ニュースレター 九州工業大学 マイクロ化総合技術 マイクロ化総合技術センター 化総合技術センター Center for Microelectronic Systems (CMS), KIT 2 0 0 7 年秋季号 今回は本センター主催のセミナー報告、知的クラスター創成事業(第 II 期) 「安全を保障するインテリジェントセンサーL S I の研究開発」プロジェクト、 新任教員について紹介します。 社会人・学生を対象にしたセミナーを開催 平成 19 年 9 月に以下の 3 セミナーを実施しました。 ステッパなどの装置の操作も体験しました。 ■製造中核人材育成セミナー(9/ 1 0~1 4 計 5 日、左の写真) 参加者:半導体関連企業 10 名 ■ダイオード試作実習(9 / 19 計 1 日) 参加者:工学部・生命体工学研究科学生 4 名 ■トランジスタ試作実習・集積回路演習(9/ 2 1 ,9 / 25 ~27 計 4 日) 参加者:九工大全学部・研究科学生 6 名 自分で試作したウェハを手に記念撮影。 本センターのクリーンルームを用いて、製造中核人材育成セミナーでは C MO S 回路を、ダイオード試作実習ではプレーナーダイオードを、トラン ジスタ試作実習・集積回路演習では nM OS トランジスタの作製と電気的特 性の評価を行うとともに、これら作製および電気的特性に関連する講義をセ ンター職員が行いました。好評のため、来年度も社会人および本学学生向け の半導体ものづくりセミナーを実施予定です。さらには、本学以外の学生を 対象としたセミナーも検討中です。 セミナー受講者の声 試作したウェハの電気的特性を測定しました。 ・Et ch 、CVD 、P VD 等の装置を用いた実習が良かった。 ・先生方の話が丁寧で、且つ最新技術動向の話も興味が持てた。 ・半導体の勉強を始めたばかりだったが、大変貴重な経験となった。 ・プロセスの一つ一つを理解することの大切さを改めて感じた。 ・ウェハ加工プロセスの表面研磨を担当しており、高平坦度化の意味を実際 にデバイスの作製および評価することで理解することが出来た。 ・実習の合間にポイントとなる技術解説があり、作業で実感しながらできた。 ・実際のプロセスも体験でき、講義での概念的理解を補完し、回路そのもの を見ることによりさらなる理解を深められた。 講義も実習と交えながら受講しました。 ・今回の経験を踏まえ、業界発展の一助となれるよう頑張っていきたい。 ニュースレター Page 2 of 4 「安全を保障するインテリジェントセンサーLSI の研究開発」プロジェクト紹介 平成 19 年度知的クラスター創成事業(第 II 期)の地域選定において、福岡県【福岡・北九州・飯塚地域】が提案した「福岡 先端システム LSI 開発拠点構想」が採択されました。マイクロ化総合技術センターでは、「安全を保障するインテリジェン トセンサーLSI の研究開発」をテーマに当該事業に参画しております。当研究プロジェクトは有馬教授が研究代表を務め、平 成 19 年 7 月から平成 24 年 3 月迄の 5 年間実施され、受託研究費は総額約 4.3 億円(初年度 1.17 億円)となります。当プロジ ェクトに参加するメンバーは、馬場准教授、新海講師、有吉助教に加え、新たに雇用する研究員3名と研究参画企業から派遣 のエンジニアなど総勢 10 名程度となります。本報では当プロジェクトの目的と概要を紹介します。 本研究プロジェクトは、交通事故の防止やホームセキュリティなど、生活の安全を保障するための監視装置や警報装置など を極めて低コストで実現する技術を開発することを目的としています。コストが 1/10~1/100 になった装置は劇的に普及す ることが見込まれ、社会全体の安全向上に大いに貢献できます。しかし、装置コストを桁違いに低減することは、SoC や SiP、微細化などの従来の力技的手法では極めて困難です。 そこで、我々は図1に示すようなインテリジェントセンサー LSI を開発することにより桁違いの低コスト化を実現すること にしました。開発するインテリジェントセンサーは、大量のセ ンシングデータをそのチップ内で高速に処理し必要な高次情報 のみを出力することを特徴としています。初期の特徴量抽出に 必要な 100~1000GOPS ( OPS : Operations Per Second ) の大量演算は大規模アナログ並列回路構成によって、オンチッ プ化および低消費電力化を可能にします。またその後のデジタ ル回路でのプログラム逐次処理により柔軟なアルゴリズム処理 を可能とし、高度な知識処理による情報圧縮を可能にします。 結果、インテリジェントセンサーの出力データは入力されるセ ンシングデータの約 1/1000 程度に圧縮されることになります。 本プロジェクトでは、このようなインテリジェントセンサー の概念に基づき、ステレオ視による距離(奥行)情報のリアルタ イム取得と、その時間変化による挙動検知センサーを開発しま す。そして、図2に示すようなハンドジェスチャー入力装置や 車載用危険警報装置、家庭用無人監視装置などの応用装置開発 を行います。また、MEMSセンサー技術を導入して、センシ ング性能自体の高性能化を図り、逆光時の視認性能確保や赤外 線高感度化にも取組みます。このプロジェクトを通してマイク ロ化総合技術センターは、インテリジェントセンサーLSI の研 究開発拠点となることを目指します。そして、当該地域への LSI 開発企業に加えてその応用製品開発企業の集積を図り、価 [ステレオ視光学装置] 値創造クラスターの形成に貢献してまいります。 右の写真は、知的クラスター創成事業(第 I 期)で試作した視 差センサーLSI とその関連装置です。これらがコア技術となり、 今回の研究開発に活かされることになりました。 [距離検知装置の実験風景] [視差センサーLSI] 写真 試作した 試作したプロトタイプ したプロトタイプ ニュースレター Page 3 of 4 新任教員の紹介 4月よりマイクロ化総合技術センターに赴任しました准教授の大西克典です。着任以前は民間企業で マイクロプロセッサーの CMOS プロセス技術の開発を行っていました。担当していましたのはプロセ スのインテグレーションという仕事で、プロセスエンジニアが開発した要素技術をもとに、トランジス タを作り上げ集積して行くというのが業務でした。半導体の要素技術がトランジスタという形に結晶し、 それが世の中で使われる製品に仕上がって行く過程に携わるのは非常に面白い経験で、技術を最終製品 の立場から俯瞰して仕事をして行くというやり方を学んだ気がします。大学での仕事は、まだまだ戸惑 大西克典 准教授 うことが多いものの、技術の根本を見つめ、新しいものをひねり出して行くところに面白みがあると感 じています。もっとも現段階はそこにたどり着くための苦しみの真最中といったところのようですが。 これからは、CMOS が一貫してプロセスできるというセンターの特長と、自分の CMOS 関連の研究・開発に携わってきた 経験を活かして研究活動を行っていきたいと思います。 http://www.cms.kyutech.ac.jp/make02/index.html 高速化・微細化・高信頼化に対応可能な LSI を確立するため、Si-LSI における構成要素材料の見地 から研究を行ってきました。当面の挑戦項目としては、Si-LSI における各種材料の諸特性解明が挙げ られますが、長期的には、Si-LSI で得た材料知識を、化合物半導体を用いた超高速デバイスにも活か してゆきたいと思っています。現在までの主な研究は、① Si と配線間における拡散バリアの研究、② 低コンタクト抵抗化のためのシリサイド形成過程の解明、③ 拡散バリア / 配線構造の連続ヘテロエピ タキシャル成長、④ 結晶構造制御による熱的安定性の向上と表面形態の制御、⑤ 陽極酸化膜キャパシ 新海聡子 講師 タの電気的特性と耐熱性の評価、⑥ AlGaN / GaN HEMT に関する研究などが挙げられます。①から④ における Si-LSI の配線構造に関連する研究においては、高速性への要求を満足させるため、現在では 銅配線に重点を置いて研究を行っております。配線構造で問題となるエレクトロマイグレーション(EM)耐性を向上させる ために行ってきた結晶配向制御の研究では、高融点金属の単配向成長、金属および金属窒化物の単結晶基板上へのヘテロエピ タキシャル成長を実現させ、その成果は、Si 基板上に GaN をエピタキシャル成長させるためのバッファ層や、冷陰極材料の 分野でも活用されています。今後は、材料変更に頼るだけでなく、構造制御技術を組み合わせて、デバイス性能の向上を図る ことを目標としています。 従来のエネルギー分散型 X線検出器と比較して二桁程度優れたエネルギー分解能を有する極低温動作 型 X線検出器の研究を行ってきました。研究してきた極低温動作型 X線検出器の材料として超伝導体及 び量子常誘電体を用いてきました。九州工業大学マイクロ化総合技術センターでは半導体センサーデバ イス、特に赤外線センサーの研究を行っており、赤外線センサーの高感度化、高ダイナミックレンジ化、 高コントラスト化を目指しています。加えて高性能インテリジェントセンサーLSI を開発するとともに、 これらを応用した高性能、低価格の車載用危険警報装置や家庭用侵入者監視装置の開発に取組んでいく 有吉哲也 助教 次第です。赤外線を用いることで夜間での視認にも有効となり、交通事故の減少に貢献できることが期 待されます。また、低コスト且つ自動監視システムを利用したホームセキュリティの実現も期待されま す。このような、身近な生活の安全を保障する赤外線センサーを提供するために研究を行っております。 ニュースレター Page 4 of 4 開催したイベント ● 筑前高校のマイクロ化総合技術センター見学会を行いました(2007 年 6 月 14 日)。 ● 当センター安全講習会を実施しました(2007 年 6 月 29 日) 。液体窒素汲み取りにつ いての講習の他、今年度から新しく始まるマイクロ化総合技術センターの利用方法に ついての説明を行いました。 ● 別府鶴見ヶ丘高校PTAの当センター見学会を行いました(2007 年 7 月 12 日)。 オープンキャンパスの様子 ● 嘉穂総合高校の当センター見学会を行いました(2007 年 7 月 17 日)。 本物のウェハを見るいい機会でした。 ● 九州工業大学オープンキャンパスが開催され、当センターも公開しました(2007 年 8 月 9 日、10 日)。高校生のみならず、一般の方まで幅広い参加がありました。参加 者は半導体デバイスの設計と製造、シリコンウェハ、クリーンルーム、当センター最 新の研究成果などの説明を受け、半導体全般に強い関心を持ちました。 ● 福岡魁誠高校の当センター見学会を行いました(2007 年 9 月 7 日)。 ● 製造中核人材育成セミナーを開催しました(2007 年 9 月 10 日~14 日)。 ● ダイオード試作実習を開催しました(2007 年 9 月 19 日)。 ● トランジスタ試作実習・集積回路演習を開催しました(2007 年 9 月 21 日、25 日~ 高校生はもちろん、保護者の方も ぜひご見学に来てください。 27 日)。 ※ 当センター見学会は随時受け付けております。 当センターの利用について 当センターは国内の大学でも有数の半導体 LSI の設計・デバイス製造の一貫設備を持 っており、これらを活用した半導体 LSI の試作および共同研究・委託研究の受け入れを 行っています。まずは当センターの URL 内から所定のお問い合わせ様式で発信するか、 クリーンルームのプロセス室 ダウンフロー型、クラス:~1000 Si などの薄膜を成膜・加工します。 [email protected] へ直接お送りください。窓口担当者が、ご相談・ご質問に対してお答えいたします。当セ ンターの保有設備などの詳しい説明は下記 URL に記載しています。また、本ニュースレ ターに関するご質問・ご意見・ご感想もお待ちしております。 企画・編集・発行:九州工業大学マイクロ化総合技術センター 〒820-8502 福岡県飯塚市川津 680-4 TEL:0948-29-7583 クリーンルームのフォト室 ダウンフロー型、クラス:100 フォトマスク作製、露光を行います。 ※クラス:1立方フィート中に存在する 0.1 ㎛の塵埃の数。 外気では、およそ 100 万。 FAX:0948-29-7586 e-mail:[email protected] URL:http://www.cms.kyutech.ac.jp 印刷:よしみ工産株式会社 〒812-0011 福岡市博多区博多駅前 1 丁目 23 番 28 号 TEL:092-481-9559 FAX:092-481-9966
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