PDF:「食品の安全性に関する自主基準」 - わかやま市民生協

2007 年 4 月 1 日改定
2007 年 9 月 27 日一部改定
食品の安全性に関する自主基準
・・・自主基準本誌・・・
1.微生物自主基準
2.食品添加物自主基準
3.農産物・米の農薬等の使用に関する自主基準
4.動物医薬品自主基準
5.遺伝子組換え食品自主基準
2000 年 3 月 21 日
2002 年改訂(一部)
2003 年改訂
2007 年改訂
大阪いずみ市民生活協同組合
わかやま市民生活協同組合
・・・・・・
目次
・・・・・・
2007 年度の改定にあたって
P
1
~
P 3
【1】微生物自主基準
P 4
~
P 7
【2】食品添加物自主基準
P 8
~
P 16
【3】農産物・米の農薬等の使用に関する自主基準
P 17
【4】動物用医薬品自主基準
P 23 ~
P 24
【5】遺伝子組換え食品自主基準
P 25
P 26
【別紙】
1.食品の安全性に関する自主基準
運用マニュアル
2.食品の安全性に関する自主基準の参考資料
~
~
P 22
食品の安全性に関する自主基準』2007 年度の改定にあたって
2007.03.14
1.国の食品行政の変化といずみ・わかやま市民生協のかかわり
2001 年、2002 年と BSE 問題や輸入野菜の残留農薬問題、偽装表示問題など、食品の安全に
対する不安や不信を増幅するような事件が相次いで起きました。その様な情勢の中、世論と
消費者団体等のとりくみに押され、
「国民の健康保護が最も重要」との基本認識の下に 2003
年に食品安全基本法が制定され、食品衛生法及び健康増進法も一部改正されました。また、
2006 年には、すべての農薬の残留基準値を設定した『農薬に関するポジティブリスト制』が
施行されました。
食品安全基本法は、国、地方自治体及び食品関連業者の責務や消費者の役割を明らかにす
るとともに、
「リスク分析」という考え方を基本としています。①内閣府に設置する『食品安
全委員会』が科学的知見に基づく食品健康影響評価【リスク評価】を行う②その結果に基づ
き関連行政機関が【リスク管理】を実施する③施策の策定に当たり、関係者相互間の情報・
意見の交換【リスクコミュニケーション】を行うこと等が規定されています。不十分さはあ
るとはいえ、消費者の立場に軸足を移す、食品行政の大きな変化です。
いずみ・わかやま市民生協は、この行政の変化をより促進・後押しする立場で、積極的に
取り組みを進めています。いずみでは『大阪府食の安全・安心条例』の制定に向けた活動を
大阪府生協連、全大阪消団連とともにすすめるとともに、消団連の一員として大阪府環境農
林水産部がすすめている食品流通安全安心システム構築検討会にも参加しています。
『大阪府
食の安全・安心条例』は、今年 3 月に制定される予定です。わかやまでは平成 15 年に発足し
た「和歌山県食の安全県民会議」に参加し、食の安全行政に提言を行ってきました。
「和歌山
県食の安全・安心・信頼確保のための基本方針」や「食の安全・安心・信頼確保のためのア
クションプラン」
「食品衛生監視指導計画」等の策定にかかわり、消費者の声を食品行政に反
映しています。
2. いずみ・わかやま市民生協の『商品安全プラン』 (事業者として)
いずみ・わかやま市民生協の安全確保のしくみ(システム)
『食品安全プラン』は、国の基
準を補完する科学的な『自主基準』と自主基準にそった運用、検査体制です。安全に対して
の自主基準を持った上で、基準どおり、製造や流通できているのか確認できる、そして、検
査できる体制でなければ、実質的な安全の確保とはいえません。その『安全プラン』の要と
なるのが『自主基準』です。
(1)『食品の安全性に関する自主基準』に基づいて商品の開発、取り扱いを行います。
(2)商品検査センターで調べます。
(3)品質管理を強化するために、商品の生産・入荷からお届け・お買い上げまでのすべての
過程に品質管理できる仕組み ISO9001 を導入しました。
*ISO とは、国際標準化機構の略で、工業・農業産品の規格の標準化を目的とする国際
機関のことです。ISO9001 は、国際標準規格の「品質管理の仕組み」のことをいいます。
(4)トレーサビリティ・システムの構築をすすめます。
トレーサビリティ(trace+ability)とは、生産履歴が製品(商品)から原料、製造工
程などへさかのぼって把握することができ、必要に応じてその情報提供が可能なシステ
ムのことをいいます。
1
(5)取引先評価基準の設定と商品取引先評価委員会の設置により、適正な取引先を配置しま
す。
*評価項目:クレーム発生状況・重大事故・物流事故、経営状況、生協シェア等
(6)「リスク分析」という考え方を導入しています。
食品の安全には「絶対」はなく、
「リスク」が存在することを前提とした「リスクの評価」
と「リスクの管理」、
「リスクコミュニケーション」が必要です。
3.自主的に基準を持つ意味。
食の安全確保のためには、法律では、カバーしきれない部分があります。法律で決めら
れた基準では、運用上の判断ができなかったり、基準そのものがなかったりします。実質
的な安全確保のためには、法律の不十分さを補完した『自主基準』と運用のルールが必要
になります。そのことが国の規準自体をより消費者サイドに立った規準に変えていく力に
もなると考えます。
4.2007 年度の自主基準改訂について
いずみ・わかやま市民生協の自主基準は、1996 年に体系的にまとめられた後、2003 年、
食品安全基本法制定と食品衛生法及び健康増進法の一部改正内容を反映させ、大きく改定し
ました。その後も都度、小さな改定を行ってきました。今回、2003 年の改訂後の法改定や
科学的知見などの「変化への対応」と「分かりやすさ」という視点での改定を行います。
(1)微生物基準の改定
①食品分類を、実際の検査・運用にあわせて、分かりやすく整理しました。
現行基準は、水産とか畜産といった、売場づくりのための商品分類を使っていました。
新区分は食品の流通温度帯や製造時の加熱処理の有無、喫食時の加熱料理の必要性等
から9つの区分としました。
<食品区分>
加熱処理の有無
加熱調理の必要性
流通温度帯
製造時加熱処理あり
無加熱摂取、加熱後摂取
冷蔵・冷凍
製造時加熱処理なし
無加熱摂取
加熱後摂取
高水分活性(Aw)食品
無加熱摂取
常温
Aw:0.60 以上
加熱後摂取
低水分活性(Aw)食品
無加熱摂取
Aw:0.60 未満
加熱後摂取
発酵食品
無加熱摂取
冷蔵・冷凍・常温
加熱後摂取
②要改善ラインと不合格ラインを設定し、メーカー指導や取り扱い禁止判断等の運用ルー
ルをより厳密に決めました。
2
(2)管理添加物のポジティブリスト制ルールについて、整理し、記述しました。
国
が
認
め
た
添
加
物
指定添加物・既存添加物等
Ⅰ 安全性評価の結果、毒性上の問題が具体的に指摘され、
管 類 また使用の必要性も低いと判断できる食品添加物群
理 Ⅱ 安全性評価の結果、毒性上の問題が指摘されたもの、ま
添 類 たは毒性上未解決な問題がある添加物群
加
現時点でいまだ安全性評価が終了していないもの、及び
Ⅲ
物
安全性に関するデータがないために使用の是非が判断
類
つきかねる添加物群
23
品目
37
品目
55
品目
約
1
5
0
0
品
目
いずみ・わかやま市民生協は、安全性評価で、毒性上の問題が指摘されているものと評
価がまだできていないものを『管理添加物』とし、商品の開発や品揃えをする上で、管理
する添加物としてリスト化しています。
改定前は、
「Ⅰ類」を「不使用」
、Ⅱ類を「留意使用」と表記していました。
「不使用」
「留
意使用」とはコープ商品においての使用基準であり、管理添加物の分類名にすることで混
乱がありました。今回は、管理添加物の分類は、評価に基づいた「Ⅰ類、Ⅱ類、Ⅲ類」と
し、
「それぞれの分類ごとのコープ商品と市販商品別の使用ルール」という形の表記としま
した。
約1500品目 コープ商品
一般商品
指定添加物・既存添加物
約1390品目
管理添加物対象外品目
○
○
管理添加物Ⅰ類
23品目
×
△
管理添加物
管理添加物Ⅱ類
37品目
△
△
管理添加物Ⅲ類
55品目
△
△
×:取り扱いません
△:必要性、有用性から指定した添加物のみ、取り扱う場合があります。
(3)農産物・米の農薬等の使用について
①ポジティブリスト制度導入にともなう、必要な対策について補足しました。
近隣の畑からのドリフトの対策等
②運用マニュアルで、全農産物対象の商品検査センターでの科学的な検証に加えて、
「ヘル
シーベジタ」
、「産直品」を対象にした「社会的検証」について、具体化しています。
『農産商品カード』及び『産地点検チェックシート』の運用についてのルール等
(4)遺伝子組換え食品
①社会的検証について、補足しています。
有効な検証手段として、分別生産流通管理(IP ハンドリング)の証明書や商品仕様書に基
づいた確認などについて記述しました。
②飼料の取り扱いについて、新たに規準を設けました。
国が安全性に関する確認を行っている作物及び製品の使用は問いません。
産直品に関しては、遺伝子組換え不使用作物の使用を要請します。
③参考資料で、情勢変化に対応して説明を補足しました。
3
食品の安全性に関する自主基準
2007 年 4 月 1 日改訂
【Ⅰ】微生物自主基準
1.微生物自主基準の考え方
(1)食中毒事故は、命に関わる深刻な危害を及ぼす恐れがあり、その未然防止に最大限の力
点を置きます。
(2)法令遵守
食品衛生法の「食品、添加物等の規格基準」
「乳等省令」で基準値が定められている食
品は法令遵守を優先します。
また、この自主基準は大阪府指導基準に対応しています。
(和歌山県には独自の指導基準
の定めはありません)
(3)法令に基準のない食品も含めて、腐敗や食中毒発生が考えられる全ての食品に基準を設
定しています。
(4)食中毒菌は、「検出されない」(100/g 未満)を基本としています。
2.微生物自主基準(別紙)の概要
(1)食品区分
従来の食品供給の分類による区分から流通時の温度帯や製造時の加熱工程の有無、喫食
事の加熱調理の必要性等により食品を9つに再区分し基準を設定することにしました。
なお、低水分活性加熱後摂取食品は微生物による危害が考えられないため、自主基準は
設定しません。
<表1 食品区分>
加熱処理の有無
加熱調理の必要性
流通温度帯
製造時加熱処理あり
無加熱摂取、加熱後摂取
冷蔵・冷凍
製造時加熱処理なし
無加熱摂取
加熱後摂取
高水分活性(Aw)食品
無加熱摂取
常温
Aw:0.60 以上
加熱後摂取
低水分活性(Aw)食品
無加熱摂取
Aw:0.60 未満
加熱後摂取
発酵食品
無加熱摂取
冷蔵・冷凍・常温
加熱後摂取
※1 製造時加熱処理
製造工程において、65℃30 分間相当以上の加熱工程がある食品。
(加熱処理後に未加熱
の原材料を加えたりトッピングしたものは除く。
)また包装後に二次殺菌処理をし
ている食品。
※2 水分活性(Aw)
微生物は水がないと発育できません。食品中には同じ水でも微生物が生命維持に利用で
きる水とできない水があります。前者を遊離水(自由水)、後者を結合水と言います。微
生物が利用可能な遊離水の割合を示すのが水分活性(Aw)です。学術的には水分活性が
0.63 を下回ると、あらゆる微生物の発育が阻止されると言われています。
4
(2)基準値の考え方
①一般生菌数
一般生菌数とは、食品中の雑菌の数をいいます。通常 32℃~37℃培養で検出される
食品 1g(1ml)当たりの生菌数を一般生菌数と呼んでおり、その食品の微生物学的品
質の指標とされています。なぜなら、食品による感染症の原因菌や食中毒起因菌、ま
た腐敗変敗の原因菌のほとんどが中温菌*1 であるから、異常に高い一般生菌数を示す食
品は微生物学的に見て品質が悪いと考えられています。
食品の腐敗や変敗は雑菌が食品中で増殖し、食品個々により異なりますが、107/g を
超えると始まるといわれています。108/g~109/g を超えると異臭や異味等が感じられ、外
観的にも腐敗、変敗と判断できるようになります。また、一般的に食中毒の発生は食中
毒原因菌が 105/g 超えると発症するといわれています。
(O157 のように例外はあります)
こういった腐敗や変敗、食中毒を防止するためにも食品中の一般生菌数が前述の菌数を
超えないように管理することが重要となります。
食品衛生学的な観点から、製造時に加熱処理工程がある食品、生食用の食品は食中
毒発症菌量を考えて 105/g~106/g を、加熱処理工程がなく喫食事に加熱調理する食品
は初期腐敗に至らない 106/g を基準値の基本としています。
*1 中温菌:32℃~37℃培養で最も良く発育する細菌の総称。
②大腸菌群、大腸菌(E.coli)
大腸菌群検査は元来、飲料水の衛生上の適否判断のための方法です。飲料水から大
腸菌群が検出された場合、その水は直接または間接的に糞便によって汚染されており、
消化器系伝染病原菌が存在する可能性があると判断されています。この考え方がその
まま食品に取り入れられたものです。
大腸菌群は食品衛生学上で使用される用語であり、医学や臨床学上の細菌分類に基
づくものではありません。従って細菌学上の大腸菌とは必ずしも一致しませんが、多
くの腸内細菌科に属する菌種を包含したものです。また、自然環境中に存在する同種
の菌も少なくなく、食品から検出される大腸菌群は必ずしも糞便と直結するものでは
ありません。
今日では従来の安全性の指標としての意義を踏まえ、より良好な環境の下で、より
安全性の高い品質の食品を生産し確保するのに必要な環境衛生上の尺度を示す汚染指
標菌と考えられています。大腸菌群検査を行うのは主に製造時に加熱処理工程のある
食品であって、大腸菌群が検出されるということは、加熱処理工程が不十分であった
り、加熱後の食品の取扱いや保存が悪いことを示す指標となります。一方、大腸菌は
ヒトや動物の腸管内存在するもので、大腸菌が検出されることは、食品が糞便汚染を
受けていることの証拠となるものです。
製造時に加熱処理工程がある食品は大腸菌群を、加熱処理工程がなく喫食事に加熱
調理する食品や生食用食品は大腸菌を基準としています。
※食品衛生学上の大腸菌群の定義
グラム陰性の桿菌で乳糖を分解しガスと酸を産生する通性嫌気性の細菌の総称
(3)「要改善ライン」
「不合格ライン」
①一般生菌数、大腸菌群、大腸菌(E.coli)に基準値として「要改善ライン」「不合格ラ
イン」を設定しました。
②要改善ラインは取引先・店舗への指導ラインです。
③不合格ラインは取り扱いの是非を検討するラインです。
※運用については「食品の安全性に関する自主基準」運用マニュアルで定めます。
微生物自主基準(別紙)Ⅰ
微生物自主基準(別紙)Ⅱ
5
微生物自主基準(別紙)Ⅰ
6
微生物自主基準(別紙)Ⅱ
7
【Ⅱ】食品添加物自主基準
1.食品添加物使用上の考え方
(1)食品添加物の是非は安全性評価を第一義としますが、安全性評価にかかわらず使用
しなくてもすむものは可能な限り使用しません。
(2)使用する場合は、安全性、必要性、有用性を検討した結果、組合員にとって有益で
あると認めた場合とし、その際は可能な限り必要最少量の使用に抑えます。
(3)食品添加物の安全性評価は、現時点においての毒性学や分析技術等の科学的水準に
基づいて得られた結論であり、将来にわたって絶対的なものとはいえません。従っ
て現在安全性に問題がある食品添加物、また安全性に問題はないとする食品添加物
ともに、今後の科学的知見による再評価・見直しを不断に継続します。
2.食品添加物の基本的な考え方
(1)総量規制
食品添加物の使用には本来の目的に適した使用と、使用者の意図によって歪められた使
用とがあります。たとえば着色料については「食品を美化し魅力を増すもの」としての使
用が本来であるのに対して「粗悪な品質のものに使用して消費者を欺瞞する」使い方もあ
り得ます。保存料も「食品の腐敗、変質、その他の化学的変化を防ぐ」ことが本来の目的
ですが、
「食品の製造や加工における技法如何によっては食品添加物を使用しないですむ場
合があると考えます。このことへの努力は使用者に課せられた責務であり、この努力を放
棄して安易に保存料を使用することは食品添加物をできるだけ取り込みたくない消費者の
意向や不安に反していると考えます。
また食品添加物には人体の成分ではないもの、すなわち「異物」であるものが少なくあ
りません。
「異物」である以上はその程度に差はあっても何らかのリスク、あるいは潜在的
なリスクと考えねばなりません。従って体内にはできるだけ取り込まないように、取り込
ませないようにすることが基本であり、食品を通して摂取する食品添加物の種類、摂取回
数、使用量をできるだけ減らしていくことが大切です。
(2)リスクアナリシス
リスクアセスメント、リスクマネジメント、リスクコミュニケーションをまとめて「リ
スクアナリシス」と呼んでいます。リスクアセスメントとは、
「その物質が使われる条件の
もとで発生するリスクを見積もること」で、「危険性を評価」するということです。
食品添加物をはじめとする化学物質にゼロリスクがあり得ないとすれば、安全か否かを
論議するより、リスクがどの程度あるのかを評価するほうが合理的と言えます。その化学
物質の持つリスク(危険性)とその物質が持つ有用性・有益性を総合的に判断し、有用性・
有益性がリスクを上回るのであれば使用を認めてもいいのではないかという考え方です。
科学の発達を背景に、この「リスクアセスメント」の手法は国際的にも導入されています。
そして「リスクアセスメント(リスク評価)
」の結果を下に、そのリスクの許容度を決めた
りリスクを軽減する対策を講じるのが「リスクマネジメント(リスク管理)
」です。また、
食品に混入する恐れのある化学物質によるリスクのように、消費者が選択できないリスク
について情報の開示はもちろんのこと、消費者を含めた社会的合意形成に努力することが
必要です。これを「リスクコミュニケーション(リスク情報交換)
」といいます。食品に関
わる様々な国際規格について協議・決定するコーデックス委員会も、この「リスクアナリ
シス」手法の採用を明文化しています。
8
3.管理添加物の設定
閾値と実質的安全量及び食経験をもとに分析技術や毒性学の進歩に伴って蓄積された
知見に基づき、国が認めた添加物に対して安全性及び必要性・有用性評価を行い、管理
すべき必要性があると評価した添加物を管理添加物としてまとめました。
国
が
認
め
た
添
加
物
指定添加物・既存添加物等
管 Ⅰ 安全性評価の結果、毒性上の問題が具体的に指摘され、
理 類 また使用の必要性も低いと判断できる食品添加物群
添 Ⅱ 安全性評価の結果、毒性上の問題が指摘されたもの、ま
加 類 たは毒性上未解決な問題がある添加物群
物 Ⅲ 現時点でいまだ安全性評価が終了していないもの、及び
類 安全性に関するデータがないために使用の是非が判断
つきかねる添加物群
23
品目
37
品目
55
品目
約
1
5
0
0
品
目
4.食品添加物の安全性評価
(1)二者択一的な評価は不可能
従来の添加物は「○×方式、いわゆる無害か有害か」を評価の視点としてきました。し
かし近年の科学技術、検査機器の進歩のなかで、
「今日では無条件で絶対無害な化学物質は
ない、どんな化学物質も生体に対して有害な作用をおよぼす可能性があり、このリスクは
摂取量によって異なるために量を抜きにしてリスクを評価することはできない」ことがわ
かるようになりました。
(2)閾値と実質的安全量
化学物質は「無害か有害か」、
「安全か否か」ではなく、リスクがどの程度あるかを科学
的に評価することが大切です。化学物質の毒性の強度と用量の間には正の相関があり、あ
る用量以下では毒性を示さない場合があります。この用量を「閾値」といい、化学物質に
はこのような閾値のあるものと、遺伝子傷害性の発ガン物質やアレルゲンのように閾値が
ないか、またはその存在が明確になっていないものがあるので、これらは区別して評価さ
れなければなりません。
(3)閾値のある化学物質の安全性評価
閾値のある化学物質については当該物質の動物実験における最大無作用量(NOEL)
をもとめ、人に影響を及ぼさない摂取量(mg/kg/day)、すなわち一日許容摂取量:ADI
を求めることです。
9
(4)閾値のない化学物質についての安全性評価
閾値のない化学物質については、最大無作用量がないためADIは設定できません。
その代表例が遺伝子傷害性発ガン物質です。これらの発ガン物質には本当に閾値がない
のかは明確になっていませんが、現時点では「超微量でもそのリスクがゼロになること
はあり得ない」を前提とした上で、リスクアセスメントが適用されています。その結果
として、予測される生涯発ガンリスクが安全性評価の指標として利用されています。一
般的には生涯発ガンリスクとして 10-6(100 万分の 1)以下のリスクしかもたらさない
用量(摂取量または暴露量)なら実質的に安全とみなし、これを「実質安全量」と評価
しています。
(5)天然添加物の安全性評価
食経験年数試算から天然添加物の安全性を食経験の長さから評価した結果、「750 年以
上」の食経験があるものについては一応安全とみなすことができるとの考え方を取り入れ
ました。ただしこのような食経験による評価は必ずしも絶対的なものではなく、特に多用
される天然添加物については食経験があるものといえども科学的にもその安全性は評価さ
れるべきです。
管理添加物の一覧(別紙)
10
管理添加物の一覧(別紙)
2007.09.28
【管理添加物Ⅰ類品目】 23品目
用
添加物名
途
名
着 合 食用赤色2号
色 成 食用赤色2号
料
アルミニウム
レーキ
0.5
使用
基準
(g/kg)
----
0.1
----
7
----
----
----
食用赤色 105
号
----
----
黄色4号
黄色4号アル
ミニウムレー
キ
2.5
----
黄色5号
黄色5号アル
ミニウムレー
キ
7.5
----
食用赤色3号
食用赤色3号
アルミニウム
レーキ
食用赤色40
号
食用赤色40
号アルミニウ
ムレーキ
食用赤色 104
号
ADI
(mg/kg)
安全性評価
問題点として発ガン性、生殖への影響、消化吸収機構の阻害な
どが指摘されています。これらがすべて解明され、リスクが完全に
否定されているとはいいがたい状況です。アメリカ、ノルウェー、
フィンランドでは禁止されてから10~15年経過している添加物
です。
問題点は体内のヨウ素を遊離する可能性があり、その影響による
甲状腺機能障害が懸念されます。また、アメリカにおいて単なる
甲状腺機能障害ではなく、甲状腺ガンの発ガン性が示された報
告もあります。
一般毒性や催奇形性、変異原性には特に問題となる点はありま
せん。発ガン性ではマウスの実験でリンパ腫の早期化が疑われ
ましたが、明確なデータがありませんでした。しかし、原材料の一
つである p-クレンジンには発ガン性が認められており、不純物と
しての残留することが報告されています。
動物実験において変異原性が確認されているにもかかわらず、
発ガン性試験が行なわれていません。マウスで催奇形性が、ま
た、ラットで胎児への発育影響が報告されています。日本以外で
食品に許可されている国はありません。アメリカで医薬品・化粧品
用として許可されています。
マウスで腫瘍原性が認められています。また、ラットの胎児の発
育影響が報告されています。日本以外に食品に許可している国
はありません。化粧品へ許可されている国は台湾と韓国だけで
す。
有害反応として喘息、じんましん、鼻炎などのアレルギー様過敏
反応の発生をきたすことがあります。アスピリン等の非ステロイド
性消炎鎮痛剤によるアスピリン患者の症状を誘発、悪化させる交
差反応性を有することが明らかになっています。ノルウェー、フィ
ンランドではすでに使用が禁止されています。また、スウェーデン
では酒精等ごく一部の食品を除いて禁止されています。
有害反応として黄色4号と同様にじんましん等のアレルギー様過
敏反応をきたすことがあります。とくにアスピリン喘息患者へのリス
クを考慮する必要があります。
11
保 合 デヒドロ酢酸
存 成 ナトリウム
料
パラオキシ安
息香酸イソブ
チル
パラオキシ安
息香酸ブチ
ル
パラオキシ安
息香酸イソプ
ロピル
パラオキシ安
息香酸プロピ
ル
----
----
評価延
期
0.5
ADI は設定されていませんが、数少ない短期及び長期毒性試験
結果等から考えると、ADI は 0.25/mg/kg と類推されます。この値
は他の保存料(ソルビン酸や安息香酸等)と比較すると著しく低
い値です。発ガン性や長期毒性試験のデータが完備・公開され
ておらず、食品添加物としての安全性評価が十分なされていま
せん。
0.1-0. 明らかにガン細胞を発現させたという報告はありませんが、硝酸
塩や亜硝酸塩の存在下で紫外線を照射すると、変異原性を有す
25
る多種類の芳香族ニトロソ化合物が生成されます。醤油をモデル
に分析した結果、多種類の変異原性物質が生成することを確認
しています。
酸 合 EDTA 二ナト
化 成 リウム
防
止
剤
----
0.0350.25
製 合 過酸化ベンゾ
造 成 イル
用
剤
----
----
----
0.03
0.2
0.01
0.1
0.0030.01
臭素酸カリウ
ム
防 合 オルトフェニ
カ 成 ルフェノール
ビ
(OPP)
オルトフェニ
剤
ルフェノール
ナトリウム
(OPPNa)
チアベンダゾ
ール(TBZ)
明確な毒性を示したという報告や長期投与でガン細胞が検出し
たという報告はありません。現在では食品添加物としての使用よ
り日用品に使用されていることが多い添加物です。動物で雄の
生殖機能に影響を与えるという研究結果が報告されてお
り、顕著ではなくても人に影響を与える可能性がありま
す。
EDTANa2 には発ガン性や催奇形性は見られません。細胞中の
カルシウムを封鎖し、EDTACaNa2 に変化する働きがあります。ラ
ット、イヌを用いた長期毒性試験結果では、金属の代謝を阻害す
るという証拠は得られませんでした。金属の代謝に有害な影響が
発現し、腎毒性が認められるのは大量投与した場合に限られま
す。使用基準では最終的に食品中でカルシウムイオンを取り込
み、EDTACaNa2 にすることが定められています。現在では酸化
防止剤としての使用実態はほとんどありません。
明らかに発ガンプロモーター作用があります。高濃度長期投与
で完全な発ガン剤として作用することが示されています。現在で
はほとんど使用されていない添加物であり、また、小麦粉に添加
されても加工時の加熱などにより、最終製品においては大部分
が分解してしまいます。分解物としての小麦粉成分の酸化生成
物の毒性にも考慮が必要です。
ラットに対して発ガン性を示しその発ガン性はかなりの強さです。
TD50(半数腫瘍発生量)オス 5mg/kg/day、メス 12mg/kg/day で
あり、指定削除になった AF2(防腐剤)よりも発ガン性が強い添加
物です。最終食品の完成前に分解あるいは完全除去が義務付
けられています。
ラットへの長期投与による膀胱に対するガン原性が明らかになっ
ています。
マウスのみならずラットに対しても催奇形性を示します。複数の動
物種に対して催奇形性が明らかになっています。(東衛研発表
78 年)
12
【管理添加物Ⅱ類】 37品目
用
途
名
甘 天
味 然
料 /
ステビア抽出
物
ステビア末
----
使用基
準
(g/kg)
----
カンゾウ抽出
物
カンゾウ末
----
----
4
----
食用赤色 106
号
----
----
着 合 食用青色1号
色 成 食用青色1号
アルミニウムレ
料
ーキ
食用青色2号
食用青色2号
アルミニウムレ
ーキ
食用緑色3号
食用緑色3号
アルミニウムレ
ーキ
二酸化チタン
12.5
----
5
----
25
----
青色1号と同様に皮下注射部位に線維肉腫が確認されましたが、原因
は同じです。その他、特に問題となる毒性はありません。また日本国内
においては使用実態はほとんどない添加物です。
----
----
----
----
二酸化チタンの暴露で肺ガンの発生率増加が見られたという報告があ
ります。しかし、経口投与した場合、発ガン性についてはマウス、ラット
による実験では認められていません。
食経験が全くないにも関わらず安全性試験がごく一部でしか行なわれ
ていません。染色体異常試験の結果が陽性にもかかわらず発ガン性
試験が行なわれていません。引き続き安全性の確認が必要です。
既
存
添
加
物
添加物名
着 合 食用赤色 102
色 成 号
料
天
然
/
既
存
添
加
物
ラック色素
ADI
(mg/kg)
安全性評価
問題点として指摘されている点は妊娠抑制効果です。ステビアの茎や
葉から抽出した物を雌ラットに摂取させたところ妊娠率の低下が見られ
たという報告があります。一方、ステビア協会では同じ実験を行い妊娠
抑制作用がなかったと報告しています。JECFA による評価が出されて
いないため、いずれが真実か判断するのが困難なため結論を出すこと
ができていません。
主成分は甘味料のグリチルリチン酸二ナトリウムと同じグリチルリチンであります。
グリチルリチンを大量摂取(250mg/day、1ヶ月以上<通常の食生活ではあ
りえない>)すると遺伝性特定疾患である「偽アルドステロン症(食塩喪失
症候群)」が発現することがあります。従って安全性の範囲を超えるよう
な大量摂取をしないように使用すれば問題はありません。偽アルドステロン
症患者以外は安全性について特に問題となる点はありません。
赤色 102 号に発ガン性はありません。唯一問題となるのはアレルギー
誘発です。反復性蕁麻疹または血管浮腫患者に誘発試験を行なった
ところ 25 人中9人が蕁麻疹を起こしたという報告があります。ただしこの
試験は正式な方法によるものではなく、あくまでもチャレンジ的テストか
らの統計的手法により判断されたものです。上記の患者以外によるア
レルギー誘発の報告はありません。
赤色106号の発ガン性試験の結果は陰性でした。日本国内だけで使
用されている食用着色料であり安全性を確認する試験データが少な
い添加物です。
青色1号に発ガン性はありません。ラットへの皮下注射により注射部位
で線維肉腫が確認されましたが、この肉腫は皮下注射を継続して行う
ことによる物理的作用であることがわかりました。その他、特に問題とな
る毒性はありません。
青色2号に発ガン性や変異原性、催奇形性はありません。青色1号と
同様に特に問題となる毒性はありません。
13
保 合
存 成
料
天
然
/
既
存
添
加
物
ソルビン酸
ソルビン酸カ
リウム
安息香酸
安息香酸ナト
リウム
25
0.05-3
5
0.6-2.5
パラオキシ安
息香酸エチ
ル
----
0.1-0.25
プロピオン酸,
プロピオン酸
ナトリウム
プロピオン酸
カルシウム
ツヤプリシン
(ヒノキチオー
ル)
制限し
ない
2.5-3
安全性を確認するデータが少ない添加物です。慢性毒性試験
で安全性が確認されるまで管理添加物とします。
----
----
ポリリジン
----
----
安全性を保障するデータはあまりにも不備といわざるをえませ
ん。入手した情報では急性毒性は低く、変異原性について問題
は指摘されていませんが、細胞毒性が高いこと、および短期毒
性試験の最大無作用量が低い部類に入る添加物です。
ラットによる長期毒性・ガン原性併合試験で発ガン性は認められ
ていません。また、短期毒性試験での最大無作用量は約 1g/kg
であり、ADI は 10mg/kg となります。この値はソルビン酸
(25mg/kg)の ADI よりも低いですが、毒性は極めて低いことが
確認されています。
現在、天然の増粘剤として食品に広く使われている添加物で
す。WHO では安全性の高い食品添加物として「ADI を特定せ
ず」と結論されています。一方で品質上の問題点が指摘されて
います。カラギナンには天然カラギナンと分解カラギナンに大別
され、食用は天然カラギナンですが、その中に分解カラギナン
が含まれる可能性があります。分解カラギナンには発ガン性が
あるなど多くの研究者がその有害性を認めています。FDA では
食品に使用するカラギナンは最小でも分子量が 10 万(分解カラ
ギナンの分子量は 2~4 万)のものと規制して食用カラギナンの
品質および安全性を高めています。分子量を確認することによ
り使用するカラギナンの安全性は高められると考えます。
アナフィラキシー、喘息、鼻炎などのアレルギーの発症例が報
告されています。その多くは製薬工場や医療機関の労働者が
職業的にこの添加物に暴露していたケースです。食品中のサイ
リウムシードガムによるアレルギー発症例も見いだされてきてお
り、厚生労働省は 97 年 12 月にアレルギー誘発性について注意
を出しています。
JECFA による安全性評価が終了し ADI を特定せずの毒性の低
い食品添加物です。
増
粘
安
定
剤
天
然
/
既
存
添
加
物
カラギナン
特定し
ない
----
増
粘
安
定
剤
天
然
/
既
存
添
加
物
サイリウムシ
ードガム
----
----
ファーセレラ
ン
特定し
ない
----
急性毒性や短期毒性も低く、発ガン性試験においても発ガン性
は認められていません。また、ADI も高く毒性は極めて低いこと
が確認できています。
急性毒性や短期毒性も低く、発ガン性試験においても発ガン性
は認められていません。ソルビン酸と比較して ADI は低いが、毒
性は極めて低いことが確認できています。クランベリーやプルー
ン、梅などの果実にも含まれており、自然界に広く存在していま
す。
明確な毒性を示したという報告や長期投与でガン細胞が検出し
たという報告はありません。現在では食品添加物としての使用よ
り日用品に使用されていることが多い添加物です。
14
酸 合
化 成
防
止
剤
ジブチルヒド
ロキシトルエ
ン(BHT)
ブチルヒドロ
キシアニソー
ル(BHA)
0.3
酸 合
化 成
防
止
剤
EDTA カルシ
ウム二ナトリウ
ム
2.5
発 合
色 成
剤
亜硝酸ナトリ
ウム
硝酸ナトリウ
ム
硝酸カリウム
0.2
製 合
造 成
用
剤
過酸化水素
設定せ
ず
製 合
造 成
用
剤
プロピレング
リコール
25
防 合
カ 成
ビ
剤
イマザリル
0.5
0.025
0.2-1
ラット、マウスとも2年間の長期飼育において発ガン性試験が行
なわれましたが、いずれも発ガン性は見られませんでした。安全
性の上で特に問題となる毒性はありません。
---ラットにおいて前胃に発ガン性が示唆されました。その後、厳密
な毒性試験が何度も繰り返し行なわれ、その結果、BHA は前胃
を持つげっ歯類のみに前胃部に発ガン性を示すがわかりまし
た。ヒトを含めた前胃を持たない動物では発ガン性を示すような
遺伝子毒性がないことがわかりました。ADI を超えない限り特筆
する毒性はありません。また、油脂類の酸化防止機能に優れて
おり、限定した商品群では有用性があることも事実です。
0.035-0.25 この添加物は消化管からほとんど吸収されず代謝的に不活性
であり体内に蓄積しません。しかしカルシウムが他の重金属イオ
ンと交換して、より安定な結合物を形成する能力があると考えら
れています。大量に投与した場合は細胞中のカルシウム以外の
重金属イオンが欠乏する可能性は否定できません。酸化防止
剤として使用実態はほとんどない添加物です。
0.005-0.07 亜硝酸塩や硝酸塩自体には発ガン性はありません。亜硝酸化
合物の大量摂取は血管拡張とメトヘモグロビン形成を起こして
血液の酸素運搬能力を低下させます。致死量は 0.18g~2.5g で
あり、食肉製品等からの摂取量(0.005g~0.07g/kg)では問題あ
りません。亜硝酸塩は発ガン性物質ニトロソ化合物の前駆体で
あることがわかっています。ヒトが一日に摂取する亜硝酸塩は約
1mg といわれています。その中で食肉製品等から摂取する量は
全摂取量の約 2.2%といわれています。また、胃内におけるニトロ
ソ化合物の生成については、胃の中の亜硝酸濃度が5ppm の
場合は反応が極めて遅くなり生成量も少なくなることがわかって
います。通常、ヒトの胃の中の亜硝酸濃度は食べ物により希釈さ
れるので2ppm を超えることはありえなく、(食肉製品等から摂取
する亜硝酸の量は約 0.044ppm)この量では胃の中でのニトロソ
化合物の生成は無視できるレベルであることがわかっていま
す。
---マウスへの十二指腸ガン誘発が指摘されています。過酸化水
素は最終食品に残留しないという使用基準の下で許可されてい
ます。現在の使用実態から考えて数の子以外の食品にまで使
用する可能性は低いと考えられています。また食品によっては
過酸化水素を少量含むものが存在しています(自然含有)が、
生体にはカタラーゼ等の酵素による防御機能があり、少量の過
酸化水素の摂取は生体に害作用をおよぼしません。
0.6-2%
プロピレングリコールの L 体、D 体ともに L-乳酸、D-乳酸を経て二酸
化炭素と水に分解されます。JECFAS(1973 年報告)では3ヶ月
未満の新生児が D-乳酸を摂取することについて問題があると
指摘しています。使用実態として過量に使用した例もあり食品
添加物摂取量調査でも摂取量が多い添加物となっています。
製造用剤以外には食品添加物製剤の助剤として多く使用され
ています。
0.002-0.005 イマザリルは特殊毒性試験において発ガン性や変異原性、催
奇形性は認められていません。しかし ADI が低く設定されてい
ることから、十分な管理が必要な添加物です。
レモンに使用基準値である 5ppm が最大残留した場合、レモン1
コすべてを食べると 0.5mg のイマザリルを摂取することになりま
すが、この量は体重 50kg の人での ADI(1.25mg)を下回ります。
通常、残留していても使用基準値以下(0.03~3.3ppm)であるこ
とから十分管理できるレベルと考えられます。
15
強 合
化 成
剤
L-フェニルア
ラニン
----
----
L-フェニルアラニンはアスパルテーム同様に急性毒性や短期毒性も低
く、発ガン性試験においても発ガン性は認められていません。
PKU 患者以外には問題となるような点はありません。しかし、アス
パルテームと異なり食品添加物の強化剤として分類されているため
表示義務が発生しません。このことから PKU 患者へは商品表示
で配慮が必要な添加物です。
【管理添加物Ⅲ類】 55 品目
用途
甘味料
酸化防止
剤
添加物名
用途
D-リボース
添加物名
ウェランガム
増粘安定剤
L-ソルボース
エレミ樹脂
L-ラムノース
オリゴグルコサミン
N-アセチルグルコサミン
ガディガム
α-グルコシトランスフェラーゼ処理ステビア
グルコサミン
オリゴ-N-アセチルグルコサミン
サバクヨモギシードガム
ブラジルカンゾウ抽出物
スクレロガム
ラカンカ抽出物
セスバニアガム
酵素処理カンゾウ
ダンマル樹脂
酵素分解カンゾウ
デキストラン
グアヤク脂
マクロホモシスガム
クエルセチン
モモ樹脂
コメヌカ酵素分怪物
ラムザンガム
フェルラ酸
レバン
ブドウ種子抽出物
微小繊維状セルロース
ヘゴ・イチョウ抽出物
アルカネット色素
着色料
モリン
アルミニウム
ヤマモモ抽出物
カカオ炭末色素
ユーカリ葉抽出物
ファフィア色素
酵素処理ルチン(抽出物)
ベニバナ赤色素
酵素分解リンゴ抽出物
ヘマトコッカス藻色素
単糖・アミノ酸複合物
ログウッド色素
没食子酸
骨炭色素
亜硫酸塩
植物炭末色素
増粘安定
アウレオバシジウム培養液
油煙色素
剤
アグロバクテリウムスクシノグリカン
保存料
アラビノガラクタン
エゴノキ抽出物
ペクチン分解物
酵素分解ハトムギ抽出物
※酸化防止剤の亜硫酸塩のみ合成添加物
16
【Ⅲ】農産物・米の農薬等の使用に関する自主基準
1.農薬行政をめぐる変化
2006 年5月 29 日に、「食品に残留する農薬などに関するポジティブリスト制(以下、ポ
ジティブリスト制と略)
」が施行されました。ポジティブリスト制では、従来のネガティブリ
スト制<※1>と異なり、すべての農薬・食品に対して残留基準値が設定され、この基準値
を超えて残留している食品の販売が禁止されています。
この制度の導入により、消費者にとって、農産物の安全性の担保がいっそう前進しました。
一方、生産者からみれば、従来のネガティブリスト制では設定されていない基準の多くに一
律基準値(0.01ppm:現在の検査精度では検出限界値<※2>)が設定されたことにより、
農薬の使用基準<※3>の遵守や、近隣の畑からのドリフト<※4>の対策が重要となり、
生協でも産地と連携した対策をすすめています。
<※1>ネガティブリスト制とは~基準値が定められていない農薬等が食品に残留して
も販売禁止等の規制はありません。
<※2>検出限界値とは~残留農薬の存在の有無が判断できる最低限の濃度。この数値
は技術の進歩により下がります。
<※3>農薬の適性使用とは~農薬は定められた使用方法をきちんと守ることにより安
全が担保されますから、農薬取締法で農薬の使用基準の遵守が義務づけら
れています。使用基準は農薬ごとに、適用作物、使用量(濃度)
、使用時期、
使用回数が定められています。
<※4>ドリフトとは~農薬散布の際、風等の影響により、対象作物以外に農薬が飛散
すること。
2.農薬に関する取り扱い基準
(1)農薬使用に関する基本的な考え方
①人の健康と生態系に悪影響を及ぼす恐れの高い農薬は、その使用を禁止、または厳しく
制限します。
②農法の改良などを通じて農薬の使用量を全体として減らしていきます。
③生産者との交流や栽培方法の確認、改良の取り組みが可能なヘルシーベジタ、産直農産
品、産地指定農産品の取り扱いを増やしていきます。
④農薬の毒性に関する最新の研究成果を踏まえるとともに生産者の理解・協力を得て、今
後とも使用農薬を減らしていきます。
(2)農薬使用基準
①「ヘルシーベジタ」
、「産直農産品」、
「産地指定農産品」での使用禁止農薬
いずみ・わかやま市民生協では、日本生協連の農薬検討委員会の検討結果、環境省報告
(外因性内分泌かく乱化学物質問題に関する研究班中間報告書、1997年)による環境
ホルモンとしての指摘、他生協のデータ、産直産地との協議等を踏まえて、
「ヘルシーベジ
タ」
、「産直農産品」、
「産地指定農産品」での使用禁止農薬を規定しています。
17
② 使用禁止農薬リスト
農薬名
モノフルオル酢酸 Na、EPN、エチルチオメ
Aグループ
トン、オキサミル、青酸、テフルトリン、ベ
<9農薬>
ンゾエピン、リン化アルミニウム、パラコー
ト
NAC、DDVP、ジメトエート、マンネブ、ベ
B1グループ
ノミル、キャプタン、ジラム、2,4-PA、アト
<11農薬>
ラジン、シマジン(CAT)、メトリブジン
B2グループ
<22農薬>
考え方
毒物指定又は特定毒物に
指定されているもの、水
質汚濁性の高いもの
日本生協連や他生協のデ
ータ等を参考にして、産
直産地と協議した11農
薬
シペルメトリン、MEP、マラソン、DEP、 日本生協連の農薬検討委
ダイアジノン、ペルメトリン、フェンバレレ 員会の検討成果を踏まえ
ート、メソミル、臭化メチル、DMTP、D-D、 た農薬でA・B1グルー
アセフェート、クロルピクリン、カルタップ、 プ以外のもの
マンゼブ、チラウム、TPN、チオファネート
メチル、アラクロール、リニュロン、トリフ
ルラリン、マレイン酸ヒドラジド
*登録失効 10 農薬を削除しました。
A グループ(イソフェンホス・硫酸ニコチン・ロテノン)
B1グループ(ジネブ)
B2グループ(モノクロトホス・ケルセン・バミドチオン・カルベンダゾール・CVP・PMP)
*農薬の登録失効とは・・・①安全性の問題で国が法に基づき登録を取り消す、②製造者が
販売の減少やより性能のよい製品への切り替えを行う、などにより農薬としての登録
がなくなること。
■ 農産品のポジショニング
残留基準
ヘルシー
厳しい
一般
産直
特別栽培
有機JAS
厳しい
使用規準
18
ヘルシーベジタ
農薬の残留基準
食品衛生法の農薬残留
基準値の 1/10 以下、ま
た は 検 出 限 界 値
(0.01ppm)
有機JAS
農水省ガイドライン、およ
び各都道府県 認証の
「特別栽培品」
産直品
産地指定品
一般栽培品
食品衛生法の農薬残留
基準値
農薬の使用基準
①化学合成農薬、化学肥料の使用量が、一般
栽培の 1/2 以下
②42 種類の農薬を使用禁止(一部制限使用)
①は種前 2 年以上(多年生植物は収穫前 3
年以上)
、国が認めた農薬・肥料以外は使
用禁止
②国が定めた登録認定機関が認定
①化学合成農薬、化学肥料の使用量が、一般
栽培の 1/2 以下
①20 種類の農薬を使用禁止(一部制限使用)
①9 種類の農薬を使用禁止(一部制限使用)
3.ヘルシーベジタの取り扱い自主基準
(1)ヘルシーベジタの設定
農薬、化学肥料そしてエネルギー多投入型の近代農業は、地力の低下、環境、生態系へ
の悪影響、生産者への健康被害、作物の健全性の低下、農薬残留による安全性の低下など
種々な弊害をもたらしています。
この反省に立ち、人、環境、生態系へのリスク、負荷のできるだけ少ない農業(栽培方
法)を指向し、より安全性の高い農産物を生産することは非常に重要になってきています。
従って、生協としてこのような栽培方法の内容について、生協独自の規格等を定め、生協
が従来以上に栽培や管理の中身に踏み込み、生産者等との信頼をもとに生産していくこと
が必要です。
このような農産物を供給するため、生協として規格等を定める栽培方法を次の区分とし
ます。そして各々の栽培方法に適合するための条件を定め、この条件を満たしたものにつ
いて表示し供給します。
(2)ヘルシーベジタの適用範囲
ヘルシーベジタのガイドラインに適合した農産物の適用する対象範囲は次のとおりです。
①生鮮野菜および果実
②穀類
③粉末または物理的加工をした穀類、豆類(小麦粉、麦など)
④乾燥し未調整の野菜、果実および茶、豆類
⑤冷凍した野菜、果実(ブランチング処理、皮除去含む)
⑥野菜、果実を原料とした加工品
1)原料の形状を留めている加工品
(形状を留めていることが条件であり、配合品は規定しません。
)
2)原料の形状を留めていない加工品
(当該農産物が 50%以上のものとします。
)
なお、水耕栽培のように土壌を基本としない農産物、きのこ類、山野に自生する植物
は対象としません。
19
(3)ヘルシーベジタの条件
①定義
ヘルシーベジタとは、当該圃場において、前作の収穫後から当該農産物の収穫までに化
学合成農薬の使用回数、および化学肥料の使用量が、慣行レベル(注)の 50%以下の栽培
により生産された農産物とします。
ヘルシーベジタは単に農薬を低減する栽培ではなく、その前提となる地力の向上などが
重要です。すなわち、化学肥料依存の栽培から有機質肥料を主体にした栽培に変えること
が基本といえます。従って、土壌の微生物を殺すくん蒸剤に制限を設けることや有機質肥
料の割合を増加させることが重要です。
さらに使用回数の低減にとどまらず、使用農薬の残留量が慣行栽培より少なくなければ
より安全な農産物とはいえません。このため、使用農薬を一部制限し、残留量にもより厳
しい制限を設けることが必要です。
注)慣行レベル
「慣行レベル」とは、原則として、都道府県が定めたもの、または、農協組織
などが定めた場合は都道府県がその内容を確認した慣行レベルを基準とします。
それが定められていない場合は次のように定めます。
1)同一地域の農協管内における同一作物の栽培での使用回数とします。防除暦よ
りもそれをベースにした実際の使用回数を採用するのが望ましいが、ない場合
は防除暦を採用します。なお、栽培方法は当該作物の作付け年度の予定栽培方
法を採用します。予定が決まっていない場合は前年実績を採用します。
2)同一作物がない場合は、同一農協管内の近隣の管内のものとし、ない場合は都
道府県の域まで拡大します
②農薬
土壌くん蒸剤は定義の項に記した理由で、原則使用できないこととします。
(苗床での使
用を除く)なお、使用回数は単に散布回数ではなく、混合剤のような場合は1成分1回と
して数えます。ただし、次の資材については、使用回数の対象となりませんが、使用した
場合は表示を行ないます。
・化学合成農薬のうち、作物や畑に直接散布しない性フェロモン剤、誘引剤
・天敵(天敵昆虫、微生物農薬など)
・特定農薬(特定防除資材)
1)土壌くん蒸剤
苗床での使用を除き原則使用できません。
2)殺虫剤、殺菌剤、除草剤、成長調整剤など
総使用回数の 50%以下とします。(種子消毒も含みます)
3)使用禁止農薬
化学合成農薬は基本的に、安全性が高いということはありえません。しかし、むやみ
に禁止などの制限をしても病害虫の発生は現実にあり、それを防ぐ手段は必要です。
従って、安全性等に重大な危惧が考えられる場合に制限を設けることを基本とします。
よって、現在の生産技術では回避できないなどの理由を除いて、
「1.農薬に関する取
り扱い基準」で定めた使用禁止農薬は、一部例外を除いて使用しません。
③肥料、土壌改良剤
1)化学肥料の使用量
当該作物の栽培期間について、単位面積あたりに施肥する総肥料重量のうち、窒素成
分の使用量で化学肥料の割合が慣行レベルの 50%を超えないものとします。なお、この
肥料には微量元素補給肥料、有用微生物等の土壌改良剤は含みません。
2)無機質肥料
20
・無機養分岩石
・草木灰、食品等の有機物の灰
・PH 調整のための灰(炭酸石灰、苦土石灰、ケイ酸石灰等、なお生石灰のように反
応性の高いものは使用できません。)
・その他有用な物質
3)有機質肥料
完熟した堆肥を主体とした肥料を使用します。ただし、天然物であっても有害物質の
含有の可能性がある場合は、別途規定の基準に適合していることを確認します。
・完熟させた堆肥、きゅう肥など
・動植物性肥料(鶏糞、骨粉、油粕、海藻など)
・有機性廃棄物肥料(食品工場などの食品廃棄物を肥料化したものなど)
・その他有用な物質
4)土壌改良剤
作物の育成に不可欠な微量元素は、通常の無機質および有機質肥料の施肥では不十分
となる場合があるので、当該化学合成物を適正な管理の下で使用できます。
また、微生物は地力を高めるので適切に使用できます。
・微量元素(マグネシウム、銅、鉄、亜鉛、マンガン、ほう素、モリブデンなど)
・有用微生物
・その他有用な物質
④食品添加物
対象については加工品も含まれるので、食品添加物の使用が考えられるため、この使用
については生鮮品と加工品を区分した規定とします。
1)生鮮品、穀類、豆類、茶
・合成および天然の添加物ともに使用できません。
、カット品等の一次加工品
2)冷凍品、乾燥品(前項以外)
・合成および天然の添加物ともビタミン類を除き原則として使用できません。
・食品の安全衛生などの確保のために、ビタミン類以外の添加物の使用が必要となる
場合であっても、その使用量は最小限にします。
3)加工品
・管理添加物(Ⅰ類・Ⅱ類・Ⅲ類)は使用できません。
・食品添加物を使用する場合でも、その使用量を最小限に留めます。
(4)農薬の残留基準
①ヘルシーベジタの残留基準は、食品衛生法の農薬残留基準値の 1/10 以下、または検出限
界値(0.01ppm)とします。
②自主基準に適合しないものは、一般栽培品として取り扱います。
③その他
1)表示の禁止
規定した条件に適合していないことが判明した場合は、速やかに当該表示を中止しま
す。ただし、一般品としての取り扱いは差し支えありません。
2)圃場の看板
当該農産物を栽培している旨の看板などを圃場に掲示することは必須としません。
3)移染等の防止
当該農産物は化学合成物質の使用を減らして栽培しているので、特に収穫後の保管、
流通等においては、一般の農産物と明確に区分される措置を講じるとともに、使用資
材等も洗浄するなど、移染、混入などの防止対策を念入りに行ないます。
21
(5)周辺からの飛来の監視
当該農産物の周辺は慣行栽培による生産が一般的と考えられます。このような場合、農
薬の飛来により汚染の可能性が考えられます。従って、生産者は周辺圃場の農薬散布状況
に注意し、汚染の恐れがあると推定される場合は、栽培責任者および生協に報告します。
(6)有機性廃棄物肥料および無機質肥料に含まれる有害物質の規定
ヘルシーベジタのガイドラインにおいて、肥料中の有害物質を次のように規定します。
なお、この規定が適用されるのは、肥料中の原料に有害物質含有の可能性が推定される場
合であり、通常の食品素材が原料の場合、その都度の分析による確認はしません。これら
以外の物質であって、規制の必要性が考えられる場合は必要に応じて規定を設けます。
物質名
カドミウムおよびその化合物
シアン化合物
六価クロム化合物
鉛およびその化合物
ヒ素およびその化合物
水銀およびその化合物
1
1
5
10
5
0.05
規定値(mg/kg 以下)
(カドミウムとして)
(シアンとして)
(六価クロムとして)
(鉛として)
(ヒ素として)
(水銀として)
4. ポストハーベストについて
(1)考え方
ポストハーベスト農薬とは「ポストハーベストアプリケーション」といい、農産物を長
期間保存したり、輸送に長い時間がかかるために「保存性」を高める目的で使用される収
穫後農薬を言います。ポストハーベスト農薬は栽培中に使われる農薬と違って、収穫の後
に直接農作物にかけられるため、農薬が作物に残ってしまう可能性が高く残留値に対して
の監視が必要です。また「食品衛生法」には「農薬残留基準」があり基準値を超えるもの
は食品としての販売を禁じられています。ただし基準がない農薬は残留していても規制が
されません。ポストハーベスト農薬でも基準値がないものも多くあることから自主基準で
の管理対象としてきました。しかし 2006 年施行の農薬等のポジティブリスト制度では基
本的に全ての農薬に対して残留基準が設定されたことは大きな前進です。
(2)ポストハーベスト農薬の管理
ポストハーベスト農薬には食品添加物として位置づけられているものと農薬として位置
づけられているものとがあります。
①食品添加物としてのポストハーベスト農薬は「食品添加物自主基準」で管理します。
②農薬としてのポストハーベスト農薬はポジティブリスト制度に基づく残留基準の厳守と
検証検査を実施します。
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【Ⅳ】動物用医薬品自主基準
1.動物用医薬品の種類と目的(用途)
動物用医薬品
抗菌性物質
ホルモン剤
寄生虫用剤
抗生物質
合成抗菌剤
天然型
合成型
内寄生虫用剤
外寄生虫用剤
(1)抗菌性物質
抗菌性物質は抗生物質と合成抗菌剤に大別されます。抗生物質とは微生物が産生する成
分を抽出精製したもので、合成抗菌剤は抗生物質と同じ働きをするものを化学合成して作
り出した物質です。抗菌性物質はその用途により「飼料添加物」と「動物用医薬品」に大別さ
れ、前者は「飼料安全法」、後者は「薬事法」によって規制されます。
また動物用医薬品のうち養殖魚に用いられるものを「水産用医薬品」と呼んでいます。
①飼料添加物
1)飼料の品質の低下の防止 2)飼料の栄養成分その他の有効成分の補給 3)飼料が
含有している栄養成分の有効な利用の促進を目的に飼料に添加、混和、湿潤その他の方
法で用いられるもので、1)は酸化防止剤、防カビ剤など、2)はビタミン、ミネラル、
アミノ酸などが使用され、抗菌性物質は 3)の目的で使用されています。2004 年 10 月
現在、148 品目が飼料添加物として指定されており、その内抗菌性物質は 25 品目が含ま
れています。
ところで抗菌性物質は 3)の目的、作用以外にも、不潔な環境で飼育される家畜では
飼料添加物として家畜に与えると発育が 10%前後促進され、飼育効率が改善されること
が経験的に知られています。
②動物用医薬品
動物用医薬品とは、畜水産動物の疾病の治療、予防を目的としたもので、「薬事法」によ
り規制されています。動物用医薬品のうち副作用の強いもの、病原菌に対して耐性を生
じやすいものなどは「要指示医薬品」に指定されており、使用に際しては獣医師による
処方の交付、または指示が必要とされています。また使用頻度の多い抗菌性物質につい
ては「動物用医薬品の使用の規制に関する省令」により、使用対象動物、用法、休薬期
間などの使用基準が定められています。
法律
対象
審議会
使用目的
投与量
投与期間
飼料添加物
飼料安全法
農林水産大臣が省令で定める用途
に適するとして指定したもの
農業資材審議会
飼料効率改善及び発育促進
微量投与
2~3ヶ月間の長期投与
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動物用医薬品
薬事法
農林水産大臣が品目毎に審査して
承認、許可を与えたもの
中央薬事審議会
感染症の予防及び治療
比較的大量投与
短期間投与
(2)ホルモン剤
ホルモンとは、生体の内分泌腺から分泌されて諸器官の働きを調節する化学物質です。
ホルモン剤は肉牛の肥育を促進し、飼料効率を高めるとともに、タンパク質の多い赤身肉
を生産する目的で使用されています。ホルモン剤は人や牛などが体内で分泌するホルモン
物質と同様の天然型と化学的に合成されるものとに大別されます。
(3)寄生虫用剤
寄生虫用剤は、線虫、回虫、コクシジウムやトキソプラズマなど原虫による畜産動物の
被害の予防、及び治療のために使用されます。寄生部位が体内であるか体外であるかによ
り内寄生虫用剤と外寄生虫用剤とに区分されています。
2.動物用医薬品使用に関する考え方
(1)ヒトの健康と生態系、環境に悪影響を及ぼす恐れが高い動物用医薬品は使用を制限し
ます。
(2)飼育方法や飼育環境の改良を通じて動物用医薬品の使用を減らす取組みを産直生産者
とすすめます。
(3)動物用医薬品の使用に当たっては、薬事法、資料安全法の使用基準を遵守することを
産直生産者に求めます。
3.動物用医薬品の残留基準
(1)食品衛生法の「食品、添加物等の規格基準」で残留基準値が設定されている動物用医薬
品については、検査において検出されない(検出限界値以下)こととします。
(2)残留基準値が設定されていない抗生物質、合成抗菌剤については、検査において検出さ
れない(検出限界値以下)こととします。
<食品衛生法>
①食品は、抗生物質を含有してはならない。
②食肉、食鳥卵および魚介類は、化学的合成品たる抗生物質を含有してはならない。
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【Ⅴ】遺伝子組換え食品自主基準
1.遺伝子組換え食品の取り扱いの考え方
遺伝子組換え作物の認可は、今後も増えてくることが予想されます。また、既に多くの
加工食品の原材料として使用されています。こうした中で、生協の商品の取り扱いに関す
る基本的な考え方は、次の通りとします。
《参考》
安全性審査の手続きを経た遺伝子組換え食品及び添加物
2006年8月15日
じゃがいも 大豆 てんさい アルファルファ とうもろこし なたね わた
食品計
8品種 4品種
3品種
3品種
25品種 15品種 18品種
76品種
添加物
13品目
(1)遺伝子組換えをしていない食品の取り扱いと開発に努めます。その為、農業生産者や生
産者団体、食品加工メーカーとの協力関係を強めます。
(2)人体被害が発生した特定の遺伝子組換え食品については、取り扱いを行いませんまた、
人体被害の危険性を指摘されている特定の遺伝子組換え食品についても、安全性が確認
されるまで取り扱いを中止します。
(3)遺伝子組換え情報については、選択の権利を保障するため正しい情報のみを提供します。
食品衛生法で認められている混入率は5%未満となっています。よって IP ハンドリング
(分別生産流通管理)の証明書など社会的な検証をメインに遺伝子組換えか否かの確認
を行いますが、科学的な検証を実施しなければ確実とは言えません。組合員に正しい情
報をお知らせするために PCR 法などによる科学的な検証を実施します。
(4)アレルギー対応遺伝子組換え農産物等の特定の人を対象とした食品については、その有
用性・必要性・安全性を考慮し個別に判断します。
2.遺伝子組換え食品の商品取り扱い基準
(1)青果物について
遺伝子組換えされた青果物は、取り扱いません。
(2)加工食品について
①遺伝子組換え作物がほとんどそのままの状態で製品になっている加工食品は、取り扱い
ません。
(野菜缶、冷凍野菜、水煮野菜、ドライフルーツ、トマトピューレ、トマトペーストなど)
②その他の加工食品
1)いずみ・わかやまコープ商品では、可能な限り遺伝子組換え作物を主原料としたもの
は取扱いません。
2)その他の商品は仕様書による原材料の確認および生産・流通時の分別・不分別確認を
行います。また検査センターによる科学的確認を実施します。
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3.遺伝子組換え飼料の取り扱い基準
(1)飼料として、国が安全性に関する確認を行っている作物及び製品の使用は問いません。
(2)産直商品(畜肉、牛乳、たまご)の生産にあたっては以下を各生産者に要請します。
①遺伝子組換え不使用作物を飼料として使用する事を依頼します。
②不使用作物を使用する際には、IP ハンドリングにより生産・流通時の分別・不分別確認
を行います。また商品検査センターによる科学的確認を実施します。
③今後の穀物事情や製品価格を考慮し、不使用から不分別に変更する場合には相互確認の
上で切り替えを行います。
(3)産直以外の商品については、肥育管理表などにより飼料の内容を確認します。
《参考》
組換えDNA技術応用飼料及び飼料添加物の安全性に関する確認を行った飼料及び飼料添加
物一覧より(平成 18 年 3 月 31 日付 農林水産省消費・安全局畜水産安全管理課 発行)
大豆
4品種
なたね 15品種
てんさい 3品種
とうもろこし 13品種
わた 10品種
アルファルファ
26
2品種