小さなコイルで見る燃料電池の水分挙動 - 福岡水素エネルギー戦略会議

平成24年度 福岡水素エネルギー戦略会議 第3回研究分科会
高効率水素製造研究分科会/燃料電池要素研究分科会
平成24年度 福岡水素エネルギー戦略会議 第3回研究分科会
高効率水素製造研究分科会/燃料電池要素研究分科会
九州大学伊都キャンパス 稲盛財団記念館 2012年11月20日
2012年11月20日
小さなコイルで見る燃料電池の水分挙動
~ 核磁気共鳴を利用した含水量計測 ~
講演内容
• NMR、MRIって何?
水素
原子核
– 核磁気共鳴の原理、信号波形
• 燃料電池にNMR/MRIを適用できる?
静磁場 H0
– 小型コイルを挿入する方法、計測装置
慶應義塾大学 理工学部 機械工学科
小川 邦康、横内 康夫(社会人ドクター)
• 含水量の計測事例
– 何が計測できるの?
• 計測の普及を目指して
連絡先:[email protected]
– 進行中のJST事業
MRIギャラリー: これは何?
NMR、MRIって何?
• 化学分析で用いるNMR ⇒ 分子構造
• 医療診断で用いるMRI ⇒ 体内の断面画像
オクラ
計測の様子
• ヒント:八百屋さんで売っている物
水の分布
(水が多いほ
ど明るい)
256×256 pixels、計測時間:15分間
MRIギャラリー: これは何?
• ヒント:八百屋さんで売っている物
水がないと
信号が小さい
MRIで計測するには:装置構成
試料台
MRI計測システム
制御系
+データ
保存
磁石
RF検出コイル
試料と
RF検出
コイル
ソラマメ
トマト
マッシュルーム
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幅10cm
株式会社エム・アール・テクノロジー製
1
平成24年度 福岡水素エネルギー戦略会議 第3回研究分科会
高効率水素製造研究分科会/燃料電池要素研究分科会
MRIで計測するには:詳しい装置構成
2012年11月20日
NMR(核磁気共鳴)法の原理
③ 磁化の励起
① 磁気モーメントの歳差運動
歳差運動
z
 =  H0
励起パルス
1
H: 42.6MHz/T
磁気
モーメント
y
水素原子核
x
照射
42.6
MHz
② 巨視的磁化 M
z
多数の
磁化
磁気モーメントが
集まって
M
巨視的な磁化M
y
となる
x
静磁場 H0
z
励起
y
x
送信コイル
静磁場 H0
磁化
M
で回転
④ NMR信号の受信
NMR信号
42.6
MHz
位相
分散
z
y
x
受信コイル
±で回転
NMR(核磁気共鳴)信号の取得
NMR/MRIでは装置材料に制限あり
• 静磁場中の1H(水素)は42.6MHzの電磁波で励起さ
れ、濃度と緩和時定数に依存した信号を放射する。
磁石内に挿入するため、PEFCは非磁性で製作する必要がある。
計測波形
電磁波を
通過させる
材料
 0で変調し、±10kHz以内の波形に
水
磁
石
磁
石
電圧
NMR信号
時間
2 ms
42.6MHz 静磁場H0
共鳴周波数 0 = H0
カーボンセパレータ、
GDL、PEMは
使用可能
NMR信号は濃度に比例し、緩和時定数で減衰
磁石の開発・製作
燃料電池にNMR/MRIを適用できる?
燃料電池
水素
燃料電池を測ろうと思ったら、
• 磁石に入らない。
⇒ 大きな磁石を作る。
• RFコイルが使えない。
100 mm
酸素
⇒ 小型表面コイルを挿入
NEOMAXエンジニアリング製
超電導磁石:高級MRI
試料寸法
Φ25
~60mm
試料
永久磁石:手作りMRI
開放部が広い(前後、上側)
4~9 Tesla
1 Tesla ⇒ 装置設置や配管が容易
超電導
磁石
試料
バブラー
• 多点計測が必要
小型表面コイル
PEM(高分子膜)
多数の小型表面コイルを用いて
燃料電池内のPEM内含水量を
局所で、短時間(1秒)、空間分布
で計測する。
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制御機器
(送受信)
1 m
⇒ 多点計測NMRを作る。
通常コイル
10cm
永久
磁石
From Homepage of Varian Technologies Japan Limited
高い磁場安定性
70 cm立法
1.2 ton
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小型表面コイルの特徴
小型表面コイルを燃料電池に適用
小型表面コイルの特徴:局所化
• 小型表面コイルでPEM局所からのNMR信号を取得
楕円型のコイルを使用
試料
高分子膜
(PEM)
PEM
H
試料全体をコイルで覆う
小型表面コイルでは
コイル近傍のみを計測
MRIで空間分解するには
勾配磁場を印加する
コイル自身で局所を計測
含水量計測:PEFCと発電条件
項目
MRI
小型コイルのNMR
問題点:セパレータ、GDL
は電磁波が透過しない
穴を開ける
GDLとMEAの間に
小型コイルを挿入
含水量の面方向の
空間分布
◎
画像
〇
複数コイル、離散的
含水量の厚さ方向の
空間分布
◎
画像
△
水素極、空気極
の近傍のみ
計測時間
10分~数時間
1秒程度
含水量、電流計測
◎、×
◎、◎
計測可能
燃料電池内NMR計測の様子
32個の小型表面コイルを
PEFC内(流路下、リブ下)に挿入
高分子膜
MEAサイズ(触媒層)
寸法:50×50 mm2
厚さ:178 m PEM
発電条件
多点計測NMRでの実験
電流密度(定電流)
0.15 ~ 0.2 A/cm2
相対湿度
50 %RH~85 %RH
利用率(水素・空気共)
0.17 ~ 0.90
セル温度
70 ℃
NMR信号の例
約30 wt%
PEMの含水量と信号強度の関係
① 湿潤したPEM(相対湿度=約100%、20℃)
NMR
水素供給
燃料電池
Signal intensity
小型表面
コ イル
PEFC+小型表面コイル
(a) 含水量計測:NMR信号強度
50 mm
GDL
コイルを
多数配置
【小型NMRコイルの特徴】
・ 局所計測が可能
・ 1秒で空間分布を取得
MRIとNMRの比較
PEFC内にコイルを設置
計測
領域
ガス拡散層
(GDL)
10 ms
time
燃料
電池
温水
水素
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Signal intensity
約5 wt%
② 乾燥したPEM (相対湿度=約20%、50℃)
永久
磁石
PEMに調湿ガスを供給して
NMR信号を取得
信号が大
20 wt%
Nafion117
Hinatsu et al.
信号強度
H0
セパレータ
ガス流路
0.3mm
z
燃料電池の中にコイルを挿入
含水量
通常NMR/MRIは試料全体を計測
2012年11月20日
Springer et al.
信号が小
10 ms
time
PEMの含水量と信号強度は
単調増加の関係にある。
⇒ 校正曲線とする。
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高効率水素製造研究分科会/燃料電池要素研究分科会
計測事例:低加湿時の含水量・電流の空間分布
含水量の計測事例:32個のコイル
50 %RH,利用率小(流量大)
CH1
CH1
②
CH1
・・・
③
CH2
CH2
含水量
CH2
・・・
制御器
:
CH8
:
CH8
:
CH8
CH8
計測点数
8CH×4 = 32点
計測時間
約20 ms
計測間隔
約4 s
コイル①
コイル②
ガス
時間経過後
含水量
上流
電流
・・・
コイル④
数秒で移り変わる非定常な現象を
実時間で捉える事が可能
含水量
[H2O mol/SO3‐ mol]
50 %RH
時間経過後
電流密度
位置 y [mm]
増加
下流側で
凝集
R
R
上流
下流
電流
電流密度
[A/cm2]
85 %RH
増加
R
上流
ガス
下流
計測事例: 発電状態マップ
上流
下流
流路内凝集
発電不安定
低含水量
低発電密度
R
R
R
位置 y [mm]
■水素と空気ガス供給条件と,含水量・電流との関係
R=0.14
70 %RH
ガス
供給ガスの
相対湿度
水蒸気飽和位置R=0.27
含水量
R=0.22
下流
上流
下流
ガス
計測事例:加湿量を変えた際の含水量・電流分布
■PEMの含水量と電流密度の空間分布
下流側
増加
変化
小
電流密度
[A/cm2]
④
CH2
50 %RH,利用率大(流量小)
含水量
[H2O mol/SO3‐ mol]
CH1
①
■利用率(流量)の大小による相違を比較(空気極側)
4 秒間隔
20 ms
4SEL時分割
8CH同時計測
2012年11月20日
ガス利用率
ガス
増加
増加
位置 y [mm]
位置 y [mm]
位置 y [mm]
計測の普及を目指して
• 事業名:JST 研究成果展開事業
– 先端計測分析技術・機器開発プログラム
– グリーンイノベーション領域(要素技術タイプ)
• 課題名:燃料電池内の水生成・移動現象のNMR 計測技
術の開発
• チームリーダー:小川邦康
• 128個のコイルで燃料電池内の
水分移動を0.5秒間隔で計測
可能な計測システムの試作機
• 研究期間:2012年10月
~2015年3月(2.5年)
70 %RH 利用率0.7程度
含水量6程度・高発電密度・発電安定
製作したPEFCセル
の最適条件が分かる
まとめ
• 小型NMRコイルを用いた燃料電池内の水分挙動計
測の紹介をした。その特徴は以下の通り。
– PEM内含水量の局所計測
– 4秒間隔で計測 ⇒ 時系列の変動計測が可能
– 複数コイルを用いて空間分布計測
• 本計測法の結果(PEM内含水量と電流の空間分布)
を基に燃料電池の「発電状態マップ」が得られた。
• JSTの支援を受けて、多くの方が使える計測装置を
現在、開発中!
試作機を作る!
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平成24年度 福岡水素エネルギー戦略会議 第3回研究分科会
高効率水素製造研究分科会/燃料電池要素研究分科会
謝辞
多くの方にご協力頂きました。
• 共同研究者
– 伊藤 衡平 氏(九州大学大学院 工学研究院 機械工学部門)
– 拝師 智之 氏(株式会社エム・アール・テクノロジー)
• 装置製作
– 李相根氏,平野正晃氏(九州大学水素利用プロセス研究
室):高分子電解質膜への触媒層形成
– 橋本征太郎氏(株式会社エクサ):複数NMRコイルでの同時
計測ソフトウエア
– 株式会社FJコンポジット,株式会社ヤマト:燃料電池セル
– 相原今朝雄氏,森田正氏,斉田尚彦氏(慶大理工学部実験
教育支援センター):の燃料電池セル
ここに深く感謝の意を示します。
Copyright © 2012 Keio University, All rights reserved. 無断転載を禁止します。
補足
2012年11月20日
参考文献
詳細はこちらを
ご参照ください。
小型コ イルを用いた燃料電池の含水量と電流の空間分布計測に関する論文
• 横内康夫、小川邦康、拝師智之、伊藤衡平、“核磁気共鳴法を用いた小型表面コ イルによ
る燃料電池内電流密度および固体高分子膜内含水量の空間分布と時間変化の計測(第一
報:燃料ガスの相対湿度と利用率がPEM内含水量に及ぼす影響)” 日本機械学会論文集B
編、Vol. 78(2012) No. 788, P917‐927、公開日:2012年4月25日
• 横内康夫、小川邦康、拝師智之、伊藤衡平、“核磁気共鳴法を用いた小型表面コ イルによ
る燃料電池内電流密度および固体高分子膜内含水量の空間分布と時間変化の計測(第二
報:燃料ガスの相対湿度と利用率が電流密度分布に及ぼす影響)” 日本機械学会論文集B
編、Vol. 78(2012) No. 788, P928‐938
小 型 コ イルを用いたNMR法による電流計測法に関する論文
• 横内康夫・小川邦康・拝師智之・伊藤 衡平、”核磁気共鳴を利用した小型表面コイルによる
PEFC内の電流分布計測法の開発、第一報:PEFC発電時の一次元電流分布の計測”、日本
機械学会論文集B編、75巻752号、(2009‐4)、pp.839‐846
• 小川邦康、横内康夫、拝師智之、伊藤衡平、“核磁気共鳴を利用した小型表面コ イルによ
るPEFC内の電流分布計測法の開発(第2報:PEFC積層方向に電流が流れる場合での一次
元電流分布の計測)“、日本機械学会論文集B編、76巻772号、(2010‐12)、pp.2210‐2217 、
公開日:2012年4月25日
コ イル の 形 状と計測領域に関する論文
• 小川邦康、拝師智之、伊藤衡平、“NMR計測における 小型表面コ イルのレーストラック形状
化による信号強度の向上”、日本機械学会論文集B編、76巻768号、(2010‐8)、pp.1232‐
1239
• 小川邦康・拝師智之、”小型表面コイルを用いてNMR 計測した際の計測深度と励起角度の
調整法”、日本機械学会論文集B編、75巻757号、(2009‐9)、pp. 1862‐1869
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