第11回:納期と工程管理 - 東京大学

経営管理
第11回:納期と工程管理
1. 納期の概念(納期、生産量、製品在庫、受注残)
2. 工程管理の概念と内容
3. 日程計画
4. 材料所要量計画(MRP)
5. 工数計画と能力・負荷分析(CRPとMRPII)
6. 生産指示
東京大学経済学部
藤本隆宏
「‡:このマークが付してある著作物は、第三者が有する著作物ですので、同著作物の再使用、同著作物の二次的著
作物の創作等については、著作権者より直接使用許諾を得る必要があります。」
製品競争力の主な要素
材料生産性
営業利益
材料費
材料価格
販売費・一般管理費
労働生産性
粗利益
価格
労務費
コスト(製品原価)
賃金など
設備/工具減価償却費
製品開発費
その他経費
設計・開発期間
納入期間・期日
生産・調達期間
納期・数量
生産能力
設計品質
品質(総合品質)
製造品質(適合品質)
フレキシビリティ
流通期間
開発生産性
R&D投資価格
設備生産性
設備価格
1.納期の概念(納期、生産量、製品在庫、受注残)
納期(delivery)
=
納入期日(手に入る時点)
または
=
納入期間(注文してから手に入るまでの期間)
納期の目標は、お客がどれだけ待ってくれるかによって決まる。
製品によって異なる。
納期(=納入期間)に何が含まれるか?
・・・生産のタイプによる。
(1)見込み生産(stock production)
(2)注文生産(order production)
(2a)規格品注文生産(見込み設計、注文生産)
(2b)特注生産(注文設計、注文生産)
見込み生産と受注生産
(1) 見込み生産
yes
設計
調達
生産
在庫補充
受注
失注
在庫あり?
納品
no
在庫補充
(2) 規格品受注生産
設計
受注
調達
生産
納品
調達
生産
納品
(3) 特注生産
受注
設計
‡
藤本隆宏 『生産マネジメント入門』 日本経済新聞社 2001 (Ⅰp172 図6.1)
納期・生産量・製品在庫・受注残
納期と生産量は、製品在庫と受注残を通じてつながっている。
流動数曲線(累積カーブ)で分析する。
(1)見込み生産の場合(在庫を持つ)
(2)注文生産の場合(受注残を持つ)
納期、生産量、在庫の関係(流動数曲線)
‡
藤本隆宏 『生産マネジメント入門』 日本経済新聞社 2001 (Ⅰp173 図6.2)
2.工程管理の概念と内容
工程管理:納期と数量の面から生産活動を計画・統制すること。
(「納期管理」とは言わない)
(1)注文生産:
生産期間の短縮がポイント。
製品在庫は問題にならない。
(2)見込み生産:
需要予測と在庫管理がポイント。
生産期間の影響は間接的(予測精度)
製品設計
(情報M+A+B)
事例:在庫と
生産リードタイム
情報A
設計/作業者
情報ストックB
設計/作業者
情報ストックA
製品設計情報B
顧
客
情報
M+A+B
●●●●●
●●●●●
製品設計情報A
M+A
M+A+B
●●●●●
●●●●●
第2作業
M
M+A
●●●●●
●●●●●
情報M
●
●
完成品在庫
情報M
情報B
仕掛在庫
第1作業
提
供
企
業
原料在庫
情報のフロー
モノのフロー
●
ワーク(仕掛品)
アウト
プット
生産計画
プロ
セス
イン
プット
日程計画
scheduling
大日程計画
工場全体の生産スケジュール(Aggregate Production Planning)
中日程計画
製品別の生産スケジュール(Master Production Scheduling)
小日程計画
細かい作業割当。順序計画
手順計画
routing
工程計画。工程設計。作業順序。加工方法。ロットサイズなどを決める
工数設計
loading
負荷(output側)と生産能力(input側)のバランスなど
材料計画
材料の所要量、購入日時、発注量、在庫量などの計画。MRP(材料所要量計画)など
設備計画
設計、治具、工具などの調達計画
人員計画
人員配置、補充方法など
生産統制
作業指導
作業方法を現場に伝える
作業準備
材料、治工具、図面作業標準票などの現場配備
進度管理(進捗度。納期チェック)
作業割当指示 差し立て
生産指示
手配
品質管理(在庫量)
作業統制
作業開始後のコントロール
藤本隆宏 『生産マネジメント入門』 日本経済新聞社 2001 (Ⅰp175 図6.3)
余力管理(手待ち仕事量対小日程計画)
資料管理(生産実績資料)
‡
工程管理の内容
(1)生産計画(production planning)
日程計画(アウトプットの計画)
材料計画(インプットの計画)
工数計画(インプットの計画)
(2)生産統制(production control)
生産指示、生産統制、他
他
3.日程計画(見込み生産の場合)
見込み生産の場合、需要予測が生産計画の基礎となる。
(1)大日程計画(aggregate production planning):
主な製品カテゴリー別に集計;月ごとに表示;
計画期間1年単位
(2)中日程計画(master production schedule):
品目別に分類。1日ごとに表示、計画期間1ヵ月
(3)小日程計画(final assembly schedule など):
バリエーションごとに分類。
サイクルタイムごとに表示(順序計画);計画期間1日
日程計画の類型
計画要素
計画のタイプ
1
Aggregate
Production Planning
(大日程計画、
全般的生産計画)
計画期間
日程の単位
(Horizon)
(Increment)
(中日程計画、
基準生産計画)
Final Assembly
Scheduling, 他
3
(小日程計画、
順序、計画)
カテゴリー
目的
計画対象
・人員計画等の基礎となる
6ヶ月~
1年半
Master Production
Schedule
2
計画修正
の頻度
製品
月~週
毎月改訂
製品
グループ別
旬~日
2週毎~
毎旬
日~分
1日~10日 (含サイクル
タイムも)
毎旬~
毎日
生産レベル(Pt)
在庫レベル(It)
労動力レベル(wt)
・品目別の製品生産量の確定
毎月~
1~3ヶ月
全工場
仕様別
(大分類)
部門
(工程)
・工数計画、
材料所要量計画(MRP)
仕様別
(細分類)
各ステーション
・生産順序の確定
(作業者)
・各ステーションへの作業割当
‡
注:Aggregate Production Planning と大日程計画、Master Production Schedule と中日程計画などは、
厳密には一致しない可能性があるが、基本的には類似した概念であるとみなし、一括して説明した。
藤本隆宏 『生産マネジメント入門』 日本経済新聞社 2001 (Ⅰp178 表6.1)
大日程計画の立てかた
リニアプログラミング
ラグランジュ法
カット・アンド・トライ法・・・これが一般的
流動数曲線(累積カーブ)を使ったグラフィックな試行錯誤
大日程計画の基本的な方針
(1)需要追跡型
(2)生産平準化型
(2a) 在庫型
(2b) 過少生産型
(2c) バランス型
それぞれについて、 基本賃金、採用費、レイオフ費、
超過勤務手当、在庫費用、
品切れの機会費用 などを比較する。
大日程計画の作成
流動数曲線を使った試行錯誤(cut&try)法
藤本隆宏 『生産マネジメント入門』
日本経済新聞社 2001 (Ⅰp179 図6.4)
‡
大日程計画の作成
流動数曲線を使った試行錯誤(cut&try)法
藤本隆宏 『生産マネジメント入門』
日本経済新聞社 2001 (Ⅰp179 図6.4)
‡
大日程計画の作成
流動数曲線を使った試行錯誤(cut&try)法
藤本隆宏 『生産マネジメント入門』
日本経済新聞社 2001 (Ⅰp179 図6.4)
‡
大日程計画の作成
流動数曲線を使った試行錯誤(cut&try)法
藤本隆宏 『生産マネジメント入門』
日本経済新聞社 2001 (Ⅰp179 図6.4)
‡
Aggregate Production Planningの戦略
• キャパシティに制約がないと仮定すると、大日程計画(Aggregate Production Planning)の
たて方に次のような戦略がある:この中から cut & try 法 で最適のものをみつける。
(○有利 ● 不利
①
変動: 累積需要≒累積生産
Chasing Demand
②
変動: 累積需要≒累積生産
Chasing Demand
③
安定: 累積需要<累積生産
Level: High
④
安定: 累積需要>累積生産
Level: Low
⑤
安定: 累積需要>累積生産
Level: Subcontract
⑥
安定: 累積需要≧累積生産
Level: Middle
労働力(Wt)
在庫量(It)
労働者数を変動させる
採用とレイオフで吸収
低位安定
労働者数は固定
残業、早退などで吸収
低位安定
◑
労働者数・労働時間は安定
在庫変動で吸収
●
労働者数・労働時間は安定
受注残(backlog)、ないし
受注を断る
○
労働者数・労働時間は安定
不足分を下請生産で吸収
○
労働者数・労働時間は安定
上記 3タイプの混合
株
用
費
レ
イ
オ
フ
費
ス
ト
超
勤
費
● ●
夜
勤
費
在
庫
費
ッ
生産量(Pt)
基
本
給
◑ やや不利)
ク
ア
ウ
ト
下
請
費
●
●
●
●
●
◑ ◑ ◑
Critical Fractile 法
限界売れ残り費用と限界品切れ費用を比較する。
限界売れ残り費用 = 在庫費用、在庫評価損など=L
限界品切れ費用 = 限界利益 = 品切れの機会費用=G
売れ残りの出る主観確率 = p
このとき、 p = G/(G + L)
となる量だけ生産を行なえばよい。
クリティカルフラクタイル法による生産量の決定 (1)
デシジョン・ツリーで考える
その1個が売れた
変動利益 G=P-MC
G
確率1-P
意思決定:
1コ余計に
yes
Q+1個
確率 P
-L
作るか?
・捨てる…変動費 L=MC
・在庫して後で売る…在庫費 L=IC
その1個が売れ残った
no
Q個
0 (何もおこらない)
‡
藤本隆宏 『生産マネジメント入門』 日本経済新聞社 2001 (Ⅰp181 図6.5)
クリティカルフラクタイル法による生産量の決定 (1)
予想販売量の分布
100%
売
れ
残
り
の
累
積
確
率
(P)
売れ残りが出る確率
ブレークイーブン
G
G + L
0%
生産量/期間
生産計画量(Q)
均衡点(ブレークイーブン)
… (1 - p) G + p (- L )=0
∴ G =p (G + L)
∴ 均衡点での売れ残り確率
G
p=
G+L
となるような生産計画量(Q)を選べばよい。
‡
藤本隆宏 『生産マネジメント入門』 日本経済新聞社 2001 (Ⅰp181 図6.5)
(2)中日程計画(master production schedule):
品目別に分類。1日ごとに表示、計画期間1ヵ月
MRP(後述)などの起点となる重要な計画
(3)小日程計画(final assembly schedule など):
バリエーションごとに分類。
サイクルタイムごとに表示(順序計画);計画期間1日
部品の順序供給・順序生産の起点となる
トヨタの日程計画
需要予測
販売計画
年間生産計画
ディーラー
月次生産計画
変更
旬間生産計画
生産計画
日程計画
生産(組立)順序計画
着工指示
(車体溶接の先頭)
生産
進捗管理
最終検査
配車先指示
発送要作成等
運送
‡
大野耐一・門田安弘 『トヨタ生産方式の新展開』 日本能率協会 1983年
トヨタの日程計画
年間生産計画 (≒ aggregate production plan)
↓
月次生産計画 (≒ master production schedule)
(N-2,N-1,N月)
↓
旬間生産計画
↓
生産(組立)順序計画 (≒ final assembly schedule)
徐々に計画精度をあげていく。
徐々に製品の指定の仕方を細かくしていく。
トヨタ自動車の日程計画
トヨタの生産計画システム(まとめ)
トヨタの生産計画は、徐々に生産カテゴリー(モデル → 標準仕様 → 特注仕様)、時間単位
(月→旬→日→サイクルタイム)およびその中での計画精度を絞り込んでいく方式がある。
つまりスケジュール修正と精度アップを繰り返し、徐々に収斂させる。
前々々月(N-3)
前々月(N-2)
前月(N-1)
月次計画
当月(N)
上旬
中旬
月次計画
確定
下旬
旬オーダー
特注オーダー ・ 順序計画
当日
モデル(車名)別 ・ 組立ライン別生産計画(マスター)
~~~~~~~~~~~~~
(ディーラーより)
旬オーダー確定
~~~~~~~~~~
(7
日
(
標準仕様別 ・ バージョン ・ ミックス
(1日単位)
5~10日
(1日単位)
確定
~~~ (
2 日
(5日
生産順序計画
藤本隆宏 『生産マネジメント入門』 日本経済新聞社 2001 (Ⅰp184 図6.6)
‡
(1日単位)
(サイクルタイム単位)
(
確定
日
(
(4
(
特注オーダー
(デイリーオーダー)
部品発注量(仕様ミックス)の計画精度アップ
2ヶ月前
1ヶ月前
内示計画
確定
月次計画
2日前
リアルタイム
順序計画
±10%
実際発注量
(カンバンによる)
?
…
リワーク、故障
などによる計画
のくるい。
4.MRP(material requirement planning)
= 材料所要量計画(インプットの投入計画)
マスタースケジュール(基準生産計画)をもとに、
一連の計算プロセスを経て、
上流の各段階において、
必要な材料の品種、所要量、所要時点を算出し、
生産指示・資材手配の指示を現場に与えるシステム。
(1)総所要量計算:マスタースケジュールを部品展開。
(2)正味所要量計算:在庫量と発注残とを差し引く。
(3)ロット編成計算:発注ルール→完了ベースの計画オーダー
(4)先行計算:前工程リードタイム→着手ベースの計画オーダー
MRP (Material Requirement Planning)の計算体系
MRPは、基準生産計画(Master Schedule)をインプットとし、構成部品表(Bill of Materials)を
多ステージ生産工程の全ステップに対して製造指示を行うための情報を作り出す。
子部品のレベルに移って同じ手順を繰り返す
正味所要量
計算
総所要量計算
Ⓞ
基準生産計画
(マスター
スケジュール)
①
P(t)
期間別
総所要量
(部品 i)
Gi (t)
部品展開
1
②
期間別
正味所要量
(部品 i)
Ni (t) =Gi - Ii - Oi
在庫・発注残を
差し引く
2
構成部品表
(bill of materials)
ロット編成計算
③
先行計算
Yi (t) =ΣNi (t)
ロットをまとめる
藤本隆宏 『生産マネジメント入門』 日本経済新聞社 2001 (Ⅰp188 図6.8)
スミス他『MRPの理論と実践』日本能率協会などをもとに筆者作成
着手ベース
(発注ベース)
スケジュール
Xi (t) =Yi (t-ti)
納入リードタイムを
勘案する
3
手持在庫ファイルli(t)
発注残ファイルOi(t)
④
完了ベース
(入庫ベース)
スケジュール
4
ロットサイズ決定ルール
都度発注
定量発注
定期発注、ほか
部品別
リードタイムファイル
(Lti)
‡
MRPの計算課程
着手日順
計画オーダー
※
基準生産計画
総所要量計算
期間別
総所要量
※下位レベルの
構成部品票
先行計算
リード
タイム
日 数
在庫
仕掛
注残
純所要量
計算
総所要量計算
に移り、構成部品
表の最下位品目
にたどりつくと、
MRP計算を
終える。
発注方針
完了日順
計画オーダー
期間別
ロット編成
計算
純所要量
レイトン.スミス・小島義輝・森正勝 日本能率協会 1977年
『MRPの理論と実践(生産管理のダイナミツクシステム)』
‡
MRPの数値例(1)
データ(1) 構成部品表
データ(2) 基準生産計画
X
A× 1
B× 4
C× 1
D × 10
E × 0.4
品名
D×4
X
Y
Z
F× 5
指示日 ××年××月××日
計画数量(週次)
2
3
4
5
100
100
200
200
200
200
100
50
50
150
-
1
300
50
データ(3) 部品関連情報
品 名
A
B
単 位
個
個
在 庫 数
250
600
指 示 済 み 数
1 ,0 5 0
C
個
40
300
D
個
1 ,0 0 0
5 ,0 0 0
E
個
50
100
F
個
400
4 ,7 0 0
X
個
-
300
発
注 方 針
都
度
都
度
定
期
(2 週 間 )
定
数
(5 0 0 0 )
定
数
(1 0 0 )
定
期
(3 週 間 )
生 産 計 画
ど
お
り
リ ー ド タ イ ム
2
週
2
週
備
購
入
購
入
品
部
品
部
品
1
週
組
立
部
品
3
週
購
入
部
品
3
週
コ
イ
部
ル
状
5
週
購
入
部
品
1
週
完
成
製
品
品
‡
レイトン.スミス・小島義輝・森正勝 『MRPの理論と実践(生産管理のダイナミツクシステム)』 日本能率協会 1977年
MRPの数値例(1) ー 部品A の計算
Xの組立ラインで使われる、部品A(購入部品)は、1個使いであり、Xの組立計画(着手)に合わせて、
次の数量を、倉庫から払い出してやればよい。
A
払出し計画
1
2
3
4
100
100
200
200
現在の在庫数は、250個であり、各週末の予想在庫は
A
在庫(250)
A
納品計画
1
2
3
4
150
50
?
?
1
2
3
4
-
-
150
200
業者に納品させるためには、それよりも前に、注文をしておく必要がある。部品Aのリードタイムは、
データ(3)より、2週間である。購買担当者は、第1週に150個、第2週に200個の注文を行えばよい。
A
注文計画
1
2
3
4
150
200
-
-
以上をまとめるとMRP計算は次のとおり。
1
2
3
総
所
要
量
100
100
200
指示済みオーダー
在 庫 ( 250 )
150
50
純
所
要
量
150
計 画 オ ー ダ ー ( 着 手)
150
200
(勧告オーダー) 150個を発注せよ、納期は第3週初め。
4
200
200
-
‡
レイトン.スミス・小島義輝・森正勝 『MRPの理論と実践(生産管理のダイナミツクシステム)』 日本能率協会 1977年
MRPの数値例(2)
表 6-2 MRP計算の数値例
2000年12月
2001年1月
2001年2月
5000台
6000台
4000台
ランプ総所要量
10000個
12000個
8000個
指示済オーダー数
0個
0個
0個
13000個
1000個
0個
マスタースケジュール
期末の在庫
ランプ純所要量
不明
0個
7000個
発注計画量
0個
7000個
不明
注:下線は、既知のデータを示す。
‡
藤本隆宏 『生産マネジメント入門』 日本経済新聞社 2001 (Ⅰp190 表6.2)
MRPの効果と限界
ロジックとしては完璧・・・しかし現実は?
・ 実際の生産が計画からずれたとき、修正メカニズムが
内蔵されていない。
・ リードタイムが計画からずれた時も同様。修正メカニズムが
内蔵されていない。
・ 現状固定的。改善促進的でない
・ 大型コンピュータの時代には、システムが高かった。
・ 「生産能力は無限」という仮定は非現実的
→ CRP,MRPII
かんばんシステムと比較せよ(後述)
5.工数計画と能力・負荷分析(CRPとMRPII)
工数計画 = 生産能力の計画
生産能力 ー 負荷 = 余力
「個数表示」または「時間表示」 → 「工数山積表」で分析
<注意点>
・ 良品率(歩留り率)を勘案すること
・ プロダクトミックスを勘案すること(何あたりの能力か?)
・ 段取り替時間、ダウンタイム(機械故障時間など)も勘案すること。
個数表示の生産能力
① 日産能力 = 操業時間(H)/日 ×
② 負荷 = 1日あたり良品所要量
正味作業時間
操業時間
×
グロス生産量
正味作業時間
× 良品歩留り
(ただし特定製品ミックス換算)
③ 余力 = 1-(負荷/日産能力) (ただし、製品ミックスをそろえること)
時間表示の生産能力:
同じことを、時間単位で示す。
機械が複数並列している場合の機械能力は、
①A
[日産能力]
= [機械台数] ×[操業時間(H)/日] × (1 - ダウンタイム)
人的能力の場合は、作業者の熟練度、出勤率などを勘案して:
①B
[日産能力] = [人員数] × [実働期間/日] × [熟練換算係数]
×
[出勤率] × [直接時間/実働時間]
熟練換算係数は、標準能力を1として職場で加重平均する。
②
[1日当たり負荷] = (良品所要量 × 標準工数/良品率)+ [段取り替え時間]
③
[余力] = [能力(H)] - [負荷(H)]
図 6-9
工数山積表(加工工程の数値例)
a. 製品別の負荷
製品
標準工数
(B)
負荷
(A x B)
0.02H/個
20H
0.04H/個
40H
ドリル
0.03H/個
30H
旋盤
0.02H/個
60H
0.03H/個
90H
ドリル
0.02H/個
60H
旋盤
0.03H/個
60H
0.01H/個
20H
0.04H/個
80H
工程
生産量
(A)
旋盤
部品 X
部品 Y
部品 Z
フライス
フライス
フライス
ドリル
1000個
3000個
2000個
‡
藤本隆宏 『生産マネジメント入門』 日本経済新聞社 2001 (Ⅰp199 図6.9)
時間
b. 工数山積表
200
計170H(10H不足)
計150H(余力10H)
150
能力=160H
計140H(余力20H)
部品 Z:20H
部品 Z:80H
100
部品 Z:60H
部品 Y:90H
部品 Y:60H
50
部品 Y:60H
部品 X:40H
0
部品 X:20H
旋盤
フライス
部品 X:30H
ドリル
‡
藤本隆宏 『生産マネジメント入門』 日本経済新聞社 2001 (Ⅰp199 図6.9)
C R P と M R P II
C R P (capacity requirement planning)
= M R Pと接続される工数計画のシステム
クローズド・ループM R P = M R P + C R P
M R P II (manufacturing resource planning)
= M R P + C R P + その他インプットの計画
(資金、人員など)
材料所要量計画と工数計画を一体化し、
さらに現場からのフィードバックを折り込んだシステム。
図6-10
CRP(Capacity Requirement Planning)
<能力不足対策>
1. 残業 2. 下請
フィードバック
3. リードタイム変更
どの製品が能力不足
かを逆探知
4. ルート 変更
5. 着手スケジュール変更
yes
6. マスタースケジュール変更
基準生産計画
(マスター・
スケジュール)
MRP
(狭義)
部品別着手
スケジュール
部品別・
ワークセンター別
加工スケジュール
部品別・ステップ別
リードタイム・データ
加工時間
セットアップ時間
待ち時間
輸送時間
部品別・ワーク
センター別
負荷(工数)
部品別 routing sheet
(ワークセンターごと
のセットアップ時間と
単位加工時間)
ワーク
センター別
能力
オーバー?
工数山積表
no
実行
‡
藤本隆宏 『生産マネジメント入門』 日本経済新聞社 2001 (Ⅰp200 図6.10)
図6-11 クローズド・ループMRPの基本構成
全般的生産計画 (Aggregate Production Planning)
基準生産計画 (Master Production Schedule)
資材所与量計画(狭義のMRP)
修
正
工数計画 (CRP)
no
能力的に実行可能か?
フィード
バック
yes
工数計画(CRP) の実施
資材所与量計画(MRP) の実施
‡
藤本隆宏 『生産マネジメント入門』 日本経済新聞社 2001 (Ⅰp201 図6.11)
Chase, R. and N. Aquilano, Production and Operations Managemment, Irwin より筆者作成
6.生産指示
生産指示(order release)
(1)バッチごとの「総括手配」
→ 作業準備、作業配分、作業指導
(2)「個別手配」(実際の作業の開始を指示)
ジョブショップの場合、より複雑な生産指示システムが必要。