1)肝・胆-3T MRIの現状と臨床的位置づけ

Ⅰ 領域別に検証する 3T MRI である理由
4.上腹部領域
1)肝・胆
─ 3T MRI の現状と臨床的位置づけ
金 東石 / 堀 雅敏 / 大西 裕満
富山 憲幸 大阪大学大学院医学系研究科放射線医学講座
われわれの施設には,2005 年 4 月にわ
のかどうかの検証を行っていたような状態
が国で初めて認可された直後の体幹部用
であった。現在では,3 T MRI の導入か
3 T MRI「SIGNA EXCITE 3 .0 T」
(GE 社
ら 5 年が経過し,3 T MRI が腹部領域で
3 T MRI の現状
製)が導入された。同機は,2005 年 11 月
も十分に臨床応用が可能であることがわ
には「SIGNA EXCITE HD」
,2008 年 5月
かり,従来の 1 . 5 T に比べて高い有用性
には「Signa HDx 3 . 0 T」
,2009 年 3 月に
が確立された部分もあるが,まだまだ有用
3 T の 利 点 は, 第 1 に 信 号 雑 音 比
は「Signa HDxt 3 . 0 T」とバージョンアッ
性がはっきりしない部分も多くある。さら
(SNR)が高いことにつきる。当初,SNR
プを重ねて現 在に至 っ ている。また,
に,学会発表や論文発表では,1 . 5 T と
は静磁場強度に比例するため,3 T では
1.高 SNR のメリット
2 0 0 9 年 3 月にはフィリップス社 製の
3 T の比較において混乱も見られる。その
1 . 5 T に比べて SNR が 2 倍になると言わ
「Achieva 3 . 0 T」も導入された。導入当初,
混乱の理由とは,1 . 5 T と 3 T を比較する
れていたが,実際は T 1 緩和時間,受信
頭部領域での有用性がすでに確立してい
にあたり,異なったメーカー,異なった
バンド幅,電磁波の人体への比吸収率
たのに対して,腹部領域での 3 T は欧米で
シーケンス間での比較,さらには,旧世代
(SAR)の制限などから 1 . 6 〜 1 . 8 倍ぐら
の臨床応用の報告も少なく,メーカーと
と最新の装置での比較が行われていたり
いであると言われている 1)。パラレルイメー
の試行錯誤での臨床導入であった。その
することにある。
ジング技術により 2 倍速で撮像すると,
ため,導入当時は,頭部領域での有用性
本稿では,現在の肝胆領域における 3 T
SNR は 1 / √ 2になるので,3 Tでは1. 5 T
を目的として 3 T MRI を導入するにあたり,
MRI の臨床的位置づけについて述べてい
の 2 倍速で撮像しても 1 . 5 T とほぼ同等
3 T MRI が腹部領域でも臨床応用可能な
きたい。
の SNR が得られることになり(図 1),こ
の SNR の向上を撮像の高速化か,高分
解能化に使用することが可能である(図 2,
3)
。われわれの施設で 2009 年から臨床
使用されているフィリップス社の 32 チャ
a:reducation factor 2
b:reducation factor 3
c:reducation factor 4
図 1 3 T MRI で撮像した SSFSE T 2 強調像
reduction factor 2(a),3(b),4(c)で撮像しているが,reduction factor を 4 まで上げても,
3 T MRI ではそこそこの SNR が得られる。
24 INNERVISION (25・9) 2010
〈0913 - 8919 / 10 /¥300 / 論文 /JCOPY〉