平成 25 年度 日本大学理工学部 学術講演会論文集 F2-55 東北地方太平洋沖地震の津波被災地における児童の地域認識に関する研究 ―(その2)四倉小児童のおすすめまちあるきルートの特徴― A Study on Local Recognition of Elementary Children in the Great East Japan Earthquake and Tsunami Disaster Area (Part2) About characteristics of “Recommendation Route of Yotsukura” ○石渡勇貴1, 横内憲久2, 岡田智秀2, 押田佳子2, 大塚宏樹3, 阿部周斗1 *Yuki Ishiwata1, Norihisa Yokouchi2, Tomohide Okada2, Keiko Oshida2, Hiroki Ohtsuka3, Shuto Abe1 Abstract: This study aims to clarify the characteristics of “Recommendation Route in Yotsukura town, Iwaki city”, were proposed by elementary school students. We analyzed text data were corrected from workshop and the pamphlet was made by students. As a result, we clarified that the students wishe to relate with coastal area in their home town, Tsunami disaster area, Yotsukura. 1.はじめに―前稿では,四倉小学校第6学年の全児 km 以内のコースに至った。これらのことから,まち 童らで検討した四倉地区の地域資源(おすすめの場所) あるき体験(WS2)の後に山側居住の F~J 班が海側の を把握した.そこで,本稿では,児童らが「おすすめの コースを除いた理由として,無理のない歩行距離を勘 場所」をもとに提案した当地区の「おすすめまちあるき 案したためと考えられる.しかし,このグループ(F~J ルート」(地域認識ルート)の特徴を考察する. 班)のルートの「テーマ」について着目すると,まちある 2.研究方法―上述の考察を行うため,Table1 に示す き後(WS2後)に「海」の語句を含めた班が大部分 (F, ように,全2回のワークショップ(WS1,WS2)と, G,H,I 班)にみられた.このことから,山側居住グル その後に児童と担任教諭らで制作した「四倉おすすめ ープであっても「海」に対する関心の強さが伺える. まちあるきパンフレット(Figure1)」(以下,「パンフ」) 4.まとめ―前稿と本稿の結果を通じてみると,児童 を対象として,ルート構成の特徴を分析する. らが地元地域として他者に紹介したい誇れる場所とし 3.結果および考察―WS1,2および「パンフ」のそれ て,「海」との強い関係があげられるという実態が明ら ぞれで A~J の各班が提案したまちあるきルートとそ かになった.このことより,津波被災地に居住する児 のテーマおよび構成距離を Figure2 に示す.以降では, 童らではあるが,四倉の象徴として「海」を位置づけ, Figure2 をもとに、前稿で特徴が示された海側居住グル その海と今後も密接に繋がっていたいという願望を捉 ープ(A~E 班)と山側居住グループ(F~J 班)の別に各 えることができたと認識する. コースの構成について特色を述べていく. 5.謝辞 る.前稿より,この海側居住グループは,おすすめの 今回のワークショップ開催にあたり,いわき市立四倉小学校の渡邊 隆校長先生および第6学年担任の太田美和先生・今野智功先生をは じめ,四倉ふれあい市民会議(会長・佐藤雄二氏)の皆様,福島県いわ き建設事務所,いわき市四倉支所など,たくさんの方々にご協力い ただきました.ここに記して厚く御礼申し上げます。 場所として「海」に強く関係する場所を指摘していたこ Table1. Investigation outline 海側居住グループの A~E 班をみると、いずれも JR 常磐線よりも海側にルートを設定していることがわか ともふまえると,当地区を「海のまち」として印象づけ 調査対象 たいとする意識が伺える. 続いて山側居住グループである F~J 班に着目する と,WS1では JR 常磐線をまたいで山側から海側に至 調査期間 調査内容 る広範囲にわたってルートを設定したのに対し,WS 2以降では,山側の居住地周辺にコースが縮小される 傾向がみられた.このことについて,全班のコースの 設定距離に着目すると,WS1から WS2にかけて,平 均距離が 3.9km から 2.7km へと全体的に短縮される傾 向にあり,特に山側居住グループ(F~J 班)は,いずれ も1km 以上もの大幅な縮小化を行い,結果として3 Figure1. Example of pamphlets 1:日大理工・学部・交通 2:日大理工・教員・まち 3:日大理工・院・不動産 431 [表:筆者作成] WS1 WS2 パンフレット WS1 おける WS2 おける WS2 後に児童らのみでまと グループワークの グループワークの めた「おすすめまちあるき 記録・表現内容 記録・表現内容 パンフレット」 2013 年 9 月 1 日(日)~9 月 27 日(金) それぞれの調査対象より,おすすめまちあるきルート およびおすすめの場所を抽出する 平成 25 年度 日本大学理工学部 学術講演会論文集 班名 A:東二・三丁目班 班名 B:西一丁目班 班名 C:西二・三丁目班 班名 D:西四丁目班 北辰妙見尊 四倉小 北辰妙見尊 諏訪神社 大川魚店 松 四倉小 の 木 ウミガメの サンローラン 散乱場所 好川 大川魚店 道の駅 道の駅 距離 テーマ 距離 松の木 四倉小 大川魚店 図書館 やまかく やまかく もんま床屋 城跡 四ツ倉駅 海嶽寺 道の駅 距離 WS1 マリンロード 3.8 ㎞ WS1 雑談ぶらり旅 2.5 ㎞ WS1 ぐるっと四倉 3.2 ㎞ WS2 マリンロード 3.6 ㎞ WS2 雑談ぶらり旅 2.6 ㎞ WS2 ぐるっと四倉 2.6 ㎞ パンフ レット マリンロード 4.1 ㎞ パンフ レット 雑談ぶらり旅 2.1 ㎞ パンフ レット ぐるっと四倉 1.5 ㎞ E:五・六丁目班 日出ヶ岡公園 班名 F:梅ヶ丘班 土手 ちとせ 別雷皇大神 新町商店街 道の駅 大川魚店 七㐂食堂 ねぶた工房 WS2 明神神社 カニ洗い温泉 テーマ 距離 浦島太郎の海を 眺めて旧道を 5.0 ㎞ まわろう ぬくもりあふれる 3.2 ㎞ 四倉まちあるき WS2 梅ヶ丘南公園 梅ヶ丘公園 I:町田・北向班 海嶽寺 四ツ倉駅 四倉小 サンローラン 忠魂碑 忠魂碑 くさの根 ヤマト 道の駅 キッズランド 海と食べ物の まち四倉めぐり 6.1 ㎞ みんなで行こう, 2.4 ㎞ 四倉のまちへ 階段 距離 WS1 四倉の絶景 ポイント 3.9 ㎞ WS1 WS2 四倉の海と自然 を感じられる 場所 3.0 ㎞ WS2 四倉の自然を 感じられる 3.0 ㎞ WS1 3.9 ㎞ 52 分 四倉小 四倉小 WS2 パンフ レット テーマ 距離 目立たないけど, いいところ海が 5.1 ㎞ たくさん 目立たないけど, いいところ海が 2.7 ㎞ たくさん パンフ 自然がいっぱい, 3.1 ㎞ レット 四倉大好き WS2 パンフレット 2.7 ㎞ 2.7 ㎞ 36 分 36 分 ※一般歩行時間 1.25m/s として算出 ■ルート 和具団地 高台 海嶽寺 WS1 道の駅 【凡例】 境川 諏訪神社 海岸 テーマ ①全ルート概要 平均距離(㎞) 平均歩行時間(分) J:和具団地班 四倉小 八幡神社 道の駅 梅ヶ丘公園 北辰妙見尊 諏訪神社 大川魚店 距離 班名 高台 高架下 パンフ ぬくもりあふれる パンフ 海と食べ物の町, パンフ 3.3 ㎞ 2.3 ㎞ レット 四倉まちあるき レット 四倉めぐり レット 班名 H:鬼越班 海嶽寺 テーマ WS1 班名 はるみ食堂 四倉小 WS1 G:梅ヶ丘南班 海嶽寺 諏訪神社 亀 班名 エ四 ッ 倉 はるみ食堂 フの ェ 梅ヶ丘公園 ル 塔 諏訪神社 四倉小 日 出 公ヶ 園岡 やまかく 道の駅 テーマ 距離 四倉絶景 WS1 3.0 ㎞ 浜街道めぐり 四倉の海の WS2 2.2 ㎞ 恵み・歴史・安全 パンフ 四倉絶景 2.6 ㎞ レット 浜街道めぐり テーマ 班名 テーマ 魚 て つ サンローラン 諏訪神社 大川魚店 くさの根 裏山 ■出発地点 忠魂碑 ■到着地点 日出ヶ岡公園 階段 Figure2. “Recommendation Rote in Yotsukura town” proposed by each group 432 :WS2 :パンフレット :WS1 :WS2 :パンフレット :WS1 :WS2 :パンフレット ■おすすめの場所 :WS1 のみに存在するルート :WS1,WS2 に共通して存在するもの 道の駅 テーマ 距離 テーマ 距離 海の見える山 食べて見て海を 3.1 ㎞ WS1 3.1 ㎞ 緑の見える川 感じられる 山も取り入れる 2.2 ㎞ WS2 四倉大好き 2.2 ㎞ 防災観光マップ 海・山を取り パンフ 2.6 ㎞ 四倉大好きマップ ― 入れた観光 MAP レット :WS1 :WS1,パンフレットに共通して存在するもの :WS2,パンフレットに共通して存在するもの :WS1,WS2,パンフレットに共通して存在するもの ■その他 :各班の居住地区 :JR 常磐線 [図:筆者作成]
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