低コストなポータブル・デジタルホログラフィック顕微鏡 - 伊藤智義研究室

低コストなポータブル・デジタルホログラフィック顕微鏡
の開発
Portable and low-cost digital holographic microscopy
○
下馬場朋禄 1),豊田太郎 2) ,増田信之 1) ,伊藤智義 1)
○
Tomoyoshi Shimobaba1), Taro Toyota2), Nobuyuki Masuda1) and Tomoyoshi Ito1)
千葉大学大学院工学研究科 1),東京大学大学院総合文化研究科 2)
Graduate school of Engineering, Chiba University1), Department of science, The University
of Tokyo2)
E-mail: [email protected]
Digital holographic Microscopy (DHM) allows us to reconstruct a tissue in three-dimension. A set-up
of DHM consists of CCD camera, a reference light such as a laser, and optical components. In general,
we cannot treat the set-up in portable and the development cost is expensive. In this paper, we report
portable and low-cost DHM, only using a web camera and point light source LED. The cost and size of
the set-up are under about 7,500 Japanese yen and 120 mm×80mm×55mm, respectively.
1.はじめに
ディジタルホログラフィック顕微鏡(DHM:Digital Holographic Microscopy)は,ワンショットで試料の振幅・位
相情報を同時に計測することが可能なため,試料を 3 次元的に観察できる特徴がある.DHM は,CCD や CMOS カメラな
どで試料のホログラムを撮影し,計算機を用いてそのホログラムからの光波伝搬(回折計算)を計算することで再生
像を得ることができる[1].
その光学系は,ホログラムを撮影するカメラ,参照光源(一般的にレーザを用いる)とビームスプリッタや対物レ
ンズなどの光学部品から構成される.このような光学系を組み上げるのにコストがかかるため市販のデジタルカメラ
を用い,光学部品の使用点数を削減することでコストを削減する報告がなされている[2].しかし,そのコストは$1,000
程度とまだ高価であり,光学系も撮影距離が 30~40cm に設定されているため小型とは言えない.
本報告では,Web カメラの CCD 素子を流用し,参照光源に安価な点光源 LED と Gabor 型ホログラム[3]を撮影する光学
系を採用することでコストを削減するとともにポータブルな DHM システムの構築を行ったので報告する.
2.低コストなポータブル DHM システム
80mm
120mm
55mm
+5V
Sample
120mm
Web
Camera
150
80mm
Point light
source LED
Sample
Personal
conputer
図1
Web
camera
USB2.0
interface
Point light
source LED
USB2.0
Interface
低コストなポータブル DHM システム.左は概略図.右は外観図.
図 1 に今回開発した DHM システムの概略図(左)と概観(右)を示す.この DHM は左図のように,点光源 LED から
発した光を参照光源として試料に照射し,試料から拡散された物体光と,試料をそのまま透過した参照光を CCD カメ
ラ上で干渉させる Gabor 型ホログラムを撮影する.右図を見てわかるように,装置全体のサイズが 120 mm×80mm×55mm
と小型であり,片手で持ち運び可能なポータブルな設計となっている.
Web カメラには,サンワサプライ社製 CMS-V27SETBK を用いた.Web カメラには像を CCD 素子上に結像させるレンズ
が付いているが DHM では不要なため,分解して取り外し CCD 素子をむき出しの状態で使用する.この CCD 素子の画素
数は 640×480 画素で,最大フレームレートは 30fps となっている.この CCD を制御するために Intel 社が開発を行っ
ているオープンソースライブラリ OpenCV を用いた.また,この CCD はカラーCCD のため,再生像を計算する前にグレ
ースケールへ変換した.変換式には c=0.2999*r + 0.587*g + 0.114*b(c:グレースケール値,r:赤の画素値,g:緑の
画素値,b:青の画素値)を用いた.
点光源 LED には,コーデンシ社製の BL05-1211(発光部 50μm,波長 650nm,スペクトル半値幅 30nm)を使用した.
この LED の規格からコヒーレンス長は約 14μm であると予想される.点光源 LED の電源は CCD カメラから供給されて
いる 5V の電圧を使用し 150Ω の抵抗で電流制限を行っている.
Web カメラは購入時の価格が 3,980 円,RS コンポーネンツ社経由で購入した点光源 LED とケースの価格がそれぞれ
2,800 円と 700 円であり,総コストは約 7,500 円となっている.ただし,スペーサやネジ,抵抗の価格は無視した.
撮影されたホログラムは USB2.0 インターフェース経由で 30fps の速度でコンピュータへ送信される.コンピュータ
はホログラムの再生像計算を行う.今回は試料と CCD カメラ間の距離を数 cm に設定しているため,再生像計算に角ス
ペクトル法[1]を用いている.角スペクトルの計算には我々が開発を行っている波動光学計算ライブラリ CWO を使用し
た.このライブラリは[5]から無料でダウンロードできる.
図 2 と図 3 に本 DHM からの再生像を示す.試料には,ポリスチレン製ビーズ(平均サイズ 20um)を使用した.両図
の左は再生像を,右はホログラムとなっている.図 2 は焦点をずらした状態で,再生像(左)中にビーズを確認する
ことができない.図 3 は合焦点の位置で再生像を観察している様子で,再生像(左)中にビーズを確認することがで
きる.
図2
図3
合焦点ではない再生像(左)
.右図はホログラム.
合焦点の再生像.ビーズを確認しやすいよう赤丸を記した.
4.まとめ
低コストなポータルタイプの DHM 開発について報告した.今回は手元にあった部品を使用したためコストが 7,500
円となったが,購入ルートを見直すことで 5,000 円以下での開発も可能であると見積もっている.また,今回の Web
カメラは露光時間やゲイン調整できないものを使用したが,このようなことができる安価な Web カメラも市販されて
いるため,更に画質や分解能を向上させることができる.今後はこれらについて検討を行う.
謝辞
本研究は,文部科学省科学研究費補助金若手研究(B)(課題番号 21760308)及び総務省・戦略的情報通信研究開発推
進制度(SCOPE)(課題番号 09150542)による補助のもとで行われました.深く感謝の意を表します.
文献
1) T.C.Poon (ed.), “Digital Holography and Three Dimensional Display - Principles and Applications”, Splinger (2005)
2) T. G. Dimiduk, E. A. Kosheleva, D. Kaz, R. McGorty, E. J. Gardel, and V. N. Manoharan, “A Simple, Inexpensive Holographic
Microscope,” in Digital Holography and Three-Dimensional Imaging, OSA Technical Digest (CD) (Optical Society of America,
2010), paper JMA38
3) K. M. Molony, B. M. Hennelly, D. P. Kelly, T. J. Naughton, “Reconstruction algorithms applied to in-line Gabor digital
holographic microscopy”, Opt. Commn., 283, 6, 903-909 (2010)
4) http://sourceforge.net/projects/thegwolibrary/