特集 共助の力で災害に備える - 宝塚市

今後、30 年以内に高い確率で発生するとされる「東南海・
南海地震」。近年、耐震改修への関心が高まり、耐震構造
を強化した建築物が増えるなど、地震から身を守るための取り
組みが各地で進んでいます。しかし、災害は地震だけではあ
りません。事実、兵庫県内には「土砂災害警戒区域」が2 万
箇所以上あり、これは全国 4 位の多さです(※)。 宝 市は、
山地が多く存在する地形であることから土砂災害にも注意が
必要であり、大雨により市内に流れる河川が氾濫した場合に
は、水害の発生も予想されます。災害への幅広い備えが、今、
私たちには必要です。
昭和
42
豪雨に 年
よる土
砂災
害
年
昭和 58 が襲来
号
0
1
台風
(※)国土交通省ホームページより
(7月31日現在)
平成
阪神 7 年
・淡
路
大震
災
平成 9 年 よる土砂災害
に
梅雨前線
共助の力で災害に備える
「まさか」の事態が起きたとき、
あなたを支えてくれるものは、何ですか?
迫りくる災害を前に、私たちには何ができるのか。また、何
をすべきなのか…。
18 年前、まちを襲った阪神・淡路大震災では、地域の助
け合いにより、多くの命が救われました。
「まさか」の事態が
起きた時、支えてくれるのは「人」。一人ひとりの日ごろから
の備えはもちろん、互いに連携し、助け合うことこそが、いざ
という時の力になります。
今回の特集では、市きずなづくり推進事業補助金の交付を
受け、
「共助」の取り組みを地域で進める3 団体の活動を、皆
さんにご紹介します。
平成
1
台風 6 年
23 号
が襲
来
No.1168 平成25(2013)年9月号
2
災害時、一人も見逃さない地域づくり
∼第5地区自治会連合会∼
【地域のデータ】
第5地区自治会連合会
日本の三大植木生産地として知
られる長尾地区一帯のエリア。千
年の歴史を誇る植木産業が今な
お盛んで、数年前からは土地開
発が進み、人口が急増した。地区
内には長尾小学校をはじめとす
る5つの指定避難所がある。
避難所開設訓練の様子
避難所は、
生活の場となり得る
災 害 発 生時、人が集まる避 難
所。その運営方法を事前に決めて
おけば、いざという時の混乱を防
ぐことができます。私たち第 地
区 自 治 会 連 合 会では、長 尾地区
まちづくり 協 議 会 防 災・防 犯 部
会、第 地区民生・児童委員協
議会と協働で、
﹁避難所運営マニュ
アル﹂ を作 成しました。 併せて、
避難が長引けば、
﹁一時避難所﹂
が﹁生活の場﹂に変わることを考
え、避難後の﹁行動マニュアル﹂に
発展させて作成しています。昨年
度は、地区内に つある指定避難
所のうち、長尾小学校のみに特化
した行動マニュアルを作成しました
が、災 害 時に指 定 避 難 所となる
学校には、それぞれ建物の構造に
違いがあります。今後は、地区内
の残り 校に特化した行動マニュア
ルの作成を急ぐとともに、スーパー
マーケットや医療機関、薬局など
を記載した﹁地域資源マップ﹂の
作成も進めていきます。
5
災害時、
一人も見逃さないために
5
普 段から各 地 区の行 事に積 極
的に参加するなど、人とのつきあ
いを深めることも防災・減災につ
ながります。 私たちの地 域では、
5
私が考える
防災のススメ vol.1
心にゆとりのある「見守り」
災害時にどうしても一人では避難が
難しい要援護者のリストを作成し、
第 地区自治会連合会、第 地区
民生・児童委員協議会、社会福祉
協議会の三者でこのリストを共有し
ています。作成の際には一軒一軒対
象となるお宅を民生・児童委員が訪
ね、いざという時に備えて近所の方
にも協力を求めました。
災害時、市全体が被災している状
況では、なかなか助けが回ってこない。
ただ援護を待つだけでは、救える命
も救えなくなるかもしれません。そ
うならないためにも、日ごろから顔
の見える関係を築き、共に手を取り
あって助け合うことこそが、災害時、
一人も見逃さない地域づくりにつな
がるのではないかと思います。
No.1168 平成25(2013)年9月号 ☎/市外局番の記載のないものは
(0797)
です
3
人間あまりにも一生懸命になると、心に余
裕がなくなります。困っているとき、苦しみや
悲しみを抱えているとき、自分ひとりで受け止
めて解決しようとすると、すごく負担がかかり
ます。特に災害時には、被災した人もボラン
ティアも、
みんな必死になっている。そんな中、
困り果て、相談相手を求めている人がいるこ
とに気付かない。それが一番怖いことです。
「お互いに頑張っていこう」。一言、そばにい
る人が声掛けをしてくれたらそれでいいんで
す。心に余裕があるからこそ相手に優しい言 尾仲 博道さん
葉が掛けられる。災害時には、いろいろな課 第5地区自治会連合会・長尾地区
題が出てきます。人の悩みを受け止め、とも まちづくり協議会・平井自治会 会長
に話し合い解決していこうというゆとりのある
気持ちを、いつまでも忘れずにいたいですね。
5
5
4
地域の防災力アップをめざして
∼中山台コミュニティエリア 災害対策委員会∼
【地域のデータ】
中山台コミュニティ
思いやりをもった
助け合いの精神
地域の﹁自助・公助・共助﹂
の考え方に変化が訪れる
リジナルの避難所マップ
いところは地域でできることを頑張り、
﹁今は行政の力が無くても大丈夫﹂と
言える体制を整えておく。
そうすれば、
行政はもっと被害がひどいところに支
援に向かうことができます。この地域
はそうした体制を目指そうと、私の
考えを皆さんに伝えました。すると、
﹁自分たちのまちは自分たちで守ろう﹂
﹁公助が少しで済む安全なまちにしよ
う﹂
という声も上がり、
地域は一つになっ
ていきました。この気付きはすごく大
きかったと今でも思っています。
地域活動において、何かを求
め過ぎたら相手に負担がかかりま
す。そこで、まず自分にできるこ
とが何かを考え、それぞれが自
分にできることを一生懸命に頑
張る。どんなに小さな力でも、つ
ながれば大きな力になります。相
手に思いやりを持って一歩譲って
接すれば、大きな摩擦も起きず、 細川 知子さん
みんなが手をつなげるようになり 平成23年に中山台コミュニティエリア災害対策委
ます。そうしてできた結び付きが、 員会 初代委員長に就任、現在3期目。中山桜台七丁
災害に強いまちをつくるのではな 目自治会 会長、現在7期目。活動は多岐にわたる。
いかと私は思います。
※写真の地図は、
エリア内の全世帯に配布した委員会オ
ありました。避難所に集まってきた人
だけが被災者ではない。大規模な災
害が発生すれば、地域全体が被災す
るのだから、住民皆で助け合おうと、
委員会の立ち上げの際にも約束してい
ます。
私が考える
防災のススメ vol.2
災害が起きたとき、一人でも多くの
命を助けようと思ったら、被害の少な
4
No.1168 平成25(2013)年9月号
活動の始まり
中山台コミュニティエリア災害対
策委員会は、今年で立ち上げから
年目を迎えます。立ち上げ当初
は、
﹁阪神・淡路大震災でも被害
がほどんど無かったのだから、この
エリアは大丈夫﹂﹁何かあったら消
防が来てくれるし警察もいる﹂と
いった声がほとんどでした。しかし、
災害時の備えは、どんなに被害が
少ないところでも必要です。そこで、
委員会では、まずエリア住民の防
災意識の現状を知ることから取り
掛かりました。その手立てとして、
エリア内の約 千 世 帯に向けて、
防災意識全戸調査アンケートを実
施。そこで得た結果をもとに、委
員会事業を立案していきました。
5
等しく大切な命
3
全戸配布したアンケートからは、
﹁災害が起きても、避難できない家
族がいるので自宅に残る﹂という
人が、地域には比較的多いことも
分かりました。そこで、活動 年
目には、各避難所で捜索隊を編成
し、在宅避難者把握のために訪問
して簡単な安否確認を行う、とい
うオリジナルの訓練を行いました。
東 日 本 大 震 災 が 発 生 した 際、
幸い自宅は無事。しかし、ライフ
ラインが止まる中、在宅避難者は
物資の入手方法が分からず途方に
暮れた、という嘆きを聞く機会が
2
バケツリレーの様子
炊き出し訓練の様子
長尾連山に抱かれた自然豊かな
エリア。中山桜台小学校・中山五
月台小学校の2つの校区からな
る。阪神・淡路大震災発生時、被
害は比較的少なかった。ボランテ
ィア活動は盛んだが、高齢化によ
る課題を抱える。
いざという時に備えて
9月9日の「救急の日」、8日∼14日の
「救急医療週間」にちなみ、救急啓発事
業を実施します。いざという時にとっさの
行動が取れるよう、正しい知識と技術を
身に付けましょう。
みんなでつくる暮らしの安全網
∼つながりづくりネットワーク宝塚∼
日 時 9月7日㈯ 10時∼正午
場 所 JR宝塚駅改札前コンコース
救急隊と JR の応急手当普及員による
心肺蘇生法や AED の取り扱い実技指
導のほか、救急に関するクイズ、踏切
非常ボタン体験などを実施します。
西消防署栄町出張所(☎ 86・6151)
■救急フェスタ2013
日 時 9月15日㈰
場 所 東公民館
東消防署(☎ 88・0119)
東日本大震災被災地映画を上映
シネ・ピピアで、宮城県南三陸町の避
難所で開局した災害ラジオ局を舞台にした
ドキュメンタリー映画「ガレキとラジオ」を上
映します。震災を風化させることなく、映画
を通じて東北復興への思いを再認識する
機会として、ぜひ映画館にお越しください。
詳しくは、シネ・ピピア(☎ 87・3565)へ。
上映期間 9月7日㈯∼13日㈮
5
2
9.1
?!
ワークショップを 開 催 し
ました。
お年寄り、障害のある
人、 幼い子どもを持つお
母さん⋮。 地域では、年
齢や立場の異なる人同士
が、いろいろな価 値 観を
持って生活しています。そ
れを 忘れてはいけないと
思うし、普段から相手の
立 場に立って物 事を考 え
る機会があれば、﹁いざと
いう時、 相 手はどうして
ほしいのか﹂ という気 付
きも生まれるはずです。
いろいろな立場の人に、
ゲームを楽しみながら防
災について考えていただく
ことで、つながりの輪 が
広 がり、﹁みんなの防 災
力アップ﹂につながること
を期待しています。
▶10時∼10時45分
市立病院看護師による「あなたにも
出来る子どもの手当て」と題した講話
▶9時半∼17時
市内3園の幼稚園児が描いた絵を展
示する救急絵画展
そのほか、子どもも一緒に体験でき
る胸骨圧迫のみの心肺蘇生法などを実
施します。さらに、東消防署では、消
防隊員に変装し、救急車・消防車と記
念撮影ができるコーナーを設置します
(いずれも9時半∼正午)。
私 たちのグルー プでは、 昨 年
月と今年 月に、﹁南海トラフ
が動いたら⋮M がやってくる
みんなの防災力アップをめざして
∼まちと 暮らしの安 全 網 を 築こ
う∼﹂という題名のクロスロード・
消防・救急に関するクイズを実施しま
す。また、あいあいパークのマスコットキ
ャラクター「あいちゃん」も登場します。
12
合言葉は
﹁みんなで﹂
■救急キャンペーン
日 時 9月8日㈰ 10時∼11時半
場 所 マーケットスクエア中山寺
(JR中山寺駅南側)
あなたは大阪で働く会社員 状況にどのように対応するか、決
です。現在、大地震が発生し、交 断の分かれ道
︵クロスロード︶
で、ど
通はストップ。家族とは連絡が取 ちらの道を選ぶのかをゲーム感覚
れず、
安否が気になります。
しかし、 で訓練するものです。冒頭の問題
職場でやるべきことが⋮。職場を はその一例で、参加者は、ゲーム
優先するか、家族のもとに駆け付 を通して災 害の疑 似 体 験を共 有
けるか、あなたなら
し、災害時にもっとも大切な地域
どうしますか?
のつながりやネットワークを築いて
いきます。
クロスロードゲーム
クロスロードゲームとの出会いは
東日本大震災の直前。﹁神戸クロ
との出会い
スロード研究会﹂ 主催の研修会に
参加したことがきっかけでした。
防災啓発ゲーム﹁クロスロード﹂
とは、災害時に次々と押し寄せる
■JR宝塚駅救急フェア
私が考える防災のススメ vol.3
地域を超えた つながりづくり
災害時、不測の事態に対応するためには、日
ごろの円滑な人間関係が何より大切です。阪神・
淡路大震災、東日本大震災直後、被災した地
域の機能がストップしたとき、他の地域の人たち
からの支援がありました。防災は、地域に根差し
た活動ではありますが、
「防災」をキーワードに、
人と人とのつながりが地域を超えて広がっていく
ことこそが、私たちの活動の願いでもあります。
こうしたつながりづくりの活動が、互いに理解し合
い、思いやりを持って暮らしていける社会の実現
に、
ほんの少しでも、役に立てればと思っています。
No.1168 平成25(2013)年9月号 ☎/市外局番の記載のないものは
(0797)
です
森本 樹さん
つながりづくりネットワーク宝塚 代表
77
より速く、エフエム宝塚から緊急情報を伝達
J アラートは、国から皆さんへ、緊急地震速報を
はじめとする緊急情報を、人工衛星を用いて瞬時に
伝達するためのシステムです。
市では今年度、J アラートと連携した自動起動装
置を整備し、より速く、エフエム宝塚で割り込み放
送を行うことが可能になりました。
なお、9 月 11日㈬の 11 時および 11 時半の 2 回、
全国一斉の試験放送を実施します。
「安心メール」にご登録ください
各市町村を単位として発表される大雨・洪水など
の気象警報や災害情報を受信できま
す。登録は、右のバーコードを読み取
るか、[email protected] へ 空
メールを送信してください。
専門家 に聞 く
﹁防災﹂のススメ
所 在 地 神戸市中央区脇浜海岸通
1-5-2(HAT 神戸内)
開館時間 9 時半∼17 時半
(入館は16 時半まで)
休 館 日 毎週月曜(月曜が祝日の
場合、その翌日)
入 館 料 大人 600 円、大学生 450
円、高校生 300 円、中学
生以下無料
29
りまわって﹁ 災 害に強い宝 塚 ﹂をつ
くることにつながるはずです。 さ
らに、 訓 練での気 付きをより深い
ものにするために、 市の助 成 制 度
︵ ※ ︶を 利 用 して、 地 域 独 自の地
理的、社会的な情報を落としこん
だ﹁ 地 域 版 防 災マップ ﹂を 作 成 す
るのも 良いでしょう。 防 災に関 す
る取り組みから、 広い意 味での安
全・安 心なまちの姿を考 えていき
ましょう。
︵ ※ ︶市 は、 8 月 か ら﹁ 地 域 版 防 災マップ
作成補助金制度﹂を設けています︵応募は
月 日 ㈮ まで ︶。 募 集 要 項 な ど 詳 し く
は、 総 合 防 災 課︵ ☎ ・2078︶、 また
は市ホームページへ。
阪神・淡路大震災記念
人と防災未来センター
神戸市にある﹁阪神・淡路大震
災記念 人と防災未来センター﹂。
今回、同センター研究部で、防災
情 報 を 専 門に研 究 を 続ける 宇田
川真之主幹にお話を伺いました。
災害に強いまちづくりとは
子 育て 中の 人、 介 護 を 受 けて
いる人、 障がいのある人 ⋮。 みん
な 含めて﹁ 誰 もが暮らしやすいま
ち ﹂、 それこそが災 害に強いまち
の姿ではないでしょうか。
仮に、地域で車椅子を使用した
防災訓練を実施したとします。 す
ると、訓練中の体験を通して、今ま
で気付かなかったことが見えてくる。
﹁この道は段 差が多 くて大 変だな
⋮﹂こんな意見が出てきたら、災害
時の避難に限らず、普段から不便と
感じる人がいるということです。
大切なのは、 防災訓練での気付
きを地 域の福 祉や暮らしやすさに
つなげていくこと。 誰 もが暮らし
やすいと思 えるまちづくりは、 回
11
宇田川 真之さん
人と防災未来センター 研究主幹
8月30日から「特別警報」
の発表を開始
気象庁は8
月30日から、
「 警 報 」の
発 表 基 準を
はるかに超え
る現象に対し
て特 別な警
戒を呼 び 掛
けるため、新
たに「特別警報」を発表します。
特別警報が出た場合、お住まいの地域は数十年に一
度しかないような非常に危険な状況にあります。屋外の
状況や、避難指示・勧告等に留意し、ただちに命を守
るための行動をとってください。
詳しくは、気象庁ホームページへ。
気象庁神戸海洋気象台業務課
(☎078・222・8907)
総合防災課(☎77・2078)
災害から身を守る「自助・共助」の備えを
今年は 7 月から8 月にかけて、中国地方や東北地方
を中心として局地的に大雨が降り続き、甚大な被害を
もたらしました。また、近年全国各地で大きな地震が
頻発しています。4 月に淡路島を震源とする地震が起
きたように、我が国ではいつどこで地震が起きてもおか
しくない状況にあります。
地震や風水害など、災害から大切な人命や財産を
守るためには、現在、各地域で取り組まれている防災
訓練や防災マップの作成など、自助・共助の備えが最
も効果的です。これからも、地域の防災力向上の推進
について、ご協力をよろしくお願いいたします。
さらに、市では、地域の防災活動について、防災マッ
プ作成補助や防災アドバイザー派遣事業などの支援を
行っています。 詳しくは総合防災課(☎ 77・ 2078)ま
でお問い合わせください。
危機管理室長 小川 清次
No.1168 平成25(2013)年9月号
6