
322
= 36.0
174
f ' 28 = −19.5 + 30.0 ⋅
322
= 31.0
174 × 1.10
強度低下率=
正解:
13.9%
単位量(kg/m3)
細骨材
36.0 − 31.0
× 100 = 13.9%
36.0
水
セメン
混和材
細骨材
粗骨材
混和剤
ト
W
C
F
S
G
A
164
304
―
820
1012
0.760
◆練習問題2−6
解説:
空気量が 5.0%(50 リットル)となるところ,4.0%(40 リットル)となったため,実際に練
り上がったコンクリートは,1000−(50-40)=990 リットルである。したがって,各単位量は,
上表の数値に 1000/990 倍したものになる。
: 173×1000/990= 175 kg/m3
水
セメント: 315×1000/990= 318 kg/m3
細骨材
: 786×1000/990= 794 kg/m3
粗骨材
:1007×1000/990=1017 kg/m3
細骨材率(問題文中の示方配合の数値を用いても,上述の数値を用いても同値となる)
細骨材の容積:786/2.62=300 リットル/m3
粗骨材の容積:1007/2.67=377 リットル/m3
細骨材率 s/a=
正解:
300
× 100 = 44.3%
300 + 377
d.
◆練習問題2−7
解説:
a.
正しい:水セメント比 W/C=180/383=0.470
b.
誤
よって 47.0%
り:細骨材の容積=766/2.57=298 リットル
粗骨材の容積=951/2.67=356 リットル
細骨材率 s/a=
298
× 100 = 45.6%
298 + 356
 180 383 766 951 
+
+
+
 = 45 リットル よって 4.5%
 1.0 3.16 2.57 2.67 
c.
正しい:空気量= 1000 − 
d.
正しい:単位容積質量=180+383+766+951=2280kg/m3
正解:
b.
◆練習問題2−8
解説:
細骨材および粗骨材の計量すべき量をそれぞれ x , y とすると,次式が成り立つ。
0.95× x +0.05× y =797
0.10× x +0.90× y =1016
これを解くと, x =782, y =1042
細骨材の表面水量=782×0.04=31.3kg
粗骨材の表面水量=1042×0.01=10.4kg
計量すべき細骨材量=782+31.3=813kg
計量すべき粗骨材量=1042+10.4=1052kg
計量すべき水量=182−31.3−10.4=140kg
よって,現場配合は下表の通りとなる。
正解:
コンクリートの現場配合
単位量(kg/m3)
AE 減水剤
水
セメント
細骨材
粗骨材
(C×%)
140
316
813
1052
0.25
第 5 章 硬化コンクリート
◆練習問題5−1
解説:
a. 正しい:水セメント比が大きいコンクリートは、水セメント比が小さいコンクリートよ
り単位水量が多くなるので、乾燥収縮も大きくなる。
b. 誤
り:コンクリートの乾燥収縮は、主として、セメントペースト部分の収縮によって
生じる。骨材の乾燥収縮は、極めて小さい。
c.
誤
り:乾燥収縮は、コンクリートの骨材量の増加にともない減少する。したがって、
モルタルの乾燥収縮の方が大きい。
d. 正しい:乾燥収縮は、コンクリート表面から内部に向けて進行するため、部材寸法が小
さいと乾燥収縮は大きくなる。データなし
正解: ②
◆練習問題5−2
解説:
a.
正しい:
b. 誤
c.
り:水セメント比が大きいほど,クリープは大きくなる。
正しい:
d. 正しい:これは,Davis-Granville の法則と呼ばれるもので,正しい。
正解: b.
◆練習問題5−3
解説:
a.
正しい:
b. 正しい:
c.
誤
り:静的破壊荷重の 80%以上の持続荷重を載荷しておくと,いずれコンクリートは
破壊する。これを静的疲労あるいはクリープ破壊という。
d. 正しい:
正解: c.
◆練習問題5−4
解説:
a.の説明は「セメントの異常凝結」の際の特徴である。コンクリートの沈下およびブリー
ディングの場合のひび割れは,鉄筋上部や壁部,床の境目などに断続的に発生するのが特
徴である。
正解: a.
◆練習問題5−5
解説:
a.
正しい:コンクリート圧縮強度と水セメント比との関係は,水セメント比説として提唱
されている。配合設計では,セメント水比と圧縮強度との間に直線関係が成
り立つことを利用している。
b. 正しい:問題文の記述は正しい。しかし,13℃以上の温度で養生した場合,材齢 28 日
における圧縮強度に養生温度の差はほとんど認められない。
c.
正しい:強度の観点から見ると,空気は力を負担してくれない欠陥でしかない。したが
って,問題文にあるような強度低下につながる。
d. 誤
り:水セメント比が一定であっても,粗骨材の最大寸法が大きくなるとコンクリー
トの圧縮強度は小さくなる。
正解: d.
◆練習問題5−6
解説:
a.
正しい:高圧縮強度のコンクリートは,より剛な材料となるため,応力−ひずみ関係の
初期部の傾きで表される静弾性係数(ヤング係数)は大きくなる。
b. 正しい:一般に圧縮強度が高いとクリープは小さい。
c.
正しい:自己収縮とは,セメントの水和反応によって水分が消費されるためにコンクリ
ートが収縮する現象である。したがって,単位セメント量の多い高強度コン
クリートにおいて顕著となる。問題文は,セメント量の多いとの記述がある
ことから自己収縮は大きくなる。
d. 誤
り:圧縮強度が高くなると,圧縮強度に対する引張強度の比は小さくなる。
正解: d.
◆練習問題5−7
解説:
a.
曲げ強度は圧縮強度の増大に伴い増加する。したがって,問題中の図に示すような関
係を持つ。
b.
ヤング係数も曲げ強度同様,圧縮強度の増大に伴い大きくなる。したがって,問題中
の図に示すような関係を持つ。
c.
ポアソン比は,横方向ひずみを縦方向ひずみで除したものであり,弾性範囲内であれ
ば,コンクリートの種類に無関係に 0.20 程度である。
d.
引張強度は圧縮強度の増大に伴い増加する。したがって,問題中の図に示すような関
係を持つ。
正解: c.
◆練習問題5−8
解説:
弾性ひずみは下式を用いて算出することができる。
σ =ε ⋅E
ここで, σ :圧縮応力, ε :弾性ひずみ, E :ヤング係数
よって
ε=
σ
E
=
8.4
= 3.00 × 10 − 4 = 300 × 10 −6
28.0 × 1000
また,全ひずみは下式より計算することができる。
全ひずみ=弾性ひずみ+乾燥収縮ひずみ+クリープひずみ
よって
クリープひずみ=全ひずみ−弾性ひずみ−乾燥収縮ひずみ
=1200×10-6−300×10-6−390×10-6
=510×10-6
さらに,
クリープ係数=クリープひずみ/弾性ひずみ
=
510 × 10 −6
= 1.70
300 × 10 −6
正解: a.
◆練習問題5−9
解説:
a.
誤
り:供試体の形状が相似あれば,一般に寸法が大きいほど強度は小さくなる。こ
れは寸法効果と呼ばれるもので圧縮強度以外の強度についても同様の傾向を
見ることができる。
b.
正しい:加圧面が平面でないと支圧荷重が局所的に作用することになり,一様な圧縮
応力状態ではなくなる。結果,強度は低下する。
c.
正しい:乾燥状態で圧縮強度試験を行うと,湿潤状態より強度は大きくなる。ただし,
曲げ強度では,表面だけ乾燥させると,逆に湿潤状態より小さくなる。完全
に乾燥させれば,曲げ強度でも湿潤状態より強度は大きくなる。
d.
誤
り:載荷速度を早くすると強度は大きくなる。JIS A 1108 には,載荷速度の規定が
ある。
正解: ③