抄録誌組版サンプル - 株式会社セカンド

このページを印刷する
抄録誌組版サンプル
Presented by
[ 学会印刷サポート ]
この PDF は
「学術集会抄録誌」の組版サンプルとして、
(株)セカンドの責任で公開しております。
1
株式会社セカンドはパソコンで誰でも組版ができる環境になったことで消
滅しつつある[正しく美しい日本語組版の再興]を目指して活動している
組版とデザインの専門企業で、創業22年を迎えます。
2
セカンドが提唱する [ 学術集会:印刷サポート ] 事業で、実際に制作し
た日本各地の抄録誌紙面を、学術組版をおこなう場合の参考見本として
公開しています。どなたでも閲覧してご利用できます。
3
この PDF ファイルは保存・訂正・印刷は一切できません。抄録本文の
印刷物またはファイルが必要な方は、奥付に掲載してあります各年会事
務局へご連絡の上ご相談ください。
4
尚、大多数の抄録のテキストデータは電子図書館で閲覧できます。
UMIN(国立大学附属病院医療情報ネットワーク )
JAPIC( 日本医薬情報センター)
正しく美しい学術誌を、
日本で最も短い納期で、しかも安く、
なにより親切に発刊します。
学術集会の抄録印刷専門
http://www.secand.com

会 告
( 社 )日本麻酔科学会 東海・北陸支部
第 7 回学術集会
テーマ
個人の能力とチーム力
学 術 集 会
会 期:2009 年 9 月 5 日
学術集会 10:00 ∼ 16:30
(東海・北陸支部代議員会 12:10 ∼ 13:00 )
会 場:名古屋国際会議場
〒456 0036 愛知県名古屋市熱田区熱田西町 1 1
TEL:052 683 7711
市 民 公 開 講 座
会 期:2009 年 9 月 6 日
14:00 ∼ 16:00
会 場:プレスタワー 17 階 静岡新聞ホール
〒430 0927 静岡県浜松市中区旭町 11 1 プレスタワー 17 階
TEL:053 452 8800
AHA-ACLS 講習会
会 期:2009 年 11 月 14 日
・15 日
会 場:浜松医科大学看護学科棟
会 長:小久保荘太郎
(総合病院 聖隷浜松病院 副院長 )
事務局:総合病院
聖隷浜松病院
〒 430 8558 静岡県浜松市中区住吉 2 12 12
TEL: 053 474 2232 FAX:053 471 6050
( 社 )日本麻酔科学会 東海・北陸支部
第 7 回学術集会
市 民 公 開 講 座
我慢しないで。がんの痛み!
∼早い時期から緩和ケアが 受けられることをご存知ですか?
有賀 悦子 日本緩和医療学会
理事
帝京大学医学部内科学講座 緩和医療科 准教授
日 時
平成 21 年 9 月 6 日
(日) 14:00 ∼ 16:00
(入場開始 13:40 )
会 場
プレスタワー17階 静岡新聞ホール
〒 430 0927 静岡県浜松市中区旭町 11 1 プレスタワー 17 階
TEL:053 452 8800
お問い合せ先
総合病院 聖隷浜松病院 総務課
〒 430 8558 静岡県浜松市中区住吉 2 12 12
TEL:053 474 2232 FAX:053 471 6050
主 催
㈳ 日本麻酔科学会東海・北陸支部第 7 回学術集会会長 小久保荘太郎
後 援
総合病院聖隷浜松病院、SBS 静岡新聞
ご 挨 拶
臨床麻酔学会が発足した 1980 年代あたりから麻酔科学研究を主たる生活とした学究の
方々とは別に生涯臨床麻酔科に生きようとする医師が増えてきました。ペインクリニック、
集中治療と wing を拡げながら、手術室の中でも細分化、高度化が進む臨床各科手術に対
しそれぞれに対応する麻酔技能が進んできましたが、それらの多くはモニター機器や麻酔
器具、麻酔薬の新たな出現をもとにした進歩でした。最近では、超音波診断装置の積極的
使用が臨床麻酔の新たな精度向上を支えてくれています。このように個人の技量と知識を
磨き続けることには停滞のない臨床麻酔の現場が続いています。
医療の質の向上は確実に進みながらも、医療へのアクセスの悪化は昨今報道でも政治で
も大きく取り上げられる問題になってきています。臨床麻酔の現場は 30 年間まさにこの
状況が典型的に続いており、解決策の一つとして昨今「周術期医療チーム」という言葉
であらわされる手術室内スタッフのチームワークの向上がキーワードとなっている。ただ、
この周術期のチームの中に麻酔科医は「ひとり」という存在で、
リーダーになったりサポー
ターになったりスタッフになったり様々な役割を刻々変えてフレキシブルにこなす日常で
すが、集団としての麻酔科医の相互協力体制を考えることが、医療の質を維持しつつアク
セスを向上させる手法の一つとして重要と考えます。
今回、特別講演に埼玉医大の照井克生先生に「日本産科麻酔学会」設立と日本の産科
麻酔学の発展についてお話をお願いしました。産科医療の問題が広く人口に膾炙するよう
になって数年経ちますが、24 時間 365 日良質な麻酔管理をこの分野に提供する為には麻酔
科のチーム力が強く求められる問題となります。
今回の学会のテーマにしました“ 個人の能力とチーム力 ”が典型的に現れる分野です。
是非会員皆さんで考えてみる一日にしたいと思っております。
内容の濃い一般演題 74 題を申し込み頂きありがとうございます。これらの発表と討議
そして共催セミナーでの女子医大清野雄介先生の循環管理の講演、ランチョンでの昨年に
続きレミフェンタニルの現状について森本康裕先生の講演を通して充実した一日となるこ
とを願っております。
社団法人 日本麻酔科学会 東海・北陸支部第 7 回学術集会会長 小久保荘太郎
( 総合病院 聖隷浜松病院 副院長 )
3
社団法人日本麻酔科学会東海・北陸支部
学術集会会長
第 6 回学術集会 鈴木 照(総合大雄会病院)
2008.
.13
岐阜市文化産業交流センター
第 7 回学術集会 小久保荘太郎(聖隷浜松病院 )
2009.
.
名古屋国際会議場
.4
アオッサ
第 8 回学術集会 重見 研司(福井大学医学部麻酔蘇生学教室 ) 2010.
支部運営委員
支 部 長
土田 英昭
教育委員
飯田 宏樹
貝沼 関志
小松 徹
総務委員
加藤 孝澄
坪川 恒久
西脇 公俊
広報委員
重見 研司
祖父江和哉
竹田 清
学術委員
小久保荘太郎
鈴木 照
丸山 一男
山本 健
飯田 宏樹
太田宗一郎
岡崎 敦
小澤 章子
小松 徹
笹野 寛
佐藤 重仁
白石 義人
祖父江和哉
竹田 清
土肥 修司
中村不二雄
西田 修
西脇 公俊
八田 誠
細田 蓮子
堀本 洋
丸山 一男
横山順一郎
川上 浩文
重見 研司
坪川 恒久
東藤 義公
山崎 光章
山本 健
八田 誠
山崎 光章
支部社員
理 事
土田 英昭
代 議 員
【 東海地区 】
【 北陸地区 】
4
遠山 一喜
交通のご案内
至 砂田橋
至 犬山
至 岐阜
名城線
堀川
名古屋城
22
至 瀬戸
名鉄
浅間町駅
市役所駅
亀島駅
41
至 高畑
名古屋駅
名古屋駅
久屋大通駅
桜通線
高岳駅
至 野並
国際
センター駅
丸の内駅
栄駅
東山線
至 藤ケ丘
至 中村区役所
伏見駅
錦通
広小路通
近鉄
至 中津川
矢場町駅
若宮大通
至 四日市
関西本線
江川線
上前津駅
鶴舞線
19
鶴
鶴舞駅
舞
駅
大須観音駅
新幹線
伏見通
至 豊田市
金山
至 東京
中
高蔵
西高蔵
2番
出口
1番
出口
名古屋国際会議場
白鳥
公園
熱田
神宮
公園
19
スポーツクラブ
1
ルネッサンス
名古屋熱田
番出口
西高蔵
2
番出口
日比野駅
高蔵幼稚園
至 名古屋国際会議場
西高蔵駅
日比野
雲心寺
駅
蔵
高
西
駅
N
本
金山駅
金山
央
東海道本線
線
東別院駅
神宮西駅
白鳥橋
1
熱田神宮
至 中部国際空港(セントレア)
至 豊橋
J R
247
至 新瑞橋
私 鉄
地下鉄
至 名古屋港
名古屋駅から (所要時間約20分)
名鉄線(¥180)
JR 東海道本線
(¥160)
JR 中央線
地下鉄名城線(左回り)
(¥200)
地下鉄名港線
地下鉄東山線
栄駅
地下鉄名城線(左回り)
地下鉄名港線
地下鉄桜通線
久屋大通駅
地下鉄名城線(左回り)
地下鉄名港線
中部国際空港(セントレア)から
中部国際空港
(セントレア)
金山駅
西高蔵駅 (新瑞橋方面)
徒歩 約5分
日比野駅 (名古屋港行き)
西高蔵駅 (新瑞橋方面)
徒歩 約5分
日比野駅 (名古屋港行き)(地下鉄名古屋駅から¥230)
西高蔵駅 (新瑞橋方面)
徒歩 約5分
日比野駅 (名古屋港行き)(地下鉄名古屋駅から¥230)
(所要時間約40 分)
名鉄空港特急(¥790)
金山駅
地下鉄名城線(左回り)
(¥200)
地下鉄名港線
※快速特急・特急の特別車は別途
ミューチケット
(¥350)
が必要です。
※名古屋空港(小牧)
からは、名古屋駅行きの直行バスをご利用ください。
5
西高蔵駅 (新瑞橋方面)
日比野駅 (名古屋港行き)
徒歩 約5分
名古屋国際会議場
名古屋駅
タクシー 約20 分(約2,000円)
会場案内図
3号館
4号館
2号館
代議員会会場
学会本部
1号館
3号館
4号館
2号館
正面玄関
1号館
3号館
4号館
2号館
参加受付
白鳥ホール
(南)
PC受付
白鳥ホール
(北)
1号館
6
機器展示
ポスター会場
講演会場
9月 5日
名古屋国際会議場
9:00
10:00
第 1 会 場
第2会場
第3会場
白鳥ホール北
(4 号館 1 階)
白鳥ホール南
(4 号館 1 階)
会議室 432
(4 号館 3 階)
9:30∼10:00
受 付
10:00∼10:10
開会式
9:00∼11:00
ポスター貼付
10:10∼11:00
共催セミナー
11:00
演者:清野 雄介先生
座長:北畑 洋先生
11:10∼12:00
特別講演
演者:照井 克生先生
座長:小久保荘太郎先生
12:00
12:10∼13:00
12:10∼13:00
ランチョンセミナー
演者:森本 康裕先生
座長:白石 義人先生
支部代議員会
13:00
13:10∼13:30
支部会員報告会
13:40∼14:40
14:00
一般演題
ポスター発表1
A1・B1・C1・D1
E1・F1
15:00
14:50∼16:00
一般演題
ポスター発表2
A2・B2・C2・D2
E2・F2
16:00
16:00∼16:30
16:00∼16:30
閉会式
ポスター撤去
17:00
7
参加者・演者・座長へのご案内
1 . 参加資格
本学術集会に参加される方は、受付にて参加登録をしてください。参加登録には会員カード( IC
カード)が必要となりますので、必ずご持参ください。
一般演題の発表演者、共同演者は共に、社団法人日本麻酔科学会会員に限ります。会員でない方は、
日本麻酔科学会 HP にアクセスの上、入会の手続きをお取りください。
ただし、卒後 2 年目までの初期研修医および卒後 3 年目から 5 年目までの後期研修医(専門診療科
を決めていないローテート研修医です)も発表者として認めますが、その場合には、所属する研修
病院から身分を証明するものを持参し、「 登録受け付け 」で提示してください。
[ ご注意 ]非会員の発表者が将来学会に入会しても、今回の発表は実績になりません。
2 . 参加登録
登録デスクは、名古屋国際会議場 4 号館 1 階ロビーに設置いたします。
受付期間
9 月 5 日( 土 )
9:30 ∼ 15:00
参 加 費
会 員 3 , 000 円
初期臨床研修医( 卒後 2 年まで )
無 料
医学生 無 料
※医学生・研修医の場合は、学生証又は所属する研修病院から身分を証明するものを持参し、
「登録受け付け」で提示してください。
※ネームカードを付けていない方の入場はお断り致します。
3 . 特別講演・共催セミナー
① 特別講演・共催セミナーはすべて白鳥ホール北(4 号館 1 階)で行われます。フロアからの質問
等を含めた講演の進行は座長に一任致します。
② 特別講演・共催セミナーの座長と演者は、座長・演者受付(4 号館 1 階ロビー)にお申し出ください。
4 . 一般演題
[ 座長の方へ ]
① 座長受付は設けませんので、会場内デスクの上にある、座長用リボン(赤色)を着用し、時
間になりましたら、発表・討論の進行を始めて下さい。
② 指示棒もデスクに準備致しますので、ご使用下さい。
( 各セッション:1 本 )
③ 進行は座長に一任致しますが、時間厳守でお願い致します。
( 1 演題につき質疑応答を含め
て 10 分 )
8
[ 発表の方へ ]
① ポスター受付は設けませんので、会場内にあるテープでポスターを貼って下さい。
( 画鋲
等は使用できません )
② ポスターは参加登録終了後、11 時までに貼り付けを終えて下さい。
③ ポスターを貼付するパネルは横 90㎝×縦 180㎝です。事務局で演題番号を付けますので、
左上隅( 20㎝× 20㎝)のスペースは使用できません。
④ 発表時に会場内デスクにある、発表者用リボン(緑色)を着用し、発表に臨んで下さい。
⑤ 発表後のポスターは、ご自分で 16 時 30 分までに撤去して下さい。16 時 30 分以降は事務局
にて処分致します。
5 . 東海・北陸支部代議員会
4 号館 3 階「会議室 432」にて、12:10 から行います。支部運営委員及び代議員の方は速やかにお
集まり下さい。( なお、支部定款廃止に伴い、従来の支部代議員は廃止されましたので、ご注意下
さい。)
6 . 東海・北陸地区支部会員報告
4 号館 1 階「 白鳥ホール北 」にて、13:10 から行います。
7 . 市民公開講座
9 月 6 日(日 )14:00 より浜松市プレスタワー 17 階 静岡新聞ホールにて行います。
会員の皆様も出席の程、よろしくお願い致します。
8 . 施設内での一般的注意事項
① 館内禁煙にご協力下さい。
② ホール( ポスターおよび機器展示会場 )での飲食はご遠慮下さい。
③ クロークを設けますが、貴重品、傘等の管理はご自身でお願い致します。
9
プログラム
11
共催セミナー・特別講演・ランチョンセミナー
第 1 会場( 白鳥ホール北)
共催セミナー 10:10 ∼ 11:00
座長:北畑 洋( 徳島大学病院 麻酔科 准教授)
Individualized goal-directed hemodynamic management
̶ dynamic index と static index をどう使い分けるか? ̶
清野 雄介 東京女子医科大学 麻酔科学教室
共催:エドワーズライフサイエンス㈱
特別講演 11:10 ∼ 12:00
座長:小久保荘太郎(聖隷浜松病院 副院長)
産科麻酔科医として麻酔科全体とどのように連携するか
照井 克生 埼玉医科大学総合医療センター 産科麻酔科
ランチョンセミナー 12:00 ∼ 13:00
座長:白石 義人( 浜松医科大学手術部 准教授)
レミフェンタニル時代におけるセボフルランの役割
森本 康裕 宇部興産中央病院 麻酔科
共催:丸石製薬㈱
13
一般演題
( 白鳥ホール南 )
A1:気道 13:40 ∼ 14:40
座長:廣田 弘毅( 富山大学医学部 麻酔科学 准教授)
A1-1 全身麻酔後、披裂軟骨前方脱臼をきたした 2 症例
総合病院 順天堂大学医学部附属静岡病院 助手
○齋藤 貴幸、亀田和夏子、齋藤 愛子、田中 英文、神山 具也、宮崎 生朗、
村岡 陽大、五十嵐海原、酒井 宏明、岡崎 敦
A1-2 巨大甲状腺腫瘍により気管偏位・狭窄をきたした肥満患者の麻酔経験
県西部浜松医療センター
○水野 香織、小林 賢輔、及川 文雄、岩本 竜明、木倉 睦人
A1-3 気管挿管後の長期間の嗄声で披裂軟骨脱臼と診断された 3 症例
安城更生病院 麻酔科
○新井 根洋、八田 誠、田渕 昭彦、竹内 直子、水野 光規、小林 一彦、
山本 里恵、五十嵐一憲、原 怜子、堀内 聖子
A1-4 頸椎病変により上気道の狭窄を呈し、気道確保の困難が予想された 2 症例
名古屋第二赤十字病院
○渡邊 仁美、高須 宏江、石田 進、寺澤 篤、田口 学、安藤 雅樹、
小嶋 高志、日比野阿礼、新井 奈々、森 友紀子
A1-5 Double-lumen tube( Portex 社製ブルーライン TM )による左主気管支損傷の 1 例
1 )岐阜県立多治見病院 救命救急センター・麻酔科、
2 )愛知医科大学病院 高度救命救急センター
○白石 大門 1 )、大森 隆夫 1 )、三宅健太郎 1 )、松本 卓也 1 )、稲垣 雅昭 1)、
成松 紀子 1 )、山崎 潤二 1 )、山田 富雄 1 )、間渕 則文 1 )、中川 隆 2)
A1-6 偶然発見された喉頭蓋囊胞合併患者に対してエアウェイスコープ( AWS )を
使用した 1 症例
1 )金沢医科大学病院 麻酔科、2 )金沢赤十字病院 麻酔科
○山岡 祐子 1 )、中村 勝彦 2 )、土田 英昭 1 )
14
A2:呼吸 14:50 ∼ 16:00
座長:高須 明彦( 大垣市民病院 麻酔科部長)
A2-1 重度の低酸素血症に比べて胸部 X 線所見に乏しかった一例
1 )一宮西病院 麻酔科、2 )一宮西病院 呼吸器内科
○猿渡 寛子 1 )、澤田 圭介 1 )、浅野 高行 2 )、葛西 麻由 1 )、若尾 政弘 1)、
石川 恭 1 )
A2-2 脈波酸素飽和度が 100 % で、動脈血酸素分圧が 40 mmHg 台を表示した急性白血病
の 1 症例
名古屋市立大学大学院医学研究科 麻酔・危機管理医学
○島田 靖子、薊 隆文、須基早紀子、幸村 英文、伊藤 彰師、杉浦 健之、
水落雄一朗、徐 民恵、播磨 恵、祖父江和哉
A2-3 肺塞栓症を合併した単純子宮全摘術の麻酔管理
市立四日市病院 麻酔科
○青山 正、石田 祐基、小林 信、野々垣幹雄、近藤 潤夫
A2-4 Microwave coagulation による肝切除直後に急性肺障害となった 2 症例
豊橋市民病院 麻酔科
○原 真人、青島 礼子、河合 未来、川口 道子、藤田 靖明、
間瀬木めぐみ、山口 慎也、山田 彩、中田 純、寺本 友三
A2-5 胃液の大量誤嚥による重症 ARDS に対し PCPS を導入した一例
愛知厚生連 海南病院 集中治療部・救急部・麻酔科
○杉野 貴彦、原 嘉孝、新美 太祐、辻 麻衣子、川出 健嗣、松永安美香、
野手 英明、田村 哲也、中野 淳子、坪内 宏樹
A2-6 気管挿管後に呼気終末二酸化炭素濃度の値をきっかけに肺塞栓を発見出来た一例
名古屋第二赤十字病院 麻酔・集中治療部
○古田 裕子、寺澤 篤、森 友紀子、新井 奈々、高橋 徹行、井口 広靖、
日比野阿礼、小嶋 高志、石田 進、高須 宏江
A2-7 左肺全摘術後の左肺癌に対し用手的換気法にて胸腔鏡下肺切除術を管理しえた
一症例
大垣市民病院 麻酔科
○川瀬美千代、菅原 昭憲、加藤 規子、高須 昭彦、山森 美淑
15
B1:小児麻酔 13:40 ∼ 14:40
座長:堀本 洋( 静岡県立こども病院 第二診療部長兼麻酔科医長)
B1-1 小児セボフルラン麻酔導入時の興奮と入眠後の体動には年齢による差がみられる
1 )海の星診療所、2 )水谷痛みのクリニック、3 )岩はし内科医院
○小林 敏信 1 )、北原晃一郎 1 )、白川 香 2 )、臼井 要介 2 )、岩橋美智代 3)
B1-2 前縦隔腫瘍により気管狭窄をきたした小児における全身麻酔と
ブロビアックカテーテル留置術
岐阜大学大学院医学系研究科 麻酔・疼痛制御学
○岩田 賢治、長瀬 清、飯田 宏樹、土肥 修司
B1-3 ラリンジアルマスク−気管支ファイバー補助による気管挿管を施行した
小児チアノーゼ心疾患の挿管困難症例
名古屋市立大学大学院 麻酔・危機管理医学
○蓑輪 尭久、杉浦 健之、太田 晴子、山内 浩揮、藤田 義人、木村 卓二、
幸村 英文、水落雄一朗、伊藤 彰師、祖父江和哉
B1-4 バルーンによる血流遮断で腕頭動脈切断の可否を判断した乳児の麻酔管理
地方独立行政法人 静岡県立病院機構 静岡県立こども病院
○加古 裕美、藤永あゆみ、西原 紘子、駒崎 真矢、伴 泰考、梶田 博史、
小川 直子、諏訪まゆみ、堀本 洋
B1-5 術直後の小児に有効に酸素投与をする方法の有効性の検討
名古屋市立大学大学院医学研究科 麻酔・危機管理医学
○岡本 泰明、薊 隆文、藤田 義人、杉浦 健之、有馬 一、平手 博之、
森田 正人、山内 浩揮、徐 民恵、祖父江和哉
B1-6 遅発性横隔膜ヘルニアを胸腔鏡下に整復し得た一例
1 )順天堂大学医学部附属練馬病院、2 )順天堂大学医学部附属静岡病院、
3 )順天堂大学医学部附属順天堂医院
○鈴木 祥子 1, 2, 3 )、矢野 絢子 1 )、半田 敦子 3 )、圓谷 直子 1 )、中村 尊子 1)、
田邉 豊 1 )、熊倉誠一郎 1 )、菊地 利浩 1 )、五十嵐海原 2 )、岡崎 敦 2)
B2:循環 14:50 ∼ 16:00
座長:坪川 恒久( 金沢大学医学部 麻酔・蘇生科 准教授)
B2-1 手術終了直後、突然の ST 上昇に続く心停止をきたした一症例
済生会 松阪総合病院 研修医
○小野 文、車 有紀、車 武丸、宮村 一男、宮村とよ子
16
B2-2 術直後に冠動脈攣縮をきたした症例
中部労災病院
○開田 剛史、白崎 礼美、村田 洋子、町野 麻美、藤掛 数馬、川本 英嗣、
永坂由紀子、若松 正樹
B2-3 両側 TKA 術後に無症候性心筋梗塞を発症した 1 例
岐阜大学医学部附属病院
○鈴木 友希、飯田 美紀、飯田 宏樹、土肥 修司
B2-4 人工心肺使用下に発症した急性大動脈解離において頸動脈エコーと経食道エコーに
て脳血流を評価しえた一例
名古屋第二赤十字病院 麻酔科・集中治療部
○小嶋 高志、新井 奈々、井口 広靖、日比野阿礼、高須 宏江
B2-5 フロートラックセンサーとプリセップカテーテルを用いた三尖弁置換術の麻酔経験
1 )総合大雄会病院 麻酔科、2 )総合大雄会病院 集中治療科、
3 )岐阜大学医学部 麻酔・疼痛制御学教室
○高田 基志 1 )、村田 哲哉 1 )、加藤真有美 3 )、井上智重子 1 )、酢谷 朋子 1)、
鈴木 照 1 )、山本 拓巳 2 )、土肥 修司 3 )
B2-6 転移性心臓腫瘍に肺梗塞を伴った症例の麻酔経験
藤田保健衛生大学病院
○新居 憲、竹田 清、木村 直暁
B2-7 無症候性 Brugada 症候群患者 2 例に対する麻酔経験
社会保険中京病院 麻酔科
○石川 智子、金 日成、田中 厚司、斎藤 理恵
C1:産婦人科麻酔他 13:40 ∼ 14:40
座長:高須 宏江( 名古屋第二赤十字病院 第一麻酔・集中治療部長)
C1-1 右腕頭動脈、左総頚動脈、左鎖骨下動脈起始部の高度狭窄により脳血流が
高度低下した患者の腹式子宮全摘術の麻酔経験
聖隷浜松病院 麻酔科
○奥井 悠介、小久保荘太郎
C1-2 当院における腹腔鏡下婦人科緊急手術症例の検討
1 )岐阜県立多治見病院 救命救急センター・麻酔科、2 )ハラダクリニック
○土屋 恵美 1 )、安井 稔博 1 )、大森 隆夫 1 )、三宅健太郎 1 )、松本 卓也 1)、
稲垣 雅昭 1 )、山田 富雄 1 )、山崎 潤二 1 )、間渕 則文 1 )、原田 知和 2)
17
C1-3 肥満細胞腫合併妊娠に対する帝王切開の麻酔経験
名古屋大学医学部附属病院 麻酔科
○大橋亜希子、鈴木 章悟、柴田 康之、江間 義朗、西脇 公俊
C1-4 IVR 施行不可能な病院で直視下大動脈遮断準備下に帝王切開・子宮摘出術を行った
全前置癒着胎盤の 1 症例
岐阜市民病院 麻酔科 医員
○鬼頭 和裕、太田宗一郎、河村三千香、山田 忠則、山下 実華、大畠 博人
C1-5 両側総腸骨動脈バルーンカテーテルを用いた全前置胎盤患者の麻酔管理
名古屋大学医学部 麻酔・蘇生医学講座
○尾関 奏子、角渕 浩央、高尾のぞみ、鈴木 章悟、西脇 公俊
C1-6 扁桃・アデノイド切除後の術後出血を契機に診断された血友病 A の一症例
豊橋市民病院 麻酔科
○間瀬木めぐみ、川口 道子、原 真人、山口 慎也、河合 未来、
青島 礼子、藤田 靖明、山田 彩、中田 純、寺本 友三
C2:神経 14:50 ∼ 16:00
座長:横山順一郎( 静岡県立総合病院 手術部部長)
C2-1 胸部硬膜外麻酔により一過性にホルネル症候群を呈した一例
鈴鹿中央総合病院 麻酔科
○冨田 正樹、尾本 朋美、橋本 宇
C2-2 亀背患者に術後中心性脊髄損傷を認めた 1 症例
1 )順天堂静岡病院 麻酔科 助手、2 )順天堂鈴岡病院
○村岡 陽大、岡崎 敦、五十嵐海原、宮崎 生朗、神山 具也、田中 英文、
斉藤 貴幸、斉藤 愛子、亀田和夏子
C2-3 術前の MRI 検査で脊髄係留症候群とわかった患者の麻酔経験
浜松赤十字病院 麻酔科
○小幡 良次
C2-4 Becker 型筋ジストロフィー患者に対するロクロニウムの使用経験
1 )福井大学医学部 附属病院 麻酔科・蘇生科、2 )市立敦賀病院
○清水久美子 1 )、川上 浩文 2 )、重見 研司 1 )
C2-5 Angelman 症候群と BIS 値 0
聖隷三方原病院
○濱野 剛、高田 知季、金丸 哲也、赤池 達正、藤本久美子、加藤 茂、
岸本 容子、成瀬 智、岩切 聡子
18
C2-6 遠位型ミオパチーに合併した胆石症の麻酔経験
山田赤十字病院
○紀之本将史、中川 裕一、原 祐子
D1:特殊疾患麻酔 13:40 ∼ 14:40
座長:小澤 章子( 静岡医療センター麻酔科 集中治療部手術部長・麻酔科部長)
D1-1 家族歴から悪性高熱の素因が疑われた患者の麻酔経験
名古屋第一赤十字病院
○高川 奈央、長谷川和子、後藤衣津子、上野 由衣、中島万志帆、北尾 岳、
小栗 幸一、横田 修一
D1-2 術中異常高血圧を呈し、術後に異所性褐色細胞腫と診断された 1 例
小牧市民病院
○萩原 伸昭、吉野 博子、中島 基晶、中川 哲、佐野 敏郎
D1-3 胸腺摘出後に呼吸管理を要した全身型重症筋無力症患者の麻酔経験
大垣市民病院 麻酔科
○加藤 規子、高須 昭彦、菅原 昭憲、川瀬美千代
D1-4 stiff-person 症候群に対する胸腺摘出術の麻酔経験
日本海員掖済会 名古屋掖済会病院
○木村 哲朗、時政 愛、牧 愛子、河野 伸一、丹羽 和哉、島田 智明
D1-5 脊髄性筋萎縮症患者の全身麻酔の一症例
1 )沼津市立病院 麻酔科 、2 )現順天堂大学付属順天堂医院 麻酔科
○若林 彩子 1, 2 )、萩谷 雅人 1 )
D1-6 筋ジストロフィー合併患者の緊急開腹胆嚢摘出術の全身麻酔経験
JA 静岡厚生連 遠州病院 麻酔科
○石井 裕子、永田 洋一、八角 康裕
D2:合併症 14:50 ∼ 16:00
座長:寺本 友三( 豊橋市民病院 麻酔科部長)
D2-1 脊髄くも膜下麻酔後に下肢の痺れが遷延し、転移性脳腫瘍の存在が判明した一例
富山大学付属病院 麻酔科
○坂本 菜摘、釈永 清志、竹村 佳記、山田 正名、山崎 光章
19
D2-2 気道確保困難に緊急経気管ジェット換気が有効であった一例
1 )名古屋市立大学大学院医学研究科・危機管理医学、
2 )名古屋市立東部医療センター東市民病院
○佐藤 範子 1 )、平手 博之 1 )、幸村 英文 1 )、伊藤 恭史 2 )、服部 友紀 1)、
南 仁哲 1 )、高柳 猛彦 1 )、加古 英介 1 )、志田 恭子 1 )、祖父江和哉 1)
D2-3 プロポフォール・フェンタニル全静脈麻酔後に生じた後弓反張発作が長期化した
1 症例
金沢医療センター 麻酔科
○横山 博俊、太田 敏一、野竹 理洋、岸槌進次郎
D2-4 内視鏡下経皮的気管切開時に経口気管チューブを適切に引き抜く方法の紹介
名古屋市立大学大学院医学研究科 麻酔・危機管理医学
○比嘉 悠子、笹野 寛、島田 靖子、山内 浩揮、森田 正人、平手 博之、
水落雄一朗、薊 隆文、伊藤 彰師、祖父江和哉
D2-5 劇的な経過をたどった急性広範性肺血栓塞栓症の経験
1 )横浜栄共済病院 麻酔科、2 )金沢大学医学部附属病院 麻酔科蘇生科
○津田 和信 1 )、橋本 和美 1 )、松久 大希 2 )、紺崎 友晴 1 )、野村 俊之 1)
D2-6 術後両下肢不全麻痺を呈したが独歩退院した破裂性腹部大動脈瘤症例の周術期管理
1 )独立行政法人国立病院機構 静岡医療センター 麻酔科・集中治療部、2 )同 心臓血管外科
○小澤 章子 1 )、今津 康宏 1 )、小林 利恵 1 )、野見山 延 1 )、真鍋 秀明 2)、
高木 寿人 2 )、梅本 琢也 2 )
E1:神経ブロック 13:40 ∼ 14:40
座長:長瀬 清( 岐阜大学医学部附属病院 手術部講師)
E1-1 リアルタイム超音波ガイド下中心静脈穿刺における Head Mount Display の利用
名古屋市立大学大学院 医学研究科 麻酔・危機管理医学分野
○松本 麗、笹野 寛、有馬 一、森田 正人、加藤 利奈、鈴木 悦子、
秋吉瑠美子、竹入 由賀、大橋 智、祖父江和哉
E1-2 高齢者の圧迫骨折に対する脊髄神経後枝内側枝高周波熱凝固術 10 症例の検討
岐阜大学医学部 付属病院
○宮本 真紀、山口 忍、鷲見 和行、飯田 宏樹、土肥 修司
E1-3 人工膝関節手術の術後鎮痛における硬膜外麻酔と IV-PCA の比較
地方独立行政法人 静岡県立病院機構 静岡県立総合病院
○鈴木みどり、佐藤 徳子、中右麟太郎、川島 裕也、渡辺 薫、三村真一郎、
藤井 俊輔、渥美 和之、青嶋由紀江、横山順一郎
20
E1-4 乳癌手術における硬膜外麻酔の必要性の検討
地方独立行政法人 静岡病院機構 静岡県立総合病院
○中右麟太郎、佐藤 徳子、川島 裕也、鈴木みどり、渡辺 薫、三村真一郎、
藤井 俊輔、渥美 和之、青嶋由紀江、横山順一郎
E1-5 神経ブロックおよび中心静脈穿刺を訓練するための電気回路を用いた超音波ガイド
下穿刺シミュレーターの試作
1 )福井大学医学部付属病院 麻酔科蘇生科、
2 )福井大学医学部器官制御医学講座 麻酔・蘇生顎領域、
3 )福井大学医学部付属病院 集中治療部
○次田 佳代 1 )、上田 雅史 2 )、佐藤 倫祥 1 )、三田建一郎 1 )、松木 悠佳 1)、
信川 泰成 3 )、田畑 麻里 1 )、重見 研司 2 )
E1-6 当院における透視下鎖骨上アプローチによる腕神経叢ブロック法( 第 2 報 )
金沢医療センター 麻酔科
○横山 博俊、太田 敏一、野竹 理洋、岸槌進次郎
E2:疼痛制御等 14:50 ∼ 16:00
座長:高田 知季( 聖隷三方原病院 麻酔科部長兼手術部部長)
E2-1 新型ドクターカー DMERC で出場し緊急手術に至った症例の検討
1 )岐阜県立多治見病院 救命救急センター・麻酔科、
2 )愛知医科大学病院 高度救命救急センター
○小川 雄右 1 )、安井 稔博 1 )、三宅健太郎 1 )、松本 卓也 1 )、稲垣 雅昭 1)、
成松 紀子 1 )、山田 富雄 1 )、山崎 潤二 1 )、間渕 則文 1 )、中川 隆 2)
E2-2 集中治療管理において胸部硬膜外鎮痛法が有用であった 3 症例
独立行政法人国立病院機構 静岡医療センター麻酔科・集中治療部
○小澤 章子、今津 康宏、小林 利恵、井出 壮一郎、野見山 延
E2-3 腕神経叢ブロック後に全身痙攣を起こした症例
浜松赤十字病院 麻酔科
○小幡 良次
E2-4 フェンタニルパッチ使用中の患者に対する術後鎮痛で相対的オピオイド過量を生じた
症例
成田記念病院 麻酔科
○朝田 智紀、中尾 康尚、大沼 哲朗
E2-5 高齢者大腿骨頚部骨折手術の麻酔管理
1 )海の星診療所、2 )水谷痛みのクリニック、3 )岩はし内科医院
○小林 敏信 1 )、北原晃一郎 1 )、白川 香 2 )、臼井 要介 2 )、岩橋美智代 3)
21
E2-6 術中の点滴漏れによりレミフェンタニルが血管外に漏出し呼吸抑制が遷延した症例
富山市民病院
○青山 実、加藤 晋、高木 麻里、永川 保、中西 拓郎
F1:出血等 13:40 ∼ 14:40
座長:岡崎 敦( 順天堂大学医学部附属静岡病院 麻酔科先任准教授)
F1-1 扁桃摘出術後に toxic shock syndrome となった 1 例
愛知厚生連海南病院
○近藤麻奈美、田村 哲也、中野 淳子、新美 太祐、原 嘉孝、川出 健嗣、
辻 麻衣子、野手 英明、松永安美香、坪内 宏樹
F1-2 右腎尿管摘出後、著明な循環不全、多臓器不全をきたし第 5 病日に死亡した 1 症例
愛知県厚生連江南厚生病院
○安藤 侑子、馬淵由衣子、高原 知子、赤堀 貴彦、水谷 粋、富永 麻里、
矢内るみな、藤岡奈加子、山本 康裕、渡辺 博
F1-3 甲状腺全摘術において麻酔導入直後に尿崩症を発症した 1 例
国立三重中央医療センター
○新谷 佳大、紀ノ本 茜、水野 祥子、渡邉 栄子、清水 美恵、長谷川 隆
F1-4 全身痙攣による著明な症状を呈した 1 症例
三重県立総合医療センター
○川端 広憲、木崎 理絵、岩佐 愛子、古橋 一壽
F1-5 感染性ペースメーカーリード抜去術を超低体温下循環停止にて行った一例
安城更生病院 麻酔科
○五十嵐一憲、田渕 昭彦、八田 誠、竹内 直子、水野 光規、山本 里恵、
小林 一彦、新井 根洋、原 怜子、平野 真理
F1-6 膵頭十二指腸切除 + 右半結腸合併切除術時に危機的出血、
輸血アレルギーを起こしたが軽快退院となった症例
JA 厚生連 遠州病院 麻酔科
○八角 康裕、石井 裕子、永田 洋一
22
F2:レミフェンタニル等 14:50 ∼ 16:00
座長:加藤 孝澄( 浜松医科大学医学部医学科 麻酔・蘇生学講座 准教授)
F2-1 硬膜外麻酔併用全身麻酔症例におけるレミフェンタニルと尿量の関係
豊橋市民病院
○河合 未来、中田 純、川口 道子、原 真人、山口 慎也、
間瀬木めぐみ、青島 礼子、藤田 靖明、山田 彩、寺本 友三
F2-2 麻酔導入時のレミフェンタニルへの反応と術後フェンタニルの鎮痛効果に関する検討
名古屋市立東部医療センター東市民病院
○伊藤 恭史、飯田 裕子、森島 徹朗、津田 喬子
F2-3 レミフェンタニル投与により痙攣が誘発された小児の一例
1 )愛知県心身障害者コロニー中央病院 麻酔科 嘱託医、
2 )福井大学医学部器官制御医学講座 麻酔・蘇生学領域
○水野 省司 1 )、重見 研司 2 )
F2-4 単独点滴ラインでの持続薬使用時の問題点
1 )浜松医科大学医学部附属病院 集中治療部、2 )浜松医科大学医学部附属病院 麻酔・蘇生科
○石井 康博 1 )、山口 昌一 2 )、佐藤 重仁 2 )
F2-5 ヒドロキシエチルデンプン( HES )製剤によるアナフィラキシーが疑われた 1 例
県西部浜松医療センター
○小林 賢輔、及川 文雄、岩本 竜明、水野 香織、木倉 睦人
F2-6 緊急 CABG 術後に悪性高熱症が疑われた一症例
1 )総合病院 聖隷三方原病院 麻酔科、2 )静岡県立総合病院 麻酔科
○岩切 聡子 1 )、三村真一郎 2 )、濱野 剛 1 )、成瀬 智 1 )、藤本久実子 1)、
加藤 茂 1 )、赤池 達正 1 )、金丸 哲也 1 )、高田 知季 1 )
23
共催セミナー抄録
共催セミナー
座長:北畑 洋(徳島大学病院 麻酔科 准教授)
Individualized goal-directed hemodynamic management
̶ dynamic index と static index をどう使い分けるか? ̶
清野 雄介 東京女子医科大学
麻酔科学教室
術中の輸液は多くなりすぎても、少なすぎても周術期の合併症の発生率を上昇させる
ため、患者の死亡率や合併症の発生率が最も低くなるような輸液管理を行う必要がある。
近年、Individualized goal-directed fluid management という概念が出てきた。これは、
決まった量の輸液を血圧や脈拍、尿量という指標に基づいて投与するのではなく、一回
拍出量や心拍出量など流量の指標に基づいて各症例に応じた輸液管理を行い、組織の酸
素需要に見合った酸素供給を確保するという管理である。循環動態の最適化によって酸
素供給を適正化することで、血管収縮薬やカテコールアミンの使用量が減少、急性腎障
害などの術後の合併症の頻度が低下、在院日数が短縮することが報告されている。
輸液管理を適切に行うためには、輸液への反応性を予測することが重要である。収縮
期血圧、脈圧、一回拍出量の呼吸性変動といった動的な指標(dynamic index)は輸液
への反応性の予測に有用である。また静的な指標とされる中心静脈圧や肺動脈楔入圧と
いった心室充満圧は、循環血液量だけでなく血管の緊張、心房・心室のコンプライアン
ス、心室機能など多くの因子によって影響を受ける。したがって中心静脈圧や肺動脈楔
入圧は、単に循環血液量の指標として捉えることはできない。
動的な指標は循環血液量不足を判断するのに適しているが、過剰輸液の状態はわから
ない。一方、充満圧などの静的な指標によって心機能の低下や輸液量過剰を診断しうるが、
循環血液量不足を判断するのは難しい。したがって、動的な指標を目安に一回拍出量や
心拍出量を最適化し、いったん最適化された後は輸液量を調節してその状態を保つとと
もに、中心静脈圧などの静的な指標をモニタリングして、輸液過多を防ぐ必要がある。
共催:エドワーズライフサイエンス㈱
27
特別講演抄録
特別講演
座長:小久保荘太郎(聖隷浜松病院 副院長)
産科麻酔科医として麻酔科全体とどのように連携するか
照井 克生 埼玉医科大学総合医療センター
産科麻酔科
麻酔科学の専門領域として、小児麻酔と心臓麻酔は全国規模の学会を既に設立してお
り、本年度は分娩と麻酔研究会を母体として日本産科麻酔学会が発足した。これらの学
会は、その領域に興味をもち診療に従事している麻酔科医にとって、存分に情報交換や
交流のできる貴重な場となっているほか、麻酔科医としての技量をさらに深めようとい
う若い麻酔科医に教育の機会を提供している。小児麻酔や心臓麻酔は、それぞれに専門
施設も多く、小児麻酔や心臓麻酔のエキスパートと目される先達も多い。専門施設であ
れば、診療内容が限定されるため、たとえば小児麻酔専門家と麻酔科全体との連携が問
題となることは少ないだろう。しかし産科麻酔においては、産科専門施設は小規模で常
勤の麻酔科医は不在なことが多く、産科麻酔部門や産科麻酔科医も極めて少ない。従っ
て、総合病院の麻酔科医が産科麻酔診療の主な担い手なのが現状である。
しかし産科麻酔の現場は分娩室であり、中央手術室とは離れていることが多い。そし
て超緊急手術を時に必要とする。経腟分娩後に突発的に弛緩出血や頸管裂傷などにより
大量出血を来たすこともある。さらに無痛分娩のニーズは 24 時間途切れることがない。
そのような特徴ある診療に対応するためには、欧米の主要施設が実現しているように、
分娩フロアには産科麻酔専門医が 24 時間常駐する体制が望ましい。当センターは 2000 年
の総合周産期母子医療センター新築に際して、周産期麻酔部門(現在は産科麻酔科)を設
け、分娩フロアの産科専用手術室で予定・緊急の帝王切開を行ってきた。産科病棟看護
師が器械出しや外回りを行い、産科麻酔科医師が担当した帝王切開はこれまで 2500 件に
及ぶ。すると今度は、麻酔科研修医が帝王切開の麻酔を経験する機会が奪われるという
問題が生じた。そこで現在は、麻酔科後期研修中に 6 ヶ月間産科麻酔を研修する制度に
した。当直体制も、産科麻酔当直から、産科麻酔科医を含めて 4 人が中央手術室と分娩室、
集中治療室を担当する一体化当直になった。分娩室での急変時には、産科麻酔科当直医
1 人のみでは対応しきれないこともあるし、緊急帝王切開に複数の麻酔科医の協力が得ら
れることは、当直者の安心感を増し、麻酔の安全性向上に寄与するであろう。
産科麻酔部門として独立して診療を行うことには、産科医との連絡が密になるなどの
長所もあるが、新しい薬物や麻酔法の受入れが遅れたり、お互いの診療に無関心になっ
たりする短所もある。専門領域と麻酔科全体との連携はどうあるべきか、模索している
現状を紹介する。
31
ランチョンセミナー抄録
ランチョンセミナー 座長:白石 義人(浜松医科大学手術部 准教授)
レミフェンタニル時代におけるセボフルランの役割
森本 康裕 宇部興産中央病院
麻酔科
レミフェンタニルの登場から 3 年目に入り麻酔法は大きく変わってきた。その中でレ
ミフェンタニルと併用する麻酔薬として、セボフルランとプロポフォールのどちらがよ
いのか注目される。本日はいくつかのテーマについてレミフェンタニル時代におけるセ
ボフルランの役割について述べてみたい。
1. 術中覚醒
我々が昨年行ったアンケート調査では維持セボフルラン濃度が 1.0%以下では術中覚
醒の頻度が高くなることが危惧された。そこで本年術中覚醒例の状況についてのアン
ケート調査を行った。172 名から回答を得たが、疑い例まで含めた術中覚醒例は 24 例で
あった。麻酔法は TVIA が 21 例、セボフルラン 2 例、大量フェンタニル 1 例であり、
セボフルランでは TIVA と比べて術中覚醒のリスクが低いことが分かった。
2. レミフェンタニルと併用する際のセボフルラン濃度
レミフェンタニルにより充分な鎮痛が得られることで維持セボフルラン濃度を低下さ
せることができる。発売直後の調査では維持セボフルラン濃度は 1.0%程度が多かった
が本年の調査では 1.5%が最も多かった。維持セボフルラン濃度が高くなったことがセ
ボフルラン麻酔で術中覚醒が少なかったひとつの理由と考えられる。一方、レミフェン
タニルの投与量も多くなる傾向がみられた。従ってセボフルランで充分に鎮静しながら、
レミフェンタニルで充分な鎮痛を図るのが今時のセボフルラン麻酔と考えられる。レミ
フェンタニルを充分使用することで術中のストレス反応を抑制することが可能となる。
また、血糖値が上昇しないことから術中の栄養管理についても考えていく必要がある。
3. TIVA との比較
プロポフォールと比べたセボフルランの利点は、患者による感受性の差が小さくどの
ような患者でも安心して使用することが出来るという点にある。例えば超高齢者や肥満
患者の麻酔でも問題なく管理することができる。さらに心臓、その他の臓器の保護作用
などセボフルランの利点が期待される症例について紹介する。
共催:丸石製薬㈱
35
一般演題抄録
気道 A1-1
気道 A1-2
全身麻酔後、披裂軟骨前方脱臼をきたした
2 症例
巨大甲状腺腫瘍により気管偏位・狭窄を
きたした肥満患者の麻酔経験
総合病院 順天堂大学医学部附属静岡病院 助手
県西部浜松医療センター
○齋藤貴幸、亀田和夏子、齋藤愛子、田中英文、
神山具也、宮崎生朗、村岡陽大、五十嵐海原、
酒井宏明、岡崎 敦
○水野香織、小林賢輔、及川文雄、岩本竜明、
木倉睦人
巨大甲状腺腫により気管の偏位・狭窄をきたした患者
【 緒言 】全身麻酔後の嗄声の原因として披裂軟骨脱臼に
の麻酔管理を経験したので報告する。
よるものは報告が少ない。今回、全身麻酔後に披裂軟骨
前方脱臼をきたし、整復可能であった 2 例を経験したの
【 症例 】41 歳、女性。数年前よりのどの違和感があり、
で報告する。
近医で気管支炎と診断されていた。数ヶ月前より、違和
【 症例 1 】71 歳男性、158㎝、68kg、前立腺癌に対して
感が増強、睡眠時の呼吸苦を覚えるようになり近医受診。
前立腺全摘出術を施行した。術前特記事項として拘束性
甲状腺腫瘍を指摘され、手術目的に当院紹介となった。
呼吸障害を認めた。硬膜外麻酔併用全身麻酔で行い、麻
肥満(BMI 35.6)
、精神発達遅滞を合併し、身体所見で
酔時間は 2 時間 25 分だった。挿管は #4 ブレードの喉頭
は猪首、右側前頚部やや腫大、開口 2 横指、Mallampati
鏡を用いて 2 年目の研修医が行い、ID8.5㎜のシェリダ
分類はⅣであった。胸部 X-P、頚部 CT 上では最大横
ン気管内チューブ CF を用い、深さ 22㎝、チューブカ
経 74㎜の甲状腺腫瘍と、圧迫による気管の左方偏位・
フ 8cc 注入し、正中固定とした。挿管は容易で、術中も
狭窄を認めた。甲状腺ホルモン値は正常であった。麻酔
バッキング、事故抜管など特に問題はなかった。術後 3
導入時の換気困難・挿管困難が予測されたため意識下挿
日目、嗄声、喘鳴が継続していたため耳鼻科を受診し、
管を予定した。精神発達遅滞のため、患者の理解、協力
披裂軟骨前方脱臼と診断された。局所麻酔ファイバース
を得るのに苦労を必要とした。前投薬なしで入室後、ド
コープ下バルーンカテーテル整復術を行い、術後 51 日
ロペリドール、フェンタニルにて軽度の鎮静を得た。リ
目、整復術 5 回目に披裂軟骨脱臼の改善を認めた。
ドカインで口腔内・咽頭を十分表面麻酔した後、気管支
【 症例 2 】15 歳男性、170㎝、60kg、術前特記事項はなく、
ファイバースコープで声帯を確認し、喉頭にリドカイン
右先天性耳瘻孔摘出術を全身麻酔下で施行し、麻酔時間
を噴霧した。喉頭はやや浮腫状であった。気管支の偏位
は 6 時間 10 分だった。挿管は #3 ブレードの喉頭鏡を用
が強いためチューブはスパイラルチューブ 6.5㎜を選択
いて 2 年目の麻酔科医が行い、ID7.5㎜のリュッシュら
し、気管支ファイバースコープガイド下に気管挿管した。
せん入り気管チューブを、深さ 20㎝、チューブカフ
狭窄部での抵抗はほとんどなく円滑に挿入できた。挿管
10cc 注入し、左口角固定とした。挿管は容易で、術中も、
直後に呼吸を促し、セボフルランで入眠させた後、麻酔
バッキングや事故抜管など特に問題はなかった。術直後
維持はプロポフォール、レミフェンタニルで行った。手
から嗄声、嚥下痛をきたし、術後 10 日目に耳鼻科受診し、
術終了後、高度肥満、意志疎通困難を考慮し、全覚醒と
披裂軟骨前方脱臼と診断された。徒手整復術を 2 回試み
十分な呼吸回数・換気量を得た後抜管し、帰室した。
【 考察 】今回の症例は巨大甲状腺腫瘍であり、気管狭窄・
たが改善なく自然治癒を待ったが、他院で術後 17 日目
にファイバースコープ下バルーンカテーテル整復術を施
偏位を認めた。また高度肥満の合併により、マスク換気、
行したところ、1 回目で披裂軟骨脱臼の改善を認めた。
気管挿管困難が予測された。精神発達遅滞があり、本人
【 考察 】2 症例とも挿管には難渋せず、暴力的な挿管操
の協力を得られるかどうかが問題となったが、気道確保
作による披裂軟骨脱臼は考えにくく、長時間の挿管、
困難のリスクを重視し、気管支ファイバースコープを用
チューブカフの量が多かったこと、さらに、症例 2 では
いた意識下挿管を選択した。家人の協力と適度な鎮静薬
術中に頚部伸展位をとっていたことによるチューブの直
使用により、スムーズな麻酔導入が可能であった。気道
接の圧迫も関与すると考えられた。披裂軟骨脱臼は長期
系に問題のある症例では、術前に全身状態の把握、CT
遷延し、整復不可能な症例も報告されている。自然治癒
などの画像による気道の検討を十分行い、対策を立てる
も認められるが、早期に治療を開始することによって回
必要がある。
復が見込める症例もあり、術後の遷延する嗄声を認めた
場合、早期に専門医に相談する必要がある。
39
気道 A1-3
気道 A1-4
気管挿管後の長期間の嗄声で
披裂軟骨脱臼と診断された 3 症例
頸椎病変により上気道の狭窄を呈し、
気道確保の困難が予想された 2 症例
安城更生病院 麻酔科
名古屋第二赤十字病院
○新井根洋、八田 誠、田渕昭彦、竹内直子、
水野光規、小林一彦、山本里恵、五十嵐一憲、
原 怜子、堀内聖子
○渡邊仁美、高須宏江、石田 進、寺澤 篤、
田口 学、安藤雅樹、小嶋高志、日比野阿礼、
新井奈々、森友紀子
【 はじめに 】気管挿管後に起こる一時的な嗄声は珍しい
【 はじめに 】頚椎病変による椎体の変性のため、気道が
ものではなく、ほとんどは数日で症状は改善する。しか
後方から圧排された場合、麻酔導入は困難を極める場合
し稀に一ヶ月以上の長期に亘って嗄声が遷延する場合が
がある。術前から画像診断で上気道狭窄が判明していた
あり、今回我々はその原因として披裂軟骨脱臼と診断さ
2 症例の麻酔導入方法について報告する。
れた 3 症例を経験したので報告する。
【 症例 1 】82 歳、女性。脊椎カリエスに対して頸椎の前
【 症例 1 】75 歳男性。下腿浮腫を指摘され心エコーで心
方後方固定術を予定した。術前の画像診断で、脊椎カリ
機能低下を認めたため行った CAG 検査の 3 時間後、突
エスに伴う咽後膿瘍により著明な気道狭窄をきたしてお
然の意識障害とけいれんにより鎮静し挿管管理となった。
り、気道確保の困難が予想されたため、あらかじめ、局
その後陳旧性脳梗塞と微小脳梗塞の痙攣発作が重積した
所麻酔下に頚部から膿瘍のドレナージを行って、膿瘍の
ものと診断されたが、意識回復し麻痺症状も改善してき
縮小を図った。後日、意識下経口ファイバー挿管を行い、
たため 4 日後に抜管。その直後より嗄声出現。耳鼻科に
頚椎固定術を行った。
て左披裂軟骨脱臼と診断され保存的に経過をみた後、約
【 症例 2 】73 歳、男性。腎癌の転移性頸椎腫瘍に対して
一ヶ月で自然に改善した。
頸椎後方固定術を予定した。術前の画像にて腫瘍の圧排
【 症例 2 】36 歳男性。膀胱浸潤を認める S 状結腸癌にて
による気道狭窄を疑い、耳鼻科に上気道の評価を依頼し
S 状結腸切除術及び膀胱部分切除術を施行。手術時間は
たところ、気道狭窄は軽度と判断されたため、rapid
約 10 時間。挿管操作は特に問題なかった。術後に嗄声
induction を選択した。マスク換気は可能であったが、
発生し、一週間以上持続。耳鼻科にて右披裂軟骨脱臼と
経口的に気管支ファイバーを挿入したところ、声門上部
診断され保存的に経過観察したところ、徐々に改善認め、
でかなりの気道の狭小化を認め、細径の気管チューブを
術後約一ヶ月後にはほぼ症状消失した。
用いて何とか挿管することができた。術後挿管のまま
ICU に帰室し、翌日気管切開術を施行した。
【 症例 3 】35 歳男性。外傷により左気胸と左手指挫創あ
【 考察 】頸椎病変により気道が後方から圧排され、気道
り、全身麻酔下に緊急で左手指縫合術を施行。手術時間
約 9 時間。挿管操作は特に問題なかったが、術後に嗄声
確保困難が予想された症例における麻酔導入を経験した。
が続き、耳鼻科にて左披裂軟骨脱臼と診断。保存的に経
術前の単純側面頚椎レントゲン写真や頚椎 MRI に付随
過をみてやや改善がみられたが治癒には至らず、約一ヵ
する気道の画像を評価することで、事前に気道狭窄を見
月後に全身麻酔下にて整復術を施行。その後症状の改善
つけることができた。また、症例 1 では事前に整形外科
を認め、整復術後一週間でほぼ改善を認めた。
に依頼して、膿瘍のドレナージを行うことで、膿瘍の縮
【 考察 】気管挿管後に持続する嗄声を認めた場合、披裂
小を図り、気道狭窄を軽減してから、手術に臨むことが
軟骨脱臼の可能性を考えるべきである。持続する嗄声に
できた。症例 2 では、術前の耳鼻科の診察にて気道の狭
加えて持続発声時間、喉頭ファイバースコープでの検査
窄は軽度と判断されたため、rapid induction を選択し
所見、CT 検査などによって診断することができるが、
たが、予想以上に気道狭窄をきたしており挿管は困難を
時に声帯麻痺との鑑別が難しいことがある。披裂軟骨脱
極めた。
臼には整復が必要とされるが、保存的に治療、または自
【 結語 】頚椎病変を認める患者の気道確保を行う場合、
然治癒した報告も多く、今回の 3 症例のうち 2 例でも保
頚椎の不動化も必要となるため、入眠後の気管挿管を選
存的治療で改善している。整復した症例でも時間経過と
択する場合もあるが、事前に画像で上気道狭窄を認識す
ともに改善傾向がみられ、整復手術を行わなかったとし
ることでより安全に気道確保を行うことが出来た。
ても自然治癒した可能性はあるが、整復術により急速に
症状の改善が認められたことから、症状の持続が長期間
に及びそうな症例では整復術の施行も積極的に考慮すべ
きである。
40
気道 A1-5
気道 A1-6
Double-lumen tube
( Portex 社製ブルーライン TM )による
左主気管支損傷の 1 例
偶然発見された喉頭蓋嚢胞合併患者に
対してエアウェイスコープ( AWS )を
使用した 1 症例
1 )岐阜県立多治見病院
2 )愛知医科大学病院
1)
1 )金沢医科大学病院
救命救急センター・麻酔科、
高度救命救急センター
1)
麻酔科、2 )金沢赤十字病院 麻酔科
1)
○山岡祐子 、中村勝彦 2)、土田英昭 1)
1)
○白石大門 、大森隆夫 、三宅健太郎 、
松本卓也 1)、稲垣雅昭 1)、成松紀子 1)、山崎潤二 1)、
山田富雄 1)、間渕則文 1)、中川 隆 2)
分離肺換気は胸部外科手術において重要かつ日常的な
従来の喉頭鏡と比較してエアウェイスコープ(Pentax-
手技であるが、稀に重篤な合併症を惹起しうる。今回、
AWS system、以下 AWS とする)は有用との報告があ
肺癌患者に対し左 S6 区域切除施行中に、double-lumen
る 1 − 3)。しかし、喉頭蓋囊胞合併患者など、口腔内に異
tube( DLT)による左主気管支損傷を認め、縫合修復し
常所見がある場合に関してはその安全性は不明である。
た症例を経験したので報告する。
今回、偶然発見された喉頭蓋嚢胞に対して、AWS を使
用して気管挿管した症例を経験した。
【 症例 】74 歳女性。身長 151㎝、体重 46kg。
胸部硬膜外カテーテル挿入後、全身麻酔の導入を行い、
症例は 69 歳、男性。第 2 頸椎の椎弓根骨折に対して
DLT 左用 35Fr. を挿管した。DLT 先端部が声門通過後、
脊椎固定術が予定された。既往歴に特記すべきことはな
わずかな抵抗を感じたものの円滑に挿入できたが、気管
かった。術前の検査で異常は認めなかった。喉頭部違和
カフを膨らませない状態で換気漏れを認めなかった。そ
感や夜間の鼾など上気道閉塞を示唆する所見はなかった。
の後気管支鏡で左主気管支に挿入した。気管支カフの位
15 年ぐらい前より禁煙していた。頚部の可動にて激し
置を視認しつつ空気を 3cc 入れ、口角 26㎝固定とした。
い後頚部痛を認め、安静のため頸椎カラー装着にて頚部
手術開始前までは両肺換気としていたが、開胸前に左緊
を固定されており、頚部の安静を保つため、喉頭展開操
張性気胸を起こしているような徴候は認めなかった。術
作を必要としない AWS を使用して気管挿管を施行した。
中は 1 回換気量 330㎖でバッキングもなく最高気道内圧
喉頭蓋囊胞を AWS の画面上に確認でき。囊胞の存在を
は 26㎝ H2O 程度で、SpO2 は 96%以上を維持でき、手
認識しながら AWS を操作することができた。
術操作を中断し両肺換気を行うことはなかった。左 S6
AWS は喉頭蓋囊胞合併患者など、口腔内に異常所見
区域切除が終了し、閉胸前のリークテスト時に多量の
がある場合に関しても有用と成り得ると思われた。
リークを認めたため詳細に観察したところ、DLT の先
端部が左主気管支膜様部を裂いて露出し、2nd carina
参考文献
から中枢に向かって約 3㎝長の損傷が見つかり、左主気
1)鈴木昭広ほか.新しい気道確保道具エアウェイスコープの有用
性.麻酔 2007;56:464-8.
管支の縫合修復を行った。
2)Enomoto Y et al. Pentax-AWS, a new videolaryngoscope, is
more effective than the Macintosh laryngoscope for tracheal
intubation in patients with restricted neck movements:a
randomized comparative study. Br J Anaesth 2008;100:
544-548.
修復終了後に DLT を抜去し気管チューブ 7.5㎜に入
れ替え、気管支鏡で修復部を内側から観察し、膜様部の
ひきつれ、狭窄などは認められなかった。術後のガス交
換に問題なく、陽圧換気を避けるため手術室で抜管して、
3)Hirabayashi Y et al. Airway Scope:early clinical experience
in 405 patients. J Anesth 2008;22:81-5.
ICU 管理とした。
【 考察 】DLT による気管、気管支損傷の原因として、
不適切なチューブサイズの選択、粗雑な挿管操作、カフ
の過膨張、気管支カフを膨らませたままでの体位変換、
チューブを何度も動かすこと、気管支鏡の挿入、術操作
による気管支内壁接触面への負荷などが考えられる。
さらに術後管理では、気道内陽圧が加わることを避け
るためできる限り早期に抜管することが望ましい。今回
は幸いにも良好な術後経過であったが、不幸な転帰をと
る場合もあると思われる。
41
呼吸 A2-1
呼吸 A2-2
重度の低酸素血症に比べて胸部 X 線所見に
乏しかった一例
脈波酸素飽和度が 100 % で、
動脈血酸素分圧が 40 mmHg 台を表示した
急性白血病の 1 症例
1 )一宮西病院
名古屋市立大学大学院医学研究科 麻酔・危機管理医学
麻酔科、2 )一宮西病院 呼吸器内科
1)
○猿渡寛子 、澤田圭介 1)、浅野高行 2)、葛西麻由 1)、
若尾政弘 1)、石川 恭 1)
○島田靖子、薊 隆文、須基早紀子、幸村英文、
伊藤彰師、杉浦健之、水落雄一朗、徐 民恵、
播磨 恵、祖父江和哉
【 症例 】44 歳女性、身長 155㎝、体重 60kg。平成 21 年 4
【 はじめに 】われわれは脈波酸素飽和度(以下 SpO2)が
月 28 日昼頃から右の視力障害あり、4 月 30 日受診、右
100%を示しながら、動脈血酸素分圧(以下 PaO2)が
裂孔性網膜剥離の緊急手術目的で入院した。
40mmHg 台を示した症例を経験した。
【 既往歴 】平成 20 年左網膜剥離手術を施行されるも失
【 症例 】急性白血病(白血球数約 50 万 /μℓ)で通院中、
明。同年右副腎摘出術。以前より鼻炎あり。
急性喉頭蓋炎による呼吸困難にて救急外来に搬送され緊
【 麻酔経過 】術前の呼吸機能検査で% VC 134.6 FEV1%
急 気 管 切 開 術 施 行 後 ICU に 入 室。 呼 吸 は PSV、
92.1 と正常。胸部 X 線異常なし。4 月 30 日の全身麻酔
FIO2=1.0 で SpO2 は 100%を示していた。橈骨動脈確保
では覚醒に問題なく手術室で抜管され、翌日の再手術が
後の FIO2=0.35 で測定した血液ガス分析は、pH=7.35、
決定された。翌 5 月 1 日朝 8 時から、前額部痛、後頚部痛、
PaCO2=44mHg、PaO2=45mmHg、BE=-1、SaO2=76%、
呼吸困難あり、SpO2 88%と低下したが、発熱はなかっ
Hb=4.5g/㎗、血清乳酸値 =9㎎ /㎗であった。心拍数は
た。その後は酸素鼻カニューレ 2ℓ / 分にて SpO2 90%
90/ 分で、視診上チアノーゼはなく、末梢は暖かく、利
∼ 94%で推移していた。17 時 46 分手術室入室時のバイ
尿も良好であった。再度、別の血液ガス分析器 2 機種で
タ ル は 心 拍 数 94bpm、 血 圧 125/76mmHg、SpO2 94%
測 定 し た が、 そ れ ぞ れ PaO2=38.6mmHg、57.1mmHg、
(FiO2 0.21)
。急速導入、挿管し、FiO2 1.0 セボフルラ
SaO2=79%、89%であった。胸部 X 線写真上、肺野は
清明で無気肺等は認めなかった。貧血を補正しつつ、
ン 2.5%で維持した。約 15 分後、FiO2 0.33 としたところ、
SpO2 89% と低下、直ちに FiO2 1.0、PEEP8㎝ H2O
FIO2=1.0 で再度測定した PaO2=184mmHg であった。
とした。最高気道内圧は 23㎝ H2O であった。診断のた
また大腿動脈での PaO2=126mmHg であった。いったい
めの胸部 X 線では両肺野に浸潤影を認め、血液ガス分
PaO2、SaO2、SpO2 のどれが正しかったのだろうか ?
析では PaO2 89.5Torr( FiO2 1.0)と低下を認めた。気
【 考察 】白血病による白血球増多にともない白血球が急
管支ファイバーでは左気管支に白色粘調な痰を僅かに認
激に酸素を消費するため擬性低酸素血症を呈するという
めたものの明らかな気道閉塞はなかった。心エコーでは
報告がある一方、増多した白血球が酸素電極を干渉する
心機能良好。採血で WBC31,200、CRP9.4 と炎症反応
という報告も見られる。今回も PaO2 を表示しないこと
がみられ、体温は 38.5 度であった。呼吸器内科医にコ
が 3 回あった。SpO2 のシグナルレベルは良好、血清乳
ンサルト、急性肺炎と診断された。抗生剤を使用、手術
酸値は低く、末梢も温かく低還流は否定的、COHb、
を続行し、覚醒に問題なく抜管。翌日には解熱した。
MetHb の上昇も有意ではなかった。SaO2 は計算値で
【 考察 】一般には吸入麻酔薬による HPV 抑制は臨床上
はなく実測値であった。SaO2 と SpO2 の解離の原因は
不明で検討中である。
問題にならないとされている。今回の症例では FiO2 1.0
で PaO2 89.5 Torr と低値であった。この値は HPV が
【 結 語 】 急 性 白 血 病 で SpO2=100% を 示 し な が ら
抑制されていないと仮定した場合、全肺の 70%以上の
PaO2=40mmHg 台、SaO2=70% 台 の 症 例 を 経 験 し た。
酸素化能喪失に相当し、胸部 X 線所見の程度と明らか
SpO2、SaO2、PaO2 の解離について検討中である。
に矛盾する。そのため HPV 抑制を原因とする低酸素血
症であると考えられた。HPV 抑制の理由として、吸入
麻酔薬の関与が疑われた。
42
呼吸 A2-3
呼吸 A2-4
肺塞栓症を合併した単純子宮全摘術の
麻酔管理
Microwave coagulation による
市立四日市病院 麻酔科
豊橋市民病院 麻酔科
○青山 正、石田祐基、小林 信、野々垣幹雄、
近藤潤夫
○原 真人、青島礼子、河合未来、川口道子、
藤田靖明、間瀬木めぐみ、山口慎也、山田 彩、
中田 純、寺本友三
肝切除直後に急性肺障害となった 2 症例
【 要旨 】術中に発症する急性肺障害の原因は様々であ
深部静脈血栓症、肺塞栓症を合併した患者の単純子宮
全摘術の麻酔経験を報告する。
り、中には原因のわからないものもある。今回、我々は
51 歳女性。特記すべき既往なし。呼吸困難、動悸を
Microwave coagulation(以下 MC)が原因と思われる
主訴に当院 ER 受診。低酸素血症、心エコーで右室負荷
肝切除直後に急性肺障害となった 2 例を経験した。
所見、造影 CT にて肺動脈に血栓像を認め肺塞栓症と診
【 本文 】術中に発症する急性肺障害の原因は様々であり、
断された。同日下大静脈フィルターが留置とヘパリン・
中には原因のわからないものもある。今回我々は MC
ワーファリンによる抗凝固療法が開始された。入院後の
が原因と思われる、肝切除直後に急性肺障害となった症
精査の結果、血栓の原因は子宮筋腫による右総腸骨静脈
例を経験した。
の圧排と考えられ、また血栓の残存を認めた。筋腫は
症例 1:70 歳男性。肝細胞癌にて肝 S6 部分切除術が行
96 × 95㎜、子宮全体が 156 × 110㎜と巨大なものであっ
われた。切離予定の肝表面に MC で先行焼灼を行った
た。術前 2 週間の抗凝固療法により呼吸困難、右室負荷
ところ、その直後より酸素飽和度が低下した。肝切除終
が改善したため、子宮筋腫に対し単純子宮全摘が予定さ
了時点で P/F Ratio は 170 まで低下した。CVP は正常
れた。ワーファリン内服は手術 4 日前に中止し、ヘパリ
で胸部レントゲン写真でも肺鬱血の所見は無く、両肺に
ン持続静注は手術 6 時間前に中止された。
すりガラス状の陰影を認め、急性肺障害と診断。術後
麻酔は全身麻酔で行い、通常のルーチンモニターに加
ICU で好中球エラスターゼ阻害薬を投与、PEEP によ
えて観血的動脈圧測定、中心静脈圧測定、さらに肺塞栓
る陽圧換気により改善を認め、術後 5 日目に呼吸器より
症の悪化を早期に発見するために経食道心エコー
離脱、抜管した。
(TEE)を用いた。麻酔導入後より TEE 上右心系の拡
大を認めたものの、術中は特に異常を認めず予定通り手
症例 2:53 歳男性。大腸癌の肝転移にて肝 S3, S8 部分
術が終了した。術後 2 日よりワーファリンによる抗凝固
切除術が行われた。切離予定の肝表面に MC で先行焼
療法を再開した。
灼を行ったところ、その直後より酸素飽和度が低下した。
本症例では来院時に著明な右心負荷所見、低酸素血症
肝切除終了時点で P/F ratio は 183 まで低下した。CVP
を認めたが、循環動態は破綻せずに保たれていた。この
は正常で、急性肺障害を疑いその直後から好中球エラス
ため内科的治療を十分に行い状態の改善を待って手術を
ターゼ阻害剤の投与を開始した。術後の胸部レントゲン
行うことができた。治療後もエコーにて下肢の血栓の残
写真でも肺鬱血の所見は無く、両肺にすりガラス状の陰
存が認められたため、術中は肺塞栓症の増悪を早期に発
影を認めたため急性肺障害と診断した。ICU での PEEP
見するために十分なモニタリングを行った。
による陽圧換気により徐々に改善。術後 4 日目に人工呼
吸器を離脱、抜管した。
【 結論 】外科的侵襲は preconditioning に過ぎず、感染
やその他の要因が無い限り、ARDS に至るような重篤
な肺障害を引き起こすことは稀である。しかし MC に
より発生した水蒸気が静脈内に流入する可能性、熱凝固
により発生した壊死組織(物質)が静脈内に流入する可
能性があり、それにより急性肺障害を起こすことがある
と考えられる。
今回、我々は MC によると考えられる肝切除直後の
急性肺障害を経験した。
43
呼吸 A2-5
呼吸 A2-6
胃液の大量誤嚥による重症 ARDS に対し
PCPS を導入した一例
気管挿管後に呼気終末二酸化炭素濃度の
値をきっかけに肺塞栓を発見出来た一例
愛知厚生連 海南病院 集中治療部・救急部・麻酔科
名古屋第二赤十字病院 麻酔・集中治療部
○杉野貴彦、原 嘉孝、新美太祐、辻麻衣子、
川出健嗣、松永安美香、野手英明、田村哲也、
中野淳子、坪内宏樹
○古田裕子、寺澤 篤、森友紀子、新井奈々、
高橋徹行、井口広靖、日比野阿礼、小嶋高志、
石田 進、高須宏江
【 症例 】78 歳男性。高血圧症、胃癌手術後、腹部大動脈
【 はじめに 】今回、低位前方切除術後の吻合不全を疑わ
れ、開腹手術目的に全身麻酔を開始した際、気管挿管後
瘤、白内障にて当院通院中。
の呼気終末と動脈血中の二酸化炭素分圧値の解離から、
【 病歴 】夕食後に腰痛と嘔気が徐々に出現し、翌日に当
肺塞栓を発見出来た一例について、ここに報告する。
院救急外来受診となった。
【 経過 】臍周囲に拍動性の腫瘤、造影 CT にて直径 60
【 症例 】66 歳、男性。高血圧、糖尿病、狭心症の既往が
㎜の腹部大動脈瘤と左後腹膜に血腫認め、腹部大動脈
あった。大腸イレウスの診断で入院し、精査の結果、S
瘤破裂と診断し緊急手術となった。術中、術後ともに
状結腸癌と診断した。術前の冠動脈カテーテル検査にて
全身状態安定し、一般病棟にて加療中であったが、第 4
有意狭窄はなしと判明していた。注腸検査後発熱が持続
病日に腹痛、嘔気・嘔吐頻回にあり、正中創哆開を認
し、閉塞性大腸炎の疑いで緊急手術を施行した。硬膜外
め緊急手術を施行した。手術室入室時、酸素吸入して
麻酔併用全身麻酔下にて低位前方切除術、膀胱部分切除
も SPO293%であった。rapid sequence induction にて
術、左精管切除術、左尿管 W-J カテーテル挿入術を施
導入したが喉頭展開時に胃液様吐物を口腔内に認め、挿
行した。術後 8 日目、CT にて仙骨前面膿瘍と肝表面の
管後気管支鏡も行ない両側下葉支に胃液様吐物を認め
free air を認めた。術後 9 日目、吻合部周囲のドレーン
た。その後 P/F ratio45.6 まで低下し酸素化不良であっ
排液の増加や呼吸状態の悪化を認めたため、吻合不全に
た。胃液による誤嚥性肺炎と診断し、術後 ICU 入室と
よる腹膜炎を疑い、全身麻酔下にて人工肛門造設術を予
なった。CT を行ない両側背側肺野に浸潤影を認め重症
定した。
ARDS であった。ARDS に対して sivelestat sodium と
【 経過 】手術室入室後、手術台に移動した直後より更な
steroid を開始したが、FIO2 を増加しても SPO270%台と
る呼吸状態の悪化を認めた。プロポフォール、フェンタ
なり、心臓・脳など重要臓器への酸素供給保てないと
ニルにて麻酔導入し、右内頚静脈から中心静脈カテーテ
判断し PCPS を導入した。しかし PCPS 導入後、自己
ルを挿入した。導入後より外頚静脈の怒張と低血圧を認
心拍出量が十分保たれていたため、右手 SPO2 が 70%台
めた。動脈血液ガス分析にて、高二酸化炭素血症を認め、
となった。心・脳など重要臓器に低酸素血が流入して
呼気終末二酸化炭素濃度との間に著明な解離を認めた。
いる可能性を示唆していた。ARDS に対する open lung
経胸壁心臓超音波検査にて、右心負荷所見を認めた。こ
strategy とともに、自己心拍を抑制する為にβ blocker
れらのことから肺塞栓の存在を強く疑い、手術を一時中
ならびに High PEEP(PEEP25 ∼ 30㎜ H2 O)とし、low
止し、緊急肺動脈造影を行った。
tidal volume 管理も併用し右手 SPO2100%と改善した。
緊急肺動脈造影の結果、左右肺動脈に透亮像あり、血
第 7 病日、自己肺で P/F ratio 317 まで改善し PCPS を
栓が多量に吸引された。一時的下大静脈フィルター留置
離脱することができた。
術施行し、血栓溶解療法を施行した。呼吸状態は徐々に
改善し、肺塞栓診断後 3 日目に人工呼吸器から離脱した。
【 まとめ 】ARDS に対して PCPS を導入する際、自己心
拍出量が保たれることで、重要臓器に十分な酸素が供給
【 結語 】気管挿管後の、呼気終末と動脈血中の二酸化炭
されないことが問題となる。今回、薬剤使用による自己
素分圧値の解離をきっかけに肺塞栓を発見でき、比較的
心拍出量を抑制に加え、High PEEP による心拍出量を
早期の治療を開始できた症例であった。
抑制させることで重要臓器の酸素供給を維持した。さら
に ARDS に対する open lung strategy も同時に実践で
きた。
44
呼吸 A2-7
小児麻酔 B1-1
左肺全摘術後の左肺癌に対し用手的換気法
にて胸腔鏡下肺切除術を管理しえた一症例
小児セボフルラン麻酔導入時の興奮と
入眠後の体動には年齢による差がみられる
大垣市民病院 麻酔科
1 )海の星診療所、2 )水谷痛みのクリニック、
○川瀬美千代、菅原昭憲、加藤規子、高須昭彦、
山森美淑
3 )岩はし内科医院
○小林敏信 1)、北原晃一郎 1)、白川 香 2)、
臼井要介 2)、岩橋美智代 3)
【 目的 】小児セボフルラン麻酔導入時の興奮と入眠後の
肺全摘術後の肺手術の呼吸管理として経皮的心肺補助
体動の年齢による違いを調べた。
装置(PCPS)や高頻度ジェット換気(HFJV)や気管支
ブロッカーを用いた分葉肺換気の報告がある。今回我々
【 対象 】眼科手術を予定された 0 歳から 15 歳までの小児
は用手的換気法にて安全に管理しえたので報告する。
791 名
【 症例 】64 歳女性 7 年前右肺癌に対し右肺全摘術施行。
【 方法 】日帰り手術であるため手術当日来院。前投薬な
3 年前から CT にて左肺 S6 に小結節を認め、増大傾向
しで家族の付き添いのもと手術室に入室し、セボフルラ
と胸膜陥入像が顕著になり胸腔鏡下肺切除術が予定され
ン 8%で麻酔導入し、導入時の興奮・体動と入眠後の体
た。術前の日常生活は飲食業で客の呼び込みをするなど
動・筋硬直の発現頻度を年齢別に調べた。
十分保たれていた。麻酔は硬膜外麻酔併用の全身麻酔で
【 結果 】導入時の興奮は 0 歳では 14%と少ないが 1 歳
行い、空気−酸素−セボフルランにて麻酔維持を行った。
で 最 も 多 く(58%)以 後 2 歳(56%)
、3 歳(47%)
、4 歳
術者である呼吸器外科医と麻酔科医が随時コミュニケー
(42%)
、5 歳(31%)
、6 歳(17%)と年齢とともに減少し、
ションをとりつつ手術開始時より用手的に換気し、胸腔
7 歳以後では 6%とさらに少なくなった。入眠後の体動・
内操作を施行。肺切除時などの操作に応じて換気を止め
筋硬直・痙攣は 0 歳が 14%と少ないが 1 歳(31%)
、2 歳
た。その間 PaCO2 が軽度上昇するも FiO2 0.50 にて
(57%)
、3 歳(67%)
、4 歳(72%)
、5 歳(73%)と増加し、
SpO2 は 100%を保ち低酸素血症や循環虚脱は生じな
6 歳(70%)7 歳(68%)
、8 歳(62%)
、9 歳(52%)と 徐 々
かった。術後の覚醒は速やかで手術室にて抜管、引き続
に減少していくが 10 歳以上でも 30%以上には見られた。
き ICU にて呼吸循環管理を行った。術後経過は良好で
また、入眠後に体動の見られた症例では頻脈と過換気が
翌日一般病棟転棟、第 9 病日退院。
全例で見られた。痙攣や筋硬直、頻脈、過換気の見られ
肺全摘術後の肺手術における用手的換気法は、術操作
た症例でも悪性高熱を疑わせるような体温の上昇は見ら
を妨げない簡便かつ安全な術中呼吸管理法となりうるこ
れなかった。
とが示唆された。
【 まとめ 】導入時の興奮は理解力のない乳児では低いが
1 歳以後年齢とともに我慢することができるようになり
興奮の比率は下がる。入眠後の体動・筋硬直は 0 歳から
年齢とともに増え 5 歳で最も高頻度で起こり、以後減少
するが 10 歳以後でも 30%以上に見られる。機序は明ら
かではない。
45
小児麻酔 B1-2
小児麻酔 B1-3
前縦隔腫瘍により気管狭窄をきたした
小児における全身麻酔と
ブロビアックカテーテル留置術
ラリンジアルマスク−気管支ファイバー補助
による気管挿管を施行した
小児チアノーゼ心疾患の挿管困難症例
岐阜大学大学院医学系研究科 麻酔・疼痛制御学
名古屋市立大学大学院 麻酔・危機管理医学
○岩田賢治、長瀬 清、飯田宏樹、土肥修司
○蓑輪尭久、杉浦健之、太田晴子、山内浩揮、
藤田義人、木村卓二、幸村英文、水落雄一朗、
伊藤彰師、祖父江和哉
前縦隔腫瘍により気道狭窄症状を示す 5 歳男児(105
【 目的 】先天性疾患、とくに顔貌に異常を持つ小児では
㎝、15kg)に全身麻酔下に骨髄生検術とブロビアックカ
挿管困難を予想し、検査所見や臨床症状から気道の評価
テーテル留置術を施行したので報告する。
と気道管理に関するストラテジーを十分検討する必要が
入院時、発熱、湿性咳嗽をみとめ、軽度の動作で呼吸
ある。同時に複雑心奇形を合併している場合には、麻酔
困難を訴えた。また、仰臥位を嫌がり側臥位を好んだ。
導入時の呼吸・循環予備力が小さく、さらに気管挿管の
骨髄生検で、急性リンパ性白血病と診断された。CT で
難度が増す。今回、小児チアノーゼ心疾患の緊急手術に
両肺に肺炎、無気肺及び前縦隔に左右の最大径 10㎝の
際して、気管挿管困難の対処方法として、ラリンジアル
腫瘤性病変を認め、気管は気管分岐部から 3㎝上方まで
マスク(LMA)−気管支ファイバースコープ(BFS)を
圧排され、最狭窄部は気管分岐部直上付近で前後径 5㎜
用いて気管挿管することができたので報告する。
であった。入院 3 日目に全身麻酔の依頼があったが、入
【 症例 】2 カ月の男児、45㎝、2.7kg。染色体異常あり。
院時から投与されたステロイドにより腫瘍が縮小傾向を
両大血管右室起始症、肺動脈欠損症に対して、緊急で修
示しており、さらなる縮小と自覚症状の改善を期待して、
正型 BT シャント術の麻酔管理が依頼された。患児は耳
その 1 週間後に CT で気道の再評価し、全身麻酔を施行
介低位、小顎、小口、眼瞼狭小のある特異な顔貌で、四
した。ステロイド、抗菌薬投与により咳嗽、呼吸困難は
肢屈曲拘縮と外性器異常も合併していた。臨床所見では
消失、
活動性は改善し、
仰臥位でも睡眠できるようになっ
吸気時に異常呼吸音を聴取していた。これらから、術前
た。前縦隔腫瘍は最大径 7㎝に、気管の最狭窄部は 7㎜
に挿管困難症を疑ったが、緊急手術であったため、残念
となった。
ながら CT、MRI などで十分な気道評価を行うことが
麻酔導入はフェンタニル 50㎍投与後に純酸素とセボ
できなかった。手術室入室時、アルプロスタジルを持続
フルラン 5%による緩徐導入を行った。自発呼吸が減弱
投与し、動脈酸素飽和度 60%台。事前投薬は行わず、呼
するとマスク換気に高い換気圧を必要としたが、筋弛緩
吸状態の変化に十分注意しつつ、エアウェイを使用して
薬を用いず気管挿管した。麻酔維持は空気、酸素、セボ
緩徐導入を行った。続いて喉頭鏡を進めたところ、喉頭
フルランで行った。フェンタニルを総量 200㎍投与した。
蓋らしき構造物は確認できたが、4 名の麻酔指導医が代
筋弛緩薬は投与しなかった。手術時間は 2 時間 29 分、
わる代わる行ったが声門は視認できず、盲目的挿管を施
麻酔時間は 3 時間 35 分であった。挿管後から手術終了
行した。呼気ガスモニターで二酸化炭素の排出が十分確
まで気道にトラブルなく経過した。鎖骨下からブロビ
認できず、挿管操作開始から数十秒で酸素飽和度が低下
アックカテーテルを留置した。麻酔覚醒時、体動および
し徐脈になるため、気管挿管をいったん諦め、LMA
自発呼吸出現後、気管チューブ抜去を試み、1㎝ずつ気
# 1.5 の挿入を選択した。LMA は容易に挿入でき、引
管チューブを浅くしていった。しかし、途中で気道閉塞
き続き LMA を通して BFS 下に気管内チューブ内径 3.0
を認めたため、再度気管チューブを深く挿入し、麻酔薬
㎜を挿管した。
リークが多かったため、
最終的にはチュー
の効果が更に消失してから改めて同様の操作を行い抜管
ブエクスチェンジャーを用いて、3.5㎜に入れ替え、手
した。
術を行った。
今回の症例では、前縦隔腫瘍のある小児患者において
【 結論 】チアノーゼ心疾患を有し十分な呼吸・循環予備
呼吸器の自覚症状の消失は適切な全身麻酔実施時期の指
力がない多発奇形を有する患児に対して、LMA と BFS
標にはなりえないこと、麻酔導入には緩徐導入が有用で
を併用して気管挿管することができた。DAM 管理の重
あったこと、導入時換気困難であったとしても十分な観
要性を十分理解し、その準備ができていたため、予備力
察により抜管が可能であることを示した。
の小さな複雑心奇形の新生児に対しても正しく、冷静に
対応できた。
46
小児麻酔 B1-4
小児麻酔 B1-5
バルーンによる血流遮断で腕頭動脈切断の
可否を判断した乳児の麻酔管理
術直後の小児に有効に酸素投与をする
方法の有効性の検討
地方独立行政法人 静岡県立病院機構 静岡県立こども病院
名古屋市立大学大学院医学研究科 麻酔・危機管理医学
○加古裕美、藤永あゆみ、西原紘子、駒崎真矢、
伴 泰考、梶田博史、小川直子、諏訪まゆみ、
堀本 洋
○岡本泰明、薊 隆文、藤田義人、杉浦健之、
有馬 一、平手博之、森田正人、山内浩揮、
徐 民恵、祖父江和哉
症例は日齢 49 日の女児。先天性気管狭窄症のために
【 はじめに 】小児の術後で酸素投与が必要な場合、マス
気管切開されていたが、気管切開部直上に腕頭動脈が接
ク・経鼻カニューラは顔面への接触があり嫌がって手で
しており、そのままでは将来的に気管腕頭動脈瘻を作り、
はずしてしまうことが多い。そこで、経鼻カニューラを
大出血することが予想された。このため、予防的な腕頭
利用し両頬部にテープで固定すると嫌がられないことが
動脈切断術が予定された。
多かった。今回はその酸素投与効率を検証した
術前検査の MRA では Willis 動脈輪の交通が確認さ
【 対象と方法 】健常成人 4 人を対象とし経鼻酸素カニュー
れた。日齢 49 日、体重 2.5kg と小さく、気管切開部と
ラを鼻孔から 3㎝程離したところに来るように両頬部に
術野が近いため、清潔を保った状態での動脈再建は困難
テープで固定した。片方の鼻孔にはガスモニターのプ
であると判断した。脳障害を可能な限り避けるため、手
ローブを装着して酸素 3ℓ/min を投与し、呼気酸素濃度、
術前に右総頚動脈と右鎖骨下動脈の分岐手前でバルーン
呼気二酸化炭素濃度を測定し、肺胞気式「PAO2=PIO2-
を拡張させて腕頭動脈への血流を遮断し、脳血流低下や
PaCO2/R」から吸気酸素濃度を計測した。また、顔を
その代償の程度を見て、手術の可否を判断することとし
横へ向けた状態で FIO2 の変化を検討した。
た。脳血流のモニタリングとしては、
INVOS を使用した。
【 結果 】20 のデータポイントの平均 FIO2 は 27.6%で
右上肢の血流は、右上腕動脈に留置した観血的動脈圧ラ
あった。また、顔を横へ向けたとき平均 FIO2 は 28.2%
インの圧波形、血圧絶対値と動脈血中の乳酸値によって
から 32.2%へ上昇した。
評価した。
血流遮断前には、INVOS(右 / 左)67/68%、右上腕
【 考察と結語 】術直後は一時的な肺胞低換気から低酸素
動脈観血的動脈圧 72/34mmHg、平均血圧 50mmHg であっ
血症になる可能性があり術直後の酸素投与は不可欠であ
た。 バ ル ー ン 拡 張 に よ る 血 流 遮 断 後 に は、INVOS
る。肺胞低換気が原因の低酸素血症では肺胞気式から吸
55/64%、右上腕動脈観血的動脈圧 29/24mmHg、平均血
気酸素濃度の数%の増加でも PaO2 の上昇が期待できる。
圧 27mmHg と右脳・右上肢の著名な血流低下を認めた。
この方法では成人の検討ではあるが酸素濃度の約 7%の
10 分後にも INVOS 58/64%、右上腕動脈観血的動脈圧
増加が期待できた。小児はマスク・経鼻カニューラでは
30/24mmHg、平均血圧 27mmHg と大きな変化を認めな
嫌がってはずしてしまうことが多く鎮静度が高くないと
か っ た が、25 分 後 に は、 右 上 腕 動 脈 観 血 的 動 脈 圧
装着できないが、この方法は顔面を刺激することが少な
31/25mmHg、平均血圧 28mmHg、INVOS 60/65%と徐々
いため簡潔に酸素投与ができる可能性がある。
に INVOS の上昇を認め、それにつれて右上腕動脈観血
【 結語 】小児への術後の酸素投与法を考案した。この方
的動脈圧も上昇傾向を示すようになってきた。このため、
法で充分な吸気酸素濃度が得られることが示された。
右腕頭動脈を切断しても、右脳・右上肢への血流は代償
されると判断した。バルーン拡張から約 1 時間には、右
上腕動脈観血的動脈圧 34/28mmHg、平均血圧 31mmHg、
INVOS 59/63%であった。
手術室へ移動後、腕頭動脈の結索・切断を行った。術
後、覚醒は良好で、体動もみられ、両上肢ともによく動
かしていた。長期的な精神運動発達、右上肢の発育、機
能予後については今後の経過を追っていく必要があるが、
本症例のように、腕頭動脈の血行再建が困難な場合、術
前のバルーンによる血流遮断テストは手術可否の判断の
一助になると思われる。
47
小児麻酔 B1-6
循環 B2-1
遅発性横隔膜ヘルニアを胸腔鏡下に
整復し得た一例
手術終了直後、突然の ST 上昇に続く
心停止をきたした一症例
1 )順天堂大学医学部附属練馬病院、
済生会 松阪総合病院 研修医
2 )順天堂大学医学部附属静岡病院、
○小野 文、車 有紀、車 武丸、宮村一男、
宮村とよ子
3 )順天堂大学医学部附属順天堂医院
○鈴木祥子 1, 2, 3)、矢野絢子 1)、半田敦子 3)、
圓谷直子 1)、中村尊子 1)、田邉 豊 1)、
熊倉誠一郎 1)、菊地利浩 1)、五十嵐海原 2)、
岡崎 敦 2)
横隔膜ヘルニアは、先天性または外傷性に発症する疾
【 症例 】66 歳男性【 現病歴 】吃逆を主訴に受診、胃内
患であり、生後早期や外傷後直ちに手術適応となること
視鏡による生検にて早期胃癌と診断され、腹腔鏡下幽門
側胃切除術が予定された。
【 検査所見 】異常なし
が多い。今回我々は、9 ヶ月の女児が検診で異常を指摘、
【 既往歴・家族歴 】特記事項なし【 社会歴 】喫煙:50
精査後発見された、明かな受傷機転のない遅発性横隔膜
ヘルニアに対し、胸腔鏡下に整復し得た症例を経験した
∼ 60 本 /Day 飲酒:なし【 麻酔経過 】前投薬として
ので報告する。
ドルミカム 2.5㎎を投与し、手術室にて Th9/10 間より
硬膜外カテーテルを留置した。硬膜外麻酔には 1%リド
【 症例 】9 ヶ月女児、身長 71.2㎝、体重 7,245g、在胎 39 週、
経膣分娩にて出生。出生後問題なく経過していたが、
9ヶ
カイン、0.75%ロピバカイン、フェンタニルを使用した。
月検診受診 6 日前より 38.2℃の熱発を認め、近医で抗生
プロポフォール、フェンタニル、ロクロニウムにて導入
剤の処方により経過観察されていた。9 ヶ月検診時に、
し、麻酔維持はプロポフォール、ロクロニウムの持続投
多呼吸、体重増加不良を指摘され、精査目的に当院小児
与を行い、手術開始 30 分後から持続硬膜外麻酔を併用
科を受診、胸部 X 線写真上左肺野に腸管の脱出を認め
した。術中の血圧は 90 ∼ 100/50 ∼ 60mmHg で推移して
た。胸部 CT を施行し、小腸の大部分と脾臓の左胸腔へ
いたが、一度だけ血圧の低下とともに一過性の ST 上昇
の脱出が認められ緊急に胸腔鏡下横隔膜ヘルニア整復術
と wide QRS がみられた。1 分以内にモニター波形は正
が予定された。
常化し、エフェドリン投与にて血圧も回復した。その後
手術終了まで順調に経過したが、閉創直後、覚醒中に再
【 経過 】麻酔前投薬なしに手術室入室した。入室時 BP
び ST の上昇と徐脈を認め、収縮期血圧は 55mmHg まで
87/51、HR 136 回 /min。麻酔導入はチオペンタール 35
低下した。エフェドリン 10㎎、アトロピン 0.5㎎、ボス
㎎、レミフェンタニル 0.2㎍ /㎏ /min を投与し、ベク
ミン 1㎎ IV にても回復せず、その後すぐに心室頻拍か
ロニウム 0.8㎎を投与し気管挿管を行った。麻酔維持は
ら心室細動に移行したため直ちに心臓マッサージを開始
酸素・空気・セボフルランにレミフェンタニルを併用投
し、除細動を行った。一旦は洞調律に復帰したが、徐脈
与した。A-Line を留置後、右側臥位としさらに頭を足
と血圧低下は依然続いておりドパミンの持続投与を開始
より上げ、逆トレンデレンブルグ位とした。手術開始後、
した。その後再び心室細動となり、2 度目の除細動を施
胸腔内圧を 4mmHg から開始、小腸・脾臓をすべて腹腔
行、洞調律に復帰した。その後血圧上昇、洞性頻脈とな
内へ整復させるためは最大で 8mmHg まで胸腔内圧を高
り、ミリスロールの持続投与を開始し、循環動態が安定
める必要があった。また内圧が高まるのに伴い血圧は
後 ICU へ入室した。心エコーでは壁運動の異常や右心
徐々に低下し、入室時より 40%程度の低下を認めた。術
負荷所見はみられなかった。翌日に行われた CAG では、
後は再拡張性肺水腫の危険性を考慮し、挿管管理とし、
冠動脈の狭窄や心収縮異常はみられなかったが、エルゴ
フェンタニル、ドルミカムの持続投与行った。翌日胸部
タミン負荷によって RCA、LCA ともに高度の Spasm
X 線上異常ないことを確認し抜管した。
を生じた。その後胸部症状なく、バイミカード内服にて
【 考察 】本症例はすでに離乳が進み腸管内に食物残渣が
管理を行った。
【 考察 】本症例では、喫煙以外に糖尿病
みられ、胸腔鏡のみで整復するためには胸腔内圧を高め
や高血圧、心疾患の既往などはなく、術前の EKG にも
る必要があった。しかし輸液を負荷することで術中に腸
異常はなかった。麻酔時には硬膜外麻酔による副交感神
管浮腫が助長される可能性や、術後の再拡張性肺水腫の
経優位、内臓牽引による迷走神経反射、過換気、低体温、
発症を考慮して輸液量を最小限にする必要性があった。
循環血液量低下などによって冠血管孿縮が誘発される。
本症例での麻酔管理に関して、術中の血圧コントロール
本症例でもこれらの要素と、術中の血圧が低い値を維持
が課題であったと考えられた。
していたことも一因であったと考えられる。
48
循環 B2-2
循環 B2-3
術直後に冠動脈攣縮をきたした症例
両側 TKA 術後に無症候性心筋梗塞を
発症した 1 例
中部労災病院
岐阜大学医学部附属病院
○開田剛史、白崎礼美、村田洋子、町野麻美、
藤掛数馬、川本英嗣、永坂由紀子、若松正樹
○鈴木友希、飯田美紀、飯田宏樹、土肥修司
【 はじめに 】今回われわれは術前冠動脈狭窄が明らかで
【 症例 】61 歳男性。左肺腫瘍に対して、胸部硬膜外麻
酔併用全身麻酔下に胸腔鏡補助下左肺下葉部分切除術
はなかったにも関わらず、麻酔覚醒時に狭心症を起こし、
が予定された。術前問題点として胆管細胞癌・高血
術後心筋梗塞を起こした症例を経験したので報告する。
圧・喫煙・花粉症・C 型肝炎ウイルス感染症を認め、ベ
【 症例 】72 歳女性。146㎝、65kg。変形性膝関節症のた
ポタスチン・オルメサルタンを内服していた。術前の
め全身麻酔下で両側膝関節置換術を施行した。既往歴に
異常所見として、血液検査で AST・ALT の軽度上昇
肥満、糖尿病、高血圧、右内頸動脈狭窄によるステント
と心電図でⅠ度房室ブロックを認めた。麻酔導入時に
留置があり、
術前内服薬としてアムロジピン、
アテノロー
Thiamylal・Rocuronium・Remifentanil を使用し、麻
ルを内服していた。
酔は Propofol・Remifentanil で維持した。筋弛緩には
術前検査では、安静時心電図、胸部 Xp、経胸壁心エコー
Rocuronium、硬膜外麻酔には 1.5% Lidocaine をそれぞ
で異常は認められなかった。原疾患により激しい運動は
れ適宜追加した。麻酔時間・手術時間はそれぞれ 2 時間
不能であったが、通常の家事、入浴等で狭心症発作を経
33 分・1 時間 14 分であり、術中は特に問題なく経過した。
験したことはなかった。術中血圧は 100 ∼ 140/50 ∼
手術終了後、左側臥位より仰臥位に体位変換を行った際、
70mmHg、心拍数は 60/min 前後で安定して推移し、出血
突如、心電図モニターのⅡ・Ⅲ誘導で ST 上昇を認め
は 180㎖、輸血は 420㎖であった。麻酔からの覚醒時に、
た。直ちに硝酸イソソルビド 0.5㎎・リドカイン 50㎎を
Ⅱ誘導とⅤ誘導にて ST の低下が認められた。そのため
静注し、ジルチアゼム 0.4 γ・ニコランジル 2㎎ /h の持
ランジオロールを投与したが改善せず、引き続きニコラ
続静注を開始した。10 分ほどで心電図波形はほぼ改善
ンジルとプロプラノロールを投与したところ ST は回復
したが ST 変化が軽度残存し、心臓超音波検査でも下壁
した。ニコランジルを継続し CCU へ帰室した。CCU で
運動異常を認めた。約 1 時間後に心臓カテーテル検査を
の心エコーで、左室壁運動異常なく、CK-MB の上昇も
行ったが、冠動脈に有意な狭窄病変はなかった。ST 上
認めなかったため、後日精査予定となった。翌日一般病
昇の原因として冠動脈攣縮(異型狭心症)が疑われたた
棟へ転床し心電図モニタリングを継続していたが ST 低
め、ジルチアゼム・アムロジピン・硝酸イソソルビド徐
下が続くため緊急 CAG を行ったところ、三枝病変を伴
放剤が処方された。その後の経過に問題は生じなかった。
う無症候性心筋梗塞であったため緊急 PTCA となった。
17 日後、胆管細胞癌に対して肝左葉切除術・リンパ
【 考察・まとめ 】冠動脈疾患のリスク因子を周術期の冠
廓清術が予定された。前回のエピソードを考慮して、麻
動脈疾患発症のリスク因子ととらえ精査を行うかについ
酔導入後から硝酸イソソルビドとジルチアゼムの持続静
て明確な基準はない。この症例では全身血管病変のリス
注を開始した。開腹の結果、腹膜播種を認めたため胆嚢
クがあるにもかかわらず、現疾患のため日常生活でほと
摘出術のみで終了した。今回は、術中・術後とも心電図
んど負荷がかかっていなかったことに加えてβ−
変化を認めず順調に経過した。
blocker で心拍数がもともとコントロールされていたこ
【 まとめ 】術直後に冠動脈攣縮(異型狭心症)を発症し
と、糖尿病で冠動脈疾患の症状がマスクされていたこと
た症例を経験した。術前情報のみから発症を予想するこ
により患者の状態が軽く評価された可能性があった。
とは困難であった。突如、モニター上で ST 変化を認め
た場合、心臓超音波検査や 12 誘導心電図で評価を行い
つつ循環動態の安定化に努める必要がある。経皮的冠動
脈形成術も含めた集学的な迅速対応が治療の鍵であると
考えられた。
49
循環 B2-4
循環 B2-5
人工心肺使用下に発症した急性大動脈解離
において頸動脈エコーと経食道エコーにて
脳血流を評価しえた一例
フロートラックセンサーと
プリセップカテーテルを用いた
三尖弁置換術の麻酔経験
名古屋第二赤十字病院 麻酔科・集中治療部
1 )総合大雄会病院
○小嶋高志、新井奈々、井口広靖、日比野阿礼、
高須宏江
3 )岐阜大学医学部
麻酔科、2 )総合大雄会病院 集中治療科、
麻酔・疼痛制御学教室
○高田基志 1)、村田哲哉 1)、加藤真有美 3)、
井上智重子 1)、酢谷朋子 1)、鈴木 照 1)、
山本拓巳 2)、土肥修司 3)
急性大動脈解離において脳血流の評価法は種々存在す
【 はじめに 】心臓外科手術では肺動脈カテーテルの使用
るが、それぞれ利点と欠点を併せ持つ。今回、人工心肺
は一般的であるが、三尖弁閉鎖不全症では右房・右室が
中に発生した急性大動脈解離において頸動脈エコーと経
拡大していることが多く挿入に難渋することがある。フ
食道エコーを用い、脳血流を評価しえた一例を経験した
ロートラックセンサーは動脈圧波形から心拍出量を計算
ので報告する。
するもので、またプリセップカテーテルは上大静脈内の
【 症例 】75 歳女性。僧帽弁閉鎖不全症、三尖弁閉鎖不全
酸素飽和度を測定できる。この 2 つを組み合わせること
症、心房細動にて僧帽弁形成術、三尖弁形成術、Maze
で肺動脈カテーテルの代わりになるのではと考え、三尖
手術が予定された。
弁置換術の麻酔管理に使用したので報告する。
【 症例 】64 歳。男性。身長 158㎝、体重 49.7kg。以前よ
ジアゼパム、レミフェンタニル、ロクロニウムにて麻
酔導入し、手術開始した。
り高度な三尖弁閉鎖不全を指摘され経過観察されていた。
上・下大静脈より脱血、大動脈へ送血にて人工心肺を
今回胸水による呼吸困難が出現。精査の結果手術適応と
使用開始した。大動脈送血管挿入前、術野の傍大動脈エ
された。
コーでは大動脈に粥状変化や石灰化は認められなかった。
【 既往歴 】慢性腎不全による透析(透析歴 6 年)
大動脈を遮断し、左房を切開し、僧帽弁形成術と Maze
【 麻酔経過 】手術室入室後、通常のモニターに加え、フ
手術を施行した。大動脈遮断解除後、心拍再開を待った
ロートラックセンサーを設置した。透析用のシャントが
が、心拍再開せず、左房経由で左室ベントを挿入した。
左手にあったため、右手から挿入する予定であったが、
左室ベントにて左室の虚脱が得られず、直後に、左橈
上行大動脈の石灰化が著しく右鎖骨下動脈からの送血と
骨動脈の動脈圧低下を認め、経食道エコーにて急性大動
されたため、
やむなく左手のシャント部に挿入した。
フェ
脈解離と診断した。すぐに上行大動脈を離断し、真腔へ
ンタニル、ミダゾラムにて麻酔を導入し、ロクロニウム
送血管を挿入し、人工心肺を確立し、全身冷却を開始し
にて筋弛緩を得た後気管挿管した。右内頚静脈からトリ
た。頚動脈エコーにて両側頚動脈に解離を認め、経食道
プルルーメンプリセップカテーテルとダブルルーメン中
エコーにて腕頭動脈と左頚動脈のそれぞれの起始部で偽
心静脈カテーテルを挿入した。さらに右大腿静脈からは
腔にのみ血流が認められた為、右腋窩動脈へ送血管を追
ダブルルーメンブラッドアクセスカテーテルを挿入した。
加し、右頚動脈の真腔へ血流を確保した。超低体温下循
経食道心エコーでは、高度な三尖弁閉鎖不全と中等度の
環停止にて大動脈を観察すると遮断部の大動脈が偽腔の
大動脈弁閉鎖不全、著明に拡大した右房と、左室に比べ
エントリーとなっていた為、上行大動脈置換術を施行し
動きが悪い右室が観察された。手術は、人工心肺を用い
た。置換後、グラフトより送血し右腋窩動脈の送血を終
心拍動下に生体弁による三尖弁置換術が施行された。術
了したところ、頸動脈エコーにて右頚動脈の真腔血流低
前より右心不全があったため大量のカテコラミンを必要
下を認め、グラフトから右腋窩動脈へのバイパスを増設
としたが、動脈圧、中心静脈圧に加えフロートラックセ
し、右頚動脈真腔への血流を確保した。経食道エコーに
ンサーの心係数を参考にしつつ人工心肺から離脱し無事
て解離腔への血流残存と左頚動脈ヘの真腔血流の途絶が
手術は終了した。
観察されたが、これ以上の血行再建は困難と判断し、人
【 考察 】弁疾患とくに大動脈閉鎖不全症がある場合、フ
工心肺を離脱し、手術を終了した。
術後第 2 病日、造影 CT を施行した。CT の所見は術
ロートラックセンサーによる心拍出量は実際のものとは
中のエコー所見と一致していた。
解離するとされている。三尖弁閉鎖不全症については定
かではないが、フロートラックセンサーから得られる
【 結語 】人工心肺中に発生した急性大動脈解離を経験し
データを絶対値としてではなく、相対的な値の変化とし
た。頚動脈エコーと経食道エコーを用い簡便かつ迅速に
てとらえ評価することで肺動脈カテーテルの代わりにな
頚動脈血流を評価でき、体外循環の戦略や術式決定に非
ると考えられた。
常に有用であった。
50
循環 B2-6
循環 B2-7
転移性心臓腫瘍に肺梗塞を伴った症例の
麻酔経験
無症候性 Brugada 症候群患者 2 例に対する
麻酔経験
藤田保健衛生大学病院
社会保険中京病院 麻酔科
○新居 憲、竹田 清、木村直暁
○石川智子、金 日成、田中厚司、斎藤理恵
心臓腫瘍は比較的まれな疾患であるが、その多くは転
【 目的 】Brugada 症候群とは器質的異常を認めずに、心
移性で原発臓器は肺、乳腺、悪性リンパ腫などがあげら
電図上右脚ブロック、胸部誘導に特異的 ST 上昇パター
れている。症状なく経過するものも少なくないが、呼吸
ン、QT と c 時間正常を示す疾患で、致死的不整脈の原因
困難、動悸、心不全などで発症するものもある。今回、
となり、失神発作や突然死をきたす可能性のある疾患で
われわれは腎癌に由来する転移性心臓腫瘍および腫瘍栓
ある。今回、術前の心電図検査で上記の特徴的な心電図
に伴う肺梗塞を伴った症例の腫瘍摘出術の麻酔管理を経
を示し、家族歴、既往に失神歴がないことより無症候性
験した。
の Brugada 症候群と診断された 2 例の全身麻酔管理を
症例は 65 歳女性。腰痛の精査中、右腎腫瘍と診断され、
経験したので報告する。
肺転移、リンパ節転移を認めたため分子標的療法目的で
【 症例 1 】67 歳男性。腰部脊椎管狭窄症に対し、椎弓形
当院泌尿器科に入院となった。入院後の心エコーにて右
成術が計画され、術前検査で Brugada 型心電図を指摘
心室に腫瘤を認め、胸部 CT にて腎腫瘍の転移が疑われ
されたが、失神発作歴は認めなかった。プロポフォー
た。また肺シンチにて多発性肺梗塞を認めたため、救命
ルとフェンタニル、ベクロニウムで導入、途中からは
目的に緊急腫瘍摘出手術が行われた。麻酔導入は血圧変
GOS で麻酔維持をした。
動を抑えるべくフェンタニル、
ミダゾラム、
プロポフォー
【 症例 2 】74 歳男性。胸部食道癌に対し右開胸、胸腹部
ルを用いて行い、右内頸静脈から挿入した Swan-Ganz
操 作 に よ る 悪 性 腫 瘍 手 術 が 予 定 さ れ、術 前 検 査 で
カテーテルの先端は上大静脈内に止めた。経食道エコー
Brugada 型心電図を指摘されたが失神発作歴は認めな
による腫瘍の観察下に手術は行われ、肺動脈・右心室よ
かった。両症例とも致死的不整脈に備え、DC パッドを
り腫瘍にアプローチし右室流出路切開にて腫瘍が摘出さ
装着した。導入は、チアミラールとベクロニウムで行い、
れた。体外循環時間は 1 時間 22 分、人工心肺からの離
ブピバカインによる硬膜外麻酔併用、GOS で維持した。
脱に問題はなかった。転移性心臓腫瘍患者の麻酔管理に
モニター上 ST 上昇と VPC 等不整脈に留意し、過換気
つき、文献的考察を加えて報告する。
を避け、イソプロテレノール、抗不整脈薬としてリドカ
インを準備した。筋弛緩薬の拮抗は慎重に行った。
【 結果 】両症例とも体位変換や症例 2 の縦隔内操作でも
ST 上昇や不整脈の出現は術中を通して認めなかった。
【 考察 】症候性 Brugada 症候群の心室細動発作誘発時
には ST の上昇が関係することが指摘されており、これ
には、副交感神経緊張状態、Ⅰ a 群抗不整脈薬、β遮断
薬の使用、麻酔導入時や術中の迷走神経反射、硬膜外麻
酔、ネオスチグミンの使用などが誘因と報告されている。
術前の問診で家族歴や既往に失神歴のない患者において
も、周術期の不整脈報告例もあり、これら薬剤の使用や
麻酔方法の選択には注意が必要である。
【 総括 】① 今回無症候性 Brugada 症候群の麻酔管理を
経験した。② 致死的不整脈の発生に備えたが、問題な
く麻酔を終了した。③ 症候性・無症候性に係らず、麻
酔中は直ちに除細動できる準備が必要と考えられる。
51
産婦人科麻酔他 C1-1
産婦人科麻酔他 C1-2
右腕頭動脈、左総頚動脈、左鎖骨下動脈起
始部の高度狭窄により脳血流が高度低下した
患者の腹式子宮全摘術の麻酔経験
当院における腹腔鏡下婦人科緊急手術症例
の検討
聖隷浜松病院 麻酔科
1 )岐阜県立多治見病院
○奥井悠介、小久保荘太郎
2 )ハラダクリニック
救命救急センター・麻酔科、
○土屋恵美 1)、安井稔博 1)、大森隆夫 1)、
三宅健太郎 1)、松本卓也 1)、稲垣雅昭 1)、
山田富雄 1)、山崎潤二 1)、間渕則文 1)、原田知和 2)
右腕頭動脈、左総頚動脈、左鎖骨下動脈の高度狭窄に
【 はじめに 】待機的手術では腹腔鏡下手術を行っている
より脳血流が低下していると考えられた患者の腹式子宮
施設でも緊急手術は開腹で行っている施設が多い。当院
全摘術の麻酔を経験したので報告する。
【 症例 】30 歳代、
の婦人科は年間約 400 例の皮下鋼線吊り上げ法による腹
女性、身長 145㎝、体重 57kg、知的障害あり。左内頚動
腔鏡下手術を行っており、このうち約 50 例は緊急手術
脈閉塞による脳梗塞で脳卒中科入院中に子宮筋腫からの
である。今回我々は緊急腹腔鏡下手術が選択された症例
出血が持続し、一時ショック状態になったため、腹式子
について検討した。
宮全摘出術が予定された。
【 既往等 】原因不明の慢性心
【 対象 】2008 年 4 月 1 日から 2009 年 3 月 31 日までに施
嚢液貯留、右腕頭動脈・左総頚動脈・左鎖骨下動脈基始
行された麻酔科管理の婦人科緊急手術 35 例。
部の高度狭窄を指摘され、循環器内科で follow されてい
【 方法 】麻酔記録と電子カルテからレトロスペクティブ
た。
【 経過 】入室時、上肢血圧 72/34mmHg、心拍数 110
に検討した。
回 / 分であったため、心嚢液増加による心タンポナーデ
を疑い、循環器内科に心エコーを依頼した。心嚢液の量
【 結果 】全 35 例のうち 27 例が腹腔鏡下手術、5 例が開腹
に変化はなく、心タンポナーデは否定的であった。その
術、3 例が経膣手術であった。腹腔鏡下手術のうち術中
後、下肢で血圧を測定すると 204/86mmHg と著明な高値
に開腹に移行したものはなかった。
であった。上肢・下肢の血圧差が非常に大きかったため、
患者は 9 歳から 77 歳までの女性で、19 人が 30 歳代、
循環器内科と再検討した結果、上肢血圧が低い理由は右
5 人が 20 歳代であった。腹腔鏡が選択された 27 症例の
腕頭動脈、左総頚動脈、左鎖骨下動脈基始部の高度な石
ASA の PS 分類では概ね class1E または 2E であったが、
灰化によるもので、患者は大動脈炎の遠隔期と推察され
1 例のショック患者を含んでいた。卵巣腫瘍茎捻転 17 例
た。上肢血圧は脳血管の血圧を、下肢血圧は体血圧を示
のうち 16 例が腹腔鏡下手術となったが、来院から麻酔
していると思われ、血圧の低下により容易に脳虚血に陥
開始までの時間は平均 2 時間 56 分であった。これに対
ることが予測された。そのため何らかの脳血流モニター
して子宮外妊娠 7 例と卵巣出血 1 例は全例腹腔鏡下手術
が必要と考えられたが、意識の確認ができることを最も
となり、麻酔開始まで平均 2 時間 20 分であった。腹腔
重要と考え、全身麻酔の予定であったが硬膜外併用脊髄
鏡下手術で輸血を要したのは術中 2 例、術後 1 例で、い
クモ膜下麻酔に変更した。
【 麻酔管理 】Th11-12 から硬
ずれも回収自己血の返血であった。腹腔鏡下手術時間は
膜外カテーテルを留置。ノルアドレナリンを持続投与
最短 15 分、最長 2 時間 10 分、平均は 53 分であった。麻
(0.03 ∼ 0.1㎍ /kg/min)しながら L4-5 より脊髄クモ膜
酔は全例において迅速導入で、GOS+ レミフェンタニル
下麻酔を行った。0.5%等比重ブピバカインを 3.6㎖投与
もしくは AirOS+ レミフェンタニルで維持された。亜
し、手術を開始した。大きなトラブルなく手術は進行し、
酸化窒素の使用率は上半期では 47%、下半期では 44%
手術時間 1 時間 14 分、出血量 412g で手術は終了した。
であった。全例が手術室で抜管できた。開腹術の 5 例全
麻酔時間は 1 時間 32 分であった。術中術後を通して意識
てが術後 5 日以上入院を要したが、腹腔鏡下手術の 27
は清明な状態を保てたが、やはり血圧が低めになると意
例中 20 例は 4 日以内に自宅に退院した。
識が低下する傾向がみられた。また、近赤外線酸素モニ
【 考察 】比較的時間に余裕がない卵巣茎捻転がむしろ麻
ター
(NIRO-200)の値もとくに大きな変動は認めなかっ
酔開始までに長時間を要していた事は意外であった。ま
た。
【 まとめ 】麻酔管理において脳血流を保つことは麻
た亜酸化窒素の使用が漸減している印象があったが当院
酔科医の重要な責務であるが、全身麻酔では患者の意識
ではそれ程でもないことがわかった。
を奪ってしまうため、その評価は血圧や近赤外線酸素モ
ニター
(NIRO)など機械的なモニターに頼らざるを得な
くなる。今回、著しい動脈の石灰化により脳血流が高度
に制限された患者であったが、最も簡便で鋭敏な脳血流
モニターといえる意識を残すことで特に観血的な処置を
することなく良好に麻酔管理を行うことができた。
52
産婦人科麻酔他 C1-3
産婦人科麻酔他 C1-4
肥満細胞腫合併妊娠に対する帝王切開の
麻酔経験
IVR 施行不可能な病院で直視下大動脈遮断
名古屋大学医学部附属病院 麻酔科
岐阜市民病院 麻酔科 医員
○大橋亜希子、鈴木章悟、柴田康之、江間義朗、
西脇公俊
○鬼頭和裕、太田宗一郎、河村三千香、山田忠則、
山下実華、大畠博人
準備下に帝王切開・子宮摘出術を行った
全前置癒着胎盤の 1 症例
肥満細胞腫は過度の肥満細胞の増殖、蓄積による障害
【 はじめに 】全前置癒着胎盤患者の帝王切開術は、大量
として説明される。温度、感染、虫刺症、薬剤などの刺
出血に対する対策を講じることが重要である。出血対策
激により、肥満細胞から特異的なメディエーター
(ヒス
としては、術前の内腸骨動脈オクルージョンバルーン留
タミンなど)が放出されることで、全身の蕁麻疹、アナ
置や胎児娩出後の経カテーテル動脈塞栓術など、IVR
フィラキシー、嘔吐、下痢、腹痛などの症状を起こす。
のテクニックを必要とするものが多い。しかし市中病院
この疾患は稀であり、発生頻度は不明である。手術侵襲
においてルーチンにこれらの対策を行うには限界があり、
や麻酔薬は肥満細胞を刺激する因子として知られており、
十分に対応ができる機関病院への母体搬送が適切である。
モルヒネ、サクシニルコリン、イソフルラン、プロカイ
今回われわれは、当院での出産を強く希望したため、帝
ン、テトラカインなどの麻酔薬により、術中にアナフィ
王切開と複数回の人工妊娠中絶術の既往がある全前置癒
ラキシーや気管支痙攣、心血管虚脱が起こったという報
着胎盤患者に対し、術中直視下に腹部大動脈の遮断準備
告があり、麻酔管理には注意が必要である。今回、肥満
を行い、帝王切開および子宮摘出術を行った症例を経験
細胞腫合併妊娠に対する帝王切開の麻酔を経験したので、
したので報告する。
報告する。
【 症例 】39 歳、女性、164㎝、74kg。分娩歴 4 回(帝王
【 症例 】23 歳、女性。1 経妊 1 経産婦。前回妊娠時、巨
切開 1 回)
、人工妊娠中絶歴 20 回。術前データに特記す
大児、臍帯巻絡のため帝王切開の既往があり、今回の出
べきものなし。妊娠経過中、全前置胎盤を認め、癒着胎
産に対して帝王切開が予定された。前回帝王切開時は、
盤も疑われた(膀胱鏡検査で穿通胎盤は否定)
。大学病
脊椎くも膜下麻酔で行われたが、前投薬、術中使用薬剤
院への転院を強く勧めたが、当院での手術を本人および
等は全て不明であった。術後 2、3 日かけて全身に膨疹
家族が強く希望されたため、妊娠 36 週に帝王切開およ
が出現し、肥満細胞腫と診断された。以後ケトチフェン
び子宮摘出術を予定した。術前に産科、血管外科および
麻酔科で対策を検討した。対策として胎児娩出後の子宮
(H1 ブロッカー)を常用していた。
今回の麻酔経過:前投薬として手術 8 時間前にプレド
摘出前に直視下に総腸骨動脈分岐部直上の腹部大動脈を
ニン 50㎎、ラニチジン 100㎎静注。
同定・テーピングし、いつでも遮断可能な状態にして
麻 酔 は 1% リ ド カ イ ン を 用 い て 局 所 麻 酔 を 行 い、
手術を行うこととした。前投薬は famotidine 20㎎。入
Th12/L1 より硬膜外カテーテルを挿入し、L3/4 より
室後、局所麻酔下に観血的動脈ラインおよび中心静脈
0.5%高比重ブピバカイン 2.5㎖を用いて脊椎くも膜下麻
ラインを留置。麻酔は気管挿管下、全身麻酔で行った。
酔を施行した。術後鎮痛として、硬膜外より、0.15%ロ
thiopental、Suxamethonium、remifentanyl で迅速導入。
ピバカインを持続投与した。術中オピオイドは使用しな
胎児娩出までは酸素・亜酸化窒素・セボフルランで維持
かった。他の薬剤として、エフェドリン、ケタミンを術
し、娩出後は fentanyl、remifentanyl および propofol
中使用した。術中術後を通じて、アナフィラキシー、蕁
で行った。子宮摘出の際の膀胱面剥離時に、止血が困難
麻疹等の問題なく経過した。
となったため大動脈を遮断したところ十分な出血コント
ロールが得られ、手術を終了することができた。出血量
【 総括 】肥満細胞腫合併妊娠に対する帝王切開で、ヒス
は 2,010㎖、輸血量は自己血 1,200㎖であった。
タミン遊離作用のあるモルヒネ、サクシニルコリン、イ
ソフルラン、プロカイン、テトラカインなどの麻酔薬の
【 まとめ 】大量の出血が予測される帝王切開術において、
使用を避け、プレドニン、ラニチジンの前投薬を使用し
IVR 施行が不可能な場合、直視下の大動脈遮断準備は
て、ブピバカインによる脊椎くも膜下麻酔、ロピバカイ
有効な出血コントロール手段の一つであると考えられた。
ンによる術後持続硬膜外ブロックを用いて周術期管理を
しかし機関病院を中心とした母体搬送の緊密な連携の確
行い、アナフィラキシー、蕁麻疹等の問題を発生するこ
立が最も重要であると考える。
となく管理できた。
53
産婦人科麻酔他 C1-5
産婦人科麻酔他 C1-6
両側総腸骨動脈バルーンカテーテルを用い
た全前置胎盤患者の麻酔管理
扁桃・アデノイド切除後の術後出血を契機に
診断された血友病 A の一症例
名古屋大学医学部 麻酔・蘇生医学講座
豊橋市民病院 麻酔科
○尾関奏子、角渕浩央、高尾のぞみ、鈴木章悟、
西脇公俊
○間瀬木めぐみ、川口道子、原 真人、山口慎也、
河合未来、青島礼子、藤田靖明、山田 彩、
中田 純、寺本友三
【 はじめに 】全前置胎盤や癒着胎盤の帝王切開では大量
6 歳、男児。いびきと繰り返す扁桃炎のため全身麻酔
出血が問題となる。今回我々は全前置胎盤、癒着胎盤を
下に両側口蓋扁桃摘出・アデノイド切除術が予定された。
合併した帝王切開 1 症例に際して、出血コントロール目
術前血液検査では APTT60.9 秒と延長を認めたが、血
的で両側総腸骨動脈バルーンカテーテルを留置し全身麻
小板、PT、出血時間は正常範囲内だった。日常生活で
酔で管理した。
出血傾向はなく、停留精巣の手術歴があったが問題な
【 症例 】32 歳女性、1 経産。前回の経腟分娩後に子宮弛
かった。予定手術は問題なく終了したものの、術後 1 日
緩出血のため子宮動脈塞栓術を施行されている。術前の
目、8 日目、10 日目に出血を繰り返し、全身麻酔下に止
MRI にて全前置胎盤、癒着胎盤と診断され妊娠 36 週で
血術を 3 回行った。術後 1 日目の止血術の麻酔導入では
の帝王切開が予定された。手術前に全身麻酔下に泌尿器
多量の血腫と患児の不穏のためマスク換気、挿管に難渋
科医師にて両側尿管カテーテル挿入、次いで放射線科医
した。3 回の止血術を通して嘔吐や血液の気管内への垂
師にて両総腸骨動脈にバルーンカテーテル挿入をするこ
れ込みはなく、3 回目の止血術後には出血は認められな
と、帝王切開後の開腹所見から子宮摘出の予定となった
かった。APTT 再検結果も 41 秒と延長しており、出血
場合に両総腸骨バルーンカテーテルを拡張することと
を繰り返すため精査したところ、第Ⅷ因子活性 7%と低
なった。大量出血の可能性があること、バルーンカテー
下を認め、血友病 A と診断された。その後の詳しい問
テル拡張中はヘパリン化の必要があることから麻酔方法
診でも血縁者に出血傾向のある人はいなかったが、患児
は気管挿管による全身麻酔とした。
の兄も精査の結果血友病 A と診断された。
血友病 A は第Ⅷ因子の活性が低下することで凝固障
【 経過 】導入は急速導入とし、児娩出までは空気、酸素、
害を示す遺伝性疾患である。本症例は血友病軽症に分類
セボフルレン、フェンタニル、レミフェンタニル、ロク
される。今回は凝固因子の補充を行うことなく止血し、
ロニウムで麻酔維持を行った。両総腸骨動脈バルーンカ
輸血も回避できたが、気道確保困難や誤嚥の危険性の高
テーテル挿入時にはバルーンカテーテルの拡張により両
い緊急止血術の麻酔を 3 回も行う結果となった。術前の
総腸骨動脈の血流が低下していることを血管造影して確
血液検査で出血傾向を示す症状がなくても凝固系の延長
認した。麻酔開始から 53 分後に児を娩出し、その後は
を認めることがある。術後出血を起こしやすい術式の場
セボフルレンの投与を中止しプロポフォールによる麻酔
合には、術前検査で APTT 延長があった場合、血友病
維持を行った。開腹所見により子宮摘出が決定されたた
を鑑別診断の 1 つとして精査し、術前に診断をつけてお
め、両総腸骨動脈のバルーンカテーテルを拡張し摘出術
くことが安全に手術を行うために重要である。
を行った。バルーンカテーテルの拡張時間は 54 分、そ
の間両足での経皮的動脈血酸素飽和度の脈波の高さは
4 分の 1 以下となったが値は 99 ∼ 100%であった。出血
量は羊水を含み 1,977㎖、手術中の呼吸、循環動態は安
定していた。手術前のヘモグロビン値は 10.2g/㎗、自
己血 300㎖を返血し手術後のヘモグロビンは 8.6g/㎗で
あった。児は出生直後には自発呼吸が無かったが、小児
科医師による補助換気が行われ出生 6 分後に自発呼吸、
20 分後に啼泣を認めた。母子ともに合併症なく退院と
なった。
【 結論 】全前置胎盤、癒着胎盤を合併した帝王切開に際
して両側総腸骨動脈閉塞バルーンを使用し安全に麻酔管
理を行うことができた。
54
神経 C2-1
神経 C2-2
胸部硬膜外麻酔により一過性に
ホルネル症候群を呈した一例
亀背患者に術後中心性脊髄損傷を認めた
1 症例
鈴鹿中央総合病院 麻酔科
1 )順天堂静岡病院
○冨田正樹、尾本朋美、橋本 宇
○村岡陽大、岡崎 敦、五十嵐海原、宮崎生朗、
神山具也、田中英文、斉藤貴幸、斉藤愛子、
亀田和夏子
胸部硬膜外麻酔後に一過性にホルネル症候群を呈した
今回、潜在的に脊柱管狭窄症のあった亀背患者におい
一例を経験したので報告する。
て、外科手術施行後に C5 不完全型脊髄損傷が発生した
麻酔科 助手、2 )順天堂鈴岡病院
1 症例を経験したので報告する。
【症例】61歳女性、身長152㎝、体重47kg、BMI 20.3kg/
【 症例 】73 才男性、S 状結腸癌・転移性肝癌に対し、S
㎡。右上葉肺癌に対し、胸腔鏡補助下肺葉切除術を施行
した。既往歴に帝王切開があり、糖尿病で内服治療中で
状結腸切除・ラジオ波焼灼術を施行。術前診察の段階で、
あった。
中等度の亀背は認めるが、頚部後屈伸展制限や頚部後屈
時の上肢の痺れは認めなかった。
【 麻酔経過 】左側臥位で Th5/6 間を目標に硬膜外穿刺
【 既往歴 】陳旧性肺結核、高血圧。また、15 年前の左上
を施行し、0.75%ロピバカイン 1㎖のテストドーズを注
入した。レミフェンタニル 0.3 γ、ミダゾラム 2㎎、プ
腕脂肪腫手術時、腫瘍が神経と接していたため、術後、
ロポフォール 3㎍ /㎖(TCI)
、ロクロニウム 40㎎で麻酔
左上肢可動性低下あったが 2 ヶ月で回復ということが
を導入、プロポフォール、セボフルランにより全身麻酔
あった。
を維持した。術中より術後鎮痛のため、0.2%ロピバカ
術中、亀背に対し背部に枕を敷き、右上肢は挙上し、
イン 94㎖ + フェンタニル 6㎖を 5㎖ /hr で持続注入を開
左上肢を外旋・伸展し、上肢の下に枕を敷いた状態で、
始した。手術終了時創痛の訴えはなかったが、左眼瞼に
本人に問題がないと判断した。
軽度腫脹があり、ものが見えにくいと訴えた。しかし、
手術時間は 5 時間 00 分、同一体位持続時間は 5 時間
手術中の左側臥位による症状と考え、硬膜外注入は継続
20 分。退室時、半覚醒の状態で離握手が可能であるこ
した。術後胸部レントゲンにて硬膜外麻酔刺入部を確認
とを確認した。
したところ実際には Th2/3 が刺入点であった。
退室後 2 時間し、十分に覚醒してきた段階で、両上肢
の筋力低下を自覚した。
【 術後経過 】硬膜外持続注入は 5㎖ /hr で継続し、疼痛
コントロールは良好で、ボーラス投与も行わなかった。
翌朝の症状として、両前腕屈曲不可、握力低下、触痛
術後 2 日目になり眼瞼腫脹は軽度改善したが、ものの見
覚(右 > 左)低下、両前腕位置覚低下が認められた。
えにくさは改善しなかったため眼科受診したところ、視
頚部 MRI 上、C5 後方すべり、C5/6 脊柱管狭窄が認
野、視力に異常はなかった。また眼圧は正常で緑内障は
められ、頚部過伸展に伴う中心性脊髄損傷が疑われた。
否定された。しかし、左眼瞼下垂、左瞳孔軽度縮瞳を認
以後、経過観察により、MMT は右上肢が術直後 2 か
め、ホルネル症候群が疑われた。手術側と反対側にホル
ら 5 へ、左上肢が 2 から 4 へ改善。触痛覚・位置覚回復
ネル症候群を認め、胸部硬膜外麻酔によるホルネル症候
したが、左前腕と右指先の痺れが残存。痺れに対し、リ
群と診断した。診断と同時に硬膜外チューブを抜去し、
ボトリールおよびガバペンの内服で経過を見ている。
経過を観察したが、左眼症状は翌日朝には軽快し、その
【 考察 】手術終了後、中心性脊髄損傷が発生した。術直
後同様の症状は見られなかった。また、本症例では眼症
後、麻痺は右上肢優位だったが、その後左上肢の障害が
状のほかに明らかな脳神経症状は認められなかった。
優位に残存したことから、中心性脊髄損傷に加え、左上
【 結語 】胸部硬膜外麻酔後に一過性にホルネル症候群を
肢過進展に伴う末梢性神経障害も起こったものと考えら
呈した一例を経験した。胸部硬膜外麻酔によるホルネル
れる。対策として、覚醒時に術中維持する体位を長時間
症候群は頻度が低く、一過性で良性の合併症であるが、
取り、患者に問題ないことを確認することも必要なのか
まれに他の脳神経症状を伴うことや、高位ブロックを示
もしれない。亀背と脊柱管狭窄症の合併に明らかな関連
す所見であり注意を要する。硬膜外麻酔合併症としての
性は明らかではないため、症状のない亀背患者全例に脊
ホルネル症候群の頻度や発生機序、鑑別診断などに関し
椎 CT/MRI を撮影することは、予防として有効かもし
て文献的考察を加えたい。
れないが、時間的、経済的な点から現実的な対策とは言
えない。
55
神経 C2-3
神経 C2-4
術前の MRI 検査で脊髄係留症候群と
わかった患者の麻酔経験
Becker 型筋ジストロフィー患者に対する
ロクロニウムの使用経験
浜松赤十字病院 麻酔科
1 )福井大学
○小幡良次
2 )市立敦賀病院
医学部 附属病院 麻酔科・蘇生科、
○清水久美子 1)、川上浩文 2)、重見研司 1)
脊髄係留症候群は、脊髄終末が何らかの原因で仙骨尾
【 はじめに 】Becker 型筋ジストロフィー症患者に発症
側に固定係留されることで神経障害を生じる症候群であ
した自然気胸に対する胸腔鏡手術を、硬膜外麻酔を併用
る。多くは幼少期に発見されるが、本症例のように思春
して、少量のロクロニウムと、通常量のプロポフォール
期以降に発見される成人症例もある。
およびレミフェンタニルを用いた静脈麻酔にて良好に麻
酔管理ができた症例を経験したので報告する。
【 症例 】50 歳 女性 身長 151㎝、体重 57 kg
【 症例 】26 歳男性、身長 160㎝、体重 39kg、小児期より
【 既往歴 】高血圧
Becker 型筋ジストロフィーと診断された。歩行は不可
【 現症 】乳腺腫瘍と右卵巣腫瘍、子宮腫瘍に対して手術
能だが、座位は保持でき車椅子にて移動されていた。同
目的で入院した。
胞に Becker 型筋ジストロフィーを認めた。今回、胸痛
術前検査で膀胱壁にも異常が認められたため、経尿道
が出現し、胸部 X 線写真にて左自然気胸と診断され胸
的膀胱生検を泌尿器科医による各科麻酔(脊椎麻酔)で
腔ドレーンの挿入にて改善がみられ一旦退院となったが
予定された。しかし、婦人科で数日前に行われた MRI
再発を認めたため、全身麻酔下に胸腔鏡下肺部分切除術
検査で下位仙骨まで脊髄が存在しいていることが判明し、
が予定された。
全身麻酔に急遽、変更した。砕石位での 30 分の手術で
あった。5 日後の開腹婦人科手術と乳房手術は、全身麻
【 結果 】側臥位の保持が可能なため、導入前に硬膜外麻
酔で行い、術後疼痛には iv-PCA を用いた。6 時間半に
酔を行い、導入は、プロポフォール Target Controlled
及ぶ仰臥位開脚位を伴った手術であった。術直前の診察
Infusion(TCI)3.0㎍ / ㎖、 レ ミ フ ェ ン タ ニ ル 0.4㎍ /
で、患者は若い頃より排尿が他人より時間がかかるとの
kg/min を使用し、ロクロニウムは、まず 5㎎と少量か
自覚があったが、脊髄係留症候群を疑わせる所見はな
ら使用した。2 分後に Train of four( TOF)48%であっ
かった。麻酔はプロポフォールとレミフェンタニルで行
たため、ロクロニウム 10㎎を追加し、さらに 2 分後に
い、術中は問題なかったが、術後に膀胱機能障害を生じ、
は TOF0%と十分な筋弛緩を認め、ダブルルーメン
残尿のため現在も自己導尿を行っている。患者へは、脊
チューブにて気管挿管し、人工呼吸器管理とした。麻酔
髄が仙骨まであること、今後、麻酔を受ける際には脊椎
維持は、硬膜外麻酔(0.2%ロピバカイン 3㎖ /h)を併用
麻酔を避けるように説明した。
し、プロポフォール TCI 2.0-5.0㎍ /㎖、レミフェンタ
ニル 0.1-0.4㎍ /kg/min にて行い、ロクロニウムは、適
【 考察 】脊髄係留症候群は、無症状のこともありその場
宜 TOF 比を確認したが回復は認めなかったため、追加
合の発見はきわめて難しく、気がつかず脊椎麻酔を行う
投与しなかった。術中は、経過に問題はなかった。手術
こともある。本症例では、術前の MRI 検査が役立ち、
終了時、プロポフォール、レミフェンタニルを中止、10
脊椎麻酔を避けて全身麻酔で行った。周術期の留意点と
分後には自発呼吸が再開し、開眼を認めた。自発呼吸は
して、脊髄の過剰進展が悪影響を及ぼすため体位も注意
十分で TOF84%と回復を認めたため、リバースは行わ
深い配慮が必要であった。
ず抜管した。手術時間は 1 時間 8 分、麻酔時間は 2 時間
【 結論 】術前の MRI 検査で初めて脊髄係留症候群と判
40 分であった。術後経過は良好で、術後 11 日目に退院
り、脊椎麻酔を避け全身麻酔を行った症例を経験した。
となった。
【 総括 】Becker 型筋ジストロフィー症患者の胸腔鏡手
術に対し、硬膜外麻酔を併用した静脈麻酔を行い、
TOF 値を指標として少量のロクロニウムを使用するこ
とによって、覚醒遅延や過度の筋弛緩状態をきたすこと
なく、安全に麻酔管理することができた
56
神経 C2-5
神経 C2-6
Angelman 症候群と BIS 値 0
遠位型ミオパチーに合併した胆石症の
麻酔経験
聖隷三方原病院
山田赤十字病院
○濱野 剛、高田知季、金丸哲也、赤池達正、
藤本久美子、加藤 茂、岸本容子、成瀬 智、
岩切聡子
○紀之本将史、中川裕一、原 祐子
【 はじめに 】進行性筋ジストロフィーは進行性の筋力低
Angelman 症候群は重度精神発達遅滞、てんかん、脳
波異常、小頭や巨舌・下額突出をもつ特異的な顔貌など
下、骨格筋の萎縮などを主徴とする遺伝性疾患であり、
を特徴とする遺伝的疾患である。
臨床症状、遺伝形式、予後などが異なるいくつかの病型
症例は、31 歳女性。身長 151㎝、体重 39kg。反復性
がこれまでに報告されている。骨格筋だけでなく、心筋
誤嚥性肺炎の診断で全身麻酔下での気管支鏡検査が予定
や脳、呼吸筋などに異常を伴うことがあり、麻酔管理上
された。Angelman 症候群によるてんかんに対して抗
の問題点は多い。今回、遠位型ミオパチー
(遠位型筋ジ
てんかん薬を内服していた。麻酔はレミフェンタニルを
ストロフィー)の麻酔症例を経験したので報告する。
0.25㎍ /kg/min. で持続投与開始後、プロポフォール 2.0
【 症例 】45 歳、女性、身長 155㎝、体重 70kg。既往歴と
㎎ /kg で導入。ロクロニウム 20㎎を投与し筋弛緩を得
して、16 歳頃より遠位筋優位の筋力低下を認め、25 歳
て気管挿管をした。以後、レミフェンタニルを 0.25㎍ /
より遠位型ミオパチーと診断されている。術前の意識は
kg/min.、プロポフォールを 4㎎ /kg/hr. で持続投与し
清明。心電図、心エコーは共に正常範囲で、心不全、呼
麻酔を維持した。導入前の覚醒時から Bispectral index
吸不全の既往もなかった。神経学的には、体幹の筋力は
(BIS)値のモニターを行った。安静開眼状態での値は
概ね問題ないものの、
四肢筋力は低下しており両手関節・
98 であった。しかし、導入直後より BIS 値は 0 まで低
足関節より遠位はほぼ麻痺状態であった。
下した。BIS モニターの示す脳波は平坦であった。筋電
胆石症に対し、腹腔鏡下(吊り上げ式)胆嚢摘出術が
図の混入はなく、Signal quality index も高値であった。
予定された。
過鎮静と考え、レミフェンタニルの投与を中止したが、
【 麻酔 】前投薬として、ミダゾラム 3.0㎎を筋注した。
BIS 値は 0 ∼ 10 で推移した。更に、プロポフォールの
導入はプロポフォール、レミフェンタニルで気管挿管、
投与速度を 2㎎ /kg/hr. に変更したが、BIS 値に変化を
術中はプロポフォール、レミフェンタニルで維持し、筋
認めなかった。気管支鏡検査を開始直後に、BIS 値は
弛緩薬は使用しなかった。呼吸機能は良好であったので、
60 まで上昇したため、レミフェンタニルを 0.1㎍ /kg/
抜管は手術室で行い術後 ICU 入室とした。
min. で投与を再開した。数分後に BIS 値は 0 まで低下
した。その後も、BIS 値は 0 ∼ 90 の間を変動した。術
【 考察 】筋原性疾患においては、吸入麻酔薬、筋弛緩薬
者より気管支鏡検査のため自発呼吸を出現させて欲しい
の使用には十分な注意を要する。脱分極性筋弛緩薬では
との依頼があったため、プロポフォール・レミフェンタ
高カリウム血症による心停止、また非脱分極性筋弛緩薬
ニルの持続投与を中止した。中止 20 分後に、自発呼吸
では感受性の亢進による筋弛緩作用の遷延などが問題と
が出現し、気管支鏡検査は終了した。この間も、BIS 値
なる。今回の症例は、吊り上げ式ということもあり筋弛
は 0 ∼ 90 の間を変動した。充分な自発呼吸を確認し、
緩薬は用いず、プロポフォール、レミフェンタニルのみ
麻酔覚醒後に抜管した。抜管時の BIS 値は 96 前後であっ
を用いて導入・維持することにより麻酔管理を安全に行
た。また、帰室まで BIS 値をモニターし続けたが値に
うことが可能であった。
大きな変化はなかった。
Angelman 症候群を合併した 31 歳女性の全身麻酔中
に BIS 値 0 まで低下した症例を経験した。若干の文献的
考察を加えて報告する。
57
特殊疾患麻酔 D1-1
特殊疾患麻酔 D1-2
家族歴から悪性高熱の素因が疑われた
患者の麻酔経験
術中異常高血圧を呈し、術後に
異所性褐色細胞腫と診断された 1 例
名古屋第一赤十字病院
小牧市民病院
○高川奈央、長谷川和子、後藤衣津子、上野由衣、
中島万志帆、北尾 岳、小栗幸一、横田修一
○萩原伸昭、吉野博子、中島基晶、中川 哲、
佐野敏郎
【 症例 】54 才、男性。179㎝、60kg。健診で血尿を指摘
父親が悪性高熱と診断された 7 ヵ月の男児の麻酔を経
され、CT 上右腎門部に 4㎝大の腫瘍があり下大静脈へ
験したので報告する。
の浸潤も認めたため、右腎摘出術が予定された。
【 現病歴 】3 カ月検診で右停留精巣と指摘されたため手
【 既往歴 】自然気胸、痔ろう、それまで高血圧を指摘さ
術となった。
れたことはなかったが、術前の血圧は収縮期血圧が
【 既往歴 】特記すべきことなし。
150-170mmHg と高値であり降圧薬の内服が開始された。
【 家族歴 】父親が 20 歳代のとき全身麻酔をうけて悪性
【 麻酔経過 】手術室入室時より血圧が 185/108mmHg と
高熱症と診断された。
高値であった。硬膜外カテーテルを Th9-10 より挿入し
【 麻酔経過 】手術室入室 30 分前に前投薬としてミダゾ
た。導入はチアミラールとベクロニウムで行った。この
ラム 5㎎を経口投与した。入室後ルート確保しプロポ
間も収縮期血圧は最高 260mmHg まで上昇した。維持は
フォール、ベクロニウム、レミフェンタニルで導入し気
酸素、空気、セボフルラン、プロポフォールで行い硬膜
管挿管した。術中はプロポフォール、レミフェンタニル
外より 0.33%ロピバカインを投与した。手術開始後も血
にて麻酔を維持した。術中は体温上昇もなく順調に経過
圧は高値のままで収縮期血圧が 250mmHg まで上昇した
し、抜管、退室した。
ためニカルジピン投与、ジルチアゼム持続静注を開始し
【 術後経過 】術後も体温上昇もなく順調に経過した。
た。それでも血圧の低下がみられないため、褐色細胞腫
【 考察 】本症例は術前より父親が悪性高熱症と診断され
の存在の可能性も考えフェントラミン持続静注も開始し
ていたため、麻酔法および麻酔薬は慎重に選択した。手
た。腫瘍は腎臓からは離れているが、右腎静脈、下大静
術中は悪性高熱を疑わせる症状を発症せずに経過したが、
脈に浸潤していた。下大静脈を遮断した時点より収縮期
悪性高熱誘発の危険がある薬物を避けても 100%安全で
血圧が 60mmHg 台まで急激に低下したためノルアドレナ
はないとの報告もあるため術中・悪性高熱を早期に発見
リンを使用した。腫瘍は腎と一塊にして摘出され、手術
できるように種々のモニターに気を配り管理した。
終了時にはノルアドレナリンも中止でき、循環動態は落
ち着いていた。術後すぐに抜管し、術後経過も問題なく
【 結語 】術前に父親が悪性高熱症と診断されている患児
退院した。
にプロポフォール、ベクロニウム、レミフェンタニルを
術後の病理診断では異所性褐色細胞腫であった。尿中
用いて麻酔を行い、良好に経過した。
のカテコラミンは、アドレナリン:26.7㎍ /day、ノル
アドレナリン 356.2㎍ /day と上昇を認めた。
【 結語 】術中に治療抵抗性の異常高血圧を認めた場合、
その鑑別診断として未診断の褐色細胞腫の存在は考慮さ
れなければならない。
58
特殊疾患麻酔 D1-3
特殊疾患麻酔 D1-4
胸腺摘出後に呼吸管理を要した
全身型重症筋無力症患者の麻酔経験
stiff-person 症候群に対する胸腺摘出術の
大垣市民病院 麻酔科
日本海員掖済会 名古屋掖済会病院
○加藤規子、高須昭彦、菅原昭憲、川瀬美千代 ○木村哲朗、時政 愛、牧 愛子、河野伸一、
丹羽和哉、島田智明
麻酔経験
【 はじめに 】Stiff-person 症候群(SPS)は、全身性筋固
我々の施設では全身型重症筋無力症の拡大胸腺摘出術
に対してハイドロコルチゾンを導入時 500㎎、手術後
縮と発作性有痛性筋痙攣を主症状とする稀な疾患である。
200㎎、1POD.2POD に 300㎎用いて周術期クリーゼを
今回 SPS 患者の胸腺摘出術に際し、全身麻酔にて管理
予防しているが、術後呼吸管理を要した 2 例を経験した
を行った症例を経験した。
ので報告する。
【 症例 】56 歳女性、166㎝、46kg。2 年前にⅠ型糖尿病
を発症した。1 年前より右上下肢固縮が出現し、BZP 系
【 症例 1 】64 歳男性
4 ヶ月前に眼瞼下垂にて発症、2 ヶ月前より全身型に
薬剤で症状が改善する点、抗 GAD 抗体陽性等から SPS
移行し Osserman 分類Ⅱ a、胸腺腫合併型に対して拡大
と診断された。3 ヶ月前より複視が出現し、精査の結果、
胸腺摘出術を施行。術前ピリドスチグミン 180㎎にて症
重症筋無力症を伴う胸腺腫、両側乳癌が認められた。今
状改善していた。
回胸腺腫に対して全身麻酔下胸腺摘出術が予定された。
麻酔は導入前より TOF モニター装着し、フェンタニル
【 麻酔経過 】硬膜外カテーテル挿入後、プロポフォール、
100㎍、プロポフォール80㎎で入眠、就眠時 TOF100%
レミフェンタニルを用いて麻酔導入を行った。気管挿管
よりセボフルラン4%用いたが TOF 減弱せずロクロニウ
に際し、筋弛緩薬は使用しなかった。プロポフォールは
ム10㎎にて TOF1-3となり挿管。維持は笑気(50%)セボ
TCI にて BIS 値が 40-60 の範囲になるように調節した。
フルラン(0.5-1%)
硬膜外麻酔を用いた。術中 TOF1-
胸腺摘出までは、主にレミフェンタニルにて鎮痛を行い、
45%だったが手術操作に影響はなかった。デクスメデト
手術後半よりアナペインの硬膜外投与を開始した。手術
ミジンにて鎮静し挿管のまま退室した。1POD に抜管し
終了時にプロポフォール投与を中止した。麻酔からの覚
たが4POD に再挿管となった。
醒は良好であり、十分な換気量が得られたため抜管した。
ICU 入室後も経過は順調であり、術翌日に一般病棟に
【 症例 2 】62 歳女性
転棟となった。
2 年前より眼瞼下垂と筋力低下にて発症した Osserman
分類Ⅱ a、非胸腺腫合併型に対して拡大胸腺摘出術を施
【 考察 】SPS では 60%以上の患者でグルタミン酸から
行。術前はピリドスチグミン 120㎎とリウマチの合併が
GABA に変換する酵素である GAD に対する抗体が認
ありプレドニゾロン 5㎎を内服していた。麻酔はフェン
められる。抗 GAD 抗体によって筋紡錘へのγ運動
タニル 100㎍、プロポフォール 80㎎で導入し、維持は笑
ニューロンが機能不全に陥り、中枢神経内で運動神経の
気(50%)セボフルラン(0.6-2%)
レミフェンタニル
異常興奮が誘発される機序が示唆されている。また糖尿
(0.1-0.25㎍ /kg/min)を用いた。術中 TOF2-4 だった。
病や重症筋無力症等の自己免疫性疾患や乳癌等の悪性腫
術後速やかに覚醒し抜管したが 3POD、5POD に再挿管
瘍を合併することもあり、本症例でも認められた。SPS
となった。
患者に対する麻酔では、吸入麻酔薬とバクロフェンとの
2 症例とも挿管後ステロイドパルス施行。その後呼吸
併用で筋力低下を生じた報告や、筋弛緩モニター下での
状態・筋力安定し抜管した。現在術後約 4 ヶ月経過しプ
筋弛緩薬投与においても換気量不十分であり、抜管困難
レドニゾロン 30㎎内服加療中である。
であった報告等がある。本症例では、筋弛緩薬を使用せ
ず、BIS モニターを使用し適切な麻酔深度を保つことで
安全な麻酔管理を行うことができた。
【 結語 】SPS 患者においては、全身麻酔に用いる各種薬
物が術後の筋緊張に影響を及ぼす可能性があり、慎重な
投与が必要である。
59
特殊疾患麻酔 D1-5
特殊疾患麻酔 D1-6
脊髄性筋萎縮症患者の全身麻酔の一症例
筋ジストロフィー合併患者の
緊急開腹胆嚢摘出術の全身麻酔経験
1 )沼津市立病院
JA 静岡厚生連 遠州病院 麻酔科
麻酔科、
2 )現順天堂大学付属順天堂医院
麻酔科
○石井裕子、永田洋一、八角康裕
○若林彩子 1, 2)、萩谷雅人 1)
【 目的 】我々は脊髄性筋萎縮症患者(以下 SMA)の卵巣
【 緒言 】23 年前に筋ジストロフィーを発症し、両肩関節・
腫瘍摘出術を硬膜外併用全身麻酔により良好に管理しえ
両股関節脱臼を有する患者の緊急開腹胆嚢摘出術の全身
たので報告する。
麻酔を経験したので報告する。
【 症例 】患者は 34 歳女性、身長 145㎝、体重 49kg、生
【 症例 】73 歳女性。身長 138㎝、体重 47kg。50 歳∼筋
下時から筋力低下があり、つたい歩きは可能であったが
ジストロフィー、胸腰椎圧迫骨折があり、ピリン系でア
独歩は困難で、現在まで車椅子移動である。4 歳時に筋
レルギー
(膨疹)の既往がある。急性胆嚢炎に対し、全
生検施行し脊髄性筋萎縮症の診断となった。
身麻酔下で緊急開腹胆嚢摘出術が予定された。胸腰椎圧
今回は平成 20 年 10 月上旬に下腹部腫瘤感を自覚し、
迫骨折による高度の側弯に加え、両肩関節と両股関節
当院産婦人科を受診した。卵巣腫瘍の診断にて全身麻酔
の脱臼、胸鎖関節の脱臼とを認め、両上下肢は強度屈
下での摘出術が計画され、当科に麻酔相談となった。
曲・外旋位にて拘縮していた。緊急手術のため術前肺
診察時の所見では、呼吸筋麻痺、球麻痺症状等を認め
機能検査は施行されていなかった。フェンタニル 0.2㎎
なかった。
とプロポフォール、エスラックス 10㎎で導入し、7.0㎜
血液・尿検査は正常範囲内であった。
normal チューブで挿管した。麻酔維持はセボフルレン
心電図はブルガダ型の不完全右脚ブロックであった。
による悪性高熱症のリスクを考慮し、TIVA で行った。
高校生の時に僧帽弁逸脱症の指摘をされたとのことで循
術前の血液ガス分析で BE9.6 と高値だったため、ダイ
環器科にコンサルトしたが、心エコーで EF74%、明ら
アモックス(アセタゾラミド)を投与、また術中に筋
かな逸脱はなく軽度 flattering を認めるのみであった。
弛緩モニターを使用した。手術時間 1 時間 39 分。麻酔
胸部レントゲン写真において脊椎の側弯が認められた
時間 2 時間 27 分。覚醒時は自発呼吸がしっかりしてお
が、肺機能検査では% VC81.2%、一秒率 81.9%と呼吸
り、血液ガス分析にて BE1.7、pCO2 60.8 から BE1.3、
機能は保たれていた。
pCO2 51.4 と改善が見られたことを確認した後、抜管。
麻酔を終了した。
【 方法 】前投薬は投与せず。L1-2 から硬膜外腔にカテー
テルを留置した。筋弛緩モニターを装着してから、導入
【 結語 】今回、重症の筋ジストロフィーの緊急開腹手術
を開始した。プロポフォール 90㎎を静脈内投与し、就
における全身麻酔を経験した。麻酔維持を TIVA で行
眠後ロクロニウムを 10㎎ずつ追加投与した。20㎎投与
うことにより悪性高熱症のリスクを回避することが出来
した時点で TOF の消失が確認され、気管内挿管を行
た。また、導入後アセタゾラミドを投与して BE を是正
なった。維持は筋弛緩薬の使用を最小にするよう硬膜外
することによって早期抜管が可能であった。筋ジストロ
併用の GOS で行い、術中は筋弛緩薬の追加を必要とし
フィーの患者にとって筋力低下は致命的であり、術後早
なかった。
期離床のためにも早期抜管は重要であると考えられた。
手術終了後、自発呼吸の出現が確認され、拮抗薬投与
後、筋弛緩が元に戻ったことを確認して抜管となった。
その後 ICU に入室して経過をみたが、意識清明で呼吸
苦も認めず、翌日普通病棟に帰室した。
【 結果 】SMA 患者は、脊髄前角の運動神経細胞の変性
疾患であり、筋弛緩に対する反応が通常とは異なること
が予想された。我々は筋弛緩モニター下に必要最小限の
筋弛緩薬使用で安全に麻酔管理を施行することができた。
60
合併症 D2-1
合併症 D2-2
脊髄くも膜下麻酔後に下肢の痺れが遷延し、
転移性脳腫瘍の存在が判明した一例
気道確保困難に緊急経気管ジェット換気が
有効であった一例
富山大学付属病院麻酔科
1 )名古屋市立大学大学院
○坂本菜摘、釈永清志、竹村佳記、山田正名、
山崎光章
2 )名古屋市立東部医療センター東市民病院
医学研究科・危機管理医学、
○佐藤範子 1)、平手博之 1)、幸村英文 1)、伊藤恭史 2)、
服部友紀 1)、南 仁哲 1)、高柳猛彦 1)、加古英介 1)、
志田恭子 1)、祖父江和哉 1)
【 症例 】69 歳男性、身長 170㎝、体重 73kg。膀胱腫瘍に
近年、さまざまな機器の開発により、difficult airway
対して脊髄くも膜下麻酔と両側閉鎖神経ブロック下に経
management は 少 し ず つ 変 化 し て き て い る と 考 え
尿道的膀胱腫瘍切除術が施行された。上行結腸癌の既往
る。当院においてもラリンジアルマスク(LMA)やエ
があり、58 歳時に結腸右半切除術、59 歳時に肝転移に
アウェイスコープ(AWS)の導入により、意識下経鼻
対して肝右葉切除術、65 歳時に肺転移に対して胸腔鏡
ファイバー気管挿管の機会は減少している。しかしなが
下左下葉部分切除術、67 歳時に胸腔鏡下肺左下葉切除
ら、麻酔導入後、気管挿管もマスク換気も不可能な状態
術の手術歴がある。術前の意識は清明であり、神経学的
[ cannot intubate, cannot ventilate( CICV)
]に陥った
に異常所見はなかった。
場合、きわめて重篤な合併症を起こす可能性がある。今
麻酔経過:L3/4 より脊髄くも膜下麻酔を実施した。正
回、術前評価で麻酔導入後の気道確保が可能と判断した
中穿刺が困難であり、傍正中法で施行した。穿刺時に左
症例において、導入後 CICV の状態となり、緊急経気
下肢にビリーとした感覚の訴えがあり、直ちに脊麻針を
管ジェット換気を行い、経鼻ファイバー挿管に成功した
抜去した。再穿刺により脳脊髄液の逆流を確認し、0.5%
症例を経験したので報告する。
bupivacaine 3㎖を使用した。更に刺激電極およびエコー
【 症例 】69 歳女性。身長 145㎝、体重 38kg。40 年前よ
ガイド下に両側閉鎖神経ブロック(1.5% lidocaine 計 20
り関節リウマチあり、抗リウマチ薬を服用していた。そ
㎖)を施行した。麻酔高はピンプリックで両側 Th5 以下
のほか特記すべき既往はなかった。今回、右大腿骨顆上
であることを確認し、手術を開始した。手術は問題なく
骨折のため、観血的整復術が予定された。術前評価では、
終了し、帰室時の麻酔高は Th9 以下であった。
頚部の多少の後屈制限を認めたが、Mallanpati Ⅰ度で
術後経過:術後第 2 病日においても左下肢の重い感じと
あり、麻酔導入後の LMA による気道確保を予定した。
痺れが継続していた。歩行は可能だが左大腿の挙上が充
フェンタニル 100㎍、プロポフォール 50㎎を投与後、経
分でなく、引きずるように歩いた。術後第 3 病日には左
口エアウェイ使用でマスク換気を確認し、ロクロニウム
下肢の痺れ、脱力感はかなり改善した。左大腿挙上、左
20㎎を投与した。LMA 挿入を試みたが、複数の麻酔専
足の背屈、底屈とも問題なく可能であり、経過観察とし
門医が行ったが、不成功であった。次に、AWS による
て一度退院した。術後第 11 病日に化学療法のため再入
気道確保を試みたが、頚部の後屈制限のためイントロッ
院となったが、この時点で左下肢の痺れは増悪していた
クⓇが挿入不可能であった。さらにファイバー挿管を試
ため、ペインクリニック受診となった。腰椎の精査目的
みるうちに、次第にマスク換気も困難となり、酸素飽和
で CT が予約された。同日深夜、左上肢の痺れと脱力感
度が 90%台前半になったため、応援を求めると同時に
も自覚したため、緊急頭部 CT 検査を施行したところ、
経気管ジェット換気で酸素化を維持した。さらに、筋弛
右前頭、頭頂葉に約直径 15㎜の腫瘍陰影と周辺の浮腫
緩薬を拮抗し、自発呼吸が出現したことで声門の同定が
性病変を認めた。
可能になり、ファイバー下に気管挿管に成功した。手術
終了後は挿管のまま ICU へ入室し、翌日抜管した。
【考察】脊髄くも膜下麻酔の合併症として馬尾症候群や
一過性神経障害(transient neurologic symptoms;TNS)
【 考察とまとめ 】CICV が発生する確率は、0.01%とい
が有名である。本症例では当初脱力感と痺れが左下肢に
われているが、発生すると極めて重篤な合併症をきたし
限局していたことから、脊麻針による神経根損傷もしく
うる。本症例のような場合、術前評価をさらに慎重に行
は馬尾神経損傷を想定していた。しかし、頭蓋内病変で
うべきであり、事前の十分な計画と準備が重要であると
も単麻痺を呈する病態があることを認識し、本症例のよ
考える。
うに悪性疾患の転移の既往歴がある場合には頭蓋内病変
を疑うことも必要と考えられた。
61
合併症 D2-3
合併症 D2-4
プロポフォール・フェンタニル全静脈麻酔後
に生じた後弓反張発作が長期化した 1 症例
内視鏡下経皮的気管切開時に経口気管
チューブを適切に引き抜く方法の紹介
金沢医療センター 麻酔科
名古屋市立大学大学院 医学研究科 麻酔・危機管理医学
○横山博俊、太田敏一、野竹理洋、岸槌進次郎
○比嘉悠子、笹野 寛、島田靖子、山内浩揮、
森田正人、平手博之、水落雄一朗、薊 隆文、
伊藤彰師、祖父江和哉
【 はじめに 】プロポフォールによる全身麻酔後にてんか
【 はじめに 】経皮的気管切開は器具の進歩とともに、安
ん様痙攣発作を一時的に生じる症例の報告が近年認めら
全性および管理の容易さが増し、集中治療領域で広く施
れるようになった。今回、プロポフォール・フェンタニ
行されている。手術操作を確実に施行し安全性を高める
ル全静脈麻酔覚醒時に後弓反張発作を認め、これを契機
方法として、挿管チューブの先端を輪状軟骨近くまで引
に頸部体幹ジストニアを生じ、長期間の入院を余儀なく
き抜き切開部の気管内を内視鏡で観察することが知られ
された症例を経験したので報告する。
ている。ただし、経口気管チューブ先端を適切な位置ま
【 症例 】31 歳女性。20, 21 歳時に先天性緑内障にて手術
で引き抜くための具体的な方法について述べられる機会
の既往有り。右下の智歯の痛みの訴えが有り、4 本の智
は少ない。内視鏡で観察しても、引き抜き過ぎて経口気
歯の抜歯目的で全身麻酔を受ける。麻酔の導入はプロポ
管チューブが抜けてしまい換気不能になることや、不十
フォール、フェンタニル。麻酔の維持もプロポフォール
分にしか引き抜けず、気管切開部よりも尾側しか観察で
とフェンタニルで行い、酸素と空気で換気を行っている。
きないため、ガイドワイヤー挿入前に不必要な穿刺を繰
3 時間 40 分の手術時間にプロポフォール 1,200㎎、フェ
り返すこともある。
ンタニル 0.8㎎、筋弛緩薬としてロクロニウム 65㎎を使
適切な位置まで引き抜けない理由は、内視鏡で得られ
用。手術終了後 15 分後に抜管し、その 2,3 分後より、後
る画像情報だけでは輪状軟骨から気管支までの間のどこ
弓反張様のてんかん様体動が現れた。ジアゼパムの投与
に先端があるのか正確に判断できないことが原因である
により、痙攣発作は消退するが、10 分ほどすると再度
と考える。我々は、安全性を高めることを目的に、経口
痙攣発作が生じる。意識レベルの回復も遅れ、反応も弱
気管チューブ先端においた気管支ファイバースコープ光
く、話し言葉がうまく出てこない状態。翌日には会話は
源の光を前頚部皮膚を通して観察することを利用し、経
普通になったが、頸部の硬直が取れず、後弓反張発作が
口挿管チューブを適切な位置まで引き抜く方法を用いて
しばしば生じる状態が継続する。ベット上での座位保持
いるので報告する。
困難、歩行困難、尿失禁もみとめる。CT, MRI では特
【 症例 】集中治療室内で 2009 年に経皮的気管切開を施
に所見を認めない。結局、後弓反張発作はかなり長く継
行した 4 例。全例で前頚部皮膚を通して光源の光を観察
続し(数ヶ月)現在も完全に消退していない。入院の長
することができた。4 例のうち最大の BMI は 25 であった。
期化とともに精神科的症状も顕著に認めるようになった。
【 考察 】気管支ファイバースコープの光源の光を観察す
歩行障害は次第に改善し、約 7 ヶ月後に退院となった。
るだけで、経皮的気管切開の際の経口気管チューブの引
【 総括 】プロポフォールによる全身麻酔後に後弓反張を
き抜きがより安全で確実に施行できた。現段階では症例
認め、頸部硬直、歩行障害および精神症状をともなう複
数が少なく、短頸や BMI か著しく高い症例での有効性
雑な病態が 7 ヶ月以上にわたって継続した 1 例となった。
は不明であるが、部屋を暗くし光源の光を分かりやすく
する工夫などを加えれば大部分の症例で有効であると考
える。
【 結語 】内視鏡下経皮的気管切開時に経口気管チューブ
を適切に引き抜く方法として、チューブ先端においた気
管支ファイバースコープ光源の光を前頚部皮膚を通して
観察することは有効であると考える。
62
合併症 D2-5
合併症 D2-6
劇的な経過をたどった
急性広範性肺血栓塞栓症の経験
術後両下肢不全麻痺を呈したが独歩退院した
破裂性腹部大動脈瘤症例の周術期管理
1 )横浜栄共済病院
1 )独立行政法人国立病院機構
2 )金沢大学医学部附属病院
麻酔科、
麻酔科蘇生科
静岡医療センター 麻酔科・
集中治療部、2 )同 心臓血管外科
○津田和信 1)、橋本和美 1)、松久大希 2)、紺崎友晴 1)、
野村俊之 1)
○小澤章子 1)、今津康宏 1)、小林利恵 1)、野見山延 1)、
真鍋秀明 2)、高木寿人 2)、梅本琢也 2)
【 症例 】70 歳の男性。腹部大動脈瘤破裂と診断され搬送
【 症例 】69 才、女性。長時間の電車による旅行中、全身
倦怠感、呼吸苦を認めたため近医を受診したところ精査
された。既往に糖尿病、心筋梗塞があった。血圧 79/38、
目的に当院紹介となった。来院時、労作時呼吸困難は認
心拍数 80bpm、下肢は大理石紋様を呈し意識は JCS Ⅱ
めていたが意識は清明でバイタルに問題はなかった。
-30 でショック状態で救急外来から直接手術室に入室し
CT 検査により肺動脈本幹から左右肺動脈主幹部にまた
20:30 に緊急腹部大動脈人工血管置換術(腎動脈下遮断)
がる肺血栓を認め、急性肺血栓塞栓症と診断され即日入
を施行した。
院となった。入院当初バイタルが安定していたため、ヘ
【 術中経過 】麻酔は気管挿管後、フェンタニルの間欠投
パリン 10,000 単位 / 日とワーファリン 2㎎ / 日による抗
与とプロポフォールの持続注入を行なった。手術時間
凝固療法により保存的に治療されていたが、翌日心肺停
5 時間、臓器血流維持のため PGE1 と phentolamine を
止状態で倒れているところを発見された。直ちに心肺蘇
持続注入し、収縮期血圧は 85 ∼ 130、心拍数は 80 ∼ 100、
生を開始したが反応が不良であったため PCPS を導入
尿 量 は 2,000㎖、 動 脈 血 BE は 初 め -11.0 で NaHCO3
し ICU 入室となった。ICU 入室時 JCS:300 で瞳孔は
投与で一時的に改善したが手術終了時は -12.0 であっ
散大していたが救命のため肺血栓摘除術が施行された。
た。多量の後腹膜血腫と腸管浮腫により abdominal
手術は人工心肺下で肺動脈を切開して直接血栓を除去し
compartment syndrome の可能性が高くパッチを用い
た。麻酔時間 5 時間 25 分、手術時間 3 時間 40 分、人工
て閉腹した。
心肺時間 1 時間 12 分。術後、循環動態・呼吸状態は著
【 術後経過 】第 1 病日、両下肢の不全麻痺(American
明に改善し手術第 1 日目に PCPS 離脱、第 6 日目に人工
spinal cord injury association score:motor key
呼吸器を離脱することができた。また意識レベルもやや
muscles 両側 13/22、light touch 右 1/10、左 2/10、pin
不清明な面はあったが会話可能なレベルまで回復し、術
prick 右 2/10、左 4/10)を認め、血管拡張薬の持続注入
後第 14 日目に ICU を退室することができた。
を継続し、脊髄くも膜下ドレナージ、メチルプレドニゾ
【 考察 】肺塞栓症は年間 10 万人当たり 60 から 70 例発生
ロンの大量投与(2㎎ /kg/min を 15 分間投与後、5.4㎎
するといわれている。一般的に抗血栓療法を中心とした
/kg/h を 23 時間投与)
、早期リハビリを開始した。第 2
内科的治療が有効な場合が多く、外科的治療を必要とす
病日には motor key muscles 両側 15/22、light touch
る症例は多くない。循環不全やショックを呈した症例で
両 側 3/10、pin prick 両 側 4/10 と な り、 第 4 病 日 に
は早急に閉塞肺動脈を再開通させるため外科的血栓摘除
motor key muscles 両側 17/22、light touch 両側 9/10、
術が適応となる。手術成績の報告では手術死亡率が 23
pin prick 両側 8/10 と改善したため脊髄ドレナージを抜
∼ 37.5%であり術前に心肺停止となった症例ではさらに
去した。その後、閉腹し第 71 病日より歩行訓を開始し
不良になるといわれている。広範性肺血栓塞栓症では診
独歩退院した。
断前に突然循環虚脱となり外科的治療まで持っていくこ
【 考察 】糖尿病の動脈硬化にショックで脊髄血流が低下
とすら困難な場合が多く、発症後 48 時間以内に 75%が
し下肢麻痺をきたした可能性が高いと判断し、脊髄くも
死亡するとされている。今回われわれは術前に一旦心肺
膜下ドレナージ、大量ステロイド、血管拡張薬と輸液に
停止となりながらも迅速に PCPS 導入を導入し、外科
よる血流維持を行ない、麻痺は改善し良好な結果を得た。
的治療を行うことにより救命し得た急性広範性肺血栓塞
栓症の症例を経験したので報告する。
63
神経ブロック E1-1
神経ブロック E1-2
リアルタイム超音波ガイド下中心静脈穿刺に
おける Head Mount Display の利用
高齢者の圧迫骨折に対する脊髄神経後
枝内側枝高周波熱凝固術 10 症例の検討
名古屋市立大学大学院 医学研究科 麻酔・危機管理医学分野
岐阜大学医学部 付属病院
○松本 麗、笹野 寛、有馬 一、森田正人、
加藤利奈、鈴木悦子、秋吉瑠美子、竹入由賀、
大橋 智、祖父江和哉
○宮本真紀、山口 忍、鷲見和行、飯田宏樹、
土肥修司
【 目的 】高齢者の圧迫骨折症例に対する脊髄神経後枝内
【 はじめに 】リアルタイム超音波ガイド下中心静脈穿刺
側枝高周波熱凝固術の有用性を検討した。
は従来の盲目的穿刺と比べ、成功率が高く、合併症の発
生率が低下するとされ、特に小児などの細い血管穿刺に
【 方法 】当院の電子麻酔記録より 2004 年 6 月から 2009
有用性が高いと考えられる。われわれはモニターを穿刺
年 5 月までの過去 5 年で対象症例を抽出した。対象症例
者の目の前に配置する工夫として、超音波装置の映像外
は 60 歳以上の圧迫骨折症例で腰背部痛に対して脊髄神
部 出 力 に 頭 部 装 着 型 デ ィ ス プ レ イ(Head Mount
経後枝内側枝高周波熱凝固術施行した症例とした。圧迫
Display、以下 HMD)を用い、セカンドモニターとして
骨折の診断は脊椎レントゲン、CT、MRI で行った。
利用しているので報告する。
【 結果 】脊髄神経後枝内側枝高周波熱凝固術施行症例は
【 方法 】超音波画像診断装置 iLook 25 Ⓡ(Sonosite Inc.)
153 症例(のべ人数)であり、60 歳以上は 56 症例であっ
に HMD、Teleglass T3-A Ⓡ(Scalar Inc.)を接続した。
た。うち、圧迫骨折症例は 19 症例・10 名(60 歳代は 1 名、
Teleglass T3-A Ⓡを眼鏡型フレームに取り付け穿刺者
70 歳代は 4 名、80 歳代は 5 名)であった。単回施行人数
が装着し、リアルタイム超音波ガイド下穿刺を行なう。
は 6 人、複数回施行人数は 4 人であった。1 回の治療で
【 考察 】穿刺操作を容易にするために、モニターを穿刺
の平均施行部位は 2.7 箇所で第 3 腰椎、第 4 腰椎、第 2
者の目の前に配置することはときに困難である。目の前
腰椎での施行が多かった。著効症例は 5 例、有効症例は
に配置しない場合、穿刺者がモニター上のエコー画像情
2 例、不変症例は 3 例であった。重大な合併症を認めた
報とエコープローブ部皮膚刺入部の情報の両者を統合す
症例はなかった。
るには視線を大きく移動させる必要があり、穿刺操作を
【 総括 】高齢者の圧迫骨折症例は疼痛のために活動性が
難しくする要因のひとつとなる。HDM を使用すること
低下することが多く、活動性の低下による二次的な筋力
により、穿刺中に超音波装置と穿刺野との間で視野移動
低下をきたすことも稀ではない。一方、腰痛が早期に軽
がなくなり、穿刺野とエコー画像を同一視野で捉えなが
快することができれば、筋力低下も最小限にとどめ、通
ら穿刺でき、リアルタイム超音波ガイド下穿刺の精度を
常の生活により早く復帰することが可能である。
高める可能性がある。しかし、HMD は片目のみで映像
今回、当院で施行した高齢者の圧迫骨折症例に対する
を見るタイプで、穿刺野とエコー画像を統一して捉える
脊髄神経後枝内側枝高周波熱凝固術では良好な成績をお
ためにはトレーニングが必要になる場合がある。
さめていた。高齢者の圧迫骨折症例に対する脊髄神経後
枝内側枝高周波熱凝固術は、効果的な治療法と考えら
【 結語 】リアルタイム超音波ガイド下中心静脈穿刺の際
れる。
に HMD をセカンドモニターとして使用した。繰り返
し利用し、慣れることでより正確な穿刺が可能になるか
もしれない。
64
神経ブロック E1-3
神経ブロック E1-4
人工膝関節手術の術後鎮痛における
硬膜外麻酔と IV-PCA の比較
乳癌手術における硬膜外麻酔の必要性の検討
地方独立行政法人 静岡県立病院機構 静岡県立総合病院
地方独立行政法人 静岡病院機構 静岡県立総合病院
○鈴木みどり、佐藤徳子、中右麟太郎、川島裕也、
渡辺 薫、三村真一郎、藤井俊輔、渥美和之、
青嶋由紀江、横山順一郎
○中右麟太郎、佐藤徳子、川島裕也、鈴木みどり、
渡辺 薫、三村真一郎、藤井俊輔、渥美和之、
青嶋由紀江、横山順一郎
【 目的 】これまで当院での人工膝関節手術の術後鎮痛は
【 目的 】当施設においては乳癌手術の際に硬膜外麻酔併
硬膜外麻酔を使用してきたが、以下の理由により昨年
用全身麻酔をこれまでおこなってきた。一方で硬膜外麻
10 月より IV-PCA を使用している。
酔ができない患者において内服薬のみでもそれほど疼痛
当院では肺塞栓・深部静脈血栓症の予防対策として、
を訴えない症例も経験してきた。そこで今回、乳癌手術
一定リスク以上の患者に対して術後に抗凝固療法を行っ
における硬膜外麻酔併用全身麻酔による術後鎮痛の有効
ている。人工関節手術はほとんどの場合高リスクに分類
性を検討した。
され、抗凝固療法が行われる。
【 方法 】2009 年度の一定期間に当施設で行われる乳癌手
これまでは低分子へパリンであるカプロシン R を使用
術症例のうち、ASA Ⅰ∼Ⅱ、年齢 20 ∼ 75、に該当す
しており、術後の硬膜外カテーテル抜去は次回投与の直
る症例約 40 例を対象とした。症例は硬膜外併用全身麻
前に行い、抜去後 2 時間は投与を行わない方法で行って
酔群と全身麻酔単独群に無作為に分類し、硬膜外併用全
いた。
身麻酔群には術後鎮痛を目的に 0.2%ロピバカイン 100
しかし、昨年 10 月より人工関節手術においてはフォ
㎖を 2㎖ /h の速度で硬膜外持続注入した。全身麻酔単
ンダパリヌクスナトリウム(アリクストラ R )を使用す
独群では術後鎮痛のため術中よりフェンタニルの投与を
ることとなり、本剤使用に当たっては硬膜外血腫の危険
行なった。術中における全身麻酔薬はプロポフォールを
性から硬膜外麻酔の併用が推奨されていない。
使用し、レミフェンタニルを併用した。患者が疼痛を訴
このため、術後鎮痛として IV-PCA を使用すること
えた場合の対応は両群ともに NSAIDs などの補助鎮痛
とし、今後、硬膜外麻酔と同等、もしくはとって代わる
薬を使用し、硬膜外への局所麻酔薬のボーラス投与は行
術後鎮痛となりうるか、その有用性を比較検討した。
わなかった。補助鎮痛薬の投与は原則として患者が鎮痛
を希望した場合とした。
【 方法 】2008 年 4 月以降の硬膜外麻酔群、IV-PCA 群そ
れぞれ約 20 症例を対象に、それぞれ術後鎮痛の程度、
抜管後・術後 24 時間後の疼痛スコア、術後 1 日目ま
他の鎮痛剤使用の有無、嘔吐・掻痒感などの副作用の有
でに使用された鎮痛薬の回数を調べた。その他、悪心、
無について後ろ向きに調査した。以上を集計し結果を報
嘔吐、血圧低下、などの副作用の有無についても検討し
た。また、24 時間後の患者自身の疼痛管理の満足度を 1:
告する。
非常に満足、2:満足、3:やや不満、4 不満の 4 段階で
評価した。
以上の結果を集計、検討し、文献的考察を加えて報告
する。
65
神経ブロック E1-5
神経ブロック E1-6
神経ブロックおよび中心静脈穿刺を訓練する
ための電気回路を用いた超音波ガイド
下穿刺シミュレーターの試作
当院における透視下鎖骨上アプローチによる
腕神経叢ブロック法( 第 2 報 )
1 )福井大学医学部付属病院
金沢医療センター 麻酔科
2 )福井大学医学部器官制御医学講座
○横山博俊、太田敏一、野竹理洋、岸槌進次郎
麻酔科蘇生科、
麻酔・蘇生顎領域、
3 )福井大学医学部付属病院 集中治療部
○次田佳代 1)、上田雅史 2)、佐藤倫祥 1)、
三田建一郎 1)、松木悠佳 1)、信川泰成 3)、
田畑麻里 1)、重見研司 2)
【 目的 】当院における透視下鎖骨上アプローチによる腕
末梢神経ブロックや中心静脈穿刺において、超音波ガ
イド下穿刺が近年使用されている。末梢神経ブロックは、
神経叢ブロック法は症例数が 330 例を超えたので、その
優れた鎮痛効果や少ない副作用、術後の早期回復などの
成績を報告する。
利点がある。さらに、抗凝固療法を受けている患者が増
【 方法 】患者の頭部は低めの枕の上で真っ直ぐに天井に
えており、硬膜外麻酔の代わりに末梢神経ブロックが選
向ける。消毒後、皮膚に局所麻酔を施行する。イメージ
択される機会が増えている。より安全で確実な鎮痛効果
透視下に鎖骨の直上(約 0.5 ∼ 1.0㎝)の第一肋骨のほぼ
を得るためには、超音波ガイド下神経ブロックが有用で
中央を狙う。針は 22G、5㎝の神経ブロック針を使用す
ある。一方、中心静脈穿刺では、超音波ガイド下に行う
る。針はゆっくりと進め、もしパレステジアを得た場合
ことで、動脈穿刺を避けることができる。しかし、神経
は、針を少し戻し、パレステジアのない場所に進める。
や血管などの目標物と細い穿刺針を同時に描出するため
針は必ず第一肋骨上に着地させ、局所麻酔薬を外回り看
に、厚さ 1.5 ないし 2.0㎜しかない超音波ビームの間に
護師に注入してもらう。薬剤は 1.5%メピバカイン 20㎖、
穿刺針を進め、針先を確実に描出するには習熟を要する。
0.75%ロピバカイン 10㎖の計 30㎖で、症例により多少
このように超音波ガイド下穿刺を安全に施行するために
変更する。造影剤による確認は行っていない。
は、あらかじめシミュレーションする必要がある。今回、
【 結果 】最初の 70 例までに不成功例 3 例を認めたが、そ
我々は電気回路と寒天を使用し、超音波ガイド下神経ブ
の後麻酔効果の発現を 30 分は待つことなどで、不成功
ロックおよび中心静脈穿刺のシミュレーターを作成した。
例をほとんど経験していない。パレステジアは計 12 例
金属の導線を神経や血管に、寒天を皮膚や軟部組織に見
に認めている。パレステジアを得た部位で注入した 1 例
立て、寒天の中に導線を埋め込んだ。超音波ガイド下に
でしびれが約 3 ヶ月継続した症例を経験した。その後は
神経ブロック針(スティムプレックス ®A、ビーブラウ
パレステジアを得た部位での薬剤の注入は行なっていな
ン社製、東京)を進め、導線に接触すると電流が流れ、
い。気胸をおこした症例はない。成功率は約 99%に達
豆電球が光る回路を作成した。これらを使用し、研修医
した。
を中心に練習を行ったところ、概ね好評であった。単に
【 総括 】透視下鎖骨上アプローチ法は湯田康正(前東京
こんにゃくや寒天などを利用しただけでは、目標対象物
がなく、結果のフィードバックが得られないが、目標を
慈恵医科大学ペインクリニック教授)が考案した方法で、
設定した事により達成感が得られ、楽しみながら必要な
手技が容易で、
患者の負担が少なく、
成功率の高いブロッ
手技が習得できると考えられる。また、豆電球や寒天な
ク法である。近年はエコーガイド下の腕神経叢ブロック
ど廉価な材料で作成可能である。加えて目標物の深さや
法が主流となっている。
しかし、
エコーガイド下のブロッ
弯曲など様々なバリエーションも容易に付加でき、実際
ク法には比較的高価な超音波診断装置が必要である。イ
に稀な神経や血管の走行を呈する症例にも対応が可能に
メージ透視装置はどこの手術室にもほぼ備えられており、
なると考えられる。しかし、寒天では腐敗しやすく、再
エコーガイド下の方法に次ぐ第二の手段として有効では
利用もしにくい。穿刺感覚も柔らかすぎるといった問題
ないだろうか。
点もあり、今後改良を加えていく予定である。
豆電球が点灯することで達成感が得られ、安価でバリ
エーションに富んだ超音波ガイド下穿刺シミュレーター
を試作した。これらを用いて事前にシミュレーションす
ることで、必要な手技が効率よく楽しく修得できると考
えられる。
66
疼痛制御等 E2-1
疼痛制御等 E2-2
新型ドクターカー DMERC で出場し緊急手
術に至った症例の検討
集中治療管理において胸部硬膜外鎮痛法が
有用であった 3 症例
1 )岐阜県立多治見病院
独立行政法人国立病院機構 静岡医療センター
麻酔科・集中治療部
2 )愛知医科大学病院
救命救急センター・麻酔科、
高度救命救急センター
○小川雄右 1)、安井稔博 1)、三宅健太郎 1)、
松本卓也 1)、稲垣雅昭 1)、成松紀子 1)、山田富雄 1)、
山崎潤二 1)、間渕則文 1)、中川 隆 2)
○小澤章子、今津康宏、小林利恵、井出壮一郎、
野見山延
【 はじめに 】岐阜県立多治見病院麻酔科では、医師自ら
【症例 1 】56 歳の男性、両側多発性巨大肺嚢胞で左気胸に
緊急走行し現場から初期治療を行う医師運転型ドクター
対して小切開下の肺部分切除術を施行した。麻酔は胸椎
カー Doctor-driven Medical Emergency Response Car
5/6 に硬膜外カテーテル留置後全身麻酔を行った。ダブ
(DMERC)を平成 20 年 9 月 1 日から 24 時間運用してい
ルルーメンチューブで分離肺換気を開始したが、直後か
る。今回、DMERC で出場し病院収容後に早期の手術が
ら健側肺のみでは換気不能で両肺換気で手術を終了した。
必要となった症例について後方視的に検討した。
人工呼吸管理を行い第 2 病日に抜管したが、第 3 病日に
【 対象 】平成 20 年 9 月から平成 21 年 5 月までの 9 ヶ月間
喀痰の喀出困難で低酸素状態となり再挿管となった。粘
に、DMERC が出場し当院救命救急センター搬入時か
性度の高い多量の喀痰の排出のために、硬膜外鎮痛法と
ら 6 時間以内に全身麻酔下手術(カテーテル治療を除
肺理学療法を行ない第 9 病日に抜管し独歩退院となった。
く)に至った症例。比較のため前年同期の平成 19 年 9 月
【 症例 2 】67 歳の男性、2m の高さから転落し背部を打
から平成 20 年 5 月の期間に、現在なら DMERC 出場症
撲し、大動脈損傷、左血胸、左第 2 から 7 肋骨骨折で受
例であるが当時通常の救急車搬送された緊急手術症例に
傷翌日に当院に転院となった。ICU 入室時に強い背部
ついても調査した。
痛を訴え、また新たに右肺上葉無気肺を認め、リザー
【 結果 】DMERC 出場の 9 ヶ月間では全 15 例が抽出され、
バーマスク酸素 10 ℓ / 分で呼吸数 26、PO2 93mmHg、
交通外傷 6 例、作業中の外傷 2 例、自傷 1 例、脳血管障
PCO2 50mmHg であった。胸椎 6/7 に硬膜外カテーテル
害 5 例、他院からの転院 1 例であった。ごく早期に緊急
を留置し局所麻酔薬の持続注入と間欠投与及び肺理学療
手術が必要と考えられた症例は 11 例で腹部外科症例 4
法を施行後、酸素化は著明に改善し、翌朝、無気肺は改
例、被殻出血 2 例と急性硬膜外血腫 1 例、四肢断裂 2 例
善した。疼痛の改善に伴い持続注入していた降圧薬が減
と両下肢開放骨折 1 例、顔面外傷 1 例、病院到着から手
量となった。
術開始までの平均所要時間は 2 時間 3 分であった。1 年
【 症例 3 】81 歳の男性、交通外傷で肋骨骨折、血胸を来
前の通常搬送群では、ごく早期に緊急手術が必要となっ
たした。強い背部痛に対して胸椎 6/7 に硬膜外カテーテ
た症例は 14 例あり、病院到着から手術開始までの平均
ルを留置し鎮痛を行ったところ、数時間後に酸素化が改
所要時間が 2 時間 35 分であり、DMERC 出場が行われ
善し降圧薬は不要となった。
ている現在では 32 分短縮されていた。
【 考察 】硬膜外鎮痛法は、意識清明下で深吸気を行える
【 考察 】32 分の時間短縮は、現場で患者把握を行い事前
こと、強い咳そうを行えること、体動の制限がないこと、
に病院への情報伝達により手術までの検査、準備が円滑
痛みの不安が解消され精神的に安定すること、自発的に
に行われ、また病院到着前に静脈路確保や気管挿管等が
動けることが自主的な理学療法につながり、さらに積極
行われていたためで、ドクターカー運用の効果が多少な
的な理学療法を円滑に行えること、消化管運動への悪影
りとも出ているものと考えられる。一方、外傷標準化教
響が少ないことから、呼吸障害患者の疼痛管理には他の
育では防ぎえた外傷死を回避するために受傷から根治療
鎮痛法に比べて有用である。硬膜外鎮痛法を必要とする
法開始までを 1 時間以内とすることが重要であるとされ
症例で、必要な時に適切な部位から適正な穿刺を行える
ているが、今回調査した 11 例でも受傷から手術開始ま
ように、硬膜外麻酔法を中心とした麻酔管理を行いつつ、
で 1 時間以内の所謂ゴールデンアワーが達成できていた
日頃から硬膜外鎮痛法に慣れておくことが重要である。
のは腹部刺創の 1 例のみであった。今後は必要な症例で
集中治療室においては長期留置に伴う感染に注意が必要
は常にこれが達成できる病院前・病院内を統合した地域
である。
救急医療システムの構築を目指したい。
【 結語 】呼吸障害を有する患者の集中治療室での疼痛管
理に、胸部硬膜外鎮痛法は非常に有用であった。
67
疼痛制御等 E2-3
疼痛制御等 E2-4
腕神経叢ブロック後に全身痙攣を起こした症例
フェンタニルパッチ使用中の患者に対する
術後鎮痛で相対的オピオイド過量を生じた症例
浜松赤十字病院 麻酔科
成田記念病院 麻酔科
○小幡良次
○朝田智紀、中尾康尚、大沼哲朗
【 症例 】79 歳男性。身長 165㎝、体重 56kg。虫垂癌、右
【 症例 】29 歳 男性(外国人、日本語は理解不能)身長
165㎝体重 63.5 kg
水腎症を認め、加療目的に入院した。入院直後より疼痛
仕事中にプレス機で左手を挟んで救急外来を受診、緊
に対しフェンタニルパッチ 2.5㎎貼付を開始されたが、
急手術となった。既往歴と術前検査に問題はなかった。
屯用としてモルヒネ内服液 5㎎が頻回に使用されたため、
片言の日本語の話せる知人の立会いのもと整形外科専
入院 16 日目よりフェンタニルパッチが 5㎎へ増量され、
門医が、1%リドカイン 10㎖と 0.75%ロピバカイン 20㎖
手術当日(入院 20 日目)まで継続された。モルヒネ内服
の混合液を使用し、腕神経叢ブロック(腋窩法)を行っ
液はフェンタニルパッチ増量直後に一度使用されたが、
た。腕神経叢ブロック終了とほぼ同時に、全身痙攣と続
その後は使用されなかった。最終のフェンタニルパッチ
いてチアノーゼが出現した。局所麻酔薬注入前の吸引テ
貼付は手術前日であった。
ストでは、血液の逆流はなかったが、注入時に、少し意
【 経過 】フェンタニルパッチは貼付したままで、虫垂癌、
味不明な発言はみられた。麻酔科医が呼ばれた時は、す
腸 閉 塞 に 対 し て 回 腸・ 横 行 結 腸 吻 合 術 を 全 身 麻 酔
でに整形外科医により気管挿管が施され人工呼吸管理が
(AOS+Remifentanil)+ 硬膜外麻酔で施行した。硬膜外
行われていた。しかし、全身痙攣に対して看護師数名で
カテーテルは Th11/12 より挿入された。
患者を押さえている状態であった。直ちに、ジアゼパム
手術開始直後フルルビプロフェン 50㎎を静注した。
10㎎を投与し、痙攣が消失し、循環抑制のないことを
手術は 1 時間 4 分で終了した。覚醒を確認後抜管したが、
確認したのち、全身麻酔で予定手術を開始した。痙攣が
疼痛を認めたため 0.5%塩酸リドカイン 6㎖を硬膜外腔
消失した時のバイタルは Bp110/50、HR110 と安定し
へ注入した。10 分後も疼痛が残存し血圧の高い状態が
ていたが、血液検査では、アシドーシス(PaO2 125,
続いたため、さらに 4㎖を追加注入し退室した。退室時
PaCO2 52, PH 6.96, BE -20.2)が認められた。麻酔は
の SpO2 は 100%であった。
プロポフォールとレミフェンタニルで維持した。手術終
術後鎮痛目的で硬膜外腔へ 0.2%ロピバカインの持続
了時(全身痙攣から約 2 時間 30 分後には)には、覚醒も
投与(4㎖ /h)を行った。
良好であり全身状態に問題は認められなかった。
病棟へ帰室後、酸素吸入(5ℓ/min)下においても
【 考察 】全身痙攣の原因は血管への局所麻酔薬誤注入に
SpO2 が 95%へ低下し、呼吸数 8 ∼ 10 回、傾眠傾向も認
よる局所麻酔薬中毒と考えられた。局所麻酔薬注入中の
めたため、外科主治医の指示にて硬膜外腔への注入は中
意味不明な発言は局所麻酔薬中毒の初期症状の可能性が
止された。中止より 30 分後には SpO 2 98%、呼吸数 12
あったかもしれないが、患者は外国人でコミュニケー
∼ 14 回となり、そのまま硬膜外腔への注入は使用され
ションが困難であり、早期発見を困難にした。
ず、翌朝ジクロフェナク坐剤 25㎎を使用されるまで鎮
痛薬の追加使用はなかった。
【 結語 】局所麻酔薬注入開始から吸引テストを数回、施
行したにも関わらず、腕神経叢ブロックで局所麻酔薬中
【 考察 】今回の症例では術前にフェンタニルパッチを 5
毒を起こしたと考えられる症例を経験した。
㎎へ増量したことにより、十分な除痛ができていたもの
と考えられた。虫垂癌は切除不能であり疼痛の原因は除
去できなかったが、術前からのフェンタニルパッチ使用
中に、硬膜外腔へ塩酸リドカインを注入したことによっ
て相対的にオピオイド過量の状態となり、呼吸抑制や傾
眠といった症状が前面に出現したものと考えられた。
フェンタニルパッチ使用中の術後疼痛管理に関する報
告は少なく、硬膜外麻酔には注意を要する。
68
疼痛制御等 E2-5
疼痛制御等 E2-6
高齢者大腿骨頚部骨折手術の麻酔管理
術中の点滴漏れによりレミフェンタニルが血
管外に漏出し呼吸抑制が遷延した症例
1 )海の星診療所、2 )水谷痛みのクリニック、
富山市民病院
3 )岩はし内科医院
○青山 実、加藤 晋、高木麻里、永川 保、
中西拓郎
○小林敏信 1)、北原晃一郎 1)、白川 香 2)、
臼井要介 2)、岩橋美智代 3)
【 症例 】71 歳、女性、145㎝、51.7kg。頚椎症性脊髄症
【 はじめに 】平均余命の増加と手術、麻酔技術の向上に
より大腿骨頚部骨折の手術がより高齢者にも適応される
に対して頚椎椎弓形成術が施行された。手術時間 4:40、
ようになってきた。今回、高齢者の麻酔管理上の問題点
麻酔時間 6:55、出血量 10g、輸液量 750㎖
を調べた。
【 経過 】麻酔はプロポフォール、フェンタニル(200㎍)
、
ベクロニウムで導入し、酸素、空気、セボフルラン(1.5
【 対象と方法 】大腿骨頚部骨折の診断で骨接合術を受け
た 90 歳以上の患者 36 名に対して術前の状態、麻酔方法、
∼ 2%)
、レミフェンタニル(0.13 ∼ 0.19㎍ /kg/min)で
術式、術中の合併症、術後合併症などを調べた。
維持した。手術終了後、デッキを外し腹臥位から仰臥位
に体位変換した際、点滴刺入部を中心に上肢全体が腫脹
【 結果 】男女比は 4:32 で女性が多い。平均身長は 144.8
㎝、平均体重は 39.2kg。術式は人工骨頭置換術 11 例、
しており術中に点滴漏れしていたことが判明した。吸入
Hip Screw 21 例、γネイル 4 例。年齢以外に危険因子
麻酔薬を中止し 20 分が経過しても自発呼吸が現れな
がなかったのは 10 例のみで残り 26 例は合併症があった。
かった。
呼びかけに対して開眼し、
従命動作は可能であっ
最も多かったのは高血圧で 13 例、他に虚血性心疾患、
たが呼吸状態は不良であった。呼びかけて呼吸を促すと
低酸素血症、糖尿病、貧血、脳梗塞などが見られた。ま
自発呼吸 6 ∼ 7 回 / 分、一回換気量 100㎖∼ 400㎖得ら
た半数以上で認知症がみられた。手術時間は平均 42.5
れたが次第に無呼吸の状態となった。血管外に漏出した
分、麻酔時間は平均 72.3 分。麻酔法は全例、脊髄くも
レミフェンタニルが緩除に血管内に入り呼吸抑制が遷延
膜下麻酔とマスクによる全身麻酔の併用であった。脊椎
していると考え、挿管のまま集中治療室に移動した。挿
くも膜下麻酔は L2-3 または L3-4 穿刺で行われ、使用
管による苦痛の訴えがなかったため鎮静は行わず人工呼
された局所麻酔薬は等比重マーカインを平均 1.6㎖。麻
吸器管理となった。入室後、約 3 時間経過したところで
酔域は不明のことが多いが患肢を動かして痛みがないこ
自発呼吸が出始め、一回換気量、呼吸回数が十分得られ、
とを確認した。高血圧の 3 例を除き 33 例で血圧が低下
また挿管による苦痛の訴えもあり抜管した。点滴漏れし
し昇圧剤が使用された。全身麻酔は酸素・亜酸化窒素・
た側の上肢は腫脹したままであり、遅発性の呼吸抑制の
セボフルランで行った。心停止、呼吸停止など大きな合
出現が懸念されたため呼吸回数の減少、SpO2 が低下が
併症はなかった。術後の鎮痛剤使用は未使用が 13 例、1
みられたらナロキソン投与と用手換気できる準備をした。
回が 21 例、2 回が 2 例で 3 回以上使用した症例はなかっ
しかし抜管後は一度も呼吸抑制はみられなかった。
【 考察 】麻酔導入後、腹臥位に体位変換した際に点滴漏
た。術後は一過性の低酸素血症や高血圧、嘔気・嘔吐、
れが生じたと考えられるが術中は血行動態が安定してお
不穏がみられた。
【 まとめ 】90 歳以上の高齢者では身長が低く体重も少な
り(収縮期血圧 90 ∼ 110mmHg 心拍数 48 ∼ 60 回 / 分)
く麻酔薬は局所麻酔薬、全身麻酔薬ともに量は少なくて
さらに出血量が少なく点滴の速度を遅くしていたことな
よい。脊椎くも膜下麻酔施行時には協力が得にくく麻酔
どが重なり点滴が漏れていることに最後まで気付かな
域もはっきりしないことが多い。術中は不穏になりやく
かった。レミフェンタニルは血液中並びに組織内に存在
す全身麻酔を併用したほうが良い。術後は呼吸循環とも
する非特異的エステラーゼにより、作用が速やかに消失
不安定で注意が必要である。
する薬剤であるが、血管外に漏出し皮下注となった場合
オピオイドの作用が減弱せず、呼吸抑制が遷延する。そ
のため呼吸状態の注意深い観察が必要である。
69
出血等 F1-1
出血等 F1-2
扁桃摘出術後に toxic shock syndrome と
なった 1 例
右腎尿管摘出後、著明な循環不全、多臓器
不全をきたし第 5 病日に死亡した 1 症例
愛知厚生連海南病院
愛知県厚生連江南厚生病院
○近藤麻奈美、田村哲也、中野淳子、新美太祐、
原 嘉孝、川出健嗣、辻麻衣子、野手英明、
松永安美香、坪内宏樹
○安藤侑子、馬淵由衣子、高原知子、赤堀貴彦、
水谷 粋、富永麻里、矢内るみな、藤岡奈加子、
山本康裕、渡辺 博
【 はじめに 】今回我々は、術後早期に非閉塞性腸間膜虚
toxic shock syndrome( 以下 TSS)は、黄色ブドウ球
血を疑った症例を経験したので報告する。
菌や溶連菌が産生した外毒素により、急激な発熱、嘔吐、
下痢、全身性の発疹、眼の充血、低血圧などで発症し、
【 症例 】84 歳、女性。既往に解離性大動脈瘤・著明な右
多臓器不全になりうる症候群である。われわれは扁桃摘
房 / 左房拡大をともなう三尖弁閉鎖不全症 / 僧帽弁閉鎖
出術後、TSS と診断した症例を救命したので報告する。
不全症・心房細動・高血圧・C 型肝炎があり、降圧剤・
【 症例 】41 歳男性。セフトリアキソンにアレルギー歴あ
メチルジゴキシン・ワーファリンなどを内服していた。
り。平成 21 年 6 月某日、習慣性扁桃炎に対し定期の扁
ワーファリンは手術 7 日前に中止し当日早朝までヘパリ
桃摘出術を行った。急速導入し、GOS、レミフェンタ
ン少量投与を行った。麻酔は AOPKS で行い、術中は
ニルで維持した。術中は問題なく、病棟に帰室した。術
経食道エコーなどで循環の評価、心臓内血栓の評価を
後 4 日目に、発熱・嘔吐・下痢・下血が出現し、術後 5
行った。術後は気管挿管下に ICU にて管理した。また
日目、血圧低下、術後 7 日目、Cre7.25㎎ /㎗と急性腎
血栓予防のためヘパリン 5,000 単位 /day の持続投与を
不全となり、ICU 入室となった。ICU 入室時、意識清明、
手術直後より開始した。術後第 2 病日に気管チューブを
収縮期血圧 60mmHg 台、全身の紅斑、眼瞼結膜充血、扁
抜管した。しかし、その直後より不穏や代謝性アシドー
桃摘出部の白苔の付着を認め、CRP42.91㎎ /㎗であっ
シスの進行を認めたため、再び鎮静・気管挿管を行うと
た。TSS と考え、人工呼吸管理、ノルアドレナリン持
ともに、腸間膜動脈血栓症も疑い緊急に単純 CT を撮影
続静注を開始、抗生剤を使用し、ガンマグロブリン製剤
した。CT では、胸水と腎臓・尿管摘出部の血腫以外に
も使用した。急性腎不全、TSS に対しては high-flow-
大きな異常を認めなかった。腎摘出部のドレーン位置調
volume CHDF を施行した。入室時の血液培養から菌は
整・輸血などを行ったが、血圧維持も次第に困難となり、
同定されず、鼻腔、咽頭、痰培養で MRSA が検出され
DIC・多臓器不全を来した。持続濾過透析なども行った
た。全身の紅斑が消失していくとともに徐々に循環は安
が状態の改善はみられず、術後第 5 病日に死亡した。
定し、第 3 病日にカテコラミンを中止、第 4 病日に人工
【 病理解剖所見 】全身臓器の出血や壊死がみられたが、
呼吸を離脱した。腎不全は残存したものの、第 8 病日に
とくに小腸・大腸・肝臓に高度の乏血性壊死があり、便
ICU 退室となった。その後、咽頭培養から検出された
臭のある腹水貯留も認められた。肝内の大型血管には比
MRSA の菌体から TSST-1 産生が確認され、TSS と確
較的新鮮な血栓があり、上下腸間膜動脈起始部付近には
定診断した。
血栓は認めなかったが、腸間膜動脈血栓症・腸間膜静脈
血栓症・門脈血栓症などが疑われる所見であった。
【 まとめ 】本症例では扁桃摘出後、免疫の barrier が破
綻したところに MRSA が侵入し、TSS が発症したと考
【 考察および総括 】解離性大動脈瘤・僧帽弁閉鎖不全・
えられた。high-flow-volume CHDF を短時間でも中断
心房細動などの症例では、周術期の血栓症に注意が必要
すると循環が不安定になったことから、病態の改善に大
であることは言うまでもない。腸間膜動脈塞栓症は、心
きく関与していると考えられた。TSS の原因毒素であ
房細動などの際の壁在血栓や大動脈のアテロームなどが
る TSST-1 は分子量約 22,000Da の中分子物質であり、
原因となる。腸間膜静脈血栓症は腹腔内・骨盤内の炎症
high-flow-volume CHDF にて効果的に除去されたと推
や感染、肝硬変、腫瘍による圧迫などが関与することが
測された。本症例は薬疹との鑑別に迷う症例であったが、
多いとされる。一方、低心拍出量状態やジギタリス内服
臨床所見から早期に TSS と診断したことで適切な治療
中の症例などでは非閉塞性急性広範腸壊死がみられると
を行うことができ、救命しえた。
いい、本症例においてはその可能性も否定できない。腸
管虚血のリスクが高い症例では、周術期の慎重な管理が
必要なことを痛感した。
70
出血等 F1-3
出血等 F1-4
甲状腺全摘術において麻酔導入直後に
尿崩症を発症した 1 例
全身痙攣による著明な症状を呈した 1 症例
国立三重中央医療センター
三重県立総合医療センター
○新谷佳大、紀ノ本茜、水野祥子、渡邉栄子、
清水美恵、長谷川隆
○川端広憲、木崎理絵、岩佐愛子、古橋一壽
【 はじめに 】全身痙攣が原因と思われる、著明な高血圧、
【 症例 】46 歳 女性
アシドーシスなどの症状をきたした症例を経験したので
【 既往歴 】
報告する。
20 歳 虫垂炎
【 症例 】患者は 50 歳男性。脳幹出血にて開頭血腫除去術
37 歳 子宮筋腫
44 歳 甲状腺腫瘤指摘
が発症 4 日目に予定された。昏睡状態で、人工呼吸管理
高血圧症 糖尿病
されていた。
45 歳 右乳癌
【 経過 】手術室への担送中に、間歇的な全身の強直性痙
【 現病歴 】44 歳に当院耳鼻科で細針吸引生検を施行さ
攣が観察されていた。入室時には、全身痙攣が認められ、
れ、甲状腺腫として外来にて経過を見られていたが、他
口唇、指先はチアノーゼを呈し、モニターは SpO2 10%、
院にて細針吸引生検施行されたところ、甲状腺乳頭癌
観血的動脈圧 300/150mmHg、心拍数 100 回 / 分を示し
と診断されたため、当院外科にて甲状腺全摘術となっ
ていた。呼吸を確認した後、担送中 15㎎ /hr で投与さ
た。麻酔導入はプロポフォール 1.5㎎ /kg にて入眠、ベ
れていたドパミンを停止し、プロポフォール 100㎎とベ
クロニウム 1㎎ /kg 投与し気管挿管した。麻酔維持は
クロニウム 10㎎を投与した。同時に行った動脈血ガス
プロポフォール 4㎎ /kg/h、レミフェンタニル 0.2 ∼ 0.5
分析は、pH 7.079、PaCO2 100.2mmHg、PO2 67.2mmHg、
㎍ /kg/min にて維持した。導入直後より 200 ∼ 400㎖
HCO3- 28.3mmol/ℓ、BE ‒5.6mmol/ℓ、SaO2 83.8%で
/h と多尿を認めた。術中採血、尿検査にて血漿 Na:
あった。肉眼的に痙攣は治まったが、チアノーゼは持続
145mEq/ℓ、尿浸透圧 66Osm であり、中枢性尿崩症を
し、心拍数 20 回 / 分台、血圧 100/40mmHg となったため、
疑い、バソプレシン 5 単位皮下注射した。その後尿量は
エピネフリン 1㎎静注し、ドパミンを 45㎎ /hr で再開
20 ∼ 30㎖ /h に減少、尿浸透圧も 314Osm に上昇した。
した。心拍数 115 回 / 分、血圧 300/120mmHg となった
手術時間 6 時間 38 分、麻酔時間 8 時間 30 分。術後バソ
後、2, 3 分でチアノーゼが改善し、SpO2 も 100%となっ
プレシン静注にて尿量をコントロールし、術後 6 日に酢
た。20 分後には血圧 115/70mmHg、心拍数 115 回 / 分と
酸デスモプレシン点鼻に切り替えた。術後 10 日に頭部
なり、動脈血ガス分析でも改善がみられた。ミダゾラム、
MRI 試行したところ下垂体腫瘍、脳転移は認めず、T1
フェンタニル、ベクロニウムで麻酔を維持し、特に問題
強調にて下垂体後葉の高信号消失を認め、中枢性尿崩症
となるような変化無く、手術を終了した。
の所見と一致した。尿量コントロール良好であったが、
【 考察 】痙攣発作により、低 O2 血症、高 CO2 血症、ア
患者の治療拒否のため酢酸デスモプレシン点鼻を中止せ
シドーシス、高血圧、頻脈となることが知られている。
ざるを得なかったが、中止後尿量の増加は認めず、尿崩
痙攣発作時には原因検索よりも、発作に対する治療が優
症の症状は消失した。今回麻酔導入直後より発症した一
先される。今回、脳出血を原因とする痙攣発作を第一に
過性中枢性尿崩症を経験したので報告する。
考えたが、他に再出血の可能性や、再出血に伴う脳圧の
亢進の可能性、アシドーシスや末梢血管抵抗の増大に伴
う心抑制や心不全も念頭において対処を行った。麻酔薬
には抗痙攣作用を持つものが多くあるが、今回、より短
時間で投与できることを優先し、手元にあったプロポ
フォールを使用した。
71
出血等 F1-5
出血等 F1-6
感染性ペースメーカーリード抜去術を
超低体温下循環停止にて行った一例
膵頭十二指腸切除 + 右半結腸合併切除術時
に危機的出血、輸血アレルギーを起こしたが
軽快退院となった症例
安城更生病院 麻酔科
JA 厚生連 遠州病院 麻酔科
○五十嵐一憲、田渕昭彦、八田 誠、竹内直子、
水野光規、山本里恵、小林一彦、新井根洋、
原 怜子、平野真理
○八角康裕、石井裕子、永田洋一
【 症例 】67 歳男性 153㎝ 46kg アレルギー歴 特に
患者は 49 歳男性で、完全房室ブロックの為に 1983 年
なし
に左鎖骨下にペースメーカー
(DDD)を挿入した。その
後 2002 年に埋設部の腫脹と発赤を認め、新規に右鎖骨
【 採血 】CEA 103.3 ↑ Hb 8.6
下にペースメーカー
(VDD)の植え込みと、左鎖骨下の
【 CT-Angio 】#1, #3, #14v, #6, #11p リンパ節転移、
ジェネレーター除去を行った。この際、リードは抜去困
#5-#7-#8a-#8p-9-#12a 及 び #12p-#13a は 一 塊 で
難で残存した。原因検索では金属アレルギー
(ニッケル
いずれも内部壊死を反映して周囲のみ強く造影、P-ring
とコバルト、シリコン)に陽性反応が出た。その後 2002
∼球部壁肥厚、周囲脂肪織濃度上昇なし。
年 12 月に創部離開を起こし、ポリウレタンコーティン
グされたリードと、ゴアテックスで包まれたジェネレー
【 周術期経過 】手術で剥離を進めるにつれ出血し始め、
ターの右鎖骨下への再々植え込みが行われた。2008 年
手術 2:20 時頃より加速度的に出血し 3 ルート全開で
に再び金属アレルギーによるリード感染が起こり、ジェ
は血圧が維持できない為、トレンデレンブルグ体位と
ネレーター除去と、右大腿静脈から体外式ペースメー
し、ポンピングを加えて BP75 前後とした。手術 4:33
カーの挿入が行われた。この際にもやはり、右鎖骨下静
時には出血量 5,410㎖におよび、保存血供給の谷間で一
脈∼心腔内のリードは抜去困難であった。感染の沈静化
時、Hb3.2g/㎗、BE-1.6 となった。圧迫止血しても腹
を待ってさらに強固に保護したペースメーカー
(VVI)
腔内から血液が溢れ検体を摘出しない限り止血できない
とリードを左鎖骨下に留置した(4 回目)
。その後、右鎖
状態となり、出血は更に加速しその後の 30 分で 4,590㎖
骨下静脈に残存したリードによる炎症及び感染を繰り返
出血し、BP40mmHg、HR130 前後で維持し、その間、麻
して菌血症を発症し、右心房内リードに動揺性のある疣
酔深度を下げ、アシドーシスや Ca 補正、溶血による
贅も付着していた為、全リード抜去および心筋電極植え
高 K を GI で補正した。手術 5:50 時に検体を摘出し
込みの運びとなった。今回の手術における問題点として、
止血が始まり、手術 6:35 時にこれまでのポンピング
① 術前精査で左腕頭静脈∼左鎖骨下静脈にかけて血栓
スピードで血圧が 40 から 60 に上昇したのを機に、血小
や瘢痕化組織のために完全閉塞状態であった ② 右房内
板を輸血、FFP、RCC を続けて血圧維持が可能となっ
のリードに動揺性のある疣贅が付着しており、リードが
た。BP40mmHg の期間は 2 時間弱であった。その後、対
心壁や弁に癒着している可能性、などが挙げられた。麻
光反射を確認し、手術は再建終了となった。最終出血
酔科及び心臓血管外科、臨床工学技士、手術室スタッフ
量 は 20,829㎖、 輸 液 量 18,350㎖、RCC40u、FFP14u、
の 4 者間で綿密な協議の後、全身麻酔下で胸骨正中切開
PC10u、アルブミン製剤 2,250㎖、尿量 1,800㎖であっ
にて開胸。送脱血管を上行大動脈と右心耳に挿入して人
た。術後四肢を中心に発赤があり輸血アレルギーと考え、
工心肺を開始した。21℃まで体温を下げた段階で循環
メチルプレドニゾロンを静注し挿管のまま ICU に移動
停止開始。上大静脈切開を加えた後に、三尖弁や血管に
した。術後 1 日目に抜管、発赤消失、4 日目に食事再開、
癒着して抜去できなかった左鎖骨下静脈のリードもすべ
その後 preDIC になるが加療により 86 日目に軽快退院
て除去し、新規に心筋電極と体外式ペースメーカーを取
した。
り付け、無事手術終了となった。
【 結語 】手術困難は予想されたが危機的に出血した症例
の麻酔を経験した。出血が多い場合は BP80mmHg 前後
【 結語 】左腕頭静脈∼左鎖骨下静脈の閉塞を伴った感染
性ペースメーカーリードの抜去という珍しい症例に対し、
を目安として脳血流維持に努めているが、さらに出血が
循環停止下で上大静脈を切開しながらリードを抜去する
加速した今回は BP40mmHg、トレンデレンブルグ体位、
という手術の麻酔を行ったのでこれを報告する。
アシドーシスや電解質補正、血液製剤の有効利用で乗り
切ることが出来た。
72
レミフェンタニル等 F2-1
レミフェンタニル等 F2-2
硬膜外麻酔併用全身麻酔症例における
レミフェンタニルと尿量の関係
麻酔導入時のレミフェンタニルへの反応と
術後フェンタニルの鎮痛効果に関する検討
豊橋市民病院
名古屋市立東部医療センター東市民病院
○河合未来、中田 純、川口道子、原 真人、
山口慎也、間瀬木めぐみ、青島礼子、藤田靖明、
山田 彩、寺本友三
○伊藤恭史、飯田裕子、森島徹朗、津田喬子
【 目的 】我々は日本麻酔科学会東海・北陸支部第 6 回学
【 目的 】麻酔導入時に使用する少量フェンタニルに対す
術集会(08 年 9 月、岐阜市)にてレミフェンタニルの使
る患者の反応と、術後硬膜外オピオイドの鎮痛効果およ
用は尿量を増加させる可能性がある、と発表した。今回
び副作用の発生率・重症度には相関があるという報告が
は、硬膜外麻酔併用全身麻酔症例におけるレミフェンタ
ある。近年導入にレミフェンタニル使用症例が増加して
ニル使用群と不使用群の尿量をレトロスペクティブに比
きている。今回我々は、麻酔導入時におけるレミフェン
較検討した。
タニルに対する患者の反応と、術後フェンタニルによる
鎮痛効果、および嘔気・嘔吐の発生率に関して検討した
【 方法 】予定手術の硬膜外麻酔併用全身麻酔症例で、レ
ので報告する。
ミフェンタニル使用開始前の 100 症例(C 群)と、発売
後でレミフェンタニルを使用した 132 症例(R 群)
、合
【 方法 】2009 年 5 月 1 日から 5 月 31 日までに、当院産婦
計 232 症例につき尿量を比較した。血液製剤、アルブミ
人科で腹腔鏡を用いて手術をおこなった 8 症例を対象と
ン製剤、利尿作用のある薬剤(ドパミン、マンニトール、
した。レミフェンタニル(0.5㎍ /kg/min)で麻酔導入を
アルプロスタジルアルファデクス、フロセミド、カルペ
開始し、患者に気分の変調の有無を問いかけて評価した。
リチド)を術中に投与した症例、18 歳未満の症例は除外
2 分未満に何らかの変調(ボーとする、フワッとする、
した。また、仰臥位の手術のみを対象とした。患者背景
など)があると答えた患者を反応群(R 群)
、ないと答え
として年齢、体重、性別、ASA 分類、診療科を、術中
た患者を非反応群(NR 群)とした。術中、デキサメタ
因子としては硬膜外カテーテルの挿入位置、麻酔時間、
ゾン 4㎎とドロペリドール 1.25㎎を嘔気・嘔吐の予防の
手術時間、術中輸液量、膠質液の輸液量、出血量、ロピ
ため静注し、手術終了前の腹腔内洗浄時に、フェンタニ
バカイン使用量、フェンタニル使用量について比較した。
ル 0.4㎍ /kg を静注した。その後 2 時間以内に鎮痛薬を
必要とした症例数、嘔気・嘔吐をきたした症例数を調査
【 結果 】患者背景、術中因子は両群間に差は認められな
した。
かった。R 群のレミフェンタニル平均使用量は 0.119㎍・
-1
-1
kg ・min であった。一方、麻酔中の時間、体重当た
【 結果 】術後、鎮痛薬を必要とした症例は、R 群で 0%(4
りの尿量は C 群 1.94 ± 1.08㎖・kg-1・h-1 に対し、
R 群 2.62
症例中 0 症例)
、NR 群では 75%(4 症例中 3 症例)であっ
-1
-1
± 1.62㎖・kg ・h と R 群において尿量は有意に多かっ
た。しかし、嘔気・嘔吐は、R 群、NR 群ともに発生し
た(p=0.00034)
。
なかった。
【 考察 】近年、周術期の肺塞栓症予防のため、術後早期
【総括】硬膜外麻酔併用全身麻酔症例においてもレミフェ
ンタニルが周術期の尿量減少抑制に関与している可能性
に抗凝固療法を行なう症例が増加しており、このため、
があると考えられた。推測されるのは、レミフェンタニ
術後鎮痛としてオピオイドを使用する機会も増えてくる
ルの強力な鎮痛作用により、ADH、レニンといった尿量
と思われる。しかし、患者個々のオピオイドに対する感
減少に作用するストレスホルモンの分泌抑制が生じ腎血
受性の違いにより、同じオピオイドの予測血中濃度でも、
流が維持されるという機序である。これまで全身麻酔時
鎮痛効果、副作用の発生率・重症度が違うため、個々の
における硬膜外麻酔は強力な術中鎮痛方法と考えられて
感受性に応じた適切な量のオピオイドの投与が望まれる。
いた。そのため硬膜外麻酔施行時にはレミフェンタニル
今回の調査では、麻酔導入時のレミフェンタニルへの反
を併用していない施設も少なくない。しかしながら今回
応を評価することにより、術後フェンタニルへの感受性
の結果からは、硬膜外麻酔のみではストレス反応を十分
を予測できる可能性が示唆された。今後、さらに症例数
に抑制できない可能性があると推測される。今後、より
を増やし、個々の患者に応じた適切な術後鎮痛のための
多くの症例で検討を行っていく必要があると思われる。
オピオイドの量につき検討していきたい。
73
レミフェンタニル等 F2-3
レミフェンタニル等 F2-4
レミフェンタニル投与により痙攣が
誘発された小児の一例
単独点滴ラインでの持続薬使用時の問題点
1 )愛知県心身障害者コロニー中央病院
1 )浜松医科大学医学部附属病院
2 )福井大学医学部器官制御医学講座
2 )浜松医科大学医学部附属病院
麻酔科 嘱託医、
麻酔・蘇生学領域
○水野省司 1)、重見研司 2)
集中治療部、
麻酔・蘇生科
○石井康博 1)、山口昌一 2)、佐藤重仁 2)
今回、我々はレミフェンタニルの持続投与中に全身性
【 目的 】短時間作用薬の出現により、麻酔維持に持続薬
強直性痙攣を認めた小児の 1 例を経験したため報告する
の使用が増加している。低リスク手術時では、単独ルー
トであることが多い。低血圧等で昇圧薬の静注を行うと、
【 症例 】7 ヶ月、男児、身長 64㎝、体重 7.6kg。頭蓋縫
合早期癒合症に対して頭蓋形成術が予定された。術前検
ルート中の持続薬を押し出すことになり、一時的に低血
査では特に異常は無く、痙攣の既往も無かった。
圧を悪化させることがある。これを定量評価する。
【 方法 】本院にて平成 20 年 12 月 1 か月間の麻酔科管理
【 麻酔経過 】麻酔前投薬は、ツロブテロールテープの貼
布とスコポラミン 0.15㎎とミダゾラム 3.5㎎を経口投与
症例について、点滴ラインの本数、持続薬について調査、
した。麻酔は酸素 2ℓ/min、笑気 4ℓ/min、セボフルラ
本院使用の点滴ラインをモデルとして、点滴ライン中に
ン 8%にて緩徐導入を行い、点滴確保後、気管挿管を行っ
ある薬物量を計算する。
た。挿管直後よりプロポフォールを 3㎎ /kg/hr、レミ
【 結果 】284 症例中、177 例 62%で単独末梢ラインのみ
フェンタニルを 0.5ug/kg/min にて投与開始し、以後、
使用、130 例 73%で持続薬を使用していた。本院使用の
静脈麻酔にて維持を行った。大腿靜脈へ中心静脈カテー
点滴ラインでは、測管接続部から患者まで 5.3㎖容量が
テルを留置し、右とう骨動脈穿刺時に体動が生じた。こ
ある。例えばメイン点滴 250㎖ /hr、
レミフェンタニル 0.2
れを契機に呼気二酸化炭素濃度が 90mmHg まで一過性に
㎍ /kg/ 分の状態で昇圧薬等を静脈注射すると、0.25㎍
上昇し、全身の強直性痙攣が生じた。レミフェンタニル
/kg レミフェンタニルをフラッシュすることになる。
の投与を中止し、プロポフォール靜注のためシリンジポ
【 総括 】昇圧薬等の静注にて、持続薬を無視出来ない量
ンプを操作したが、この時に閉塞アラームが鳴り、プロ
押し出すことがある。持続薬は、患者に近いところから
ポフォールが投与されていなかったことが判明した。プ
結合させることが望ましい。
ロポフォール 4㎎ /kg とジアゼパム 2㎎の靜注にて痙攣
は軽快し、プロポフォール 5㎎ /kg/hr の持続投与下に
頭部 CT, MRI を施行。出血などの頭蓋内病変を否定し
た。CT, MRI 撮影後、手術室にてプロポフォールの投
与を中止し、患者を覚醒させた。覚醒は良好で発作の再
発も認められなかったため抜管し、手術延期として病棟
へ帰室とした。術翌日の脳波、CT、MRI でも異常は認
められず、レミフェンタニルの単独投与による痙攣が最
も疑われた。患児の手術は一ヶ月後にプロポフォール、
レミフェンタニルの静脈麻酔下に問題無く施行された。
【 考察 】今回の痙攣の原因は器質的疾患がない点、麻酔
中に投与されていた薬剤が実質レミフェンタニルのみで
あった点から同薬剤が原因であると考えられた
オピオイドの高用量投与もしくは急速靜注により痙攣
が誘発されたとの報告は、これまでも多くなされている。
文献的考察を含めて発表する。
74
レミフェンタニル等 F2-5
レミフェンタニル等 F2-6
ヒドロキシエチルデンプン( HES )製剤による
アナフィラキシーが疑われた 1 例
緊急 CABG 術後に悪性高熱症が疑われた
一症例
県西部浜松医療センター
1 )総合病院
○小林賢輔、及川文雄、岩本竜明、水野香織、
木倉睦人
2 )静岡県立総合病院
聖隷三方原病院 麻酔科、
麻酔科
○岩切聡子 1)、三村真一郎 2)、濱野 剛 1)、
成瀬 智 1)、藤本久実子 1)、加藤 茂 1)、
赤池達正 1)、金丸哲也 1)、高田知季 1)
【 はじめに 】今回我々は、ヒドロキシエチルデンプン
【 症例 】45 歳男性、身長 170㎝、体重 80.6kg。急性心筋
(HES)製剤が原因として疑われたアナフィラキシーを
梗塞に対し、心停止下冠動脈バイパス術が行われた。既
往歴に糖尿病、高血圧、高脂血症があり、また以前より
経験したので報告する。
CPK 軽度高値を指摘されていた。麻酔導入前の CPK は
【 症例 】23 歳女性。慢性扁桃炎に対し両側口蓋扁桃摘出
981IU/ℓであった。
術が予定された。
【 経過 】術中両側扁桃摘出後、HES 製剤投与開始 5 分後
【 麻酔経過 】ミダゾラム、フェンタニル、ロクロニウム
に急激な血圧低下、頻脈、気道内圧の上昇を認め、その
で麻酔導入し、維持は AOS とレミフェンタニル持続投
後、四肢及び顔面から頸部にかけて、皮膚発赤と浮腫が
与で行い、適宜フェンタニルとロクロニウムを投与した。
出現した。アナフィラキシーを疑い、麻酔薬投与を中止、
CPB 中はセボフルラン投与を中止し、ミダゾラムで麻
純酸素換気下、エピネフリン、ドパミン、ノルエピネフ
酔を維持した。術中の循環動態は安定し、動脈血液ガス
リン投与で循環動態を可及的に維持しつつ、手術を終了
分析で特に異常は認めなかった。IABP、
体外式心臓ペー
した。手術終了後集中治療室入室、鎮静下で人工呼吸管
シング、高用量カテコラミンを投与しながら挿管のまま
理を行い、術後 2 日目にバイタルサインの安定、発赤、
CCU に帰棟した。手術時間 5 時間 53 分、麻酔時間 7 時
浮腫の軽減を確認後覚醒、抜管した。その後順調に回復
間 20 分。体温は導入時 37.6℃、退室時 38.2℃であった。
し、術後 11 日目に神経学的後遺症等なく退院となった。
【 術後経過 】術中より引き続き IABP、体外式心臓ペー
後日行った、リドカイン、フルモキセフナトリウム、ポ
シング、高用量カテコラミンにて循環動態管理が行われ
ビドンヨード、オキシドールの薬剤リンパ球刺激試験
た。体温は術後 5 時間後に深部温 40.1℃となり、cooling
(DLST)
、ラテックスの特異的 IgE 抗体検査は全て陰
が開始された。POD2 以降も深部温 40℃前後で高体温
が持続し、循環動態は不安定であった。CPK は術後よ
性であった。
【 考 察 】麻 酔 中 の ア ナ フ ィ ラ キ シ ー の 発 生 頻 度 は
り 4,000 ∼ 5,000IU/ℓで横ばい状態であった。POD3、
1/25,000 ∼ 1/1,000、死亡率は約 5%とされ、原因物質と
悪性高熱症を疑った心臓外科医によりダントロレン
しては頻度の高い順に筋弛緩薬、ラテックス、抗生物質、
Na40㎎が i.v. 投与されたが、その後ショック状態から
鎮静薬、麻薬、血液製剤、ポリペプチドなどがあげられる。
心停止を来し、蘇生後に PCPS を開始した。PCPS 管理
今回、術中に使用した薬剤のうち疑わしいものについて
下でも、体温上昇抑制のため積極的な cooling を要した。
DLST を行ったが全て陰性だった。しかし DLST の感
POD4、CPK>50,000IU/ℓ、肝逸脱酵素上昇、ポート
度は低く有用性は低いとされている。皮内反応やプリッ
ワイン尿等、横紋筋融解症を呈し CHDF が開始された。
クテストはアナフィラキシーを誘発する危険があるため
その後、全身状態の改善を認めず、DIC、多臓器不全が
施行されなかった。アナフィラキシーは投薬数時間後に
進行し、POD8 に死亡された。
発症することもあるが、98%が投薬後 5 分以内に発症す
【 考察 】麻酔終了後に発症する悪性高熱症の報告はある
るとされる。本例では、症状が現れる直前に使用された
が、本症例は広範囲心筋梗塞に対する緊急手術直後であ
薬剤は HES 製剤のみであった。血漿代用液は分子量が
り、循環動態の変化や CPK の上昇などがマスクされ、
大きいため、非特異的凝集性アナフィラキシー様反応を
高体温以外の臨床所見に対する悪性高熱症の診断基準の
起こすことがあるとされる。本例では、原因物質の同定
適用判断が困難である。本症例のように、元々全身状態
には至らなかったが、時間的経緯から HES 製剤による
が不安定な患者に悪性高熱症を疑わせる所見を認めた場
アナフィラキシーが最も疑われた。
合、悪性高熱症の診断および治療方針の決定やダントロ
レンの循環動態に対する影響に注意が必要となる。この
【 結語 】麻酔中のアナフィラキシーを経験したが、迅速
点において文献的考察を加えて報告する。
な対処で後遺症なく回復した。原因として HES 製剤が
最も疑われた。
75
支 部 細 則
2001 年 4 月 28 日制定
2002 年 4 月 17 日改定
2004 年 5 月 26 日改定
2006 年 5 月 31 日改定
2008 年 6 月 11 日改定
(目 的)
第1条
この細則は、社団法人日本麻酔科学会(以下、
「 この法人 」という。
)の定款第 3 条に定める
支部に関し必要な事項を定める。
(設 置)
第2条
2
この法人は、別表に掲げる支部を設置する。
新たに支部を設置しようとするときは、その代表者は、この細則第 10 条第 1 号に定める書
類を添えて理事長に申請し、理事会の議を経て総会の承認を得なければならない。
(事 務)
第3条
支部の事務はこの法人の事務局が処理する。
(会 員)
第4条
支部の会員は、支部の管轄地域に所在地を有する施設に勤務するこの法人の正会員をいう。
ただし、現に勤務する施設がない者については、その者の居住地による。
(運営委員)
第5条
支部に次の各号に掲げる支部運営委員を置くことができる。
(1)支 部 長
(2)総務委員
(3)学術委員
(4)教育委員
(5)広報委員
2
前項第 1 号の支部長は、理事職務細則第 2 条第 1 項第 2 号に基づき、この法人の支部代表理
事とし、当該支部の業務を総理しこの支部を代表する。
3
前項第 2 号の総務委員は支部長を補佐し、支部の管理・運営に関する事項を担当する。
4
前項第 3 号の学術委員は、学術集会運営細則に基づき、支部学術集会会長および副会長とし、
学術集会の運営をはじめ支部の学術事業を担当する。
5
前項第 4 号の教育委員は、講習会の運営をはじめ支部の教育事業を担当する。
6
前項第 5 号の広報委員は、市民講座等の運営をはじめ支部の公益事業を担当する。
7
運営委員の定数は、第 1 項に規定する委員を含め 15 名以内とする。
8
運営委員の選任方法は、支部長が推薦し、支部運営委員会および支部代議員会の協議を経て、
この法人の理事長が選任する。
76
(運営委員の任期 )
第6条
支部運営委員の任期は 2 年とし再任を妨げない。
2
支部長は任期終了直後の 1 年間は運営委員として委員を継続しなければならない
3
補欠又は増員により選任された委員の任期は、前任者または現任者の残任期間とする。
(代議員)
第7条
支部代議員は、この法人の代議員のうち、各支部の所属地域から選出された者とする。
(会 議)
第8条
2
支部に、支部の管理・運営および予算・事業計画を協議する運営委員会をおくことができる
支部に、支部運営委員会が提出する議題を協議する支部代議員会をおくことができる
(管理・運営)
第9条
この細則に定める事項のほか、支部の管理・運営は本部の方針に基づいて各支部が行う。
ただし、経理および事務はこの法人の事務局が行う。
(報 告)
第 10 条
支部長は、次の各号に掲げる書類をこの法人の理事長に提出しなければならない。
(1)事業計画書及び予算案
(2)事業報告書
2
前項第 1 号の書類は、毎年 12 月末までに提出しなければならない。
3
第 1 項第 2 号の書類は、毎年度当初速やかに提出しなければならない。
(細則の変更)
第 11 条
この細則は、理事会の議を経、総会の承認を受けなければ変更することができない。
(別 表)
支部の名称
所属地域
北海道・東北支部
北海道、青森県、岩手県、宮城県、福島県、秋田県、山形県
関東・甲信越支部
群馬県、栃木県、茨城県、埼玉県、千葉県、神奈川県、山梨県、長野県、
新潟県
東京支部
東京都
東海・北陸支部
静岡県、愛知県、岐阜県、三重県、富山県、石川県、福井県
関西支部
滋賀県、京都府、大阪府、奈良県、和歌山県、兵庫県
中国・四国支部
鳥取県、島根県、岡山県、広島県、山口県、香川県、徳島県、愛媛県、
高知県
九州支部
福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県、沖縄県
附 則
1 この細則は、2008 年 6 月 11 日に改定し、2008 年 6 月 12 日から施行する。
77
(社)日本麻酔科学会 東海・北陸支部
第 7 回学術集会
発行日:2009 年 9 月 1 日
会 長:小久保荘太郎
(総合病院 聖隷浜松病院 副院長)
事務局:総合病院 聖隷浜松病院
〒430-8558 浜松市中区住吉2-12-12
TEL: 053-474-2232 FAX: 053-471-6050
印 刷:
株式会社セカンド
〒862 0950 熊本市水前寺 4 39 11 ヤマウチビル 1F
TEL:096-382-7793 FAX:096-386-2025