Blackfin 搭載評価ボードで uClinux を動作させる

MMU のない CPU や DSP でも動作する Linux
6
第
Blackfin 搭載評価ボードで
uClinux を動作させる
章
川本 泰久
Linux は本来パソコン向けに作られたことから,豊富なメモリと MMU を持つ CPU で動作
することを前提としている.しかし組み込み向けの MMU を持たない CPU や DSP などでも
Linux を動作させたいという要望は大きい.
ここでは,Blackfin DSP でも動作する Linux である,uClinux を Blackfin 搭載評価ボード
で動作させる手順について説明する.
(編集部)
組み込み機器向けの Linux として uClinux(μClinux と
「E!Kit-BF533」は,米国 Analog Devices 社製の Blackfin
も表記する)が公開されています.通常の Linux は,MMU
プロセッサ「ADSP-BF533」を搭載した評価用ボードです
付き CPU と豊富なメモリで動作させることを前提に設計
(写真 1,表 1).評価キットと接続して使用できます.な
されていますが,uClinux はいわゆる組み込みマイコンや
お Blackfin プロセッサの詳細仕様やデータブックなどは,
DSP でも動作できるように MMU なしで動作できるように
同社の Web サイト注 1 から入手可能です.
作られています.また,Linux カーネル本体だけでなく,
周辺のコマンド(/bin/ls など)であるユーザ・ランドも
組み込み用にサイズの小さいものが用意されています.
1.開発環境と uClinux の
ソース・ファイルを準備する
本稿では,実際に uClinux を動作させるには何をしたら
よいのかを,CQ 出版社の「組み込みシステム開発評価キッ
図 1 のような機器構成を例に説明します.E!Kit-BF533
ト(以下評価キット)
」やデバイスドライバーズ製の「E!Kit-
は評価キットに実装してあり,ホスト・パソコンとはシリ
BF533」といった学習向け組み込みボードを使って説明し
アル・ケーブルで接続されています.
ます.
表 1 E!Kit-BF533 の仕様
Analog Devices 社 ADSP-BF533 600MHz
CPU
16K バイト命令キャッシュ/32K バイト・データ・キ
ャッシュ
SDRAM
64M バイト
フラッシュ ROM
4M バイト
シリアル
UART × 1
CPLD
Xilinx CoolRunner-II XC2C64A 100 ピン
JTAG
14 ピン
120 ピン× 2
拡張ソケット
CQ 出版社製「組み込みシステム開発評価キット」
イーエスピー企画製「組み込みベースボード」
デバイスドライバーズ社「ベースボード」
(開発予定)
写真 1 E!Kit-BF533 の外観
温度
動作時 0 ∼ 50 ℃(周辺温度)
電源
+ 3.3V ± 5%,max1.0A
大きさ
100mm × 60mm
uClinux 2.6 系カーネル
OS
注 1 :http://www.analog.com/jp/embedded-processingdsp/blackfin/processors/index.html
TOPPERS/JSP(μITRON4.0 仕様準拠,動作確認済)
.NET Micro Framework 3.0 移植予定
定価
47,600 円(税込み価格 49,980 円)
,開発環境 CD 付き
104 KEYWORD ―― uClinux,Blackfin DSP,ADSP-BF533,Linux カーネルのコンフィグレーション,GNU Toolchain
Oct. 2009