センター試験の問題と解答 2013本試験

センター試験の問題と解答
2013本試験
H=1.0
S=32
C=12
N=14
Cl=35.5
O=16
Fe=56
Na=23
Pb=207
第3問.次の問い(問1~問7)に答えよ。
問1.工業的製法の記述として下線を付した物質が適当でないものを、次の①~⑤のうちから一つ選べ。
[15]
① 鋼は、融解した銑鉄に酸素を吹き込み、製造される。
② アンモニアは、触媒を用いて水素と窒素を反応させて製造される。
③ 硝酸は、触媒を用いてアンモニアと空気から製造される。
④ フッ化水素は、蛍石(フッ化カルシウム)に濃塩酸を加え、加熱して製造される。
⑤ 酸素は、液体空気を分留して製造される。
問2.14族元素の単体に関する記述として誤りを含むものを、次の①~⑤のうちから一つ選べ。
[16]
① フラーレンC60は、球状の分子である。
② ケイ素は、ダイヤモンドと同様の結晶構造をもつ。
③ ケイ素は、二酸化ケイ素を還元してつくることができる。
④ スズは、常温で希塩酸に溶けやすい。
⑤ 鉛は、常温で希塩酸に溶けやすい。
問3.強塩基の水溶液と反応して塩をつくる酸化物として適当なものを、次の①~⑤のうちから二つ選べ。
ただし、解答の順序は問わない。
[17]・
[18]
4
Na2O
② MgO
③ P4O10
④ CaO
⑤ ZnO
問4.硫黄の化合物に関連する記述として誤りを含むものを、次の①~⑤のうちから一つ選べ。[19]
①
亜硫酸水素ナトリウムと希硫酸の反応により、二酸化硫黄が発生する。
②
硫化水素は、ヨウ素により還元される。
③
硫化水素は、2価の弱酸である。
④
濃硫酸を加えると、スクロース(ショ糖)は黒くなる。
⑤
濃硫酸を多量の水に加えると、多量の熱が発生する。
問5.銅に関する記述として誤りを含むものを、次の①~⑤のうちから一つ選べ。
[20]
① 硫酸銅(Ⅱ)水溶液に、希塩酸を加えて硫化水素を通じても、沈澱は生じない。
② 硫酸銅(Ⅱ)水溶液に、アンモニア水を少量加えると沈澱が生じるが、さらに加えると生じた沈澱は
溶ける。
③ 硫酸銅(Ⅱ)水溶液に、亜鉛の粒を加えると、単体の銅が析出する。
④ 銅の電気精錬では、陰極に高純度の銅が析出する。
⑤ 銅の電気精錬では、陽極の下に、銅よりイオン化傾向の小さい金属が沈澱する。
問6.0.40mol/Lの塩化鉄(Ⅲ)水溶液20mLに、十分な量のアンモニア水を加えて得た沈澱を
すべてろ過して取り出し、バーナーで強熱して酸化鉄(Ⅲ)の粉末を得た。この粉末の質量は何gか。
最も適当な数値を、次の①~⑥のうちから一つ選べ。
[21]
①
0.32
② 0.64
③ 1.3
④
3.2
⑤ 6.4
⑥ 13
問7.図1は実験室における塩素の製法を示している。下の問い(a・b)に答えよ。
a.図1の液体Aと固体Bの組み合わせとして最も適当なものを、次の①~④のうちから一つ選べ。
[22]
b.図1の気体捕集装置Cの捕集方式に関する記述として、最も適当なものを、次の①~⑤のうちから
一つ選べ。
[23]
①
上方置換が最もよい。
② 下方置換が最もよい。
④
上方置換・水上置換のいずれでもよい。
③ 水上置換が最もよい。
⑤ 下方置換・水上置換のいずれでもよい。
第4問.次の問い(問1~問7)に答えよ。
問1.次の三つの化合物の破線で囲まれた官能基a~cの名称として最も適当なものを、下の①~⑥のうちから
一つずつ選べ。
[24]~[26]
① スルホ基
⑤
② アルデヒド基
カルボキシ基(カルボキシル基)
③ ニトロ基
④ アミノ基
⑥ ヒドロキシ基(ヒドロキシル基)
問2.炭化水素に関する記述として誤りを含むものを、次の①~⑤のうちから一つ選べ。
[27]
①
エタン分子では、C-C単結合を軸にして両側のメチル基が回転できる。
②
トランス-2-ブテンの炭素原子は、すべて同一平面上にある。
③
アセチレンの水素原子と炭素原子は、すべて同一直線上にある。
④
アセチレン3分子を触媒の存在下で結合させて、ベンゼンをつくることができる。
⑤
二重結合を一つもつ環式炭化水素の一般式は、CnH2n(n>=3)である。
問3.生成する有機化合物が誤っている反応を、次の①~⑤のうちから一つ選べ。
[28]
問4.高分子化合物に関する記述として誤りを含むものを、次の①~⑤のうちから一つ選べ。
[29]
① ポリ塩化ビニルは、塩化ビニルの縮合重合により生成する。
② ポリ塩化ビニルは、C-Cl結合をもつ。
③ ポリ塩化ビニルは、成形(成型)加工され、水道管などに利用されている。
④ ナイロン66(6,6-ナイロン)は、アジピン酸とヘキサメチレンジアミンの縮合重合により生成する。
⑤ ナイロン66は、合成繊維などに利用されている。
問5.直鎖のアルカンの炭素原子の数(1~8)と沸点の関係を表すグラフとして最も適当なものを、
次の①~⑥のうちから一つ選べ。[30]
問6.次の操作1~5からなる実験を行った。下の問い(a・b)に答えよ。
操作1.試験管Aにエタノールをとり、二クロム酸カリウム水溶液、希硫酸、沸騰石を入れた。
操作2.図1のように試験管Aを加熱し、生じた物質を水の入った試験管Bに採集した。
操作3.試験管B中の水溶液の一部をとり、これをフェーリング液と反応させた。
操作4.硝酸銀水溶液とアンモニア水を用いて、別の試験管アンモニア性硝酸銀水溶液を調整した。
操作5.アンモニア性硝酸銀水溶液の入った試験管に、試験管B中の水溶液の一部を加え、60~70℃
に加熱した。
a.この実験は換気のよい場所で行った。使用した試薬のうち、刺激臭をもつものを、次の①~⑤のうちから
一つ選べ。
[31]
① 二クロム酸カリウム水溶液
④
硝酸銀水溶液
② 希硫酸
③ フェーリング液
⑤ アンモニア水
b.この実験に関連する記述として誤りを含むものを、次の①~⑤のうちから一つ選べ。
[32]
① 操作1で、沸騰石を入れるのは、急激な沸騰(突沸)を防ぐためである。
② 操作2で、図1のように試験管Bを氷冷するのは、生じた物質を確実に液化させるためである。
③ 操作3で、フェーリング液と反応した物質は、ホルムアルデヒドである。
④ 操作4で、アンモニア水が少ないと褐色の沈殿が生じる。
⑤ 操作5で、試験管内部に銀が析出した。
問7.酢酸エチルは、濃硫酸を触媒として酢酸とエタノールから合成できる。酢酸2.0molとエタノール
8.0molを反応させたところ、酢酸エチル88gが得られた。酢酸の何%が酢酸エチルに変化したか。
最も適当な数値を、次の①~⑥のうちから一つ選べ。[33]
① 42
② 44
③ 50
④ 83
⑤ 88
⑥
100
2013本試験(解答とヒント)
第3問
問1.答
[15] ④
① 適当。高炉で生成された銑鉄を転炉に移して、転炉で酸素を吹き込み、不純物の少ない鋼を生産する。
② 適当。アンモニアは、工業的には、ハーバー・ボッシュ法によってつくられる。アンモニアの生成率を
高くするには、温度は低く、圧力は高くすればよいが、現在では、四酸化三鉄を主成分とした触媒
を用いて、温度は400~600℃、圧力は1×107~3×107Paの条件で合成している。
③ 適当。触媒に白金を使い、アンモニアを酸化して一酸化窒素をつくり、さらに酸化して二酸化窒素を経て
硝酸を得る方法がオストワルト法である。
④ 不適当。フッ化水素は、蛍石(フッ化カルシウム)に濃硫酸を加え、加熱してつくられる。
CaF2+H2SO4
→ CaSO4+2HF
⑤ 適当。酸素は液体空気の分留によって得られる。
問2.答
[16] ⑤
① 正しい。C60(フラーレン)は
球状分子である。
② 正しい。ケイ素の結晶は、ケイ素原子の回りに、別の4個のケイ素原子が正四面体の頂点を形成するように
配列しており、ダイヤモンドと同じ結晶構造をしている。
③ 正しい。ケイ素は、二酸化ケイ素を電気炉で還元してつくることができる。
④ 正しい。スズは、水素イオンよりイオン化傾向が大きく、希塩酸に溶けて水素を発生する。
Sn+2HCl → SnCl2+H2
⑤ 誤り。鉛は、水素イオンよりイオン化傾向が大きいが、水に溶けにくい塩化鉛(Ⅱ)PbCl2の被膜を
表面につくるため、希塩酸には溶けにくい。
問3.答
[17]
・
[18] ③・⑤
非金属元素の酸化物・P4O10は、酸性酸化物で、強塩基と反応する。また、両性元素の酸化物・ZnOは、
両性酸化物であり、酸とも強塩基とも反応する。
問4.答
[19] ②
① 正しい。亜硫酸水素ナトリウム(NaHSO3)に希硫酸を加えると、二酸化硫黄が発生する。
NaHSO3+H2SO4 → NaHSO4+H2O+SO2
2NaHSO3+H2SO4 → Na2SO4+2H2O+2SO2
② 誤り。 硫化水素は還元剤で、ヨウ素は酸化剤。
H2S + I2
<酸化数>
-2
0
→ S+2HI
0
-1
Sの酸化数(-2→0)増加→酸化される(相手を還元=還元剤)
Iの酸化数(0→-1)現象→還元される(相手を酸化=酸化剤)
③ 正しい。H2Sは2価の弱酸
④ 正しい。濃硫酸を加えると、スクロース(ショ糖)は黒くなる。
C12H22O11
→ 12C + 11H2O
⑤ 正しい。濃硫酸を多量の水に加えると、多量の熱が発生する。
問5.答
[20] ①
① 誤り。Cu2+は、酸性水溶液中で、硫化水素を通じると硫化銅(Ⅱ)CuSの黒色沈澱を生じる。
② 正しい。CuSO4水溶液にNH3水を少量加えると、水酸化銅Cu(OH)2の青白色沈澱が生じる。
さらに、NH3水を加えると、
[Cu(NH3)4]2+・テトラアンミン銅(Ⅱ)イオンが生じて、
沈澱は溶ける。水溶液の色は深青色になる。
③ 正しい。イオン化傾向は、Zn>Cu なので、Cuが析出する。
Cu2+ + Zn
→ Zn2+ + Cu
④ 正しい。電気精錬やメッキでは、電気精錬(粗銅などを陽極、純銅などを陰極)
、
メッキ(メッキする金属を陽極、メッキされる金属を陰極)にする。
Cu2+ + 2e- (粗銅のなかの銅がイオンになる)
<銅の電気精錬> 陽極: Cu →
陰極: Cu2+ + 2e- → Cu
(陰極で銅が析出する)
⑤ 正しい。銅の電気精錬では、陽極の下に、銅よりイオン化傾向の小さい金属(Ag・Auなど)が沈澱する。
これを陽極泥という。
問6.答
[21] ②
1.塩化鉄(Ⅲ)FeCl3の水溶液に、十分なNH3水を加えると、
水酸化鉄(Ⅲ)Fe(OH)3の赤褐色沈殿が生じる。
Fe3+ + 3OH- → Fe(OH)3
―――(1)
2.これを強熱すると、酸化鉄(Ⅲ)Fe2O3が得られる。
2Fe(OH)3
→ Fe2O3 + 3H2O
―――(2)
3.0.40mol/Lの塩化鉄(Ⅲ)FeCl3の水溶液20mLから得られるFe(OH)3の物質量は、
0.40 
20
mol
1000
4.Fe(OH)3から得られるFe2O3の物質量は、
(2)式より
0.40 
20 1
 mol
1000 2
5.また、Fe2O3のモル質量は(160g/mol)であるから、その質量は、
160  0.40 
問7.答
20 1
  0.64 g
1000 2
a.
[22] ①
―――(3)
b.
[23] ②
a.
①
MnO2+4HCl →
MnCl2+2H2O+Cl2
②
NH4Cl+NaOH →
③
NaCl+H2SO4 →
④
Zn+2HCl → ZnCl2+H2
NaCl+H2O+NH3
NaHSO4+HCl
塩素が発生するのは、①である。
b.Cl2は水に溶け、空気より重いので、下方置換で捕集する。したがって、②である。
第4問
問1.答
[24] ②
a.アルデヒド基
[25]
⑤
[26]
④
b.カルボキシ基(カルボキシル基)
c.アミノ基
問2. 答
[27] ⑤
① 正しい。アルカンの炭素間の単結合C-Cでは、この単結合C-Cを軸として自由に回転できる。
② 正しい。炭素間の二重結合C=Cで結合している2個のC原子と、これらのC原子に結合している2個ずつ
の原子は、すべて同一平面上に存在している。 H
CH3
╲
╱
C=C
╱
CH3
トランス-2-ブテン
╲
H
③ 正しい。炭素間の三重結合C≡Cで結合している2個のC原子と、これらのC原子に結合して
いる1個ずつの原子は、すべて同一直線上に存在している。
H-C≡C-H
④ 正しい。アセチレン3分子を反応させると、ベンゼンが合成できる。
⑤ 誤り。二重結合を一つもつ環式炭化水素はシクロアルケンで、その一般式はCnH2n-2(n>=3)
である。*シクロアルカンの一般式はCnH2n(n>=3)*
問3. 問3.答
[28] ②
① 正しい。エタノール2分子から1分子の水分子が脱水すると、ジエチルエーテルが生成する。
② 誤り。炭化カルシウム(カーバイド)CaC2に水を加えると、アセチレンが生成する。
③ 正しい。マレイン酸を約160℃に加熱すると、カルボキシ基(カルボキシル基)から1個の水分子が
とれて無水マレイン酸が生成する。
④ 正しい。ベンゼンに鉄の触媒のもとで、塩素を作用させると、置換反応により、クロロベンゼンが生成する。
⑤ 正しい。フェノールは酸(弱酸)であるから、塩基の水酸化ナトリウムと水溶液と中和して、
ナトリウムフェノキシドを生成する。
<参考>
1.2CH3-CH2-OH
エタノール
→ CH3-CH2-O-CH2-CH3 + H2O
ジエチルエーテル
2.CaC2 + 2H2O → Ca(OH)2 +
カーバイド
アセチレン
3.マレイン酸→無水マレイン酸(脱水反応)
マレイン酸
無水マレイン酸
4.ベンゼン→クロロベンゼン(置換反応)
5.
(中和反応)
C2H2
問4. 答
[29] ①
① 誤り。塩化ビニルを付加重合すると、ポリ塩化ビニルが合成できる。
② 正しい。
③ 正しい。
④ 正しい。
⑤ 正しい。
<参考>
1.塩化ビニル→ポリ塩化ビニル
4.アジピン酸+ヘキサメチレンジアミン→ナイロン66(6,6-ナイロン)
問5.答
[30] ③
直鎖のアルカンでは、室温で、炭素の数が4以下のメタン・エタン・プロパン・ブタンは気体、5以上の
ペンタン・ヘキサン・・・は液体、16~18以上では固体となる。したがって、炭素原子の数が4以下のもの
の沸点は室温より低く、5~8のものの沸点は室温より高い。最も適当なグラフは③になる。
問6.答
[31] ⑤ [32] ③
a.アンモニアは刺激臭がある。⑤が答えである。
b.下の①~⑤より、③が答えである。
①
正しい。沸騰石を入れる理由は、急激な沸騰(突沸)を防ぐためである。
② 正しい。エタノール(第一アルコール)を酸化すると、アセトアルデヒド(アルデヒド)になる。
アセトアルデヒドの沸点は低いので、氷冷してアセトアルデヒドを液体にして捕集する。
③ 誤り。ホルムアルデヒドは、メタノールを酸化したときに生成する物質である。
④ 正しい。アンモニア性硝酸銀水溶液を調製するとき、NH3水の量が少ないと、酸化銀(Ⅰ)Ag2Oの
褐色沈澱ができる。
2Ag+ +
⑤
2OH- → Ag2O
+ H2O
正しい。銀鏡反応が起こり、銀が析出する。アセトアルデヒドは還元性がある。
問7.答
[33] ③
1.酢酸とエタノールから酢酸エチルが生成する反応は、
CH3COOH + HO-C2H5 → CH3COOC2H5 + H2O
酢酸
エタノール
酢酸エチル
質量
88( g )
=
 1mol
2.酢酸エチルの物質量= モル質量 88( g / mol )
3.酢酸は2molあったので、
1
 100  50
2
反応した酢酸の物質量も1mol
答.50%