体内インプラントの MRI 適合性試験装置 ならびに試験 - 技術シーズ検索

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平成21年度シーズ発掘試験採択課題04-202の研究成果
ライフサイエンス
体内インプラントの MRI 適合性試験装置
ならびに試験技術
キーワード
MRI,インプラント,適合性,評価,試験
研 究 概 要
MRI 装置の普及に伴い、最近は体内医療器材を有する被験者の MRI 検査の機会が増えて
いる。MRI は図1に示すように 0.2〜3 テスラ程度の強い静磁界に加えて勾配磁界及び高周波
磁界を使うため体内器材との相互作用が懸念される。このような傾向を受け医療安全確保の
観点から脳動静脈奇形手術用クリップ承認基準が厚生労働省により呈示されるなど、体内器
材についても評価試験の必要性が著しく高まっている。しかし現在のところ国内はおろかアジ
ア地域には対応規格も試験実施機関もない。本研究では 4 つの ASTM(American Society for
Testing and Materials)規格(F2052-06:磁気変位力、F2213-06:磁気トルク、F2182-02a:発
熱、F2119-07:アーチファクト)に準拠し、しかも我が国における必要性に即した MRI 適合性評
価のための試験装置・技術の開発を行なうこととした。図2には、これまで申請者らが試作し
てきた MRI 適合性評価のための試験装置の外観を示す。
図1 MRI 装置と使用される磁界
図2 MRI 適合性評価試験試作装置の概観.(a)磁気変位力測定,(b)磁気トルク測定装置,(c)発熱測定装置,(d)ア
ーチファクト測定装置.
セールスポイント
本研究における成果を従来技術と比較した場合の優位性は、以下の2点である。
1. 冠状動脈用ステントのような小型・軽量の被検体のためのトルク測定装置:質量 1g 未
満・長さ 1.5cm 未満の冠状動脈用ステントを対象としてトルク測定装置の改造を行った。ス
テージの軽量化ならびに再調整によりこのような被検体の試験を可能にした。図3には新
しいサンプルステージの外観を示す。この部分を含めて装置全体は国内企業に外注して
製作した。我が国らしい精密な加工が施されている。
2. 磁束密度勾配測定用プレート:ガウスメータの位置決め精度を高めると共に、MR 装置ガ
H21課題番号:04-202
JSTイノベーションサテライト茨城
ントリー壁に沿った磁束密度勾配最大領域の測定を実施するため、独自の磁場測定用プ
レートを製作した。これにより再現性の高い磁束密度測定が可能になった。図4にはこの
プレートを MRI 装置に取り付けた様子を示す。欧米の MR 適合性評価試験会社における
磁束密度測定はプローブを手で固定して行なっている場合が多いが、それに対して安定
した測定が可能である。
図3 トルク測定装置の小型・軽量被検体用サ
ンプルステージ
図 4 磁場測定用プレートを MRI に取り付け
た様子
将来の展望や応用・用途
4 つの ASTM 規格に基づく試験手順ならびに報告事項については本年度までの研究におい
て十分に整備できた。トルク測定に関して今回の改良型装置により、冠状動脈用ステント程
度の被検体までは対応できると考えられ、実用域となった。変位力測定に伴う磁場測定に関
しても今回試作したプレートによって安定した測定が可能になった。これらの成果により今後
本装置を使った実際の試験を実施する見通しが立った。
また発熱試験装置に関しては本研究プロジェクト期間中(2009 年末)に規格の改訂
(F2182-02a→-09)があったので、改定後規格に準拠した装置を早急に製作し、試験実施の
体制を整える必要がある。
本研究の最終目標は我が国ならびにアジア地域における MR 適合性評価試験の拠点を形
成することである。今回の成果ならびに今回なし得なかった発熱測定に関する規格改定への
対応に基づいて今後この目標を達成するよう尽力する。
研
究
者
東海大学
黒田 輝
・ MRIによる体内温度分布の非侵襲画像計測法の研究
研 究 テ ー マ ・ MRI内視鏡の開発
・焼灼療法をナビゲートするシミュレーションシステムの構築
東海大学情報理工学部情報科学科
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