平成 25 年度事業活動報告 平成25年度は、外航客船の安全運航・船舶保全、客船振興事業の効果的推進を図る観点から、 おおよそ以下の通りの事業を行った。 (1) 外航クルーズ客船における旅客に対する非常時の対応について IMO は、 「コスタ・コンコルディア」号の座礁事故を契機とした旅客船の安全対策の強化 をはじめ、安全寄港要件及び防火対策の強化、騒音コードの見直し等を行い、関連する SOLAS 条約等各種国際条約の改正を行った。当協会は、これら改正について国土交通省と 協議を行うとともに、関連する国内法の改正について会員会社に周知を行った。 また、国土交通省は、平成 23 年 3 月に発生した東日本大震災において、多くの小型船舶 の漂流・乗り上げ等が発生し、津波の去った後はそれが残骸となりその処理の難しさが問 題となったほか、大型船舶においても、港内に押し寄せた津波により操船が困難になり、 漂流・座礁が発生したこと等にともない、津波発生時の船舶、船員及び旅客の避難行動に 関する教訓や今後の課題の抽出等を目的とした「東日本大震災を教訓とした船舶及び旅客 の津波防災対策検討会」を設置した。当協会は同委員会が取りまとめた「津波避難マニュ アルの作成の手引き」の策定に際し、委員として参画し、船主意見の反映に努めた。 (2) 船員法の改正について わが国政府は、平成25年8月にILO海事労働条約の批准手続きを行い、わが国においても同 条約が平成26年8月に発効することとなったため、一定の日本籍外航船は、条約要件への適 合性を確認するための法定検査及びそれを証明するための海上労働証書の船内備置が義務付 けられることとなった。当協会は、会員会社が同証書を円滑に取得するよう国土交通省と協 議を勧めるとともに、船員の定義の明確化、同条約に基づく不適合があった場合の通報制度 等について同省と意見交換を行った。 (3) 客船の環境保全規制への対応 IMO は、平成 22 年 10 月に開催した第 61 回 MEPC(海洋環境保護委員会)において、 MARPOL 条約附属書Ⅲ(容器に収納した状態で海上において輸送される有害物質による汚染防 止のための規則)に係る海洋汚染物質の輸送方法に関する規程に IMDG コード(国際海上危 険物規程)を引用する方式に改めた。それにともない、我が国は、関係法令である海洋汚染 等および海上災害の防止に関する法律施行規則(昭和 46 年運輸省令第 38 号)に所要の改正 を行い、平成 26 年 1 月 1 日に施行した、また、船舶の通常の活動にともない生ずる汚水を 海洋において処分することができる水質の基準を定める省令の一部を改正する省令(国土交 通省令第 96 号)も平成 25 年 12 月 9 日付で交付した。当協会は、これら諸情報を会員会社 に提供するとともに関係当局への意見反映に努めた。 (4) 苦情相談体制の確立 外国籍船の日本発着クルーズの増加にともない、同船と日本籍船のキャンセル料の取り扱 いに違いが生じていることや、電動車いすの取り扱い、ポータブルトイレの取り扱い等につ いて、適宜意見交換を行った。 (5) 「クルーズ旅客運送約款」の見直し及び「クルーズ旅行約款(仮称)」の検討 観光庁の「標準旅行業約款の見直しに関する検討会」において、日本旅行業協会(JATA) が提案していた取消料の改正については見送りで決着したことから、 「クルーズ客船旅客運 送約款」の見直し及び「クルーズ旅行約款(仮称) 」を策定問題について、適宜情報交換を 行った。一方、わが国政府は、運送法制(商法)が、100 年以上前に制定されてから実質的 な改正がされておらず時代遅れになっているとの指摘がなされていることや、商法の運送・ 海商法分野の現代語化に加えて現在の取引実態を踏まえた規律の在り方を検討するため、 「運送法制研究会」において、検討を要すべき論点・課題の整理に向けた準備が行われてい る。そのため、当協会は、畑弁護士のアドバイスを得ながら、法務省にコメントを提出した。 (6)平成25年度クルーズセミナー「クルーズ・コンサルタント(C.C)コース」及び「第7 回クルーズ・マスター(C.M)コース」並びに「第6回ブラッシュ・アップ・クルーズ セミナー (更新講習) 」の実施 客船事業の振興策の一環として、日本旅行業協会(JATA)等の協力を得て創設した「クル ーズアドバイザー認定制度」に係るクルーズセミナー(クルーズ・コンサルタント(C.C) コース)の資格認定講習及び同修了試験を、平成 25 年度は 10 月に東京、神戸、名古屋及び 福岡において各 1 回実施した。合計 1,227 名の受講・受験者のうち、761 名が合格、体験乗 船研修修了者と合わせ 758 名を新たにクルーズ・コンサルタント(C.C)として認定した。 これにより通算認定証交付者数は、4,757 名となった(修了試験合格者総数 4,768 名)。 また、 「第 7 回クルーズ・マスター(C.M)コース」を平成 26 年 2 月、事前に提出された 所属会社クルーズ担当部長以上が承認した推薦書及び調書に基づく受講審査の審査に合格し た大木美雪(JTB 首都圏) 、加藤武(JTB 北海道) 、高木あづみ(西鉄旅行)および横山憲一 郎(JTB 首都圏)の 4 名を対象に実施し、全員をクルーズ・マスターとして認定、これによ りクルーズ・マスターは 52 名(見做し認定者 13 名を含む)となった。 更に、クルーズ・コンサルタント(C.C)の資格取得後 5 年を経過し、認定証の更新希望 者を対象とする「第 6 回ブラッシュ・アップ・クルーズセミナー(更新講習)」を平成 25 年 9 月 11 日(水)~30 日(月)まで、パソコンを利用しての E-Testing により実施した。前 年度未受講者 7 名を含む期間満了者 731 名のうち、543 名が受講登録し、530 名が更新した。 その結果、クルーズ・マスターへの昇格および更新辞退等により平成 26 年 3 月末時点に おけるクルーズ・コンサルタント(C.C)資格所有者数は、4,056 名となった。 (7) 「クルーズ販売セミナー」等の開催 当協会では、平成18年6月、日本船旅業協会(JASTA)を統合した際、同協会が平成16年 度から日本旅行業協会(JATA)との共催事業として実施してきた旅行会社のクルーズの企 画・販売・営業等の担当者を対象とする「クルーズ販売セミナー」を継承・実施することと した。平成25年度は、平成25年10月31日(木)、博多港に停泊中の「飛鳥Ⅱ」において、船 内見学と基調講演「わが国のクルーズ・マーケット拡大について」および平成25年12月20 (金)、名古屋港に停泊中の「にっぽん丸」において、船内見学会と基調講演 「クルーズ販 売手法について」をそれぞれ実施した。また、セミナーの内容については、HPにJOPA&JATA 共催「クルーズ販売セミナー」記録集として掲載した。 (8)クルーズ振興地方協議会の活動支援 当協会では、国土交通省海事局の協力の下、沖縄・関西・北海道・九州及び中国地方の 5 地域に、クルーズ会社、港湾関係者、観光事業者及び関係官庁等を構成メンバーとする 官民合同の「クルーズ振興地方協議会」を立ち上げ、各協議会におけるクルーズ振興活動 を支援しているが、平成 25 年度においてもクルーズセミナー及び船内見学会を共催・実 施するとともに、同協議会を中心に実施する各種イベントに対し、当協会作成の広報パン フレット、携帯用クリーナー、ポストカード等の提供、クルーズに関する情報及びデータ の提供、講師の紹介等の支援、協力を行った。また、日本と韓国のクルーズ利用者及び定 期船の旅客数の増加を図るため、両国の海運事業者、旅行会社及び港湾管理者との間で意 見交換等を行うフォーラムを、九州クルーズ振興協議会をはじめとした関係団体との共催 で、平成 25 年 12 月 17 日(火)福岡市で、 「日韓クルーズ・定期旅客船活性化フォーラ ム」を開催した。 (9)クルーズ客船の一般公開 当協会では、設立当初から会員のクルーズ客船運航会社に対し、クルーズの振興及び普及啓 蒙活動の一環として、クルーズ客船の入港に際しては可能な限り地元住民に対する本船の一 般公開の機会を設けて欲しい旨の協力要請を行っているが、平成25年度は利尻島、釧路、函 館、青森、大船渡、境港、鳥羽、浦郷(隠岐)、門司、油津(日南)など56港において、合計 84回(合計参加者数:6,710人)の一般公開が実施された。 (10)外航客船に関するデータ及び関連情報の収集 当協会では、内外におけるクルーズ関連諸資料を整理し、平成13年度からホームページ に内外クルーズ客船の1船ごとのデータ、クルーズの歴史、日本・シンガポール・イギリ ス・北米におけるクルーズ動向等を内容とするデータベースを「会員専用客船データベー ス」として立ち上げ、原則として年2回の改訂を行いながら、内容の充実と最新化を図って いる。 データベースの現在の仕様は、①内外クルーズ客船213隻とそれぞれの個別データ(船体 全景写真、船名、コメント、運航会社、国内での取扱い会社、船体情報、主な施設・サービ ス概要等)、更に検索項目として船名(50音)、サイズ別(総トン数)、主要就航海域別、乗 客定員数別、運航会社別及び就航年別) ②クルーズの歴史 ③クルーズ動向(日本、シン ガポール、北米及び英国)となっており、引き続き、最新の統計資料や情報を入手し、精度 を高めつつ更新していくこととしている。 (11)日本籍クルーズ客船の国内港湾寄港回数調査 当協会では、平成 10 年度以降、毎年、日本籍クルーズ客船の国内港湾別寄港回数を調査 し、公表している。平成 25 年度(1 月~12 月)におけるクルーズ客船 3 隻の合計寄港回数 は、 「ふじ丸」の引退により調査対象が 4 隻から 3 隻になったこと、「飛鳥Ⅱ」の世界一周ク ルーズとオセアニアグランドクルーズや「ぱしふぃっくびいなす」の就航 15 周年記念アジ ア・インド洋クルーズ等の海外ロングクルーズが実施されたことから、578 回と前年の 654 回に比べ 76 回減となった。 寄港回数が最高となったのは、前年比 2 回減の 115 回を記録した横浜港で、11 年連続で トップを飾った。第 2 位は神戸港 75 回(前年比 13 回減)、第 3 位は名古屋港 25 回(前年比 13 回減) 、第 4 位は二見港(父島)20 回(前年比 10 回減)と東京港 20 回(前年比 1 回減) 、 第 6 位は九州クルーズの基点港となっている博多港 18 回(前年比 9 回減)だった。 一方、目的地(寄港地)型の港としては、前記の通り、世界自然遺産に登録された小笠原 の二見港が前年に引き続き第 4 位となったほか、屋久島の宮之浦港が 13 回(前年比 2 回 減)で 7 位にランク、沖縄クルーズの拠点港でもある那覇港が 12 回で 8 位(前年比 7 回 減)となっており、相変わらずの離島人気を裏付ける結果となっている。この他、北海道ク ルーズの拠点港でもある小樽港と祭りクルーズで人気の青森港もそれぞれ 12 回で 8 位等と なっている。 クルーズ各社及び旅行会社等が歳時に合わせた定番クルーズに加え、新規顧客の開拓を狙 って、地方港発着のクルーズを増加させると共に自然、文化、歴史、グルメといったタイム リーでテーマ性、話題性に溢れたレジャー及びチャータークルーズの催行が反映していると 考えられる。 (12)会員自治体会等が実施するイベント等への協力及び一般消費者を対象とする「ク ルーズセミナーと船内見学会」の開催 クルーズ事業振興及び広報活動の一環として、会員自治体・クルーズ振興地方協議会等が 実施するイベントに対し、広報パンフレット、ポストカード、携帯クリーナー、クルーズに 関する情報及びデータの提供を行った。また、各協議会の幹事会、総会に出席するとともに、 これらへの講師の派遣等に協力した。また、「クルーズキャンペーン97」事業において実施 して以来、好評を博している一般消費者を対象とする「クルーズセミナーと船内見学会」を、 博多港に停泊中の「ぱしふぃっくびいなす」(9月27日)、神戸港に停泊中の「にっぽん丸」 (10月9日)及び広島港に停泊中の「飛鳥Ⅱ」 (11月19日)において、それぞれ70~170名の 参加を得て実施した。 (13)第6回「クルーズ・オブ・ザ・イヤー」の実施 客船事業振興委員会における事業として、国土交通省、観光庁及び日本旅行業協会 (JATA)の後援の下、旅行業界の健全な発展に寄与したクルーズ旅行商品、特にオリジナリ ティーに溢れ、かつ、わが国のクルーズ・マーケットの拡大に貢献した商品を企画造成、実 施した旅行会社等を顕彰することによりモチベーションの向上を期すとともに、一般消費者 に対し良質のクルーズ旅行商品・サービスの提供を図ることを目的とする第6回「クルー ズ・オブ・ザ・イヤー」を実施した。当協会及び日本旅行業協会の会員会社を対象に、平成 25年11月1日を締切日として募集を行ったところ、合計21点のクルーズ旅行商品等の応募・ 推薦があった。11月12日、 「クルーズ・オブ・ザ・イヤー 2013」選考委員会を開催し、グラ ンプリ1点、優秀賞3点及び特別賞3点を選考・決定した。なお、授賞式は平成25年12月18日 (水)午後4時半より、千代田区平河町の海運倶楽部において開催した。 (14) 「JOPAクルーキャンペーン2013」の実施 日本の客船だから体験できる「心に響くおもてなしとらくらく安心のクルーズ旅行」の 楽しさを、広く一般消費者にアピールするため、簡単なクイズに回答することにより、日 本の客船のクルーズ旅行に招待する「JOPA クルーズ・キャンペーン 2013」を実施した。 応募総数合計 3,197 通の中から、抽選で 1 組 2 名様、合計 6 組 12 名様を「飛鳥Ⅱ」、 「にっぽん丸」および「ぱしふぃっくびいなす」のクルーズにそれぞれ招待するとともに、 クルーズ体験の感想文を提出してもらい、同感想文を当協会 HP に掲載した。 (15) 「クルーズニュース」の毎月発信 当協会では、マスコミ、一般消費者などに対する情報提供手段であるホームページの「ク ルーズニュース」を毎月更新・発信した。平成25度におけるホームページヘの1日平均アク セス数は、約270件をカウントしている。 (16)外航客船に係る規制緩和等の推進 当協会は、平成 24 年度に設置した規制緩和タスクフォースにおいて、わが国のクルーズ 振興の阻害要因となっている各種規制緩和項目を整理・検討するとともに、国土交通省、全 日本海員組合と調整を行った結果、国土交通省は、平成 25 年 11 月 21 日、運航部員につい ても外国人乗組員を認める通達を出状した。これを受けて、当協会は、全日本海員組合と同 通達に基づき、各社が個別協議を行える旨の覚書を締結した。これにより、外航マルシップ 客船の運航部員についても外国人船員の乗り組みが可能となった。また、国土交通省は、平 成 26 年 3 月 27 日、外航客船の年次検査における水中検査についても認める通達を発し、本 規制緩和についても当協会の要望が実現することとなった。この他、30 日ルールの規制緩 和をはじめ、外国人乗組員の上陸許可期間の緩和、船舶検査の緩和、舶用材料・機器等の承 認検査についての緩和および CIQ 体制の充実、入港時の手続きの迅速化・円滑化、出入港及 び航行に係わる規制緩和、公海上におけるカジノの実現等の諸施策を実現するために国土交 通省等関係官庁・団体と協議を進めるとともに、規制緩和の必要性の理解を深めるため、国 土交通省との共催で、平成 26 年 3 月 20 日(木)千代田区平河町の海運倶楽部でクルーズ国 際シンポジウムを開催した。 (17)その他 当協会では、東京都が平成11年度に策定した船舶給水使用料の減額措置である「客船使用 に係る港湾施設(船舶給水)使用料の減額措置」、平成22年度に策定した入港料、岸壁・桟 橋使用料及び旅客乗降用渡橋使用料の減額措置である「クルーズ客船の寄港促進に向けたイ ンセンティブ制度」及び平成24年度に策定した水先料、曳船料及び綱取・綱放料等を対象と する「東京港等客船誘致促進補助制度」が平成26年3月31日付をもって期限が到来するため、 平成26年2月6日、東京都に対してこれら減額措置制度及び補助制度の継続実施方要望を行っ た結果、 「客船使用に係る港湾施設(船舶給水)使用料の減額措置」は平成27年3月31日まで、 「クルーズ客船の寄港促進に向けたインセンティブ制度」は平成29年3月31日まで、「東京港 等客船誘致促進補助制度」は平成27年3月31日までそれぞれ延長することが決定した。
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