医療連携・遠隔支援(北海道) - 総務省

平成23年度版 総務省 地域ICT利活用事例
ユビキタスタウン構想推進事業
事業テーマ:医療連携・遠隔支援
「どこに住んでいても高度な医療が受けられる遠隔医療普及推進事業」
実施団体:北海道
(実施エリア:北海道内全域)
事業概要
①地方医療機関での対面診療を遠隔地の医師が支援するリアルタイムD-D-P(Doctor to Doctor to Patient)型遠隔医療支援
システム、②医師間で症例検討を行うD-D(Doctor to Doctor)型遠隔相談・遠隔勉強会システムを提供。
①は、専門医が不足している地方医療機関の診療を遠隔地の疾患の専門医が支援する実際の診療現場で活用、 ②は、①の
利便性を高め多くの医師が参加できるようにするため、メール・SNSに似たアプリケーションによりD-Dでの症例相談、コンサル
ティング、遠隔診察予約、勉強会等のコミュニケーションを実現する仕組みとしてサービス提供されており、地方での診療レベル
の向上に寄与した。
事業の経緯・背景
 地域課題
①地方医療機関における専門医の不足。
②患者が、地域で専門医療を受けられずに、遠方の専門医療機関まで通院しなければならない場合にかかる負担。
③都市部の専門医が地域医療を維持させるために派遣、出張する頻度が多い。
④地方医療機関における医師の孤立、医師が地方に勤務しやすくするためのバックアップ体制の不備。
 取組内容
遠隔医療は1994年から旭川医科大学において研究、実験、実証が行われてきており、対面診療と同等の診療が
事業 可能であるという評価結果は既に得られていた。旭川医科大学は、独自予算で同大学と地方医療機関のネットワー
実施前 クを構築して実証を行っていたが、当時は通信料金が高額であったこと、そして映像、音声をリアルタイムに通信する
装置が高額であったため、十分に必要拠点のネットワークを整備することができなかった。
システム導入により、患者の通信・移動負担の軽減、地方での専門的な診療の質の向上、地方医師を孤立化させ
事業
ない支援体制の整備など着実に成果をあげてきている。また、特に眼科においては、検査料など一部の診療報酬を
実施後 支援側が受け取ることができるため実用稼働ができる体制が整った。
サービス内容
「リアルタイムD-D-P型遠隔医療支援、D-D型遠隔相談・遠隔勉強会システム」により、都市部の専門医と地方の医師が連携す
ることで、地域の専門医不足の解決を図る。本サービスの導入により、これまでできなかった遠隔地の専門医による地方医療機
関の診療支援が可能となった。
サービスのイメージ
サービスの詳細
サービス内容
リアルタイムD-D-P型遠隔医療支援システム
実施期間
時間不定。救急時には夜間休日の場合もあり。
対象者
医師、看護師、検査技師
利用方法
リアルタイムD-D-P型遠隔医療(患者のいる地方医療機関診察室
と遠隔地の専門医をつなぎ、専門医による診察、手術日程調整、
現場医師へのコンサルティング、相談支援を行う)
サービス内容
D-D型遠隔相談・遠隔勉強会システム
実施期間
24時間365日利用可能
対象者
主として医師だが検査技師も一部使用
利用方法
メール、SNSに類似した機能と操作性を備え、地方医療機関医師
が遠隔地の専門医に症例相談したり、遠隔診察を実施するための
日時予約、事前情報共有、事後診療報告など、リアルタイムD-D-P
型遠隔医療支援システムを補完する役割
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平成23年度版 総務省 地域ICT利活用事例 「どこに住んでいても高度な医療が受けられる遠隔医療普及推進事業」 実施団体:北海道
システム概要
 システム全体概要図
 遠隔医療システム
互換性のあるネットワークを構築し費用を軽減。
旭川医科大学病院外来診察室内の遠隔医療シス
テム。遠隔診療用のモニターが設けられている。
書画カメラ
TV会議システム
(HD/SD)
検査機器
画像伝送装置
TV会議システム
(HD/SD)
画像診断装置
検査機器装着用
CCDカメラ装置
検査機器
インターネット
非リアルタイム型
遠隔相談システム
非リアルタイム型
遠隔相談システム
旭川医科大学病院
遠隔医療センター
書画カメラ
依頼側医療機関
 システム活用イメージ
D-D-P型遠隔医療支援、D-D型遠隔相談・遠隔勉強会
システムの双方を活用した事例
D-D型システム 遠隔相談画面イメージ
青矢印は患者の通院、赤矢印は遠隔診療、赤枠内の黒矢印は医師間のコ
ミュニケーションを示す。D-D型遠隔相談システムの活用により、医師間コ
ミュニケーションが促進され患者の通院負担も軽減されていることがわかる。
6/25
患者
5月~
通院
遠軽
(地方医師)
7/5
7/13
疾患の専門医と地方医師との間での遠隔相談画面。具体的な映像
と検査結果に基づく、治療方針についてのディスカッションが交わさ
れている。
9/下
D-D型遠隔相談・遠隔勉強会システムの活用
6/25
6/26
6/29
6/30
旭川1
(専門医)
旭川2
(専門医)
リアルタイムD-D-P型
遠隔医療支援システムの活用
地元
通院
非リアルタイム
(治療方針相談)
スケジュール 遠隔
調整
診察
旭川
通院
入院
手術
D-D型システム 実技指導画面イメージ
D-D型システム バーチャル勉強会画面イメージ
難易度の高い手術等を対象として、専門医によるビデオ映像を交えた実技
指導が行われている。
専門医から地方医師へ行われるバーチャル勉強会。出題ケースに対し、
各医師の見解が投稿され、専門医からの評価コメントが記されている。
※画像は一部画質を落として掲載しております
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平成23年度版 総務省 地域ICT利活用事例 「どこに住んでいても高度な医療が受けられる遠隔医療普及推進事業」 実施団体:北海道
導入概算費用等
有効活用した既存資源・コスト削減要素
初期導入期の機器と互換性のある機器を選定したため、
当時の機器を本事業ネットワークに接続して活用してい
る。
・導入費用:10,250万円
内訳:システム開発・構築費1,000万円、設置費用1,250万円、機器等8,000万円
・運用費用:約3,400万円/年
内訳:年額リース料1,200万円、機器保守・ライセンス費200万円、
遠隔医療センター人件費2,000万円
導入効果(アウトカム)と導入規模(アウトプット)
導入効果(アウトカム)
導入規模(アウトプット)
参加医療機関数
(平成24年3月時点)
単独 地元での診療継続率(遠隔診断の結果、大病院ではな
く地元での診療継続が可能となった患者の割合
:平成23年度累計(168症例/全208症例)
参加診療科数
(平成24年3月時点)
81%
TV会議機器設置数
:34機関
:10診療科
:22拠点
(平成24年3月時点)
術中迅速病理診断回数
(平成23年度実績)
単独
画像診断処理件数の推移
遠隔診察回数
:181回
画像診断実施回数
:2,059回
(平成23年度実績)
2,059件
(平成23年度累計)
:5回
(平成23年度実績)
画像診断機器設置数
(平成24年3月時点)
:13拠点
※本効果は事業成果の抜粋であり、全ての効果を掲載しているわけではありません。
事業実施体制
事業主体
サービス提供対象
:北海道、旭川医科大学
:患者(地域住民)、地域医療機関
本システムの構築にあたっては、地域の高度医療機関である
旭川医科大学や地域の中核病院の専門医を体制に組み込んだ
ことで、実活動現場の体制を含めた事業推進体制を構築できた。
事業実施体制
事業実施相関図
凡例
:実施主体等
:協力団体
患者(地域住民)
:ベンダ等
サービス提供
北海道(事業主体)
函館五稜郭
病院
北海道遠隔医療普及推進協議会
旭川医科
大学
留萌市立
病院
函館
五稜郭
病院
北海道立
羽幌病院
市立
函館病院
八雲
総合病院
北見
赤十字
病院
名寄市立
総合病院
中頓別町
国民健康
保険病院
留萌市立病院
北海道
北海道立
羽幌病院
協議会
運営
市立函館病院
八雲総合病院
遠軽
厚生病院
富良野
協会病院
地域の医療機関
助言
協力
北海道遠隔医療普及推進協議会
助言
協力
中頓別町
国民健康保険
病院
北見赤十字
病院
名寄市立
総合病院
富良野
協会病院
公立
芽室病院
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助言協力・
運用サポート・
システム保守
システム構築
旭川医科大学
システム構築
事業者
遠軽厚生病院
公立芽室病院
平成23年度版 総務省 地域ICT利活用事例 「どこに住んでいても高度な医療が受けられる遠隔医療普及推進事業」 実施団体:北海道
事業主体のコメント・エンドユーザの声
国立大学法人 旭川医科大学 医工連携総研講座 遠隔医療センター
守屋 潔 氏
 事業実施後の評価等
眼科を中心に患者の通院負担の軽減、地方での専門的な診療の質の向上、地方医師を孤立化させない支援体制の整備など
着実に成果をあげてきている。一方、内科、精神科、救急など他診療科では人的体制つくりにまだ課題が残っている。また医師、
医療機関ごとの取り組みに対する温度差もある。遠隔放射線画像診断は制度面の整備がされているため企業参加も含め普及
発展しているが、同程度の整備がなされれば全診療科において同様の発展が可能である。
利用者の声①
検査や専門医の診断を受けるために遠方の専
門医療機関に通院する負担が軽減される。本人
だけでなく患者家族も同伴する場合が多く経済
的にも負担が大きかった。
利用者の声②
現地では判断に迷う症例の場合、通常は専門
医療機関へ紹介するところを現地で診療を継続
できるケースが増えたため、医療機関の信頼性
向上と自身の診療レベル向上に役立つ。
(地方医療機関に通院する患者(65歳以上:男
性))
(地方医療機関中堅医師(30~34歳:男性))
利用者の声③
地方医療機関の患者の場合、出張時に診察
する(1回/月程度など)ことしかできず、退院後
フォローアップできないケースもあったが、本シ
ステムを活用することにより出張時でなくとも随
時経過を観察することができ、日常のケアは地
元医師に任せられることができるようになった。
(支援側医療機関医師(35~54歳:男性))
事業成功のポイント
 遠隔医療システム利用促進のための、遠隔相談・遠隔勉強会システムの構築
遠隔医療支援システムをより効果的に活用するため、大学の独自予算で医師間のクローズドなSNSシステムを構築し、実際の
遠隔医療に至るまでの症例相談や日常的な症例相談についてのケーススタディ等オンラインでのコミュニケーションを通じた医師
間ネットワークの構築を実施。
 遠隔医療に対する住民への認知向上
遠隔医療に対する住民の理解向上ため、積極的に道内メディアに情報公開し報道協力等にも応じた結果、日本遠隔医療学会か
ら北海道における住民の遠隔医療に対する認知度、受容度は極めて高い水準にあると評価された。
 運用の継続性の担保
遠隔医療センターを技術支援・保守運用主体(ヘルプデスク機能も備える)として、各種メンテナンスやICT技術指導を継続して
行っている。
今後の課題
• 光回線の無い地域での遠隔診断は通信品質の関係上、HDではなくSD画像としており解像度上の問題がある。
• 遠隔医療の維持、発展のためには機器、通信インフラのメンテナンスコスト、更新、改良などICT関連費用が毎年必要である。遠
隔医療診療報酬制度等の充実化により、事業の自律的運営や医師への大きなインセンティブ付与が期待される。
<本件に関する問い合わせ先、導入検討・視察の相談等>
北海道 保健福祉部医療政策局医療薬務課
電話:011-231-4111
E-mail: shiraishi.naoya [atmark] pref.hokkaido.lg.jp
※スパム対策としてメールアドレスを一部変更して記載してあります。
eメールを御送付の際は、「[atmark]」を「@」に変えてご利用ください。
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