<身近な物理現象> もの づく りを 取り 入れ た光 と音 の教 材 新しい学習指導要領では,光や音の学習において身近な事物・現象に対する不思議さや面白さに 直接触れさせ,光と音の性質を日常の現象と関連付けて理解させることが強調されている。ここで は,万華鏡,簡易カメラ,空き缶笛などのものづくりを取り入れながら,生徒の興味・関心を高め, 意欲的に科学を探究する姿勢を培う教材を紹介した。 [キーワード]中学校理科 光 音 万華鏡 簡易カメラ はじめに 空き缶笛 (2) ビー玉は気泡の入ってない透明度の高い 今回の学習指導要領の改訂で,小学校では音 ものを使うとよい。 に関する学習が行われず ,「身近な物理現象」 色画用紙 が中学校理科の第1分野の最初に学習する内容 となった。ここでは,特にものづくりを中心に, 透明なビー玉 より身近で親しみやすく,視覚や聴覚に直接訴 えることができるような教材について述べる。 1 光の反射・屈折 目 的 −万華鏡づくり− セロハンテープでとめる 図1 光の反射・屈折による不思議で美しい現象に ビー玉万華鏡 触れるなかで,光の反射・屈折と像のでき方に ついて調べる。 B 試験管万華鏡 A ビー玉万華鏡 準 備 準 備 塩ビミラー(10∼12cm×20mm×0.5mm:2枚 , 塩 ビ ミ ラ ー ( 10∼ 12cm× 15mm× 0.5mm, 3 10∼12cm×10mm×0.5mm:1枚 ),試験管(直 枚 ), 色画 用紙, 透明 なビ ー玉 (直径 14∼18 径12∼18mm ),セロハンテープ,コルク栓,P mm),セロハンテープ VA液体洗濯のり,ビーズ,ゼムクリップ 方 方 法 (1) 塩ビミラー3枚をセロハンテープでとめ て,細長い三角柱を作る。 (1) 塩ビミラー3枚をセロハンテープでとめ て,細長い三角柱を作る。 (2) 三角柱の先に透明なビー玉をセロハンテ ープで取り付ける。 (2) PVA液体洗濯のり3に対して,水1の 割合で混ぜた液を作り,試験管にほぼ満杯 (3) 色画用紙で三角柱がすっぽり入る大きさ の筒を作り,中に三角柱を入れる(図1 )。 (4) 筒をのぞいたときに,周りのものが規則 参 法 に入れる。さらにビーズを入れ,コルク栓 でふたをする。 (3) ゼムクリップ2個を広げて,その中に試 的な模様をつくる様子を観察する。 験管を通す。さらに試験管のついたゼムク 考 リップを三角柱の先にセロハンテープで貼 (1) 塩ビミラーを貼り合わせるときに,3枚 の間を少しあけると三角柱を作りやすい。 - 2 - る。 (4) 試験管を逆さにして,試験管の中のビー 理科教 育指導資料 第33集( 2001) ものづくりを取り入れた光と音の教材 ズが落ちる様子をのぞいてみる。 外筒 中筒 ポリエ チレンシ ート 虫めがね 図4 考 簡易カメラ 察 (1) 像の位置,像の大きさについて,どのよ うな関係があるか考える。 図2 考 試験管万華鏡 (2) 物体が焦点よりも内側にあるときは,ス 察 クリーンに像が映らない。中筒を外すとレ (1) 鏡の角度によって像の見え方がどのよう ンズの方に虚像が見えるので,実像や虚像 に変化するか考える。 について実感することができる。 (2) ビー玉に映る像がどのような像なのか考 参 える。 考 (1) 中筒には,外筒より細いラップの芯を使 ってもよい。 (2) レンズと像との距離を求めるときには, 中筒に目盛りをつけるとよい。 (3) 虫めがねの代わりにフレネルレンズ(シ ート状のレンズ)を使ってもよい。 (4) 牛乳パックとボトル型のアルミ缶で簡易 カメラを作る方法もある(図5 )。 図3 試験管万華鏡による模様 外筒として牛乳パックを用い,中筒とし てボトル型のアルミ缶の底を切り抜いたも 2 凸レンズの働き 目 的 −簡易カメラづくり− のを用いると,スクリーンが広く,見やす い。 自作した簡易カメラを使って,像の位置,像 レンズと像との距離を求めるときには, の大きさの関係を調べる。 缶の側面に定規を貼り付けておくとよい。 準 ただし,筒の長さが短いので,実物が近い 備 虫めがね,ラップの芯,画用紙,半透明のポ リエチレンシート(マチ付ポリ袋 ),ろうそく 方 ときには,中筒を抜きながらのぞく必要が ある。 法 (1) ラップの芯の先端に虫めがねを取り付け る。 (2) 画用紙を丸めた中筒の先にポリエチレン シートをかぶせて貼り,スクリーンとする。 (3) 中筒のシートを貼った方を外筒に入れ, 外の景色やろうそくの炎などをのぞきなが ら,スクリーンに像が映るように調節する。 北海道立理科教育センター - 3 - 図5 牛乳パックとボトル缶のカメラ <身近な物理現象> 3 音の伝わり方 目 的 音が空気中や固体中を伝わることを実感する。 A 空気中の音の伝わり方 準 備 −簡単メガホン− 厚紙,セロハンテープ 方 法 (1) 厚紙をメガホン状に巻き,セロハンテー プで固定する。 図7 (2) 送信側と受信側に分かれて,交互に会話 考 する。 糸を伝わる音 察 (1) 糸やエナメル線を伝わる音と空気中を伝 わる音の違いを「壁や鉄棒に耳を付けると 音 が よ く 聞 こ え る 」,「 鉄 棒 に 耳 を 付 け る と不思議な音が聞こえる」といった既有の 体験と結びつけると,理解が深まる。 (2) この単元では,空気中の音の伝わり方を 図6 考 簡単メガホン 学習することを基本とするが,固体を発展 察 的に扱い,音を伝える多様な物質の存在に (1) 送信側と受信側のメガホンをどのような 向きにしたときに,声がよく聞こえるか考 気付かせていくとよい。 参 える。 考 自分の声を録音して聞くと,自分の声ではな (2) ウサギなどの耳がメガホンの仕組みと類 似していることに気付かせるなど,生徒の いように感じる。これは,声の一部が頭の中の 骨を通って耳に到達しているからである。 イメージを広げると,既有の知識との関連 この骨の振動を利用すると顎や額でも音を聞 を図ることができる。 くことができる。聞こえにくい場合は,歯に付 B 固体中の音の伝わり方 けたり,かんだりするとよいが,聞こえる音は 準 備 かすかなので静かにする必要がある。 はさみ(またはピンセット,ガラス棒 ),糸 , エナメル線 4 音の大小と高低 方 目 的 法 (1) はさみの持ち手それぞれに糸を結びつけ る。 −コンピュータの活用− 音の大きさと振幅の関係や音の高さと振動数 の関係を,波形を観察することによって,視覚 (2) 糸の端をまるめて両耳にあて,はさみを 的にとらえる。 準 机の角などにぶつける。 (3) 糸を耳にあてたときの音と外したときの 音とを比較する。 備 コンピュータ,音オシロ(音の波形表示ソフ ト ),マイク,音さや笛などの楽器 (4) 糸の代わりにエナメル線を使って,音を 方 聞いてみる。 法 (1) コンピュータを起動し,音オシロを立ち 上げ,マイクから音を取り込む。 - 4 - 理科教 育指導資料 第33集( 2001) ものづくりを取り入れた光と音の教材 (2) 音さや笛などを使って,音の大小や高低 先端をつぶしたものを缶の飲み口に取り付 による波形の違いを観察する。 けて笛を作る。 結果と考察 例えば,自作した空き缶笛で,ドの音 (1) 大きい音と小さい音の振幅の違いを目で (5つの穴を全部指で押さえた音)とソの 確かめることができる(図8 )。 音(穴を全部開いた音)の波形を比べると, 振動数の違いがわかる。 図8 音の大小 (2) 高い音と低い音の振動数の違いを目で確 かめることができる(図9 )。音の高低は 図10 耳で容易にとらえられるが,振動数の違い 穴の大きさと位置 と結び付けるには難しい。コンピュータを 使うと視覚的にわかりやすい。 図11 空き缶笛 参考文献 図9 参 音の高低 考 (1) 音オシロ 音オシロは当センターのホームページか らダウンロードすることができる。 (2) 空き缶笛づくり 既製の楽器の代わりに,空き缶を使って 笛を自作し,実験に活用すると,より一層 生徒の興味・関心が高まり,音の大小,高 低と振幅,振動数との関係が理解できる。 文部省 中学校学習指導要領(平成10年12月)解説 理科編 1999 江田稔・三輪洋次 新中学校教育課程講座 理科 ぎょうせ い 1999 「楽しい授業」編集委員会 ものづくりハンドブック5 pp. 127-131 仮説社 1999 中村啓次郎 理科をどう教えるか5 音と光 pp.111-113 新 生出版 1982 日比生究 日常生活と関連付けた「音」の学習 北海道立理 科教育センター研究紀要 第12号 pp.32-35 2000 後藤富治 中学授業のネタ 理科第1分野 物理 pp.30-31 日本書籍 1996 大久保政俊 音の学習について−コンピュータを用いた音の 分析− 北海道立理科教育センター研究紀要 第11号 pp.49-52 1999 NHKやってみようなんでも実験 vol.1 pp.34-35 日本放 送出版協会 1996 350cm3のアルミ缶に,くぎや千枚通しな どで,図10のように穴をあけ,ストローの 北海道立理科教育センター - 5 -
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